JP3612717B2 - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、方向性けい素鋼板の製造方法に関し、特にスラブ加熱時におけるふくれ欠陥の発生を効果的に抑止して、磁気特性を初めとする製品品質の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板は、主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及び鉄損等の磁気特性に優れることが基本的に要求される。
かような方向性けい素鋼板を製造するに当たって特に重要なことは、いわゆる仕上げ焼鈍工程で一次再結晶粒を{110}<001>方位の結晶粒に優先的に二次再結晶させることである。
【0003】
このような二次再結晶を効果的に促進させるためには、まず一次再結晶粒の正常成長を抑制するインヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに分散させることが重要である。かかるインヒビターとして代表的なものは、MnS, MnSe, AlN及びVNのような硫化物や窒化物等で、鋼中への溶解度が極めて小さい物質が用いられている。
このため従来から、熱間圧延前にスラブを高温に加熱してインヒビター成分を完全に固溶させる方法がとられ、熱間圧延工程以降、二次再結晶工程までの間の析出状態を制御している。
なお、インヒビターとしては、上記したものの他、Sb, Sn, As, Pb, Ce, Cu及びMo等の粒界偏析型元素も利用されている。
【0004】
従来、方向性けい素鋼板を製造するには、厚さ 100〜300 mm程度のスラブを、1250℃以上の温度に長時間にわたって加熱し、インヒビター成分を完全に固溶させた後、熱間圧延し、ついでこの熱延板を1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚としたのち、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶及び純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行うのが一般的である。
【0005】
しかし、このようなスラブ加熱を長時間施した場合には、加熱終了後の結晶粒の粗大化が著しい。スラブ中の粗大結晶粒は、その後の熱間圧延で再結晶しにくく、未再結晶粒内の亜粒界や転位が析出サイトとして働くため、一旦固溶させたインヒビター成分が粗大に析出し、製品の磁気特性の劣化原因となっていた。
【0006】
ところで近年、技術の進歩によって、スラブ加熱に電磁誘導加熱炉や抵抗加熱炉等の電気式加熱炉が使用されるようになった。これによって、1400℃以上の超高温での加熱が容易となり、インヒビター成分の溶体化が短時間で済むようになった。
また、加熱時間の短縮によって、スラブ粒の粗大成長も抑制されるため、粗大成長に起因した二次再結晶不良に伴う磁気特性の劣化も大幅に改善されるようになった。
【0007】
しかしながら、スラブに上記したような高温加熱を施した場合、スラブにふくれ欠陥が発生するという新たな問題が生起した。このふくれ欠陥がひどい場合には、熱間圧延が不可能になるのは勿論のこと、軽度の場合でも二枚板や板切れ、穴あき等の重大な欠陥の発生要因となる。
【0008】
そこで、発明者らは、このような超高温加熱によるスラブのふくれ欠陥について詳細に調査した結果、かかるふくれ欠陥の発生は、成分偏析部の局所的な溶融と密接な関係があることを突き止めた。すなわち、電気式加熱炉を用いる場合、通常その利点を活かすべく加熱温度は材料の融点近くまで上げられる。この際、材料の平均組成での固相線温度を超えないように加熱制御を行うことが一般的である。
しかしながら連続鋳造法により製造したスラブ中には厚さ方向に成分偏析が生じているため、上記のように融点近傍まで加熱した場合には、この成分偏析部が部分的に溶融し、かようにして生じた液相部における鋼中H,N等のガス成分の再濃縮と、引き続く冷却過程における過飽和ガス成分の気化がふくれ欠陥の原因であることが判明した。
【0009】
ところで従来、けい素鋼板におけるふくれ状の欠陥としては、ブリスターが知られている。ここにブリスターとは、薄板を熱処理した際、鋼中に含有されているガスが膨張することにより生じた薄板表面のふくれ状欠陥を指し、かかるブリスターの防止策としては、以下に述べるような種々の方法が提案されている。
たとえば、特公昭49−42208号公報には、けい素鋼中のAl、H、N量を制御することにより、最終製品にブリスターが発生しない条件が開示されている。
また、特公昭49−42211号公報には、上記の3成分に加えO濃度も制御することによりブリスターが発生しない条件が開示されている。
【0010】
さらに特開平2−259016号公報には、冷間圧延時のロール直径を 150mm以上とすることによって表面ふくれ欠陥を低減した方向性けい素鋼板の製造法が開示されている。
またさらに特開平5−1324号公報には、予備加熱後の温度差と電気加熱炉の昇温速度を制御することにより、スラブ内部開口を起因とする製品表面のふくれ状欠陥を抑止する技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記の改善技術はいずれも、薄板で高温焼鈍を行う際に生じる製品表面の欠陥を対象とするもので、この発明で問題とするスラブ段階でのふくれとは、その発生機構が全く異なるため、上記技術によってスラブふくれの発生を防止することはできなかった。
【0012】
さて、先にも述べたように、方向性けい素鋼板の製造において、最終仕上げ焼鈍時に適正な二次再結晶を進行させ、優れた品質の製品を得るには、インヒビター成分を熱間圧延前の加熱時に完全に溶体化させることが極めて重要である。
しかし、この発明で問題とするスラブ加熱時におけるふくれは、加熱温度が高いほど、また加熱時間が長いほど発生し易くなる。すなわち、インヒビター成分の溶体化とふくれ発生の防止とでは好適条件が相反したものとなっている。
従って、かかるふくれの発生を回避するためには、まず溶質成分の偏析を解消することが重要と考えられる。
【0013】
例えば、スラブ中心付近の偏析を緩和する技術としては、連続鋳造中の半凝固状態で溶鋼を電磁力により攪拌するいわゆる電磁攪拌がよく知られている。
この電磁攪拌を方向性けい素鋼スラブの鋳造段階へ適用することについては、特開昭53−19913号、特開昭57−89433号、特開昭59−159934号及び特開昭55−85629号各公報等に多数提案されている。
しかしながら、特開昭53−19913号公報及び特開昭57−89433号公報に開示の技術は、スラブ組織の微細化ならびに等軸晶率の増大に主眼を置くもので、この発明で問題とするスラブ加熱時におけるふくれ防止については、何ら開示はない。
なお、電磁攪拌を用いると中心付近の偏析は緩和されるものの、完全に緩和されるわけではない。また特開昭55−85629号公報に示されているようなホワイトバンドと呼ばれる負偏析部が生じる場合もある。加えて、それに付随する正偏析が新たに発生することもある。
【0014】
電磁攪拌によって緩和された中心偏析を消滅させるためには、特開昭59−159934号公報に示されているように、電磁攪拌を施した後に、未凝固部の鋳片に圧下を加えることが有効である。
しかしながら、この手法によっても上述したホワイトバンドやそれに付随して生じる正偏析を完全に消滅させることはできない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、現在までのところ、インヒビターを完全に溶体化するためにスラブを高温に加熱した場合に、溶質成分の偏析によるふくれの発生を完全に防止できる技術はまだ知られてなく、その開発が望まれていた。
この発明は、上記の要請に有利に応えるもので、含けい素鋼スラブの高温加熱時に発生するふくれを効果的に防止して、良好な磁気特性を有する方向性けい素鋼板を安定して得ることができる製造方法を提案することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
さて発明者らは、上記の目的を達成するため、ふくれの発生とスラブ加熱条件及び成分偏析との関係について鋭意検討を重ねた結果、前述したように、添加成分元素の偏析とふくれの発生との間には密接な相関があることを見出した。
すなわち、ふくれが発生した部分では亀裂が粒界に沿って生じ、また加熱後の結晶粒径はふくれの生じなかった部分に比べて細かく、加熱時の粒界溶融によって粒成長が抑制されていたことが判った。さらにふくれの発生した部分の表面には、内部から溶湯が流れ出た痕跡が認められた。
以上の事実から、ふくれの発生原因は粒界の部分溶融に起因するものであることが判明した。
【0017】
通常、連続鋳造で得られたスラブには、その中心付近に溶質成分の濃化した中心偏析帯が存在する。また連続鋳造時に電磁攪拌を利用した場合には、中心位置以外にもホワイトバンドに付随する偏析帯が形成されることもある。
スラブ加熱時のふくれは、これらの偏析帯での部分溶融が原因である。さらにミクロ的に見れば偏析帯でも特に粒界部には溶質元素が濃化、偏析し易く、構造的な不安定さと相まって、粒界部での融点低下は特に著しい。
このような状態のスラブをインヒビター溶体化のために高温に加熱したとき、他の部分に先立って偏析帯内の粒界が溶融する。この溶融により液相を生じると、鋼中のH,N等は固相−液相間での再分配により液相中に濃化される。なぜならH,N等の溶解度はδFe中より溶鉄中の方が高いからである。ただし、この再分配はH,N等の拡散による移動を伴うため、温度や時間に依存し、加熱温度が高いほど、また高温での保持時間が長いほど速やかに進行する。
そして加熱終了後、スラブ温度が低下すると液相が凝固し始め、粒界部はH,Nの過飽和状態となり、溶融により強度の低下した粒界部は内圧によって割れ、その結果ふくれが発生する。
【0018】
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわちこの発明は、N:0.0025wt%(以下単に%で示す)以上を含む含けい素鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱したのち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性けい素鋼板を製造するに当たり、
まず、スラブの厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度TSLを求め、
ついで、スラブ加熱温度TSR を、
TSL−50≦TSR≦TSL
を満足する条件で決定し、スラブ加熱をスラブ加熱温度T SR で行うことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0019】
またこの発明においては、スラブを連続鋳造によって製造する際、未凝固部がスラブ厚みの 1/3以上残存する段階で溶鋼に電磁攪拌を付加することが好ましい。
【0020】
以下、この発明の基礎となった実験結果について具体的に説明する。
表1に示す成分組成になる溶鋼を、連続鋳造により、厚み:210 mm、幅:1000mmのスラブとし、このスラブから厚み:210 mm、長さ:300 mm、幅:300 mmの試片を切出した。また、同一のスラブから各厚さ位置でドリル法により採取したサンプルにより、スラブ厚さ方向での最大偏析位置の固相線温度TSLの測定を行い同じく表1に示した。
ついでこの試片を、1250℃で2時間の予備加熱後、それぞれ1380℃、1400℃、1420℃、1440℃及び1460℃まで昇温し、その温度に40分間保持した。
かくして得られた試片についてふくれ欠陥の有無について観察した結果を、加熱温度TSRと固相線温度TSLとの関係で、図1に示す。
なおスラブの連続鋳造時に電磁攪拌を用いた場合には、最大偏析位置は中心部のみならず任意の厚み位置に形成されていた。
【0021】
【表1】
【0022】
図1の結果より、この発明で解決しようとするスラブのふくれ欠陥は、スラブ厚さ方向での最大偏析位置の固相線温度TSLとスラブ加熱温度TSRとの間に相関を持つことが判る。
すなわち、ふくれ欠陥の発生を有効に防止するためには、スラブ厚み方向での最大偏析位置の固相線温度TSLとスラブ加熱温度TSRが、次式
TSL≧TSR
の関係を満たしている必要がある。
【0023】
ここに、上記の効果が得られる機構については以下のように考えられる。
通常、連続鋳造したスラブには厚さ方向に成分元素の偏析が存在する。このような成分元素の濃化が融点の低下を招くことは周知であり、この低融点部を起点としてふくれ欠陥が生じていることは前述したとおりである。
してみれば、最も融点が低い最大偏析位置での固相線温度TSLがスラブ加熱温度TSR以上であれば、スラブ全体にわたって液相を生じることなしにインヒビター溶体化のためのスラブ加熱が可能となり、それ故、ふくれ欠陥の発生を防止できるものと考えられる。
【0024】
なお、スラブ厚み方向での最大偏析位置における固相線温度TSLは、近似的に次式で表される。
TSL=1538−H1{415.5(%C) + 356(%N) + 284(%Se)}−H2{20.5(%Si) + 6.5 (%Mn) + 5.5(%Al) + 4(%Cu) + 108(%Sb)}
ここで、電磁攪拌未使用の時は、H1=1.35, H2=1.2 、一方電磁攪拌使用の時はH1=1.1, H2=1.03である。
【0025】
【作用】
この発明の素材である含けい素鋼としては、N以外の成分については従来公知のものいずれもが適合する。
なお、この発明で特にN含有量を規定したのは、この発明で解決しようとするスラブのふくれ欠陥の発生原因は偏析部における部分溶融であり、それによって生じた液相へのH,N等のガス成分とくにNの濃化である。従って、鋼中N濃度が少ない場合には偏析部が部分溶融をきたしても、ふくれ欠陥を生じるだけのNの濃化が起こらない。従って、この発明では、鋼中にNを0.0025%以上含有するもののみを対象としたのである。
【0026】
参考のために、他成分の好適組成範囲を掲げる。
C:0.01〜0.10%
Cは、熱間圧延及び冷間圧延中における組織の均一微細化だけでなく、ゴス方位の発達に有用な元素であり、少なくとも0.01%含有することが好ましい。しかしながら、0.10%を超えて含有した場合には脱炭が困難となり、かえってゴス方位に乱れが生じるので、上限は0.10%とすることが好ましい。
【0027】
Si:2.5 〜4.5 %
Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に寄与するが、含有量が 4.5%を上回ると冷延性が損なわれ、一方 2.5%に満たないと比抵抗が低下するだけでなく、二次再結晶及び純化のために行われる最終焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果が得られないので、Siは 2.5〜4.5 %程度とするのが好ましい。
【0028】
Mn:0.02〜0.12%
Mnは、熱間脆化を防止するためには少なくとも0.02%程度を必要とするが、あまり多すぎると磁気特性を劣化させるので、上限は0.12%程度とするのが好ましい。
【0029】
インヒビターとしては、いわゆるMnS, MnSe系とAlN系とがある。
MnS, MnSe系の場合
S, Seのうちから選ばれる少なくとも一種:0.005 〜0.06%
S, Seはいずれも、方向性けい素鋼板の二次再結晶を制御するインヒビターとして有力な元素である。抑制力の観点からは、少なくとも 0.005%程度を必要とするが0.06%を超えるとその効果が損なわれる。従って、その上限、下限はそれぞれ 0.005%、0.06%程度とするのが好ましい。
AlN系の場合
Al:0.005〜0.10%
Alの範囲についても、上述のMnS, MnSe系の場合と同様の理由から上記の範囲に定めた。
なお、上述のMnS, MnSe系及びAlN系はそれぞれ併用が可能である。
さらに、インヒビター成分としては、上記したS, Se, Alの他、Cu, Sn, Sb, Mo, Te及びBi等も有利に作用するのでそれぞれ少量併せて含有させることもできる。これらの成分の好適添加範囲はそれぞれ、Cu, Sn:0.01〜0.15%、Sb, Mo, Te, Bi:0.005 〜0.1 %であり、これらの各インヒビター成分についても、単独使用及び複合使用のいずれもが可能である。
【0030】
なおスラブは、連続鋳造により製造されたものを対象とするが、連続鋳造後に分塊再圧されたスラブも対象に含まれることはいうまでもない。スラブは通常そのまま、又は仮置き後加熱炉に装入、加熱、あるいは徐冷却後、表面手入れ等を施した後、加熱炉に装入、加熱される。
次に、高温のスラブ加熱手段としては、密閉構造とし易く、容易に酸素濃度を下げられること、保護ガスによって酸化を防止できること、効率よく加熱でき温度制御が可能であること等の理由から、電磁誘導加熱や抵抗加熱等の電気式加熱炉を用いるのが有利である。
【0031】
この発明では、このスラブ加熱処理における処理温度が重要である。
すなわち、前述したように連続鋳造によって製造されたスラブには厚み方向にわたる成分偏析が形成される。この偏析が融点の低下を招くことは周知であり、最大偏析部での融点の低下が最も著しい。
従って、スラブ加熱中に部分溶融による液相の出現を抑制しスラブふくれ欠陥を防止するために、スラブ加熱温度TSRを厚さ方向での最大偏析位置の固相線温度TSL以下すなわちTSL≧TSRとする必要がある。
ところで、インヒビターの溶体化をより迅速に完了し、加熱終了後の結晶粒の粗大化を防止するためには、加熱温度はできるだけ高い方が望ましいので、スラブ加熱温度の下限は
TSL−50≦TSR
とした。
【0032】
なお、連続鋳造時の未凝固溶鋼部に電磁攪拌を付加することによってスラブの厚さ方向の偏析が完全に解消されるわけではないが、偏析が複数位置へと分散され、結果的に最大偏析位置での固相線温度TSLの低下を抑える効果がある。
ここに、偏析を効果的に分散し、また従来の電磁攪拌の目的であるスラブ組織の微細化、等軸晶率の増加等の効果も損なわないためには、未凝固部がスラブ厚みの 1/3以上残存する段階で電磁攪拌を実施することが望ましい。
【0033】
上記のようにしてスラブを加熱したのち、熱間圧延によって 1.4〜3.5 mm厚の熱延鋼帯とする。この熱延鋼帯の酸洗工程、その後の1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延工程、それに続く脱炭焼鈍、焼鈍分離剤塗布及び最終仕上げ焼鈍工程は、それぞれ公知の手段を用いることができる。
【0034】
【実施例】
表2に示す成分組成になる溶鋼を、連続鋳造により、厚み:210 mm、幅:1000mmのスラブとし、1250℃で2時間の予備加熱後、引き続いて1420℃まで昇温し、その温度で40分間保持した。
ついで、厚さ:50mmのシートバーとしてから、 2.5mm厚の熱延板としたのち、一次冷間圧延ついで中間焼鈍を挟む二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。その後、 MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、水素雰囲気中で1200℃、10時間の最終仕上げ焼鈍を施した。
かくして得られた製品の磁気特性及びスラブ段階におけるふくれ欠陥の有無について調べた結果を、表3に示す。
また表3には、同一のスラブから各厚さ位置でドリル法により採取したサンプルにより、スラブ厚さ方向での最大偏析位置の固相線温度TSLを測定した結果も併せて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
表3に示されるように、この発明に従う場合にはスラブのふくれ欠陥の発生はまったく観察されず、また磁気特性も良好であった。
【0038】
【発明の効果】
かくしてこの発明によれば、熱間圧延前のスラブ加熱においてスラブのふくれ欠陥の発生を効果的に防止することができる。
また、ふくれ欠陥の発生なしに十分に加熱して、インヒビターを完全に固溶できることから、磁気特性の優れた製品を安定して製造でき、製品の品質向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラブのふくれ欠陥に及ぼすスラブ加熱温度TSRと最大偏析位置の固相線温度TSLとの関係を示したグラフである。
Claims (2)
- N:0.0025wt%以上を含む含けい素鋼スラブを、非酸化性雰囲気の電気式加熱炉で加熱したのち、熱間圧延を施し、ついで1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性けい素鋼板を製造するに当たり、
まず、スラブの厚さ方向における最大偏析位置の固相線温度TSLを求め、
ついで、スラブ加熱温度TSR を、
TSL−50≦TSR≦TSL
を満足する条件で決定し、スラブ加熱をスラブ加熱温度T SR で行うことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。 - 請求項1において、スラブを連続鋳造によって製造する際、未凝固部がスラブ厚みの 1/3以上残存する段階で溶鋼に電磁撹拌を付加することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
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