JPH0754045A - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
方向性けい素鋼板の製造方法Info
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- JPH0754045A JPH0754045A JP19725593A JP19725593A JPH0754045A JP H0754045 A JPH0754045 A JP H0754045A JP 19725593 A JP19725593 A JP 19725593A JP 19725593 A JP19725593 A JP 19725593A JP H0754045 A JPH0754045 A JP H0754045A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 方向性けい素鋼板の製造過程におけるスラブ
加熱工程において、スラブの厚さ方向における最大偏析
位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分加熱
し、その後必要に応じてTSL以下の温度で少なくとも1
分間保持する保定処理を施す。 【効果】 スラブ加熱時におけるふくれ欠陥の発生を完
全に防止し、ひいては良好な磁気特性及び表面外観を得
る。
加熱工程において、スラブの厚さ方向における最大偏析
位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分加熱
し、その後必要に応じてTSL以下の温度で少なくとも1
分間保持する保定処理を施す。 【効果】 スラブ加熱時におけるふくれ欠陥の発生を完
全に防止し、ひいては良好な磁気特性及び表面外観を得
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性けい素鋼板の
製造方法に関し、特にスラブ加熱時におけるふくれ欠陥
の発生を効果的に抑止して、磁気特性を初めとする製品
品質の向上を図ろうとするものである。
製造方法に関し、特にスラブ加熱時におけるふくれ欠陥
の発生を効果的に抑止して、磁気特性を初めとする製品
品質の向上を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、主として変圧器そ
の他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及
び鉄損等の磁気特性に優れることが基本的に要求され
る。かような方向性けい素鋼板を製造するに当たって、
特に重要なことは、いわゆる仕上げ焼鈍工程で一次再結
晶粒を{110}<001>方位の結晶粒に優先的に二
次再結晶させることである。
の他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及
び鉄損等の磁気特性に優れることが基本的に要求され
る。かような方向性けい素鋼板を製造するに当たって、
特に重要なことは、いわゆる仕上げ焼鈍工程で一次再結
晶粒を{110}<001>方位の結晶粒に優先的に二
次再結晶させることである。
【0003】このような二次再結晶を効果的に促進させ
るためには、まず一次再結晶粒の正常成長を抑制するイ
ンヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズ
に分散させることが重要である。かかるインヒビターと
して代表的なものは、MnS,MnSe, AlN及びVNのよう
な硫化物や窒化物等で、鋼中への溶解度が極めて小さい
物質が用いられている。このため従来から、熱間圧延前
にスラブを高温に加熱してインヒビター成分を完全に固
溶させる方法がとられ、熱間圧延工程以降、二次再結晶
工程までの間の析出状態を制御している。なお、インヒ
ビターとしては、上記したものの他、Sb, Sn, As, Pb,
Ce, Cu及びMo等の粒界偏析型元素も利用されている。
るためには、まず一次再結晶粒の正常成長を抑制するイ
ンヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズ
に分散させることが重要である。かかるインヒビターと
して代表的なものは、MnS,MnSe, AlN及びVNのよう
な硫化物や窒化物等で、鋼中への溶解度が極めて小さい
物質が用いられている。このため従来から、熱間圧延前
にスラブを高温に加熱してインヒビター成分を完全に固
溶させる方法がとられ、熱間圧延工程以降、二次再結晶
工程までの間の析出状態を制御している。なお、インヒ
ビターとしては、上記したものの他、Sb, Sn, As, Pb,
Ce, Cu及びMo等の粒界偏析型元素も利用されている。
【0004】従来、方向性けい素鋼板を製造するには、
厚さ 100〜300 mm程度のスラブを、1250℃以上の温度に
長時間にわたって加熱し、インヒビター成分を完全に固
溶させた後、熱間圧延し、ついでこの熱延板を1回又は
中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚と
したのち、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、二
次再結晶及び純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うの
が一般的であった。
厚さ 100〜300 mm程度のスラブを、1250℃以上の温度に
長時間にわたって加熱し、インヒビター成分を完全に固
溶させた後、熱間圧延し、ついでこの熱延板を1回又は
中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚と
したのち、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、二
次再結晶及び純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うの
が一般的であった。
【0005】しかし、このようなスラブ加熱を長時間施
した場合には、加熱終了後の結晶粒の粗大化が著しい。
スラブ中の粗大結晶粒は、その後の熱間圧延で再結晶し
にくく、未再結晶粒内の亜粒界や転位が析出サイトとし
て働くため、一旦固溶させたインヒビター成分が粗大に
析出し、製品の磁気特性の劣化原因となっていた。
した場合には、加熱終了後の結晶粒の粗大化が著しい。
スラブ中の粗大結晶粒は、その後の熱間圧延で再結晶し
にくく、未再結晶粒内の亜粒界や転位が析出サイトとし
て働くため、一旦固溶させたインヒビター成分が粗大に
析出し、製品の磁気特性の劣化原因となっていた。
【0006】ところで近年、技術の進歩によって、スラ
ブ加熱に電磁誘導加熱炉や抵抗加熱炉等の電気式加熱炉
が使用されるようになった。これによって、より高温で
の加熱が可能となり、インヒビター成分の溶体化が短時
間で済むようになった。また、加熱時間の短縮によっ
て、スラブ粒の粗大成長も抑制されるため、粗大成長に
起因した二次再結晶不良に伴う磁気特性の劣化も大幅に
改善されるようになった。
ブ加熱に電磁誘導加熱炉や抵抗加熱炉等の電気式加熱炉
が使用されるようになった。これによって、より高温で
の加熱が可能となり、インヒビター成分の溶体化が短時
間で済むようになった。また、加熱時間の短縮によっ
て、スラブ粒の粗大成長も抑制されるため、粗大成長に
起因した二次再結晶不良に伴う磁気特性の劣化も大幅に
改善されるようになった。
【0007】しかしながら、スラブに上記のような高温
加熱を施した場合、スラブにふくれ欠陥が発生するとい
う新たな問題が生起した。このふくれ欠陥がひどい場合
には、熱間圧延が不可能になるのは勿論であるが、軽度
の場合でも二枚板や板切れ、穴あき等の重大な欠陥の要
因となる。
加熱を施した場合、スラブにふくれ欠陥が発生するとい
う新たな問題が生起した。このふくれ欠陥がひどい場合
には、熱間圧延が不可能になるのは勿論であるが、軽度
の場合でも二枚板や板切れ、穴あき等の重大な欠陥の要
因となる。
【0008】ところで従来、けい素鋼板におけるふくれ
状の欠陥としては、ブリスターが知られている。ここに
ブリスターとは、薄板を熱処理した際、鋼中に含有され
ているガスが膨張することにより生じた薄板表面のふく
れ状欠陥を指し、かかるブリスターの防止策としては、
以下に述べるような種々の方法が提案されている。たと
えば、特公昭49-42208号公報には、けい素鋼中のAl、
H、N量を制御することにより、最終製品にブリスター
が発生しない条件が開示されている。また、特公昭49-4
2211号公報には、上記の3成分に加えO濃度も制御する
ことによりブリスターが発生しない条件が開示されてい
る。
状の欠陥としては、ブリスターが知られている。ここに
ブリスターとは、薄板を熱処理した際、鋼中に含有され
ているガスが膨張することにより生じた薄板表面のふく
れ状欠陥を指し、かかるブリスターの防止策としては、
以下に述べるような種々の方法が提案されている。たと
えば、特公昭49-42208号公報には、けい素鋼中のAl、
H、N量を制御することにより、最終製品にブリスター
が発生しない条件が開示されている。また、特公昭49-4
2211号公報には、上記の3成分に加えO濃度も制御する
ことによりブリスターが発生しない条件が開示されてい
る。
【0009】さらに特開平2−259016号公報には、冷間
圧延時のロール直径を 150mm以上とすることによって表
面ふくれ欠陥を低減した方向性けい素鋼板の製造法が開
示されている。またさらに特開平5−1324号公報には、
予備加熱後の温度差と電気加熱炉の昇温速度を制御する
ことにより、スラブ内部開口を起因とする製品表面のふ
くれ状欠陥を抑止する技術が開示されている。
圧延時のロール直径を 150mm以上とすることによって表
面ふくれ欠陥を低減した方向性けい素鋼板の製造法が開
示されている。またさらに特開平5−1324号公報には、
予備加熱後の温度差と電気加熱炉の昇温速度を制御する
ことにより、スラブ内部開口を起因とする製品表面のふ
くれ状欠陥を抑止する技術が開示されている。
【0010】上記の改善技術はいずれも、薄板で高温焼
鈍を行う際に生じる製品表面の欠陥を防止する技術であ
るが、薄板焼鈍工程で発生するブリスターとこの発明で
問題とするスラブ段階でのふくれとでは、以下に述べる
とおり、その発生機構が全く異なり、従って、上記の技
術によってスラブふくれの発生を防止することはできな
い。
鈍を行う際に生じる製品表面の欠陥を防止する技術であ
るが、薄板焼鈍工程で発生するブリスターとこの発明で
問題とするスラブ段階でのふくれとでは、以下に述べる
とおり、その発生機構が全く異なり、従って、上記の技
術によってスラブふくれの発生を防止することはできな
い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】方向性けい素鋼におけ
るスラブ加熱の第一の目的は、インヒビターと呼ばれる
析出物成分を均一に固溶させることであり、このインヒ
ビターの固溶は高温、長時間ほど完全に達成されること
が知られている。また、高温ほど固溶に要する時間が少
なくて済むため、近年、より高温でのスラブ加熱が指向
されるようになった。ところが、この際、スラブふくれ
のトラブルが発生することが観察された。この点に関す
る発明者らの研究によれば、スラブふくれは高温、長時
間ほど、その程度が著しくなること、すなわち上述した
インヒビター固溶のための望ましい条件範囲でよりふく
れが発生し易いという結果になったのである。
るスラブ加熱の第一の目的は、インヒビターと呼ばれる
析出物成分を均一に固溶させることであり、このインヒ
ビターの固溶は高温、長時間ほど完全に達成されること
が知られている。また、高温ほど固溶に要する時間が少
なくて済むため、近年、より高温でのスラブ加熱が指向
されるようになった。ところが、この際、スラブふくれ
のトラブルが発生することが観察された。この点に関す
る発明者らの研究によれば、スラブふくれは高温、長時
間ほど、その程度が著しくなること、すなわち上述した
インヒビター固溶のための望ましい条件範囲でよりふく
れが発生し易いという結果になったのである。
【0012】この点、発明者らは先に、スラブふくれの
原因がスラブ内の最大偏析帯での粒界部分溶融にあるこ
とを解明し、スラブ加熱温度を最大偏析位置の固相線温
度以下に制御することによって、スラブふくれを生ずる
ことなしに、高温かつ短時間でインヒビターの固溶を実
現する方法を開発し、特願平5−194798号明細書におい
て開示した。ところが発明者らは、さらに高温加熱処理
について検討を重ねたところ、粒界に部分溶融が生じて
も、限られた時間範囲であれば、より短時間でインヒビ
ターの固溶が達成されることの知見を得た。また、上記
したような高温加熱処理の後に、短時間の低温保定処理
を施せば、スラブふくれの発生をより効果的に防止し得
ることも併せて見出した。
原因がスラブ内の最大偏析帯での粒界部分溶融にあるこ
とを解明し、スラブ加熱温度を最大偏析位置の固相線温
度以下に制御することによって、スラブふくれを生ずる
ことなしに、高温かつ短時間でインヒビターの固溶を実
現する方法を開発し、特願平5−194798号明細書におい
て開示した。ところが発明者らは、さらに高温加熱処理
について検討を重ねたところ、粒界に部分溶融が生じて
も、限られた時間範囲であれば、より短時間でインヒビ
ターの固溶が達成されることの知見を得た。また、上記
したような高温加熱処理の後に、短時間の低温保定処理
を施せば、スラブふくれの発生をより効果的に防止し得
ることも併せて見出した。
【0013】なお、特開平3−115528号公報には、粒界
偏析の少なくとも一部が溶融する温度域まで加熱し(一
次均熱)、その後1380〜1440℃の温度域に5〜60 min保
持する(二次均熱)ことにより、スラブの粒成長を抑止
する技術が開示されている。ここでの一次均熱の役割り
は、ごく短時間粒界溶融温度まで加熱することによって
スラブの粒成長を抑止し、もって磁気特性の向上を図ろ
うとするものである。そのため実施例に見られるよう
に、2分、3分ないしは5分程度の短時間加熱を施した
のち、インヒビター固溶のために5〜60 minにわたる2
次均熱が不可欠である。
偏析の少なくとも一部が溶融する温度域まで加熱し(一
次均熱)、その後1380〜1440℃の温度域に5〜60 min保
持する(二次均熱)ことにより、スラブの粒成長を抑止
する技術が開示されている。ここでの一次均熱の役割り
は、ごく短時間粒界溶融温度まで加熱することによって
スラブの粒成長を抑止し、もって磁気特性の向上を図ろ
うとするものである。そのため実施例に見られるよう
に、2分、3分ないしは5分程度の短時間加熱を施した
のち、インヒビター固溶のために5〜60 minにわたる2
次均熱が不可欠である。
【0014】この点、この発明では、粒界が部分溶融す
るような超高温でも、インヒビターの固溶を行いつつ、
スラブふくれの防止が可能な範囲を提示することによ
り、究極的な超高温、短時間加熱による安定したインヒ
ビターの固溶処理を実現することができる。従って、上
記したような先行技術に見られるような高温での二次均
熱も必要としない。すなわちこの発明は、スラブふくれ
を生じることなしに、高温短時間でのスラブ加熱を可能
とし、ひいては良好な磁気特性及び表面外観を得ること
ができる方向性けい素鋼板の有利な製造方法を提案する
ことを目的とする。
るような超高温でも、インヒビターの固溶を行いつつ、
スラブふくれの防止が可能な範囲を提示することによ
り、究極的な超高温、短時間加熱による安定したインヒ
ビターの固溶処理を実現することができる。従って、上
記したような先行技術に見られるような高温での二次均
熱も必要としない。すなわちこの発明は、スラブふくれ
を生じることなしに、高温短時間でのスラブ加熱を可能
とし、ひいては良好な磁気特性及び表面外観を得ること
ができる方向性けい素鋼板の有利な製造方法を提案する
ことを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】まず、この発明の解明経
緯について説明する。さて、発明者らは、上記の目的を
達成すべく、成分条件や鋳造偏析、スラブ加熱条件等が
ふくれの発生に及ぼす影響について綿密な検討を加えた
結果、加熱によって、添加成分元素の偏析部(結晶粒
界)がその固相線温度以上に保持されると、結晶粒界が
部分的に溶融し、加熱の継続によりこの液相部に窒素を
初めとする溶質成分の濃化を生じ、その後冷却過程にお
ける再凝固時に固溶成分が過飽和となってガス化し、か
くして生じた窒素ガス等の内圧によって粒界部が割れ、
これがふくれの起点となることの知見を得た。
緯について説明する。さて、発明者らは、上記の目的を
達成すべく、成分条件や鋳造偏析、スラブ加熱条件等が
ふくれの発生に及ぼす影響について綿密な検討を加えた
結果、加熱によって、添加成分元素の偏析部(結晶粒
界)がその固相線温度以上に保持されると、結晶粒界が
部分的に溶融し、加熱の継続によりこの液相部に窒素を
初めとする溶質成分の濃化を生じ、その後冷却過程にお
ける再凝固時に固溶成分が過飽和となってガス化し、か
くして生じた窒素ガス等の内圧によって粒界部が割れ、
これがふくれの起点となることの知見を得た。
【0016】以下、このスラブふくれの成因について詳
細に説明する。誘導式電気加熱炉周辺での観察及び同様
な条件下での確認試験、さらには詳細な成分分析の結
果、スラブふくれは、融点(固相線温度)が低下する最
大濃厚偏析帯を中心に発生することが確認された。この
時、最大濃厚偏析位置は、通常知られている中心偏析位
置とは限らず、連続鋳造の際、電磁溶鋼攪拌を付加した
ものでは、中心厚み以外の位置に最大濃厚偏析帯が現れ
ることも併せて知見した。またふくれは高温加熱後の冷
却過程で現れることも確認された。
細に説明する。誘導式電気加熱炉周辺での観察及び同様
な条件下での確認試験、さらには詳細な成分分析の結
果、スラブふくれは、融点(固相線温度)が低下する最
大濃厚偏析帯を中心に発生することが確認された。この
時、最大濃厚偏析位置は、通常知られている中心偏析位
置とは限らず、連続鋳造の際、電磁溶鋼攪拌を付加した
ものでは、中心厚み以外の位置に最大濃厚偏析帯が現れ
ることも併せて知見した。またふくれは高温加熱後の冷
却過程で現れることも確認された。
【0017】引き続き、スラブふくれ部周辺の組織を詳
細に観察した結果、結晶粒界に一旦溶融した部分が観察
され、またこの元溶融部では、けい素、炭素、その他の
成分元素が著しく濃化していることが明らかとなった。
一方、粒界部分と接する粒周辺部分では、窒素、炭素、
その他の成分元素が減少している層が観察された。そし
て、この欠乏層幅は高温での保持時間に比例して増加す
る傾向を示した。これらのことから、上述したふくれの
成因が明らかとなったのである。
細に観察した結果、結晶粒界に一旦溶融した部分が観察
され、またこの元溶融部では、けい素、炭素、その他の
成分元素が著しく濃化していることが明らかとなった。
一方、粒界部分と接する粒周辺部分では、窒素、炭素、
その他の成分元素が減少している層が観察された。そし
て、この欠乏層幅は高温での保持時間に比例して増加す
る傾向を示した。これらのことから、上述したふくれの
成因が明らかとなったのである。
【0018】BOF Steel Making Vol.II Iron & Steel S
oc. AIME (1975) 等に示されるように、鉄及びけい素鉄
中の融点直下での大気圧の窒素の溶解度は0.01%前後で
あり、一方これと平衡する溶鉄中では約4倍程度の溶解
度を有する。以上のことから粒界の部分溶融状態が一定
時間が継続すると、粒界近傍の固相中から溶融相中に成
分元素が移動し、これは拡散により律速されるため、時
間の経過とともに移動量が増加する。引き続く凝固過程
において、液相中に濃縮されたガス成分である窒素の濃
度が約0.01%以上であると過飽和となり、この結果スラ
ブふくれの発生につながるものと考えられる。この際、
放出されるガス量は、粒界溶融状態が継続された時間、
スラブ加熱最終段階での平均粒径と密接に関係する粒界
密度及び冷却速度によって変化することも詳細な検討の
結果明らかとなった。以上の結果から、スラブ内の凝固
偏析の低減及び加熱温度のばらつきの低減が粒界溶融の
発生を抑え、スラブふくれ抑止に有効であること、さら
には最大濃厚偏析帯位置での温度コントロールが重要で
あることが理解される。
oc. AIME (1975) 等に示されるように、鉄及びけい素鉄
中の融点直下での大気圧の窒素の溶解度は0.01%前後で
あり、一方これと平衡する溶鉄中では約4倍程度の溶解
度を有する。以上のことから粒界の部分溶融状態が一定
時間が継続すると、粒界近傍の固相中から溶融相中に成
分元素が移動し、これは拡散により律速されるため、時
間の経過とともに移動量が増加する。引き続く凝固過程
において、液相中に濃縮されたガス成分である窒素の濃
度が約0.01%以上であると過飽和となり、この結果スラ
ブふくれの発生につながるものと考えられる。この際、
放出されるガス量は、粒界溶融状態が継続された時間、
スラブ加熱最終段階での平均粒径と密接に関係する粒界
密度及び冷却速度によって変化することも詳細な検討の
結果明らかとなった。以上の結果から、スラブ内の凝固
偏析の低減及び加熱温度のばらつきの低減が粒界溶融の
発生を抑え、スラブふくれ抑止に有効であること、さら
には最大濃厚偏析帯位置での温度コントロールが重要で
あることが理解される。
【0019】そこで発明者らは、前述したとおり、スラ
ブ加熱温度を最大偏析位置の固相線温度以下に制御する
ことによって、スラブふくれの発生を効果的に防止でき
る加熱方法を開発したが、その後の研究により、粒界に
部分溶融が生じたとしても、限られた時間範囲であれば
必ずしもスラブふくれは生じないことが究明されたので
ある。この発明は、上記知見に立脚して開発されたもの
で、含けい素鋼スラブの高温加熱時に発生が懸念される
スラブふくれを効果的に抑止しつつ、高温短時間のスラ
ブ加熱を可能ならしめ、ひいては良好な磁気特性及び表
面外観を得ることができる方向性けい素鋼板の有利な製
造方法である。
ブ加熱温度を最大偏析位置の固相線温度以下に制御する
ことによって、スラブふくれの発生を効果的に防止でき
る加熱方法を開発したが、その後の研究により、粒界に
部分溶融が生じたとしても、限られた時間範囲であれば
必ずしもスラブふくれは生じないことが究明されたので
ある。この発明は、上記知見に立脚して開発されたもの
で、含けい素鋼スラブの高温加熱時に発生が懸念される
スラブふくれを効果的に抑止しつつ、高温短時間のスラ
ブ加熱を可能ならしめ、ひいては良好な磁気特性及び表
面外観を得ることができる方向性けい素鋼板の有利な製
造方法である。
【0020】すなわちこの発明は、N:0.0025wt%(以
下単に%で示す)以上を含有する含けい素鋼スラブを、
非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱したのち、熱間圧
延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施
し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終
仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性けい素鋼板
を製造するに当たり、スラブ加熱工程において、スラブ
の厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度TSLを超
える温度域で5〜30分間の加熱を行うことを特徴とする
スラブふくれ欠陥のない方向性けい素鋼熱延板の製造方
法(第1発明)である。
下単に%で示す)以上を含有する含けい素鋼スラブを、
非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱したのち、熱間圧
延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施
し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終
仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性けい素鋼板
を製造するに当たり、スラブ加熱工程において、スラブ
の厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度TSLを超
える温度域で5〜30分間の加熱を行うことを特徴とする
スラブふくれ欠陥のない方向性けい素鋼熱延板の製造方
法(第1発明)である。
【0021】またこの発明は、N:0.0025%以上を含有
する含けい素鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱
炉で加熱したのち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中
間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕
上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分
離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程
によって方向性けい素鋼板を製造するに当たり、スラブ
加熱工程において、スラブの厚さ方向における最大偏析
位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分間の加
熱を行い、引き続きTSL以下の温度で少なくとも1分間
保持することを特徴とするスラブふくれ欠陥のない方向
性けい素鋼熱延板の製造方法(第2発明)である。
する含けい素鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱
炉で加熱したのち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中
間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕
上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分
離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程
によって方向性けい素鋼板を製造するに当たり、スラブ
加熱工程において、スラブの厚さ方向における最大偏析
位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分間の加
熱を行い、引き続きTSL以下の温度で少なくとも1分間
保持することを特徴とするスラブふくれ欠陥のない方向
性けい素鋼熱延板の製造方法(第2発明)である。
【0022】
【作用】この発明によれば、スラブ加熱の最大の要件で
あるインヒビターの固溶を短時間で終了でき、かつスラ
ブふくれの発生を回避することが可能となる。その結
果、スラブの酸化損失並びに加熱中の粒径粗大化に伴う
磁性劣化を最小限に抑制することが可能となった。
あるインヒビターの固溶を短時間で終了でき、かつスラ
ブふくれの発生を回避することが可能となる。その結
果、スラブの酸化損失並びに加熱中の粒径粗大化に伴う
磁性劣化を最小限に抑制することが可能となった。
【0023】この発明において、スラブ加熱温度(T)
は、とくにその上限が制限されることはないけれども、
スラブ厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度(T
SL)よりも50℃を超えて高くなると、粒界溶融のみなら
ず、粒内の溶融も生じてスラブ自体の物理的強度の低下
を招くので、スラブ加熱はTSL<T≦TSL+50℃の範囲
で行うことが望ましい。また加熱時間については、上記
温度範囲に30分を超えて保持すると、ふくれの発生を効
果的に抑制できなくなるので、上限を30分とした。一
方、加熱時間が5分に満たないと安定したインヒビター
の固溶が難しいので、下限は5分に定めた。なお、イン
ヒビターの固溶は30分以内の加熱で十分に達成されてい
る。
は、とくにその上限が制限されることはないけれども、
スラブ厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度(T
SL)よりも50℃を超えて高くなると、粒界溶融のみなら
ず、粒内の溶融も生じてスラブ自体の物理的強度の低下
を招くので、スラブ加熱はTSL<T≦TSL+50℃の範囲
で行うことが望ましい。また加熱時間については、上記
温度範囲に30分を超えて保持すると、ふくれの発生を効
果的に抑制できなくなるので、上限を30分とした。一
方、加熱時間が5分に満たないと安定したインヒビター
の固溶が難しいので、下限は5分に定めた。なお、イン
ヒビターの固溶は30分以内の加熱で十分に達成されてい
る。
【0024】上記のようなスラブ加熱処理において、加
熱終了後、スラブをTSL以下の温度に短時間保定するこ
とが、スラブふくれの発生を防止する上で、とりわけ有
利である。というのは、TSL以上の温度で加熱処理後、
TSL以下の温度に保持すると溶融部に濃縮されたガス成
分の一部が固相中に効果的に拡散するからである。そこ
で、第2発明では、TSL以上での加熱処理後、TSL以下
の温度で少なくとも1分間の保定処理を行うものとし
た。ここに、保定温度があまりに低いと、その温度まで
降温する間にガス放出のおそれがあるので、保定温度は
TSL−50℃以上とすることが好ましい。また保定時間の
上限については特に限定されることはないけれども、長
時間保定してもその効果は飽和に達し、またこの発明で
目指した短時間処理という目的にも反するので、5分以
内が好適である。
熱終了後、スラブをTSL以下の温度に短時間保定するこ
とが、スラブふくれの発生を防止する上で、とりわけ有
利である。というのは、TSL以上の温度で加熱処理後、
TSL以下の温度に保持すると溶融部に濃縮されたガス成
分の一部が固相中に効果的に拡散するからである。そこ
で、第2発明では、TSL以上での加熱処理後、TSL以下
の温度で少なくとも1分間の保定処理を行うものとし
た。ここに、保定温度があまりに低いと、その温度まで
降温する間にガス放出のおそれがあるので、保定温度は
TSL−50℃以上とすることが好ましい。また保定時間の
上限については特に限定されることはないけれども、長
時間保定してもその効果は飽和に達し、またこの発明で
目指した短時間処理という目的にも反するので、5分以
内が好適である。
【0025】かくして、例えば圧延機トラブル等により
長時間にわたって抽出を待たなければならない時は、イ
ンヒビター固溶のための加熱終了後、TSL−50℃≦T≦
TSLの温度域にスラブを保持することにより、ふくれ発
生のおそれなしにそのまま継続して操業することが可能
であり、一旦、抽出、冷却し再加熱をすることによる、
インヒビター成分の再粗大析出やスラブの酸化損失、加
熱のためのエネルギーロス等を回避することができる。
長時間にわたって抽出を待たなければならない時は、イ
ンヒビター固溶のための加熱終了後、TSL−50℃≦T≦
TSLの温度域にスラブを保持することにより、ふくれ発
生のおそれなしにそのまま継続して操業することが可能
であり、一旦、抽出、冷却し再加熱をすることによる、
インヒビター成分の再粗大析出やスラブの酸化損失、加
熱のためのエネルギーロス等を回避することができる。
【0026】なおTSLを求めるに当たっては、通常同一
工程で製造されるスラブでは偏析の発生位置と偏析傾向
はほぼ一定であるので、代表の一スラブについて厚み方
向に試料を削り出し、直接熱分析を行うか、あるいは成
分分析結果から、平居らが学振19委、第5回凝固現象協
議会、凝固46で報じているように、TSL=(Fe−C系の
固相線温度)−{ 20.5(%Si)+6.5(%Mn) + 500(%P) +
700(%S) + 2(%Cr)+ 11.5(%Ni) + 5.5(%Al)}などの
式を用いて算出することが可能であり、同一条件で製造
されるスラブの長手方向にわたり、同一の値を用いる
か、又は製鋼成分の変動に従って補正して用いることが
可能である。またスラブ加熱は一般に長手方向、巾方
向、厚み方向とも均熱して行うことが好ましいが、長手
方向、巾方向の均熱が困難な場合は、最も高温となる部
位を、この発明の提示条件となるよう制御することが望
ましい。さらに通電加熱、誘導加熱によりスラブ加熱を
行う場合には、表面よりも内部で高温となり厚み方向の
温度分布を生じ易いので、最大偏析帯位置での温度が本
発明の提示条件となるよう制御することが好ましい。
工程で製造されるスラブでは偏析の発生位置と偏析傾向
はほぼ一定であるので、代表の一スラブについて厚み方
向に試料を削り出し、直接熱分析を行うか、あるいは成
分分析結果から、平居らが学振19委、第5回凝固現象協
議会、凝固46で報じているように、TSL=(Fe−C系の
固相線温度)−{ 20.5(%Si)+6.5(%Mn) + 500(%P) +
700(%S) + 2(%Cr)+ 11.5(%Ni) + 5.5(%Al)}などの
式を用いて算出することが可能であり、同一条件で製造
されるスラブの長手方向にわたり、同一の値を用いる
か、又は製鋼成分の変動に従って補正して用いることが
可能である。またスラブ加熱は一般に長手方向、巾方
向、厚み方向とも均熱して行うことが好ましいが、長手
方向、巾方向の均熱が困難な場合は、最も高温となる部
位を、この発明の提示条件となるよう制御することが望
ましい。さらに通電加熱、誘導加熱によりスラブ加熱を
行う場合には、表面よりも内部で高温となり厚み方向の
温度分布を生じ易いので、最大偏析帯位置での温度が本
発明の提示条件となるよう制御することが好ましい。
【0027】次に、好適成分組成範囲について説明す
る。この発明の素材である含けい素鋼としては、N以外
の成分については従来公知のものいずれもが適合する。
なお、この発明で特にN含有量を規定したのは、この発
明で解決しようとするスラブのふくれ欠陥の発生原因は
偏析部における部分溶融であり、それによって生じた液
相へのH,N等のガス成分とくにNの濃化である。従っ
て、鋼中N濃度が少ない場合には偏析部が部分溶融をき
たしても、ふくれ欠陥を生じるだけのNの濃化が起こら
ない。従って、この発明では、鋼中にNを0.0025%以上
含有するもののみを対象としたのである。
る。この発明の素材である含けい素鋼としては、N以外
の成分については従来公知のものいずれもが適合する。
なお、この発明で特にN含有量を規定したのは、この発
明で解決しようとするスラブのふくれ欠陥の発生原因は
偏析部における部分溶融であり、それによって生じた液
相へのH,N等のガス成分とくにNの濃化である。従っ
て、鋼中N濃度が少ない場合には偏析部が部分溶融をき
たしても、ふくれ欠陥を生じるだけのNの濃化が起こら
ない。従って、この発明では、鋼中にNを0.0025%以上
含有するもののみを対象としたのである。
【0028】他成分の好適組成範囲については、次のと
おりである。 C:0.01〜0.10% Cは、熱間圧延及び冷間圧延中における組織の均一微細
化だけでなく、ゴス方位の発達に有用な元素であり、少
なくとも0.01%含有することが好ましい。しかしなが
ら、0.10%を超えて含有した場合には脱炭が困難とな
り、かえってゴス方位に乱れが生じるので、上限は0.10
%とすることが好ましい。
おりである。 C:0.01〜0.10% Cは、熱間圧延及び冷間圧延中における組織の均一微細
化だけでなく、ゴス方位の発達に有用な元素であり、少
なくとも0.01%含有することが好ましい。しかしなが
ら、0.10%を超えて含有した場合には脱炭が困難とな
り、かえってゴス方位に乱れが生じるので、上限は0.10
%とすることが好ましい。
【0029】Si:2.0 〜4.5 % Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に寄与するが、含
有量が 4.5%を上回ると冷延性が損なわれ、一方 2.0%
に満たないと比抵抗が低下するだけでなく、二次再結晶
及び純化のために行われる最終焼鈍中にα−γ変態によ
って結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果
が得られないので、Siは 2.0〜4.5 %程度とするのが好
ましい。
有量が 4.5%を上回ると冷延性が損なわれ、一方 2.0%
に満たないと比抵抗が低下するだけでなく、二次再結晶
及び純化のために行われる最終焼鈍中にα−γ変態によ
って結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果
が得られないので、Siは 2.0〜4.5 %程度とするのが好
ましい。
【0030】Mn:0.02〜0.12% Mnは、熱間脆化を防止するためには少なくとも0.02%程
度を必要とするが、あまり多すぎると磁気特性を劣化さ
せるので、上限は0.12%程度とするのが好ましい。
度を必要とするが、あまり多すぎると磁気特性を劣化さ
せるので、上限は0.12%程度とするのが好ましい。
【0031】イヒビターとしては、いわゆるMnS, MnSe
系とAlN系とがある。 MnS, MnSe系の場合 S, Seのうちから選ばれる少なくとも一種:0.005 〜0.
06% S, Seはいずれも、方向性けい素鋼板の二次再結晶を制
御するインヒビターとして有力な元素である。抑制力の
観点からは、少なくとも 0.005%程度を必要とするが0.
06%を超えるとその効果が損なわれる。従って、その上
限、下限はそれぞれ 0.005%、0.06%程度とするのが好
ましい。 AlN系の場合 Al:0.005〜0.10% Alの範囲についても、上述のMnS, MnSe系の場合と同様
の理由から上記の範囲に定めた。なお、上述のMnS, Mn
Se系及びAlN系はそれぞれ併用が可能である。さらに、
インヒビター成分としては、上記したS, Se, Alの他、
Cu, Sn, Sb,Mo, Te及びBi等も有利に作用するのでそれ
ぞれ少量併せて含有させることもできる。これらの成分
の好適添加範囲はそれぞれ、Cu, Sn:0.01〜0.15%、S
b, Mo,Te, Bi:0.005 〜0.1 %であり、これらの各イン
ヒビター成分についても、単独使用及び複合使用のいず
れもが可能である。
系とAlN系とがある。 MnS, MnSe系の場合 S, Seのうちから選ばれる少なくとも一種:0.005 〜0.
06% S, Seはいずれも、方向性けい素鋼板の二次再結晶を制
御するインヒビターとして有力な元素である。抑制力の
観点からは、少なくとも 0.005%程度を必要とするが0.
06%を超えるとその効果が損なわれる。従って、その上
限、下限はそれぞれ 0.005%、0.06%程度とするのが好
ましい。 AlN系の場合 Al:0.005〜0.10% Alの範囲についても、上述のMnS, MnSe系の場合と同様
の理由から上記の範囲に定めた。なお、上述のMnS, Mn
Se系及びAlN系はそれぞれ併用が可能である。さらに、
インヒビター成分としては、上記したS, Se, Alの他、
Cu, Sn, Sb,Mo, Te及びBi等も有利に作用するのでそれ
ぞれ少量併せて含有させることもできる。これらの成分
の好適添加範囲はそれぞれ、Cu, Sn:0.01〜0.15%、S
b, Mo,Te, Bi:0.005 〜0.1 %であり、これらの各イン
ヒビター成分についても、単独使用及び複合使用のいず
れもが可能である。
【0032】なおスラブは、連続鋳造により製造された
ものを対象とするが、連続鋳造後に分塊再圧されたスラ
ブも対象に含まれることはいうまでもない。スラブは通
常そのまま、又は仮置き後加熱炉に装入、加熱、あるい
は徐冷却後、表面手入れ等を施した後、加熱炉に装入、
加熱される。この発明では、この加熱処理が特に重要で
あり、前述したとおり、最大偏析位置の固相線温度TSL
を超える温度域で5〜30分間の加熱を施し、さらには必
要に応じてその後にTSL以下の温度で少なくとも1分間
保持することによって、スラブふくれの発生を防止しつ
つ、短時間でインヒビターの固溶を終了し、良好な磁気
特性を得るのである。ここに、電気式加熱炉としては、
電磁誘導加熱や抵抗加熱等が好適である。
ものを対象とするが、連続鋳造後に分塊再圧されたスラ
ブも対象に含まれることはいうまでもない。スラブは通
常そのまま、又は仮置き後加熱炉に装入、加熱、あるい
は徐冷却後、表面手入れ等を施した後、加熱炉に装入、
加熱される。この発明では、この加熱処理が特に重要で
あり、前述したとおり、最大偏析位置の固相線温度TSL
を超える温度域で5〜30分間の加熱を施し、さらには必
要に応じてその後にTSL以下の温度で少なくとも1分間
保持することによって、スラブふくれの発生を防止しつ
つ、短時間でインヒビターの固溶を終了し、良好な磁気
特性を得るのである。ここに、電気式加熱炉としては、
電磁誘導加熱や抵抗加熱等が好適である。
【0033】上記のようにしてスラブを加熱したのち、
熱間圧延によって 1.4〜3.5 mm厚の熱延鋼帯とする。こ
の熱延鋼帯の酸洗工程、その後の1回又は中間焼鈍を挟
む2回以上の冷間圧延工程、それに続く脱炭焼鈍、焼鈍
分離剤塗布及び最終仕上げ焼鈍工程は、それぞれ公知の
手段を用いることができる。
熱間圧延によって 1.4〜3.5 mm厚の熱延鋼帯とする。こ
の熱延鋼帯の酸洗工程、その後の1回又は中間焼鈍を挟
む2回以上の冷間圧延工程、それに続く脱炭焼鈍、焼鈍
分離剤塗布及び最終仕上げ焼鈍工程は、それぞれ公知の
手段を用いることができる。
【0034】
実施例1 C:0.08%、Si:3.1 %、Mn:0.07%、Al:0.029 %、
S:0.02%およびN:0.008 %を含有し、残部は実質的
にFeよりなる 180mm厚のスラブを、連続鋳造によって得
た。このスラブの最大偏析帯は厚み中心に位置し、その
位置における固相線温度TSLは1417℃であった。このス
ラブを各温度で一定時間均熱後、厚さ:45mmのシートバ
ーとしてから、2.2 mm厚の熱延板としたのち、一次冷間
圧延ついで中間焼鈍を挟む二次冷間圧延により0.22mmの
最終板厚に仕上げた。その後、 MgOを主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから、水素雰囲気中で1200℃、8時間
の最終仕上げ焼鈍を施した。かくして得られた製品の磁
気特性及びスラブ段階におけるふくれ欠陥の有無につい
て調べた結果を、表1に示す。またとくに、各スラブの
ふくれ発生の有無及び二次再結晶の良、不良について
は、加熱温度と加熱時間との関係で図1に整理して示
す。
S:0.02%およびN:0.008 %を含有し、残部は実質的
にFeよりなる 180mm厚のスラブを、連続鋳造によって得
た。このスラブの最大偏析帯は厚み中心に位置し、その
位置における固相線温度TSLは1417℃であった。このス
ラブを各温度で一定時間均熱後、厚さ:45mmのシートバ
ーとしてから、2.2 mm厚の熱延板としたのち、一次冷間
圧延ついで中間焼鈍を挟む二次冷間圧延により0.22mmの
最終板厚に仕上げた。その後、 MgOを主成分とする焼鈍
分離剤を塗布してから、水素雰囲気中で1200℃、8時間
の最終仕上げ焼鈍を施した。かくして得られた製品の磁
気特性及びスラブ段階におけるふくれ欠陥の有無につい
て調べた結果を、表1に示す。またとくに、各スラブの
ふくれ発生の有無及び二次再結晶の良、不良について
は、加熱温度と加熱時間との関係で図1に整理して示
す。
【0035】
【表1】
【0036】表1及び図1から明らかなように、加熱温
度がTSL以上であっても、均熱時間が5〜30分であれ
ば、スラブふくれ欠陥の発生は全くなく、また磁気特性
も良好であった。しかも、適合例はいずれも、美麗な表
面外観を呈していた。
度がTSL以上であっても、均熱時間が5〜30分であれ
ば、スラブふくれ欠陥の発生は全くなく、また磁気特性
も良好であった。しかも、適合例はいずれも、美麗な表
面外観を呈していた。
【0037】実施例2 C:0.06%、Si:3.4 %、Mn:0.05%、Al:0.029 %、
Se:0.02%およびN:0.007 %を含有し、残部は実質的
にFeよりなる 215mm厚スラブを、電磁溶鋼攪拌を付加し
ながら連続鋳造により製造した。このスラブの最大偏析
帯は厚み約1/5位置に存在し、その位置における固相線
温度TSLは1423℃であった。このスラブを各温度で一定
時間均熱後、1400℃に2分間保定したのち、冷却した。
ついで、厚さ:45mmのシートバーとしてから、2.2 mm厚
の熱延板としたのち、一次冷間圧延ついで中間焼鈍を挟
む二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。そ
の後、 MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、
水素雰囲気中で1200℃、8時間の最終仕上げ焼鈍を施し
た。かくして得られた製品の磁気特性及びスラブ段階に
おけるふくれ欠陥の有無について調べた結果を、表2に
示す。またとくに、各スラブのふくれ発生の有無及び二
次再結晶の良、不良については、加熱温度と加熱時間と
の関係で図2に整理して示す。
Se:0.02%およびN:0.007 %を含有し、残部は実質的
にFeよりなる 215mm厚スラブを、電磁溶鋼攪拌を付加し
ながら連続鋳造により製造した。このスラブの最大偏析
帯は厚み約1/5位置に存在し、その位置における固相線
温度TSLは1423℃であった。このスラブを各温度で一定
時間均熱後、1400℃に2分間保定したのち、冷却した。
ついで、厚さ:45mmのシートバーとしてから、2.2 mm厚
の熱延板としたのち、一次冷間圧延ついで中間焼鈍を挟
む二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。そ
の後、 MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、
水素雰囲気中で1200℃、8時間の最終仕上げ焼鈍を施し
た。かくして得られた製品の磁気特性及びスラブ段階に
おけるふくれ欠陥の有無について調べた結果を、表2に
示す。またとくに、各スラブのふくれ発生の有無及び二
次再結晶の良、不良については、加熱温度と加熱時間と
の関係で図2に整理して示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2及び図2から明らかなように、この発
明に従い、TSLを超える温度で短時間均熱後、TSL以下
の温度で短時間保定処理した場合には、スラブふくれ欠
陥は全く発生せず、磁気特性も良好であった。また、適
合例はいずれも、美麗な表面外観を呈していた。
明に従い、TSLを超える温度で短時間均熱後、TSL以下
の温度で短時間保定処理した場合には、スラブふくれ欠
陥は全く発生せず、磁気特性も良好であった。また、適
合例はいずれも、美麗な表面外観を呈していた。
【0040】実施例3 C:0.06%、Si:3.4 %、Mn:0.05%、Se:0.02%、A
l:0.029 %およびN:0.007 %を含有し、残部は実質
的にFeよりなる 215mm厚スラブを、電磁溶鋼攪拌を付加
しつつ連続鋳造により製造した。このスラブの最大偏析
帯は厚み約1/5 位置に存在し、その位置での固相線温度
TSLは1423℃であった。このスラブを1440℃で20分間均
熱し、その後圧延機不具合が生じたため1400℃に90分間
待機保持した後、圧延したところ、スラブふくれの発生
はなく、良好な結果が得られた。
l:0.029 %およびN:0.007 %を含有し、残部は実質
的にFeよりなる 215mm厚スラブを、電磁溶鋼攪拌を付加
しつつ連続鋳造により製造した。このスラブの最大偏析
帯は厚み約1/5 位置に存在し、その位置での固相線温度
TSLは1423℃であった。このスラブを1440℃で20分間均
熱し、その後圧延機不具合が生じたため1400℃に90分間
待機保持した後、圧延したところ、スラブふくれの発生
はなく、良好な結果が得られた。
【0041】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、スラブ加熱
時におけるふくれ欠陥の発生を完全に防止して、良好な
磁気特性及び表面外観を有する方向性けい素鋼板を安定
して得ることができる。
時におけるふくれ欠陥の発生を完全に防止して、良好な
磁気特性及び表面外観を有する方向性けい素鋼板を安定
して得ることができる。
【図1】実施例1において、スラブふくれ及び二次再結
晶に及ぼす均熱温度及び記均一時間の影響を示したグラ
フである。
晶に及ぼす均熱温度及び記均一時間の影響を示したグラ
フである。
【図2】実施例2において、スラブふくれ及び二次再結
晶に及ぼす均熱温度及び記均一時間の影響を示したグラ
フである。
晶に及ぼす均熱温度及び記均一時間の影響を示したグラ
フである。
Claims (2)
- 【請求項1】 N:0.0025wt%以上を含有する含けい素
鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱した
のち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む
2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、
脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し
てから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 スラブ加熱工程において、スラブの厚さ方向における最
大偏析位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分
間の加熱を行うことを特徴とするスラブふくれ欠陥のな
い方向性けい素鋼熱延板の製造方法。 - 【請求項2】 N:0.0025wt%以上を含有する含けい素
鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱した
のち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む
2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、
脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し
てから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向
性けい素鋼板を製造するに当たり、 スラブ加熱工程において、スラブの厚さ方向における最
大偏析位置の固相線温度TSLを超える温度域で5〜30分
間の加熱を行い、引き続きTSL以下の温度で少なくとも
1分間保持することを特徴とするスラブふくれ欠陥のな
い方向性けい素鋼熱延板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19725593A JPH0754045A (ja) | 1993-08-09 | 1993-08-09 | 方向性けい素鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19725593A JPH0754045A (ja) | 1993-08-09 | 1993-08-09 | 方向性けい素鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0754045A true JPH0754045A (ja) | 1995-02-28 |
Family
ID=16371426
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19725593A Pending JPH0754045A (ja) | 1993-08-09 | 1993-08-09 | 方向性けい素鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0754045A (ja) |
-
1993
- 1993-08-09 JP JP19725593A patent/JPH0754045A/ja active Pending
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