JPH079932Y2 - 外壁構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、軽量気泡コンクリ―ト
板から成る外壁パネルを使用した建築物の外壁構造に関
するものであり、特に、窓、テラス戸等の開口部を含ん
だ外壁構造に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来よりプレハブ住宅の一つとして、軽
量気泡コンクリ―ト板（以下、ＡＬＣ板と呼ぶ）を外壁
に使用したものが採用されている。ＡＬＣ板は断熱性、
耐火性、耐久性、防音性に優れており、しかもパネル自
体を工場で予め用意しておくことができるため、現場で
の作業が少なく、高いプレハブ効率を発揮することがで
きる。このような利点を備えたＡＬＣ板は、今後のコン
クリ―ト系建築物の主流となるものであり、高い関心を
集めている。

【０００３】ところで建築物の外壁には、窓、テラス戸
あるいは出入口といった開口部が不可欠であるが、これ
らの開口部に対して窓枠等のサッシを現場で取付けてい
ると、プレハブ効率が低下することになる。そこで本出
願人は、所定の枠組に対して、必要とする窓枠等のサッ
シ或いはその周囲のＡＬＣ板から成る壁パネルまでも、
予め工場で一体に取付けた外壁パネルを提案した。この
外壁パネルは縦横の枠材を枠状（格子状）に組上げて成
る開口パネルであり、その枠材間の開口部分にサッシを
装着すると共に、サッシが組込まれない開口部分にＡＬ
Ｃ板から成る壁パネルを固定したものである。このよう
な開口パネルを外壁構造に含めることによって、建築物
における外壁のプレハブ効率を一層、高めることができ
る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】ところが上記の開口パ
ネルを備えた外壁構造には、次のような問題点が指摘さ
れていた。すなわち開口パネルに固定される壁パネル
は、断熱、耐火、強度、防音等の諸性能を維持するため
に、開口パネルに隣接する外壁パネルと同一の肉厚のも
のが望ましい。しかし開口パネル用の壁パネルは、枠組
の室外側の側縁部に固定される。そのため、壁パネルと
外壁パネルとの外面を揃えようとすれば枠組が室内側に
突出することになる。したがって、室内側が狭くなり、
且つ内装の下地材が取り付け難くなる。

【０００５】一方、室内側を平坦にしようとすれば隣接
する外壁パネルから見て枠組の肉厚分だけ、壁パネルが
室外側に突出することになり、外壁構造の外観が劣化す
る。しかも枠組は、輸送の際に開口パネルが変形しない
よう開口パネル全体の１／２程度という厚い肉厚を有し
ている。そのため、室内外へ突出する量はかなり大き
く、前記の問題は深刻である。

【０００６】このような問題を解消するためには、開口
パネルに固定される壁パネルの肉厚を枠組の肉厚分だけ
薄くして、開口パネルの肉厚と、開口のない外壁パネル
の肉厚とを等しくすることが考えられる。しかしこの場
合、壁パネルの断熱、耐火、強度、防音等の諸性能が低
くなる。つまり外壁構造の性能が全体を通して均等では
なく、信頼性が低下するという不具合が生じる。また開
口パネルの肉厚と、開口のない外壁パネルの肉厚とを等
しくするといっても、壁パネルが固定される枠組を室内
側から見れば、この枠組部分の内周は中空のままであ
る。したがって、そこに内装側の梁や柱を固定すること
は困難であった。

【０００７】以上のように壁パネルの肉厚を減らして開
口パネルと開口のない外壁パネルとの肉厚を等しくした
にせよ、それはあくまでも外見上だけのことであり、両
パネルの実質的な肉厚は相違している。そこで内装側に
は、取り付けられるパネルの種類に応じた取付部材を配
設する必要があり、開口パネルと、開口のない外壁パネ
ルとの取付位置を相互に交換することは困難であった。

【０００８】したがって従来の外壁構造においては、設
計変更や増改築が要求されると、外壁構造を構成する複
数のパネル内において、これに対応することができな
い。２世帯住宅に対する需要の増大など、住宅に対する
ニーズが多様化している現在、プレハブ効率の高い外壁
構造においては特に、上記のような問題点を解決するこ
とが要望されている。

【０００９】本考案は、上述したような従来技術の問題
点に鑑みて提案されたもので、その目的は、統一した外
観を確保し、優れた信頼性および取付作業性を発揮する
と共に、両者の取付位置を相互に交換可能にして設計変
更や増改築などに容易に対応できる外壁構造を提供する
ことにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本考案の外壁構造は、縦枠と横枠とを矩形に組上
げて成る枠組に対してその開口部分の一部に開口用のサ
ッシを組込む開口パネルと、該開口パネルに隣接する軽
量気泡コンクリート板から成る開口のない外壁パネルと
から構成されており、前記開口パネルにおける前記サッ
シが組込まれない開口部分の室外側には、軽量気泡コン
クリート板から成る壁パネルが固定され、この壁パネル
の室内側には、前記枠組の肉厚相当の厚さを持つ内側部
材が枠組の内周に嵌め込まれるように装着され、開口パ
ネルに固定される壁パネルと枠組との合計肉厚が、開口
のない外壁パネルの合計肉厚と等しく設定されているこ
とを構成上の特徴とする。

【００１１】

【作用】上記のような構成を有する本考案においては、
開口パネルと、開口のない外壁パネルとの肉厚が等しい
ため、両パネルの取付位置を容易に交換することができ
る。と同時に、壁パネルが外壁パネルから室外側へ突出
したり、枠組が室内側に突出したりすることがないた
め、室内側は広くなり、且つ内装の下地材が取り付け易
い。しかも軽量気泡コンクリート板から成るパネルが連
続しているので、統一した外観を確保することができ
る。

【００１２】また、壁パネルの室内側に位置する枠組の
内周には内側部材を嵌め込んでいるため、壁パネルの肉
厚が薄く設定されても、外壁構造全体から見れば、強
度、断熱、耐火、防音等の諸性能を均一に維持すること
ができる。さらにこの内側部材を介して開口パネルを内
装側の梁や柱を容易に固定することができる。

【００１３】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図１乃至図３に従
って具体的に説明する。図１は本考案の外壁構造を示す
平面図、図２は本実施例に含まれる開口パネルを室内側
から見た正面図、図３は図２のＢ−Ｂ線の拡大断面図で
ある。

【００１４】本考案の外壁構造は、開口パネルＱと、こ
の開口パネルＱに隣接する開口のない外壁パネルＰとか
ら構成されている。このうち外壁パネルＰは、軽量気泡
コンクリート板から構成され、その肉厚は開口パネルＱ
の肉厚と等しく設定されている。

【００１５】一方、開口パネルＱは図２に示すように縦
枠１と横枠２とを矩形に組上げた枠組から成り、その開
口部分の中央上部には開口用のサッシＳが組込まれてい
る。また、図１に示す如く、横枠２の端部には中央に係
合突起３を持つ断面帽子状の連結金具４が溶接等の手段
で固定され、その内側にナット５が溶接されている。こ
の連結金具４の係合突起３は、縦枠１に設けられた凹部
６内に嵌合され、縦枠１の内側から挿入したボルト７を
前記ナット５に締付けることにより、縦枠１と横枠２と
が連結されている。

【００１６】また開口パネルＱにおいてサッシＳが組込
まれていない開口部分の室外側には、軽量気泡コンクリ
ート板から成る壁パネル８が固定されている。より詳細
には、前記横枠２の端部に固定された連結金具４の室外
側端部を横枠２表面に沿って屈曲させ、その部分をパネ
ル固定面９とし、このパネル固定面９に対して壁パネル
８を当接させた状態で、壁パネル８の室外側から固定用
のねじ１０を挿入することで、壁パネル８を固定面９に
固定している。この場合、ねじ１０の頭部は、壁パネル
８表面に形成した凹部内に埋設されている。

【００１７】また、壁パネル８の上下端部は、図３の如
く、横枠２の室外側に位置している。すなわち、壁パネ
ル８の上部はサッシＳを支持している横枠２ａの室外側
にパネル固定面９を介して固定され、また壁パネル８の
下部は、下辺の横枠２ｂの下面に溶接された断面クラン
ク状の支持金具１４に固定されている。さらに壁パネル
８の室内側には、枠１，２の肉厚相当の厚さを持つ内側
部材２０が枠１，２の内周に嵌め込まれるように装着さ
れている。この内側部材２０は、壁パネル８と同様、Ａ
ＬＣ板から構成され、図示しないねじを使用して連結金
具４のパネル固定面９に固定されている。なお、開口パ
ネルＱの肉厚は、壁パネル８の肉厚と、枠１，２の肉厚
との合計である。

【００１８】さらに図３に示すように、下辺の横枠２ｂ
内部にはナット１５が溶接され、このナット１５に挿入
したボルト１６により締付け金具１７を梁１８に締付け
ることにより、開口パネルＱが建物の躯体に固定され
る。また図示はしないが、開口パネルＱの上部において
も、横枠２内にナットが溶接され、それを利用して開口
パネルＱ上部も建物の梁に固定されている。

【００１９】上記のような構成を有する本考案において
は、開口パネルＱと、開口のない外壁パネルＰとの肉厚
が等しいため、両パネルＱ，Ｐとの取付位置を容易に交
換することが可能である。したがって、外壁構造を構成
する複数のパネル内において、設計変更や増改築などに
即座に応えることができる。このような効果は、元来、
高いプレハブ効率を発揮するＡＬＣ板から成る外壁構造
において、特に有効である。

【００２０】しかも、両パネルＱ，Ｐの肉厚が等しいの
で、壁パネル８が外壁パネルＰから室外側へ突出した
り、枠１，２が室内側に突出したりすることがない。そ
のため、室内側は広くなり、且つ内装の下地材は取り付
け易くなる。しかも外観上も、軽量気泡コンクリート板
から成るパネルが連続しているので、統一した美しい外
観を確保できる。

【００２１】また、壁パネル８の室内側に位置する枠
１，２の内周に内側部材２０を嵌め込んでいるため、壁
パネル８の肉厚が薄く設定されても、外壁構造の全体を
通して、断熱、耐火、強度、防音等の諸性能を低い箇所
がなく、優れた信頼性を発揮することができる。さらに
内側部材２０を介して開口パネルＱを内装側の梁１８な
どに容易に固定できる。そのため、外壁構造を構成する
パネルのうち、開口パネルＱおよび開口のないパネルＰ
というパネルの種類を問わず、均一の簡便さで内装側に
取付けることが可能である。

【００２２】なお、本考案は上記実施例に限定されるも
のではなく、例えば内側部材２０の素材としては、ＡＬ
Ｃ板以外に、ファイバ―グラス、発泡スチロ―ル、ウレ
タン等の断熱材の使用が可能であり、また、その取付手
段としても、外側壁パネルや縦枠或いは横枠に対する接
着等種々の手段を適宜選択できる。また上記実施例で
は、壁パネル８を連結金具の固定面９に固定したが、縦
枠１に直接固定することもできる。

【００２３】

【考案の効果】以上述べたように、本考案によれば、肉
厚寸法を等しく設定した開口パネルと、開口のない外壁
パネルとから外壁構造を構成すると共に、開口パネルに
おけるサッシが組込まれない開口部分の室外側に軽量気
泡コンクリート板から成る壁パネルを固定し、この壁パ
ネルの室内側に枠組の肉厚相当の厚さを持つ内側部材を
嵌め込むことによって、統一した外観を確保し、優れた
信頼性および取付作業性を発揮でき、さらには両者の取
付位置を相互に交換して設計変更や増改築などに容易に
対応することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の平面図

【図２】本実施例に含まれる開口パネルを室内側から見
た正面図

【図３】図２のＢ−Ｂ線の拡大断面図

【符号の説明】

Ｓ…サッシ Ｐ…隣接する壁パネル １…縦枠 ２…横枠 ３…係合突起 ４…連結金具 ５…ナット ６…係合凹部 ７…ボルト ８…壁パネル ９…パネル固定面 １０…ねじ １４…支持金具 １５…ナット １６…ボルト １７…締付け金具 １８…梁 ２０…内側部材

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 縦枠と横枠とを矩形に組上げて成る枠組
   に対してその開口部分の一部に開口用のサッシを組込む
   開口パネルと、該開口パネルに隣接する軽量気泡コンク
   リート板から成る開口のない外壁パネルとから構成され
   る外壁構造において、 前記開口パネルにおける前記サッシが組込まれない開口
   部分の室外側には、軽量気泡コンクリート板から成る壁
   パネルが固定され、 前記壁パネルの室内側には、前記枠組の肉厚相当の厚さ
   を持つ内側部材が枠組の内周に嵌め込まれるように装着
   され、 開口パネルに固定される壁パネルと枠組との合計肉厚
   が、開口のない外壁パネルの合計肉厚と等しく設定され
   ていることを特徴とする外壁構造。