JP3451652B2 - 一方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

一方向性珪素鋼板の製造方法

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  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、主にトランスやその
他の電気機器の鉄心材料として使用される方向性珪素鋼
板の製造方法に関し、特に表面性状を改善しようとする
ものである。 【0002】 【従来の技術】この種電気機器の鉄心材料としては、磁
気特性に優れること、具体的には磁場の強さ800A/
mにおける磁束密度B8 値(T)が高く、また50Hzの交
流磁束密度1.7Tにおける鉄損特性W17/50 値(W/
kg)が低いことが要求される。このため方向性けい素鋼
板は、2次再結晶を利用して{110}<001>方
位、いわゆるゴス方位の結晶粒を発達させたものであ
る。そして磁気特性の優れた材料を得るには、磁化容易
軸である<001>軸を圧延方向に高度に揃えること、
すなわち適当な圧延と熱処理を組合わせた諸工程によっ
て、ゴス方位に2次再結晶粒を安定して発達させること
が重要である。特にインヒビターと呼ばれるAlN又は
MnS,MnSe等の析出物を均一かつ微細に分散させ
ることが肝要である。 【0003】特公昭50−21291号公報には、熱間
圧延時の仕上前面温度を1150℃以下にして仕上圧延
中にインヒビターを析出させる方法が提示されている。
これは、AlN等のインヒビター析出温度以下に鋼板を
冷却したのち、圧延による歪を導入することにより、A
lN等のインヒビターを析出させる方法である。しか
し、この方法では、仕上圧延前に表層部分が冷却される
ため、板面表層部のAlN等のインヒビターが粗大析出
するという問題がある。 【0004】また、AlNの析出制御について特公昭5
9−45730号公報には、熱間圧延の巻取りを高温域
で行うことが示されている。しかし、この方法では工業
的にコイルの長手および幅方向で温度を均一に制御する
ことは難しく、実用的ではない。 【0005】さらに、特公昭60−37172号公報で
は、900〜1190℃で30%以上の高圧下を行なう
ことにより再結晶化を促進し、集合組織を改善する方法
が開示されている。この方法では、集合組織は良好で
も、熱間圧延でインヒビターが粗大析出することもあ
り、安定した生産が難しい不利があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】この発明は、磁気特性
の優れた一方向性珪素鋼板を工業的に安定して得ること
のできる製造方法について提案することを目的とするも
のである。 【0007】 【課題を解決するための手段】発明者らは、一方向性珪
素鋼板の電磁特性を向上させる手法について鋭意検討し
たところ、熱間圧延でのインヒビター制御および集合組
織改善の両立が必要であることを見出した。すなわち、
集合組織の改善は主として、熱間圧延の粗圧延段階によ
って決定され、120 ℃以上の高温で熱間圧延における再
結晶を完了することにより達成されること、これに続く
仕上圧延段階においては、集合組織の悪化しない条件下
でインヒビター制御を行うのが有利であることを見出し
た。 【0008】この発明は、一方向性珪素鋼素材に、熱間
圧延を施した後1回以上の冷間圧延を施して最終板厚と
し、さらに脱炭焼鈍ついで焼鈍分離剤を塗布した後最終
焼鈍を施す、一連の工程によって方向性珪素鋼板を製造
するに当たり、熱間圧延の粗圧延出側における板厚を5
0mm以下かつ温度を1200℃以上および仕上圧延入側
における温度を1050〜1200℃の範囲とし、さら
に仕上圧延の1パス目におけるロールと板との接触時間
を5×10-2s以上としたことを特徴とする、一方向性
珪素鋼板の製造方法である。 【0009】 【作用】ここで、この発明で用いる一方向性珪素鋼素材
の好ましい組成範囲について説明する。 C:0.01〜0.12% Cは、熱間圧延、そして冷間圧延中の組織の均一微細化
のみならず、ゴス方位の発達に有効な成分であり、少な
くとも0.01%以上の含有が好ましい。しかしながら
0.12%を超える含有は却ってゴス方位に乱れが生じ
るので、上限は0.12%程度が好ましい。 Si:2.0〜4.5% Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に有効である
が、4.5%をこえると冷延性が損なわれ、一方2.0
%未満になると比抵抗が低下するだけでなく、2次再結
晶および純化のために行う最終高温焼鈍中にα−γ変態
によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善
効果が得られないので、Si量は2.0〜4.5%程度
とするのが好ましい。 【0010】Mn:0.02〜0.15% Mnは、熱間脆化を防止するため少なくとも0.02%
程度を必要とするが、あまりに多すぎると磁気特性を劣
化させるので、上限は0.15%程度に定めるのが好ま
しい。 【0011】インヒビターとしては、下記のいわゆるA
lN系のほかに、MnS,MnSe系がある。 【0012】まずAlN系の場合は、 sol.Al:0.01〜0.06% N:0.0030〜0.0120% Al及びNは、方向性けい素鋼板の2次再結晶を制御す
るインヒビターとして有力な成分である。抑制力確保の
観点からは、少なくともAlは0.01%及びNは0.
0090%必要とするが、Alは0.06%及びNは
0.0120%を超えるとその効果が損なわれるので、
その下限はそれぞれAl:0.01%及びN:0.00
30%、上限はAl:0.06及びN:0.0120%
とする。 【0013】またMnS,MnSe系の場合は、 Se,Sのうちから選ばれる少なくとも1種:0.00
5〜0.060% Se,Sの範囲についても、上述したAlN系の場合と
同様な理由により、上記の範囲にすることが好ましい。
なお上述したMnS,MnSe系及びAlN系はそれぞ
れ併用することが電磁特性上望ましい。 【0014】インヒビター成分としては上記したS.S
e,Alの他、Cu,Ni,Sn,Cr,Ge,Sb,
Mo,Zn,Te,Bi及びPなども有利に適合するの
で、それぞれ少量併せて含有させることもできる。ここ
に、上記成分の好適添加範囲はそれぞれ、Cu,Ni,
SnおよびCrが0.01〜0.15%、Ge,Sb,
Mo,Zn,TeおよびBiが0.005〜0.1%、
Pが0.01〜0.2%である。 【0015】さて上記の成分組成になるけい素鋼スラブ
は、所定成分に溶製された溶鋼から、連続鋳造等により
製造される。そしてこのけい素鋼スラブを、高温例えば
1300℃以上に加熱して熱間粗圧延に供する。 【0016】熱間圧延において、その粗圧延の出側温度
は1200℃以上が必要である。1200℃未満では、
再結晶が不充分となって集合組織が改善されないため、
電磁特性上不利になる。さらに、粗圧延出側での厚みは
50mm以下とする。なぜなら、粗圧延出側での厚みが
厚すぎると、仕上圧延スタンド間での板内部からの復熱
によって表層部のインヒビターが粗大化するため、粗圧
延出側での厚みは薄い方が望ましい。ただし、発明者ら
の調査によれば、大幅な磁性劣化を起こすのは50mm
を越える範囲であり、また工業的な生産性からは厚い方
が望ましいため、上限を50mmとする。次に、仕上圧
延の入側温度を1050℃以上1250℃以下でかつ仕
上圧延の1パス目はロールと板との接触時間が5×10
-2s以上とする。 【0017】熱間仕上圧延の入側温度が1200℃を超
えると仕上圧延時に再結晶が発生し、電磁特性上不利と
なる。また、1050℃未満では、板表面部のインヒビ
ターが仕上圧延する前に粗大化するため、電磁特性が劣
化する。 【0018】仕上圧延でインヒビターを微細析出させる
ためには、ロールと板の接触による表層部の急速冷却が
最も有効である。 【0019】ここで、板表層部の冷却に関係する因子と
しては、 ロール温度(表面温度) ロール熱伝導率 ロールと板の接触長、即ちロール直径と圧下量(但
し、ロール直径は一定であるから圧下量で決まる) 通板速度(圧延速度) 上記のロール熱伝導率は、実用的に採用されているロ
ール鋼の範囲では材質による実質的な差がなく、また上
記のロール表面温度は、ロールに常時大量の冷却水が
かけられており、ロールバイト直前では冷却水温度に近
くなっている(40〜70℃)ため、有効な手段ではな
い。 【0020】従って、実操業では、上記したおよび
を制御して、所定の接触時間を確保すれば、必要な表層
冷却を施すことができる。なお、圧下量は板厚制御やパ
ススケジュールが決められていることが多いため、圧下
量に応じて通板速度を変えるのが一般的である。但し、
予め与えられた通板速度に対して圧下量を微調整して接
触時間を変えることも出来る。 【0021】この接触時間が5×10-2s未満では、イ
ンヒビターが粗大化するため5×10-2s以上とする。
なお、粗圧延出側での仕上厚みが厚すぎると、仕上圧延
スタンド間での板内部からの復熱によって表層のインヒ
ビターが粗大化するため、粗圧延出側での仕上厚みは5
0mm以下とする。 【0022】 【実施例】 (実施例1)C:0.06%、Si:3.05%、so
l.Al:0.023%、Mn:0.075%、S:
0.025%、N:0.0085%を含み残部実質的に
鉄及び不可避的不純物からなる、多数のけい素鋼スラブ
を、1380℃で30分間加熱後、熱間圧延時の条件を
表1に示す種々の条件で実施し、1.8mm厚に熱間圧
延した。次いで、熱延板を1050℃で連続焼鈍した
後、60秒間で常温まで冷却し、その後88.9%の圧
下率で冷間圧延して0.23mmの最終板厚とした。引
き続き、脱炭焼鈍、そして仕上焼鈍を施した。 【0023】かくして、得られた最終製品における電磁
特性をコイル全長にわたって調査した結果を、平均値で
表1に併せて示す。この発明に従って得られたコイルN
o.6のものに顕著な電磁特性の改善がみられた。 【0024】 【表1】【0025】(実施例2)C:0.06%、Si:3.
05%、sol.Al:0.028%、Mn:0.07
0%、S:0.020%、N:0.090%を含み残部
実質的に鉄及び不可避的不純物からなる、多数のけい素
鋼スラブを、1400℃で20分加熱後、熱間圧延条件
を変更し、1.8mmに熱間圧延した。次いで、熱延板
を1100℃で連続焼鈍した後60秒間で熱間圧延し
た。その後、87.2%の圧下率で冷間圧延し、0.2
3mmの最終板厚とし、引き続き脱炭焼鈍・仕上焼鈍を
施した。かくして得られた最終製品の電磁特性を、その
製造条件とともに表2に示すように、磁気特性において
この発明の優位性が認められる。 【0026】 【表2】 【0027】 【発明の効果】この発明によれば、コイル全長にわたっ
て良好な電磁特性をもつ一方向性けい素鋼板を工業的に
安定して得ることができる。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一方向性珪素鋼素材に、熱間圧延を施し
    た後1回以上の冷間圧延を施して最終板厚とし、さらに
    脱炭焼鈍ついで焼鈍分離剤を塗布した後最終焼鈍を施
    す、一連の工程によって方向性珪素鋼板を製造するに当
    たり、熱間圧延の粗圧延出側における板厚を50mm以下
    かつ温度を1200℃以上および仕上圧延入側における
    温度を1050〜1200℃の範囲とし、さらに仕上圧
    延の1パス目におけるロールと板との接触時間を5×1
    -2s以上としたことを特徴とする、一方向性珪素鋼板
    の製造方法。
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