JP3729948B2 - 地盤の安定化施工方法及びその方法に使用する削孔の口元閉塞用具 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル工事における地山などの地盤を安定化して崩落等を防止するための地盤の安定化技術に関する。より詳しくは、トンネルの掘削においてロックボルトの設置と覆工コンクリートの吹付けを主体に施工する新オーストリアントンネル工法、すなわち、いわゆるナトム(NATM)などにおいてロックボルトの周囲へ注入するグラウト材の削孔口元部からの流出を簡便かつ確実に阻止するための削孔の口元部に対する閉塞技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の地盤の安定化技術においてロックボルトを設置する場合には、地盤に形成した削孔に予めモルタルやコンクリートを充填しておき、その硬化前にロックボルトを打込むという方法や、地盤に形成した削孔にロックボルトを挿入し、その状態で削孔の口元部を閉塞した後、内部にセメントミルクやモルタルからなるグラウト材を注入するという方法が知られている。しかしながら、前者の方法は、トンネル工事において垂直状にロックボルトを設置する場合などにおいては、削孔に充填したモルタルやコンクリートが流下しないようにある程度、硬練りの状態で充填する必要があることから、削孔の隅々まで確実に充填するためには技術的な困難も伴った。その点、後者の方法は、流動性の大きいグラウト材の使用が可能であることから、削孔の隅々やロックボルトの周囲に確実に充填することが比較的容易である。
【0003】
ところで、後者の方法においては、削孔の口元部を閉塞する作業が含まれることになるが、その具体的な方法としては、焼石膏やモルタルを練って直接、口元部に形成される間隙部に充填するという方法が一般的に採られていた。しかしながら、練った焼石膏等を直接、削孔の口元部の間隙部に充填するという作業はそれほど簡単なものではなく、目標の間隙部に手際よく確実かつ効率的に充填するには熟練を要し、困難な作業であった。しかも、充填作業に手間がかかりすぎるとその充填物である硬化材がすぐ硬化してしまうため、手際よく充填することの困難性と相俟って、作業性がきわめてわるかった。さらに、使い易い状態に水の混合比を調整するためには手間がかかるため、この点でも作業性がわるかった。また、余分な焼石膏やモルタルの残存や、充填時における不要部分への付着などから硬化材の無駄が多く、効率的ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の技術的事情に鑑みてなされたもので、削孔の口元部の間隙部に対する硬化材の充填に関する作業性を改善するとともに、硬化材の無駄を削減し、さらに水の混合比の調整も簡便な口元閉塞技術を提供し、これにより地盤の安定化施工技術の向上に資することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、地盤に形成した削孔にロックボルトを挿入して仮止めするとともに、前記削孔の口元部とロックボルトとの間隙部を介して連通管を挿入し、さらにそれらの削孔の口元部とロックボルトと連通管との間に形成される間隙部に対して、通水性及び柔軟性を備えた袋体に速硬性を有する硬化材を収容してなる口元閉塞用具をそのまま水中に浸漬して袋体内の前記硬化材に水分を混合させた状態において充填することにより該間隙部を閉塞し、その袋体内の硬化材の硬化を待って、前記削孔とロックボルトとの空間部にセメントミルク、モルタル等からなる流動性のよいグラウト材を注入して硬化させるという技術手段を採用した。なお、前記硬化材を収容する袋体の形状として細長形状を採用すれば、削孔の口元部へ充填する場合に前記ロックボルトや連通管の周囲へ巻付けながら充填できるので更に作業性がよい。また、前記速硬性を有する硬化材としては、焼石膏や急結剤を混入したモルタルなどが用いられる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、地盤の安定化施工の過程において、削孔の口元部のロックボルトなどとの間に形成される間隙部からのグラウト材の流出を阻止するための措置の必要な施工方法には広く適用が可能であり、ロックボルトの周囲へのグラウト材の注入の仕方如何などには限定されるものではない。すなわち、ロックボルトとしてその軸心部に中空状の連通路を形成したものを使用するとともに、削孔の口元部に削孔の内外を連通するための連通管を挿入し、それらのロックボルトの軸心部の連通路と前記連通管とを用い、その一方をグラウト材の供給用の通路、他方を空気抜き及びグラウト材のオーバーフローによる充填状態検知用の通路としてグラウト材を充填する施工方法に適用できる。また同様に、ロックボルトとして連通路を有しない中実のものを使用するとともに、削孔の口元部にその内外を連通するための連通管を少なくとも2本挿入し、それらの連通管の一方をグラウト材の供給用の通路、他方を空気抜き及びグラウト材のオーバーフローによる充填状態検知用の通路として用いることによりグラウト材を充填する施工方法にも適用できる。
【0007】
前記袋体としては通水性及び柔軟性を備えるものであれば、特にその材料に限定されない。通水性に関しては、袋体を水中に浸漬した場合に内部に収容した硬化材に水分を供給し得るものであればよく、使用前の状態において内部に収容した粉末状の硬化材が多少外にもれたり、水中に浸漬した場合に多少外に漏出したりする程度のことは支障がない。また、柔軟性に関しては、袋体を水中に浸漬した際に水中で揉んで硬化材と水分の混合を促進したり、水中から取出して絞ることにより硬化材と水分の配分比を簡便に調整したりすることが可能であり、さらに袋体のまま前記削孔の口元部の間隙部に充填する場合に支障のない程度の柔軟性を有するものであればよい。因みに、袋体の材料としては、例えばメリヤスなどのような編成布や織成布、あるいは不織布などの布地や、多孔性を有するシート状の合成樹脂材などの使用が可能である。また、袋体の形状としては、細長形状を採用してロックボルトや連通管の周囲に巻付けながら間隙部に充填するようにしてもよいし、団子状の形状を採用して1つずつ間隙部に充填するようにしてもよい。さらに、それらの細長形状のものと団子状のものを併用することも可能である。なお、袋体の形状や大きさは充填対象である間隙部の状態に応じて選定すればよい。また、袋体の形成は、例えばそれらの布地を所定の幅及び長さからなる長方形に裁断して、硬化材の入口部を残して縁部を縫合した後、裏返すことにより所定の細長形状の袋体に形成するなどの一般的な袋の作成法でよいが、これに限定される必要のないことはいうまでもない。
【0008】
なお、袋体の内部には、焼石膏等の硬化材を所定量、例えば袋体の内容積の1/5程度投入した後、入口部を縫合したり結束することにより、硬化材を袋体内に収容した形の口元閉塞用具を形成する。この場合、硬化材の投入量が多すぎると、ロックボルトに巻付けたり口元部の間隙部に充填する際の柔軟性を奪うことになるので適度に調整する。なお、袋体の前記入口部に対する閉塞用の結束具自体として長めのものを用いたり、あるいは別に袋体にワンタッチで着脱可能な結合手段や接着機能を有する結束具等を付設しておき、袋体をロックボルト等に巻付ける際の結束用として用いれば便利である。
【0009】
前記袋体内に収容する速硬性を有する硬化材としては、削孔の口元部に形成される間隙部への充填作業を余裕をもって実行できる程度の時間内は変形可能な軟らかい状態にあり、充填作業の終了後は比較的速やかに硬化するとともに、ロックボルトの周囲に注入されるグラウト材の圧力に打勝って流出を阻止できる閉塞強度を発揮できるものが使用される。すなわち、充填作業に必要な作業時間、例えば30秒程度の時間が経過した後に硬化し、十分な強度を有する硬化材を選定して使用することになる。その具体例としては、例えば、焼石膏や、アルミナセメントなどの公知の急結剤を加え、凝結調整剤を添加して硬化時間を適当に調整したモルタルなどが使用される。要は、具体的な工事の規模や施工の手順などを勘案して削孔の口元部の閉塞のための充填作業にかかる所要時間を求め、それに適した硬化時間の硬化材を他のコスト等の条件と総合しながら自由に選定すればよい。
【0010】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1は本発明に係る施工方法の第1実施例として軸心部に連通孔を形成した全ねじボルトをロックボルトとして用いた場合の施工途中の状態を示した縦断面図であり、図2は同第2実施例として中実状のねじ鉄筋をロックボルトとして用いた場合の施工途中の状態を示した縦断面図である。なお、以下、両実施例共、ロックボルトを上方へ向けて略垂直状態に設置する場合を例にして説明することとするが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の設置状態に適用できるものである。図1に示したように、第1実施例においては、地盤1に略垂直状態に形成した削孔2に全ねじボルトからなるロックボルト3を挿入して適宜の固定具4により仮止めする。本実施例においては、固定具4として、バネ材から構成され、ロックボルト3の外周面のねじ部等に食込んでその軸方向に対して固定されるとともに、先端がバネ力により削孔2の内面に食込んで後退を阻止する羽根状の片部を間隔をあけて形成した従来一般に使用されている固定具を用い、その固定具4を介してロックボルト3を削孔2に対して所定状態に仮止めしている。このロックボルト3の仮止め作業が終了した後、本実施例の場合においては、削孔2の口元部にグラウト材柱入用の連通管5を挿入し、削孔2とロックボルト3と連通管5との間隙部を後述のように本発明の特徴である前述の硬化材を袋体内に収容した口元閉塞用具6を用いて充填閉塞した上、座金7を介してナット8により仮締めすることにより前記口元閉塞用具6の充填状態を保持する。そして、口元閉塞用具6内の硬化材の硬化を待って、前記連通管5を介して適宜のグラウト材をロックボルト3の周囲の空間部に注入することになる。この場合、注入されたグラウト材は削孔2の口元部を閉塞した口元閉塞用具6の部分から順次上方へ向けて充填され、ロックボルト3の上部に形成した排出口9以上にグラウト材が達した場合には、その一部が排出口9及びロックボルト3の軸心部に形成された連通孔10を介してロックボルト3の下端部から外部へ流出されるので、充填の状態を確認することができる。グラウト材の充填が確認されたら、連通管5の外部側の途中から折曲げるなどして通路を閉じるとともに連通孔10からの流出を止めて、グラウト材の硬化を待って更にナット8の本締めを行うことにより設置作業を終了する。
【0011】
次に、図2に示した第2実施例に関して説明する。本実施例は、前記第1実施例と同様の構成部分には同一の符号を付して説明すると、ロックボルトとして中実状のねじ鉄筋からなるロックボルト11を採用した点と、前記連通孔10の代りに排出用の連通管12を追加した点で前述の第1実施例と異なるだけで、他に基本的に異なるところはない。その施工方法においても、削孔2の口元部の間隙部に対する口元閉塞用具6による充填閉塞作業後、ロックボルト11の周囲にグラウト材を注入した場合における充填状態の確認方法が異なるだけである。すなわち、グラウト材の注入において、第1実施例と同様に連通管5を介してグラウト材を注入すると、口元閉塞用具6の部分から順次上方へ向けて充填されるところまでは同様であり、その充填状態がロックボルト11の上端部近傍に開口した連通管12を介して一部が下端部から外部へ流出することにより確認する点で異なるだけである。したがって、次の前記口元閉塞用具6を用いた削孔2の口元部の閉塞作業に関する説明も第1実施例と共通するものである。
【0012】
次に、図3〜図6を用いて本発明の特徴部分である口元閉塞用具6を用いた削孔2の口元部の間隙部に対する閉塞作業に関して説明する。以下の説明は前記第1実施例を例に説明するが、前述のように第2実施例にも共通するものである。図3に示したように、本実施例においては、口元閉塞用具6として細長形状の袋体13の内部にその内容積の1/5程度の焼石膏等の硬化材14を収容し、入口部を縫合手段15等により閉じたものを用いている。前述のように、ロックボルト3の仮止め作業が終った場合には前記口元部の閉塞作業に入るわけであるが、その準備行為として、図4に示したように適宜の容器16中の水中に口元閉塞用具6を浸漬しながら揉むことにより袋体13を通して内部の硬化材14に水分を適度に混合させる。しかる後、口元閉塞用具6を水中より取出して適度に絞ることにより余分な水分を放出して使い勝手のよい適当な硬化材14と水分との混合比に調整する。
【0013】
以上の準備が済んだら、図5に示した図1の部分拡大図及び図6に示したそのA−A断面図に示したように、削孔2の口元部とロックボルト3と連通管5との間に形成される間隙部に前記口元閉塞用具6を充填することになる。この場合には、例えば先ず口元閉塞用具6の一端部を連通管5に巻付け、しかる後、図6中に矢印で示したようにロックボルト3の周囲に巻付けて前記間隙部を閉塞するように充填すれば、1本の細長形状の口元閉塞用具6を用いて簡便に閉塞することも可能である。なお、この場合、口元閉塞用具6の長さを増減してその巻き数を調整したり、複数の細長形状の口元閉塞用具6を使用したり、細長形状の口元閉塞用具6と団子状の口元閉塞用具6を併用したりすることができる。以上のように、本発明においては一つ一つの口元閉塞用具6が、硬化材14を袋体13に収容したままの形態で取扱われるので、使い勝手がきわめてよく、かつ従来の硬化材14の無駄を削減でき、しかもその作業性を大幅に改善することができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)本口元閉塞用具は焼石膏等の硬化材を通気性及び柔軟性を備えた袋体に収容した状態に構成し、その袋体に収容したままの形態で取扱うので、取扱いが簡便で、使い勝手がきわめてよく、削孔の口元部の間隙部への充填作業が大幅に改善される。
(2)使用時に水を混合するに際しては、袋体に硬化材を収容したままの状態で水中に浸漬するだけでよいから、その作業性が大幅に改善されるとともに、従来のように余分な硬化材の残存による無駄を削減することができる。
(3)水の混合比に関する調整は、袋体に硬化材を収容したままの状態で水中に浸漬した後、水中より取出してそのまま適度に絞り余分な水分を袋体から放出することによりきわめて簡便に行うことができる。
(4)硬化材を収容する袋体の形状として細長形状を採用した場合には、削孔の口元部へ充填する場合にロックボルトや連通管の周囲へ巻付けながら充填できるので更に作業性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の施工方法に関する第1実施例の施工途中の状態を示した縦断面図である。
【図2】 本発明の施工方法に関する第2実施例の施工途中の状態を示した縦断面図である。
【図3】 本発明の口元閉塞用具に関する実施例を示した一部省略正面図である。
【図4】 前記口元閉塞用具の使用準備作業を示した説明図である。
【図5】 図1の部分拡大図である。
【図6】 図5中に指示したA−A断面図である。
【符号の説明】
1…地盤、2…削孔、3…ロックボルト、4…固定具、5…連通管、6…口元閉塞用具、7…座金、8…ナット、9…排出口、10…連通孔、11…ロックボルト、12…連通管、13…袋体、14…硬化材、15…縫合手段、16…容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル工事における地山などの地盤を安定化して崩落等を防止するための地盤の安定化技術に関する。より詳しくは、トンネルの掘削においてロックボルトの設置と覆工コンクリートの吹付けを主体に施工する新オーストリアントンネル工法、すなわち、いわゆるナトム(NATM)などにおいてロックボルトの周囲へ注入するグラウト材の削孔口元部からの流出を簡便かつ確実に阻止するための削孔の口元部に対する閉塞技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の地盤の安定化技術においてロックボルトを設置する場合には、地盤に形成した削孔に予めモルタルやコンクリートを充填しておき、その硬化前にロックボルトを打込むという方法や、地盤に形成した削孔にロックボルトを挿入し、その状態で削孔の口元部を閉塞した後、内部にセメントミルクやモルタルからなるグラウト材を注入するという方法が知られている。しかしながら、前者の方法は、トンネル工事において垂直状にロックボルトを設置する場合などにおいては、削孔に充填したモルタルやコンクリートが流下しないようにある程度、硬練りの状態で充填する必要があることから、削孔の隅々まで確実に充填するためには技術的な困難も伴った。その点、後者の方法は、流動性の大きいグラウト材の使用が可能であることから、削孔の隅々やロックボルトの周囲に確実に充填することが比較的容易である。
【0003】
ところで、後者の方法においては、削孔の口元部を閉塞する作業が含まれることになるが、その具体的な方法としては、焼石膏やモルタルを練って直接、口元部に形成される間隙部に充填するという方法が一般的に採られていた。しかしながら、練った焼石膏等を直接、削孔の口元部の間隙部に充填するという作業はそれほど簡単なものではなく、目標の間隙部に手際よく確実かつ効率的に充填するには熟練を要し、困難な作業であった。しかも、充填作業に手間がかかりすぎるとその充填物である硬化材がすぐ硬化してしまうため、手際よく充填することの困難性と相俟って、作業性がきわめてわるかった。さらに、使い易い状態に水の混合比を調整するためには手間がかかるため、この点でも作業性がわるかった。また、余分な焼石膏やモルタルの残存や、充填時における不要部分への付着などから硬化材の無駄が多く、効率的ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の技術的事情に鑑みてなされたもので、削孔の口元部の間隙部に対する硬化材の充填に関する作業性を改善するとともに、硬化材の無駄を削減し、さらに水の混合比の調整も簡便な口元閉塞技術を提供し、これにより地盤の安定化施工技術の向上に資することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、地盤に形成した削孔にロックボルトを挿入して仮止めするとともに、前記削孔の口元部とロックボルトとの間隙部を介して連通管を挿入し、さらにそれらの削孔の口元部とロックボルトと連通管との間に形成される間隙部に対して、通水性及び柔軟性を備えた袋体に速硬性を有する硬化材を収容してなる口元閉塞用具をそのまま水中に浸漬して袋体内の前記硬化材に水分を混合させた状態において充填することにより該間隙部を閉塞し、その袋体内の硬化材の硬化を待って、前記削孔とロックボルトとの空間部にセメントミルク、モルタル等からなる流動性のよいグラウト材を注入して硬化させるという技術手段を採用した。なお、前記硬化材を収容する袋体の形状として細長形状を採用すれば、削孔の口元部へ充填する場合に前記ロックボルトや連通管の周囲へ巻付けながら充填できるので更に作業性がよい。また、前記速硬性を有する硬化材としては、焼石膏や急結剤を混入したモルタルなどが用いられる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、地盤の安定化施工の過程において、削孔の口元部のロックボルトなどとの間に形成される間隙部からのグラウト材の流出を阻止するための措置の必要な施工方法には広く適用が可能であり、ロックボルトの周囲へのグラウト材の注入の仕方如何などには限定されるものではない。すなわち、ロックボルトとしてその軸心部に中空状の連通路を形成したものを使用するとともに、削孔の口元部に削孔の内外を連通するための連通管を挿入し、それらのロックボルトの軸心部の連通路と前記連通管とを用い、その一方をグラウト材の供給用の通路、他方を空気抜き及びグラウト材のオーバーフローによる充填状態検知用の通路としてグラウト材を充填する施工方法に適用できる。また同様に、ロックボルトとして連通路を有しない中実のものを使用するとともに、削孔の口元部にその内外を連通するための連通管を少なくとも2本挿入し、それらの連通管の一方をグラウト材の供給用の通路、他方を空気抜き及びグラウト材のオーバーフローによる充填状態検知用の通路として用いることによりグラウト材を充填する施工方法にも適用できる。
【0007】
前記袋体としては通水性及び柔軟性を備えるものであれば、特にその材料に限定されない。通水性に関しては、袋体を水中に浸漬した場合に内部に収容した硬化材に水分を供給し得るものであればよく、使用前の状態において内部に収容した粉末状の硬化材が多少外にもれたり、水中に浸漬した場合に多少外に漏出したりする程度のことは支障がない。また、柔軟性に関しては、袋体を水中に浸漬した際に水中で揉んで硬化材と水分の混合を促進したり、水中から取出して絞ることにより硬化材と水分の配分比を簡便に調整したりすることが可能であり、さらに袋体のまま前記削孔の口元部の間隙部に充填する場合に支障のない程度の柔軟性を有するものであればよい。因みに、袋体の材料としては、例えばメリヤスなどのような編成布や織成布、あるいは不織布などの布地や、多孔性を有するシート状の合成樹脂材などの使用が可能である。また、袋体の形状としては、細長形状を採用してロックボルトや連通管の周囲に巻付けながら間隙部に充填するようにしてもよいし、団子状の形状を採用して1つずつ間隙部に充填するようにしてもよい。さらに、それらの細長形状のものと団子状のものを併用することも可能である。なお、袋体の形状や大きさは充填対象である間隙部の状態に応じて選定すればよい。また、袋体の形成は、例えばそれらの布地を所定の幅及び長さからなる長方形に裁断して、硬化材の入口部を残して縁部を縫合した後、裏返すことにより所定の細長形状の袋体に形成するなどの一般的な袋の作成法でよいが、これに限定される必要のないことはいうまでもない。
【0008】
なお、袋体の内部には、焼石膏等の硬化材を所定量、例えば袋体の内容積の1/5程度投入した後、入口部を縫合したり結束することにより、硬化材を袋体内に収容した形の口元閉塞用具を形成する。この場合、硬化材の投入量が多すぎると、ロックボルトに巻付けたり口元部の間隙部に充填する際の柔軟性を奪うことになるので適度に調整する。なお、袋体の前記入口部に対する閉塞用の結束具自体として長めのものを用いたり、あるいは別に袋体にワンタッチで着脱可能な結合手段や接着機能を有する結束具等を付設しておき、袋体をロックボルト等に巻付ける際の結束用として用いれば便利である。
【0009】
前記袋体内に収容する速硬性を有する硬化材としては、削孔の口元部に形成される間隙部への充填作業を余裕をもって実行できる程度の時間内は変形可能な軟らかい状態にあり、充填作業の終了後は比較的速やかに硬化するとともに、ロックボルトの周囲に注入されるグラウト材の圧力に打勝って流出を阻止できる閉塞強度を発揮できるものが使用される。すなわち、充填作業に必要な作業時間、例えば30秒程度の時間が経過した後に硬化し、十分な強度を有する硬化材を選定して使用することになる。その具体例としては、例えば、焼石膏や、アルミナセメントなどの公知の急結剤を加え、凝結調整剤を添加して硬化時間を適当に調整したモルタルなどが使用される。要は、具体的な工事の規模や施工の手順などを勘案して削孔の口元部の閉塞のための充填作業にかかる所要時間を求め、それに適した硬化時間の硬化材を他のコスト等の条件と総合しながら自由に選定すればよい。
【0010】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1は本発明に係る施工方法の第1実施例として軸心部に連通孔を形成した全ねじボルトをロックボルトとして用いた場合の施工途中の状態を示した縦断面図であり、図2は同第2実施例として中実状のねじ鉄筋をロックボルトとして用いた場合の施工途中の状態を示した縦断面図である。なお、以下、両実施例共、ロックボルトを上方へ向けて略垂直状態に設置する場合を例にして説明することとするが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の設置状態に適用できるものである。図1に示したように、第1実施例においては、地盤1に略垂直状態に形成した削孔2に全ねじボルトからなるロックボルト3を挿入して適宜の固定具4により仮止めする。本実施例においては、固定具4として、バネ材から構成され、ロックボルト3の外周面のねじ部等に食込んでその軸方向に対して固定されるとともに、先端がバネ力により削孔2の内面に食込んで後退を阻止する羽根状の片部を間隔をあけて形成した従来一般に使用されている固定具を用い、その固定具4を介してロックボルト3を削孔2に対して所定状態に仮止めしている。このロックボルト3の仮止め作業が終了した後、本実施例の場合においては、削孔2の口元部にグラウト材柱入用の連通管5を挿入し、削孔2とロックボルト3と連通管5との間隙部を後述のように本発明の特徴である前述の硬化材を袋体内に収容した口元閉塞用具6を用いて充填閉塞した上、座金7を介してナット8により仮締めすることにより前記口元閉塞用具6の充填状態を保持する。そして、口元閉塞用具6内の硬化材の硬化を待って、前記連通管5を介して適宜のグラウト材をロックボルト3の周囲の空間部に注入することになる。この場合、注入されたグラウト材は削孔2の口元部を閉塞した口元閉塞用具6の部分から順次上方へ向けて充填され、ロックボルト3の上部に形成した排出口9以上にグラウト材が達した場合には、その一部が排出口9及びロックボルト3の軸心部に形成された連通孔10を介してロックボルト3の下端部から外部へ流出されるので、充填の状態を確認することができる。グラウト材の充填が確認されたら、連通管5の外部側の途中から折曲げるなどして通路を閉じるとともに連通孔10からの流出を止めて、グラウト材の硬化を待って更にナット8の本締めを行うことにより設置作業を終了する。
【0011】
次に、図2に示した第2実施例に関して説明する。本実施例は、前記第1実施例と同様の構成部分には同一の符号を付して説明すると、ロックボルトとして中実状のねじ鉄筋からなるロックボルト11を採用した点と、前記連通孔10の代りに排出用の連通管12を追加した点で前述の第1実施例と異なるだけで、他に基本的に異なるところはない。その施工方法においても、削孔2の口元部の間隙部に対する口元閉塞用具6による充填閉塞作業後、ロックボルト11の周囲にグラウト材を注入した場合における充填状態の確認方法が異なるだけである。すなわち、グラウト材の注入において、第1実施例と同様に連通管5を介してグラウト材を注入すると、口元閉塞用具6の部分から順次上方へ向けて充填されるところまでは同様であり、その充填状態がロックボルト11の上端部近傍に開口した連通管12を介して一部が下端部から外部へ流出することにより確認する点で異なるだけである。したがって、次の前記口元閉塞用具6を用いた削孔2の口元部の閉塞作業に関する説明も第1実施例と共通するものである。
【0012】
次に、図3〜図6を用いて本発明の特徴部分である口元閉塞用具6を用いた削孔2の口元部の間隙部に対する閉塞作業に関して説明する。以下の説明は前記第1実施例を例に説明するが、前述のように第2実施例にも共通するものである。図3に示したように、本実施例においては、口元閉塞用具6として細長形状の袋体13の内部にその内容積の1/5程度の焼石膏等の硬化材14を収容し、入口部を縫合手段15等により閉じたものを用いている。前述のように、ロックボルト3の仮止め作業が終った場合には前記口元部の閉塞作業に入るわけであるが、その準備行為として、図4に示したように適宜の容器16中の水中に口元閉塞用具6を浸漬しながら揉むことにより袋体13を通して内部の硬化材14に水分を適度に混合させる。しかる後、口元閉塞用具6を水中より取出して適度に絞ることにより余分な水分を放出して使い勝手のよい適当な硬化材14と水分との混合比に調整する。
【0013】
以上の準備が済んだら、図5に示した図1の部分拡大図及び図6に示したそのA−A断面図に示したように、削孔2の口元部とロックボルト3と連通管5との間に形成される間隙部に前記口元閉塞用具6を充填することになる。この場合には、例えば先ず口元閉塞用具6の一端部を連通管5に巻付け、しかる後、図6中に矢印で示したようにロックボルト3の周囲に巻付けて前記間隙部を閉塞するように充填すれば、1本の細長形状の口元閉塞用具6を用いて簡便に閉塞することも可能である。なお、この場合、口元閉塞用具6の長さを増減してその巻き数を調整したり、複数の細長形状の口元閉塞用具6を使用したり、細長形状の口元閉塞用具6と団子状の口元閉塞用具6を併用したりすることができる。以上のように、本発明においては一つ一つの口元閉塞用具6が、硬化材14を袋体13に収容したままの形態で取扱われるので、使い勝手がきわめてよく、かつ従来の硬化材14の無駄を削減でき、しかもその作業性を大幅に改善することができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)本口元閉塞用具は焼石膏等の硬化材を通気性及び柔軟性を備えた袋体に収容した状態に構成し、その袋体に収容したままの形態で取扱うので、取扱いが簡便で、使い勝手がきわめてよく、削孔の口元部の間隙部への充填作業が大幅に改善される。
(2)使用時に水を混合するに際しては、袋体に硬化材を収容したままの状態で水中に浸漬するだけでよいから、その作業性が大幅に改善されるとともに、従来のように余分な硬化材の残存による無駄を削減することができる。
(3)水の混合比に関する調整は、袋体に硬化材を収容したままの状態で水中に浸漬した後、水中より取出してそのまま適度に絞り余分な水分を袋体から放出することによりきわめて簡便に行うことができる。
(4)硬化材を収容する袋体の形状として細長形状を採用した場合には、削孔の口元部へ充填する場合にロックボルトや連通管の周囲へ巻付けながら充填できるので更に作業性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の施工方法に関する第1実施例の施工途中の状態を示した縦断面図である。
【図2】 本発明の施工方法に関する第2実施例の施工途中の状態を示した縦断面図である。
【図3】 本発明の口元閉塞用具に関する実施例を示した一部省略正面図である。
【図4】 前記口元閉塞用具の使用準備作業を示した説明図である。
【図5】 図1の部分拡大図である。
【図6】 図5中に指示したA−A断面図である。
【符号の説明】
1…地盤、2…削孔、3…ロックボルト、4…固定具、5…連通管、6…口元閉塞用具、7…座金、8…ナット、9…排出口、10…連通孔、11…ロックボルト、12…連通管、13…袋体、14…硬化材、15…縫合手段、16…容器
Claims (4)
- 地盤に形成した削孔にロックボルトを挿入して仮止めするとともに、前記削孔の口元部とロックボルトとの間隙部を介して連通管を挿入し、さらにそれらの削孔の口元部とロックボルトと連通管との間に形成される間隙部に対して、通水性及び柔軟性を備えた袋体に速硬性を有する硬化材を収容してなる口元閉塞用具をそのまま水中に浸漬して袋体内の前記硬化材に水分を混合させた状態において充填することにより該間隙部を閉塞し、その袋体内の硬化材の硬化を待って、前記削孔とロックボルトとの空間部にセメントミルク、モルタル等からなる流動性のよいグラウト材を注入して硬化させることを特徴とする地盤の安定化施工方法。
- 通水性及び柔軟性を備えた袋体に速硬性を有する硬化材を収容し、地盤の安定化工法において削孔の口元部の間隙部を閉塞するに際して、その袋体のまま水中に浸漬して袋体内の前記硬化材に水分を混合させた状態において前記削孔の口元部の間隙部に充填することにより、該間隙部を速やかに硬化閉塞することを特徴とする削孔の口元閉塞用具。
- 前記袋体が細長形状からなることを特徴とする請求項2記載の削孔の口元閉塞用具。
- 前記速硬性を有する硬化材として焼石膏を用いたことを特徴とする請求項2又は3記載の削孔の口元閉塞用具。
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