JPH0759913B2 - シール装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は例えば熱機関のピストン、シリンダなどのガス
流路を区画する壁部材の重合せ面のシール装置に関する
ものである。

［従来の技術］ 本出願人は既に実願昭60−26706号（実開昭61−144239
号公報参照）により、燃焼室を取り囲む壁部にセラツツ
クを用いた断熱ピストンとして、金属製スカート部の上
側にセラミツク製ピストン冠部を重ね合せ、ボルトによ
り結合したものを出願している。また、特開昭59−1227
65号公報により、シリンダヘツドの燃焼室と接する壁面
をカツプ状のセラミツク製ヘツドライナで覆つた断熱内
燃機関を出願している。

上述の断熱ピストンでは、単に平面的に金属製スカート
部にセラミツク製ピストン冠部を重ね合せるよりも、ほ
ぼ中心で両者を結合するボルトの外周側に中空の空気断
熱層を形成するほうが、スカート部の熱負荷の軽減に役
立つ。しかし、断熱ピストンに空気断熱層を設ける場合
は、スカート部の上面外周側に設けた環状溝に、インコ
ネルなどの耐熱性合金からなる中空の金属シールリング
（以下シールリングを単にリングという）または軟質の
カーボンリングを装着し、ピストン冠部との重合せ面を
完全にシールする必要がある。金属製シリンダブロツク
に対するセラミツク製ヘツドライナの重合せ面のシール
についても同様のことが言える。

ところが、ピストンは比較的剛性の弱い構造物であるの
で、振動によりシール部の寸法が変化しやすく、中空の
金属リングの場合はその振動に追従することができず、
シール性を維持できなくなる。そこで、振動に対するピ
ストンの剛性を高めると、重量増加を来すことになり好
ましくない。

第７図（ａ），（ｂ）に示すように、一般的な断面凹形
の環状溝40にほぼ同じ断面形状のカーボンリング４を装
着する場合には、環状溝40の底面を平滑に仕上げること
が重要であり、またカーボンリングが重合せ面の間に強
く挟持されるように、スカート部とピストン冠部とを結
合するボルトの締付力を大きくする必要がある。

なお、ガスケツト研究会編「ガスケツト」（株式会社近
代編集社発行）第14,15頁に開示されるフープテンシヨ
ン締付け方式は、予め角隅部を面取りした断面長方形の
金属ガスケツトを、２つの壁部材の重合せ面の断面台形
の環状溝に装着するものであり、壁部材相互に大きな締
付荷重を加える時、締付荷重の径内方の分力を利用し
て、金属ガスケツトを外周側から圧縮ないし縮閉し、環
状溝と金属ガスケツトとの接触面圧を高く維持する。蒸
気などの流体の圧力が高くなると、内部の流体圧力によ
り金属ガスケツトが径外方へ拡開され、金属ガスケツト
と環状溝との接触面圧がさらに高くなる。

上述の金属ガスケツトは締付荷重の径内方の分力を利用
して、金属ガスケツトを外周側から圧縮するものである
から、環状溝の傾斜壁面の傾斜角を非常に大きく採る必
要があり、傾斜角が大きくなると、環状溝が深くなり、
壁部材の強度に悪影響を及ぼすことから、環状溝を断面
台形にせざるを得ない。また、あくまでもボルトの締付
荷重により、環状溝の傾斜壁面と金属ガスケツトの接触
面圧を高く維持するものであるから、壁部材が破壊しや
すいセラミツクの場合には採用できない。

［発明が解決しようとする問題点］ 本発明の目的は上述の問題に鑑み、比較的小さな締付力
で壁部材の重合せ面を高温ガスに対しシールできるシー
ル装置を提供することにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本発明の構成は熱機関のガ
ス流路を区画する２つの壁部材の重合せ面に、断面Ｖ形
の環状溝を面対称に形成するとともに、前記環状溝に断
面長方形をなす軟質のカーボンリングを、その角隅部が
前記環状溝の傾斜壁面に圧着変形されて面接触するよう
に嵌合したものである。

［作用］ 壁部材の重合せ面に設けた断面Ｖ形の環状溝に、断面長
方形の軟質のカーボンリングを挟んで押圧することによ
り、カーボンリングは断面ほぼ８角形に変形されて重合
せ面をシールする。軟質のカーボンリングは弾性復元力
が弱く、カーボンリングの断面積は、断面Ｖ形の環状溝
で仕切られる空間の断面積よりも僅かに小さいので、カ
ーボンリングの締付荷重は僅かなものとなる。

環状溝が断面Ｖ形をなすので、カーボンリングの大きな
変形量が得られ、断面台形のもののように、カーボンリ
ングの変形量が制限されることがない。

シールリングは２つの壁部材の重合せ面に立ちはだかる
ので、高温ガスの真直ぐな吹き抜けがなく、高温ガスの
浸入経路が断面Ｖ形の環状溝の傾斜壁面に沿つて迂回す
る形になり、しかも傾斜壁面の２カ所にシールリングが
接しているので、ラビリンス効果とあいまつて良好なシ
ール性が得られる。

［発明の実施例］ 第６図は本発明によるシール装置が使用される断熱ピス
トンを示す。通常の金属例えばアルミニウム合金などか
らなるスカート部２は、外周面にピストンリングを装着
するリング溝３を形成されるとともに、コネクテイング
ロツドを連結するピストンピンのピン穴16を備えられ
る。スカート部２の上面15のほぼ中心部分に上方へ突出
する突部13が設けられ、突部13の上に平坦な頂面７が形
成される。上面15の外周側部分にカーボンリング４を装
着する環状溝が設けられる。

セラミツクからなるピストン冠部６は上面に燃焼室を兼
ねかつボルト８の頭部が上方へ突出するのを防ぐ円筒形
のくぼみ９が形成されるとともに、下面10にも円筒形の
くぼみ12が形成される。下面10の外周側部分にカーボン
リング４を装着する環状溝が形成される。

スカート部２の頂面７にピストン冠部６のくぼみ12の内
端面が重ね合され、両者は重合せ部を貫通するボルト８
にナツト14を螺合して互いに結合される。同時に、スカ
ート部２の上面15とピストン冠部６の下面10との間に軟
質のカーボンリング４が挟持され、カーボンリング４に
より上面15とくぼみ12との間の断熱空気層５が密閉さ
れ、断熱空気層５により燃焼室の熱を受けるピストン冠
部６からスカート部２へ伝達される熱量が制限される。

本発明によるシール装置は、上面15と下面10との間に隙
間がある状態でカーボンリング４を挟み、カーボンリン
グ４の変形によりカーボンリング４を環状溝の傾斜壁面
に面接触の状態でよく密着させ、上面15と下面10との間
を密封するものである。

第１図（ａ），（ｂ）に示す実施例では、スカート部２
の上面15に断面Ｖ形の環状溝22が形成されるとともに、
環状溝22と面対称にピストン冠部６の下面10にも断面Ｖ
形の環状溝21が設けられる。環状溝21,22に断面長方形
をなす軟質のカーボンリング４が嵌合される。第６図に
おいて説明したボルト８にナツト14を螺合することによ
り、上面15が下面10へ押し付けられると、カーボンリン
グ４はほぼ断面８角形に変形し、第１図（ｂ）に示すよ
うに、カーボンリング４の角隅部が強く環状溝22,21の
傾斜壁面に面接触の状態で係合し、重合せ面が封止され
る。燃焼室の高温ガスが上面15と下面10との重合せ面の
隙間を経て環状溝21,22の外周側へ浸入しても、カーボ
ンリング４は環状溝21,22の傾斜壁面にそれぞれ２個所
で係合されているので、内周側ないし中心側への高温ガ
スの浸入が完全に阻止される。カーボンリング４が各環
状溝21,22に対して２つの部分で圧着されるので、環状
溝21,22の傾斜壁面の面粗さのシール性に及ぼす影響度
は少なくなる。カーボンリング４の変形は角隅部で生じ
るだけであるから、第７図（ａ），（ｂ）に示す従来例
のように圧縮変形されるものに比べて、小さな軸荷重で
変形される。

第２図（ａ），（ｂ）に示す実施例では、環状溝21,22
の断面がＶ形ではあるが、底の部分に丸みが設けられて
いる点で異なる。このように形成すれば、第２図（ｂ）
に示すように、カーボンリング４は環状溝21,22の内奥
にまで密着される。しかし、カーボンリング４の断面積
が加工誤差により環状溝21,22の断面積よりも大きくな
ると、締付軸荷重が非常に大きくなる。

そこで、第３図に示す実施例では、一方の環状溝21の内
外周側に拡幅部21bを設けて、拡幅部21bにカーボンリン
グ４の変形部分がはみ出すようにした。これによりカー
ボンリング４の断面形状についての寸法誤差を吸収する
ことができる。

第４図に示す実施例では、高温ガスがカーボンリング４
に触れるのを抑止できる。スカート部２の上面15の環状
溝22よりも外周側に断面凹形の環状溝35を設け、円筒形
をなす金属リング36を環状溝35と下面10との間に強く係
合したものであるから、金属リング36により上面15と下
面10の重合せ面の隙間へ浸入する高温ガスがせき止めら
れ、カーボンリング４が保護される。

第５図（ａ），（ｂ）に示す実施例では、カーボンリン
グ４の外周側に円筒形の金属リング37を並設して、重合
せ面の隙間から浸入する高温ガスからカーボンリング４
を保護するものである。環状溝21,22の断面形状はＶ形
ではなく、外周側に重合せ面に対して垂直な壁面が部分
的に設けられ、垂直な壁面に金属リング37が密接され、
カーボンリング４は第５図（ｂ）に示すように、金属リ
ング37の上縁部および下縁部に幾分食い込むように変形
される。

上述した各実施例は断熱ピストンにおけるセラミツク構
造体（ピストン冠部）と金属構造体（スカート部）との
重合せ面のシール装置について説明したが、本発明はこ
れに限定されるものでなく、セラミツク製ヘツドライナ
と金属製シリンダブロツクとの重合せ面のシール装置に
も適用できる。この場合、熱を遮蔽する金属リングが、
カーボンリングの内周側に配設されるのは言うまでもな
い。

［発明の効果］ 本発明は上述のように、熱機関のガス流路を区画する２
つの壁部材の重合せ面に、断面Ｖ形の環状溝を面対称に
形成するとともに、前記環状溝に断面長方形をなす軟質
のカーボンリングを、その角隅部が前記環状溝の傾斜壁
面に圧着変形されて面接触するように嵌合したので、次
のような効果を奏する。

カーボリングは軟質で弾性復元力が弱いので、２つの壁
部材を重ね合せ結合するボルトの締付荷重が小さくても
良好なシール製が得られ、高温ガスが重合せ面に浸入し
通過するのを完全に防止でき、特に壁部材にセラミツク
材料を用いる場合に有利である。

カーボンリングの装着時、最初にカーボンリングの角隅
部が環状溝の傾斜壁面に係合するので、２つの壁部材に
僅かな締付荷重を加えるだけで、カーボンリングの角隅
部に非常に大きな面圧が作用し、カーボンリングが円滑
に変形する。

カーボンリングは断面長方形のものであるから、製造が
非常に容易であり、角壁部材の重合せ面に形成される環
状溝が断面Ｖ形のものであるから、断面凹形のものに比
べて壁部材に与える強度低下の度合が小さい。

カーボンリングが断面Ｖ形の環状溝の傾斜壁面に沿つて
面接触の状態で、環状溝の断面形状とは異なる断面形状
に圧縮変形され、傾斜壁面との接触面積が増大するの
で、環状溝の壁面粗さの精度が断面凹形の環状溝の場合
よりも低くても、良好なシール性が得られる。

カーボンリングは軟質で弾性復元力が弱いことから、カ
ーボンリングの角隅部が環状溝の傾斜壁面で滑りながら
全体的に圧縮変形されるので、環状溝の傾斜壁面に対し
カーボンリングのなじみが非常によく、高温ガスが吹き
抜けるような隙間は生じない。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ），（ｂ）および第２図（ａ），（ｂ）は本
発明の第１、第２実施例に係る断熱ピストンにおけるカ
ーボンリングの装着前後の状態を示す正面断面図、第３
図は第２図に示す環状溝の一部変更実施例を示す正面断
面図、第４図は本発明の部分的変更実施例に係るカーボ
ンリングの装着後の状態を示す正面断面図、第５図
（ａ），（ｂ）は本発明の他の部分的変更実施例に係る
カーボンリングの装着前後の状態を示す正面断面図、第
６図は本発明のシール装置が使用される断熱ピストンの
正面断面図、第７図（ａ），（ｂ）は従来のシールリン
グの装着前後の状態を示す正面断面図である。 2:スカート部、4:カーボンリング、6:ピストン冠部、1
0:下面、15:上面、21,22:環状溝

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松岡 寛 神奈川県藤沢市土棚８ いすゞ自動車株式 会社藤沢工場内 (72)発明者 宇田川 恒和 東京都港区虎ノ門２丁目５番５号 石川ガ スケツト株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−213938（ＪＰ，Ａ) 実開 昭59−179259（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭49−20611（ＪＰ，Ｙ１) 実公 昭49−43297（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】熱機関のガス流路を区画する２つの壁部材
   の重合せ面に、断面Ｖ形の環状溝を面対称に形成すると
   ともに、前記環状溝に断面長方形をなす軟質のカーボン
   リングを、その角隅部が前記環状溝の傾斜壁面に圧着変
   形されて面接触するように嵌合したことを特徴とするシ
   ール装置。