JPH0767642B2 - 工具交換可能な工作機械の主軸装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は工具交換可能な工作機械の主軸装置に係り、工
具の固定された工具ホルダーを安全且つ迅速にクランプ
又はアンクランプするためのものである。

（従来の技術） 工作機械の主軸には工具ホルダーをクランプさせるが、
これがための構造は例えば第５図に示すようなものとな
される。

即ち、１は主軸ヘッドに回転自在に支承された主軸本体
で、先端部には工具ホルダー２のテーパ部2aの嵌挿され
るテーパ孔1aが形成され、且つ中心軸部分には最下端部
に段部イを有する操作孔1bが形成されてなる。３は前記
操作孔1b内に挿入され且つ段部イに支持された状態のス
リーブで、これの内孔3aは下部が上部よりも大きな径に
設定されている。そして４は皿バネ５の伸張力により上
方に引張され且つ下方変位可能に一定位置に規制された
ドローバーで、これが下端4aは筒状になされていて、周
方向の適宜間隔位置には半径方向に沿った透孔4bが形成
されてなる。６は前記透孔4b内に脱落の規制された状態
で係入されたボールで、所定位置に挿入された工具ホル
ダー２のプルスタッド2bを係止させるためのものであ
る。

上記構造に於いて、工具ホルダー２をクランプさせるさ
いにはドローバー４を皿バネ５の伸張力に抗して同図に
仮想線ロで示す如く下方へ変位させておき、この状態で
工具ホルダー２を主軸１のテーパ孔1a内に下方から挿入
させるのであり、これにより工具ホルダー２のプルスタ
ッド2bはボール６を透孔4bの外方へ排除しつつ図に示す
位置まで達する。この後ドローバー４を自由状態となし
皿バネ５の伸張力によりそれを上方へ変位させるのであ
り、これによりボール６はその外側表面をスリーブ３の
内孔3aをなす面に押圧されて透孔4b内を内方へ移動さ
れ、同図に実線で示す位置にまで達してプルスタッド2b
を係止し、且つ皿バネ５の伸張力をプルスタッド2bに伝
達し続けるものとなる。

他方、工具ホルダー２をアンクランプさせるさいは前述
したと同様にドローバー４を皿バネ５の伸張力に抗して
仮想線ロで示す如く下方へ変位させるのであり、これに
より工具ホルダーは解放された状態となる。

（発明が解決しようとする課題） 工作機械による高精度・重切削作業に於いては工具（即
ち工具ホルダー）は主軸に強力にクランプさせることが
要請されるが、これを上記した在来の主軸構造により行
うとすると、皿バネの伸張力をクランプ力の増大分に応
じて増大させることが必要となる。

しかし皿バネ５の伸張力を増大させることは工具ホルダ
ー２をクランプ・アンクランプさせるさいのドローバー
４の操作力を増大させる結果となり、さらには該操作力
の増大が主軸１を支承した軸受のスラストを増大させる
という新たな問題を派生せしめるものとなる。

斯かる事情から、皿バネ５の伸張力を過度に増大させな
いでも工具ホルダー２を主軸１に強力にクランプさせる
ことのできる主軸構造が要望されるのである。

また上記した在来の主軸構造では工具ホルダー２をアン
クランプさせるべくドローバー４を下方へ変位させた状
態とすると、工具ホルダー２が主軸１から重力作用で抜
け落ちてしまうのであり、このため自動工具交換装置を
介して工具交換するさい工具交換アームの工具ホルダー
把持機構が工具ホルダーを確実に把持した状態でないと
ドローバー４をクランプ・アンクランプ操作させること
ができないという制約が課される。このため迅速な工具
交換ができないという問題がある。

本発明は上記の如き要望並びに問題点を解決させ得るも
のとした工作機械の主軸を提供することを目的とする。

（課題を解決するための手段及び作用） 上記目的を達成するため、本発明は主軸と同体の筒状部
材を介してボールを主軸の半径方向への移動自在に案内
せしめると共に、該ボールの外部下側から当接するもの
となる楔面を形成したドローバーを前記筒状部材に主軸
の回転中心へ向かっての移動自在に外嵌せしめ、ドロー
バーの一方への移動により工具ホルダーが主軸の中心に
向けて移動されたボールを介してクランプされ他方への
移動によりアンクランプされる構成に於て、上記楔面上
方箇所でボールの外部上側と斜状に当接するためのスリ
ーブを軸方向への移動自在に嵌入せしめ、且つスリーブ
をボールの在る側へ向けて付勢するためのバネを配設
し、常時ボールが主軸の中心に向けて付勢されているこ
とを特徴とする。

これによればボールが工具ホルダーを所定の弾撥力で係
止し得るものとなるため、工具ホルダーがクランプ又は
アンクランプの何れの状態になっていても、一旦ボール
に係止された工具ホルダーは主軸から抜け落ちることは
ない。このことは工具ホルダーのクランプ・アンクラン
プにさいして自動工具交換装置の工具交換アームの工具
ホルダー把持機構による把持は必ずしも必要ではなくな
り自動工具交換装置は従来に較べ少ない制約の下で工具
交換を行い得る。

（実施例） 以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施例を説明
する。

第１図は本発明に係る主軸周辺の断面図、第２図は本発
明を実施したマシンニングセンターの主軸ヘッドを示す
断面図、第３図及び第４図は同マシンニングセンターの
平面図及び正面図であり、従来例と同一箇所には同一符
号を付してある。

図に於いて、７は基台８上を前後左右に移動されるテー
ブル、そして９は基台８に起立せしめたコラムで前面に
は案内レール10、10を具備せしめ、該レール10、10を介
して主軸ヘッド11を上下摺動自在に支持させてある。

12はコラム９の上面に固定された主軸ヘッド送りモータ
ーでこれの出力軸12aと螺子軸13を連結させると共に該
螺子軸13には主軸ヘッド11に固定されたナット体14を螺
合させ、出力軸12aの回動により主軸ヘッド11が上下変
位するようになす。

そして前記主軸ヘッド11には軸受15、15などを介して縦
方向の主軸１を回動自在に支承させると共に主軸１の上
部には従動プーリ16を固定させ、他方では前記主軸ヘッ
ド11に主軸モーター17を固定すると共にこれの出力軸17
aに原動プーリ18を固定させ、且つ該プーリ18と前記プ
ーリ16とに伝動ベルト19を巻き掛け、出力軸12aの回転
により主軸１が回転するようになすほか、主軸１にはそ
の中心軸線に沿って段イ付の操作孔1bを設けると共にそ
の先端には工具ホルダー２のテーパ部2aの嵌挿されるテ
ーパ孔1aを形成し、且つ前記操作孔1bの内方にはドロー
バー４を一定範囲内での上下摺動変位自在に嵌挿させる
ようになす。

しかして上記主軸１の詳細は次のように構成される。

即ち、操作孔1bの下端に形成した段部イに当接させて鍔
付のスリーブ20を嵌挿させることにより該スリーブ20を
主軸１と一体的となさしめる。スリーブ20は内孔20aを
工具ホルダー２のプルスタッド2bの嵌挿させる寸法に設
定すると共に一定高さ位置の周囲には一定間隔位置に半
径方向の透孔20bを設けしめるほか、外周面には段部ハ
を形成してなる。前記各透孔20b内にはプルスタッド2b
の膨大部を係止させるためのボール６を半径方向に沿っ
ての一定範囲内での移動自在に嵌挿させるのであって該
透孔20aの内方端部にはこれらボール６が内孔20a側へ脱
落するのを阻止するための図示しない係止部位が形成し
てある。

一方、ドローバー４は下側部分を細長棒4cになすと共に
該細長棒4cに外嵌させた態様に筒体21をこれの上端で固
定せしめ、且つ筒体21の下端内側面には上方へ向けて拡
大したテーパ面（即ち楔面）21aを形成せしめる。しか
して該筒体21は前記スリーブ20に外嵌させるのであっ
て、ドローバー４の上下変位操作により前記楔面21aが
ボール６の外側に当接して楔作用を奏し、上方への移動
でボール６を透孔20に沿って内方へ移動させ、逆に下方
への移動でボール６の透孔20a内での外方への移動を許
容するようになす。

そして22は別のスリーブで内孔22aの下端には段部ニが
形成してある。該スリーブ22は外径を筒体21の内径に概
略合致させてあって前記スリーブ20の段部ハより上側に
外嵌させると共に筒体21の内方に嵌挿させ、外周面を筒
体21の内周面に案内させて上下変位自在となしてあり、
最下位置に変位した状態ではスリーブ20の段部ハで自身
の段部ニを支持される。スリーブ20の内孔20aに先端の
挿入された細長棒4cにはバネ受けリング23を外嵌させ且
つスリーブ20の上端面に裁置させる。そして該リング23
の上側で筒体21の内方にはリング状の皿バネ５を細長棒
4cに外嵌させて多数配設し且つ上下方向へ圧縮させた状
態となし、他方では該リング23とスリーブ22との間にス
プリング24を圧縮させた状態に配設する。このさいスプ
リング24の伸張力は皿バネ５のそれよりも小さいものと
なして、皿バネ５の伸張力をバネ受けリング23及びスリ
ーブ20を介して段部イに支持させるようになしてドロー
バー４を上側へ押圧する力となさしめる共に、スプリン
グ24の伸張力を皿バネ５及びバネ受けリング23に支持さ
せてボール６の比較的上側面をスリーブ22の下端を介し
て下方へ押圧する力となさしめ、該力によりボール６が
透孔20bに沿って内方へ所定力で押圧されるようにな
す。さらに前記ドローバー４の上端にはベアリング25を
介することによりアンクランプ力受け金具26を回動自在
に装着させ、主軸１の回転中にも同金具26の上面に下向
きの押圧力を受け得るようになす。

次に27は上記主軸１のドローバー４を上下作動させるた
めの屈曲形レバーで主軸ヘッド11から起設せしめた支持
アーム28に対し軸29を介して枢着させ、一端には押しボ
ルト30を、そして他端にはローラ31を軸着させるように
なす。このさいレバー27の下方の主軸ヘッド11上面にス
トッパー32を起立させると共に、該ストッパー32と対向
する位置でレバー27と主軸ヘッド11との間にスプリング
33による押圧手段34を設け、自由状態のレバー27がスト
ッパー32に当接されて一定位置に保持されるようにな
す。他方、35はコラム９に上下調整可能に固定したカム
板で主軸ヘッド11が加工領域を越えて一定高さ以上に上
昇するとこれに形成された斜状のカム面35aがローラ31
を概略水平方向へ一定距離だけ押圧移動させ、これに伴
って押しボルト30がアンクランプ力受け金具26を一定距
離だけ圧下するものとなす。

なお36は自動工具交換装置37の回動軸38に固定された工
具交換アーム、39は予備の工具を工具ホルダー２と同体
のまま格納しておくためのマガジン装置である。

次に本実施例装置に於いて自動工具交換装置37を介して
工具交換するさいの作用を説明する。

加工中に於いては主軸１は工具ホルダー２を第１図及び
第２図に示す状態にクランプしているが、工具交換のさ
いは主軸ヘッド11が加工領域よりも上方へ変位され、工
具交換位置に達するまでにはレバー27がカム板35により
揺動されてドローバー４を下方へ押圧変位させる。この
ときたとえ主軸１の回転が完全に停止されていなくても
アンクランプ力受け金具26が自在回転することから何等
の支障も生じない。そしてドローバー４が下方へ変位さ
れると、それまでボール６の外側を押圧していた筒体21
の楔面21aがボール６から離れ、ボール６の位置規制を
解除するため、工具ホルダー２はアンクランプされた状
態となる。しかし、この状態にあっても未だスリーブ22
の下端がボール６を透孔20bの内方へ向けてスプリング2
4の付勢力で押圧しているためプルスタッド2bはボール
６で弾圧係止された状態を維持し、工具ホルダー２が重
力により落下することはない。

そして主軸ヘッド11が完全に工具交換位置に達すると工
具交換アーム36が軸38回りに90度回動してその一端把持
部に工具ホルダー２を把持し、直ちに落下するのであ
り、これにより工具ホルダー２は引張され、プルスタッ
ド2bがスプリング24の付勢力に抗してボール６を透孔20
bの外方へ退避させ、遂にはテーパ孔1aから完全に抜き
出されるものとなる。このことは工具交換アーム36が工
具ホルダー２を把持した後でないとそれをアンクランプ
状態となし得ない従来のものに較べ工具交換時間を短縮
せしめるものとなる。

この後、工具交換アーム36が180度軸38回りに回転して
これの他端把持部に把持した次に使用すべき工具の固定
された工具ホルダー２を主軸１の直下に位置せしめ、次
いで上昇し、該工具ホルダー２を主軸１のテーパ孔1a内
の一定位置まで嵌挿させる。これによりプルスタッド2b
はアンクランプ状態となっているボール６をスプリング
24による付勢力に抗して透孔20bの外方へ退避させつつ
スリーブ20の内孔20a内に弾撥的に嵌入するものとな
る。この後直ちに、工具交換アーム36は軸38回りに90度
回転して工具ホルダー２を解放し原位置に復帰するが、
ボール６がスプリング24及びスリーブ22を介して透孔20
bの内方へ向かう付勢力を前述同様に付与されているこ
とからプルスタッド2bは係止された状態を維持され、工
具ホルダー２は主軸１のテーパ孔1aから抜け落ちること
はない。このことは前述したと同様に、工具交換アーム
36が工具ホルダー２を把持した後でないとそれをアンク
ランプ状態となし得ない従来のものに較べ工具交換時間
を短縮せしめるものである。そして工具交換アーム36が
原位置に復帰した後、主軸ヘッド11は再び加工領域まで
降下されるのであり、この間にローラ31がカム板35から
外れるためレバー27は自由状態となってドローバー４を
解放する。これによりドローバー４は皿バネ５の伸張力
により上方へ移動され、楔面21aはボール６を透孔20bの
内方へ向けて強制的に移動させるものとなる。このさい
ボール６は楔面21aの楔作用により皿バネ５の力を大幅
に増大させて生成せしめた力で移動され、プルスタッド
2bの膨大部の斜面に強く押圧される。このため工具ホル
ダー２は強力にテーパ孔1a内に引き込まれて確実・強固
にクランプされた状態となる。この後、主軸１は再び回
転駆動されて加工に供される。

上記実施例では本発明をマシンニングセンターに実施し
たものを示したが、これに限定されるものではない。

（発明の効果） 本発明によれば、自動工具交換作業中に於いて工具交換
アームが工具ホルダーを把持していないときでもスリー
ブを介してボールに作用するスプリングの付勢力が工具
ホルダーを主軸から抜け落ちるのを阻止するため、適時
に主軸の工具ホルダーをクランプ・アンクランプさせる
ことができ、工具交換作業を迅速に行うことを可能なら
しめるものである。このさいスプリング及びスリーブを
主軸の操作孔内に収容させることが可能であり、このこ
とが主軸の加工を不要となして構造簡易となさしめる。

更に請求項２によれば上記作業中主軸が回転中であって
も工具ホルダーをクランプ・アンクランプさせることが
可能となり、工具交換作業の迅速化をさらに促進するも
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る主軸周辺の断面図、第２図は本発
明に実施したマシンニングセンターの主軸ヘッドを示す
断面図、第３図及び第４図は同マシンニングセンターの
平面図及び正面図、第５図は従来の図である。 １……主軸、２……工具ホルダー、４……ドローバー、
６……ボール、20……筒状部材、21a……楔面、22……
スリーブ、24……スプリング（バネ）、25……ベアリン
グ、26……アンクランプ受け金具。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】主軸と同体の筒状部材を介してボールを主
   軸の半径方向への移動自在に案内せしめると共に、該ボ
   ールの外部下側から当接するものとなる楔面を形成した
   ドローバーを前記筒状部材に主軸の回転中心へ向かって
   の移動自在に外嵌せしめ、ドローバーの一方への移動に
   より工具ホルダーが主軸の中心に向けて移動されたボー
   ルを介してクランプされ他方への移動によりアンクラン
   プされる構成に於て、上記楔面上方箇所でボールの外部
   上側と斜状に当接するためのスリーブを軸方向への移動
   自在に嵌入せしめ、且つスリーブをボールの在る側へ向
   けて付勢するためのバネを配設し、常時ボールが主軸の
   中心に向けて付勢される構成となしたことを特徴とする
   工具交換可能な工作機械の主軸装置。
2. 【請求項２】ボールを主軸の中心に向けて移動させるた
   めのドローバーにベアリングを介してアンクランプ受け
   金具を設けたことを特徴とする請求項１記載の工具交換
   可能な工作機械の主軸装置。