JPH0748274A - 養殖漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料の製法 - Google Patents
養殖漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料の製法Info
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- JPH0748274A JPH0748274A JP3250112A JP25011291A JPH0748274A JP H0748274 A JPH0748274 A JP H0748274A JP 3250112 A JP3250112 A JP 3250112A JP 25011291 A JP25011291 A JP 25011291A JP H0748274 A JPH0748274 A JP H0748274A
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- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【目的】栽培漁業における病原菌及び病原性ウイルス感
染症を安全かつ環境に影響を与えず治療ないし予防する
新しい技術の開発。 【構成】養殖魚類並びに養殖甲殻類の病原微生物感染症
を治療及び予防するため抗菌性物質を投与するさい、哺
乳動物乳汁に含まれる生理活性蛋白質、ラクトフェリン
及び免疫グロブリンのいずれか一方ないし双方を抗菌性
物質と併用することを特徴とする病原微生物感染症の治
療及び予防法。
染症を安全かつ環境に影響を与えず治療ないし予防する
新しい技術の開発。 【構成】養殖魚類並びに養殖甲殻類の病原微生物感染症
を治療及び予防するため抗菌性物質を投与するさい、哺
乳動物乳汁に含まれる生理活性蛋白質、ラクトフェリン
及び免疫グロブリンのいずれか一方ないし双方を抗菌性
物質と併用することを特徴とする病原微生物感染症の治
療及び予防法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は栽培漁業において魚類及
び甲殻類に頻発する病原微生物感染症を治療並びに予防
する新しい方法を提供するものである。ここで言う病原
微生物とは細菌、真菌及びウイルスに属する魚類に固有
の病原体を指すものとする。近年、食生活の高級化にと
もない、ハマチ、マダイ、ヒラメ、クルマエビ、ウナギ
などの高級魚類及び甲殻類に対する需要が拡大し、栽培
漁業は典型的な一次産業であった漁業の中で大きな地位
を占めるようになった。しかし、日本では海水面におけ
る栽培漁業はたかだか20年の歴史しかないため、これ
らの水生動物についての生態研究はまだ発展途上にある
ため、各々の水生動物に適合した科学的飼育管理法は未
確立で、依然として試行錯誤が続いている。その中でも
最大の難題は、頻発する養殖魚類並びに甲殻類の病原微
生物感染症に対する予防法並びに治療法の開発である。
病原微生物感染症は栽培漁業が産業として定着し始める
とともに、甚だしい場合には養殖中の魚類ないし甲殻類
を全滅させるほどの猛威を振るい始めたからである。
び甲殻類に頻発する病原微生物感染症を治療並びに予防
する新しい方法を提供するものである。ここで言う病原
微生物とは細菌、真菌及びウイルスに属する魚類に固有
の病原体を指すものとする。近年、食生活の高級化にと
もない、ハマチ、マダイ、ヒラメ、クルマエビ、ウナギ
などの高級魚類及び甲殻類に対する需要が拡大し、栽培
漁業は典型的な一次産業であった漁業の中で大きな地位
を占めるようになった。しかし、日本では海水面におけ
る栽培漁業はたかだか20年の歴史しかないため、これ
らの水生動物についての生態研究はまだ発展途上にある
ため、各々の水生動物に適合した科学的飼育管理法は未
確立で、依然として試行錯誤が続いている。その中でも
最大の難題は、頻発する養殖魚類並びに甲殻類の病原微
生物感染症に対する予防法並びに治療法の開発である。
病原微生物感染症は栽培漁業が産業として定着し始める
とともに、甚だしい場合には養殖中の魚類ないし甲殻類
を全滅させるほどの猛威を振るい始めたからである。
【0002】
【従来の技術】病原性微生物は魚類ないし甲殻類に感染
し、感染個体を急速に衰弱させたり弊死せしめる一方
で、いったん感染症が成立すると、無数に増殖した病原
体は感染個体から水中に放出され、周囲の健全な養殖個
体に濃厚感染して発病せしめる伝播の連鎖を形成する。
このように感染の連鎖が形成され、悪循環に陥った養殖
生簀では、短期間に養殖水生動物が全滅することも希で
はない。養殖水生動物の病原体は、大多数が個々の動物
種に固有の病原性細菌であるから、ヒトの医療用に開発
された抗生物質及び合成抗菌剤(以下、両者をまとめ抗
菌性物質と称する)に高い感受性を示す場合が多い。従
って、栽培漁業の揺藍期では経口投与用に開発されたヒ
ト用の抗菌性物質を飼料に混合し、病原微生物感染症の
魚類あるいは甲殻類に投与すると、感染症の予防・治療
に大きな効果を発揮したのは当然であった。しかし、抗
菌性物質を使った栽培漁業の感染症予防・治療法は、二
つの大きな問題点を持っていることが次第に明らかにな
った。
し、感染個体を急速に衰弱させたり弊死せしめる一方
で、いったん感染症が成立すると、無数に増殖した病原
体は感染個体から水中に放出され、周囲の健全な養殖個
体に濃厚感染して発病せしめる伝播の連鎖を形成する。
このように感染の連鎖が形成され、悪循環に陥った養殖
生簀では、短期間に養殖水生動物が全滅することも希で
はない。養殖水生動物の病原体は、大多数が個々の動物
種に固有の病原性細菌であるから、ヒトの医療用に開発
された抗生物質及び合成抗菌剤(以下、両者をまとめ抗
菌性物質と称する)に高い感受性を示す場合が多い。従
って、栽培漁業の揺藍期では経口投与用に開発されたヒ
ト用の抗菌性物質を飼料に混合し、病原微生物感染症の
魚類あるいは甲殻類に投与すると、感染症の予防・治療
に大きな効果を発揮したのは当然であった。しかし、抗
菌性物質を使った栽培漁業の感染症予防・治療法は、二
つの大きな問題点を持っていることが次第に明らかにな
った。
【0003】一つは可食部中への抗菌性物質の残留であ
る。現行の食品衛生法では「抗生物質は食品中に残留し
てはならない」と定められている。しかしながら、分析
技術が著しく進歩したため検出限界が低下し、使い方次
第では高い頻度で抗生物質の残留が認められるようにな
った。そのため現行の法規では、抗菌性物質を使用した
場合、一定の休薬期間をおいて抗菌性物質が検出されな
くなった時点で出荷するよう、使用法が法律で規制され
るようになった。このことは病原微生物感染症が蔓延し
ている場合でも、養殖業者は出荷前の一定期間は抗菌性
物質に依存することができなくなったことを意味する。
出荷前の重要な時期に養殖魚が感染症に冒され、次々に
弊死する事態も決して希ではないので、これは養殖業者
にとってかなり厳しい規制である。この様なわけで栽培
漁業の業界から求めらているのは、[1]抗菌性物質の
効力を増強することにより、使用量が従来の数分の一で
も同等の治療及び予防効果を発揮させる技術、及び
[2]出荷前の休薬期間に、抗菌性物質を投与しなくて
も養殖魚類を病原菌の感染症から守る技術の2点であ
る。要するに養殖水生動物の病原微生物感染症に対し抗
菌性物質の投与は必須としても、使用量をできるだけ減
らせる技術及び少なくとも休薬期間として求められる最
長4週間ほどは、抗菌性物質を投与しなくても養殖魚類
を病原微生物感染症から守る技術の開発である。
る。現行の食品衛生法では「抗生物質は食品中に残留し
てはならない」と定められている。しかしながら、分析
技術が著しく進歩したため検出限界が低下し、使い方次
第では高い頻度で抗生物質の残留が認められるようにな
った。そのため現行の法規では、抗菌性物質を使用した
場合、一定の休薬期間をおいて抗菌性物質が検出されな
くなった時点で出荷するよう、使用法が法律で規制され
るようになった。このことは病原微生物感染症が蔓延し
ている場合でも、養殖業者は出荷前の一定期間は抗菌性
物質に依存することができなくなったことを意味する。
出荷前の重要な時期に養殖魚が感染症に冒され、次々に
弊死する事態も決して希ではないので、これは養殖業者
にとってかなり厳しい規制である。この様なわけで栽培
漁業の業界から求めらているのは、[1]抗菌性物質の
効力を増強することにより、使用量が従来の数分の一で
も同等の治療及び予防効果を発揮させる技術、及び
[2]出荷前の休薬期間に、抗菌性物質を投与しなくて
も養殖魚類を病原菌の感染症から守る技術の2点であ
る。要するに養殖水生動物の病原微生物感染症に対し抗
菌性物質の投与は必須としても、使用量をできるだけ減
らせる技術及び少なくとも休薬期間として求められる最
長4週間ほどは、抗菌性物質を投与しなくても養殖魚類
を病原微生物感染症から守る技術の開発である。
【0004】抗菌性物質を使用する栽培漁業における今
一つの問題点は、抗菌性物質を大量に野外散布するとこ
ろから起こる耐性菌の増加である。抗菌性物質に対する
細菌の耐性遺伝子は、プラスミドに組み込まれているこ
とがわかっている。従って、標的とされた病原菌におけ
る耐性菌の増加は、それまで有効であった抗菌活性物質
を無効にさせるばかりでなく、自然界に抗菌性物質耐性
遣伝子を多量にばらまくことを意味する。現に栽培漁業
の現場では耐性菌が増加したため、従来通りの抗菌性物
質の投与量では感染症の予防・治療効果が殆ど認められ
ないことがしばしば報告されるようになった。一方、抗
菌性物質が乱用されたため、養殖水生動物にヒトの菌交
代現象に類似した疾病も見いだされている。この現象は
抗菌性物質のために養殖動物の体内から常在性細菌が一
掃されたため、それに代わってこれまで殆ど繁殖しなか
った弱毒の真菌が、空白を埋めて大増殖し疾病を起こす
一種の菌交代現象である。一方、耐性遺伝子が組み込ま
れたプラスミドは、同種の細菌にはもちろん、異種の細
菌にも伝達されることが知られているので、ヒトの病原
菌がこれらのプラスミドを受け取ったために抗菌性物質
に対し高度耐性化し、ヒトで抗菌性物質無効の感染症を
起こさせる危険性は常に考慮しておかなければならな
い。従って、栽培漁業においても抗菌性物質に対する病
原菌の高度耐性化を防止する技術の開発は、かねてから
強く要望されていたのである。
一つの問題点は、抗菌性物質を大量に野外散布するとこ
ろから起こる耐性菌の増加である。抗菌性物質に対する
細菌の耐性遺伝子は、プラスミドに組み込まれているこ
とがわかっている。従って、標的とされた病原菌におけ
る耐性菌の増加は、それまで有効であった抗菌活性物質
を無効にさせるばかりでなく、自然界に抗菌性物質耐性
遣伝子を多量にばらまくことを意味する。現に栽培漁業
の現場では耐性菌が増加したため、従来通りの抗菌性物
質の投与量では感染症の予防・治療効果が殆ど認められ
ないことがしばしば報告されるようになった。一方、抗
菌性物質が乱用されたため、養殖水生動物にヒトの菌交
代現象に類似した疾病も見いだされている。この現象は
抗菌性物質のために養殖動物の体内から常在性細菌が一
掃されたため、それに代わってこれまで殆ど繁殖しなか
った弱毒の真菌が、空白を埋めて大増殖し疾病を起こす
一種の菌交代現象である。一方、耐性遺伝子が組み込ま
れたプラスミドは、同種の細菌にはもちろん、異種の細
菌にも伝達されることが知られているので、ヒトの病原
菌がこれらのプラスミドを受け取ったために抗菌性物質
に対し高度耐性化し、ヒトで抗菌性物質無効の感染症を
起こさせる危険性は常に考慮しておかなければならな
い。従って、栽培漁業においても抗菌性物質に対する病
原菌の高度耐性化を防止する技術の開発は、かねてから
強く要望されていたのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術の欠
陥を解決するためのものである。すなわち、抗菌性物質
は他の漁業用資材と比べ著しく高価であり、多量に使用
すると養殖コストの上昇につながる。それに加え、前記
の法的な規制及び耐性の発現などの理由から抗菌性物質
を使わずに済めばそれに越したことはない。実際的には
その使用量を完全にゼロにすることができないまでも、
その使用量をできる限り節減することは、法的な規制に
そうことになると同時に、高度耐性菌の出現率を低下さ
せる点からも望ましいことである。従って、本発明が解
決しようとする課題は、養殖漁業において抗菌性物質を
できるだけ使わず、養殖水産動物の病原微生物感染症に
対し、抗菌性物質を標準とされる量を投与した場合と比
べ、数分の一投与しただけで同程度ないしそれ以上に病
原菌感染症を予防・治療する新しい手段を見いだすこと
である。
陥を解決するためのものである。すなわち、抗菌性物質
は他の漁業用資材と比べ著しく高価であり、多量に使用
すると養殖コストの上昇につながる。それに加え、前記
の法的な規制及び耐性の発現などの理由から抗菌性物質
を使わずに済めばそれに越したことはない。実際的には
その使用量を完全にゼロにすることができないまでも、
その使用量をできる限り節減することは、法的な規制に
そうことになると同時に、高度耐性菌の出現率を低下さ
せる点からも望ましいことである。従って、本発明が解
決しようとする課題は、養殖漁業において抗菌性物質を
できるだけ使わず、養殖水産動物の病原微生物感染症に
対し、抗菌性物質を標準とされる量を投与した場合と比
べ、数分の一投与しただけで同程度ないしそれ以上に病
原菌感染症を予防・治療する新しい手段を見いだすこと
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは多年にわた
り牛乳中に含まれる生理活性蛋白質の作用を研究した結
果、養殖魚類及び甲殻類の病原微生物感染症を治療並び
に予防するために、魚類及び甲殻類の病原微生物感染に
対する生体防御能を特異的並びに非特異的に高める牛乳
の生理活性蛋白質、すなわち、ラクトフェリン及び免疫
グロブリンを単独、ないし組み合わせて抗菌性物質と併
用投与することにより上記の目的を達成できることを見
いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、これら
の牛乳生理活性タンパク質は抗菌性物質と併用して経口
投与すると、生体内において抗菌性物質の作用を相乗的
ないし相加的に増強する活性を示す。そのために、抗菌
性物質の使用量を節減することができる新しい技術であ
る。これまで哺乳動物の乳汁は、ともするとその栄養的
な側面が大きくクローズアップされ、優れた機能性を持
っていることが看過されがちであった。代表的に哺乳動
物乳汁である牛乳を例にとると、ウシ新生仔を急速に成
長させる完全栄養としての側面とともに、種々の機能性
細胞及び機能性分子、例えば、高密度のリンパ球、好中
球、単球などの白血球及び免疫グロブリン、ラクトフェ
リン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチームなどの特異
的並びに非特異的な免疫因子を備え、無菌の胎内から病
原菌が充満する外界に生まれてくる新生仔を病原体感染
から守る役割を果たしている。本発明者らはこれら機能
性分子の中からラクトフェリン及び免疫グロブリンに着
目して研究した結果、それらが病原微生物感染症に対す
る生体防御能を増強するために、抗菌性物質の活性を有
意に亢進させること、従って、抗菌性物質と併用する
と、その使用量を1/2から1/10に節減できること
を見いだした。
り牛乳中に含まれる生理活性蛋白質の作用を研究した結
果、養殖魚類及び甲殻類の病原微生物感染症を治療並び
に予防するために、魚類及び甲殻類の病原微生物感染に
対する生体防御能を特異的並びに非特異的に高める牛乳
の生理活性蛋白質、すなわち、ラクトフェリン及び免疫
グロブリンを単独、ないし組み合わせて抗菌性物質と併
用投与することにより上記の目的を達成できることを見
いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、これら
の牛乳生理活性タンパク質は抗菌性物質と併用して経口
投与すると、生体内において抗菌性物質の作用を相乗的
ないし相加的に増強する活性を示す。そのために、抗菌
性物質の使用量を節減することができる新しい技術であ
る。これまで哺乳動物の乳汁は、ともするとその栄養的
な側面が大きくクローズアップされ、優れた機能性を持
っていることが看過されがちであった。代表的に哺乳動
物乳汁である牛乳を例にとると、ウシ新生仔を急速に成
長させる完全栄養としての側面とともに、種々の機能性
細胞及び機能性分子、例えば、高密度のリンパ球、好中
球、単球などの白血球及び免疫グロブリン、ラクトフェ
リン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチームなどの特異
的並びに非特異的な免疫因子を備え、無菌の胎内から病
原菌が充満する外界に生まれてくる新生仔を病原体感染
から守る役割を果たしている。本発明者らはこれら機能
性分子の中からラクトフェリン及び免疫グロブリンに着
目して研究した結果、それらが病原微生物感染症に対す
る生体防御能を増強するために、抗菌性物質の活性を有
意に亢進させること、従って、抗菌性物質と併用する
と、その使用量を1/2から1/10に節減できること
を見いだした。
【0007】これらの牛乳生理活性タンパク質を投与に
さいし最も重要なのは、これらの生理活性タンパク質が
未変性のままで感染動物に一定量以上摂取されることで
あり、必ずしもこれら生理活性タンパク質を比較的純粋
に分離してから飼料に添加する必要はないことである。
それどころか、これらの生理活性タンパク質を高度に精
製して使用することは、微量蛋白であるこれらの回収率
を低下させると同時にコストの上昇をまねくので、経済
的観点から好ましいことではない。他の乳成分が混在す
るままで投与しても支障がない理由の一つは、牛乳が数
千年の歴史を有する高度に安全な食品だからであり、ラ
クトフェリン及び免疫グロブリン以外の乳成分が多量に
混在したとしても、それらは栄養分として養殖動物の消
化管から吸収されるために、なんら害作用がないばかり
かむしろ有用だからである。
さいし最も重要なのは、これらの生理活性タンパク質が
未変性のままで感染動物に一定量以上摂取されることで
あり、必ずしもこれら生理活性タンパク質を比較的純粋
に分離してから飼料に添加する必要はないことである。
それどころか、これらの生理活性タンパク質を高度に精
製して使用することは、微量蛋白であるこれらの回収率
を低下させると同時にコストの上昇をまねくので、経済
的観点から好ましいことではない。他の乳成分が混在す
るままで投与しても支障がない理由の一つは、牛乳が数
千年の歴史を有する高度に安全な食品だからであり、ラ
クトフェリン及び免疫グロブリン以外の乳成分が多量に
混在したとしても、それらは栄養分として養殖動物の消
化管から吸収されるために、なんら害作用がないばかり
かむしろ有用だからである。
【0008】従って、重要なことは本発明において使用
されるラクトフェリン及び免疫グロブリンとして、各種
の精製法、例えば、硫安沈澱、各種のクロマトグラフィ
ーなどの技術で比較的純粋に分離精製された標品ばかり
でなく、未変性のこれら生理活性蛋白を含む各種の乳製
品も使用できることである。例えば、ラクトフェリン及
び免疫グロブリンは、初乳に大量に含まれている。しか
し、小ウシが飲みきれない初乳の約半分は、牛乳として
の出荷が禁止されているためむなしく廃棄される運命に
ある。しかも、これら牛乳の生理活性タンパク質は、出
発原料が初乳であるにせよ常乳であるにせよ、原料から
乳脂肪及びカゼインを除去したホエイ(乳清)中に含ま
れることが特徴である。従って、これらの牛乳生理活性
蛋白を養殖現場で使用するにあたっては、必ずしも他の
乳清分から分離精製したラクトフェリン及び精製免疫グ
ロブリンである必要はなく、これらの生理活性タンパク
質が失活せずに含まれている初乳粉末、脱脂初乳粉末、
初乳乳清粉末、初乳乳清蛋白粉末、常乳全脂粉乳粉末、
常乳脱脂乳粉末、常乳乳清粉末及び常乳乳清蛋白粉末な
ども、本発明の目的のために使用することができる。そ
の際、最も重要なことは、これらの乳製品粉末中に未変
性のこれら生理活性蛋白がどの程度の量を含まれている
かを、あらかじめ定量しておくことである。
されるラクトフェリン及び免疫グロブリンとして、各種
の精製法、例えば、硫安沈澱、各種のクロマトグラフィ
ーなどの技術で比較的純粋に分離精製された標品ばかり
でなく、未変性のこれら生理活性蛋白を含む各種の乳製
品も使用できることである。例えば、ラクトフェリン及
び免疫グロブリンは、初乳に大量に含まれている。しか
し、小ウシが飲みきれない初乳の約半分は、牛乳として
の出荷が禁止されているためむなしく廃棄される運命に
ある。しかも、これら牛乳の生理活性タンパク質は、出
発原料が初乳であるにせよ常乳であるにせよ、原料から
乳脂肪及びカゼインを除去したホエイ(乳清)中に含ま
れることが特徴である。従って、これらの牛乳生理活性
蛋白を養殖現場で使用するにあたっては、必ずしも他の
乳清分から分離精製したラクトフェリン及び精製免疫グ
ロブリンである必要はなく、これらの生理活性タンパク
質が失活せずに含まれている初乳粉末、脱脂初乳粉末、
初乳乳清粉末、初乳乳清蛋白粉末、常乳全脂粉乳粉末、
常乳脱脂乳粉末、常乳乳清粉末及び常乳乳清蛋白粉末な
ども、本発明の目的のために使用することができる。そ
の際、最も重要なことは、これらの乳製品粉末中に未変
性のこれら生理活性蛋白がどの程度の量を含まれている
かを、あらかじめ定量しておくことである。
【0009】
【作用】ラクトフェリンは、養殖動物の体重kgあたり
1日に0.1−100mg/kgを飼料に混合し経口投
与すると、動物の生体防御系を刺激することにより病原
菌感染に対する抵抗力を著しく高める効果を示す。すな
わち、ラクトフェリンの特徴は、非特異的な生体防御系
の亢進作用であって、経口投与すると広範囲な病原微生
物感染に対し予防及び治療作用を示す。従って、ラクト
フェリンは静菌的な抗菌性物質と併用すると、抗菌性物
質の生体内における抗菌活性を著しく強めるため、投与
量を1/2から1/10に減少させても標準的な投与量
の場合と同等ないしそれ以上に治療及び予防効果を発揮
させる特徴がある。特異的な生体防御因子として知られ
る免疫グロブリンは、ラクトフェリンのように広範囲な
病原微生物感染に対し非特異的に生体防御能を高める作
用は示さないが、ブリに頻発する連鎖球菌感染症を惹起
する病原菌Strepotococcus sp.を特
異的に凝集する抗体を始めとして、種々の魚類及び甲殻
類の病原体を凝集ないし中和する抗体を含むため、それ
らによる感染症を特異的に治療及び予防する作用を示
す。従って、これら牛乳中の生体防御因子は種々の抗菌
性物質と併用して水生動物に投与すると、相乗的ないし
相加的に抗菌性物質の生体内における抗菌活性を増強す
る作用を示す。特に、ラクトフェリンは生体内で静菌的
に作用する抗菌性物質、例えば、βラクタム系抗生物
質、テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生
物質、リンコマイシン系抗生物質及びサルファ剤と併用
すると、生体内におけるこれらの抗菌性物質の抗菌活性
を相乗的に増強する。また、キノロン系抗菌剤及びフラ
ン系抗菌剤と併用すると、体内からの病原体の駆除に相
乗的に作用し、使用量の節減及び耐性菌の出現率を低下
させることができる。従って、これら乳由来生理活性蛋
白質は、静菌性抗菌物質及び殺菌性抗菌物質と併用する
と生体内におけるそれらの抗菌作用を増強する特徴があ
る。しかもラクトフェリン及び免疫グロブリンは経口投
与する限りでは、全く安全な化合物であり、養殖水性動
物に対する毒性は事実上皆無であり、環境に対しても全
く影響がない。
1日に0.1−100mg/kgを飼料に混合し経口投
与すると、動物の生体防御系を刺激することにより病原
菌感染に対する抵抗力を著しく高める効果を示す。すな
わち、ラクトフェリンの特徴は、非特異的な生体防御系
の亢進作用であって、経口投与すると広範囲な病原微生
物感染に対し予防及び治療作用を示す。従って、ラクト
フェリンは静菌的な抗菌性物質と併用すると、抗菌性物
質の生体内における抗菌活性を著しく強めるため、投与
量を1/2から1/10に減少させても標準的な投与量
の場合と同等ないしそれ以上に治療及び予防効果を発揮
させる特徴がある。特異的な生体防御因子として知られ
る免疫グロブリンは、ラクトフェリンのように広範囲な
病原微生物感染に対し非特異的に生体防御能を高める作
用は示さないが、ブリに頻発する連鎖球菌感染症を惹起
する病原菌Strepotococcus sp.を特
異的に凝集する抗体を始めとして、種々の魚類及び甲殻
類の病原体を凝集ないし中和する抗体を含むため、それ
らによる感染症を特異的に治療及び予防する作用を示
す。従って、これら牛乳中の生体防御因子は種々の抗菌
性物質と併用して水生動物に投与すると、相乗的ないし
相加的に抗菌性物質の生体内における抗菌活性を増強す
る作用を示す。特に、ラクトフェリンは生体内で静菌的
に作用する抗菌性物質、例えば、βラクタム系抗生物
質、テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生
物質、リンコマイシン系抗生物質及びサルファ剤と併用
すると、生体内におけるこれらの抗菌性物質の抗菌活性
を相乗的に増強する。また、キノロン系抗菌剤及びフラ
ン系抗菌剤と併用すると、体内からの病原体の駆除に相
乗的に作用し、使用量の節減及び耐性菌の出現率を低下
させることができる。従って、これら乳由来生理活性蛋
白質は、静菌性抗菌物質及び殺菌性抗菌物質と併用する
と生体内におけるそれらの抗菌作用を増強する特徴があ
る。しかもラクトフェリン及び免疫グロブリンは経口投
与する限りでは、全く安全な化合物であり、養殖水性動
物に対する毒性は事実上皆無であり、環境に対しても全
く影響がない。
【0010】本発明により従来と比べ1/2−1/10
の抗菌性物質の使用量で、病原微生物感染症に対し標準
的な使用量と同等ないしそれ以上の治療及び予防効果を
達成することができる。抗菌性物質の使用量節減は、単
に経済的な効率性に直結するだけでなく、抗菌活性物
質の魚体内における残留の激減及び高度耐性菌の出現
率が低下するため、抗菌性物質が効力喪失を免れ、永続
的に使用できるようになるなど、二つの大きなメリット
を有する。本発明には種々の組み合わせが存在するが、
主要な組み合わせは表1に示すとおりである。
の抗菌性物質の使用量で、病原微生物感染症に対し標準
的な使用量と同等ないしそれ以上の治療及び予防効果を
達成することができる。抗菌性物質の使用量節減は、単
に経済的な効率性に直結するだけでなく、抗菌活性物
質の魚体内における残留の激減及び高度耐性菌の出現
率が低下するため、抗菌性物質が効力喪失を免れ、永続
的に使用できるようになるなど、二つの大きなメリット
を有する。本発明には種々の組み合わせが存在するが、
主要な組み合わせは表1に示すとおりである。
【0012】哺乳動物乳汁由来の末変性で精製ラクトフ
ェリン、精製免疫グロブリン及び未変性のラクトフェリ
ン、免疫グロブリンを含む乳製品粉末、例えば、全脂粉
乳、脱脂粉乳、全脂初乳粉末、脱脂初乳粉末、乳清粉
末、初乳乳清粉末、乳清蛋白粉末、初乳乳清蛋白粉末な
どは、抗菌性物質並びに種々の製剤用添加物と混合し、
栽培漁業における種々の病原菌感染症の治療及び予防の
目的で、抗菌性物質と併用し飼料に添加して水生動物に
経口投与することができる。この際に使われる抗菌性物
質としては、抗生物質では、βラクタム系抗生物質、
テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生
物質、リンコマイシン系抗生物質、クロラムフェニ
コール及びその誘導体などが含まれ、抗菌剤ではキノ
ロン系抗菌剤、フラン系抗菌剤及びサルファ剤が含
まれる。これらの抗菌剤は養殖現場で乳の生理活性蛋白
及び飼料と混合してもよいが、使用の便宜をはかって生
理活性蛋白と抗菌剤をあらかじめ混合し製剤化すること
もできる。また、牛乳中の生理活性タンパク質及び抗菌
剤を希釈するためには、通常の医薬品製造に使用される
添加物、例えば、乳糖、でんぷん、セルローズ及びその
誘導体なども使われるが、とりわけ酪農副産物である乳
清蛋白、脱脂乳粉末、乳清粉末及びミネラル濃縮ホエイ
などがその目的に適合している。一方、乳の生理活性蛋
白は、抗菌性物質及び栄養成分を含むと含まざるとにか
かわらず、粉末として製剤化するのが使用上便利である
が、使用目的に応じて顆粒剤、錠剤、液剤などに製剤化
して使用することもできる。以下、本発明における実施
例を記述するが、本発明はもちろんそれらによって拘束
されるものではない。
ェリン、精製免疫グロブリン及び未変性のラクトフェリ
ン、免疫グロブリンを含む乳製品粉末、例えば、全脂粉
乳、脱脂粉乳、全脂初乳粉末、脱脂初乳粉末、乳清粉
末、初乳乳清粉末、乳清蛋白粉末、初乳乳清蛋白粉末な
どは、抗菌性物質並びに種々の製剤用添加物と混合し、
栽培漁業における種々の病原菌感染症の治療及び予防の
目的で、抗菌性物質と併用し飼料に添加して水生動物に
経口投与することができる。この際に使われる抗菌性物
質としては、抗生物質では、βラクタム系抗生物質、
テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生
物質、リンコマイシン系抗生物質、クロラムフェニ
コール及びその誘導体などが含まれ、抗菌剤ではキノ
ロン系抗菌剤、フラン系抗菌剤及びサルファ剤が含
まれる。これらの抗菌剤は養殖現場で乳の生理活性蛋白
及び飼料と混合してもよいが、使用の便宜をはかって生
理活性蛋白と抗菌剤をあらかじめ混合し製剤化すること
もできる。また、牛乳中の生理活性タンパク質及び抗菌
剤を希釈するためには、通常の医薬品製造に使用される
添加物、例えば、乳糖、でんぷん、セルローズ及びその
誘導体なども使われるが、とりわけ酪農副産物である乳
清蛋白、脱脂乳粉末、乳清粉末及びミネラル濃縮ホエイ
などがその目的に適合している。一方、乳の生理活性蛋
白は、抗菌性物質及び栄養成分を含むと含まざるとにか
かわらず、粉末として製剤化するのが使用上便利である
が、使用目的に応じて顆粒剤、錠剤、液剤などに製剤化
して使用することもできる。以下、本発明における実施
例を記述するが、本発明はもちろんそれらによって拘束
されるものではない。
【0013】
【実施例1】未変性の粉末乳清蛋白(蛋白としての含
量:78%)1kgに新鮮な乳清からクロマトグラフィ
ーの操作によって分離した微粉末の精製ラクトフェリン
(純度95%)42gを添加し、充分に混合した。この
様にして調製した粉末中におけるラクトフェリン及び免
疫グロブリン含量を高速液体クロマトグラフィーによっ
て測定したところ、含量は次の通りであった。ラクトフ
ェリン:5.38%、免疫グロブリン:8.07%。
量:78%)1kgに新鮮な乳清からクロマトグラフィ
ーの操作によって分離した微粉末の精製ラクトフェリン
(純度95%)42gを添加し、充分に混合した。この
様にして調製した粉末中におけるラクトフェリン及び免
疫グロブリン含量を高速液体クロマトグラフィーによっ
て測定したところ、含量は次の通りであった。ラクトフ
ェリン:5.38%、免疫グロブリン:8.07%。
【0014】平成元年6月、生簀に飼育中のモジャコ
(平均体重23.8g)の約5%に連鎖球菌症が発生し
たので、モジャコを約1000匹づつの4群にわけ、各
群を新鮮な海水が流入する隔離した水槽に収容し、薬物
を1週間経口投与して治療した。第1群はなんらの薬物
も投与しない対照群とし、第2群は魚体重kgあたりの
日量でエリスロマイシン50mgを投与し、第3群は
(平均体重23.8g)の約5%に連鎖球菌症が発生し
たので、モジャコを約1000匹づつの4群にわけ、各
群を新鮮な海水が流入する隔離した水槽に収容し、薬物
を1週間経口投与して治療した。第1群はなんらの薬物
も投与しない対照群とし、第2群は魚体重kgあたりの
日量でエリスロマイシン50mgを投与し、第3群は
【0013】で調製した乳清蛋白希釈のラクトフェリン
を魚体重kgあたり20mg(免疫グロブリンとして3
0mg/kg)経口投与し、第4群は魚体重kgあたり
ラクトフェリン20mg(免疫グロブリンとして30m
g/kg)及びエリスロマイシン10mgを投与した。
これらの薬物はすべて飼料(冷凍イワシのミンチ80%
と配合飼料20%よりなる)に混合し、経口投与した。
1週間後に弊死魚数及び治癒状況を観察した結果を表2
に示す。
を魚体重kgあたり20mg(免疫グロブリンとして3
0mg/kg)経口投与し、第4群は魚体重kgあたり
ラクトフェリン20mg(免疫グロブリンとして30m
g/kg)及びエリスロマイシン10mgを投与した。
これらの薬物はすべて飼料(冷凍イワシのミンチ80%
と配合飼料20%よりなる)に混合し、経口投与した。
1週間後に弊死魚数及び治癒状況を観察した結果を表2
に示す。
【0015】表2から明らかなように乳清蛋白により希
釈されたラクトフェリン及び免疫グロブリンの混合物
は、モジャコの連鎖球菌症に対し単独でもエリスロマイ
シンとほぼ同等の治療効果を有するのみならず、標準量
の1/5のエリスロマイシンと併用すると相乗的な治癒
効果を示す。それと同時に、併用群では治療終了時点に
おける高度耐性菌の出現を抑制する効果が認められた。
釈されたラクトフェリン及び免疫グロブリンの混合物
は、モジャコの連鎖球菌症に対し単独でもエリスロマイ
シンとほぼ同等の治療効果を有するのみならず、標準量
の1/5のエリスロマイシンと併用すると相乗的な治癒
効果を示す。それと同時に、併用群では治療終了時点に
おける高度耐性菌の出現を抑制する効果が認められた。
【0017】
【実施例2】平成元年6月中旬、直径15メートル、深
さ10メートルの生簀数基に飼育中のハマチ(平均体重
約1.2kg、1基あたり約3千尾収容)に連鎖球菌症
が発生した。無作為にサンプリングしたところ、連鎖球
菌症は4−5%の個体に発症していると推定されたの
で、直ちに治療が開始された。これらの生簀の中から比
較的条件が似ている3基を選び、第1基をエリスロマイ
シン投与群、第2基を粉末初乳乳清蛋白投与群、第3基
を両者の併用群として7日間の薬剤投与を実施した。エ
リスロマイシンの投与量は一日あたり魚体重換算で50
mg/kgである。粉末初乳乳清蛋白は、定量の結果、
免疫グロブリンを68.7%及びラクトフェリンを6.
2%含有していたので、一日あたりの投与量は魚体重換
算で免疫グロブリンとして70mg/kg(ラクトフェ
リンとしては6.3mg/kg)とし、併用の場合には
エリスロマイシン投与量が10mg/kg、免疫グロブ
リン投与量を35mg/kg(ラクトフェリンとして
3.2mg/kg)とした。効果は一週間後及び4週間
後における弊死尾数並びに群としての治癒状況から判定
した。結果は表3に示すとおりである。
さ10メートルの生簀数基に飼育中のハマチ(平均体重
約1.2kg、1基あたり約3千尾収容)に連鎖球菌症
が発生した。無作為にサンプリングしたところ、連鎖球
菌症は4−5%の個体に発症していると推定されたの
で、直ちに治療が開始された。これらの生簀の中から比
較的条件が似ている3基を選び、第1基をエリスロマイ
シン投与群、第2基を粉末初乳乳清蛋白投与群、第3基
を両者の併用群として7日間の薬剤投与を実施した。エ
リスロマイシンの投与量は一日あたり魚体重換算で50
mg/kgである。粉末初乳乳清蛋白は、定量の結果、
免疫グロブリンを68.7%及びラクトフェリンを6.
2%含有していたので、一日あたりの投与量は魚体重換
算で免疫グロブリンとして70mg/kg(ラクトフェ
リンとしては6.3mg/kg)とし、併用の場合には
エリスロマイシン投与量が10mg/kg、免疫グロブ
リン投与量を35mg/kg(ラクトフェリンとして
3.2mg/kg)とした。効果は一週間後及び4週間
後における弊死尾数並びに群としての治癒状況から判定
した。結果は表3に示すとおりである。
【0019】表3に示すようにハマチの連鎖球菌症は、
エリスロマイシン投与により4週間でほぼ終息し、この
間における弊死尾数は1週間で約12%、流行がほぼ終
息した4週間後で約26%であった。一方、初乳乳清蛋
白投与群でも、重症感染症と思われる個体、217尾
(約7%)は1週間以内に弊死するが、それ以降の3週
間における弊死はごく僅かで、4週後には群として連鎖
球菌症が完全に治癒している結果が得られた。両者を併
用した群における治療効果はさらに劇的で、1週後にお
ける弊死個体数は36尾であり、さらに3週間の観察期
間中に弊死した個体数は、無視できる程度であった。従
って、ハマチの連鎖球菌症に対しエリスロマイシンと生
理活性乳蛋白との相乗的な治療及び予防効果は明確であ
る。初乳乳清投与群にエリスロマイシンに対する耐性菌
が出現しないのは当然だが、注目すべきことは、併用群
ではエリスロマイシンを常用投与量の1/5しか使用し
なかったにもかかわらず、治療及び予防効果が最も優
れ、しかもエリスロマイシンに対する高度耐性菌が全く
出現しなかったことである。
エリスロマイシン投与により4週間でほぼ終息し、この
間における弊死尾数は1週間で約12%、流行がほぼ終
息した4週間後で約26%であった。一方、初乳乳清蛋
白投与群でも、重症感染症と思われる個体、217尾
(約7%)は1週間以内に弊死するが、それ以降の3週
間における弊死はごく僅かで、4週後には群として連鎖
球菌症が完全に治癒している結果が得られた。両者を併
用した群における治療効果はさらに劇的で、1週後にお
ける弊死個体数は36尾であり、さらに3週間の観察期
間中に弊死した個体数は、無視できる程度であった。従
って、ハマチの連鎖球菌症に対しエリスロマイシンと生
理活性乳蛋白との相乗的な治療及び予防効果は明確であ
る。初乳乳清投与群にエリスロマイシンに対する耐性菌
が出現しないのは当然だが、注目すべきことは、併用群
ではエリスロマイシンを常用投与量の1/5しか使用し
なかったにもかかわらず、治療及び予防効果が最も優
れ、しかもエリスロマイシンに対する高度耐性菌が全く
出現しなかったことである。
【0020】
【実施例3】昭和63年10月初旬、養殖生簀に飼育さ
れたモジャコ(平均魚体重、40g)に、Pasteu
rella piscicidaとVibrio an
guillarumによる混合感染症が発症した。モジ
ャコは直ちにほぼ同数(約3千尾)の3群にわけ、第1
群は一日量で魚体重kgあたり50mgのオキシテトラ
サイクリン経口投与し、第2群はチーズホエイを原料と
してイオン交換クロマトグラフィーにより分離した粗製
ラクトフェリン(ラクトフェリン、68.3%及びラク
トパーオキシダーゼ、12.7%含有)投与群とし、第
3群はオキシテトラサイクリン及びに粗製ラクトフェリ
ン併用投与群とした。第2群及び第3群における一日あ
たりのラクトフェリン投与量は20mg/kgで、第3
群におけるオキシテトラサイクリンの投与量は20mg
/kg、すなわち、標準投与量の2/5であった。薬物
投与は1週間にわたって実施し、さらに4週間の観察期
間をおいて弊死尾数と一般的な健康状態を観察した。結
果は表4に示すとおりである。表4から明らかなように
オキシテトラサイクリンと粗製ラクトフェリンの併用
は、モジャコの類結節症とビブリオ症の合併に対し優れ
た効果を発揮する。また、テトラサイクリンの投与が常
用量の2/5であっても、全く耐性菌が出現しない点に
大きな特徴がある。
れたモジャコ(平均魚体重、40g)に、Pasteu
rella piscicidaとVibrio an
guillarumによる混合感染症が発症した。モジ
ャコは直ちにほぼ同数(約3千尾)の3群にわけ、第1
群は一日量で魚体重kgあたり50mgのオキシテトラ
サイクリン経口投与し、第2群はチーズホエイを原料と
してイオン交換クロマトグラフィーにより分離した粗製
ラクトフェリン(ラクトフェリン、68.3%及びラク
トパーオキシダーゼ、12.7%含有)投与群とし、第
3群はオキシテトラサイクリン及びに粗製ラクトフェリ
ン併用投与群とした。第2群及び第3群における一日あ
たりのラクトフェリン投与量は20mg/kgで、第3
群におけるオキシテトラサイクリンの投与量は20mg
/kg、すなわち、標準投与量の2/5であった。薬物
投与は1週間にわたって実施し、さらに4週間の観察期
間をおいて弊死尾数と一般的な健康状態を観察した。結
果は表4に示すとおりである。表4から明らかなように
オキシテトラサイクリンと粗製ラクトフェリンの併用
は、モジャコの類結節症とビブリオ症の合併に対し優れ
た効果を発揮する。また、テトラサイクリンの投与が常
用量の2/5であっても、全く耐性菌が出現しない点に
大きな特徴がある。
【0022】
【実施例4】平成元年10月、出荷をひかえ直径15メ
ートル、深さ10メートルの生簀数基に飼育中の2年も
のブリ(平均魚体重:6.5kg)に類結節症が発生し
たので、アンピシリン及び未変性の免疫グロブリンとラ
クトフェリンを含む乳清蛋白(蛋白含量:85.1%、
うち免疫グロブリン:8.7%、ラクトフェリン:3.
1%)を投与して治療した。一日あたりの投与量は魚体
重換算でアンピシリンが50mg/kg、乳清蛋白粉末
が免疫グロブリンとして60mg/kg及びラクトフェ
リンとして21.3mg/kg、両者併用群ではアンピ
シリンが5mg/kgと免疫グロブリン60mg/k
g、ラクトフェリン21.3mg/kgである。これら
の薬物は冷凍イワシ80%と配合飼料20%からなるモ
イストペレットに練り込んで7日間連続して与えた。結
果は表5に示す通りである。
ートル、深さ10メートルの生簀数基に飼育中の2年も
のブリ(平均魚体重:6.5kg)に類結節症が発生し
たので、アンピシリン及び未変性の免疫グロブリンとラ
クトフェリンを含む乳清蛋白(蛋白含量:85.1%、
うち免疫グロブリン:8.7%、ラクトフェリン:3.
1%)を投与して治療した。一日あたりの投与量は魚体
重換算でアンピシリンが50mg/kg、乳清蛋白粉末
が免疫グロブリンとして60mg/kg及びラクトフェ
リンとして21.3mg/kg、両者併用群ではアンピ
シリンが5mg/kgと免疫グロブリン60mg/k
g、ラクトフェリン21.3mg/kgである。これら
の薬物は冷凍イワシ80%と配合飼料20%からなるモ
イストペレットに練り込んで7日間連続して与えた。結
果は表5に示す通りである。
【0024】表に示すように標準量のアンピシリンを投
与した群では、投与終了直後の弊死率が18.2%に達
し、時間の経過とともに少しづつ上昇しているのに対
し、乳清蛋白投与群では1週間後の弊死率はアンピシリ
ン群と同等だが、さらに時間が経過しても弊死率が増大
しない点に大きな特徴がみられる。両者併用群は1週間
後の弊死率が、半分弱に低下する一方で、アンピシリン
の投与が常用量の1/10のため、投与終了直後でも可
食部の残留アンピシリンは検出限界以下であった。さら
に3及び5週後の弊死率も、アンピシリン単独投与群の
1/3弱に抑制された。
与した群では、投与終了直後の弊死率が18.2%に達
し、時間の経過とともに少しづつ上昇しているのに対
し、乳清蛋白投与群では1週間後の弊死率はアンピシリ
ン群と同等だが、さらに時間が経過しても弊死率が増大
しない点に大きな特徴がみられる。両者併用群は1週間
後の弊死率が、半分弱に低下する一方で、アンピシリン
の投与が常用量の1/10のため、投与終了直後でも可
食部の残留アンピシリンは検出限界以下であった。さら
に3及び5週後の弊死率も、アンピシリン単独投与群の
1/3弱に抑制された。
【0025】
【実施例5】スピラマイシン、精製免疫グロブリン、精
製ラクトフェリン、免疫グロブリンとラクトフェリン混
合物、及びラクトフェリン、免疫グロブリンとスピラマ
イシンの3者混合物の5つについてモジャコの連鎖球菌
症に対する治療及び予防効果を比較した。平成2年6月
下旬、生簀で飼育している平均魚体重38gのモジャコ
の中に約5%の連鎖球菌症が発生したので、条件が等し
い6個の大型水槽に1千尾づつ収容し、上記の薬物を冷
凍イワシ80%と配合飼料20%からなるモイストペレ
ットに混合して連続4週間与え、弊死率及び健康状態を
比較した。各薬物1日あたりの投与量は次の通りであ
る。スピラマイシン:50mg/kg:免疫グロブリ
ン:50mg/kg、ラクトフェリン:20mg/k
g、3者併用群に限ってスピラマイシンは10mg/k
gとした。結果は表6に示すとおりである。
製ラクトフェリン、免疫グロブリンとラクトフェリン混
合物、及びラクトフェリン、免疫グロブリンとスピラマ
イシンの3者混合物の5つについてモジャコの連鎖球菌
症に対する治療及び予防効果を比較した。平成2年6月
下旬、生簀で飼育している平均魚体重38gのモジャコ
の中に約5%の連鎖球菌症が発生したので、条件が等し
い6個の大型水槽に1千尾づつ収容し、上記の薬物を冷
凍イワシ80%と配合飼料20%からなるモイストペレ
ットに混合して連続4週間与え、弊死率及び健康状態を
比較した。各薬物1日あたりの投与量は次の通りであ
る。スピラマイシン:50mg/kg:免疫グロブリ
ン:50mg/kg、ラクトフェリン:20mg/k
g、3者併用群に限ってスピラマイシンは10mg/k
gとした。結果は表6に示すとおりである。
【0027】表から明らかなように、スピラマイシンは
弊死率を無治療対照群の約半分に抑制するが、1週間投
与だけでは時間とともに弊死尾数が増加していることか
らも明らかなように、治癒したとは言い難く、その効力
は万全ではない。免疫グロブリンの効果は、スピラマイ
シンとほぼ同等だが、ラクトフェリンの効力はスピラマ
イシンより有意に優れている。免疫グロブリンとラクト
フェリンを併用投与すると、その効果はスピラマイシ
ン、免疫グロブリン及びラクトフェリンなどの単独投与
いずれより有意に優れている。従って、この両者の組み
合わせは、生体内における抗菌作用に関しては相乗的に
働くことがわかる。さらにこの2者とスピラマイシンを
常用投与量の1/5混合すると、2者混合の場合と比べ
有意に弊死を抑制した。つまりマクロライド系抗生物質
とラクトフェリン/免疫グロブリンの3者混合は、相乗
的に抗菌活性を増強することが明らかになった。
弊死率を無治療対照群の約半分に抑制するが、1週間投
与だけでは時間とともに弊死尾数が増加していることか
らも明らかなように、治癒したとは言い難く、その効力
は万全ではない。免疫グロブリンの効果は、スピラマイ
シンとほぼ同等だが、ラクトフェリンの効力はスピラマ
イシンより有意に優れている。免疫グロブリンとラクト
フェリンを併用投与すると、その効果はスピラマイシ
ン、免疫グロブリン及びラクトフェリンなどの単独投与
いずれより有意に優れている。従って、この両者の組み
合わせは、生体内における抗菌作用に関しては相乗的に
働くことがわかる。さらにこの2者とスピラマイシンを
常用投与量の1/5混合すると、2者混合の場合と比べ
有意に弊死を抑制した。つまりマクロライド系抗生物質
とラクトフェリン/免疫グロブリンの3者混合は、相乗
的に抗菌活性を増強することが明らかになった。
【0028】
【実施例6】養殖池中で飼育しているヒラメ(平均魚体
重:170g)にエドワルドジェラ感染症が発生したの
で、オキシテトラサイクリン及び脱脂乳粉末の経口投与
による治療実験を試みた。ヒラメは1群約500尾の4
群をもうけ、第1群を無治療対照群とし、第2群は魚体
重換算で一日あたりテトラサイクリン50mg/kgを
連続4週間与え、第3群は脱脂乳投与群として免疫グロ
ブリン換算で60mg/kgを与えた。第4群は免疫グ
ロブリン60mg/kg及びテトラサイクリン10mg
/kgの併用投与群とした。なお、薬物は平成2年8月
3日に投与を開始し、4週間後の8月31日まで継続し
た。本実験に使用した脱脂乳粉末は、原料である牛乳を
免疫グロブリン、ラクトフェリン及びラクトパーオキシ
ダーゼが失活しないよう低温で殺菌し、クリームセパレ
ーターで遠心分離してクリームを除去した脱脂乳を凍結
乾燥したもので、免疫グロブリンを7.2%、ラクトフ
ェリンを2.3%、ラクトパーオキシダーゼを0.5%
含有している。結果は表7に示すとおりである。
重:170g)にエドワルドジェラ感染症が発生したの
で、オキシテトラサイクリン及び脱脂乳粉末の経口投与
による治療実験を試みた。ヒラメは1群約500尾の4
群をもうけ、第1群を無治療対照群とし、第2群は魚体
重換算で一日あたりテトラサイクリン50mg/kgを
連続4週間与え、第3群は脱脂乳投与群として免疫グロ
ブリン換算で60mg/kgを与えた。第4群は免疫グ
ロブリン60mg/kg及びテトラサイクリン10mg
/kgの併用投与群とした。なお、薬物は平成2年8月
3日に投与を開始し、4週間後の8月31日まで継続し
た。本実験に使用した脱脂乳粉末は、原料である牛乳を
免疫グロブリン、ラクトフェリン及びラクトパーオキシ
ダーゼが失活しないよう低温で殺菌し、クリームセパレ
ーターで遠心分離してクリームを除去した脱脂乳を凍結
乾燥したもので、免疫グロブリンを7.2%、ラクトフ
ェリンを2.3%、ラクトパーオキシダーゼを0.5%
含有している。結果は表7に示すとおりである。
【0030】表7から明らかなようにオキシテトラサイ
クリンはヒラメのエドワルドジェラ感染症による死亡を
有意に抑制するが、完全に治癒させることはない。一
方、活性の免疫グロブリン、ラクトフェリン及びラクト
パーオキシダーゼを含む脱脂乳粉末を投与した群は、テ
トラサイクリンと比べ弊死個体数が有意に少なく、本症
に対する生理活性乳蛋白の効果は明確であった。更にオ
キシテトラサイクリン50mg/kg,免疫グロブリン
として60mg/kg相当を含む脱脂乳粉末を混合しヒ
ラメに投与した群は、弊死率が他の3群と比べても有意
に少ない。すなわち、牛乳の生理活性蛋白は生体に働き
かけてその生体防御能を増強するため、オキシテトラサ
イクリンの抗菌活性が強化されることがわかる。つまり
牛乳の生理活性蛋白とオキシテトラサイクリンとは一緒
に投与されると、生体内で相乗的な抗菌活性を発揮す
る。
クリンはヒラメのエドワルドジェラ感染症による死亡を
有意に抑制するが、完全に治癒させることはない。一
方、活性の免疫グロブリン、ラクトフェリン及びラクト
パーオキシダーゼを含む脱脂乳粉末を投与した群は、テ
トラサイクリンと比べ弊死個体数が有意に少なく、本症
に対する生理活性乳蛋白の効果は明確であった。更にオ
キシテトラサイクリン50mg/kg,免疫グロブリン
として60mg/kg相当を含む脱脂乳粉末を混合しヒ
ラメに投与した群は、弊死率が他の3群と比べても有意
に少ない。すなわち、牛乳の生理活性蛋白は生体に働き
かけてその生体防御能を増強するため、オキシテトラサ
イクリンの抗菌活性が強化されることがわかる。つまり
牛乳の生理活性蛋白とオキシテトラサイクリンとは一緒
に投与されると、生体内で相乗的な抗菌活性を発揮す
る。
【0031】
【実施例7】平成2年5月、体長約5センチメートルに
成長したクルマエビを飼育中の養殖池にビブリオとウイ
ルスの混合感染によると思われる感染症が発生した。エ
ビ種苗は直ちに体重kgあたり50mg/kgのオキソ
リン酸投与によって治療が始められたが、目立った治療
効果は認められなかった。そこで底部に海砂を敷いた3
基の大型水槽(深さ1メートル、幅1メートル、長さ2
メートル)に稚エビを500尾づつ収容し、薬物を飼料
に混合して稚エビに投与し有効な薬物を探索した。な
お、各水槽は温度、海水交換速度、飼料投下量及び溶存
酸素濃度は同一に設定したが、更に薬剤を10日ごとに
交換するクロスオーバー法により、成績の片寄りを避け
る方法を採用した。まず水槽No1は、最初の10日間
がオキシテトラサイクリン混合飼料、引き続く10日間
がラクトフェリン、終わりの10日間がオキシテトラサ
イクリンとラクトフェリン混合飼料を与えて飼育した。
水槽No2は、始めの10日間がラクトフェリン混合飼
料、真ん中の10日間がオキシテトラサイクリン+ラク
トフェリン、終わりの10日間がオキシテトラサイクリ
ン混入飼料を与えて治療した。水槽No3は、最初がオ
キシテトラサイクリン+ラクトフェリン、真ん中がオキ
シテトラサイクリン、終わりがラクトフェリンである。
オキシテトラサイクリンの投与量は、体重kgあたり5
0mg、ラクトフェリンは20mgである。また、両者
併用の場合にはラクトフェリンは20mg/kg+オキ
シテトラサイクリン10mg/kgを投与した。実験期
間中は毎日弊死尾数と健康状態を観察した。結果は表8
に示すとおりである。
成長したクルマエビを飼育中の養殖池にビブリオとウイ
ルスの混合感染によると思われる感染症が発生した。エ
ビ種苗は直ちに体重kgあたり50mg/kgのオキソ
リン酸投与によって治療が始められたが、目立った治療
効果は認められなかった。そこで底部に海砂を敷いた3
基の大型水槽(深さ1メートル、幅1メートル、長さ2
メートル)に稚エビを500尾づつ収容し、薬物を飼料
に混合して稚エビに投与し有効な薬物を探索した。な
お、各水槽は温度、海水交換速度、飼料投下量及び溶存
酸素濃度は同一に設定したが、更に薬剤を10日ごとに
交換するクロスオーバー法により、成績の片寄りを避け
る方法を採用した。まず水槽No1は、最初の10日間
がオキシテトラサイクリン混合飼料、引き続く10日間
がラクトフェリン、終わりの10日間がオキシテトラサ
イクリンとラクトフェリン混合飼料を与えて飼育した。
水槽No2は、始めの10日間がラクトフェリン混合飼
料、真ん中の10日間がオキシテトラサイクリン+ラク
トフェリン、終わりの10日間がオキシテトラサイクリ
ン混入飼料を与えて治療した。水槽No3は、最初がオ
キシテトラサイクリン+ラクトフェリン、真ん中がオキ
シテトラサイクリン、終わりがラクトフェリンである。
オキシテトラサイクリンの投与量は、体重kgあたり5
0mg、ラクトフェリンは20mgである。また、両者
併用の場合にはラクトフェリンは20mg/kg+オキ
シテトラサイクリン10mg/kgを投与した。実験期
間中は毎日弊死尾数と健康状態を観察した。結果は表8
に示すとおりである。
【0033】表から明らかなように本来ビブリオ感染症
に有効なはずのオキシテトラサイクリンは、混合感染し
ていると思われるウイルスの影響で、ほとんど治療効果
が認められなかった。一方、ラクトフェリンはいずれの
水槽でもオキシテトラサイクリンと比べて明らかに弊死
尾数を減少させる効果が認められた。更に両者を併用す
ると、弊死尾数は健全な状態における自然減と等しいま
でに低下した。この実験が明らかにしたことは、ラクト
フェリンの生体防御能の亢進作用は、細菌感染に対する
ばかりでなくウイルス感染に対しても発揮されること、
及び適切な抗菌性物質、例えばオキシテトラサイクリン
と併用すると、ラクトフェリンの効果は相乗的に強化さ
れることである。
に有効なはずのオキシテトラサイクリンは、混合感染し
ていると思われるウイルスの影響で、ほとんど治療効果
が認められなかった。一方、ラクトフェリンはいずれの
水槽でもオキシテトラサイクリンと比べて明らかに弊死
尾数を減少させる効果が認められた。更に両者を併用す
ると、弊死尾数は健全な状態における自然減と等しいま
でに低下した。この実験が明らかにしたことは、ラクト
フェリンの生体防御能の亢進作用は、細菌感染に対する
ばかりでなくウイルス感染に対しても発揮されること、
及び適切な抗菌性物質、例えばオキシテトラサイクリン
と併用すると、ラクトフェリンの効果は相乗的に強化さ
れることである。
【0034】
【発明の効果】本発明により達成される効果は次の通り
である。養殖水生動物の微生物感染症に対し、哺乳動物
乳汁に含まれるラクトフェリンと免疫グロブリンを抗菌
性物質と併用投与すると、抗菌性物質の効果をたかめ
ることにより、その使用量を節減することができる。
出荷前の休薬期間を短縮することにより、経済的な損失
を回避することができる。抗菌性物質に対する高度耐
性菌の出現率を低下させることができる。このことは医
療上非常に重要である。従来、治療及び予防手段がな
かったウイルス感染症に対しても、治療及び予防するこ
とができる。栽培漁業における歩留まりを向上させる
ことにより、漁業家の収益増大に寄与できる。抗菌性
物質使用による高度耐性菌の出現及び食品中への抗菌性
物質の残留の懸念なしに出荷できるので、生産者及び消
費者の双方にとって利益になる。使用する物質は牛乳
由来の生理活性蛋白質なので、魚類及び人類の双方にと
って高度の安全性を持っている。
である。養殖水生動物の微生物感染症に対し、哺乳動物
乳汁に含まれるラクトフェリンと免疫グロブリンを抗菌
性物質と併用投与すると、抗菌性物質の効果をたかめ
ることにより、その使用量を節減することができる。
出荷前の休薬期間を短縮することにより、経済的な損失
を回避することができる。抗菌性物質に対する高度耐
性菌の出現率を低下させることができる。このことは医
療上非常に重要である。従来、治療及び予防手段がな
かったウイルス感染症に対しても、治療及び予防するこ
とができる。栽培漁業における歩留まりを向上させる
ことにより、漁業家の収益増大に寄与できる。抗菌性
物質使用による高度耐性菌の出現及び食品中への抗菌性
物質の残留の懸念なしに出荷できるので、生産者及び消
費者の双方にとって利益になる。使用する物質は牛乳
由来の生理活性蛋白質なので、魚類及び人類の双方にと
って高度の安全性を持っている。
【0011】
【0015】
【0018】
【0021】
【0023】
【0026】
【0029】
【0032】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 39/395 Y 9284−4C
Claims (6)
- 【請求項1】養殖魚類の病原微生物感染症を予防あるい
は治療の目的で抗生物質または合成抗菌剤を飼料中に混
合して投与する場合、牛乳中に含まれるラクトフェリン
及び免疫グロブリンのうちのいずれか一方ないし両者を
併用投与することを特徴とする病原微生物感染症の予防
並びに治療用飼料の製法 - 【請求項2】養殖甲殻類の病原微生物感染症を予防ある
いは治療する目的で抗生物質または合成抗菌剤を飼料に
混合して投与する場合、牛乳に含まれるラクトフェリン
及び免疫グロブリンの内いずれか一方ないし両者を併用
投与することを特徴とする病原微生物感染症の予防並び
に治療用飼料の製法 - 【請求項3】特許請求項1及び同2のラクトフェリン及
び免疫グロブリンに代わり、未変性のそれらタンパク質
を含む常乳ないし初乳、及びそれらから得られる脱脂
乳、ホエイ、あるいはホエイタンパク質をそのまま、な
いし粉末化して抗生物質あるいは合成抗菌剤と混合し、
飼料に添加して養殖動物に与えることを特徴とする栽培
漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料
の製法。 - 【請求項4】1日あたりのラクトフェリン投与量が、魚
体重あたり0.1−100mg/kg,望ましくは1−
30mg/kgである特許請求項1−3の飼料の製法 - 【請求項5】1日あたりの免疫グロブリンの投与量が、
体重あたり0.2−200mg/kg、望ましくは5−
50mg/kgである特許請求項1−3の飼料の製法 - 【請求項6】特許請求項1−5において飼料に混合する
抗生物質ないし合成抗菌剤が、βラクタム系抗生物質、
テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生物
質、リンコマイシン系抗生物質、クロラムフェニコール
系抗生物質、ノボビオシン、サルファ剤、キノロン系合
成抗菌剤及びフラン系合成抗菌剤であることを特徴とす
る養殖魚類及び養殖甲殻類の感染症予防並びに治療用飼
料の製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3250112A JPH0748274A (ja) | 1991-06-26 | 1991-06-26 | 養殖漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料の製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3250112A JPH0748274A (ja) | 1991-06-26 | 1991-06-26 | 養殖漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料の製法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0748274A true JPH0748274A (ja) | 1995-02-21 |
Family
ID=17203010
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3250112A Pending JPH0748274A (ja) | 1991-06-26 | 1991-06-26 | 養殖漁業における病原微生物感染症の予防並びに治療用飼料の製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0748274A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1980001613A1 (en) * | 1979-02-01 | 1980-08-07 | Ricoh Watch | Sealing agent for plastic liquid crystal display panel |
WO2001045732A3 (en) * | 1999-12-20 | 2001-12-06 | Majeste La Reine Du Chef Du Ca | Method and composition for treatment and/or prevention of antibiotic-resistant microorganism infections |
WO2012015037A1 (ja) * | 2010-07-30 | 2012-02-02 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
WO2013018169A1 (ja) * | 2011-07-29 | 2013-02-07 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
-
1991
- 1991-06-26 JP JP3250112A patent/JPH0748274A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1980001613A1 (en) * | 1979-02-01 | 1980-08-07 | Ricoh Watch | Sealing agent for plastic liquid crystal display panel |
WO2001045732A3 (en) * | 1999-12-20 | 2001-12-06 | Majeste La Reine Du Chef Du Ca | Method and composition for treatment and/or prevention of antibiotic-resistant microorganism infections |
AU782915B2 (en) * | 1999-12-20 | 2005-09-08 | Sa Majeste La Reine Du Chef Du Canada - Agriculture Et Agroalimentaire Canada | Method and composition for treatment and/or prevention of antibiotic-resistant microorganism infections |
WO2012015037A1 (ja) * | 2010-07-30 | 2012-02-02 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
JPWO2012015037A1 (ja) * | 2010-07-30 | 2013-09-12 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
WO2013018169A1 (ja) * | 2011-07-29 | 2013-02-07 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
JPWO2013018169A1 (ja) * | 2011-07-29 | 2015-02-23 | 森永乳業株式会社 | 抗菌活性増強剤 |
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