JPH0758193B2 - 原子間力顕微鏡の微動走査機構 - Google Patents

原子間力顕微鏡の微動走査機構

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JPH0758193B2
JPH0758193B2 JP2242603A JP24260390A JPH0758193B2 JP H0758193 B2 JPH0758193 B2 JP H0758193B2 JP 2242603 A JP2242603 A JP 2242603A JP 24260390 A JP24260390 A JP 24260390A JP H0758193 B2 JPH0758193 B2 JP H0758193B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、原子間力顕微鏡(以下、AFMと記す)にお
ける微動走査機構に係り、特に三次元(XYZ)変位の可
能な円筒型圧電素子と一次元(Z)変位の可能なバイモ
ルフ型圧電素子とを用いた微動走査機構に関するもので
ある。
〔従来の技術〕
AFMの微動走査機構としては、簡単な形状で製作が容易
である上に剛性が高く且つ三次元変位が可能という特徴
を有する円筒型圧電素子、あるいは低い印加電圧で大き
い変位が得られ且つ一次元変位可能なバイモルフ型圧電
素子が適している。
従来、このような三次元変位の可能な円筒型圧電素子も
しくは一次元変位の可能なバイモルフ型圧電素子を用い
たAFMの微動走査機構として、例えば、 (1)試料を三次元変位させるために円筒型圧電素子を
用いたAFMの微動走査機構を開示するO.Marti,B.Drake a
nd P.K.Hansma;Appl.Phys.Lett.,Vol.51,No.7,pp.484−
486(1987)、及びO.Marti,B.Drake,S.Gould and P.K.H
ansma;J.Vac.Sci.Technol.A,Vol.6,No.2,pp.287−290
(1988)、 (2)探針を三次元変位させるために円筒型圧電素子を
用いたAFMの微動走査機構を開示するP.J.Bryant,R.G.Mi
ller and R.Yang;Appl.Phys.Lett.,Vol.52、No.26,pp.2
233−2235(1988)、及びP.J.Bryant,R.G.Miller,R.Dee
ken,R.Yang and Y.C.Zheng;Journal of Microscopy,Vo
l.152,Pt 3,pp.871−875(1988)、 (3)AFMの微動走査機構にも適用可能なバイモルフ型
圧電素子を用いた例えば近接場顕微鏡(NFOM)の微動走
査機構を開示するU.Durig,D.W.Pohl and F.Rohner;J.Ap
pl.Phys.,Vol.59,No.10,pp.3318−3327(1986)、 (4)バイモルフ型圧電素子により探針を微振動させて
電化分布像を観測するAFMの微動走査機構を開示するJ.
E.Stern,B.D.Terris,H.J.Mamin and D.Rugar;Appl.Phy
s.Lett.,Vol.53,No.26,pp.2717−2719(1988)、及びB.
D.Terris,J.E.Stern,D.Rugar and H.J.Mamin;Phys.Rev.
Lett.Vol.63,No.24,pp,2669−2672(1989)が知られて
いる。これらの微動走査機構を第9A図ないし第9E図に示
す。
第9A図の微動走査機構は、試料(510)を取り付ける試
料台(500)が固定された円筒型圧電素子(100)と、例
えばダイアモンド・スタイラスからなる第2の探針(41
0)を有するカンチ・レバー(300)と、カンチ・レバー
(300)の撓みを検出する例えば金属製の第1の探針(1
10)とを備えている。第1の探針(110)とカンチ・レ
バー(300)の間隔は微動ネジ(311)で調整され、第1
の探針(110)、カンチ・レバー(300)及び微動ネジ
(311)はレバー・ホルダー(312)に設けられている。
円筒型圧電素子(100)は、円筒型の圧電物質(101)と
電極(102)で構成されている。電極(102)は、円筒型
の圧電物質(101)の外周面に円筒軸と平行に四分割し
て設けられた電極(1021)、(1022)、(1023)及び
(1024)と内周面全面に設けられた電極(1025)からな
る。電極(1021)、(1022)、(1023)及び(1024)に
三角波電圧Vx+,Vx-,Vy+,Vy-を印加すると共に電極(102
5)にZ軸方向の走査のための電圧Vzを印加することに
より、第2の探針(410)は試料台(500)に取り付けら
れた試料(510)面を三次元走査する。この三次元走査
に伴う第2の探針(410)と試料(510)表面の間の原子
間力によるカンチ・レバー(300)の撓みは第1の探針
(110)で検出される。
第9B図の微動走査機構は、例えば金属製の第1の探針
(110)、カンチ・レバー(300)及び例えば金属製の第
2の探針(410)が取り付けられた円筒型圧電素子(10
0)と、試料台(500)とから構成されている。第9A図の
微動走査機構と同様にして円筒型圧電素子(100)を三
次元走査させると、第1の探針(110)、カンチ・レバ
ー(300)及び第2の探針(410)が連動するので、第2
の探針(410)が試料台(500)に取り付けられた試料
(510)面を三次元走査するAFMの微動走査機構となる。
第9C図及び第9D図に示す微動走査機構は、バイモルフ型
圧電素子(200)と、これに取り付けられた試料台(50
0)と、尖端を尖らせた例えばダイアモンドまたは水晶
チップにアルミニウムを被覆した第2の探針(410)か
ら構成されている。バイモルフ型圧電素子(200)はバ
イモルフ型圧電素子(2001)、(2002)、(2003)、
(2004)及び(2005)から組み立てられている。圧電素
子(2001)及び(2002)の撓みでX方向の変位を、圧電
素子(2003)及び(2004)の撓みでY方向の変位をつく
り、これらにより試料台(500)に取り付けた試料(51
0)を二次元走査する一方、圧電素子(2005)の撓みで
Z方向の変位を第2の探針(410)に与えて、試料(51
0)面を三次元走査するMFOMの微動走査機構となる。こ
の微動走査機構は三次元走査を行うのでAFMの微動走査
機構にも適用可能である。
第9E図の微動走査機構は、三次元走査可能な試料台(50
0)と、試料台(500)に取り付けた試料(510)に対し
て例えば金属製の第2の探針(410)を振動させるため
のバイモルフ型圧電素子(200)とから構成されてい
る。オプチカル・ファイバー(10)を介して第2の探針
(410)からの光ビームの反射光をセンサ(20)で受け
るシステムによる電荷分布像を観測するAFMの微動走査
機構である。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、これら従来の微動走査機構には次のよう
な問題点があった。
第9A図の微動走査機構では、円筒型圧電素子(100)に
取り付けられる試料台(500)の寸法が円筒型圧電素子
(100)の直径寸法で制限を受けるため、寸法の大きい
試料(510)をAFM観察することが困難である。また、円
筒型圧電素子(100)を構成している圧電物質(101)は
機械的に脆いので、試料台(500)に試料(510)を取り
付けるときに円筒型圧電素子(100)を破損させる恐れ
があり、試料(510)と試料台(500)の脱着が困難であ
る。
第9B図の微動走査機構では、第1の探針(110)とカン
チ・レバー(300)の距離がトンネル領域となるよう
に、プリセット・調整・設定する作業が困難である。ト
ンネル領域となるための第1の探針(110)とカンチ・
レバー(300)との間隔は、10オングストロームのオー
ダーの極めて小さい距離である。このため、初期の調節
作業が困難であるばかりでなく、間隔が経時変化したと
きや、第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)が衝
突したときの第1の探針(110)の変換後の再調節作業
も困難となる。
第9C図及び第9D図に示した微動走査機構は、構造が複雑
で製作が困難であり、また微動走査機構としての再現性
が低い。試料台(500)がバイモルフ型圧電素子(200)
の変位部位に固定されているので、試料(510)を取り
付けにくく、試料(510)を取り付ける時にバイモルフ
型圧電素子(200)を変形・破損させる恐れがある。
第9E図に示した微動走査機構では、試料台(500)を動
かすので第9A図の微動走査機構と同様の欠点がある。
すなわち、従来のAFMの微動走査機構は、AFM観察する試
料(510)の寸法に制限を受け易い、試料(510)の取り
付け時に円筒型圧電素子(100)やバイモルフ型圧電素
子(200)を変形・破損させる恐れがあり試料(510)と
試料台(500)の脱着が困難である、第1の探針(110)
とカンチ・レバー(300)の距離の設定が難しい、再現
性のよい微動走査機構を製作できないなどの問題点があ
った。
この発明はこのような問題点を解消するためになされた
もので、製作が容易で且つ作業性に優れ、寸法により試
料が制限を受けることの少ない、信頼性の高いAFMの微
動走査機構を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
この発明に係るAFMの微動走査機構は、円筒型圧電素子
と、前記円筒型圧電素子の三次元変位側端部に取り付け
られた第1の探針取り付け部と、前記第1の探針取り付
け部に装着された第1の探針と、前記円筒型圧電素子の
三次元変位側端部に取り付けられた変位用バイモルフ型
圧電素子取り付け部と、前記変位用バイモルフ型圧電素
子取り付け部に取り付けられた変位用バイモルフ型圧電
素子と、前記変位用バイモルフ型圧電素子の一次元変位
側端部に取り付けられたカンチ・レバー取り付け部と、
前記カンチ・レバー取り付け部に取り付けられたカンチ
・レバーと、前記カンチ・レバーの撓み変位側端部に取
り付けられた第2の探針取り付け部と、前記第2の探針
取り付け部に装着された第2の探針と、前記第2の探針
に対向するように配置された静止した試料台とを備えた
ものである。
〔作用〕
この発明においては、円筒型圧電素子に三次元変位のた
めの電圧を印加すると、円筒型圧電素子に固定された第
1の探針、バイモルフ型圧電素子、カンチ・レバー及び
第2の探針が連動して、第2の探針は静止した試料台上
に保持された試料面に対し三次元走査する。また、バイ
モルフ型圧電素子に一次元変位のための電圧を印加する
ことにより第1の探針とカンチ・レバーの距離がトンネ
ル領域となる。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明す
る。
第1A図及び第1B図はそれぞれこの発明の第1実施例に係
るAFMの微動走査機構を示す斜視図及び断面図である。
このAFMの微動走査機構は、内筒型圧電素子(100)と、
円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)に例えば接着
剤で固定された第1の探針取り付け部(120)と、第1
の探針取り付け部(120)に装着された第1の探針(11
0)と、円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)に一端
(200b)が固定された変位用バイモルフ型圧電素子(20
0)と、変位用バイモルフ型圧電素子(200)の自由端
(200a)に例えば接着剤で固定されたカンチ・レバー取
り付け部(320)と、一端(300b)がカンチ・レバー取
り付け部(320)に例えば接着剤で固定されたカンチ・
レバー(300)と、カンチ・レバー(300)の自由端(30
0a)に例えば接着剤で固定された第2の探針取り付け部
(420)と、第2の探針取り付け部(420)に装着された
第2の探針(410)と、第2の探針(410)に対向し且つ
静止した試料台(500)とを備えている。
円筒型圧電素子(100)は円筒型の圧電物質(101)と電
極(102)とから構成されている。電極(102)は、円筒
型の圧電物質(101)の外周面に円筒軸と平行に四分割
して設けられた電極(1021)、(1022)、(1023)及び
(1024)と内周面全面に設けられた電極(1025)とから
なる。圧電物質(101)には、内周面から外周面に向か
う方向が分極方向となり且つ歪み方向と分極方向が直交
する横効果モードで分極処理が施されている。円筒型圧
電素子(100)の自由端(100a)は、電極(1021)、(1
022)、(1023)及び(1024)に三角波電圧Vx+,Vx-,V
y+,Vy-印加・駆動することによって二次元変位すると共
に電極(1025)にフィード・バック電圧Vzを印加・駆動
することよってZ軸方向の一次元変位を行い、これによ
り円筒型圧電素子(100)の固定端(100b)を基準とし
て三次元変位する。
第1の探針取り付け部(120)に取り付けられた第1の
探針(110)は、円筒型圧電素子(100)の自由端(100
a)と連動して三次元変位する。第1の探針(110)の尖
端は、カンチ・レバー(300)の自由端(300a)付近に
おいて、カンチ・レバー(300)上面側に対向してい
る。第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)の間に
は、トンネル電流の検出のためのバイアス電圧が印加さ
れる。
変位用バイモルフ型圧電素子(200)は、円筒型圧電素
子(100)の自由端(100a)に固定された変位用バイモ
ルフ型圧電素子取り付け部(220)に取り付けられてい
るので、円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)と連
動して三次元変位する。変位用バイモルフ型圧電素子
(200)としては、例えば第1C図に示すように、パラレ
ル型バイモルフ型圧電素子が用いられる。弾性板(20
3)の両面上に圧電物質(2011)及び(2012)が設けら
れ、一方の圧電物質(2011)の上には電極(2021)が形
成されており、他方の圧電物質(2012)の上には電極
(2022)が形成されている。第1C図に矢印で示すよう
に、圧電物質(2011)は電極(2021)から弾性板(20
3)へ向かう方向、圧電物質(2012)は弾性板(203)か
ら電極(2022)へ向かう方向がそれぞれ分極方向となり
且つ歪み方向と分極方向が直交する横効果モードで分極
処理が施されている。
電極(2021)及び(2022)を互いに電気的に接続してこ
れを+電位とすると共に弾性板(203)を−電位として
両者のあいだに電圧E0を印加・駆動すると、変位用バイ
モルフ型圧電素子(200)の自由端(200a)は、第1C図
に破線で示されるように、固定端(200b)に対してZ軸
方向に一次元変位する。従って、変位用バイモルフ型圧
電素子の自由端(200a)は、円筒型圧電素子(100)の
固定端(100b)を基準とすれば、円筒型圧電素子(10
0)の自由端(100a)の三次元変位量に変位用バイモル
フ型圧電素子(200)の一次元変位量が重畳した変位と
なる。変位用バイモルフ型圧電素子(200)の固定端(2
00b)は、円筒型圧電素子(100)の円筒軸上に相当する
変位用バイモルフ型圧電素子取り付け部(220)の中心
部付近に例えば接着剤で固定される。
なお図面では、電極(102)、(2021)、(2022)及び
弾性板(203)への駆動電圧の印加、第1の探針(110)
及びカンチ・レバー(300)へのバイアス電圧の印加を
行うための電気的導線、半田等の電気的接続用部材は省
略してある。
第1C図に示されるように、変位用バイモルフ型圧電素子
(200)の自由端(200a)にはカンチ・レバー取り付け
部(320)が固定され、このカンチ・レバー取り付け部
(320)にカンチ・レバー(300)の一端(300b)が取り
付けられているので、カンチ・レバー(300)の自由端
(300a)と第1の探針(110)との間の距離は、印加電
圧E0による変位用バイモルフ型圧電素子(200)の一次
元変位によって調節される。カンチ・レバー(300)
は、その自由端(300a)と第1の探針(110)との間の
原子間力によって撓むバネ定数K3を有しており、このバ
ネ定数K3は変位用バイモルフ型圧電素子(200)のバネ
定数K2よりも極めて小さく設定されている。
第2の探針(410)は、カンチ・レバー(300)の自由端
(300a)に固定された第2の探針取り付け部(420)に
装着されている。第2の探針(410)の先端は試料台(5
00)上に載置された試料(510)表面に対向している。
第2の探針(410)と試料(510)との間の距離を大きく
した状態すなわちカンチ・レバー(300)に撓みの無い
状態で、且つ変位用バイモルフ型圧電素子(200)の固
定端(200b)に対する自由端(200a)の一次元変位量が
一定の場合には、第2の探針(410)は円筒型圧電素子
(100)の固定端(100b)を基準とした自由端(100a)
の三次元変位と同じ変位を有することとなる。
次に、この実施例の動作について説明する。まず、第2
の探針(410)と試料(510)との間の原子間力が無視で
き、カンチ・レバー(300)の撓みの無い状態で、トン
ネル電流を測定しながらカンチ・レバー(300)の自由
端(300a)と第1の探針(110)との間の距離が予め設
定された値のトンネル電流の流れるトンネル領域となる
ような電圧V0を変位用バイモルフ型圧電素子(200)に
印加する。その後、第2の探針(410)と試料(510)と
の間に原子間力が作用してカンチ・レバー(300)が撓
んだときのカンチ・レバー(300)の自由端(300a)と
第1の探針(110)との間の距離の変化量ΔLに相当す
る変位用バイモルフ型圧電素子(200)への印加電圧の
変化量ΔVだけ変位用バイモルフ型圧電素子(200)へ
の印加電圧を変化させる。すなわち、印加電圧VはV=
V0+ΔVとなる。ここで、変化量ΔL及びΔVの正負符
号は、第2の探針(410)と試料(510)との間で作用す
る原子間力が斥力である場合に、カンチ・レバー(30
0)の自由端(00a)と第1の探針(110)との間の距離
が大きくなるような符号とする。
次に、変位用バイモルフ型圧電素子(200)の印加電圧
を一定値Vに保ちつつ、円筒型圧電素子(100)へ三角
波電圧を印加する。これにより、円筒型圧電素子(10
0)の自由端(100a)、変位用バイモルフ型圧電素子(2
00)の自由端(200a)、カンチ・レバー(300)の自由
端(300a)、第1の探針(110)及び第2の探針(410)
が連動するが、変位用バイモルフ型圧電素子(200)へ
の印加電圧Vは一定であるので、第2の探針(410)は
静止した試料台(500)に取り付けられた試料(510)表
面に対し二次元走査する。
この状態から、第2の探針(410)と試料(510)面の間
の距離を小さくすることにより第2の探針(410)と試
料(510)との間で原子間力を作用させると、カンチ・
レバー(300)に撓みが発生し、その自由端(300a)と
第1の探針(110)との間にトンネル電流が流れ始め
る。トンネル電流は試料(510)面の凹凸に応じて増減
するが、このトンネル電流の増減変化量を増幅し電圧変
化量ΔVzに変え、円筒型圧電素子(100)の電極(102
5)へフィード・バック電圧Vz+ΔVzを印加する。これ
により、円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)のZ
方向の変位量が変わり、変位用バイモルフ型圧電素子
(200)の自由端(200a)、カンチ・レバー(300)の自
由端(300a)、第1の探針(110)及び第2の探針(41
0)のZ方向の一次元変位が連動して、第2の探針(41
0)と試料(510)との間の距離も変化する。このように
して、カンチ・レバー(300)に生じる撓みが先に設定
したカンチ・レバー(300)の自由端(300a)と第1の
探針(110)との間の距離の変化量ΔLとなりトンネル
電流を設定値に維持するようなフィード・バック、すな
わち原子間力が一定値に維持されるようなフィード・バ
ックが作動する。
従って、円筒型圧電素子(100)の電極(1021)、(102
2)、(1023)及び(1024)へ印加した三角波電極Vx+,V
x-,Vy+,Vy-に対応するXY座標と、電極(1025)に印加し
た電圧変化量ΔVzに対応するZ座標が試料(510)表面
の凹凸状態を反映したAFM像となる。
ここで変位用バイモルフ型圧電素子(200)の操作方法
について説明する。例えば第1D図に示すように、それぞ
れコンピュータでコントロールされるD/A変換器(31)
及び(32)を抵抗R1及びR2を介してオペアンプ電圧増幅
回路(33)に接続すると共にオペアンプ電圧増幅回路
(33)に並列に抵抗R3を接続する。抵抗R1、R2及びR3
各抵抗値を適当に設定することにより、双方のD/A変換
器(31)及び(32)の出力が互いに異なる電圧増幅率で
加算されるようにする。
変位用バイモルフ型圧電素子(200)として、例えば印
加電圧60Vにおける可動距離が15μm、最大印加電圧150
Vの素子を使った場合の単位印加電圧当たりの変位量は
約2.5オングストローム/mVである。そこで、D/A変換器
(31)及び(32)として最大出力電圧V1=±10V、16ビ
ットの変換器を用い、D/A変換器(31)の出力の電圧増
幅率を15とし、このD/A変換器(31)から出力電圧V1を1
mVづつ変化させるものとすれば、オペアンプ電圧増幅回
路(33)から15mVづつ最大150Vまで電圧を出力させるこ
とができる。すなわち、変位用バイモルフ型圧電素子
(200)を37.5オングストロームづつ最大37.5μmまで
変位させることができる。一方、D/A変換器(32)の出
力の電圧増幅率を1/15とし、このD/A変換器(32)から
の出力電圧V2を1mVづつ変化させるものとすれば、オペ
アンプ電圧増幅回路(33)から1/15mVづつ最大0.667Vま
で電圧を出力させることができる。すなわち、変位用バ
イモルフ型圧電素子(200)を0.167オングストロームづ
つ最大0.167μmまで変位させることができる。従っ
て、D/A変換器(31)及び(32)の出力を加算してオペ
アンプ電圧増幅回路(33)で増幅することにより、10オ
ングストロームのオーダのトンネル領域で変位用バイモ
ルフ型圧電素子(200)の自由端(200a)の変位を十分
にコントロールすることができる。
この発明のAFMの微動走査機構は、例えば第1E図及び第1
F図で示すように粗動機構(600)と組み合わせて使用さ
れる。微動走査機構(1000)は、例えば3点支持方式の
粗動機構(600)に装着され、粗動機構(600)と共に静
止した試料台(500)の上に載置される。粗動機構(60
0)は、その中心部付近に上面から下面に貫通する貫通
孔が形成されており、この貫通孔内に微動走査機構(10
00)を収容する。微動走査機構(1000)は、円筒型圧電
素子(100)の固定端(100b)を電気的絶縁性の例えば
石英からなる固定リング(620)を介して接着剤で貫通
孔内に固定されている。粗動機構(600)には上面から
下面に貫通する3本のネジ(610)が螺合されている。
これらのネジ(610)は、第1G図に示すように、正三角
形あるいは二等辺三角形をなすような位置に平面(XY平
面)配置されている。さらに、3本のネジ(610)によ
り形成される二等辺三角形あるいは正三角形の底辺Pの
両端に位置する2本のネジ(610)をそれぞれM1、他の
1本のネジ(610)をM2とすると、圧電素子(100)の中
心点O2、すなわち変位用バイモルフ型圧電素子取り付け
部(220)の中心点と第2の探針(410)はネジM2を通り
且つ二等辺三角形の底辺Pに垂直な直線D1−D2上に位置
し、特に第2の探針(410)は二等辺三角形の底辺から
わずかな距離Bだけずれた位置に配置される。そして粗
動機構(600)の下面から下方に突出した各ネジ(610)
の先端部が試料台(500)の試料載置面(500a)上に接
し、これにより微動走査機構(1000)の圧電素子(10
0)及び第2の探針(410)は試料台(500)の試料載置
面(500a)の上方に位置することとなる。尚、各ネジ
(610)の粗動機構(600)の下面からの突出長さは、各
ネジ(610)を回転させることによって調節することが
できる。
微動走査機構(1000)と共に粗動機構(600)を試料台
(500)の試料載置面(500a)上に載置したときに第2
の探針(410)の先端が試料(510)に触れず且つ離れ過
ぎないように、予め3本のネジ(610)の高さを調節し
ておく。その後、ネジM2を回すことにより、第2の探針
(410)の先端を試料(510)表面に近接させる。第1G図
で示したように第2の探針(410)は3本のネジ(610)
により形成される三角形の底辺Pから距離Bだけ離れて
いる。従って、この底辺PからネジM2まで距離をA(>
B)とすると、第1H図の垂直面関係図から判るように、
ネジM2を回してこれに高低差Hを与えると、2本のネジ
M1を結ぶ底辺Pが支点となり、第2の探針(410)はほ
ぼB/A倍の倍率で縮小された高低差hで上下動する。こ
の縮小率は、第1G図において、粗動機構(600)の中心O
1と第2の探針(410)が取り付けられ円筒型圧電素子
(100)の中心O2との距離Cによって決定されるので、
粗動機構(600)の製作時に所望の縮小率を設定するこ
とができる。
第2の探針(410)と試料(510)との間に作用する原子
間力が無視できる程小さくカンチ・レバー(300)に撓
みが生じない状態で、粗動機構(600)の3本のネジ(6
10)を使って第2の探針(410)と試料(510)を互いに
ある程度近接させる。次に、第1の探針(110)とカン
チ・レバー(300)との間にトンネル電流を測定するた
めのバイアス電圧を印加し、前述の如く原子間力が作用
したときにカンチ・レバーの自由端(300a)と第1の探
針(110)との間に予め設定された値のトンネル電流が
流れるようなカンチ・レバー(300)の撓みに応じた印
加電圧を変位用バイモルフ型圧電素子(200)へ印加
し、この電圧を一定値に保つ。次に、円筒型圧電素子
(100)へ三角波電圧を印加すると、第2の探針(410)
は静止した試料台(500)に取り付けた試料(510)面に
対し二次元XY走査する。
次に、ネジM2を回して第2の探針(410)と試料(510)
をさらに接近させる。そして、第2の探針(410)と試
料(510)との間に原子間力が作用してカンチ・レバー
(300)に撓みが発生し、第1の探針(110)とカンチ・
レバー(300)との間のトンネル電流が設定値に達した
らフィード・バック回路を作動させてトンネル電流を設
定値で維持するように、すなわち試料(510)面に凹凸
があってもカンチ・レバー(300)の撓みが一定となる
ように、電極(1025)へのフィード・バック電圧の印加
によって円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)をZ
方向にコントロールする。このときのXY走査量とZ方向
のフィード・バック量をディスプレイで表示することに
より、試料(510)のAFM表面観察像が映し出される。
以上説明したように、この第1実施例の微動走査機構
(1000)では、試料(510)は静止した試料台(500)上
に取り付けられるので、観察する試料(510)の寸法が
円筒型圧電素子(100)によって制限を受けることや、
試料(510)を取り付ける際に円筒型圧電素子(100)や
バイモルフ型圧電素子(200)を変形・破損させる恐れ
がない。また、試料(510)と試料台(500)の脱着が簡
単となり、第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)
の距離の設定が容易となる。
ここで、第1実施例における微動走査機構(1000)とそ
の適用のための粗動機構(600)の各部材の材質及び寸
法等を詳細に述べる。
円筒型圧電素子(100)の寸法は、例えば長さ80mm、内
径10.6mm、外径12.8mm、YX方向及びZ方向の単位印加電
圧当たりの変位量はそれぞれ約200および約100オングス
トローム/Vのものである。
変位用バイモルフ型圧電素子(200)の寸法は、クラン
プ部5mm、厚み0.53mm、全長10mm、幅2mm、印加電圧60V
における可動距離15μm、印加電圧60Vにおける力35g、
最大印加電圧150Vである。弾性板(203)は厚み0.12m
m、全長10mm、幅2mmのりん青銅(Sn:2〜8%、P:0.2%,
Cu:91.8〜97.8%)板である。圧電物質(2011)及び(2
012)の厚みは0.2mmである。
円筒型圧電素子(100)及び変位用バイモルフ型圧電素
子(200)の圧電物質(101)、(2011)及び(2012)の
材料としては、例えば電歪定数d31=−200×10-12m/V、
キユリー温度約200℃のチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr
−Ti)O3)の圧電材料を使う。電極(102)、(2021)
及び(2022)は、例えば銀(Ag)の焼き付けあるいはニ
ッケル(Ni)の無電解メッキにより例えば厚さ3μm程
度に形成される。変位用バイモルフ型圧電素子(200)
のバネ定数k2は12800N/mである。
トンネル電流を経時的に変化させたり、トンネル領域に
入る印加電圧の再現性を悪くする変位用バイモルフ型圧
電素子(200)のヒステリシス、クリープは、例えばC.
V.Newcomb and I.Flinn;Electron.Lett.,Vol.18,No.11,
pp.422−424(1982)記載の圧電素子の電源回路や、H.K
aizuka and Byron Siu;Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.27,Part
2.No.5,pp.L773−L776(1988)記載の圧電素子とコンデ
ンサとの直列接続などの電荷制御方式によって減少させ
ることができる。
第1の探針(110)は直径0.25mmのタングステン(W)
や白金・イリジウム合金(Pt:90%,Ir:10%)からなる
ワイヤの先端を機械加工あるいは電解研磨でとがらせた
もので、円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)に取
り付けられている。
第1の探針取り付け部(120)及び変位用バイモルフ型
圧電素子取り付け部(220)は、精密で複雑な形状の機
械加工ができる等方性で均質な電気的絶縁物のマシナブ
ル・セラミック(SiO2:46%,Al2O3:16%,MgO:17%,K2O:
10%,F:4%,B2O3:7%)を使っている。
カンチ・レバー(300)は、非磁性物質で且つ適切な剛
性を有する金属などの材質、例えば金(Au)、白金(P
t)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、シリコ
ン(Si)などから形成されている。その寸法は、例えば
材質としてモリブデン(Mo)を用いた場合、幅250〜300
μm、厚み10〜20μm、長さ500〜800μmである。
第2の探針保持部(420)は、例えば第2の探針(410)
の先端を露出させ、他の部分を包み込むようにしたニッ
ケル(Ni)粉末の焼結体を使う。
第2の探針(410)は、例えば天然若しくは人造のダイ
アモンド・スタイラスを使い、原子間力を検出するに必
要な鋭い尖端を有し、例えばその先端の曲率半径は0.5
μm以下である。
幅280μm、厚み10μm、長さ750μmのモリブデン(M
o)からなるカンチ・レバー(300)の自由端に、直径25
0μm、長さ300μmのニッケル(Ni)粉末焼結体からな
る第2の探針取り付け部(420)及び底面の直径250μ
m、高さ200μmの円錐形ダイアモンド・スタイラスか
らなる第2の探針(410)を取り付けたときの片持はり
としての特性は、バネ定数K3=90N/m、共振振動数は6KH
zである。
所定の各要素を互いに固定する接着剤としては、比較的
重い部材を固定するときには液たれを防止するために揺
変性(thixotropic)を備えたエポキシ樹脂と芳香族ア
ミン系の硬化剤とを用い、カンチ・レバー(300)や第
2の探針(410)のように比較的軽い部材を固定すると
きにはシアノアクリレートのような接着剤を使う。
カンチ・レバー取り付け部(320)としては、電気的絶
縁物のマシナブル・セラミックの小片を用い、これを変
位用バイモルフ型圧電素子(200)の自由端(200a)と
カンチ・レバー(300)の固定端(300b)の間に介在さ
せて接着剤で接着する。あるいは、変位用バイモルフ型
圧電素子(200)の自由端(200a)とカンチ・レバー(3
00)の固定端(300b)を例えば電気的絶縁性の優れたエ
ポキシ樹脂の接着剤で直接接着し、この接着剤をカンチ
・レバー取り付け部(320)としてもよい。
試料台(500)と粗動機構(600)の主要材料には、熱膨
張係数が小さい、例えば温度30〜100℃での寧膨張係数
が2×10-6/℃以下のインバール(Fe:64%,Ni:36%)あ
るいは温度30〜100℃での熱膨張係数が1.3×10-6/℃以
下のスーパ・インパール(Fe:63%,Ni:32%,Co:5%)等
を用いる。
3本のネジ(610)は、純鉄(Fe)あるいは硬さ及び切
削性等の機械的性質を改善するため鉄に沿(Pb)や硫黄
(S)を添加したものから形成する。各ネジ(610)
は、例えば外径1/4インチ、ピッチPが0.3175mmでネジ
山数80/インチのユニファイ細目ネジ(JIS B 0208)を
用いる。第1E図及び第1F図に示すように、これらネジ
(610)の先端部(610b)には3点支持を確実に成すた
めに金属球(610a)が設けられている。この金属球(61
0a)には例えば球径3/16インチの球軸受用鋼球(JIS B
1501)を用い、これを各ネジ(610)の先端部(610b)
の凹みにかしめて取り付ける。粗動機構(600)に平面
配置される3本のネジ(610)に対応する雌ネジには滑
らかな回転ができるよう比較的滑らかい例えば黄銅(C
u:70%,Zn:30%)の雌ネジカラー(620)が粗動機構(6
00)の中に嵌め合いで固定されている。
この発明の第2実施例に係る微動走査機構を第2A図及び
第2B図に示す。この第2実施例は、第1実施例において
第1の探針取り付け部(120)と変位用バイモルフ型圧
電素子取り付け部(220)とを、同一の連続物体からな
るほぼ円盤形状の第1探針・バイモルフ取り付け部(72
0)で構成したものである。
第1探針・バイモルフ取り付け部(720)は、円形の固
定部(720b)と円筒型圧電素子(100)の外側に位置す
る第1探針保持部(720a)からなり、固定部(720b)の
周縁部が円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)の周
縁部に例えば接着剤で固定されている。第1の探針(11
0)は第1探針保持部(720a)に装着される。変位用バ
イモルフ型圧電素子(200)の固定端(200b)は、円筒
型圧電素子(100)の自由端(100a)の中心部付近に相
当する固定部(720b)の中心部付近に例えば接着剤で固
定される。カンチ・レバー取り付け部(320)、カンチ
・レバー(300)、第2の探針の取り付け部(420)及び
第2の探針(410)はそれぞれ第1実施例と同様に配置
されている。
第1探針・バイモルフ取り付け部(720)は、マシナブ
ル・セラミックを用いて精密な機械加工により製作され
る。
この第2実施例によれば、製作の容易な高信頼性の微動
走査機構を提供できる。すなわち、第1実施例では第1
の探針(110)とカンチ・レバー(300)とが、第1B図に
示すように、第1の探針取り付け部(120)、電極(102
3)、圧電物質(101)、電極(1025)、変位用バイモル
フ型圧電素子取り付け部(220)、変位用バイモルフ型
圧電素子(200)及びカンチ・レバー取り付け部(320)
と多数の部材を介して結合されているのに対し、第2実
施例では第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)と
が、第2B図に示すように、第1探針・バイモルフ取り付
け部(720)、変位用バイモルフ型圧電素子(200)及び
カンチ・レバー取り付け部(320)と少ない部材で結合
され、第1実施例よりも簡単な径路となっている。この
ため、第1の探針(110)の先端とカンチ・レバー(30
0)との位置合わせがやりやすくなって製作が容易とな
り、また異種材質の介在が減少しているので複雑な熱膨
張や振動の問題の発生する恐れが少なくなり、高い信頼
性の微動走査機構を提供できる。
この発明の第3実施例に係る微動走査機構を第3図に示
す。この第3実施例では、円筒型圧電素子(100)の自
由端(100a)に同一の連続物体からなる橋梁形状の第1
探針・バイモルフ取り付け部(721)が固定されてい
る。
第1探針・バイモルフ取り付け部(721)は、橋梁形状
の固定部(721b)と円筒型圧電素子(100)の外側に位
置する第1探針保持部(721a)からなり、固定部(721
b)が円筒型圧電素子(100)の円筒中心を通って自由端
(100a)の周縁部の2箇所を橋渡しするように例えば接
着剤で固定されている。
この実施例によれば、第1探針・バイモルフ取り付け部
(721)の重量が小さくなると共に第1探針・バイモル
フ取り付け部(721)と円筒型圧電素子(100)の自由端
(100a)との接合部分の長さが小さくなるので、複雑な
三次元変位で微動走査機構を動作させるときの第1探針
・バイモルフ取り付け部(721)と円筒型圧電素子(10
0)との間における機械的歪みが少なくなる。
この発明の第4実施例に係る微動走査機構を第4A図及び
第4B図に示す。この第4実施例では、同一の連続物体か
らなる第1探針・バイモルフ取り付け部(722)にさら
に第3の探針(810)が取り付けられている。第1探針
・バイモルフ取り付け部(722)は、円形の固定部(722
b)と円筒型圧電素子(100)の外側に位置する第1・第
3探針保持部(722a)からなり、固定部(722b)の周縁
部が円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)の周縁部
に例えば接着剤で固定されている。第1・第3探針保持
部(722a)には、第1探針の装着箇所(722c)とこの第
1探針の装着箇所(722c)より外側に位置する第3探針
の装着箇所(722d)とが形成されており、これらにそれ
ぞれ第1及び第3の探針(110)及び(810)が装着され
る。
第3の探針(810)は、第1の探針(110)及び第2の探
針(410)よりも円筒型圧電素子(100)の円筒軸から離
れて配置されており、第3の探針(810)から試料(51
0)面を遮るものなく垂直下に見ることのできる配置と
なっている。例えば長い第3の探針(810)を第3探針
の装着箇所(722d)へ装着して第3の探針(810)の先
端が第2の探針(410)の先端よりも試料(510)面に近
くなるように配置すれば、第3の探針(810)の先端は
試料(510)面上で、円筒型圧電素子(100)の自由端
(100a)と連動して三次元変位する。
この第4実施例によれば、微動走査機構をAFMだけでな
く、走査トンネル顕微鏡(STM)としても通用できる。
第1E図ないし第1H図において説明したような粗動機構
(600)により第3の探針(810)と試料(510)を互い
に近接させた状態で、第3の探針(810)と試料(510)
との間にバイアス電圧を印加し、円筒型圧電素子(10
0)へ三角波電圧を印加すると共に、第3の探針(810)
と試料(510)の間の距離がトンネル領域となり、トン
ネル電流を設定値で維持するように圧電素子(100)の
Z方向の制御を行う。このときのXY走査量とZ方向のフ
ィード・バック量とをディスプレイで表示することによ
り、試料(510)のSTM表面観察像が映し出される。なお
図面では、第3の探針(810)へのバイアス電圧の印加
を行うための電気的導線、半田等の電気的接続用部材の
図示は省略してある。また、AFMの微動走査機構として
用いる場合は、第3の探針(810)を装着箇所(722d)
から引き抜いておくか、あるいは第3の探針(810)の
先端が第2の探針(410)より試料(510)から遠ざかる
ようにしておけばよい。
この発明の第5実施例に係る微動走査機構を第5A図に示
す。この第5実施例は、第1実施例における第1の探針
取り付け部(120)に第1の探針(110)と同軸上に雌ネ
ジ部分(1201)を形成し、ここに雄ネジ(1202)を螺合
したものである。雄ネジ(1202)を回転させると、雄ネ
ジ(1202)と接触している第1の探針(110)が押され
て進み、第1の探針(110)の尖端が図示しないカンチ
・レバーに接近する。
この第5実施例によれば、雄ネジ(1202)の回転によっ
て、第1の探針(110)の先端を予め変位用バイモルフ
型圧電素子(200)に印加する電圧E0により調節できる
一次元変位範囲内へ容易に収めて置くことができ、この
ため変位用バイモルフ型圧電素子(200)の印加電圧V0
で確実にトンネル領域を実現できる。変位用バイモルフ
型圧電素子(200)として例えば、印加電圧60Vにおける
可動距離15μmのものを用いると、この可動距離内にピ
ンセットで掴んだ第1の探針(110)の先端をカンチ・
レバー(300)の方へ近ずけることはかなり困難である
が、この第5実施例の雄ネジ(1202)を回転させると容
易に近ずけることができる。雄ネジ(1202)には例えば
ピッチ250μmのM1(JIS B1101)小ネジを使い、雌ネジ
部分(1201)はこれに対応した雌ネジを第1の探針取り
付け部(120)に部分的に形成しておけばよい。
第1の探針(110)の装着方法を詳述すれば、第1の探
針取り付け部(120)に例えば導線(リード線)の半田
付けが可能な金属製の外径0.75mm、内径0.4mmの細管を
嵌めておき、この細管内に第1の探針(110)を少し
「く」字形に曲げて挿入し装着する。さらに、第1の探
針(110)とカンチ・レバー(300)の間をルーペ或は実
体顕微鏡で覗きながら雄ネジ(1202)を回転させて第1
の探針(110)の先端をカンチ・レバー(300)の方へ近
づけたら、少し雄ネジ(1202)を逆回転させるか取りは
ずす。これにより、第1の探針(110)は細管内に留ま
り、雄ネジ(1202)と第1の探針(110)との接触がな
くなって、雄ネジ(1202)の緩み及びガタによる第1の
探針(110)の先端の経時的位置ずれが防止される。ま
た、雄ネジ(1202)を通じて外部から受ける第1の探針
(110)の振動を防ぐことができる。
第5B図及び第5C図に第5実施例の変形例を示す。第5B図
の変形例では、第2実施例及び第3実施例の第1探針・
バイモルフ取り付け部(720)及び(721)の第1探針保
持部(720a)及び(721a)に雌ネジ部分(7201)が形成
され、ここに雄ネジ(7202)が螺合されている。一方、
第5C図の変形例では、第4実施例の第1探針・バイモル
フ取り付け部(722)の第1探針の装着箇所(722c)に
雌ネジ部分(7201)が形成され、ここに雄ネジ(7202)
が螺合されている。これらの変形例においても上述した
第5実施例と同様の効果が得られる。尚、第5C図の第3
の探針(810)は第5実施例で説明した第1の探針(11
0)の装着方向と同様の方法により装着するこができ
る。
さらに、第5D図ないし第5F図に示すように、側面にネジ
切りされた、すり割り付きの第1の探針(111)を使用
し、これを雌ネジ(1201)及び(7201)に螺合させても
よい。雄ネジの第1の探針(111)を回転させることに
より、その第1の探針(111)の先端がカンチ・レバー
(300)の方へ近づく。
このような雄ネジが形成された第1の探針(111)とし
ては、例えば直径1mmのタングステン(W)棒の側面に
0.25mmのピッチのメートル並目ネジ(JIS B 0205)を形
成した後、一端にネジ回し道具で回転させることができ
るように例えば幅0.32mm、深さ0.35mmのすり割りを設
け、他端の先端を機械加工あるいは電解研磨でとがらせ
たものを用いる。
これら第5D図ないし第5F図に示した変形例によれば、螺
合部の長さを大きくとれるので、第1の探針(111)を
第1の探針取り付け部(120)もしくは第1探針・バイ
モルフ取り付け部(720)〜(722)に少ない緩み及びガ
タで装着できる。
この発明の第6実施例に係る微動走査機構を第6A図及び
第6B図に示す。この第6実施例では、変位用バイモルフ
型圧電素子(200)の自由端(200a)を機械的に挟んで
カンチ・レバー取り付け部(320)を固定・保持する保
持用圧電素子(900)が第1探針・バイモルフ取り付け
部(720)に設けられている。
保持用圧電素子(900)としては例えば一対のパラレル
型の保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)を用
いる。これら一対の保持用バイモルフ型圧電素子(91)
及び(92)はいずれも変位用バイモルフ型圧電素子(20
0)と平行に第6A図のY軸方向に沿って配置されてい
る。保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)の固
定端(91b)及び(92b)はいずれも変位用バイモルフ型
圧電素子(200)の固定端(200b)の取り付けられてい
る近傍で、第1探針・バイモルフ取り付け部(720)に
取り付けられている。
保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)は、第6C
図に示されるように、それぞれ弾性板(913)及び(92
3)の両面に圧電物質(9111)、(9112)及び(921
1)、(9212)が形成され、さらにこれら圧電物質の上
に電極(9121)、(9122)及び(9221)、(9222)が形
成されている。圧電物質(9111)及び(9211)はそれぞ
れ電極(9121)及び(9221)から弾性板(913)及び(9
23)に向かう方向が、圧電物質(9112)及び(9212)は
それぞれ弾性板(913)及び(923)から電極(9122)及
び(9222)へ向かう方向が分極方向となり且つ歪み方向
と分極方向が直交する横効果モードで分極処理が施され
ている。各圧電素子(200)、(91)及び(92)におい
て、一対の電極(2021)と(2022)、(9121)と(912
2)、(9221)と(9222)をそれぞれ電気的に接続して
この接続側を+電位とし、弾性板(203)、(913)及び
(923)を−電位として電圧を印加すると、変位用バイ
モルフ型圧電素子(200)の自由端(200a)はF2、保持
用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)の自由端(91
a)及び(92a)はそれぞれF91,F92の変位量で矢印で示
した方向に変位する。すなわち、一対の保持用バイモル
フ型圧電素子(91)及び(92)の自由端(91a)及び(9
2a)の変位方向が逆方向である。なお図面では、各電極
及び弾性板への駆動電圧の印加を行うための電気的導
線、半田等の電気的接続用部材の図示は省略してある。
変位用バイモルフ型圧電素子の自由端(200a)には、そ
の外周部を包むようにキャップ状をした例えばマシナブ
ル・セラミックのような電気的絶縁性の材質の絶縁子
(204)が取り付けられている。一対の保持用バイモル
フ型圧電素子(91)及び(92)に電圧を印加しないとき
は、絶縁子(204)と保持用バイモルフ型圧電素子(9
1)及び(92)の自由端(91a)及び(92a)との間隔d
はそれぞれ電圧印加時の保持用バイモルフ型圧電素子
(91)及び(92)の変位量F91及びF92よりも小さい値と
なっている。
保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)は次のよ
うに動作する。まず、保持用バイモルフ型圧電素子(9
1)及び(92)に電圧を印加せずに、第1図でもって説
明したように、第2の探針(410)と試料(510)との間
で作用する原子間力がなく、カンチ・レバー(300)に
撓みのない状態で、変位用バイモルフ型圧電素子(20
0)への印加電圧を大きくしていく。そして、カンチ・
レバー(300)の自由端(300a)と第1の探針(110)と
の間の距離がトンネル領域にはいり、流れるトンネル電
流が設定値となるよう、その距離を小さくしてゆく。こ
のようにして流れるトンネル電流が設定値となったと
き、変位用バイモルフ型圧電素子(200)への印加電圧
を原子間力が作用したときのカンチ・レバー(300)の
撓みに応じた印加電圧として、この電圧を一定値に保つ
と共に、保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)
に自由端(91a)及び(92a)の変位量F91及びF92が初期
の間隔dより大きくなるような電圧を印加する。これに
より、変位用バイモルフ型圧電素子の自由端(200a)は
絶縁子(204)を介して保持用バイモルフ型圧電素子(9
1)及び(92)の自由端(91a)及び(92a)により挟ま
れ、固定・保持される。
この状態で円筒型圧電素子(100)へ三角波電圧を印加
すると、円筒型圧電素子(100)の自由端(100a)、変
位用バイモルフ型圧電素子(200)の自由端(200a)、
カンチ・レバー(300)の自由端(300a)、第1の探針
(110)及び第2の探針(410)が連動して、第2の探針
(410)は静止した試料台(500)に取り付けた試料台
(510)面に対し二次元走査する。
従って、第1E図ないし第1H図において説明したような粗
動機構(600)により第2の探針(410)と試料(510)
との間で原子間力が作用しカンチ・レバー(300)が撓
むまで第2の探針(410)と試料(510)との間を近接さ
せ、カンチ・レバー(300)の自由端(300a)と第1の
探針(110)との間のトンネル電流が設定値に維持され
るように円筒型圧電素子(100)のZ方向の制御を行え
ば、このときのXY走査量とZ方向のフィード・バック量
とをディスプレイで表示することにより試料(510)のA
FM表面観察像が映し出される。
保持用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)として
は、変位用バイモルフ型圧電素子(200)と同じ寸法、
材質のものを用いることができる。
この第6実施例によれば、変位用バイモルフ型圧電素子
(200)の自由端(200a)が絶縁子(204)を介して保持
用バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)により挟み込
まれているから、上述した電荷制御方式を併用すること
により、変位用バイモルフ型圧電素子(200)のヒステ
リシス及びクリープを無くすことができる。すなわち、
トンネル電流が経時的に変化したり、トンネル領域に入
る印加電圧の再現性の低下を防止できる。この実施例
は、第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)との距
離をトンネル領域範囲内に設定するのに、挟み込んで固
定し易い自由端(200a)を有する片持ちはりの形状であ
る変位用バイモルフ型圧電素子(200)を使っているか
ら実現可能なものである。
第6D図に示すように、絶縁子(204)をカンチ・レバー
取り付け部とすることもできる。
また、第6E図に示すように、第3実施例で示した橋梁形
状の第1探針・バイモルフ取り付け部(721)に保持用
バイモルフ型圧電素子(91)及び(92)等を設けてもよ
い。
この発明の第7実施例に係る微動走査機構を第7A図に示
す。この第7実施例では、変位用バイモルフ型圧電素子
(200)の自由端(200a)にカンチ・レバー取り付け部
(320)の位置を微調節する微調節用圧電素子(930)が
設けられている。
微調節用圧電素子(930)は、変位用バイモルフ型圧電
素子(200)の自由端(200a)に取り付けられた微調節
用圧電素子取り付け部(940)とカンチ・レバー取り付
け部(320)との間に介在する縦効果モードの単層の角
板型圧電素子である。この微調節用圧電素子(930)は
圧電物質(9311)と電極(9321)及び(9322)から構成
されており、第7B図に示すように、圧電物質(9311)は
電極(9321)から電極(9322)へ向かう矢印の方向が分
極方向となり且つ歪み方向と分極方向が同じである縦効
果モードで分極処理が施されている。
第1C図において説明したように、変位用バイモルフ型圧
電素子(200)の電極(021)と電極(2022)を電気的に
接続してこの接続側を+電位とし、弾性板(03)を−電
位として両者の間に電圧E0を印加すると、その自由端
(200a)は固定端(200b)に対してZ軸方向にu0の一次
元変位を生じる。一方、微調節用圧電素子(930)の電
極(9322)は+電位、電極(9321)は−電位としてこれ
ら両者の間に電圧E1印加・駆動すると電極(9322)は微
調節用圧電素子取り付け部(940)に対してZ軸方向にu
1の一次元変位を生じる。従って、変位用バイモルフ型
圧電素子(200)と微調節用圧電素子(930)へそれぞれ
電圧を印加・駆動すると、電極(9322)は変位用バイモ
ルフ型圧電素子(200)の固定端(200b)からZ軸方向
にu=u0+u1の一次元変位をすることになる。尚、第7A
図では、電極(9321)及び(9322)への駆動電圧の印加
を行うための電気的導線、半田等の電気的接続用部材の
図示は省略してある。
微調節用圧電素子(930)は、例えば長さ1mm、幅2mm、
厚み0.3mmであり、印加電圧10Vにおける一次元変位量u1
は40オングストロームである。圧電物質(9311)の厚み
は0.2mmであり、その材料としては、例えば電歪定数d33
=400×10-12m/V、キュリー温度約200℃のチタン酸ジル
コン酸鉛(Pb(Zr−Ti)O3)を用いる。電極(9321)及
び(9322)は、例えば銀(Ag)の焼き付けあるいはニッ
ケル(Ni)は無電解メッキにより厚さ3μm程度に形成
される。微調節用圧電素子取り付け部(940)の材質と
しては、電気的絶縁物の例えばマシナブル・セラミック
を用いる。
この第7実施例の動作とその効果を、第7C図を用いて説
明する。変位用バイモルフ型圧電素子(200)には、コ
ンピュータでコントロールされる最大出力電圧V1=±10
Vの16ビットのD/A変換器(31)が抵抗R1を介してオペア
ンプ電圧増幅回路(33)に接続されると共にオペアンプ
電圧増幅回路(33)に並列に抵抗R3が接続されている。
抵抗R1及びR3はD/A変換器(31)の出力が電圧増幅率15
で増幅されるような値に設定されている。
変位用バイモルフ型圧電素子(200)として、例えば印
加電圧60Vにおける可動距離が15μm、最大印加電圧150
Vの素子を使った場合、D/A変換器(31)からの出力電圧
V1を1mVづつ変化させるものとすれば、オペアンプ電圧
増幅回路(33)から15mVづつ最大150Vまで電圧を出力さ
せることができる。すなわち、変位用バイモルフ型圧電
素子(200)の変位量u0を37.5オングストロームづつ最
大37.5μmまで変化させることができる。
一方、微調節用圧電素子(930)には、コンピュータで
コントロールされる最大出力電圧V2=±10Vの16ビット
のD/A変換器(32)の出力V2が印加されるように接続さ
れている。微調節用圧電素子(930)の単位印加電圧当
たりの変位量は4オングストローム/Vであるから、印加
電圧V2を1mVづつ変化させるものとすれば、微調節用圧
電素子(930)の変位量u1は0.004オングストロームづつ
最大40オングストロームまで変化させることができる。
従って、D/A変換器(31)からの出力電圧V1を1mVだけ変
化させたときの変位用バイモルフ型圧電素子(200)の
変位量37.5オングストロームはD/A変換器(32)の出力V
2による微調節圧電素子(930)の可変範囲内となる。す
なわち、変位用バイモルフ型圧電素子(200)と微調節
圧電素子(930)の合成変位量u=u0+u1によって、第
1の探針(110)とカンチ・レバー(300)との距離を緻
密に変化させることができる。
変位用バイモルフ型圧電素子(200)と比べて寸法が小
さくクリープが極めて少なく且つ単位印加電圧当たりの
変位量の小さいという特長を有する微調節用圧電素子
(930)と、単位印加電圧当たりの変位量が大きいとい
う特徴を有する変位用バイモルフ型圧電素子(200)と
を併用することにより、短時間で容易に第1の探針(11
0)とカンチ・レバー(300)との間の距離をトンネル領
域内に収めることができる。この第7実施例では、第2
の探針(410)と試料(510)の間で原子間力が作用して
カンチ・レバー(300)が撓んだときのカンチ・レバー
(300)の自由端(300a)と第1の探針(110)との間の
距離の変化量ΔLに相当する変位用バイモルフ型圧電素
子(200)への印加電圧の変化量ΔVの代わりに、変位
量を極めて少しづつ変化できる微調節用圧電素子(93
0)の印加電圧の変化量で置き変えることができるか
ら、微小なカンチ・レバー(300)の撓み、すなわち微
弱な原子間力の観測に対応できる微動走査機構となる。
微調節用圧電素子(930)の代わりに第7D図に示すよう
に、多層例えば3層の積層の角板型圧電素子からなる微
調節用圧電素子(950)を用いてもよい。微調節用圧電
素子(950)は圧電物質(9511)〜(9513)と電極(952
1)〜(9524)から構成されており、第7E図に示すよう
に、圧電物質(9511)〜(9513)はそれぞれ図中の矢印
の方向が分極方向となり且つ歪み方向と分極方向が同じ
である縦効果モードで分極処理が施されている。このた
め、微調節用圧電素子(950)の電極(9522)及び(952
4)を電気的に接続してこれを+電位、電極(9521)及
び(9523)を電気的に接続してこれを−電位としてこれ
ら両者の間に電圧E3を印加・駆動すると電極(9524)は
微調節用圧電素子取り付け部(940)に対してZ軸方向
にu3の一次元変位を生じる。従って、変位用バイモルフ
型圧電素子(200)と微調節用圧電素子(950)へそれぞ
れ電圧を印加・駆動すると、電極(9524)は変位用バイ
モルフ型圧電素子(200)の固定端(200b)からZ軸方
向u=u0+u3の一次元変位をすることになる。
第7A図及び第7B図に示した微調節用圧電素子(930)と
各圧電物質の寸法及び材質等が等しい場合には、変位量
u3=3u1となり、微調節用圧電素子(950)の単位印加電
圧当たりの変位量は12オングストローム/Vとなる。同様
に、n層の積層の角板型圧電素子を用いるとその変位量
unはun=n・u1となる。従って、多層の角板型圧電素子
を用いた場合には、単層の角板型圧電素子の場合よりも
一次元の変位量が大きくなるので、トンネル領域内に入
るまでの第1の探針(110)とカンチ・レバー(300)と
の間の距離範囲をより広く探索することができる。
第7F図に示すように、変位用バイモルフ型圧電素子(20
0)の自由端(200a)にその外周部を含むようにキャッ
プ状をした例えばマシナブル・セラミックのような電気
的絶縁性の材質の絶縁子(204)を取り付けると共に絶
縁子(204)に微調節用圧電素子(930)あるいは(95
0)を取り付け、さらに一対の保持用バイモルフ型圧電
素子(91)及び(92)を用いて絶縁子(204)を機械的
に挟み込むことにより固定・保持することもできる。こ
のようにして変位用バイモルフ型圧電素子(200)の自
由端(200a)を固定・保持した後は、クリープの極めて
少なく且つ単位印加電圧当たりの変位量の小さい微調節
用圧電素子(930)あるいは(950)で容易に第1の探針
(110)とカンチ・レバー(300)の間の距離をトンネル
領域内に入れることができる。
この発明の第8実施例に係る微動走査機構を第8A図及び
第8B図に示す。この第8実施例では、微調節用圧電素子
(930)の圧電印加のための電極(9321)が変位用バイ
モルフ型圧電素子(200)の電圧印加のための電極(202
1)と例えば半田付けによって電気的に接続かつ機械的
に結合されている。
第8実施例の動作は第7実施例と同様であるが、変位用
バイモルフ型圧電素子(200)及び微調節用圧電素子(9
30)に印加する各電圧の極性を調整するため、第8C図に
示すように、変位用バイモルフ型圧電素子(200)の電
極(2021)及び(2022)を接地する一方、弾性板(20
3)に反転電圧増幅器(34)を介してオペアンプ電圧増
幅回路(33)を接続し、さらに微調節用圧電素子(93
0)の電極(9322)にD/A変換器(32)を接続すればよ
い。また、第8D図に示すように、D/A変換器(31)の代
わりに反転された電圧−V1を出力するD/A変換器(35)
を用いれば、反転電圧増幅器(34)は不要となる。
また、第8E図及び第8F図に示すように、多層の角板型圧
電素子からなる微調節用圧電素子(950)の電極(952
1)と変位用バイモルフ型圧電素子(200)の電極(202
1)とを電気的に接続かつ機械的に結合することもでき
る。
この第8実施例では、第7実施例における微調節用圧電
素子取り付け部(940)が無いので、構造が簡単となっ
て剛性が高まると共に微動走査機構をより簡単に製造す
ることが可能となる。
尚、第7及び第8実施例における、変位用バイモルフ型
圧電素子(200)、微調節用圧電素子(930)及び(95
0)の各電極に印加する電圧の極性、電気的接続方法は
単なる例示に過ぎず、これらの実施例と異なった分極方
向に各圧電物質を分極処理した場合には、その分極処理
に応じた電気回路及び電気的接続方法を用いればよい。
〔発明の効果〕
以上説明したように、この発明に係るAFMの微動走査機
構は、円筒型圧電素子と、円筒型圧電素子の三次元変位
側端部に取り付けられた第1の探針取り付け部と、第1
の探針取り付け部に装着された第1の探針と、円筒型圧
電素子の三次元変位側端部に取り付けられた変位用バイ
モルフ型圧電素子取り付け部と、変位用バイモルフ型圧
電素子取り付け部に取り付けられた変位用バイモルフ型
圧電素子と、変位用バイモルフ型圧電素子の一次元変位
側端部に取り付けられたカンチ・レバー取り付け部と、
カンチ・レバー取り付け部に取り付けられたカンチ・レ
バーと、カンチ・レバーの撓み変位側端部に取り付けら
れた第2の探針取り付け部と、第2の探針取り付け部に
装着された第2の探針と、第2の探針に対向するように
配置された試料台とを備えているので、製作が容易で且
つ作業性に優れ、寸法により試料が制限を受けることが
少ない、信頼性の高い微動走査機構が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1A図及び第1B図はそれぞれこの発明の第1実施例に係
る微動走査機構を示す斜視図及び断面図、第1C図は第1
実施例の一部拡大断面図、第1D図は第1実施例を動作さ
せるための電気回路を示すブロック図、第1E図及び第1F
図はそれぞれ第1実施例の微動走査機構が適用される粗
動機構を示す斜視図及び断面図、第1G図及び第1H図はそ
れぞれ第1E図の粗動機構の動作を示す図、第2A図及び第
2B図はそれぞれ第2実施例に係る微動走査機構を示す斜
視図及び断面図、第3図は第3実施例に係る微動走査機
構を示す斜視図、第4A図及び第4B図はそれぞれ第4実施
例に係る微動走査機構を示す斜視図及び断面図、第5A図
は第5実施例に係る微動走査機構を示す部分断面図、第
5B図ないし第5F図はそれぞれ第5実施例の変形例を示す
部分断面図、第6A図及び第6B図はそれぞれ第6実施例に
係る微動走査機構を示す斜視図及び断面図、第6C図は第
6実施例の部分断面図、第6D図及び第6E図はそれぞれ第
6実施例の変形例を示す部分斜視図及び斜視図、第7A図
及び第7B図はそれぞれ第7実施例に係る微動走査機構の
部分斜視図及び部分断面図、第7C図は第7実施例を動作
させるための電気回路を示すブロック図、第7D図及び第
7E図はそれぞれ第7実施例の変形例を示す部分斜視図及
び部分断面図、第7F図は第7実施例の他の変形例を示す
部分斜視図、第8A図及び第8B図はそれぞれ第8実施例に
係る微動走査機構の部分斜視図及び部分断面図、第8C図
及び第8D図はそれぞれ第8実施例を動作させるための電
気回路を示すブロック図、第8E図及び第8F図はそれぞれ
第8実施例の変形例を示す部分斜視図及び部分断面図、
第9A図ないし第9E図はそれぞれ従来の微動走査機構を示
す図である。 図において、(100)は円筒型圧電素子、(110)及び
(111)は第1の探針、(120)は第1の探針取り付け
部、(200)は変位用バイモルフ型圧電素子、(220)は
変位用バイモルフ型圧電素子取り付け部、(300)はカ
ンチ・レバー、(320)はカンチ・レバー取り付け部、
(410)は第2の探針、(420)は第2の探針取り付け
部、(500)は試料台、(720)、(721)及び(722)は
第1探針・バイモルフ取り付け部、(810)は第3の探
針、(900)は保持用圧電素子、(930)及び(950)は
微調節用圧電素子である。 なお図面中の同一符号は同一または相当部分を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−130302(JP,A) 特開 平2−132303(JP,A) 特開 平2−147804(JP,A) 特開 平1−314905(JP,A) 実開 平2−113104(JP,U)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円筒型圧電素子と、 前記円筒型圧電素子の三次元変位側端部に取り付けられ
    た第1の探針取り付け部と、 前記第1の探針取り付け部に装着された第1の探針と、 前記円筒型圧電素子の三次元変位側端部に取り付けられ
    た変位用バイモルフ型圧電素子取り付け部と、 前記変位用バイモルフ型圧電素子取り付け部に取り付け
    らた変位用バイモルフ型圧電素子と、 前記変位用バイモルフ型圧電素子の一次元変位側端部に
    取り付けられたカンチレバー取り付け部と、 前記カンチ・レバー取り付け部に取り付けられたカンチ
    ・レバーと、 前記カンチ・レバーの撓み変位側端部に取り付けられた
    第2の探針取り付け部と、 前記第2の探針取り付け部に装着された第2の探針と、 前記第2の探針に対向するように配置された静止した試
    料台と を備えたことを特徴とする原子間力顕微鏡の微動走査機
    構。
  2. 【請求項2】前記第1の探針取り付け部と前記変位用バ
    イモルフ型圧電素子取り付け部とが同一の連続物体から
    なる第1探針・バイモルフ取り付け部で形成された請求
    項第1記載の微動走査機構。
  3. 【請求項3】前記第1探針・バイモルフ取り付け部は、
    ほぼ円形の固定部とこれに連結された第1探針保持部と
    を有し、前記固定部の周縁部が前記円筒型圧電素子の三
    次元変位側端部の周縁部に固定された請求項2記載の微
    動走査機構。
  4. 【請求項4】前記第1探針・バイモルフ取り付け部は、
    橋梁形状の固定部とこれに連結された第1探針保持部と
    を有し、前記固定部は前記円筒型圧電素子の円筒軸を通
    り且つ前記円筒型圧電素子の三次元変位側端部の周縁部
    の2箇所を橋渡しするように固定された請求項2記載の
    微動走査機構。
  5. 【請求項5】さらに、前記第1の探針及び前記第2の探
    針よりも前記円筒型圧電素子の円筒軸から離れて前記第
    1探針・バイモルフ取り付け部に装着された第3の探針
    を備えた請求項2記載の微動走査機構。
  6. 【請求項6】前記第1の探針取り付け部は、前記第1の
    探針と同軸上に設けられた雌ネジ部分と、前記雌ネジ部
    分に螺合され、探針と接触して探針を押し進める雄ネジ
    もしくは探針に形成された雄ネジとを有する請求項1記
    載の微動走査機構。
  7. 【請求項7】さらに、前記変位用バイモルフ型圧電素子
    の一次元変位側端部を機械的に固定・保持するための保
    持用圧電素子を備えた請求項1記載の微動走査機構。
  8. 【請求項8】さらに、前記変位用バイモルフ型圧電素子
    の一次元変位側端部と前記カンチ・レバー取り付け部と
    の間に介在され且つ前記変位用バイモルフ型圧電素子の
    一次元変位側端部と前記カンチ・レバー取り付け部との
    相対的な位置関係を微調節するための微調節用圧電素子
    を備えた請求項1記載の微動走査機構。
  9. 【請求項9】前記微調節用圧電素子は少なくとも二つの
    電極を有し、一方の電極に前記変位用バイモルフ型圧電
    素子の一電極が電気的且つ機械的に結合され、他方の電
    極に前記カンチ・レバー取り付け部が設けられた請求項
    8記載の微動走査機構。
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