JPH0755330B2

JPH0755330B2 - スケールブレーカー用ワークロール

Info

Publication number: JPH0755330B2
Application number: JP62192670A
Authority: JP
Inventors: 聡笠井; 章博柳沢; 洋一松原; 伸公高崎
Original assignee: Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Current assignee: Dai Ichi High Frequency Co Ltd
Priority date: 1987-08-03
Filing date: 1987-08-03
Publication date: 1995-06-14
Anticipated expiration: 2010-06-14
Also published as: JPS6440112A

Description

【発明の詳細な説明】〔産業上の利用分野〕本発明は脱スケール性の向上を目的としたテンションレ
ベラーロールとして、耐摩耗性，耐食性及び耐スポーリ
ング性の大きいスケールブレーカー用ワークロールに関
するものである。

〔従来の技術〕

一般に、鋼材を高温で成形加工すると、加工時に空気に
接触して鋼材表面に鉄酸化物の硬い被膜即ちスケールが
生成する。このスケールは従来、通常酸洗により化学的
に除去されているが、最近の鋼板，鋼帯の酸洗ラインで
は、酸洗の軽減，高能率化などの目的から、酸洗の前処
理として、鋼板，鋼帯に繰返し曲げ加工を施すことによ
り、スケール層に多数の亀裂を生ぜしめるスケールブレ
ーキングが実施されるようになってきた。

このスケールブレーカとしては、被処理材の形状矯正を
かねて、多数のロールにより構成されるレベラタイプの
ものが一般的である。

而して、スケールブレーカー用ロールは被処理材の変形
抵抗が高いため、耐摩耗性，耐酸化性及び耐スポーリン
グ性を有することが要求されており、従来は１〜３％Cr
鍛鋼ロール,5〜９％Crの肉盛ロールが使用されていた。

〔発明が解決しようとする課題〕然し乍ら、上記のスケールブレーカー用ロールは、繰返
し曲げ加工を施される鋼板の曲げ反力による大きな面圧
と高硬度スケールのデスケーリングの水冷のために、１
〜３％Cr程度の鍛鋼ロールでは熱処理硬さがHS90以上で
あるが、摩耗及び腐食が早く、短期間で組替えられてい
る。

また、５〜９％Cr肉盛ロールの場合は、肉盛層の組織及
び硬さが不均一となり、特にビード重なり部分の偏摩耗
が著しくなり、所謂ビードマークが生じて、製品の商品
価値を低落せしめ、スポーリングが発生し、短期間で組
替えられるという問題点がある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は上述のような従来技術の問題点を解決し、優れ
た耐摩耗性，耐食性及び耐スポーリング性を有するスケ
ールブレーカー用ワークロールを提供することを目的と
してなされたもので、その構成は、重量％で、C:0.8〜
1.3％未満,Cr:3〜５％,Mo:4〜７％,W:4〜11％,V:1〜５
％を主化学成分として含有する鋼を、圧延又は鍛造によ
りロール状に形成すると共に、熱処理後の表面硬さをHS
85〜90、硬化深さをロール表面より５〜10mm深さでHS85
以上を保持したことを特徴とするものである。

〔発明の作用〕

即ち、本発明スケールブレーカー用ワークロールは、適
量の合金成分を添加して合金炭化物形成したことにより
耐摩耗性，耐腐食性が良好となり、且つ適正な熱処理を
施して表面硬さをHS85〜90とし、硬化深さを表面から５
〜10mm深さでHS85以上を保持することにより、耐スポー
リング性が増大された。尚、残留オーステナイト量は15
％以下が望ましい。

而して、本発明において適用される鋼の成分組成を限定
する理由について説明すれば、次の通りである。

Ｃは金属炭化物を形成して、耐摩耗性を向上させると共
に焼入性の増加に寄与するものであるが、0.8％以下で
は耐摩耗性が低く、1.3％以上になると逆に焼入性が低
下し、残留オーステナイト量が増加するため、Ｃは0.8
〜1.3％未満の範囲内にする必要がある。

CrはCr炭化物を形成して、マトリックス中に分散するこ
とにより、耐摩耗性，耐腐食性を向上させ、且つCrの一
部は固溶して焼入性を増加するのに寄与するものである
が、Crは３％より少ないと硬さが低くて耐摩耗性が減少
し、５％以上になると脆くなって靱性が低下し、耐スポ
ーリング性が減少しやすいので、Crは３〜５％の範囲内
にする必要がある。

MoはMo炭化物を形成して焼入性を増し、耐摩耗性を向上
させ、また、加熱の際に結晶粒子の成長を抑える力が大
きいので靱性を付与し、耐スポーリング性を向上させる
ものであるが、このMoはその量が４％より少ないと、焼
入硬さが低くなって耐摩耗性を減少させ、７％以上にな
ると、加熱時の変態点を下げ、脱炭層が増大する傾向を
示すので、Moは４〜７％の範囲内にする必要がある。

ＷはＷ炭化物を形成して耐摩耗性を向上させるものであ
るが、その量が５％より少ないと、Ｗ炭化物が少なくて
耐摩耗性が減少し、また、その量が11％以上になると、
Ｗ炭化物の量は増すが、マトリックス中のＣ量が減少
し、焼入硬さが低下して脆くなり、耐スポーリング性が
低下しやすいので、Ｗは５〜11％の範囲内にする必要が
ある。

ＶはＶ炭化物を形成して極めて硬くなり、耐摩耗性を向
上させるばかりでなく、マトリックス中に固溶して結晶
粒子を微細ならしめ、加熱時の結晶の成長を阻止するこ
とができるが、その量は１％より少ないと、焼入硬さが
低くなって耐摩耗性を減少させ、また、その量が５％よ
り多くなると、Ｖ炭化物が多くなってマトリックス中に
固溶するＣの量が低くなり、焼入硬さが低くなって耐摩
耗性が減少するので、Ｖは１〜５％の範囲内にする必要
がある。

本発明ワークロールには、上述諸成分の他にCoを適量配
合した鋼材を用いてもよい。CoはＣのFeへの溶解度を高
め、マトリックス中に固溶するＣの量を増大させるとと
もに、Co自体がマトリックス中に固溶しやすいことから
溶融開始温度が上昇し、加熱時に過熱組織を生じにくゝ
する。更に、軟化開始温度も上昇することから、高温硬
さが高くなり、高温における耐摩耗性が増す。配合量
は、残留オーステナイトの増大による耐摩耗性の低下あ
るいは脆性の増大を避ける観点から、11％以下に留める
のがよい。

次に、熱処理後の表面硬さと硬化深さについて説明す
る。

表面硬さがHS85以下では耐摩耗性が低く、HS90以上では
使用時に加工硬化しやすく、耐スポーリング性が低下す
るので、表面硬さはHS85〜90の範囲にすることが必要で
ある。

また、硬化深さは、表面から5mm以下の場合は耐スポー
リング性が低下し、10mm以上の場合は熱処理時の変形が
生じやすく、加工が困難であり、スケールブレーキング
時の曲げ応力，衝撃に対して靱性が少ないので、硬化深
さは５〜10mmの範囲が必要である。勿論、その範囲の硬
さは上記によりHS85以上が必要である。

尚、上記の熱処理後の表面硬さと硬化深さは例えば熱処
理方法により容易に調整することができる。

一方、残留オーステナイトが15％以上あると、ロール使
用中に加工硬化しやすく、耐スポーリング性が低下す
る。

〔実施例〕

次に本発明の実施例について説明する。

第１図は本発明スケールブレーカー用ワークロールを用
いて構成したレベルを示すもので、１はスケールブレー
キングされる圧延鋼板、２はワークロール、３はバック
アップロールで、ワークロール２及びバックアップロー
ル３を１組とし、これらの組を鋼板１を挟んで互いに対
向するように複数組配設した４重式レベラであり、本発
明ワークロールは上記の各ワークロール２に用いるので
ある。

このワークロールは、主化学成分として重量％で、C:0.
9％,Cr:4.0％,Mo:5.0％,W:6.0％,V:2.0％を含有し、一
部Co:5.0％を含有させた鋼を鍛造してロールに形成し、
適正な熱処理を施し、表面硬さ86〜88、その硬化深さ7m
mとしたものであり、これを用いてスケールブレーキン
グを行ない、２ヵ月使用した後、摩耗量を測定したとこ
ろ、外径で0.2mmに過ぎなかった。

これに対し、従来の２％Cr鍛鋼ロールは１週間の使用
で、外径が3.0mm腐食，摩耗した。

また、Cr5％肉盛ロールは２週間の使用で、所謂ビード
マークが生じると共に、スポーリングが発生した。

尚、上記の結果を第１表に示す。

また、本発明ワークロールの断面硬さ分布は第２図の図
表に示す通りであった。

上記の本発明において、表面硬さをHS85〜90、硬化深さ
をロール表面から５〜10mmでHS85以上を保持するための
適正な熱処理としては、例えば、高周波誘導加熱により
所定温度に急速加熱し、かつ、その保持時間を10〜60秒
という極く短時間の加熱をすることにより行うことが望
ましい。このような加熱態様によって、焼入硬さがHS85
以上になる深さを表面から５〜10mmに形成できるのであ
る。

即ち、本発明では、繰返し鋼板の曲げ反力による大きな
面圧や硬度の高いスケールのデスケーリングの水冷など
の影響を受けるスケールブレーカ用ワークロールである
ため、高周波誘導加熱のような急速加熱による焼入によ
ってロールの芯部まで硬化深さを及ぼさないようにした
ものであり、それゆえに、Ｃ量が1.3％以上では高周波
加熱のような短時間加熱においてはＣが充分に母材を溶
込めない。しかも、Ｃ量が1.3％以上であると、残留オ
ーステナイトが増加し、熱処理上不具合を生じる。

また、本発明では、例えば、高周波誘導加熱により短時
間加熱の熱処理を施すため、マトリックス中のＣと親和
性の高いCr、Ｖ、Ｗ、Moなどとの炭化物生成量もそれ程
多くはならず、従って、充分にマトリックス中にＣ量が
残存する。それゆえに、焼入後のマトリックスの硬さ
は、Ｃが0.8％以上1.3％未満でも充分な硬度（HRC65以
上）が得られるのである。

〔発明の効果〕

本発明は上述の通りであるから、耐摩耗性，耐腐食性及
び耐スポーリング性が著しく優れたスケールブレーキン
グ用ワークロールとして好適である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明スケールブレーキング用ワークロールを
用いた４重式レベラを示す図、第２図は本発明ロールの
断面硬さ分布を示す図表である。１…圧延鋼板、２…ワークロール、３…バックアップロ
ール

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者柳沢章博千葉県千葉市川崎町１番地川崎製鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者松原洋一神奈川県川崎市川崎区殿町２丁目８番３号第一高周波工業株式会社内 (72)発明者高崎伸公神奈川県川崎市川崎区殿町２丁目８番３号第一高周波工業株式会社内 (56)参考文献特開昭61−165211（ＪＰ，Ａ) 特開昭61−7090（ＪＰ，Ａ) 特公昭40−28442（ＪＰ，Ｂ１)

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％で、C:0.8〜1.3％未満,Cr:3〜５％,
Mo:4〜７％,W:4〜11％,V:1〜５％を主化学成分とする鋼
を、圧延又は鍛造によりロール状に形成すると共に、熱
処理後の表面硬さをHS85〜90,硬化深さをロール表面よ
り５〜10mm深さでHS85以上を保持したことを特徴とする
スケールブレーカー用ワークロール。