JPH0751811B2 - 床構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、床スラブにプレストレスを導入する場合に採
用して好適な床構造に関するものである。

〈従来の技術〉 チューブ構造建築物の床スラブにプレストレスを導入す
るに際して、PC鋼材のライズを十分に確保して床スラブ
の吊上げ力を増加させるようにした「チューブ構造建築
物のPCフラットスラブ構築方法」（特開昭63−236843号
公報）が提案されている。この提案にあっては、ポスト
テンション導入用PCストランドをPCフラットスラブを挟
んで互いに対向する各２柱間に配設し、スラブの中央部
では所定のコンクリートかぶり厚さを配してPCフラット
スラブの下面に近付け、スラブの両端部付近では所定の
コンクリートかぶり厚さを配してPCフラットスラブの上
面に近付けて全体としてPCフラットスラブ内に上向き凹
形に形成し、両端は夫々２柱内を水平方向に貫通させ、
２柱の各外側部において固定端を定着し、緊張端からポ
ストテンションを導入するようになっている。

〈発明が解決しようとする課題〉 ところで上記提案にあっては、PCストランドの配線位置
と柱位置とを必ず１対１で対応させる必要があり、PCス
トランドの配線レイアウトの自由度が制限されると共
に、フラットスラブ全体を十分に吊上げ得るのに必要な
PCストランドの配線本数を確保する上で要求される固定
端、緊張端設置箇所ないしは設置個数の確保が難しいと
考えられる。

〈課題を解決するための手段〉 本発明は、PC鋼材が配設されてプレストレスが導入され
る床スラブをその導入方向両側から挟んで、バルコニー
または廊下等を形成する構造材を接合し、構造材に形成
した立上がり端部にPC鋼材の固定端、緊張端を形成する
と共に、構造材の接合される床スラブ端部のPC鋼材の配
置高さを床スラブの上面から、床スラブ中央部における
床スラブ下面からのかぶり深さとして構成される。

〈作用〉 本発明の作用について述べると、床スラブ端部のPC鋼材
の配置高さを、床スラブ中央部における床スラブ下面か
らのかぶり深さで床スラブの上面から設定したので、PC
鋼材の床スラブ内のライズを十分に確保して床スラブの
吊上げ力を増加できるようになっている。特に、床スラ
ブにプレストレスを導入するためのPC鋼材の固定端、緊
張端をバルコニーまたは廊下等の構造物周囲全面に亘っ
て連続する構造材で形成したので、PC鋼材の配設の自由
なレイアウトを実現できると共に、床スラブを吊上げる
のに必要な十分な本数のPC鋼材の配設を確保することが
できる。

〈実施例〉 以下に、本発明の好適実施例を添付図面に従って詳述す
る。

第３図にはダブルチューブ構造の建築物１が示されてお
り、このダブルチューブ構造は、外チューブ２と内チュ
ーブ３とを各階層の床スラブ４で連結して立体的に組上
げて高層建築物１を構築するもので、内外各チューブ2,
3は所定のスパンで配列された柱５とこれら柱５間を連
結する梁６とで構成される。そして特に、外チューブ２
の外側及び内チューブ３の内側には建築物１の周囲全面
に亘って各階層のバルコニー７及び廊下８が張出されて
いる。また、内チューブ３の内方は吹抜け９となってい
る。

ここに床スラブ４へのプレストレスの導入は、次のよう
な構造をもって行なわれる。第１図には、外チューブ２
の外側に張出されるバルコニー７の部分が示されてお
り、このバルコニー７を形成する構造材10は上下方向に
床スラブ４と重ね合わされる重ね合わせ部10aが半PCで
ある他、全体がプレキャストされて形成される。図示し
ないが、内チューブ３の内側に張出される廊下８の部分
についても、廊下８を形成する構造材が同様な構造で形
成されている。そしてこれら建築物１周囲の全面に亘っ
て連続されるバルコニー７または廊下８等を形成する構
造材10は、PC鋼材11が配設されてプレストレスが導入さ
れる床スラブ４をその導入方向両側から挟むようにして
接合されるように構成される。具体的には、床スラブ４
をその幅方向両側から挟んで配置される。

また殊に、水平方向に延びる構造材10の張出し側には、
床スラブ４の上面4aよりも上方に高く立ち上がる立上が
り端部10bが形成され、この立上がり端部10bには、PC鋼
材11の固定端並びに緊張端12が形成される。詳しくは、
廊下８を形成する構造材10には、吹抜け９に臨む立上が
り端部10bに水平方向に凹設して固定端が形成されると
共に、バルコニー７を形成する構造材10には、外部空間
に臨む立上がり端部10bに水平方向に凹設して緊張端12
が形成され、これら固定端、緊張端12を利用して、プレ
テンショニングまたはポストテンショニングによるプレ
ストレスの導入が行なわれるようになっている。

また構造材10内には、その内部に床スラブ４から延出さ
れるPC鋼材11を貫通挿通させて立上がり端部10bの固定
端または緊張端12に導くためのシース13が設けられる。
本実施例にあっては、これらシース13はPC鋼材11が床ス
ラブ４から構造材10内へ挿通される接合部分から固定
端、緊張端12に向かってほぼ水平に配置されている。図
示の構造で接合部分は、バルコニー７または廊下８とな
る構造材10の斜め下方に向かう傾斜面10cとこれに突き
合わされる床スラブ４の両端面4bとでなっている。そし
て特に、床スラブ４端部（梁14の内側上部）のPC鋼材11
の配置高さｈは、床スラブ４の中央部におけるPC鋼材11
の床スラブ下面4cからのかぶり深さ相当のかぶり深さ
を、床スラブ４の上面4aから得られるように設定され
る。尚、PC鋼材11が床スラブ４端部で、最小のかぶり厚
さを確保する為に、スペーサ16を設置する。

更に、床スラブ４の上面4aから、緊張端12のPC鋼材11の
位置迄の距離をｈ′とし、ｈ′−ｈをなるべく大きく設
定できれば、バルコニー７（片持スラブ）にも吊り上げ
力が作用し、大荷重に耐える。

以上説明した構造は、バルコニー７側と同様に廊下８側
にも適用されることはもちろんである。

以上説明したように、床スラブ４端部のPC鋼材11の配置
高さｈを、床スラブ４中央部における床スラブ下面4cか
らのかぶり深さで床スラブ４の上面4aから設定したの
で、PC鋼材11の床スラブ４内のライズを十分に確保する
ことができ、床スラブ４の吊上げ力を増加させることが
できる。従って、施工荷重の大きな片持ちの床スラブで
あっても、亀裂発生の心配が少なくなると共に、クリー
プ等のたわみを抑えることができる。特に、床スラブ４
にプレストレスを導入するためのPC鋼材11の固定端、緊
張端12をバルコニー７または廊下８等の建築物１周囲全
面に亘って連続する構造材10に形成したので、PC鋼材11
の配設の自由なレイアウトを実現することができると共
に、床スラブ４を吊上げるのに必要な十分な本数のPC鋼
材11の配設を確保することができる。

またこのように構成された床構造の固定端及び緊張端12
の処理に関しては、第２図に示すように構造材10の張出
し側に、これをその外方から覆って化粧を施すPCの化粧
版15を被着するように構成するので、これら端部に後詰
めコンクリートの打設を行なう必要がなく、従って後詰
めコンクリートの収縮の心配がないばかりでなく、止水
も良好でPC鋼材11の発錆等も抑制される。

〈発明の効果〉 以上要するに本実施例によれば、次のような優れた効果
を発揮する。

（１）床スラブ端部のPC鋼材の配置高さを、床スラブ中
央部における床スラブ下面からのかぶり深さで床スラブ
の上面から設定したので、PC鋼材の床スラブ内のライズ
を十分に確保でき、床スラブの吊上げ力を増加させるこ
とができる。

（２）床スラブにプレストレスを導入するためのPC鋼材
の固定端、緊張端をバルコニーまたは廊下等の構造物周
囲全面に亘って連続する構造材に形成したので、PC鋼材
の配設の自由なレイアウトを実現できると共に、床スラ
ブを吊上げるのに必要な十分な本数のPC鋼材の配設を確
保することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の好適な実施例を示すバルコニー側の床
構造の部分断面図、第２図は固定端及び緊張端の処理を
示す要部拡大断面図、第３図はダブルチューブ構造の建
築物の平面図である。 ４……床スラブ、10……構造材 10b……立上がり端部、11……PC鋼材 12……緊張端

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】PC鋼材が配設されてプレストレスが導入さ
   れる床スラブをその導入方向両側から挟んで、バルコニ
   ーまたは廊下等を形成する構造材を接合し、該構造材に
   形成した立上り端部に上記PC鋼材の固定端、緊張端を形
   成すると共に、上記構造材に接合される上記床スラブ端
   部のPC鋼材の配置高さを該床スラブの上面から、該床ス
   ラブ中央部における該床スラブ下面からのかぶり深さと
   したことを特徴とする床構造。