JP2521585B2 - 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法

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JP2521585B2 JP3063600A JP6360091A JP2521585B2 JP 2521585 B2 JP2521585 B2 JP 2521585B2 JP 3063600 A JP3063600 A JP 3063600A JP 6360091 A JP6360091 A JP 6360091A JP 2521585 B2 JP2521585 B2 JP 2521585B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トランス等の鉄心とし
て使用される磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、主にトランスその
他の電気機器の鉄心材料として使用されており、励磁特
性、鉄損特性等の磁気特性に優れていることが要求され
る。励磁特性を表す数値としては、磁場の強さ800A
/mにおける磁束密度B8が通常使用される。また、鉄損
特性を表す数値としては、周波数50Hzで1.7テスラ
ー(T)まで磁化したときの1Kg当りの鉄損W17/50を使
用している。磁束密度は、鉄損特性の最大支配因子であ
り、一般的にいって磁束密度が高いほど鉄損特性が良好
になる。なお、一般的に磁束密度を高くすると二次再結
晶粒が大きくなり、鉄損特性が不良となる場合がある。
これに対しては、磁区制御により、二次再結晶粒の粒径
に拘らず、鉄損特性を改善することができる。
【0003】この一方向性電磁鋼板は、最終仕上焼鈍工
程で二次再結晶を起こさせ、鋼板面に{110}、圧延
方向に<001>軸をもったいわゆるゴス組織を発達さ
せることにより、製造されている。良好な磁気特性を得
るためには、磁化容易軸である<001>を圧延方向に
高度に揃えることが必要である。このような高磁束密度
一方向性電磁鋼板の製造技術として代表的なものに田口
悟等による特公昭40−15644号公報及び今中拓一
等による特公昭51−13469号公報記載の方法があ
る。前者においてはMnS 及びAlN を後者ではMnS,MnS
e,Sb等を主なインヒビターとして用いている。従って
現在の技術においてはこれらインヒビターとして機能す
る析出物の大きさ、形態及び分散状態を適正制御するこ
とが不可欠である。MnS に関して言えば、現在の工程で
は熱延前のスラブ加熱時にMnS をいったん完全固溶させ
た後、熱延時に析出する方法がとられている。二次再結
晶に必要な量のMnS を完全固溶するためには1400℃
程度の温度が必要である。これは普通鋼のスラブ加熱温
度に比べて200℃以上も高く、この高温スラブ加熱処
理には以下に述べるような不利な点がある。
【0004】1) 方向性電磁鋼専用の高温スラブ加熱
炉が必要。 2) 加熱炉のエネルギー原単位が高い。 3) 溶融スケール量が増大し、いわゆるノロかき出し
等にみられるように操業上の悪影響が大きい。 このような問題点を回避するためにはスラブ加熱温度を
普通鋼並みに下げればよいわけであるが、このことは同
時にインヒビターとして有効なMnS の量を少なくするか
あるいはまったく用いないことを意味し、必然的に二次
再結晶の不安定化をもたらす。このため低温スラブ加熱
化を実現するためには何らかの形でMnS以外の析出物な
どによりインヒビターを強化し、仕上焼鈍時の正常粒成
長の抑制を充分にする必要がある。このようなインヒビ
ターとしては硫化物の他、窒化物、酸化物及び粒界析出
元素等が考えられ、公知の技術として例えば次のような
ものがあげられる。
【0005】特公昭54−24685号公報ではAs,B
i,Sn,Sb等の粒界偏析元素を鋼中に含有することによ
りスラブ加熱温度を1050〜1350℃の範囲にする
方法が開示された。特開昭52−24116号公報では
Alの他、Zr,Ti,B,Nb,Ta,V,Cr,Mo等の窒化物生
成元素を含有することによりスラブ加熱温度を1100
〜1260℃の範囲にする方法が開示された。また、特
開昭57−158322号公報ではMn含有量を下げ、Mn
/Sの比率を2.5以下にすることにより低温スラブ加
熱化を行ない、さらにCuの添加により二次再結晶を安定
化する技術が開示された。一方、これらインヒビターの
補強と組み合わせて金属組織の側から改良を加えた技術
も開示された。すなわち特開昭57−89433号公報
ではMnに加えS,Se,Sb,Bi,Pb,Sn,B等の元素を加
え、これにスラブの柱状晶率と二次冷延圧下率を組み合
わせることにより1100〜1250℃の低温スラブ加
熱化を実現している。さらに特開昭59−190324
号公報ではSあるいはSeに加え、Al及びBと窒素を主体
としてインヒビターを構成し、これに冷延後の一次再結
晶焼鈍時にパルス焼鈍を施すことにより二次再結晶を安
定化する技術が公開された。このように方向性電磁鋼板
製造における低温スラブ加熱化実現のためには、これま
でに多大な努力が続けられてきている。
【0006】さて、先に特開昭59−56522号公報
においてMnを0.08〜0.45%、Sを0.007%
以下にすることにより低温スラブ加熱化を可能にする技
術が開示された。この方法により高温スラブ加熱時のス
ラブ結晶粒粗大化に起因する製品の線状二次再結晶不良
発生の問題が解消された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】低温スラブ加熱による
方法は元来、製造コストの低減を目的としておるもの
の、当然のことながら、良好な磁気特性を安定して得る
技術でなければ、工業化はできない。他方スラブ加熱を
低温化すると当然、熱延温度が低下する等熱延に関する
変更が生じる。しかしながら、これまでのところ、熱延
方法を組み込んだ低温スラブ加熱の一貫製造方法はほと
んど検討されていなかった。
【0008】従来の高温スラブ加熱(例えば1300℃
以上)の場合、熱延の主な役割は、粗大結晶粒の再結
晶による分断、MnS 、AlN 等の微細析出又は析出抑
制、{110}<001>方位粒の剪断変形による形
成の3点であったが、低温スラブ加熱の場合は必要な
く、に関しては本発明者が特願平1−1778号で開
示している如く、脱炭焼鈍後の金属組織を適切なものと
すればよいので、熱延板での析出物制御は必須でない。
従って従来法での熱延に対する制約は低温スラブ加熱の
場合には少ないと言える。
【0009】ところで、一方向性電磁鋼板の製造におい
ては通常熱延後組織の不均一化、析出処理等を目的とし
て熱延板焼鈍が行われている。例えばAlN を主インヒビ
ターとする製造方法においては、特公昭46−2382
0号公報に示すように熱延板焼鈍においてAlN の析出処
理を行ってインヒビターを制御する方法がとられてい
る。
【0010】通常一方向性電磁鋼板は鋳造−熱延−焼鈍
−冷延−脱炭焼鈍−仕上焼鈍のような主工程を経て製造
され、多量のエネルギーを必要としており、加えて普通
鋼製造プロセス等と比較して製造コストも高くなってい
る。近年多量のエネルギー消費をするこのような製造工
程に対する見直しが進められ、工程、エネルギーの簡省
略化の要請が強まってきた。このような要請に応えるべ
く、AlN を主インヒビターとする製造方法において、熱
延板焼鈍でのAlN の析出処理を、熱延後の高温巻取で代
替する方法(特公昭59−45730号公報)が提案さ
れた。確かに、この方法によって熱延板焼鈍を省略して
も、磁気特性をある程度確保することはできるが、5〜
20トンのコイル状で巻取られる通常の方法において
は、冷却過程でコイル内での場所的な熱履歴の差が生
じ、必然的にAlN の析出が不均一となり最終的な磁気特
性はコイル内の場所によって変動し、歩留が低下する結
果となる。
【0011】そこで本発明者らは、従来ほとんど注目さ
れていなかった仕上熱延最終パス後の再結晶現象に着目
し、この現象を利用して80%以上の強圧下1回冷延に
よる製造法において熱延板焼鈍を省略する方法(特願平
1−85540号、特願平1−85541号)を提示し
た。これらの技術は、仕上熱延最終3パスの強圧下及び
熱延終了後の高温での保持により熱延板を微細再結晶組
織としたことに特徴があり、これらの技術により、12
80℃未満の温度でのスラブ加熱と、熱延板焼鈍の省略
の両立が可能となった。
【0012】一方、これまで一方向性電磁鋼板の熱延に
関しては、高温スラブ加熱(例えば1300℃以上)時
のスラブ結晶粒の粗大成長に起因する二次再結晶不良
(圧延方向に連なった線状細粒発生)を防止するため
に、熱延時の960〜1190℃での温度で1パス当り
30%以上の圧下率で再結晶化高圧下圧延を施し、粗大
結晶粒を分断する方法が提案されている(特公昭60−
37172号公報)。確かにこの方法によって線状細粒
発生が減少するが、熱延板焼鈍を施す製造プロセスを前
提としている。
【0013】また、MnS ,MnSe,Sbをインヒビターとす
る製造方法において、熱延時の950〜1200℃の温
度で圧下率10%以上で連続して熱延し、引き続き3℃
/sec以上の冷却速度で冷却することによってMnS ,MnSe
を均一微細に析出させ、磁気特性を向上させる方法が提
案されている(特開昭51−20716号公報)。また
熱延を低温で行い再結晶の進行を抑制し、剪断変形で形
成される{110}<001>方位粒が引き続く再結晶
で減少するのを防止することによって磁気特性を向上さ
せる方法が提案されている(特公昭59−32526号
公報、特公昭59−35415号公報)。これらの方法
においても、熱延板焼鈍無しの1回冷延法での製造は検
討さえされていない。また、超低炭素を含有する珪素鋼
スラブの熱延において、熱延板で歪を蓄積させる低温大
圧下熱延を行い、引き続く熱延板焼鈍での再結晶により
超低炭素材特有の粗大結晶粒を分断する方法が提案され
ている(特公昭59−34212号公報)。しかしこの
方法においても、熱延板焼鈍無しの1回冷延法での製造
は検討さえされていない。
【0014】従って、本発明者らが、先に示した低温ス
ラブ加熱と熱延板焼鈍の省略を両立させた技術(特願平
1−85540号、特願平1−85541号)の意義は
大きいことがわかる。本発明者らは、これらの技術を工
業化するため工場実験を進め、その過程でコイルの長手
方向に磁性の変動が生じることを確かめた。そこで、本
発明者らは、この磁性変動の原因を詳細に検討した結
果、この現象が低温スラブ加熱時のスラブ内の温度差に
起因することをつきとめた。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記のとおりである。 (1) 重量でC:0.021〜0.075%、Si:
2.5〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜0.06
0%、N:0.0030〜0.0130%、S+0.4
05 Se :0.014%以下、Mn:0.05〜0.8
%、Sn:0.01〜0.15%を含有し、残部がFe及び
不可避不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で
加熱し、加熱完了時10℃以上の温度差が内在するスラ
ブを熱延し、次いで圧下率80%以上の最終冷延を含
み、必要に応じて中間焼鈍をはさむ1回以上の冷延を行
い、次いで脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍を施して一方向性電
磁鋼板を製造する方法において、熱延終了温度を850
〜1050℃とし熱延の最終3パスの累積圧下率を40
%以上とし、脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開始までの
間での一次再結晶粒の平均粒径を18〜30μmとし、
脱炭焼鈍後最終仕上焼鈍の二次再結晶開始までの間に鋼
板に窒化処理を施すことを特徴とする磁気特性の優れた
一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0016】(2) 熱延板をスラブ加熱温度以下の温
度で焼鈍することを特徴とする前項1記載の磁気特性の
優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0017】
【作用】本発明が対象としている一方向性電磁鋼板は、
従来用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法
或いは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んで
スラブとし、引き続き熱間圧延して熱延板とし、次いで
圧下率80%以上の最終冷延を含み、必要に応じて中間
焼鈍をはさむ1回以上の冷延、脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍
を順次行うことによって製造される。
【0018】本発明者らは、熱延板焼鈍を省略した1回
冷延法で低温スラブ加熱材を製造した場合の磁性の変動
の原因とその解消策について詳細に検討した。そしてそ
の結果、この現象がスラブ加熱時のスラブ内の温度差に
基づく、AlNの析出のバラツキに起因するという新知見
を得た。そしてその解消策として、Sn添加、熱延最終3
パスの強圧下、脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開始まで
の間での一次再結晶粒の平均粒径の制御が有効であると
いう新知見を得た。以下実験結果を基に詳細に説明す
る。以下の実験では、研究所で、スラブを温度を変えて
加熱し、工場でのスラブ加熱時のスラブ内の温度差によ
り生じる現象のシミュレートを行った。
【0019】図1は、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均
粒径と製品の磁束密度の関係に及ぼすSn量の影響を示
す。この場合、C:0.053重量%、Si:3.28重
量%、酸可溶性Al:0.027重量%、N:0.006
8重量%、S:0.007重量%、Mn:0.14重量
%、A Sn:0.003重量%、B Sn:0.051重
量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる40
mm厚のスラブを、研究所で1150℃、1100℃
の2水準の条件で各60分均熱後、6パスで熱延し、約
1秒後に水冷し、550℃まで冷却した後、550℃に
1時間保持して炉冷する巻取りシミュレーションを施し
た。この場合、6パスの圧下配分は、40→15→7→
3.5→3→2.6→2.3mmであり、最終3パスの累
積圧下率は34%であった。そして、上記4つのスラブ
の熱延終了温度は、863〜918℃であった。かかる
熱延板に熱延板焼鈍を施すことなく約85%の強圧下圧
延を行って最終板厚0.335mmの冷延板とし、840
℃に150秒保持し、引き続き870℃に20秒保持す
る脱炭焼鈍を施し、次いで、750℃に30秒保持する
焼鈍時、焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入させて、鋼板に
窒素を吸収せしめた。この窒化処理後のN量は、0.0
190〜0.0223重量%であった。また、この窒化
処理後の鋼板の板厚断面全厚での結晶粒の平均粒径を光
学顕微鏡と画像解析機を用いて測定した。かかる窒化処
理後の鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、
最終仕上焼鈍を行った。
【0020】図1から明らかなように、Sn添加を行った
B材(Sn:0.051重量%)は、A材(Sn:0.00
3重量%)と比較して、平均粒径が小さく、スラブ加熱
温度の違いによる平均粒径の差も小さいことがわかる。
そして、その結果、スラブ加熱温度の違いによる磁束密
度の変動も小さいことがわかる。次に、図2に脱炭焼鈍
後の一次再結晶粒の平均粒径と製品の磁束密度の関係に
及ぼす熱延最終3パスの累積圧下率の影響を示す。この
場合、C:0.055重量%、Si:3.30重量%、酸
可溶性Al:0.029重量%、N:0.0067重量
%、S:0.007重量%、Mn:0.15重量%、Sn:
0.053重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物
からなる40mm厚のスラブを研究所で1150℃、
1125℃、1100℃の3水準の条件で各60分均
熱後、6パスで熱延し、約1秒後に水冷し、550℃ま
で冷却した後、550℃に1時間保持して炉冷する巻取
りシミュレーションを施した。この場合、6パスの圧下
配分は、A 40→15→7→3.5→3→2.6→
2.3mm、B 40→30→20→10→5→3→2mm
の2水準とした。この場合、最終3パスの累積圧下率
は、A:34%、B:80%であった。そして、上記4
つのスラブの熱延終了温度は、868〜958℃であっ
た。かかる熱延板に熱延板焼鈍を施すことなく約85%
の強圧下圧延を行って最終板厚0.335mmの冷延板と
し、840℃に150秒保持し、引き続き875℃に2
0秒保持する脱炭焼鈍を施し、次いで、750℃に30
秒保持する焼鈍時、焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入さ
せ、鋼板に窒素を吸収せしめた。この窒化処理後のN量
は、0.0188〜0.0215重量%であった。ま
た、この窒化処理後の鋼板の板厚断面全厚での結晶粒の
平均粒径を光学顕微鏡と画像解析機を用いて測定した。
かかる窒化処理後の鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離
剤を塗布し、最終仕上焼鈍を行った。
【0021】図2から明らかなように、熱延最終3パス
の累積圧下率が高い条件B(80%)の場合、条件A
(34%)と比較して、平均粒径が大きく、スラブ加熱
温度の差による平均粒径の変動も小さいことがわかる。
そして、その結果、スラブ加熱温度の違いによる磁束密
度の変動も小さいことがわかる。次に、図3に種々の脱
炭焼鈍条件での脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均粒径と
製品の磁束密度の関係を示す。図2の結果を得たものと
同一成分の40mm厚のスラブを、研究所で1100〜1
150℃の温度条件で各60分均熱後、6パスで熱延
し、約1秒後に水冷し、550℃まで冷却した後、55
0℃に1時間保持して炉冷する巻取りシミュレーション
を施した。この場合、6パスの圧下配分を40→30→
20→10→5→3→2mmとした。この場合、最終3パ
スの累積圧下率は80%であり、熱延終了温度は、92
1〜953℃であった。かかる熱延板に熱延板焼鈍を施
すことなく、約85%の強圧下圧延を行って最終板厚
0.335mmの冷延板とし、800〜950℃の脱炭焼
鈍を施し、次いで、750℃に30秒保持する焼鈍時、
焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入し、鋼板に窒素を吸収せ
しめた。この窒化処理後のN量は、0.0179〜0.
0231重量%であった。また、この窒化処理後の鋼板
の板厚断面全厚での結晶粒の平均粒径を光学顕微鏡と画
像解析機を用いて測定した。かかる窒化処理後の鋼板に
MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍
を行った。
【0022】図3から明らかなように、脱炭焼鈍後の一
次再結晶粒の平均粒径が18〜30μmの範囲で、B8
1.90(T)なる良好な磁束密度が得られ、かつ、平
均粒径変動による磁束密度の変動が少ないことがわか
る。図1、図2、図3に示した関係が成立する理由につ
いては必ずしも明らかではないが、本発明者らは次のよ
うに推察している。
【0023】本発明の前提としている1280℃未満の
温度では、本発明のAl,Nの成分範囲では、α相でのAl
N の完全固溶は保障されていない。一方、スラブ加熱の
方式は種々あるが、スラブを炉に挿入後、プッシャーで
移動させながら出口から出す方式や、スキット上にスラ
ブをおき、スキットを動かしてスラブを入口から出口方
向へ移動させる方式等が一般に行なわれている。そし
て、スラブの中でスキットや炉の下面に接する部分は、
温度が低めとなることが多い。この加熱炉内でのスラブ
内の温度差を、研究所でスラブ加熱温度を変えてシミュ
レートした。本発明のAl,Nの成分範囲ではスラブ内の
高温部と低温部でAlN の固溶、析出量に差が生じる。ス
ラブ加熱時のスラブ内の高温部では固溶Nが多く、引き
続く熱延及び脱炭焼鈍時にこの固溶NはAlNの形で微細
析出する。他方、スラブ加熱時のスラブ内の低温部では
固溶Nが少なく、引き続く熱延及び脱炭焼鈍時に微細に
析出するAlN 量は少ない。このようなAlN の析出の場所
的不均一は、脱炭焼鈍時の粒成長の場所的不均一を生じ
させる。つまり、スラブ加熱時のスラブ内の高温部に相
当する部分では、脱炭焼鈍時微細なAlN が多いため、一
次再結晶粒の粒成長は抑制される。一方、スラブ加熱時
のスラブ内の低温部に相当する部分では、脱炭焼鈍時微
細なAlN が少ないため、一次再結晶粒は粒成長しやす
い。このため、脱炭焼鈍完了時、コイル内にスラブ加熱
のスラブ内の温度差に起因する一次再結晶粒径の場所的
不均一が生じる。本発明者らが特願平1−1778号で
開示した如く、この脱炭焼鈍完了時の一次再結晶粒径は
製品の磁束密度と極めて強い相関がある。従って、この
一次再結晶の粒径の場所的不均一は製品での磁束密度の
場所的不均一を生ぜしめることとなる。
【0024】本発明者らが推察した上記の製品での磁束
密度の場所的不均一性の発生メカニズムに立脚し、本発
明によるこの製品の磁束密度の場所的変動の解消メカニ
ズムについては次のように考えられる。Snは粒界偏析元
素として知られており、粒成長を抑制する元素である。
一方本発明範囲のSn量では、スラブ加熱時Snは完全固溶
しており、通常考えられる数10℃の温度差を有する加
熱時のスラブ内でも一様に固溶していると考えられる。
従って、温度差があるにもかかわらず加熱時のスラブ内
で均一に分布しているSnは、脱炭焼鈍時の粒成長抑制効
果についても、場所的に均一に作用すると考えられる。
このため、SnはAlN の場所的不均一に起因する脱炭焼鈍
時の粒成長の場所的不均一を希釈する効果があるものと
考えられる。
【0025】一方、仕上熱延最終3パスでの強圧下によ
る磁束密度の場所的不均一性解消の効果については次の
ように考えられる。通常、100〜400mm厚のスラブ
が1〜5mm厚の熱延板となる熱延工程において、熱延中
板厚が薄くなるにつれて、板厚方向の熱伝導が容易とな
るため、スラブ内にあった温度差は徐々に少なくなって
くる。この段階で、AlN の析出をさらに促進するために
は、歪を加えAlN の析出核としての転位を多くすること
が有効である。従って、鋼板中の温度差が最も軽減され
る仕上熱延の後段で加工歪を加え、AlN の析出促進をは
かることは、スラブ加熱時にスラブ内の温度差のために
生じたNの固溶量、AlN 析出量の場所的不均一性が後工
程まで継承されるのを極力抑制するのに有効と考えられ
る。
【0026】さらに、脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開
始までの間の一次再結晶粒の平均粒径を18〜30μm
とすることの効果については次のように考えている。図
3に示した如く、この粒径の範囲で、B8≧1.90
(T)なる良好な磁束密度が得られており、かつ、粒径
変動による製品の磁束密度の変動が少なくなっている。
従って、スラブ加熱時のスラブ内の温度差に起因する脱
炭焼鈍後の粒径の場所的変動が生じたとしても、粒径の
範囲を18〜30μmにしておけば、磁束密度の場所的
変動は少ないと考えられる。
【0027】次に本発明の構成要件の限定理由について
述べる。先ず、スラブの成分と、スラブ加熱温度に関し
て限定理由を詳細に説明する。Cは0.021重量%
(以下単に%と略述)未満になると二次再結晶が不安定
になり、かつ二次再結晶した場合でもB8≧1.80
(T)が得がたいので0.021%以上とした。一方、
Cが多くなり過ぎると脱炭焼鈍時間が長くなり経済的で
ないので0.075%以下とした。
【0028】Siは4.5%を超えると冷延時の割れが著
しくなるので4.5%以下とした。又、2.5%未満で
は素材の固有抵抗が低すぎ、トランス鉄心材料として必
要な低鉄損が得られないので2.5%以上とした。望ま
しくは3.2%以上である。Alは二次再結晶の安定化に
必要なAlN もしくは (Al,Si)N を確保するため、酸可溶
性Alとして0.010%以上が必要である。酸可溶性Al
が0.060%を超えると熱延板のAlN が不適切となり
二次再結晶が不安定になるので0.060%以下とし
た。
【0029】Nについては通常の製鋼作業では0.00
30%未満にすることが困難であり、かつ経済的に好ま
しくないので0.0030%以上とし、一方、0.01
30%を越えるとブリスターと呼ばれる“鋼板表面のふ
くれ”が発生するので0.0130%以下とした。MnS
,MnSeが鋼中に存在しても、製造工程の条件を適性に
選ぶことによって磁気特性を良好にすることが可能であ
る。しかしながらSやSeが高いと線状細粒と呼ばれる二
次再結晶不良部が発生する傾向があり、この二次再結晶
不良部の発生を予防するためには(S+0.405Se)
≦0.014%とすべきである。SあるいはSeが上記値
を超える場合には製造条件をいかに変更しても二次再結
晶不良部が発生する確率が高くなり好ましくない。また
最終仕上焼鈍で純化するのに要する時間が長くなりすぎ
て好ましくなく、この様な観点からSあるいはSeを不必
要に増すことは意味がない。
【0030】Mnの下限値は0.05%である。0.05
%未満では、熱間圧延によって得られる熱延板の形状
(平坦さ)、就中、ストリップの側縁部が波形状となり
製品歩留りを低下させる問題が発生する。一方、Mn量が
0.8%を越えると製品の磁束密度を低下させ、好まし
くないので、Mn量の上限を0.8%とした。Snの下限値
は0.01%である。この値未満では、粒成長抑制効果
が少なすぎて好ましくない。一方上限値は0.15%と
した。Snは表面に偏析するので、この値を超えると鋼板
の窒化が難しくなり、二次再結晶不良の原因となるため
好ましくない。
【0031】この他、インヒビター構成元素として知ら
れているSb,Cr,Cu,Ni,B,Ti等を微量に含有するこ
とはさしつかえない。スラブ加熱温度は、普通鋼並にし
てコストダウンを行なうという目的から1280℃未満
と限定した。好ましくは1200℃以下である。スラブ
加熱完了時のスラブ内の温度差を10℃以上とした。1
0℃未満の場合には、本発明の如き、スラブ内の温度偏
差に起因する問題の解消策をとる必要性が薄れるためで
ある。
【0032】加熱されたスラブは、引き続き熱延されて
熱延板となる。この熱延の終了温度を850〜1050
℃とし、熱延最終3パスの累積圧下率を40%以上とし
た。熱延工程は、通常100〜400mm厚のスラブを加
熱した後、いづれも複数回のパスで行う粗熱延と仕上熱
延よりなる。粗熱延の方法については特に限定するもの
ではなく、通常の方法で行われる。粗熱延後仕上熱延開
始までの時間については、特に限定するものではない
が、1秒以上かけて仕上熱延を開始することは、AlN の
析出促進の点で好ましい。本発明の特徴は粗熱延に引き
続く仕上熱延にある。仕上熱延は通常4〜10パスの高
速連続圧延で行われる。通常仕上熱延の圧下配分は前段
が圧下率が高く後段に行くほど圧下率を下げて形状を良
好なものとしている。圧延速度は通常100〜3000
m/minとなっており、パス間の時間は0.01〜100
秒となっている。本発明で限定しているのは、熱延終了
温度と熱延最終3パスの累積圧下率だけであり、その他
の条件は特に限定するものではないが、粗熱延、仕上熱
延の前段で強圧下を行うことも、幾分なりとも加工誘起
析出を生ぜしめることになり好ましい。又、最終3パス
でも特に最終パスでの強圧下が効果的である。
【0033】次いで上記熱延条件の限定理由について述
べる。熱延終了温度を850〜1050℃とした。10
50℃を越ると、AlN の析出が生じにくく、本発明のAl
N 析出の場所的不均一の解消効果が十分でない。一方、
850℃未満では、熱延終了後に引き続く再結晶が生じ
にくく、製品の磁束密度が低下するので好ましくない。
【0034】一方、仕上熱延最終3パスでの累積圧下率
を40%以上とした。この値未満では、AlN の加工誘起
析出の効果が不十分なので好ましくない。なお、最終3
パスの累積圧下率の上限については特に限定するもので
はないが、工業的には99.9%以上の累積圧下を加え
ることは困難である。熱延の最終パス後、通常0.1〜
100秒程度空冷された後水冷され300〜700℃の
温度で巻取られ、徐冷される。この冷却プロセスについ
ては特に限定されるものではないが、熱延後1秒以上空
冷等を行い、鋼板をAlN の析出温度域にできるだけ長時
間保持することは、AlN の析出を進ませる上で好まし
い。
【0035】この熱延板は次いで、圧下率80%以上の
最終冷延を含み、必要に応じて中間焼鈍をはさむ1回以
上の冷延を施す。最終冷延の圧下率を80%以上とした
のは、圧下率を上記範囲とすることによって、脱炭板に
おいて尖鋭な{110}<001>方位粒と、これに蚕
食され易い対応方位粒({111}<112>方位粒
等)を適正量得ることができ、磁束密度を高める上で好
ましいためである。
【0036】本発明は、熱延板焼鈍省略プロセスを基に
構成したものであるが、スラブ加熱温度以下の温度で熱
延板焼鈍を施す場合も、同様にスラブ加熱時のスラブ内
の温度差に起因する製品の磁束密度の場所的変動が発生
する。従って、この場合も、本発明のSn添加、熱延最終
3パスの強圧下、脱炭焼鈍後の粒径の制御を用いること
ができ、かつ熱延板焼鈍省略プロセスよりも良好な特性
が得られる。
【0037】かかる冷延後の鋼板は、通常の方法で脱炭
焼鈍、焼鈍分離剤塗布、最終仕上焼鈍を施されて最終製
品となる。ここで脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開始ま
での間の一次再結晶粒の平均粒径を18〜30μmとし
たのは、図3から明らかなように、この値の範囲でB
8(T)≧1.90なる良好な磁束密度が得られ、か
つ、粒径変動に対する磁束密度の変化が少ないからであ
る。
【0038】そして、脱炭焼鈍後、最終仕上焼鈍の二次
再結晶開始までの間に鋼板に窒化処理を施すと規定した
のは、本発明の如き低温スラブ加熱を前提とするプロセ
スでは、二次再結晶に必要なインヒビター強度が不足が
ちになるからである。窒化の方法としては特に限定する
ものではなく、脱炭焼鈍後、引き続き焼鈍雰囲気にNH3
ガスを混入させ窒化する方法、プラズマを用いる方法、
焼鈍分離剤に窒化物を添加し、最終仕上焼鈍の昇温中に
窒化物が分解してできた窒素を鋼板に吸収させる方法
最終仕上焼鈍の雰囲気のN2分圧を高めとし、鋼板を窒化
する方法等いずれの方法でもよい。窒化量については特
に限定するものではないが、1ppm 以上は必要である。
【0039】
【実施例】以下実施例を説明する。 実施例1 C:0.052重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.
16重量%、S:0.006重量%、酸可溶性Al:0.
030重量%、N:0.0070重量%を基本成分と
し、Snの添加量を<0.001重量%、0.05重
量%、0.10重量%、0.31重量%残部Fe及び
不可避的不純物からなる200mm厚の4種類のスラブ
を、a 1150℃、b 1080℃の2水準の温度で
60分均熱した後、直ちに熱延を開始し、5パスで40
mm厚に熱延した後、次いで6パスで熱延して2.3mmの
熱延板とした。この時圧下配分を40→30→20→1
0→5→3→2.3(mm)とした。この時、熱延終了温
度は887〜932℃であり、熱延最終3パスの累積圧
下率は77%であった。
【0040】次いで、熱延終了後は1秒間空冷後550
℃まで水冷し、550℃に1時間保持した後炉冷する巻
取りシミュレーションを行った。この熱延板を酸洗して
圧下率約85%で0.335mmの冷延板とし、840℃
で150秒保持し、次いで870℃に20秒保持する脱
炭焼鈍を施した。しかる後、750℃で30秒保持する
焼鈍を行い、焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入させ鋼板に
窒素を吸収せしめた。この鋼板の板厚断面全厚における
結晶粒径を光学顕微鏡と画像解析機を用いて測定した。
次いで、この鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗
布し、N225%、H275%の雰囲気ガス中で15℃/時
の速度で1200℃まで昇温し、引き続きH2100%雰
囲気ガス中で1200℃で20時間保持する最終仕上焼
鈍を行った。
【0041】実験条件と製品の磁気特性を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】実施例2 C:0.054重量%、Si:3.21重量%、Mn:0.
15重量%、S:0.006重量%、酸可溶性Al:0.
031重量%、N:0.0071重量%、Sn:0.07
重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる4
0mm厚のスラブを、a 1150℃、b 1080℃の
温度で60分均熱した後、1050℃で熱延を開始し、
6パスで熱延して1.8mmの熱延板とした。この時圧下
配分を40→16→7→2.9→2.5→2.1→
1.8(mm)、40→30→20→10→5→2.5
→1.8(mm)の2条件とした。熱延後の冷却を実施例
1と同じ条件で行った。この熱延板を酸洗して圧下率約
86%で0.260mmの冷延板とし、引き続き最終仕上
焼鈍までの工程条件を実施例1と同じ条件で行った。
【0044】実験条件、製品の磁気特性を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】実施例3 C:0.033重量%、Si:3.05重量%、Mn:0.
14重量%、S:0.006重量%、酸可溶性Al:0.
029重量%、N:0.0068重量%、Sn:0.06
重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる2
6mm厚のスラブを、a 1200℃、b 1130℃の
温度で60分均熱した後、1050℃、900℃で
熱延を開始し、6パスで熱延して2.3mmの熱延板とし
た。この時圧下配分を26→15→10→7→5→3→
2.3(mm)とした。熱延終了後の冷却条件、引き続く
窒化処理までの工程条件は実施例1と同じ条件で行っ
た。得られた鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗
布し、N225%、H275%の雰囲気ガス中で10℃/時
の速度で880℃まで昇温し、引き続き1200℃まで
N275%、H225%の雰囲気ガス中で10℃/時の速度
で昇温し、次いでH2100%の雰囲気ガス中で1200
℃で20時間保持する最終仕上焼鈍を行った。
【0047】実験条件と製品の磁気特性を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】実施例4 C:0.050重量%、Si:3.41重量%、Mn:0.
15重量%、S:0.007重量%、酸可溶性Al:0.
029重量%、N:0.0065重量%、Sn:0.12
重量%、残余Fe及び不可避的不純物からなる250mm厚
のスラブを、a1150℃、b 1070℃の2水準の
温度で45分均熱した後、すみやかに熱延を開始し5パ
スで40mm厚まで熱延した後、6パスで熱延して2.3
mmの熱延板とした。この時、圧下配分を40→30→2
0→10→6→4→2.3(mm)とした。次いで、熱延
終了後、4秒間空冷後400℃まで水冷し、400℃に
1時間保持した後炉冷する巻取りシミュレーションを行
った。しかる後、この熱延板を酸洗して圧下率約85%
で0.335mmの冷延板とし、810℃に150秒保
持、830℃に150秒保持、850℃に150秒
保持、880℃に150秒保持なる4つの条件で脱炭
焼鈍を施した。しかる後、750℃で30秒保持する焼
鈍を行い、焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入させ、鋼板に
窒素を吸収せしめた。この鋼板の板厚全厚における結晶
粒径を光学顕微鏡と画像解析機を用いて測定した。次い
でこの鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、
N225%、H275%の雰囲気ガス中で10℃/時の速度
で1200℃まで昇温し、引き続きH2100%雰囲気ガ
ス中で1200℃で20時間保持する最終仕上焼鈍を行
った。実験条件と製品の磁気特性を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】実施例5 C:0.050重量%、Si:3.28重量%、Mn:0.
14重量%、S:0.006重量%、酸可溶性Al:0.
029重量%、N:0.0068重量%、Sn:0.06
重量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる4
0mm厚のスラブを、a 1180℃、b 1100℃の
温度で60分均熱した後、1050℃で熱延を開始し6
パスで熱延して2.3mm厚の熱延板とした。この時圧下
配分を40→15→7→3.5→3→2.6→2.3
(mm)、40→30→20→10→5→3→2.3
(mm)の2条件とした。熱延終了後は2秒間空冷後55
0℃まで水冷し、550℃に1時間保持した後炉冷する
巻取りシミュレーションを行った。この熱延板に、90
0℃に2分保持して急冷する熱延板焼鈍を行い、次いで
圧下率約88%で0.285mm厚の冷延板とし、830
℃で150秒保持し、次いで870℃に20秒保持する
脱炭焼鈍を施した。しかる後、750℃に30秒保持す
る焼鈍を行い、焼鈍雰囲気中にNH3 ガスを混入させ、鋼
板に窒素を吸収せしめた。この鋼板の板厚全厚における
結晶粒径を光学顕微鏡と画像解析機を用いて測定した。
次いで、この鋼板に、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を
塗布し、N275%、H225%の雰囲気ガス中で10℃/
時の速度で1200℃まで昇温し、引き続きH2100%
雰囲気ガス中で1200℃で20時間保持する最終仕上
焼鈍を行った。実験条件と製品の磁気特性を表5に示
す。
【0052】
【表5】
【0053】実施例6 C:0.057重量%、Si:3.45重量%、Mn:0.
15重量%、酸可溶性Al:0.031重量%、N:0.
0064重量%、Sn:0.09重量%を含有し、残部Fe
及び不可避的不純物からなる40mm厚のスラブを実施例
5記載の条件でスラブ加熱から巻取りシミュレーション
を行った。この熱延板に、980℃に2分保持して急冷
する熱延板焼鈍を行い、次いで実施例5記載の条件で最
終仕上焼鈍までの工程を処理した。
【0054】実験条件と製品の磁気特性を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において
は、Sn添加及び熱延終了温度と熱延最終3パスの累積圧
下率の制御とさらに脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開始
までの間での一次再結晶粒の平均粒径を制御し、鋼板に
窒化処理を施すことにより、熱延板焼鈍を省略して、良
好な磁気特性を場所的バラツキなく安定して得ることが
できるので、その工業的効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均粒径と
製品の磁束密度の関係に及ぼすSn量の影響を表したグラ
フである。
【図2】図2は脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均粒径と
製品の磁束密度の関係に及ぼす熱延最終3パスの累積圧
下率の影響を表したグラフである。
【図3】図3は種々の脱炭焼鈍条件での脱炭焼鈍後の一
次再結晶粒の平均粒径と製品の磁束密度の関係を表した
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石橋 希瑞 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (72)発明者 永岡 歳邦 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量でC:0.021〜0.075%、
    Si:2.5〜4.5%、酸可溶性Al:0.010〜0.
    060%、N:0.0030〜0.0130%、S+
    0.405 Se :0.014%以下、Mn:0.05〜
    0.8%、Sn:0.01〜0.15%を含有し、残部が
    Fe及び不可避不純物からなるスラブを1280℃未満の
    温度で加熱し、加熱完了時10℃以上の温度差が内在す
    るスラブを熱延し、次いで圧下率80%以上の最終冷延
    を含み、必要に応じて中間焼鈍をはさむ1回以上の冷延
    を行い、次いで脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍を施して一方向
    性電磁鋼板を製造する方法において、熱延終了温度を8
    50〜1050℃とし熱延の最終3パスの累積圧下率を
    40%以上とし、脱炭焼鈍完了後、最終仕上焼鈍開始ま
    での間での一次再結晶粒の平均粒径を18〜30μmと
    し、脱炭焼鈍後最終仕上焼鈍の二次再結晶開始までの間
    に鋼板に窒化処理を施すことを特徴とする磁気特性の優
    れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 熱延板をスラブ加熱温度以下の温度で焼
    鈍することを特徴とする請求項1記載の磁気特性の優れ
    た一方向性電磁鋼板の製造方法。
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