JPH0755283Y2

JPH0755283Y2 - ４サイクルエンジンの動弁装置

Info

Publication number: JPH0755283Y2
Application number: JP1990022617U
Authority: JP
Inventors: 達也新海
Original assignee: Suzuki Motor Co Ltd
Current assignee: Suzuki Motor Co Ltd
Priority date: 1990-03-08
Filing date: 1990-03-08
Publication date: 1995-12-20
Anticipated expiration: 2005-03-08
Also published as: JPH03114505U

Description

【考案の詳細な説明】〔考案の目的〕（産業上の利用分野）この考案は、運転状況に応じて吸・排気バルブのリフト
量や弁開閉タイミング等を変化させることができる４サ
イクルエンジンの動弁装置に係り、特にロッカシャフト
に形成されるエキセントリック大径部の構造に関する。

（従来の技術）一般に、自動車および自動二輪車等の車両に搭載される
４サイクルエンジンでは、燃焼室上方に吸・排気バルブ
が配設されており、これらのバルブは動弁装置によって
駆動される。すなわち、上記動弁装置は、エンジンのク
ランクシャフトに連動するカムシャフトを備え、このカ
ムシャフトに形成されたカムによって上記吸・排気バル
ブを所定のタイミングで上下動させている。

（考案が解決しようとする課題）ところで、上記４サイクルエンジンは、低回転数域から
中・高回転数域にかけての広い回転数域内で高い出力が
得られること、つまりパワーバンドが広帯域であること
が望ましい。

しかし、従来の動弁装置では、バルブの開閉タイミング
およびリフト量が固定されているため、特定のエンジン
回転数域でピーク値を有する出力特性しか得られず、し
たがって低回転数域の出力特性に重点を置くか、もしく
は中・高回転数域の出力特性に重点を置くかの選択を余
儀なくされる。

この考案は、上記の事情を考慮してなされたものであ
り、広い回転数域内で出力を向上させることができると
共に、エキセントリック大径部における固定ピンの脱落
を防止でき、かつその大径部の強度を高め製作コストも
低減できる４サイクルエンジンの動弁装置を提供するこ
とを目的とする。

〔考案の構成〕

（課題を解決するための手段）この考案に係る４サイクルエンジンの動弁装置は、上述
した課題を解決するために、エキセントリック大径部を
備えて回動可能に支持されたロッカシャフトと、このロ
ッカシャフトに挿通された低速用ロッカアームと、低速
用ロッカアームの側方に配置されて前記エキセントリッ
ク大径部に嵌挿された中高速用ロッカアームと、前記低
速用および中高速用ロッカアームをそれぞれ駆動する低
速用および中高速用カムとを有し、前記エキセントリッ
ク大径部は、ロッカシャフトに嵌挿された偏心ブッシュ
を固定ピンで固定して構成され、上記偏心ブッシュは直
径方向に延びるロッカシャフトのピン挿通孔に挿通され
る固定ピンのピン挿入孔をブッシュ厚肉部に形成し、こ
のブッシュ厚肉部と直径方向に対向するブッシュ薄肉部
にピン挿入孔より小径のピン抜き孔を穿設し、前記ロッ
カシャフトの回動範囲で偏心ブッシュのピン挿入孔を常
に上半側に位置させたものである。

（作用）この考案に係る４サイクルエンジンの動弁装置によれ
ば、ロッカシャフトを所定角度回転させてエキセントリ
ック大径部を所定の回動範囲回転させることにより、中
高速用ロッカアームを低速用ロッカアームに対し上下方
向に相対的に位置変化させる。中高速用ロッカアームを
低速用ロッカアームに対し下方へ位置変化させたときに
は、中高速用ロッカアームと中高速用カムとの当接が解
除され、低速用ロッカアームと低速用カムとが当接し
て、４サイクルエンジンのバルブはこの低速用カムによ
り開閉タイミングがとられて駆動する。

また、中高速用ロッカアームを低速用ロッカアームに対
しほぼ上方へまたは同一位置に位置変化させたときに
は、低速用ロッカアームと低速用カムとの当接が解除さ
れ、中高速用ロッカアームと中高速用カムとがそれぞれ
当接して、４サイクルエンジンのバルブはこの中高速用
カムにより作動する。このようにロッカシャフトを回転
させることによるカムの選択によって、広い回転数域に
亘りエンジン出力を向上させることができる。

また、ロッカシャフトは偏心ブッシュの厚肉部が常にロ
ッカシャフトの上半側へ位置させた状態で回動され、か
つこの厚肉部のピン挿通孔からロッカシャフトのピン挿
通孔に固定ピンを挿入して偏心ブッシュが固定され、偏
心ブッシュは（ブッシュ厚肉部に直径方向に対向する）
ブッシュ薄肉部にピン挿入孔より小径の孔を穿設したこ
とから、ロッカアームの先端部とバルブステムヘッド間
に配設されたシムを調整する際に、低速用および中高速
用ロッカアームをロッカシャフトの軸方向にスライドさ
せて、中高速用ロッカシャフトの支持部が偏心ブッシュ
から抜け外れ、偏心ブッシュや固定ピンが露出しても、
固定ピンが脱落することがない。また、偏心ブッシュに
はブッシュ厚肉部に固定ピン用のピン挿入孔が形成さ
れ、ブッシュ薄肉部を含む他部分にピン挿入孔を形成す
る必要がなく、ブッシュ薄肉部はピン抜出用の小径のピ
ン抜き孔を形成するだけでよいので偏心ブッシュの強
度、ひいてはエキセントリック大径部の強度を全体とし
て向上させることができる。

さらに、固定ピン用のピン挿入孔を例えば偏心ブッシュ
の厚肉部および薄肉部を貫いて形成する場合には、これ
ら２つのピン挿入孔の同軸度および両孔の外径公差およ
びこれら２つの孔のロッカシャフトのピン挿通孔に対す
る直角度等の製作上の公差が厳しく要求されるが、固定
ピン用のピン挿入孔が偏心ブッシュのブッシュ薄肉部に
は形成されないので、上記厳しい公差が不要となり、製
作コストを低減できる。

（実施例）以下、この考案の一実施例を図面に基づいて説明する。

第２図は、この考案に係る４サイクルエンジンの動弁装
置の一実施例を示す斜視図、第３図は第２図の動弁装置
の平面図、第４図および第５図は第２図の動弁装置の作
用を示す動作状態図である。

この動弁装置は、エンジンの１つのシリンダにおける吸
気側と排気側にそれぞれ配設される。したがって、第２
図〜第５図に示すバルブ1,2は吸気または排気を行なう
ために配置されている。

この４サイクルエンジンの動弁装置は、第１カムとして
の低速用カム３、並びにこの低速用カム３の一側方およ
び他側方にそれぞれ配置された第２カムとしての中高速
用カム４およ２び第３カムとしての同じく中高速用カム
５を有したカムシャフト６（第４図、第５図）と、カム
３および4,5のそれぞれの下方に位置された低速用ロッ
カアーム７、中高速用ロッカアーム８および９と、これ
らのロッカアーム7,8および９の支持部7a,8aおよび9aが
嵌挿され、かつ図示しない軸受部によって回動自在に支
承されたロッカシャフト11とを備えて構成される。

低速用ロッカアーム７の先端は２股に分岐し、これらの
両分岐先端部7bは、図示しないエンジンの燃焼室を開閉
するバルブ１および２のステムヘッドにそれぞれ当接し
ている。また、低速用ロッカアーム７の支持部7aは、ロ
ッカシャフト11に直接嵌挿されて、回動可能に設けられ
る。

中高速用ロッカアーム８の支持部8aは、ロッカシャフト
11よりも大径の偏心ブッシュ12を介して、ロッカシャフ
ト11に対し回動可能に嵌挿される。この偏心ブッシュ12
は、第４図および第１図（Ａ）に示す如く、軸心がロッ
カシャフト11の中心から偏心しており、固定ピン10によ
ってロッカシャフト11に着脱自在に固定される。したが
って、この偏心ブッシュ12は、ロッカシャフト11におけ
るエキセントリック大径部として機能する。

第３図および第１図（Ａ）に示す如く、中高速用ロッカ
シャフト９の支持部9aも、上記偏心ブッシュ12と同一の
形状を有しかつ同一方向に偏心する偏心ブッシュ13を介
して、ロッカシャフト11に対し回動可能に嵌挿される。
この偏心ブッシュ13も固定ピン10によりロッカシャフト
11に着脱自在に固定され、エキセントリック大径部とし
て機能する。

これらの偏心ブッシュ12および13は、ブッシュ厚肉部12
aおよび13aにピン挿入孔21および22がそれぞれ半径方向
に貫通して穿設され、このピン挿入孔21および22に対応
してロッカシャフト11に直径方向に延びるピン挿通孔23
が穿設される。これらのピン挿入孔21,22およびピン挿
通孔23に前記固定ピン10が挿入されて、偏心ブッシュ12
および13がロッカシャフト11に固定される。

また、偏心ブッシュ12および13のブッシュ厚肉部12aお
よび13aと直径方向の反対位置にあるブッシュ薄肉部12b
および13bには、ピン抜き孔24および25が半径方向にそ
れぞれ貫通して形成される。このピン抜き孔24および25
は、ピン挿入孔21,22およびピン挿通孔23と同軸でこれ
らより小径に形成される。ピン抜き孔24,25は固定ピン1
0を通す穴より小さくてよく、固定ピン10の抜出を補助
するものであるので、厳しい製作公差が不要となり、一
般の公差で孔加工できるのでコストダウンが図れる。

また、中高速用ロッカアーム８および９の各先端下面
は、低速用ロッカアーム７の一方および他方の分岐先端
部7bに、間隔調整用シム14を介してそれぞれ当接され
る。このシム14は、縦断面Ｔ字形状の消耗品であり、低
速用ロッカアーム７の両分岐部7bに上方から嵌装され
る。また、低速用ロッカアーム７の分岐先端部7bと中高
速用ロッカアーム８および９の先端部8bおよび9bとの接
触点は、バルブ１および２の略バルブステム軸線上に設
定される。

したがって、第４図に示すように、低速用カム３が低速
用ロッカアーム７のカムフロア面7cを押下げて、その各
先端部7bを下降させた場合、ロッカアーム８および９の
各先端部8bおよび9bは、重力によりこの分岐先端部7bに
追従して下降する。

一方、第５図に示すように中高速用カム４および５が中
高速用ロッカアーム８および９のカムフロア面8cおよび
9cをそれぞれ押下げた場合には、これらの中高速用ロッ
カアーム８および９の先端部8bおよび9bが低速用ロッカ
アーム７の各分岐先端部7bを押下げることから、この分
岐先端部7bが強制的に下降される。

上記カム3,4および５のうち、中高速用カム４および５
は同一のカムプロフィールを有し、また低速用カム３は
これらの中高速用カム４および５のカムプロフィールと
は異なるカムプロフィールを有する。つまり、低速用カ
ム３は、エンジンが低回転数域で運転されているときに
適したバルブリフト量および弁開閉タイミングが得られ
るようにそのカムプロフィールが設定される。

また、中高速用カム４および５は、エンジンが中・高回
転数域で運転されているときに適したバルブリフト量お
よび弁開閉タイミングが得られるようにそのカムプロフ
ィールが設定される。

上記バルブリフト量は、バルブ１および２のストローク
長であり、カムリフト量と一致する。第６図には、低速
用カム３のカムプロフィールを実線Ａ（カムリフト量l
a）で示し、また中高速用カム４および５のカムプロフ
ィールを破線Ｂ（カムリフト量lb）で示している。この
第６図から明らかなように、中高速用カム４および５
は、低速用カム３よりも大きなバルブリフト量が得られ
るようにそのカムプロフィールが設定されている。

なお、第６図の二点鎖線Ｃは、ロッカシャフト11を回動
して偏心ブッシュ12および13のブッシュ厚肉部12aおよ
び13aを斜め前方へ位置させたとき（第４図）の中高速
用カム４および５におけるカムプロフィールを示す。

ところで、第２図に示すように、ロッカシャフト11の回
動は、エンジンからの油圧によって作動する油圧シリン
ダ15によってなされる。この油圧シリンダ15のピストン
（図示せず）にラック16が連結され、このラック16が、
ロッカシャフト11の一端部に形成されたピニオン17に噛
み合される。また、油圧シリンダ15には、低速用油圧ポ
ート18および高速用（中高速用）油圧ポート19がそれぞ
れ設けられ、それぞれのポート18,19に選択的にエンジ
ンからの油圧が導かれる。

エンジン回転数が低回転数域にあるときには、低速用油
圧ポート18へ油圧が供給されてラック16は引き戻され、
ピニオン17は矢印Ｏ方向に回転されて、偏心ブッシュ12
および13は第３図に示すように、そのブッシュ厚肉部12
aおよび13aが斜め前方へ位置するようOFF位置（空転位
置）に回動する。

また、エンジン回転数が中・高回転域にあるときには、
中高速用油圧ポート19へ油圧が供給されて、ラック16は
押し出され、ピニオン17は矢印Ｐ方向へ回動されて、偏
心ブッシュ12および13は第５図に示すように、そのブッ
シュ厚肉部12aおよび13aが斜め後方へ位置するようON位
置（作動位置）に回動する。

このように、ロッカシャフト11は、油圧シリンダ等15,1
6,17の作動により、回動範囲が設定され、偏心ブッシュ
12,13のブッシュ厚肉部12aおよび13aが常時ロッカシャ
フト11の上半側で斜め前方から斜め後方の範囲を回動す
るように構成される。

次に、作用効果を説明する。

エンジンが低回転数域にあるときに、油圧シリンダ15の
作動によってロッカシャフト11が矢印Ｏ方向に回動する
と、偏心ブッシュ12および13のそれぞれのブッシュ厚肉
部12aおよび13aが斜め前方に位置する（第４図）。これ
により、中高速用ロッカアーム８および９のカムフロア
面8cおよび9cが低速用ロッカアーム７のカムフロア面7c
に対し相対的に下方へ移動する。したがって、中高速用
カム４および５の周面（カム面）と中高速用ロッカアー
ム８および９のカムフロア面8cおよび9cとの間に隙間が
形成されることになり、その結果、中高速用カム４およ
び５はカム作用せず、空転する。

また、このとき、低速用ロッカアーム７は、バルブスプ
リング20の付勢力によってロッカシャフト11の軸心を中
心として常時上方へ押し上げられているので、そのカム
フロア面7cが低速用カム３の周面（カム面）と当接す
る。したがって、カムシャフト６が回転すると、バルブ
１および２は第６図に示した低速用カム３のリフト特性
Ａに基づいて上下動する。つまり、バルブ１および２
は、低エンジン回転数域に適したバルブのリフト量を確
保しつつ、燃料室を開閉する。

一方、エンジンが中・高回転域にあるときに、油圧シリ
ンダ15の作動によってロッカシャフト11が矢印Ｐ方向に
回転すると、偏心ブッシュ12および13のそれぞれブッシ
ュ厚肉部12aおよび13aが斜め後方に位置する（第５
図）。これにより、中高速用ロッカアーム８および９の
カムフロア面8cおよび9cが低速用ロッカアーム７のカム
フロア面7cに対して相対的に略上方または同一位置まで
移動し、このカムフロア面8cおよび9cがそれぞれ中高速
用カム４および５の周面に当接する。

ここで、第６図に示したように、中高速用カム４および
５は低速用カム３よりもカムリフト量が大きく形成され
ているので、第５図に示す状態下でカムシャフト６が回
転された場合、中高速用カム４および５がそれぞれ中高
速用ロッカアーム８および９を介して、第６図のリフト
特性Ｂに基づきバルブ１および２を駆動する。このと
き、低速用カム３は空転する。この結果、バルブ１およ
び２は、エンジンの中・高回転数域に適したバルブリフ
ト量を確保しつつ、燃焼室を開閉する。

上記実施例によれば、低速用カム３にエンジンの低回転
数域に適したカムプロフィールが形成され、中高速用カ
ム４および５にエンジンの中・高回転数域に適したカム
プロフィールが形成され、さらにロッカシャフト11の偏
心ブッシュ12および13に中高速用ロッカアーム８および
９をそれぞれ回動自在に嵌挿し、ロッカシャフト11に直
接低速用ロッカアーム７を嵌挿して、ロッカシャフト11
の回動により、低速用カム３と低速用ロッカアーム７と
の当接、中高速用カム４および５と中高速用ロッカアー
ム８および９との当接を選択できるので、バルブ１およ
び２を低速用カム３あるいは中高速用カム4,5にて選択
的に駆動させることができる。したがって、エンジンの
低回転数域から中・高回転数域にかけての広い回転数域
で、４サイクルエンジンの出力を向上させることができ
る。

また、ロッカシャフト11を回動させて偏心ブッシュ12お
よび13が回動することにより、低速用カム３、中高速用
カム4,5の選択を行なうことができるので、カム3,4,5の
選択が円滑かつスムーズに行なわれ、カム選択時に各部
に大きなストレスが生ずることがない。

さらに、低速用ロッカアーム７の分岐先端部7b並びに中
高速用ロッカアーム8,9の先端部8bおよび9b間に配設さ
れたシム14は消耗品であるため間隔調整保持のためシム
交換等のシム調整作業が行なわれる。このシム調整を行
なう際に、これらのロッカアーム7,8および９をロッカ
シャフト11の軸方向にスライドさせて、中高速用ロッカ
アーム８および９の支持部8aおよび9aが偏心ブッシュ12
および13から抜け外れても、ロッカシャフト11の回動範
囲で偏心ブッシュ12および13のブッシュ厚肉部12aおよ
び13aが常にロッカシャフト11の上半側へ位置されるの
で、偏心ブッシュ12,13や固定ピン10がむき出しの状態
となっても、固定ピン10は落脱することがない。

また、偏心ブッシュ12および13にはブッシュ厚肉部12a
および12bにピン挿入孔21および22が形成され、ブッシ
ュ薄肉部12bおよび13bにはピン挿入孔21および22より小
径のピン抜き孔24および25が形成される。さらに、偏心
ブッシュ12および13のピン挿入孔21および22に対応して
ロッカシャフト11に直径方向のピン挿入孔23が形成され
る。ピン挿入孔21,22やピン挿入孔23には製作上の公差
を考慮した高い孔加工精度が要求される。しかし、偏心
ブッシュ12,13のピン抜き孔24,25は固定ピン10の抜出用
であるため、ピン挿入孔21,22より小径に一般の公差で
加工すればよく、厳しい公差が要求されない。

また、偏心ブッシュ12および13は孔加工精度が要求され
るピン挿入孔21および22を精度よく形成するためにブッ
シュ厚肉部12aおよび13aに平坦部12cおよび13cが形成さ
れるが、孔加工精度が要求されないブッシュ薄肉部12b
および13bでは平坦部を形成する必要がなく、平坦部は
形成されない。また、ブッシュ薄肉部12b,13bはブッシ
ュ強度への影響が小さな小径のピン抜き孔24および25が
形成されるだけであるので、偏心ブッシュ12および13の
肉厚が確保され、これら偏心ブッシュ12および13の強
度、ひいてはエキセントリック大径部の強度を全体とし
て向上させることができる。

さらに、第１図（Ｂ）に示すように、偏心ブッシュ12′
および13′に横方向に抜止めピン10′を嵌挿させた場合
には、偏心ブッシュ12′および13′のそれぞれに２つの
ピン挿入孔26および27並びに28および29を同軸的に穿設
しなければならない。しかも、これらのピン挿入孔26お
よび27並びに28および29には製作上の公差で厳しい部分
が多いため孔加工は同軸度の他、外径公差、さらにロッ
カシャフト11のピン挿入孔30に対する直角度等厳しい公
差が要求される。

これに対し、第１図（Ａ）に示す偏心ブッシュ12および
13は、１つのピン挿入孔21および22だけでよく、厳しい
公差はこのピン挿入孔21および22並びにロッカシャフト
11のピン挿通孔23にのみ要求され、ピン抜き孔24および
25には要求されない。このピン抜き孔24および25は、一
般に用いられる公差でよい。このため、偏心ブッシュ12
および13並びにロッカシャフト11の製作コストを低減で
きる。

なお、上記実施例では、中高速用カム４および５のカム
プロフィールが第６図の破線Ｂに示すものである場合に
つき述べたが、この中高速用カム４および５のカムプロ
フィールを第７図の破線Ｂ′あるいは第８図の破線Ｂ″
に示すものとして、エンジンの中・高回転時におけるバ
ルブ１および２のリフトを変更してもよい。

また、上記実施例では、ロッカシャフト11の回転駆動源
として油圧シリンダ15を用いる場合につき説明したが、
この回転駆動源としてモータを用い、プーリおよびベル
ト等の動力伝達手段によってロッカシャフト11を回転駆
動させるようにしてもよい。

〔考案の効果〕

以上のように、この考案に係る４サイクルエンジンの動
弁装置によれば、回動可能に支持されたロッカシャフト
にエキセントリック大径部が形成され、中高速用ロッカ
アームがこのエキセントリック大径部に嵌挿されると共
に、低速用ロッカアームが中高速用ロッカアームの間に
配置されて直接ロッカシャフトに嵌挿されたことから、
ロッカシャフトの回動による上記カムの選択によって、
広い回転数域に亘りエンジン出力を向上させることがで
きる。

また、エキセントリック大径部は、ロッカシャフトに嵌
挿された偏心ブッシュを固定ピンで固定して構成され、
上記偏心ブッシュは直径方向に延びるロッカシャフトの
ピン挿通孔に挿通される固定ピンのピン挿入孔をブッシ
ュ厚肉部に形成し、このブッシュ厚肉部と直径方向に対
向するブッシュ薄肉部にピン挿入孔より小径のピン抜き
孔を穿設し、前記ロッカシャフトの回動範囲で偏心ブッ
シュのピン挿入孔を常に上半側に位置させたので、シム
調整時のようなシム交換を伴う保守点検時にロッカアー
ムをロッカシャフト軸方向にスライドさせて偏心ブッシ
ュや固定ピンがむき出しにされるが、この場合にも固定
ピンの脱落を未然にかつ確実に防止できるので、小部品
である固定ピンを紛失させることがなく、保守点検作業
を円滑かつスムーズに行なうことができる。

さらに、偏心ブッシュは孔加工精度が要求されるピン挿
入孔をブッシュ厚肉部に形成し、ブッシュ薄肉部に孔加
工精度が要求されず、厳しい公差が不要なピン抜き孔を
形成したので、偏心ブッシュの孔加工が容易になり、コ
ストダウンを図れる一方、ブッシュ薄肉部に形成される
ピン抜き孔はピン挿入孔より小径でよいので、偏心ブッ
シュの薄肉部の強度的な不安を解消でき、偏心ブッシュ
の強度アップを図ることができる等の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図（Ａ）は第２図の偏心ブッシュおよびロッカシャ
フトを示す断面図、第１図（Ｂ）は第１図（Ａ）の偏心
ブッシュに対比する偏心ブッシュ等を示す断面図、第２
図はこの考案に係る４サイクルエンジンの動弁装置の一
実施例を示す斜視図、第３図は第２図の動弁装置の平面
図、第４図および第５図は第２図の動弁装置の作用を示
す動作状態図、第６図は第２図のカムのカムプロフィー
ルを示す図、第７図および第８図は第６図に示すカムプ
ロフィールのそれぞれの変形例を示す図である。 1,2……バルブ、３……低速用カム、4,5……中高速用カ
ム、７……低速用ロッカアーム、7a……低速用ロッカア
ームの支持部、8,9……中高速用ロッカアーム、8a,9a…
…中高速用ロッカアームの支持部、10……抜止めピン、
11……ロッカシャフト、12,13……偏心ブッシュ、12a,1
3a……偏心ブッシュの厚肉頂部、21,22……偏心ブッシ
ュのピン挿入孔、24……偏心ブッシュのピン抜き孔。

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】エキセントリック大径部を備えて回動可能
に支持されたロッカシャフトと、このロッカシャフトに
挿通された低速用ロッカアームと、低速用ロッカアーム
の側方に配置されて前記エキセントリック大径部に嵌挿
された中高速用ロッカアームと、前記低速用および中高
速用ロッカアームをそれぞれ駆動する低速用および中高
速用カムとを有し、前記エキセントリック大径部は、ロ
ッカシャフトに嵌挿された偏心ブッシュを固定ピンで固
定して構成され、上記偏心ブッシュは直径方向に延びる
ロッカシャフトのピン挿通孔に挿通される固定ピンのピ
ン挿入孔をブッシュ厚肉部に形成し、このブッシュ厚肉
部と直径方向に対向するブッシュ薄肉部にピン挿入孔よ
り小径のピン抜き孔を穿設し、前記ロッカシャフトの回
動範囲で偏心ブッシュのピン挿入孔を常に上半側に位置
させたことを特徴する４サイクルエンジンの動弁装置。