JPH0790716A - 潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸 - Google Patents

潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸

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JPH0790716A
JPH0790716A JP5252101A JP25210193A JPH0790716A JP H0790716 A JPH0790716 A JP H0790716A JP 5252101 A JP5252101 A JP 5252101A JP 25210193 A JP25210193 A JP 25210193A JP H0790716 A JPH0790716 A JP H0790716A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 分散染料可染性の太細斑ポリエステルフィラ
メント及びカチオン染料可染性の太細斑ポリエステルフ
ィラメントからなり、分散染料及びカチオン染料で染色
したときに糸の長さ方向に沿った任意の1点において最
大で1cmの長さの範囲内で3色以上の色に染色され且
つ10%以下の捲縮性を有する潜在微捲縮性ポリエステ
ル太細斑糸、該糸からなる布帛、並びにそれらをアルカ
リ処理して得た多数の切れ毛羽を有する糸または布帛。 【効果】 本発明の潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸
及び布帛は、3色以上の色が微細に且つランダムに分散
する多色杢調の色調を有し、その多色杢表現が極端に強
すぎたり弱過ぎたりせずに全体に微細に分布しているた
めに自然で深みのある優れた色調を有し、熱処理により
10%以下の捲縮を発現し、またアルカリ処理を施した
ものは多数の切れ毛羽を有していることによって、ウー
ル様の自然なふくらみ感を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリエステル太細斑糸お
よびそれから製造された布帛に関する。詳細には、本発
明は太細斑を有するポリエステルマルチフィラメントか
ら構成されるマルチフィラメント糸であって、分散染料
およびカチオン染料で染色した場合に、短い周期でラン
ダム且つ微細にファジー状態で3色以上の多色相に染色
され、人工的でない、自然なウール様糸のふくらみ感の
ある風合を有する高級感のある潜在微捲縮性ポリエステ
ル太細斑糸および該糸からなる布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルマルチフィラメント糸は均
一性の高いことを特徴とするが、裏を返すとそのままで
は変化に乏しく、人工の冷たさを有しており、染色した
際にはその色調は単調で深みがなく、風合も劣ったもの
になりがちであるため、ポリエステルマルチフィラメン
ト糸に異色杢調状態を付与してそのような欠点を改良す
ることが従来から色々試みられている。
【0003】従来の異色杢調状ポリエステルマルチフィ
ラメント糸としては、(1)ポリエチレンテレフタレー
トなどからなる通常のポリエステルフィラメントに長さ
方向に太細斑を設けて太細斑糸としたもの、または
(2)分散染料可染性の太細斑を有するポリエステルフ
ィラメントとカチオン染料可染性の太細斑を有するポリ
エステルフィラメントとを混繊して複合糸としたものが
知られており、更に(3)イオン性染料に不染性の高配
向ポリエステル未延伸糸と複屈折率の低いイオン性染料
に可染性の高配向ポリエステル未延伸糸との混合糸を弛
緩熱処理した後冷延伸し次いで仮撚して太細斑を有し且
つ位相の異なる多色性のポリエステル加工糸を製造する
方法が提案されている(特開昭63−35843号公
報)。
【0004】しかし、上記(1)の糸は、ポリエチレン
テレフタレートなどの通常のポリエステルフィラメント
単独からなっているために、その杢調表現は基本的には
同色相内ないしは近似色相での濃淡表現にとどまり、全
く色相の異なる杢表現は不可能であり単調な色調にな
り、しかもふくらみ感などにも欠け風合が充分に良好で
あるとはいえない。また、上記(2)の糸では色相の異
なる杢表現が可能であるが、せいぜい2色表現であって
3色以上の色相にならず、しかもその杢表現は周期が極
めて長くしかも規則的であるために、自然さおよび高級
感に欠けたものとなっている。
【0005】そして、上記(3)の方法により得られる
加工糸の場合は多色表現が可能であるが、糸を構成する
フィラメントでの太細斑の周期が長いことにより、カチ
オン染料染色部と分散染料染色部の配置や分布状態が単
純であって、微細に且つランダムに分布しておらず、染
色生地に不自然さが残り、高級感のある染色物とならな
い。また、この(3)の方法では仮撚により糸に捲縮が
付与されるために、捲縮状態が単調で過度になり糸にフ
ァジーな高級感を付与できず、しかも仮撚ヒーター上で
熱擦過されるために太細斑糸独特のドライ感が損なわれ
てヌメリ感を生ずるという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、3色
以上の多色杢表現が可能で、その多色杢表現が極端に強
すぎたり弱過ぎたりせずに極めて短い周期で微細に且つ
ランダムにファジーに全体に分布していて自然な色調お
よび外観を呈し、しかもウール様の自然なふくらみ感を
有する優れた風合を有するポリエステル太細斑糸および
それからなる布帛を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく検討を重ねてきた。その結果、長さ方向に
極めて微細に且つランダムに太細斑を有する分散染料可
染性のポリエステルフィラメントと長さ方向に微細で且
つランダムな太細斑を有するカチオン染料可染性のポリ
エステルフィラメントとを組み合わせてマルチフィラメ
ント糸とし、その糸から布帛を製造すると、上記の優れ
た特性を備えている糸および布帛が得られことを見出し
て本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、長さ方向に太細斑を
有する分散染料可染性ポリエステルフィラメントおよび
長さ方向に太細斑を有するカチオン染料可染性ポリエス
テルフィラメントからなる潜在微捲縮性ポリエステル太
細斑糸であって、分散染料およびカチオン染料で染色し
たときに、糸の長さ方向に沿った任意の1点において最
大で1cmの長さの範囲内で3色以上の色に染色され、
且つ10%以下の微捲縮性を有することを特徴とする潜
在微捲縮性ポリエステル太細斑糸、並びに該潜在微捲縮
性ポリエステル太細斑糸からなる布帛である。
【0009】本発明の潜在微捲縮性ポリエステル太細斑
糸(以下単に「ポリエステル太細斑糸」という)につい
て説明する。上記のように、本発明のポリエステル太細
斑糸は、分散染料可染性太細斑ポリエステルフィラメン
ト(以下「分散可染太細斑フィラメント」という)と、
カチオン染料可染性太細斑ポリエステルフィラメント
(以下「カチオン可染太細斑フィラメント」という)と
が組合わさったマルチフィラメント糸であり、糸を構成
する分散染料可染性フィラメントおよびカチオン染料可
染性フィラメントの双方が長さ方向に太細斑を有してい
る。なお、本発明における「分散可染性」とは、カチオ
ン染料に不染性で分散染料で染色可能であることを意味
する。
【0010】更に、本発明のポリエステル太細斑糸は、
「分散染料およびカチオン染料で染色したときに、糸の
長さ方向に沿った任意の1点において最大で1cmの長
さの範囲内で3色以上の色に染色される」という特性を
有している点に大きな特徴を有している。この特性を図
1により説明すると、分散可染太細斑フィラメント
(a)とカチオン可染太細斑フィラメント(b)との集
合体である本発明のポリエステル太細斑糸1をその任意
の1点Pを基準にして観察した場合に、糸の長さ方向に
沿って、該任意の1点Pとそれよりも最大で1cmの範
囲内で長さ方向に沿って上流側または下流側に隔たった
点P’またはP''との範囲(距離)(A')または
(A'')内で、糸が3色以上の色に染色されており、し
かもその3色以上の染色状態は点Pを糸のどの位置に採
っても常に満たされることを意味する。
【0011】本発明のポリエステル太細斑糸およびそれ
より得られる布帛により微細でランダムで自然な高級感
のある多色相杢調を付与するためには、分散染料および
カチオン染料で染色した場合に、糸の長さ方向に沿った
任意の1点において5mm以下の長さの範囲内で3色以
上の色に常に染色されるようにするのが好ましく、糸の
長さ方向に沿った任意の1点において1mm〜1cmの
長さの範囲内で、各フィラメント間の太細の位相がずれ
た状態で4色以上の色に常に染色され得るようにするの
が一層好ましい。
【0012】そして、本発明のポリエステル太細斑糸は
更に「10%以下の潜在微捲縮性を有する」という特性
を有しており、かかる特性を有することによって天然の
ウールに極めて近似した自然な嵩高感(ふくらみ感)、
張り腰のある優れた風合を有している。その場合にポリ
エステル太細斑糸の潜在微捲縮性が2〜8%であるの
が、ウール様の嵩高感、張り腰などを一層良好にするた
めにより好ましい。一方、潜在微捲縮性が10%を超え
ると、嵩高感が過剰になり、自然なウール様の風合を得
ることができなくなる。ここで、本発明でいう潜在微捲
縮性とは、原糸は捲縮性を有さないが、熱処理により捲
縮が発現する糸であって、下記の方法により求めた捲縮
性Kの値が10%以下であることをいう。
【0013】捲縮性K(%)の測定法:糸を1周1mの
かせ繰にて10000デニール採取する。次にこの試料
を無荷重状態で100℃の熱水中に浸漬して10分間撹
拌なしで熱水処理する。処理後熱水より取り出して、6
0℃の熱風で当初の重量と同じになるまで加熱乾燥し、
5分後に5gの荷重をかけてこの時のかせの長さ
(L1)を測定する。次いで、このかせに1000gの
荷重をかけ、30秒後のかせ長さ(L2)を測定し、下
記の数式1より捲縮性K(%)を求める。
【0014】
【数1】 捲縮性K(%)={L2−(L1/L2)}×100
【0015】上記の特性を有する本発明のポリエステル
太細斑糸は一般に延伸処理を施して得られる延伸糸であ
るが、延伸糸であるにも拘わらず上記した潜在微捲縮性
を有しており、しかもその太細斑がフィラメント間で互
いにランダムにずれて微細に分散しているので、糸の特
定部分のみが極端に太くなったり細くなったりする収束
部分がほとんど存在しない。その結果、その捲縮状態を
発現させた場合には、通常約1〜50個/インチ程度の
捲縮数で微細な捲縮がフィラメント間でランダムにずれ
て存在するようになり、ウール様の微細で自然なふくら
み感のある風合が得られる。
【0016】本発明では、上記の特性を有するポリエス
テル太細斑糸およびそれからなる布帛と共に、それらを
分散染料およびカチオン染料で染色した染色物、場合に
よっては分散染料およびカチオン染料のうちの一方の染
料で染色した染色物を包含する。
【0017】そして、上記した特定の多色相特性および
潜在微捲縮性を有するポリエステル太細斑糸および該糸
からなる布帛はいずれも本発明の範囲に包含され、糸を
構成する分散可染太細斑フィラメントおよびカチオン可
染太細斑フィラメントの種類、糸や布帛の製法、染色法
などは特に制限されないが、上記の特性を有する本発明
のポリエステル太細斑糸は、代表的には以下のようなフ
ィラメントの組み合わせによって円滑に得ることができ
る。
【0018】本発明のポリエステル太細斑糸では、糸を
構成する分散可染太細斑フィラメント群の平均単繊維デ
ニールとカチオン可染太細斑フィラメント群の平均単繊
維デニールを互いに異ならせてデニールミックス太細斑
マルチフィラメント糸とするのがよく、それによって各
フィラメントにおける太部と細部の長さが分散可染太細
斑フィラメントとカチオン可染太細斑フィラメントとで
互いに微細に異なったものとなって糸に一層のランダム
性を付与し、分散染料およびカチオン染料で染色したと
きに微細で且つランダムな3色以上の色相を付与できる
ようになり、しかも糸に10%以下の潜在微捲縮性を付
与することができる。その上、太デニールのフィラメン
ト群の存在により糸に張り腰を付与することができる。
【0019】その場合に、分散可染太細斑フィラメント
群の方を細デニールフィラメント群としカチオン可染太
細斑フィラメント群の方を太デニールフィラメント群と
しても、または逆に分散可染太細斑フィラメント群の方
を太デニールフィラメント群としカチオン可染太細斑フ
ィラメント群の方を細デニール群としてもよい。一般
に、カチオン可染太細斑フィラメントの方が収縮率が高
く、その収縮率はフィラメントが太くなるほど大きくな
る傾向があるので、カチオン可染太細斑フィラメント群
を太デニールフィラメント群とし、分散可染太細斑フィ
ラメント群を細デニールフィラメント群とすると、糸に
潜在微捲縮性が良好に付与されて、ウール様の嵩高性お
よび風合を有する糸を円滑に得ることができ、好まし
い。
【0020】また、本発明のポリエステル太細斑糸を上
記したようなデニールミックスマルチフィラメント糸と
する場合には、太デニールフィラメント群の平均単繊維
デニールを4.5d以下、好ましくは約2.5〜4.0
とし、細デニールフィラメント群の平均単繊維デニール
を1.5d以下、好ましくは約0.5〜1.5dとする
のが、上記の本発明における要件を満たすポリエステル
太細斑糸を円滑に得る上で好ましい。
【0021】また限定されるものではないが、本発明に
おいては、一本のポリエステル太細斑糸における分散可
染太細斑フィラメント群:カチオン可染太細斑フィラメ
ント群の割合を、重量で40:60〜70:30程度に
しておくのが好ましい。特に本発明のポリエステル太細
斑糸を上記した細デニールフィラメント群と太デニール
フィラメント群とから形成する場合には、糸に占める細
デニールフィラメント群の割合を50重量%以上にして
おくのが、微細でランダムな太細斑周期をフィラメント
に付与する上で必要である。また、ポリエステル太細斑
糸1本当たりの総フィラメント数を約10〜200fと
しておくのが、紡糸時などの繊維化工程性、その後の加
工性、織編物などを製造する際の取り扱い性などの点か
ら好ましい。
【0022】そして、本発明のポリエステル太細斑糸を
分散染料およびカチオン染料で染色した場合に、糸の長
さ方向に沿った任意の1点において最大で1cmの長さ
の範囲内で3色以上の色に染色されるようにするために
は、糸を構成する太細斑フィラメントにおける太部の長
さおよび/または細部の長さ寸法、太細斑の表れ方が重
要であり、分散可染太細斑フィラメントおよびカチオン
可染太細斑フィラメントのいずれか一方または両方にお
いて、その1個の太部の長さがmmオーダー、好ましく
は5mm以下、より好ましくは1mm以下となってい
て、且つ太細斑が糸の長さ方向にランダムになっている
ことが必要である。
【0023】その際に、分散可染太細斑フィラメントお
よびカチオン可染太細斑フィラメントの両方において、
その太部の長さが上記したmmオーダー、好ましくは5
mm以下、より好ましくは1mm以下になっているのが
望ましいが、必ずしも両方のフィラメントがそのように
なっていなくてもよく、分散可染太細斑フィラメントと
カチオン可染太細斑フィラメントのいずれか一方のフィ
ラメントのみにおいてその太部の長さがmmオーダーに
なっていればよい。特に、ポリエステル太細斑糸を構成
する分散可染太細斑フィラメントおよびカチオン可染太
細斑フィラメントのうちで、少なくとも分散可染太細斑
フィラメントにおいてその太部の長さが数μm〜5mm
の範囲でランダムな長さになっていて、且つポリエステ
ル太細斑糸を任意の一横断面で見た場合に糸の長さ方向
に沿って長くても1cmの範囲内で太部と細部が必ず混
在するようになっているのが、上記した3色以上の多色
染色特性および潜在微捲縮性を糸に付与する上で望まし
い。
【0024】また、限定されるものではないが、上記の
場合に、太細斑フィラメントにおける1個の太部とそれ
に隣接する1個の細部の合計長さが10cm以下、好ま
しくは5cm以下、より好ましくは1cm以下となって
いるのが、上記した微細でランダムな多色相状態および
潜在微捲縮性を糸に付与する上で一層望ましい。
【0025】本発明のポリエステル太細斑糸において、
分散可染太細斑フィラメントを構成するポリエステル
は、カチオン染料に不染性で、分散染料で染色可能な繊
維形成性のポリエステルであればいずれでもよく特に制
限されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレート、或いはエチレンテレフタレート単
位および/またはブチレンテレフタレート単位を主たる
構成単位としこれに少量の他の共重合単位を含有させた
コポリエステルから得られたフィラメントが好ましい。
上記において、分散可染太細斑フィラメントをエチレン
テレフタレート単位および/またはブチレンテレフタレ
ート単位を主とするコポリエステルから形成する場合
に、他の共重合単位としてイソフタル酸、フタル酸、
2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン
酸成分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピ
ロメリット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール
またはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、
グリセリン、ペンタエリスリトールなどから誘導された
単位を含有させることができる。
【0026】そして分散可染太細斑フィラメントは、上
記したような分散染料可染性のポリエステル中に平均粒
径が1.0μm以下の微粒子を2.5〜10重量%含有
させて製造するのがよく、その場合の微粒子としては、
硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシ
ウム、アルミナ、酸化チタンなどを挙げることができ、
それらのうちでも硫酸バリウムまたはシリカがフィラメ
ントに微細でランダムな多様化した太細斑周期を付与す
ることができ好ましい。
【0027】分散可染太細斑フィラメント中に含有させ
る微粒子の平均粒径が1.0μmを超えると紡糸性が極
めて悪くなり、一方0.05μm未満であると延伸時に
フィラメント中にボイドが発生しにくくなり、延伸点の
ランダムな変動が起こりにくくなって微細でランダムな
周期の太細斑が発生しにくくなる。紡糸性および微細で
ランダムな太細斑の発生の点から、平均粒径0.02〜
0.8μmの微粒子を用いるのが特に好ましい。また分
散可染太細斑フィラメント中における微粒子の含有量が
2.5重量%未満であると糸を構成するフィラメントに
太細斑が短周期でランダムに出現しなくなり、一方10
重量%を超えると紡糸性が低下して操業性に欠けたもの
となるので好ましくなく、分散可染太細斑フィラメント
中における微粒子の含有量が3〜9重量%であるのがよ
り好ましい。
【0028】また、本発明のポリエステル太細斑糸にお
いて、カチオン可染太細斑フィラメントを構成するポリ
エステルは、カチオン染料で染色可能な繊維形成性のポ
リエステルであればいずれでもよく、その種類などは特
に制限されない。そのうちでも、ベンゼン核にスルホン
酸金属塩基が結合しているイソフタル酸単位、すなわち
スルホネートイソフタル酸単位を共重合単位として有す
る共重合ポリエステルを用いるのが好ましく、その場合
にポリエステル中のスルホネートイソフタル酸単位の共
重合割合を1〜3モル%とすると紡糸時の工程性、染色
性、一般物性などが良好になり望ましい。
【0029】そして、スルホネートイソフタル酸単位を
含有するポリエステルをカチオン可染太細斑フィラメン
トに用いる場合は、ポリエステルを構成する主単位がエ
チレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単
位、またはそれらの組み合わせからなっているのが好ま
しく、必要に応じてそれらの単位と共に更に少量の他の
共重合単位を含有させることができる。そしてそのよう
な他の共重合単位としてはイソフタル酸、フタル酸、
2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族カルボン
酸成分、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシ
ン酸などの脂肪族カルボン酸成分、トリメリット酸、ピ
ロメリット酸などの多官能性カルボン酸成分、ジエチレ
ングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール
またはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、
グリセリン、ペンタエリスリトールなどから誘導された
単位を挙げることができる。
【0030】また、カチオン可染太細斑フィラメント
は、必要に応じて平均粒径が1.0μm以下、好ましく
は0.02〜0.8μmの微粒子を2.5〜10重量%
程度の割合で含有していてもよく、その場合には1個の
太部の長さが数μm〜5mm程度の範囲でフィラメント
の長さ方向にランダムに存在する微細な太細斑を有する
カチオン可染太細斑フィラメントが得られ、ポリエステ
ル太細斑糸に上記した微細でランダムな3色以上の多色
性をより円滑に付与することができる。そしてその場合
の微粒子としては、分散可染太細斑フィラメントにおい
て挙げたのと同様の微粒子を使用することができる。
【0031】本発明のポリエステル太細斑糸が上記した
3色以上の微細な多色状態および潜在微捲縮性を有する
理由は明確ではないが、微粒子を含有する分散染料可染
性ポリエステルフィラメントにおける微細でランダムな
太細斑の発生、カチオン染料可染性ポリエステルフィラ
メントにおける微細でランダムな太細斑の発生、各フィ
ラメント間における太細斑の微細な位相のずれ、染色性
の違いなどが相乗的に作用することによるものと推定さ
れる。
【0032】本発明のポリエステル太細斑糸およびそれ
からなる布帛は、染色せずにまたは染色して流通、販売
することができる。染色する場合は、糸の状態でまたは
布帛にした後、或いは布帛から衣類などの繊維製品をつ
くった後に染色することができ、特に上記したポリエス
テル太細斑糸から布帛を製造して、それを染色するのが
工程性、設備面、経済性などの点から好ましい。染色に
用いる染料の種類、染色方法、染色条件、設備などは特
に限定されず、ポリエステル系繊維に対して従来用いら
れている既知の染料、方法、条件、設備などを採用する
ことができるが、分散染料およびカチオン染料の両方を
用いて染色する場合は、分散染料の選択および染色条件
が微細な多色相状態を出現させる上で重要である。
【0033】本発明のポリエステル太細斑糸またはそれ
からなる布帛を特に分散染料およびカチオン染料の両方
を用いて染色すると、糸の長さ方向に沿った任意の1点
において最大で1cmの長さの範囲内で3色以上の色に
染色される。分散染料およびカチオン染料の両方を用い
て染色を行う場合は、両方の染料を同じ染色浴中に含有
させておいても、別々の染色浴中に含有させておいても
よい。特に、両方の染料を同じ染料浴中に含有させてお
いて染色温度を分散染色とカチオン染色の各々に適した
温度に多段に切り替えて染色を行うと一つの染色浴で両
方の染色を実施でき便利である。
【0034】更に、必要に応じて、本発明のポリエステ
ル太細斑糸およびそれかなる布帛に微細な切れ毛羽を発
生させておいてもよく、特に本発明のポリエステル太細
斑糸またはそれからなる布帛にアルカリ減量、またはア
ルカリ減量と揉み処理を施した場合には、500個/m
以上の極めて微細な切れ毛羽を有する糸または布帛を得
ることができる。本発明のポリエステル太細斑糸では、
その太細斑が上記したように極めて微細にランダムに且
つフィラメント間で位相がずれてばらけて存在し、各フ
ィラメントの太細境界部がアルカリにより侵食され易く
なっていてその部分で微細に且つランダムに切れ毛羽が
発生するために、糸または布帛全体に微細でランダムな
多数の切れ毛羽を出現させることができ、それにより糸
および布帛にウールに一層近似した自然なふくらみ感の
ある風合を付与することができ、しかも糸および布帛の
特定部分のみがアルカリにより極端に侵食されることが
ないので、強度の大幅な低下、特定の部分での糸の切断
や布帛における穴開きなどの現象が生じない。
【0035】それに対して、糸を構成するフィラメント
間で太細斑の位相がずれておらず太細斑が糸の横方向で
揃っており、しかも太細斑の周期が大きい従来の太細斑
糸およびそのような糸から製造された布帛では、アルカ
リ処理によって糸の特定部分のみが侵食を受けてその部
分での糸の切断、布帛における穴開きなどが生じて、品
質の著しい低下を招き、しかも多数の微細な切れ毛羽を
発生させることができず、かかる点からも本発明のポリ
エステル太細斑糸およびそれからなる布帛は優れた特性
を有している。
【0036】ポリエステル太細斑糸またはそれよりなる
布帛に切れ毛羽を発生させるためのアルカリ処理は、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム
などの強アルカリ性物質、炭酸ナトリウム、重炭酸ナト
リウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムな
どの弱アルカリ性物質を含有する処理液を使用して行う
ことができる。処理液中のアルカリ性物質の濃度は、ア
ルカリ性物質の種類、被処理ポリエステル太細斑糸や布
帛の内容などに応じて適宜調節するとよく、通常、アル
カリ処理液の温度を約80〜120℃にして減量率が約
2〜20%程度になるように行うのが切れ毛羽の発生、
強度や風合の維持などの点から好ましい。また、限定さ
れるものではないが、揉み処理は通常ワッシャーリラッ
クスによる方法や高温高圧の液流リラックスによる方法
で行うのが好ましい。アルカリ処理および揉み処理は、
糸または布帛の染色前に行うとよい。
【0037】そして、ポリエステル太細斑糸にアルカリ
処理により切れ毛羽を発生させる前に、糸に約1000
回/m以下、好ましくは400〜800回/mの撚りを
かけると糸からのフィラメントの抜けの防止、毛羽の固
定ができ好ましい。また、アルカリ処理は、布帛等の精
練、糊抜き時に同時に行っても、またはその前後に行っ
てもよく、精練、糊抜きと同時に行う場合は処理工程数
を少なくすることができる。またアルカリ処理は静的状
態で行ってもよいが、アルカリ処理液を糸、布帛等に衝
突させたり、アルカリ処理液や被処理ポリエステル太細
斑糸や布帛などを撹拌しながら行うと、切れ毛羽をより
速やかに発生させることができ、そのようなアルカリ処
理は例えば高圧液流式装置や高圧ワッシャー装置などを
使用して実施することができる。
【0038】また、アルカリ処理を非イオン系界面活性
剤、アニオン系界面活性剤などの存在下に行うとポリエ
ステル太細斑糸の膨潤、軟化、繊維へのアルカリの浸透
等が促進されて、処理を速やかに行うことができ、それ
と共に糸や布帛全体に良好なふくらみ感が付与され、し
かも糸や布帛等から脱落した糊剤等が再付着するのを防
止することができる。その際の非イオン系界面活性剤と
しては、例えばポリオキシエチレン多価アルコールアル
キルエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリエチレングリコールアルキルエステル類など
を、またアニオン系界面活性剤としてはセッケン、高級
アルコール系界面活性剤などを挙げることができる。
【0039】本発明のポリエステル太細斑糸の製造法は
特に制限されず、分散染料およびカチオン染料で染色し
た際に上記した3色以上の微細な多色状態と上記した潜
在微捲縮性を有するポリエステル太細斑糸が得られる限
りいずれの方法で製造してもよい。一般的には、上記し
た微粒子を含有する分散可染性で繊維形成性のポリエス
テルと、カチオン染料可染性で繊維形成性のポリエステ
ルを用いて分散染料可染性ポリエステルフィラメントと
カチオン染料可染性ポリエステルフィラメントとが混繊
したポリエステルマルチフィラメント糸を製造し、それ
を低延伸倍率で斑延伸することによって得ることがで
き、好ましい製法の例を挙げると下記のとおりである。
【0040】本発明のポリエステル太細斑糸の製造例: (1) 例えば図2に示すような、左右で孔数および孔
径を変えてある分割型の口金を有する紡糸装置を使用し
て2液紡糸を行う。その際の紡糸速度は1500〜25
00m/分とするのが好ましく、1800〜2200m
/分がより好ましい。紡糸速度が1500m/分未満で
あると、糸または布帛における強度が不足し、一方25
00m/分を超えると延伸後の太細斑の発生が乏しくな
り目的とする太細斑糸を得ることができにくくなる。従
来の太細斑糸の多くは太細斑を発生させるために150
0m/分以下の紡糸速度を採用していたが、本発明では
1500m/分以上の高い紡糸速度を採用することによ
って目的とするポリエステル太細斑糸を得ることがで
き、従来技術と比べて生産性が高い。
【0041】紡糸に当たっては、図2の向かって右側の
孔数の多い口金部分から微粒子を含有する分散染料可染
性ポリエステルを紡出させ、図2の向かって左側の孔数
の少ない口金部分からカチオン染料可染性ポリエステル
を紡出させても、またはその逆でもよいが、一般に微粒
子を含有する分散染料可染性ポリエステルを孔数の多い
口金部分から紡出させ、カチオン染料可染性ポリエステ
ルを孔数の少ない口金部分から紡出させて、分散染料可
染性ポリエステルの細デニールフィラメント群とカチオ
ン染料可染性ポリエステルからなる太デニールフィラメ
ント群とからなるデニールミックスフィラメント糸を製
造するのが好ましい。その際に分散染料可染性ポリエス
テル中に含有させる微粒子としては、上記したように平
均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.02〜0.8
μmのものを使用し、その配合量を2.5〜10重量
%、好ましくは3〜9重量%とするのがよい。
【0042】また、紡糸を行う際に、下記の(3)で記
載する延伸処理中に各フィラメントの延伸点がバラけて
分散されるように(分散延伸が行われるように)、摩擦
係数(特にFF動摩擦係数)の低い油剤を使用するのが
望ましく、その際の油剤の付与量は0.8重量%以上と
するのがよい。油剤の量が0.8重量%未満の場合は、
各フィラメントにおける太細の周期が長くなり易く、太
細斑が微細に分散した斑糸が得られにくくなる。
【0043】(2) また生産効率が多少劣るが、上記
(1)の直接紡糸によらずに、微粒子を含有する分散染
料可染性ポリエステルフィラメントとカチオン染料可染
性ポリエステルフィラメントとを別々に紡糸して製造
し、それらのフィラメントを合わせて(混繊させて)デ
ニールミックスポリエステルマルチフィラメント糸を製
造してもよい。
【0044】(3) 次に、上記(1)または(2)に
より得られたデニールミックスポリエステルマルチフィ
ラメント糸を低温で予熱した後延伸し、次いで熱セット
して、目的とする本発明のポリエステル太細斑糸を製造
する。この延伸処理は、予熱を約35〜55℃の温度で
行うのが好ましく、予熱温度が35℃未満であると季節
による太細斑の変動が生じ易くなり、一方55℃を超え
ると各フィラメントにおける太細斑の周期が長くなり、
しかも斑の安定性に欠けるようになる。また、延伸後の
熱セット温度は、高いほど伸度低下に効果があるが、そ
れと同時に糸の強度も低下するので、110〜140℃
程度の温度とするのが伸度および強度のバランスの上か
ら好ましい。また、延伸倍率は、下記の数式2;
【0045】
【数2】 延伸倍率={(D/100)+1}×(0.5〜0.6) 式中、D=ポリエステルマルチフィラメント糸の破断伸
度 を満足するようにして行うのが好ましい。
【0046】上記のようにして得られる本発明のポリエ
ステル太細斑糸は、必要に応じて、更に空気交絡やその
他の方法によってインターレース加工やタスラン加工を
施して加工糸にして使用してもよい。本発明のポリエス
テル太細斑糸は、通常のポリエステルマルチフィラメン
ト糸と同様に、各種の織編物や不織布にすることがで
き、特に衣料用の織編物に適している。本発明のポリエ
ステル太細斑糸から製造された織編物は、分散染料およ
びカチオン染料で染色した場合に、上記した微細で且つ
ランダムな3色以上の多色相状態に染色されてその色調
が極めて自然な杢調をなし、しかも極めて微細でランダ
ムに分散する捲縮状になるためにウール様の自然なふく
らみ感を有し、高級な外観および風合を有する。
【0047】
【実施例】以下に実施例などにより本発明を具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の例
において、細デニールフィラメント群および太デニール
フィラメント群の平均単繊維デニール、太細斑フィラメ
ントにおける太部長さ、細部長さおよび隣り合う太部と
細部の合計長さの測定、アルカリ処理後の切れ毛羽の個
数の測定並びに染色後の色数の確認は次のようにして行
った。
【0048】各フィラメント群の平均単繊維デニール
各マルチフィラメント群を少なくとも100m以上採取
し、その総デニールをフィラメント数で除して平均単繊
維デニールを求めた。
【0049】太部長さおよび隣り合う太部と細部の合計
長さ:得られた太細斑糸を20cm採取し、糸を構成す
るフィラメントを太デニールフィラメント群と細デニー
ルフィラメント群に分ける。太デニールフィラメントの
顕微鏡写真(100〜500倍)を撮影し、その写真か
ら太部の長さおよびそれに隣り合う細部の長さを測定
し、太部の長さおよび隣り合う太部と細部の合計長さを
求める。細デニールフィラメントについても同様にす
る。フィラメントにおける太細斑が太部から細部または
細部から太部へと次第に移行していて明確な境界がない
場合は、その中間点を境界として測定する。
【0050】切れ毛羽の個数:アルカリ減量処理後のポ
リエステル太細斑糸(布帛の場合は布帛から糸条を解
舒)について、任意の10cmを採取し、30〜50倍
の顕微鏡写真により切れ毛羽の個数を読み、これを10
回繰り返して(n=10)、平均の切れ毛羽個数を求め
る。この平均切れ毛羽個数を10倍して1m当たりの切
れ毛羽個数とする。
【0051】色数の確認:染色された布帛から糸を解舒
し、顕微鏡カラー写真(100〜500倍)を撮り、目
視により色数を判定する。
【0052】《実施例 1》 (1) 平均粒径0.6μmの硫酸バリウムを8重量%
含有する[η]=0.65のポリエチレンテレフタレート
と、平均粒径0.6μmの硫酸バリウムを8重量%含有
する5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.7モル%
共重合した[η]=0.65のエチレンテレフタレート共
重合体を、図2に示すような分割型の口金(右側36ホ
ール:左側12ホール)の右側および左側の紡糸孔か
ら、3:2(右側:左側)の吐出量でそれぞれ同時に紡
出させ、紡糸速度1800m/分、油剤(糸−糸動摩擦
係数0.29)の付着量1.0重量%の条件下に紡糸し
て、111d/36fのポリエステルフィラメント群
(分散染料可染性ポリエステルフィラメント群)と、7
4d/12fの5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重
合ポリエステルフィラメント群(カチオン染料可染性ポ
リエステルフィラメント群)とが合糸されたポリエステ
ルデニールミックスマルチフィラメント未延伸糸(18
5d/48f)を得た。
【0053】(2) 次に、上記(1)で得た未延伸糸
をホットローラ温度38℃で予熱した後、延伸倍率1.
85倍で延伸し、ホットローラ温度120℃で熱セット
して巻取り、伸度65%の100d/48fのデニール
ミックスポリエステル太細斑延伸糸を得た。
【0054】(3) 上記(2)で得たポリエステル太
細斑延伸糸における細デニールフィラメント群(分散可
染太細斑フィラメント群)の平均単繊維デニールおよび
太デニールフィラメント群(カチオン可染太細斑フィラ
メント群)の平均単繊維デニールを上記の方法により測
定したところ、それぞれ1.7dおよび3.3dであっ
た。 (4) 更に上記(2)で得たポリエステル太細斑延伸
糸における細デニールフィラメント群における太部の長
さは10μm〜2mmの範囲でランダムになっており、
隣り合う太部と細部の合計長さは40μm〜10cmの
範囲でランダムになっていた。また、太デニールフィラ
メント群における太部の長さは10μm〜3mmの範囲
でランダムになっており(400μmを超す太部の割合
は約10%)、隣り合う太部と細部の合計長さは20μ
m〜1cmの範囲でランダムになっていた。
【0055】(5) また、上記(2)で得たポリエス
テル太細斑延伸糸を筒編し、カチオン染料で染色した後
解舒し、1cm間隔でカットして100本の試料フィラ
メント片について顕微鏡で観察した結果、細デニールフ
ィラメント群および太デニールフィラメント群のいずれ
もが、太部と細部がその長さ方向に沿って必ず混在する
太細斑フィラメントであることが確認された。更に、上
記(2)で得たポリエステル太細斑延伸糸の潜在微捲縮
性(捲縮性K)の値を前記した方法により測定したとこ
ろ、6.5%であった。上記(2)で得たポリエステル
太細斑延伸糸では各フィラメントはよくばらけており、
フィラメント一本一本の捲縮数は2〜25個/インチで
捲縮状態はランダムであった。
【0056】(6) また、上記(2)で得たポリエス
テル太細斑延伸糸を20ゲージの編機で筒編し、充分に
精練した後90℃の1Nカセイソーダ溶液中に投入して
15%の減量加工を実施して切れ毛羽を発生させた。乾
燥後にその毛羽の状態を確認すると、糸条の長さ方向に
沿った平均的に切れ毛羽が発生しており、その数は約1
100個/mであった。
【0057】(7) 上記で(2)で得たポリエステル
太細斑延伸糸に600回/mのS撚を施し、経糸110
本/インチ、緯糸70本/インチの密度で平織物を製織
して生機を得た。この生機を下記の表1に示す組成の染
色浴を用いて以下のようにして染色した。
【0058】
【表1】 染 色 浴 組 成 染 料 : Dianix Poly Navy Blue RN-E(三菱化成工業製)(分散染料) 3%owf Dianix Poly Navy Blue BG-FS(三菱化成工業製)(分散染料) 1%owf Kayacryl Red BL(日本化薬製)(カチオン染料) 2%owf助 剤 : トーホソルト(東邦化学製)(分散剤) 1g/リットル 酢 酸 0.3ml/リットル 浴比=1:30
【0059】生機を上記の染色浴に投入した後、1.5
℃/分の割合で浴温度を40〜110℃まで上昇させ、
110℃を保ったまま20分間染色し、次いで2℃/分
の割合を浴温度を135℃まで上昇させ、135℃を保
ったまま15分間染色した。その後染色浴の温度が30
℃になるまで生機を入れたまま冷却し、次いで浴より取
り出して水洗した。水洗後常法により還元洗浄し乾燥し
た後、160℃でファイナルセットを行った。得られた
生地の密度は経糸121本/インチ、緯糸76本/イン
チであった。
【0060】上記で得られた染色生地は、アルカリ減量
を施していないために全体にやや硬さはあるものの、ド
ライなタッチでふくらみのあるウール様の風合を有して
いた。また、布帛の色調は全体として深みおよび味わい
のある青〜赤紫系の色が複雑且つ微妙に混合した多色杢
調の配合色となっていた。また織物から解舒した一本の
糸を拡大して、糸の長さ方向の任意の1点を決めて最大
で1cmの範囲で糸の長さ方向について観察すると、
青、淡い青、濃い赤紫、紫などの色調差および濃淡差の
ある3色以上の色が必ず観察された。この染色物は耐光
堅牢度4級、洗濯堅牢度(耐洗濯時汚染度)4〜5級、
および摩擦堅牢度は乾燥時および湿潤時ともに4級以上
であり、品質的にも優れていた。
【0061】
【発明の効果】本発明のポリエステル太細斑糸およびそ
れかなる布帛は、3色以上の色が微細に且つランダムに
分散する多色杢調の色調を有し、その多色杢表現が極端
に強すぎたり弱過ぎたりせずに全体に微細に分布してい
るために、自然で深みのある優れた色調および外観を有
する。更に、本発明のポリエステル太細斑糸および布帛
は、10%以下の潜在微捲縮性を有していることによ
り、ウール様の自然なふくらみ感を有する。また、アル
カリ処理により得られる本発明の糸および布帛は、極め
て多数の微細な切れ毛羽を糸または布帛全体に有してい
るので、紡績糸に一層近似した外観および特性を有し、
ウールに一層近い高級感のある優れた外観および風合を
有する。そして、本発明のポリエステル太細斑糸および
布帛は、高い生産性で簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル太細斑糸における染色状
態の調べ方を示す図である。
【図2】本発明のポリエステル太細斑糸を製造するのに
用いる紡糸口金の一例を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06P 3/54 Z

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長さ方向に太細斑を有する分散染料可染
    性ポリエステルフィラメントおよび長さ方向に太細斑を
    有するカチオン染料可染性ポリエステルフィラメントか
    らなる潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸であって、分
    散染料およびカチオン染料で染色したときに、糸の長さ
    方向に沿った任意の1点において最大で1cmの長さの
    範囲内で3色以上の色に染色され、且つ10%以下の捲
    縮性を有することを特徴とする潜在微捲縮性ポリエステ
    ル太細斑糸。
  2. 【請求項2】 分散染料可染性ポリエステルフィラメン
    トが平均粒径1.0μm以下の微粒子を2.5〜10重
    量%含有している請求項1の潜在微捲縮性ポリエステル
    太細斑糸。
  3. 【請求項3】 分散染料可染性ポリエステルフィラメン
    ト群とカチオン染料可染性ポリエステルフィラメント群
    とで平均単繊維デニールが互いに異なっている請求項1
    または2の潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項の潜在微捲
    縮性ポリエステル太細斑糸からなる布帛。
  5. 【請求項5】 分散染料およびカチオン染料により染色
    されている請求項1〜3のいずれか1項の潜在微捲縮性
    ポリエステル太細斑糸または請求項4の布帛。
  6. 【請求項6】 多数の毛羽を有している請求項1〜5の
    いずれか1項の潜在微捲縮性ポリエステル太細斑糸また
    は布帛。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100601295B1 (ko) * 1999-11-03 2006-07-13 주식회사 코오롱 폴리에스테르 복합 태세사 및 그의 제조방법

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KR100601295B1 (ko) * 1999-11-03 2006-07-13 주식회사 코오롱 폴리에스테르 복합 태세사 및 그의 제조방법

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