JPH0786035A - 一軸磁気異方性薄膜 - Google Patents

一軸磁気異方性薄膜

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JPH0786035A
JPH0786035A JP22443993A JP22443993A JPH0786035A JP H0786035 A JPH0786035 A JP H0786035A JP 22443993 A JP22443993 A JP 22443993A JP 22443993 A JP22443993 A JP 22443993A JP H0786035 A JPH0786035 A JP H0786035A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、電気抵抗と飽和磁化が共に高い軟磁
性薄膜で、高周波特性の優れた一軸磁気異方性薄膜を提
供することを目的とする。 【構成】本発明は、一般式 Fe100-x-y-zxy
z (原子%)で示され、MはBe,B,Mg,Al,S
i,Ca,Ti,Y,Zr,Mo,In,Sn,Cs,
Ba,La,Hf,Ta,Bi,Pb,Wのうちから選
択される1種または2種以上の元素であり、LはO、F
のうちから選択される1種または2種の元素であり、そ
れぞれの原子比率が、5≦ x ≦25、0≦ y ≦
15、15≦ z ≦35、28≦x+y+z≦50で
あり、その結晶構造が主にbcc−Fe構造とMの酸化
物相あるいはフッ化物相からなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高周波域で優れた軟磁気
特性を有する電気比抵抗および飽和磁化の大きな一軸磁
気異方性薄膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の動作周波数を高める努
力が盛んに行われている。しかし、トランスやインダク
ターあるいは磁気ヘッドなどに用いられている既知の磁
性材料には高周波域で充分な特性を有するものはなく、
従ってこれら部品の高周波域での使用には制限が多かっ
た。一般に、1MHz以上の高周波域になると磁性材料
自体を流れる渦電流により大きな損失が発生する。金属
系の磁性材料は電気抵抗が小さいために渦電流損が大き
く高周波域で使用することは困難であった。一方、フェ
ライトおよびガーネットなどの酸化物系磁性材料は材料
自体の電気抵抗が非常に高いため、渦電流による損失は
比較的発生しにくい。しかし、透磁率の大きなものが得
にくく、かつ飽和磁束密度が小さいために自然共鳴周波
数が低く、高周波域での使用には制限が多かった。
【0003】飽和磁束密度が高く、かつ高周波特性の良
好な磁性材料に対する期待は大きく、これまでに金属系
磁性材料の電気抵抗を高くする方法が提案されている。
例えば,金属とセラミクスの同時スパッタリングにより
セラミクスが分散した非晶質合金膜を得る方法が特開昭
60−152651号公報により提案され,さらに,J.
Appl.Phys.63(8),15 April 1988 にFe−B4 C系分散
膜が、J.AppL.Phys.67(9),1 May 1990にCo0.4 Fe
0.40.2 −SiO2 系分散膜が高い比抵抗と軟磁気特
性を両立するものとして示されている。また、厚い単層
膜では良好な軟磁気特性が得られないCo0.95Fe0.05
−BN系分散膜を0.1μm以下の磁性層とすることで
軟磁気特性が得られ、この薄い膜を非磁性中間層を挟ん
で積層することにより厚い膜でも軟磁気特性が得られる
ことが特開平4ー142710号公報に示されている。
【0004】一方,N2 やO2 ガスによる反応性スパッ
タリングにより電気比抵抗の高い非晶質合金膜を得る方
法が特開昭54ー94428号公報に開示されている。
また,薄膜の作成時にN2 ガスを添加すると,軟磁気特
性の改善に効果があることが多くの合金系で見いだされ
ており,例えばIEEE TRANS. ON MAG. MAG-20 1451 (198
4)に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】高周波域で用いられる
磁性材料は、電気抵抗と飽和磁化がともに高いことが求
められる。また、加工歪みなどによる軟磁気特性の劣下
を最小限にするために、素材の磁歪定数ができるだけ零
に近いことが望ましい。しかし、従来から報告されてい
るFe/B4 C系分散膜、Co0.4 Fe0.40.2 /S
iO2 系分散膜はいずれも非晶質相の場合に軟磁気特性
が優れていることが示されているが、10ー5以上の非常
に大きな正磁歪を有していた。一方、零磁歪と高抵抗を
両立する目的でCo0.95Fe0.05/BN系分散膜が開発
されたが、この系は0.1μm以上の厚い単層膜では飽
和磁界および保磁力が大きく軟磁性を示さなかった。そ
こで、非磁性層を介して積層することにより軟磁性が得
られることが示されているが、このことは反面で膜全体
の飽和磁化を減少させることになり、また工程も複雑に
なるといった問題点を含んでいた。
【0006】一方、近年、Fe基合金の結晶粒を微細化
することにより磁歪定数の小さな軟磁性材料を開発する
ことが盛んに検討されている。例えば、特開平3−11
2104号公報にはスパッタリングによって作製された
非晶質相を結晶化熱処理することにより、ZrやTaの
炭化物が分散したFe合金が得られ、飽和磁歪が小さく
軟磁気特性にも優れていることが示されている。この合
金薄膜にさらにAlを添加することにより100〜20
0μΩcmの比抵抗が得られることが示されているが、高
周波域での渦電流損失を抑制するためには充分とは言え
ず、また高比抵抗のものは飽和磁束密度が小さいという
問題点もあった。さらに、これらの薄膜は非晶質合金薄
膜を結晶化熱処理する工程を経て使用に供せられるが、
この熱処理温度が500℃以上と高温なため、耐熱性の
ない基板や高温に晒せない素子などには用いることがで
きなかった。
【0007】一方、成膜直後の状態で微細な結晶粒を得
るために、NやOを含む雰囲気中でFe基合金を成膜す
る方法が特開平3−120339号公報などに開示され
ている。しかし、これらの方法で得られる薄膜の電気比
抵抗は高周波域での渦電流損失を抑制し得るほど大きな
ものではなかった。また、1993年第112回日本金
属学会春期大会講演概要集p84(143)にはFeH
f合金をO2 を含む雰囲気中でスパッタリングすること
により電気比抵抗が高く軟磁気特性に優れた非晶質合金
薄膜が作製され得ることが示されているが、磁歪に関す
る記載はなかった。
【0008】ところで、高周波域で磁芯損失を発生させ
る大きな原因は、上述したような渦電流損の他に共鳴損
がある。この共鳴損失は,飽和磁束密度と異方性磁界が
高いほど抑制される。この点から、飽和磁束密度の大き
なFe基合金は高周波用磁芯として有望であったが、C
o基などと比べて異方性磁界を大きくすることが困難で
あったことから、十分な高周波特性を有する材料は、こ
れまで報告されていなかった。
【0009】以上のように、電気比抵抗が大きく、磁歪
が小さく、厚い単層膜でも良好な軟磁気特性を有する高
周波用磁性薄膜材料が求められていた。本発明は上記の
点に鑑みてなされたもので、高周波域で優れた軟磁気特
性を有する電気比抵抗および飽和磁化の大きな一軸磁気
異方性薄膜を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
上記の事情を鑑みて鋭意努力した結果、酸化物系のセラ
ミクスとbcc−Feとの複合分散膜により、電気比抵
抗が高く、磁歪が小さく、かつ0.1μm 以上の厚い単
層膜でも良好な軟磁気特性が得られることを見いだし
た。さらに、これらの薄膜を直流磁界のもとで成膜する
ことにより、一軸磁気異方性を付与し得ることを見いだ
した。この時の異方性磁界は従来のFe系磁性薄膜では
考えられないほど大きく、100Oeを超えるものもあ
った。これらの膜は、大きな異方性磁界のために自然共
鳴周波数が非常に高く、数100MHz以上でも軟磁気
特性が劣下しないという優れた特徴を有していることを
見いだし、本発明に至ったものである。
【0011】
【実施例】以下、従来の複合分散膜などとの比較を加え
ながら、本発明の実施例を説明する。BN,SiC,S
iO2 などのセラミクスとFe,Fe合金などの金属を
同時にスパッタリングして作製される膜には、透過電子
顕微鏡などで詳細に観察すると、成膜後そのままの状態
で特有のネットワーク状の結晶組織が見いだされる。こ
れは金属を主とする非晶質あるいは結晶質のクラスター
をセラミックを主とする粒界相が覆ったものであり、こ
れらの膜が通常の金属薄膜に比べて2〜104倍高い電
気比抵抗を示すのはこの組織が主因となっている。本発
明者らはFeとセラミクスの組み合わせが膜の結晶構造
や磁気特性に及ぼす影響について詳細に検討した。その
結果以下のことが新たに見いだされた。成膜後のクラス
ターが非晶質である膜は、高電気比抵抗と軟磁性および
10-5上の大きな正磁歪を示し、この傾向はセラミクス
の種類には依らない。一方、クラスターが結晶質であっ
た場合には、セラミクスの種類が磁気特性に大きく影響
する。すなわち、BNやSiCなどの窒化物や炭化物か
らなる複合分散膜の場合は、成膜した状態で結晶質であ
る膜は軟磁性を示さない。一方、非晶質相を熱処理して
クラスターがbcc−Fe相に結晶化した薄膜は軟磁性
を示し、結晶化とともに飽和磁歪定数が減少し、10-6
台に改善されるが、1kOe以上の大きな磁界中で熱処
理しても一軸磁気異方性を付与しにくく、そのために高
周波特性は充分ではない。例えば、Fe−Si34
では非晶質から結晶化する過程で一軸異方性を失う。ま
た、Fe−AlN系薄膜は非晶質でも熱処理後の結晶膜
でも共に等方的な膜しか得られない。数10MHz以上
の高周波域では一軸磁気異方性は電気比抵抗以上に重大
な役割を担う。すなわち、異方性磁界の小さなものは自
然共鳴周波数が低く、また異方性磁界の分散も大きくな
りやすいために高損失となり高周波域での使用には適さ
ない。
【0012】それに対して、Feと酸化物またはフッ化
物からなる複合分散膜は、クラスターがbcc−Fe相
となった膜は成膜したままでも良好な軟磁性を示す。以
下、Fe−SiO2 系を例として説明する。SiO2
多い膜は、炭化物系や窒化物系と同様に非晶質となり、
軟磁気特性を示す。また、SiO2 が少ない膜は結晶質
となるが、それらのうちで主にbcc−Fe相からなる
膜は、成膜したままの状態で軟磁性を示す。これらの膜
の飽和磁歪は、ともに+10-6のオーダーで炭化物系や
窒化物の非晶質膜に比べて小さく、特にbcc−Feを
主相とする膜は+3×10-6程度と十分小さい。また、
窒化物系や炭化物系とは異なり、これらの膜では成膜中
に静磁界を加えることで一軸磁気異方性を容易に付加す
ることができ、このときの異方性磁界は非晶質の膜では
15 Oe程度と特に大きなものではないが、bcc−
Feを主相とする膜では非常に大きく、100 Oeを
超えるものもある。これほどの大きな飽和磁界が優れた
軟磁気特性とともに得られた例はこれまで報告されたこ
とはなかった。この膜の飽和磁束密度は10〜18kG
と大きいため、理論上の自然共鳴周波数は2GHz以上
にもなり、電気比抵抗も100〜1000μΩcmと大
きいため渦電流損失も少なく、非常に高周波特性に優れ
たものである。このように、bcc−Feを主相とする
膜が軟磁性と大きな異方性を示すことは、Fe−SiO
2 系に限られたものではなく、Feと酸化物系あるいは
フッ化物系のセラミクスからなる複合分散膜に全般に認
められるものである。本発明は以上の知見によりもたら
されたものであり、『一般式 Fe100-x-y-zxy
z (原子%)で示され、MはBe,B,Mg,Al,
Si,Ca,Ti,Y,Zr,Mo,In,Sn,C
s,Ba,La,Hf,Ta,Bi,Pb,Wのうちか
ら選択される1種または2種以上の元素であり、Lは
O、Fのうちから選択される1種または2種の元素であ
り、それぞれの原子比率が、 5≦ x ≦25 0≦ y ≦15 15≦ z ≦35 28≦x+y+z≦50 であり、その結晶構造が主にbcc−Fe構造とMの酸
化物相あるいはフッ化物相からなり、異方性磁界が25
Oe以上であることを特徴とする高抵抗な軟磁性薄
膜。』をその主旨とするものである。
【0013】本発明の薄膜は、金属的な結晶質のクラス
ターをセラミックを主とする粒界相が覆ったネットワー
ク構造となっている。XPSなどの状態分析により、こ
の粒界の組成はセラミクスターゲットの組成に強く依存
しており、また金属クラスターもFe単体ではなく、セ
ラミクスターゲットから与えられたM元素とFeの合金
であることが明らかになっている。すなわち、セラミク
スターゲットを変えると、金属クラスター相も粒界相も
組成が大きく変化する。しかし、本発明においてはMは
Be,B,Mg,Al,Si,Ca,Ti,Y,Zr,
Mo,In,Sn,Cs,Ba,La,Hf,Ta,B
i,Pb,Wのうちから選択されるものであれば軟磁気
特性を得ることができる。このことは、本発明の薄膜に
おける軟磁気特性の原因を次のように説明すると理解で
きるであろう。すなわち、高い結晶対称性を有するbc
c−Fe相は、セラミクス粒界のネットワーク構造のた
めに粒成長を妨げられて微結晶となっている。適度の大
きさの微結晶からなるbcc- Fe合金が、個々の微結
晶の磁気異方性がキャンセルされるため軟磁気特性を示
すことは、FeNbCuSiB合金などでもよく知られ
ている。本発明の薄膜では、粒界相は主にbcc相を収
容する『枠』として働いており、金属相の合金化もbc
c相が維持される限りは軟磁気特性が発現すると考える
と、組成依存性がないことも理解できる。従って、本発
明においては、MとLの組成は主に粒界のネットワーク
構造の形成により規定される。ネットワーク構造を作る
ためには、Mは5原子%以上必要であり、5%未満の場
合は軟磁性を得ることができず、25原子%を超えた場
合は飽和磁束密度が小さくなりすぎるために好ましくな
い。LはMの量とその種類により量が変化するが、15
原子%未満ではネットワーク構造を作り得ないために好
ましくなく、また35原子%を超えると軟磁性が劣下し
たり高周波域で異常な損失が発生するために好ましくは
ない。一方、クラスターはbcc−Fe構造を維持でき
ていれば他の元素を固溶していても問題はない。このこ
とはセラミクスターゲットの種類を制限しないととも
に、FeターゲットをFe合金ターゲットに変えても、
軟磁気特性が得られることを示している。実際、Feを
Coで置換してもその置換量がbcc構造を維持できる
70%以内であれば軟磁気特性が得られ、飽和磁束密度
を大きくすることができる。同様の理由により他の元素
であってもbcc構造を阻害しない範囲であれば、Fe
に添加することは本発明の範囲に含まれるものである。
一方、本発明において、Nは他の元素にはない非常に重
要な作用を及ぼす。その1つとして、Nは非晶質形成元
素としても作用するため、25原子%を超える添加で非
晶質化することが挙げられる。この場合、飽和磁歪定数
が10-5こえる大きなものとなるばかりか、垂直磁気異
方性が発生するために軟磁性を失う。また、軟磁性が維
持される25原子%以下の範囲で、Nの量が増えるに従
って異方性磁界が減少する。そのために、本発明の薄膜
では膜中のNの組成により異方性磁界の大きさを制御す
ることができる。高周波帯域では主として回転磁化によ
る磁化過程が支配的であり、その際透磁率は異方性磁界
に反比例する。そのため、異方性磁界を適当な大きさに
調節できることは非常に有効である。ただしNが15原
子%を超えると、等方膜となり、本発明の特徴を失うた
めに適当ではない。本発明において25Oe以上の大き
な一軸磁気異方性を得るためには、膜中のN濃度は13
原子%以下にすることが好ましい。膜中のNの添加は、
窒化物のターゲットを追加しても行なうことができる
が、スパッタガスにNを含むガスを加えることによって
も調節することができる。本発明において前述したNの
添加以外にも、成膜時の基板温度やスパッタ圧、印加磁
界などにより異方性磁界を調整することができ、使用す
る周波数や透磁率を考慮しながら成膜条件を適宜選択す
ればよい。
【0014】以下、本発明を具体的実施例を用いてさら
に詳しく説明する。 [実施例−1]直径4インチで純度が99.9%のFe
円盤上に、被覆率が30%となるように純度が99.9
%のSiO2 板を扇状に設置した複合ターゲットを、高
周波スパッタリングすることによりFe−SiO2 薄膜
を作製した。成膜条件は以下の表−1のように設定し
た。
【0015】表−1 スパッタ圧力 1.0×10-2 Torr 投入電力 90W 基板温度 20℃(水冷) 基板 コーニング#7059 厚さ0.
5mm 膜厚 2.4μm スパッタガス流量 Ar 10CCM 印加磁界 1対の永久磁石 (40 Oe) 得られた試料は理学電気社製X線回折装置RAD−3A
により組織を同定した。結果を図2に示す。2θが44
゜付近にbcc−Feの(110)面に対応するブロー
ドな回折ピークが観察される。次に、次に日立製作所社
製透過電子顕微鏡H-9000 NARで薄膜の微細組織を観
察した結果を図3に示す。粒径が約50オングストロー
ムのクラスターと厚さが数オングストロームの粒界から
なるネットワーク状の組織が見られ、この薄膜が2相か
らなることが認められる。さらに、電子線回折図形から
これらはbcc−Fe相とSiO2 に似た化合物相であ
ることが確認された。膜全体の組成をラザフォード後方
散乱法で分析したところ、組成はFe64Si1124(原
子%)であった。次に、アルバックファイ社製X線分光
分析装置ESCA−5600により各元素の状態分析を
行なった。Si2pの結合エネルギーのピークプロファイ
ルから、Siには、Feと結合して金属相を形成してい
るものとOと結合してSiOx 相を形成しているものの
2種類の状態があることがわかった。このように得られ
た薄膜は、bcc結晶構造となるFeSiを主とする金
属相が非晶質的なSiOx 相により覆われた微細組織で
あることが確認された。次に、直流磁気特性を理研電子
社製試料振動型磁力計BHV−30SSにより測定し
た。結果を図4に示す。図中の2つのデーターは、成膜
時の磁界の印加方向に平行( // )、垂直(|)に励磁
して測定した結果を表わしている。試料は、成膜時に印
加した磁界方向が磁化容易軸が平行となる一軸磁気異方
性を有しており、その異方性磁界(Hk)は83 Oe
と非常に大きいものであった。試料の保磁力(Hc)
は、容易軸方向(Hce)が2.0 Oe、困難軸方向
(Hch)は0.4 Oeと十分小さく、ヒステリシス
曲線の直線性が良いことからも異方性分散の少ないもの
であることがわかる。また、飽和磁束密度(Bs)も1
5.2kGと十分に大きい。この膜の電気比抵抗(ρ)
を直流4端子法により測定したところ、285μΩcm
と通常の非晶質合金に比べても2〜3倍高いものであっ
た。次に、困難軸方向の透磁率の周波数特性を横河ヒュ
ーレットパッカード社製ネットワークアナライザー41
95Aにより、パラレルライン法で測定した。同方法に
ついての詳細な説明は、日本応用磁気学会誌, Vol.
17,No.2,p497 (1993)に開示されて
いる。結果を図5に示した。膜がかなり厚いにもかかわ
らず500MHzまで劣下しない良好な周波数特性を示
した。これはこの薄膜が、飽和磁束密度と異方性磁界お
よび電気比抵抗が高く、かつ乱れが少なく均質であるこ
とから得られるものである。これらの特性は、日本応用
磁気学会誌, Vol.15,No.2,p327(19
91)に開示されている方法でBs、Hk、ρ、膜厚か
ら求めた理論値に近いものであった。
【0016】次に、この膜の飽和磁歪定数を成瀬科学器
械社製光てこ型飽和磁歪測定装置MS−7により100
Oeの磁場下で測定した。今回の測定では、膜のヤン
グ率を実測することが非常に困難であったため、その値
としてFeSiB薄帯の12×103 kg/mm2 を採用し
計算した。その結果、磁歪は+3.0×10-6と従来の
Fe基の非晶質合金などに比べると1/5〜1/10の
非常に小さな値を示した。 [比較例−1]直径4インチで純度が99.9%のFe
円盤上に被覆率が40%となるようにSi34 板を扇
状に設置した複合ターゲットを用いて高周波スパッタリ
ングすることにより薄膜を作製した。その他の成膜条件
は以下の表−2のように設定した。
【0017】表−2 スパッタ圧力 1.0×10-2 Torr 投入電力 90W 基板温度 20℃ 基板 コーニング#7059 厚さ0.
5mm 膜厚 0.8μm スパッタガス流量 Ar 10CCM 印加磁界 1対の永久磁石 (40 Oe) 得られた薄膜は、図6に示したように実施例−1と同様
にbcc−Fe相であった。膜の組成をラザフォード後
方散乱法で分析したところ、Fe65Si2114(原子
%)であった。この薄膜のVSMによる直流磁気履歴曲
線を図7に示す。試料は保磁力が14 Oeと大きく、
軟磁気特性も一軸磁気異方性も示さなかった。なお、1
00 Oeで磁化が飽和しないため飽和磁歪定数は測定
できなかった。 [実施例−2]実施例−1の成膜条件で、スパッタガス
にN2 を添加しながらFe−SiO2−N膜を作成し
た。得られた膜の結晶構造と電磁気特性の測定を実施例
−1と同様におこなった。膜の組成分析は、ラザフォー
ド後方散乱法で分析した。膜中のNはN2 ガス流量比が
大きくなるにつれて増大した。膜中のN濃度と異方性磁
界Hkとの関係を図1に示す。HkはN濃度が増えるに
従い減少し、15原子%を超えると等方的になった。 [比較例−2]実施例−2と同様の条件で、スパッタガ
スのN2 添加比を10%として膜を作成した。得られた
膜のX線回折図形を図8に示す。ラザフォード後方散乱
法で分析した膜の組成はFe49Si91526(原子
%)であった。約40゜付近にブロードなハローが見ら
れ、他にピークがないことから非晶質構造であることが
わかる。この膜の直流磁気履歴曲線を図9に示す。保磁
力は18 Oeで飽和磁界が252 Oeと非常に大き
く軟磁気特性は得られなかった。さらにこの膜に500
℃までの磁界中熱処理を施したが、磁気特性は改善され
なかった。
【0018】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば電気
抵抗と飽和磁化が共に高い軟磁性薄膜で、高周波特性の
優れた薄膜材料を提供することができる。本発明の薄膜
は、その異方性磁界が大きいために共鳴周波数が高く、
非常に高い周波数まで良好な特性を維持することができ
る。また、透磁率の値が異方性磁界まで変化しないこと
から恒透磁率特性を示し、直流重畳特性に優れたものを
提供できる。さらに飽和磁歪定数は10-6台で小さいた
め、加工歪などの影響を小さなものにすることができ、
その工業的意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合金薄膜において、膜中のN濃度と異
方性磁界の関係を示す特性図である。
【図2】本発明の合金薄膜の結晶構造を示すX線回折図
である。
【図3】本発明の合金薄膜の微細構造を示す透過電子顕
微鏡の明視野像図である。
【図4】本発明の合金薄膜の直流磁気特性を説明するた
めの特性図である。
【図5】本発明の透磁率の周波数特性を説明するための
特性図である。
【図6】合金薄膜の結晶構造を示すX線回折図である。
【図7】合金薄膜の直流磁気特性を示す特性図である。
【図8】合金薄膜の結晶構造を示すX線回折図である。
【図9】合金薄膜の直流磁気特性を示す特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大沼 繁弘 宮城県仙台市青葉区南吉成6丁目6番地の 3 株式会社アモルファス・電子デバイス 研究所内 (72)発明者 松本 文夫 宮城県仙台市青葉区南吉成6丁目6番地の 3 株式会社アモルファス・電子デバイス 研究所内 (72)発明者 藤森 啓安 宮城県仙台市青葉区吉成2丁目20番3号 (72)発明者 増本 健 宮城県仙台市青葉区上杉3丁目8番22号

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 Fe100-x-y-zxyz
    (原子%)で示され、MはBe,B,Mg,Al,S
    i,Ca,Ti,Y,Zr,Mo,In,Sn,Cs,
    Ba,La,Hf,Ta,Bi,Pb,Wのうちから選
    択される1種または2種以上の元素であり、LはO、F
    のうちから選択される1種または2種の元素であり、そ
    れぞれの原子比率が、 5≦ x ≦25 0≦ y ≦15 15≦ z ≦35 28≦x+y+z≦50 であり、その結晶構造が主にbcc−Fe構造とMの酸
    化物相あるいはフッ化物相からなることを特徴とする一
    軸磁気異方性薄膜。
  2. 【請求項2】 Feの70%未満がCoで置換されてい
    ることを特徴とする請求項1記載の一軸磁気異方性薄
    膜。
  3. 【請求項3】 上記膜がネットワーク状の微細組織を有
    することを特徴とする請求項1記載の一軸磁気異方性薄
    膜。
  4. 【請求項4】 上記膜が成膜後そのままで結晶質である
    ことを特徴とする請求項1記載の一軸磁気異方性薄膜。
  5. 【請求項5】 上記膜の異方性磁界が25Oe以上であ
    ることを特徴とする請求項1記載の一軸磁気異方性薄
    膜。
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