JP3866266B2 - 非晶質磁性薄膜とそれを用いた平面型磁気素子 - Google Patents

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Description

本発明は非晶質磁性薄膜とそれを用いた平面インダクタや平面トランス等の平面型磁気素子に関する。
近年、各種電子機器の小形化が盛んに進められている。しかし、電子機器の電源部の小形化はそれに比較して遅れている。このため、電源部が機器全体に占める容積比率は増大する一方である。電子機器の小形化は、各種回路のLSI化によるところが大であるが、電源部に必須であるインダクタやトランス等の磁気部品については、このような小形化や集積化が遅れており、これが容積比率の増大の主因となっている。
このような問題を解決するために、平面コイルと磁性体を組み合わせた平面型の磁気素子が提案され、その高性能化の検討が進められている。これらに用いられる磁性薄膜には、1MHz以上の高周波数領域において、低損失でかつ高飽和磁化であることが要求される。今後、磁気素子の動作周波数が10MHz〜100MHzへと推移していくにつれ、高周波での低損失と高飽和磁化の両立はより一層重要な問題になってくると考えられる。すなわち、高周波励磁では渦電流損失が顕著になるため、低損失化のために磁性膜の積層化や磁性膜自体の高抵抗率化が必要になる。また、インダクタンス密度やエネルギー密度を高めるためには、高飽和磁化が必要である。
また、薄膜磁気ヘッド等においても、記録密度の増大と媒体の高保磁力化、高エネルギー積化、動作周波数の高周波化等に伴い、高周波数領域において低損失かつ高飽和磁化を兼ね備えた磁性薄膜が有効なのは言うまでもない。これらの要求は、その他の磁気素子においても一般に共通することである。
ところで、高周波領域では、透磁率は主に回転磁化過程によって賄われる。よって、磁化困難軸方向の励磁が重要になり、磁化困難軸方向の高周波透磁率および高周波損失が重要な物性値になる。高周波透磁率は、試料の様々な物性と複雑に関連した量であるが、最も相関が高いものとして、異方性磁場が挙げられる。概ね、高周波透磁率は異方性磁場の逆数に比例して変化する。よって、上述したような高周波数領域において高飽和磁化、高透磁率および低損失を実現するには、磁性膜面内で一軸異方性を有すること、および小さすぎない磁性膜面内の一軸磁気異方性エネルギーを有することが必要である。
上述した要求を満たす材料として、一般的な遷移金属系合金膜では抵抗率が低すぎ、積層等の複雑な構造が必要となり、製造工程や製造コスト等の点から十分とは言えない。また、高抵抗率を有するソフトフェライト等の酸化物系材料は、飽和磁化が低く、小形化・高出力化には不向きである。
これらの従来材料の欠点を克服するため、最近、ヘテロアモルファス膜の研究開発が行われている(特許文献1参照)。しかし、このような系では、高飽和磁化と高抵抗率の軟磁性薄膜は得られているものの、磁気的にほぼ等方的な膜しか得られていない。これは、磁気素子の特性に対して最適化した透磁率を付与・制御するのには不向きである。特に、超小形薄膜インダクタンス素子等においては、特定の大きさの面内一軸磁気異方性が必要である。そこで、面内一軸磁気異方性の付与・制御により、所望の磁化困難軸の励磁による透磁率が獲得でき、かつ高飽和磁化と高抵抗率を満たす軟磁性膜が切望されている。
特開昭63-119209号公報
上述したように、小形化対応の平面型磁気素子には、高周波数領域において高飽和磁化および低損失を満足する軟磁性薄膜が求められていることから、高抵抗率を保ちつつ高飽和磁化を満足することが軟磁性薄膜の必須条件となる。また、平面型磁気素子に所望の高周波透磁率を付与するためには、磁化困難軸励磁による高周波透磁率の獲得が重要となる。このためには、磁性薄膜に面内一軸磁気異方性を付与すると共に、その制御性を高めることが必要となる。
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、高飽和磁化と高抵抗率を両立させると共に、磁化困難軸励磁による高周波透磁率の獲得を容易にした非晶質磁性薄膜、さらには優れた高周波透磁率を有する非晶質磁性薄膜を提供することを目的としており、またそのような非晶質磁性薄膜を適用することによって、小形化および高性能化を図ることを可能とした平面型磁気素子を提供することを目的としている。
本発明の非晶質磁性薄膜は、
化学式:(Fe1-xCox1-y(B1-z zy …(1)
(式中、xは0<x≦0.5を満足する数、yは非晶質磁性薄膜の磁気異方性エネルギーが正の値となる範囲、zは0<z<1を満足する数である)
で実質的に組成が表される非晶質磁性薄膜であって、鉄とコバルトを共に含む磁性を担う第1の非晶質相と、前記第1の非晶質相の周囲に配置され、硼素と炭素とを含む第2の非晶質相とから構成されると共に、前記第1の非晶質相を隔てる前記第2の非晶質相の平均厚さが5nm以下である微構造を有し、かつ面内で一軸磁気異方性を有し、電源用途に用いられることを特徴としている。また、本発明の平面型磁気素子は上記した本発明の非晶質磁性薄膜と平面コイルとを具備することを特徴とする電源用平面型磁気素子である。
本発明の非晶質磁性薄膜によれば、高飽和磁化と高抵抗率を両立させると共に、磁化困難軸励磁による高周波透磁率を容易に獲得することができる。そのような非晶質磁性薄膜を用いた本発明の平面型磁気素子によれば、小形化および高性能化を図ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の平面型磁気素子に用いる軟磁性薄膜は、磁性を担う第1の非晶質相と、この第1の非晶質相の周囲に配置された高抵抗を示す第2の非晶質相とを具備し、かつ面内で一軸磁気異方性を有する非晶質磁性薄膜である。ここで、第1の非晶質相はFe−Co基磁性非晶質相からなるものである。強磁性体であるFe−Coを主とする第1の非晶質相は、高抵抗を示すB−C(4B族元素)を主とする第2の非晶質相により包囲されているために、膜全体としては高抵抗を示し、かつ第1の非晶質相の各島状部間は磁気的に結合されているために、高飽和磁化を得ることができる。
上記したような磁性を担う第1の非晶質相の周囲に、高抵抗を示す第2の非晶質相を網目状に配置した微構造は、成膜条件の制御、薄膜組成の制御等により得ることができる。成膜条件に関しては、例えばFe−Coと絶縁物であるB−C(4B族元素)系化合物(例えばB4C)とを同時にスパッタすることで、上述したような微構造が得られる。ただし、成膜方法としてはスパッタ法に限定されるものではない。また、4B族元素に関しては、特にCが好ましく用いられる。
本発明の平面型磁気素子に用いる非晶質磁性薄膜は、上述したように高飽和磁化および高抵抗率の軟磁気特性を有すると共に、面内一軸磁気異方性を有するものである。このように、面内一軸磁気異方性を付与すると共に、その値を適度に制御することによって、磁化困難軸方向の励磁が容易となり、平面型磁気素子の特性に対して最適化した高周波透磁率を獲得することができる。面内一軸磁気異方性は、第1の非晶質相がFe−Co基である場合、組成制御、成膜条件の制御、およびFe基より大きい磁歪定数の利用等により付与・制御することができる。
次に、本発明の非晶質磁性薄膜について詳述する。本発明の非晶質磁性薄膜は、前述したように(1)式で実質的に表される組成を有すると共に、Fe−Coを主とする磁性を担う第1の非晶質相の周囲に、高抵抗を示すB−C(4B族元素)を主とする第2の非晶質相を網目状に配置した微構造を有するものである。このような微構造を実現することにより、磁性薄膜の高抵抗率化と飽和磁化の遷移金属合金からの減少量を低減することができ、かつ高周波領域での磁化困難軸励磁に適した膜面内一軸磁気異方性の付与・制御が可能となる。上記複相非晶質相は、薄膜形成領域の少なくとも一部として有していればよいが、より好ましい形態としては膜全体を実質的に複相非晶質相とすることである。
非晶質磁性薄膜において、Fe−Co系の遷移金属を主成分として含む第1の非晶質相は、高飽和磁化の獲得のために有効である。Fe−Co系は結晶質遷移金属合金中で最大の飽和磁化を示す材料である。非晶質状態においては、メタロイド元素の元素種、添加量等に応じてバンド構造が変化するため、一概に最大とは言えないものの、高い飽和磁化を示す材料の一つである。
さらに、FeリッチのFe−Co系材料は、Fe等より大きい磁歪定数を有する。これは、磁歪を介して磁気弾性エネルギーに関連した磁気異方性を誘導する上で有効である。具体的には、磁場中成膜、磁場中高温成膜、弾性率や熱膨張率に一軸的異方性を有する基板上への成膜、磁場中熱処理、歪を導入した状態の基板への成膜、成膜後の基板または磁性膜への歪の誘導等の単独または複合の処理等により、異方性が誘導される。このような点から、(1)式中のxの値(Fe−Coの組成比)は、0<x≦0.5を満足する範囲とする。さらに、遷移金属元素当りの磁気モーメントや磁歪定数を考慮すると、0.1≦x≦0.3の範囲とすることが望ましい。また、遷移金属元素単体ではなく、FeおよびCoの2種の遷移金属元素を用いることで、方向性規則配列に準じた磁気異方性の誘導も期待される。具体的には、磁場中熱処理や磁場中成膜等で誘導できる。
これらに加えて、Fe−Co系は遷移金属系非晶質の中で最も高いキュリー温度を示す系であり、さらにFeとCoの組成比によって、キュリー温度の制御も容易である。例えば、薄膜磁気インダクタンス素子は、一般に扱う電力の単位体積密度が高く、十分低損失化した磁性膜を使用した場合にも、ある程度の温度上昇が見込まれる。一般に、磁化を代表とする各種磁気特性は温度依存性を持つため、動作状態によって素子特性が変化する場合がある。これを低減するためには、キュリー温度が高い方が一般に有利であり、要求に応じてキュリー点を調整できることは実用上有効である。
本発明の非晶質磁性薄膜においては、Fe−Coを主とする遷移金属リッチ相の非晶質化のためのメタロイド元素として、Bと4B族元素としてCを用いている。また、これらの元素によりBとを共に含む第2の非晶質相が形成される。この第2の非晶質相は、共有結合性が強く、高抵抗率を発揮する。このような第2の非晶質相を得るためには、BとC(4B族元素とを共に含有する((1)式中のzの値を0<z<1の範囲とする)ことが必須条件となる。
なお、Fe−Coを主磁性相とする系においては、メタロイド元素が不足した場合、体心系の遷移金属結晶質相と非晶質相との混相膜となるおそれがあり、十分な軟磁性が得られない場合がある。これを避けるためには、典型元素(非遷移金属元素)の組成比yを0.06を超える値とすることが効果的である。また、高飽和磁化の維持の観点からyは0.5未満とすることが好ましい。
ところで、上述した典型元素(非遷移金属元素)の組成比yは、面内一軸磁気異方性の付与・制御に大きく影響を及ぼし、この組成比yの値を最適化することによって、十分な面内一軸磁気異方性を得ることが可能となる。図8に(1)式中の組成比yと遷移金属1原子当りの磁気異方性エネルギーεaとの一関係例(実験例)を示す。詳細については実施例で示すが、Fe−Co−B−C(4B族元素)系複相非晶質膜においては、各種成膜条件等によって、Fe−Coを主とする第1の非晶質相の分散の特徴的長さや各相の体積比等が複雑に変化するものの、本質的な誘導磁気異方性は組成比yによって決定される
図8はこのことを明確に示している。これは本発明者らの研究開発により得られた独自の結果である。磁性膜の巨視的な磁気異方性は、遷移金属元素の単位空間当りの数密度と上述したεaとの積で得られる。高周波領域で使用する軟磁性膜として実用上十分な一軸磁気異方性を得るために、yの値は図8に示すようにεaが正の値を示す範囲とする。特に、組成比yが0.18〜0.20の範囲で大きなεaが得られるために好ましい。
また、は上述したようにBと共に使用して、第2の非晶質相を形成する元素である。(1)式中のzの値(Bととの組成比)は、0<z<1を満足する範囲とすればよいが、第2の非晶質相の安定化とC(4B族元素による磁気特性制御の有効性等を考慮して、0.05<z<0.5を満足する範囲とすることがより好ましい。Cは第1の非晶質相への4B族元素の添加量をある程度制限する点から好ましい。
上述したような第1の非晶質相と第2の非晶質相とからなる微構造は、成膜条件等を制御することにより得ることができる。例えば、Fe−CoとB−C(4B族元素)系化合物とを同時にスパッタすることで、前述したような第1の非晶質相と第2の非晶質相とを微細に分散した膜構造が得られる。成膜方法は、一般的にはRFスパッタ法、DCスパッタ法、イオンビームスパッタ法等のスパッタ法が適しているが、蒸着法等のその他の物理的成膜法、ロール法、化学的成膜法等を適用することも可能である。
ところで、ホフマンの理論等でも明らかなように、微結晶化や局所磁気異方性分散量の低減、適度な巨視的一軸磁気異方性、磁性粒子間の適度な交換スティフネス定数等が軟磁性獲得に効果的である。特に、本発明の非晶質磁性薄膜においては、磁歪効果等により第1の非晶質粒内の局所的な磁気異方性が一般的なFe基微結晶材料よりも大きくなる。このため、通常の粒径に相当する第1の非晶質粒の分散の特徴的長さと、第1の非晶質粒間を隔てる第2の非晶質相の厚さ(幅)が重要となる。
本発明では、第1の非晶質粒を隔てる第2の非晶質相の平均厚さ(幅)が3nm以下程度で、特に良好な軟磁性が得られる。これにより、軟磁性と面内一軸磁気異方性の付与・制御が両立できる。これは、第2の非晶質相の厚さが十分薄く、隣接する第1の非晶質粒間の適度な磁気的相互作用を確保するためと推定される。このような効果は、3nm以上の間隔では減衰する。平均の第2の非晶質相の厚さは、大きくても5nm以下であることが好ましい。これ以上の領域では磁気的結合領域が縮小し、保磁力の増大のために軟磁性が得られなくなる。このような第2の非晶質相の平均厚さは、顕微鏡の実体像の拡大・縮小により各領域の面積比が不変であることからも、各非晶質の収率から一義的に決まるものではないが、第2の非晶質相の領域または粒の大きさが十分小さくなければならない。上述した(1)式による組成は、その実現に適した組成である。
上記第2の非晶質相の厚さに対する要求は、Fe基複相非晶質膜よりも厳しいものであり、Fe系では等方的な軟磁性が得られる領域であっても、Fe−Co系では場合によっては保磁力が8000A/m以上にも達し、軟磁性が得られない場合がある。この一番の原因は、前述したように局所的磁気異方性がFe系よりも大きいためであると考えられる。
本発明の非晶質磁性薄膜は、適度な大きさの面内一軸磁気異方性を有するものであり、この面内一軸磁気異方性の付与・制御は、上述したように、様々な手法によって行うことができ、特にその手法に限定されるものではない。磁気異方性の付与・制御は、例えば成膜後の磁場中熱処理、磁場中成膜、300℃前後の高温磁場中成膜、熱膨張率に異方性を有する基板上への室温成膜、高温成膜、低温成膜、成膜後の基板または磁性膜への歪の導入、およびこれらの複合等により行うことができる。これらの中で、特に軟磁性を維持した一軸磁気異方性制御に適した方法としては、磁場中熱処理が挙げられる。適した熱処理温度は膜組成によって異なるものの、530〜620Kの範囲とすることが好ましい。このような磁場中熱処理によれば、遷移金属(TM)とメタロイド原子(MD)との間のTM−MD対の構造異方性が磁気異方性誘導の主因となる。
非晶質複相磁性薄膜において、Fe−Coを主とする第1の非晶質相とB−C(4B族元素)を主とする第2の非晶質相とを微細に分散させた膜は、高抵抗率と高飽和磁化とを両立させた軟磁性の獲得と、高周波磁化困難軸励磁への適用のための面内一軸磁気異方性制御に適した材料であり、電源用途等に適合するものである。これにより、平面型磁気素子の高動作周波数化、高効率化、高エネルギー密度化、高インダクタンス密度化等に対応した軟磁性膜が得られる。
本発明の平面型磁気素子は、平面コイルの一面もしくは両面に、上述したようなFe−Co基の複相非晶質磁性薄膜を積層してなる平面インダクタンス素子や平面トランス等に好適であり、電源用途用いられるものである
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
RFマグネトロンスパッタリング法により、Fe−Co−B−C系薄膜を作製した。基板とターゲット間の距離は170mmとし、ターゲットにはFe75Co25合金ターゲット(127mmφ×厚さ1mm)を用いた。BおよびCの添加のために、ターゲット上にB4Cチップを配した。表1に成膜条件の詳細を示す。なお、面積比ScはB4Cチップ面積SB4Cをターゲットエロージョン部面積Serosionで規格化した成膜パラメータである。
Figure 0003866266
上述した成膜条件により5000秒の成膜で、0.27μmの膜厚の試料を得た。なお、成膜直前の前処理として、所定の真空度に到達した後に、ターゲットのプレスパッタ(スパッタリングパワー:400W×600秒)を実施した。このようにして得た薄膜の構造および特性を以下に示す要領で測定、評価した。
薄膜の結晶構造(微構造)の特定は、X線回折(薄膜法:Cu-Kα線、X線入射角α=2.0°)および透過電子顕微鏡観察により行った。また、薄膜の組成比は、ICP発光分析および高周波加熱・赤外吸収法により特定した。薄膜の膜厚は触針型表面粗さ・膜厚計で、抵抗率は4端子法(典型的試料形状:15mm×2mm)で測定した。磁気測定は、振動試料型磁力計を用いて行った。典型的試料形状は10mm×10mmである。最大印加磁場は0.8MA/mである。磁化曲線の測定は、磁化容易軸方向と磁化困難軸方向それぞれについて行った。薄膜磁気トルク計を用いて膜面内で外部磁場を回転させ、膜面内の磁気トルク曲線を測定した。外部印加磁場は0.8MA/mである。得られた磁気トルク曲線をフーリエ変換して解析し、異方性定数Kuを求めた。
上記実施例1で得た薄膜の透過型電子顕微鏡による観察結果(顕微鏡写真)を模式化して図1に示す。また、X線回折ピークを図2に示す。このように、非晶質状の回折ピークが得られた。図1および図2から明らかなように、FeとCoを共に含む第1の非晶質相(粒)1の周囲に、BとCを共に含む第2の非晶質相2が網目状に配置された微構造を有していることを確認した。なお、図1中矢印Aは、巨視的一軸磁気異方性の磁化容易軸方向を示している。以下の全ての実施例において、同様に複相非晶質相が確認された。非晶質ピークの半値幅は成膜条件によって種々変化したが、ピーク位置はほとんど変化しなかった。
また、この実施例で得た薄膜の磁化曲線を図3に示す。このように、面内一軸磁気異方性が観察された。飽和磁化として1.2T、抵抗率として280μΩcmが得られた。また、面内一軸磁気異方性エネルギーとして4×102J/m3を得た。薄膜の組成比は、x=0.26、yy=0.3、z=0.2であった。第1の非晶質相1を隔てる第2の非晶質相2の平均厚さは約2.5nmであった。
このように、成膜条件と構成元素による効果とで、高抵抗率と高飽和磁化が両立し、かつ面内一軸磁気異方性を有する非晶質磁性薄膜を得ることができる。
実施例2
上記実施例1で得た薄膜試料に対して、面内直流磁場中で熱処理を施した。熱処理温度は535K、熱処理時間は10800秒、印加磁場の大きさは0.8MA/m、印加磁場の方向は磁化容易軸方向に平行とした。その結果、面内一軸磁気異方性は若干しか変動せず、保磁力は80A/m以下に減少した。このように、いわゆる歪取り熱処理を施すことによって、磁気異方性に大きく影響を与えることなく、高抵抗率、高飽和磁化の軟磁性を有する非晶質磁性薄膜を得ることができる。
実施例3
チップ面積比Sc(=SB4C/Serosion)を0.24とする以外は、実施例1と同一の成膜条件で、Fe−Co−B−C系薄膜を成膜した。この成膜条件により3000秒の成膜で、0.22μmの膜厚の試料を得た。この薄膜試料は、面内一軸磁気異方性を有し、飽和磁化は1.7T、抵抗率は220μΩcmであった。また、薄膜の組成比は、x=0.25、y=0.2、z=0.31であった。第1の非晶質相を隔てる第2の非晶質相の平均厚さは約3.5nmであった。
実施例4
チップ面積比Sc(=SB4C/Serosion)を0.31とし、かつ成膜時のArガス圧を0.27Paとする以外は、実施例1と同一の成膜条件で、Fe−Co−B−C系薄膜を成膜した。この成膜条件により4000秒の成膜で、0.24μmの膜厚の試料を得た。この薄膜試料は、飽和磁化が1.6Tで、抵抗率が160μΩcmであった。また、薄膜の成膜後の段階で、面内一軸磁気異方性と磁化困難軸励磁において39.6A/mの低保磁力が得られた。薄膜の組成比は、x=0.26、y=0.25、z=0.28であった。第1の非晶質相を隔てる第2の非晶質相の平均厚さは約2.0nm以下であった。
実施例5
直流磁場中で成膜を行った。印加磁場方向は、成膜後の段階で磁化困難軸が得られる方向とした。直流印加磁場は55kA/mとした。その他の成膜条件は実施例4と同一とした。得られた薄膜試料の磁化曲線を図4に示す。図4から明らかなように、面内一軸磁気異方性が印加磁場方向に誘導された。面内一軸磁気異方性エネルギーは3.5×102J/m3であった。抵抗率および飽和磁化は、実施例4と測定精度の範囲内で同一であった。このように、磁場中成膜を行うことによって、面内一軸磁気異方性の付与・制御が容易となる。
参考例1
ターゲット上にSiチップ(10mm×20mm)を3枚追加する以外は、実施例4と同一の成膜条件で、Fe−Co−B−C−Si系薄膜を成膜した。この成膜条件により4000秒の成膜で、0.25μmの膜厚の試料を得た。この薄膜試料は、飽和磁化が1.2Tで、抵抗率が210μΩcmであった。この薄膜試料の磁化曲線を図5に示す。このように、面内一軸磁気異方性と80A/m以下の低保磁力を兼ね備え、かつ高飽和磁化と高抵抗率を両立させた磁性膜が得られた。
実施例
0.9mm幅のストライプ状の磁性膜が0.1mm間隔で並ぶようにメタルマスクを作製し、実施例4と同一条件で成膜を行った。ストライプの方向は、成膜後の段階で面内磁化容易軸が得られる方向とした。その結果、1.5×102J/m3の面内一軸磁気異方性が得られ、磁化容易軸はストライプに平行な方向に生じた。成膜後の段階の複相非晶質膜自身に起因する一軸磁気異方性は、磁区の乱れを最小限に抑える効果を与える。このように、成膜後の段階の一軸磁気異方性に一般の磁性体全般に通用する形状磁気異方性の誘導を付与して、巨視的な磁気異方性を制御してもよく、本発明の非晶質磁性薄膜に対して、一般の磁性体全般に通用する制御手法を併用してもよい。
実施例
成膜時のArガス圧とB4Cチップ面積比Sc(=SB4C/Serosion)を様々に変化させた試料について、熱処理温度573K、熱処理時間7320秒の真空・直流磁場中熱処理を施した。印加磁場は0.8MA/m、熱処理時の真空度は1×10-2Pa以下とした。これら以外の条件は表1に示した通りである。得られた試料の膜厚は0.2〜0.3μmであった。
図6に得られた試料の一磁化曲線例を示す。このように、一様な一軸磁気異方性が得られ、理想的な回転磁化過程による磁化困難軸例示を示す試料が得られた。また、図7に各種試料の異方性磁場Hkを示す。さらに、これらの試料において、図7と組成比等の各種分析結果から算出した遷移金属1原子当りの磁気異方性エネルギーεaのFe−CoとB−Cとの組成比((1)式中のy値)に対する依存性を図8に示した。図8から成膜時のArガス圧やB4Cチップ面積比Sc等の成膜条件が様々に異なった試料群において、組成比yが異方性エネルギーに大きな影響を与えることが分かる。
比較例1
成膜時のAr圧を1Pa、チップ面積比Scを0.08とする以外は、実施例1と同一条件で成膜を行った。この成膜条件により2000秒の成膜で、0.22μmの膜厚の試料を得た。この薄膜試料のX線回折を行ったところ、α−Fe系の体心結晶質と非晶質の混相が得られていることが分かった。この試料においては、飽和磁化1.4T、抵抗率350μΩcmが得られたものの、結晶質との混相であるため、保磁力が9.98kA/mとなり、軟磁性が得られなかった。
比較例2
チップ面積比Scを0.24とする以外は、比較例1と同一条件で成膜を行った。この成膜条件により3000秒の成膜で、0.23μmの膜厚の試料を得た。この薄膜試料のX線回折と透過型電子顕微鏡観察の結果、実施例1と同様に、複相非晶質膜が得られていることが確認された。しかし、Fe−Co基の第1の非晶質粒間を隔てる第2の非晶質相の平均厚さが約5.0nmであった。この試料においては、飽和磁化1.2T、抵抗率590μΩcmが得られたが、図9に示すように、等方膜で任意の方向で保磁力が3.2kA/m以上であり、面内一軸磁気異方性と軟磁性が得られなかった。
比較例3
成膜時のAr圧を0.4Pa、チップ面積比Scを0.16とする以外は、比較例1と同一条件で成膜を行った。得られた薄膜試料は、結晶質と非晶質の混相であり、複相非晶質膜は得られなかった。組成比はx=0.25、y=0.05、z=0.3であった。このように、yの値が小さすぎると、複相非晶質膜を得ることはできない。
実施例
実施例5と同一条件で、図10に示す薄膜インダクタ11の磁性膜部分(複相非晶質磁性薄膜12)を作製し、その後実施例2と同一条件で磁場中熱処理を施した。ここで、図10に示す薄膜インダクタ11は、ダブルレクタンギュラー型の平面コイル13の両主面に、複相非晶質磁性薄膜12、12を積層形成して構成したものである。なお、図10中14は電極であり、また矢印Bは磁化容易軸を、矢印Cは磁束を示す。この実施例の薄膜インダクタは、50MHzまでほぼ平坦なインダクタンスを示し、品質係数Qが10以上と良好な特性が得られた。
本発明の実施例1による複相非晶質磁性薄膜の微構造を模式的に示す図である。 本発明の実施例1による複相非晶質磁性薄膜のX線回折パターンを示す図である。 本発明の実施例1による複相非晶質磁性薄膜の磁化曲線を示す図である。 本発明の実施例5による複相非晶質磁性薄膜の磁化曲線を示す図である。 参考例1による複相非晶質磁性薄膜の磁化曲線を示す図である。 本発明の実施例による複相非晶質磁性薄膜の一磁化曲線例を示す図である。 本発明の実施例による各種複相非晶質磁性薄膜の異方性磁場を示す図である。 本発明の実施例による複相非晶質磁性薄膜の遷移金属1原子当りの磁気異方性エネルギーεaの組成比y依存性を示す図である。 比較例2による非晶質磁性薄膜の磁化曲線を示す図である。 本発明の実施例で作製した薄膜インダクタの構成を示す図であって、(a)はその平面図、(b)はそのX−X線に沿った断面図である。
符号の説明
1…FeとCoを共に含む第1の非晶質相、2…BとCを共に含む第2の非晶質相、11…薄膜インダクタ、12…複相非晶質磁性薄膜、13…ダブルレクタンギュラー型平面コイル。

Claims (2)

  1. 化学式:(Fe1-xCox1-y(B1-z zy
    (式中、xは0<x≦0.5を満足する数、yは非晶質磁性薄膜の磁気異方性エネルギーが正の値となる範囲、zは0<z<1を満足する数である)
    で実質的に組成が表される非晶質磁性薄膜であって、
    鉄とコバルトを共に含む磁性を担う第1の非晶質相と、前記第1の非晶質相の周囲に配置され、硼素と炭素とを含む第2の非晶質相とから構成されると共に、前記第1の非晶質相を隔てる前記第2の非晶質相の平均厚さが5nm以下である微構造を有し、かつ面内で一軸磁気異方性を有し、電源用途に用いられることを特徴とする非晶質磁性薄膜。
  2. 請求項1記載の非晶質磁性薄膜と平面コイルとを具備することを特徴とする電源用平面型磁気素子。
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