JP2004182662A - 魚病予防剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全で天然由来の利便性のある魚病予防剤を提供する。また、冷水病、イリドウイルス感染症等に罹った魚の貧血症状の対処に従来用いられているポーク粉末の代替品を提供する。
【解決手段】有機鉄含有菌体、若しくは有機鉄含有菌体を組み合わせたものを餌に混合し、或いは餌にコーティングして魚に投与することにより、魚類ウイルス症、細菌症、寄生虫症などに優れた予防効果のあることを見いだした。貧血効果を有する冷水病やイリドウイルス感染症等に効果を持つ。
【選択図】 なし
【解決手段】有機鉄含有菌体、若しくは有機鉄含有菌体を組み合わせたものを餌に混合し、或いは餌にコーティングして魚に投与することにより、魚類ウイルス症、細菌症、寄生虫症などに優れた予防効果のあることを見いだした。貧血効果を有する冷水病やイリドウイルス感染症等に効果を持つ。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は魚類の各種感染症の予防剤および該予防剤を含有する魚類用飼料に関する。
【0002】
【従来技術】
周辺国の乱獲により、近年は急速に漁獲高が減少傾向にある。こういう状況下にあって、栽培漁業の重要性は益々高まっている。ところが、集約的な養殖にあっては、栽培魚の健康管理は非常に大切であり、魚病の発生は非常に大きな問題となっている。
魚病を引起す原因としてウイルスや細菌の感染、カビや寄生虫の感染、またこの他に水温、寄生虫性や細菌性の様々な疾病による斃死被害や成長阻害があり、損失は大きい。
【0003】
冷水病、イリドウイルス感染症および寄生虫の感染症に罹ると、魚が貧血症状になることが知られている。さらには体力が弱り、フラフラしているときには、貧血が疑われ、病気に対する抵抗性も弱い。
【0004】
従来、このような貧血の対処法として、ポークヘモグロビン粉末(ブタ由来のヘモグロビンパウダー、ブタの血液の赤血球を粉末化したもの)を餌に混合したり、餌にコーティングして、貧血の改善(ヘマトクリット値の改善)と冷水病やイリドウイルス感染症、ブリのエラムシの寄生に対して優れた抗病性が見られた。しかし、BSE(所謂、狂牛病)の発生により、動物由来のポークヘモグロビン粉末の使用が難しくなり、これに代わる手段が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以前より、冷水病やイリドウイルス感染症、その他魚病に対する抗生物質やワクチン、薬浴といった解決策が開発され、使用されてきた。しかし、全ての病気に効くとは限らず、その分養殖業者の負担が大きい。最近では、安全性の面や環境への影響から、抗生物質の投与や薬浴を禁止する傾向にある。また、ワクチンが開発されても、魚1匹あたりにかかるコストが高いため、実用的でない。そのため、安全で天然由来の利便性のある魚病予防剤のニーズが高い。また、動物由来のポーク粉末の代替品が得られれば、技術の豊富化に役立つ。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、このような状況に鑑みて、ポークヘモグロビン粉末と同等の貧血防止効果を有するとともに、その他の魚病にも優れた効果を示す天然由来の材料を探求した。その結果、有機鉄含有菌体、もしくは有機鉄含有菌体を組合せたものを餌に混合し、あるいは餌にコーティングして魚に投与することにより、魚類ウイルス症、細菌症、寄生虫症などに優れた予防効果のあることを見出した。特に、貧血症状を有する冷水病やイリドウイルス感染症、その他貧血症状を呈する疾病に対して非常に効果をもつ。
なお、当該菌体の飼料への添加量は適宜変更可能であるが、例えば、鉄含有菌体については、鉄濃度として望ましくは50ppmから200ppmがよい。
【0007】
本発明で使用する、有機ミネラル含有生菌体とは、有機ミネラル含有酵母および同含有乳酸菌をいう。例えば、有機鉄含有酵母は、無機鉄を添加した培地でサッカロマイセス・セレビシエを培養し、鉄を酵母菌体に取込ませることにより得ることができる。これをタンパク分解酵素で処理して細胞壁を破壊し、噴霧乾燥したものが適する。有機ミネラル含有乳酸菌は、乳タンパク、フラクトースを含む栄養培地にミネラルを添加してラクトバチルス菌等の乳酸菌を培養し、洗浄後噴霧乾燥して得ることができる。ミネラルが菌体内のタンパクと結合しているため、魚に安全に投与することができ、確実にミネラルを体内に運ぶことができる。
本発明では、鉄含有酵母以外に、セレン、マンガン、亜鉛、銅、クロム、硫黄、沃素等由来の酵母あるいは乳酸菌を挙げることができる。
好ましくは、鉄含有酵母および/または鉄含有乳酸菌を必須成分として、さらにセレン、マンガン、亜鉛、銅、クロム、沃素等を含有する酵母および乳酸菌から選択した一種以上を加えることにより一層効果を上げることができる。
【0008】
本発明で意図する魚病は例えば、サケ、マス、アユ等の冷水病、マダイ、ブリ、カンパチ、シマアジ等のイリドウイルス感染症、ヒラメ等のネオヘテロボツリウム症、アユ、ブリ等のシュードモナス感染症、ブリ、ウナギ、アユ、マス、サケ、マダイ等のビブリオ病、ブリ、ヒラメ、カンパチ、マダイ、アユ、ウナギ等の連鎖球菌症、サケ等の伝染性造血器壊死症、マダイ等のエドワジラ、ブリ、ヒラメ、ワカサギ、ニシキゴイ、サケ等のミコバクテリウム感染症、サケ等のウイルス性赤血球壊死症、マダイ、ブリ、カンパチ、シマアジ等のウイルス性神経壊死症などがある。
【0009】
本発明をつぎの実施例によりさらに説明する。
【0010】
実施例1 アユの冷水病予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母からなる混合酵母(配合率は以下参照)によるアユの冷水病予防効果を試験した。また、鉄含有酵母(Feとして5%含有)のみを飼料に添加して同様の試験を行った。
(方法)
市販の配合飼料に有機ミネラル含有酵母混合品を所定の量で添加し、アユ40尾(平均体重12.5g)に給餌した。本混合品の投与開始から3週間目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・サイクロフィラムに感染させ、この感染アユ10匹を各試験区分(本混合品無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区)に投入し、6週目の生存率、増体重、ヘマトクリット値、活力を調べた。
有機ミネラル含有酵母混合品の配合率はつぎのとおりである。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
本酵母混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が確認され、かつ増体重も順調であった(表1参照)。この結果から、有機ミネラル含有酵母のアユの冷水病に対して予防効果があることが分かる。
また有機鉄酵母のみを添加した場合にも、同様の冷水病予防効果が得られたが、混合品の形態にするとさらに予防効果は増大することが分かる。
【0011】
実施例2 ビブリオ菌感染予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるマスのビブリオ菌感染症の予防効果を試験した。また鉄含有酵母単体を飼料に添加して、同様の試験を行った。
(方法)
以下に示す有機ミネラル含有酵母混合品を配合した飼料をマス40尾(平均体重10g)に給餌した(試験終了時まで)。当該混合品の給餌開始から3週目にビブリオ菌に感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を調べた。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
本混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が確認され、かつ増体重に悪影響はなかった(表2参照)。また有機鉄酵母のみを添加した場合にも、同様の予防効果が得られたが、混合品よりさらに効果が上がった。
マス以外の魚種のビブリオ菌感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0012】
実施例3 マダイのイリドウイルス感染症の予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるマダイのイリドウイルス菌感染症の予防効果を試験した。同時に、有機鉄含有酵母のみを飼料に添加し、同様の試験を行った。
(方法)
下記の配合の有機ミネラル含有酵母混合品を配合した配合飼料をマダイ30尾(平均体重16g)に試験終了日まで給餌した。当該混合品の給餌開始から3週目にイリドウイルスに感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。試験区は該混合品無添加区、2%添加区、5%添加区および鉄含有酵母単体区の4区からなる。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
有機ミネラル酵母混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表3参照)。本例はマダイの試験例であるが、ブリ、カンパチ、シマアジ、マグロ等のイリドウイルス感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0013】
実施例4 シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)の予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母を以下の配合率で調製した混合品によるシマアジのVNNの予防効果を試験した。
(方法)
当該混合品を配合した配合飼料をシマアジ30尾(平均体重13.5g)に試験終了日まで給餌した。混合品の給餌開始から3週目にVNNの原因ウイルスであるSJNNVを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
当該無添加区、2%添加区、5%添加区の3区。
(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善を測定し(表4参照)、優れた予防効果が確認され、増体重に悪影響はみられなかった。シマアジ以外にマダイ、ブリ、カンパチ等のVNNに対しても同様の効果が期待できる。
【0014】
実施例5 ヒラメのヘテロボツリウム感染症の予防試験
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるヒラメのヘテロボツリウム感染症の予防効果を試験した。
(方法)
当該混合品を配合した飼料をマス30尾(平均体重85g)に試験終了時まで給餌した。本混合品の給餌開始から3週目にヘテロボツリウムを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
有機ミネラル含有酵母混合品の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区
(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表5参照)。ヒラメ以外の魚種、たとえばトラフグ等のヘテロボツリウム感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0015】
実施例6 ブリのベネデニア症の予防試験
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるブリのベネデニア感染症の予防効果を試験した。
(方法)
以下の表からなる混合品を配合した配合飼料を試験終了時までマス30尾(平均体重60g)に給餌した。混合品の給餌開始から3週目にベネデニアを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
有機ミネラル含有酵母混合品の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区。
(試験結果)
混合品を添加した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められた(表6参照)。
【0016】
実施例7 魚病に及ぼす各種有機ミネラル含有酵母の効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母を単独でアユ、マス、マダイ、シマアジ、ヒラメ、ブリ等に投与し、魚病に対する効果を試験した。
(方法)
各種有機ミネラル含有酵母を別々に配合した飼料を試験終了時まで魚に給餌した。酵母の給餌開始時から3週目に各魚病の原因菌、原因ウイルス、原因寄生虫を感染させ、5週目にそれぞれの生存率、活力を測定した。
使用したミネラル含有酵母の添加量はつぎのとおりである。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 飼料に対して0.5重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 飼料に対して0.01%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 飼料に対して0.01%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 飼料に対して0.01%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 飼料に対して0.01%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 飼料に対して0.01%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 飼料に対して0.01%
マグネシウム含有酵母(Mgとして5%含有) 飼料に対して0.01%
(対象魚種)
アユ(40尾、平均体重12.5g): 冷水病
マス(40尾、平均体重10g): ビブリオ感染症
マダイ(30尾、平均体重16g): イリドウイルス感染症
シマアジ(30尾、平均体重13.5g): VNN
ヒラメ(15尾、平均体重85g): ヘテロボツリウム感染症
ブリ(15尾、平均体重60g): ベネデニア感染症
(試験結果)
結果は表7および8に示す。
【0017】
実施例8 有機ミネラル含有乳酸菌のアユ冷水病への予防効果
有機鉄含有乳酸菌、有機セレン含有乳酸菌、有機マンガン含有乳酸菌、有機亜鉛含有乳酸菌、有機銅含有乳酸菌を下記の割合で混合した混合菌によるアユの冷水病予防効果を試験した。
鉄含有乳酸菌(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有乳酸菌(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有乳酸菌(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有乳酸菌(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有乳酸菌(Cuとして5%含有) 0.6%
乳糖(賦形剤として) 100%に調整
(方法)
市販の配合飼料に上記混合品を添加し、アユ40尾(平均体重12.5g)に試験終了日まで給餌した。混合品の給餌開始日から3週目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・プシクロフィラムを感染させ、これらの感染アユを各試験区に投入し、6週目の生存率、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
(試験区分)
ミネラル含有乳酸菌の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表9参照)。
【0018】
実施例9鉄含有酵母とセレン含有酵母の2種混合品の魚病予防効果
有機鉄含有酵母(Fe)、有機セレン含有酵母(Se)の2種類の有機含有ミネラル酵母混合品(配合率は以下参照)によるアユの冷水病予防効果、マダイのイリドウィルス感染症予防効果及び、ヒラメのヘテロボツリウム感染症予防効果を確認した。また鉄含有酵母のみを投与した場合と効果を比較した。
<方法>
市販の配合飼料に有機鉄含有酵母と有機セレン含有酵母の混合品(配合率は以下参照)を添加し、アユ、マダイ、及びヒラメに給餌した(試験終了日まで)。有機ミネラル含有酵母混合品の投与開始から3週間目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・サイクロフィラムをアユに、イリドウィルスをマダイに、またヘテロボツリウムをヒラメに感染させ、5週目(アユについては6週目)の生存率、増体重率、ヘマトクリット値、をそれぞれ測定した。
試験区分
− 無添加
− 有機鉄含有酵母・有機セレン含有酵母混合品 5%添加
− 鉄含有酵母 0.4%添加
<試験結果・考察>
有機鉄含有酵母・セレン含有酵母の混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善(ヘマトクリット値の改善)が確認された(表10−12)。鉄含有酵母のみを投与したときにも同様の魚病予防効果が得られたが、2種類を混合した場合にはより高い効果(生存率、活力)が得られた。
抗病性は非常に優れるものであったが、その他数種類の有機ミネラル含有酵母を混合したものを投与(実験1、実験3、実験5)した場合、魚の状態(皮膚、鱗)が非常によかった。これより有機鉄含有酵母に有機セレン酵母やその他の有機ミネラル含有酵母を混合したものを投与することで、より魚病予防・治療効果が増強されるといえる。
総合考察
今回の一連の試験結果から有機ミネラル含有酵母・乳酸菌が魚病に対して優れた予防・治療効果をもつことが明らかとなった。
それぞれ単独で使用した際にも、貧血予防効果、魚病による皮膚炎症の緩和、活力の増強等様々な効果が得られた。
有機鉄含有酵母・有機セレン含有酵母を組み合わせて投与した場合に、特に優れた抗病勢が確認された。しかし、その他の有機ミネラル含有酵母と組み合わせることで、皮膚炎症の緩和、活力の増強の効果が増された。
これより、各種有機ミネラル含有生菌体を組み合わせることにより、細菌性、ウィルス性、及び寄生虫による魚病に対して優れた効果が期待できるといえる。
【発明の属する技術分野】
本発明は魚類の各種感染症の予防剤および該予防剤を含有する魚類用飼料に関する。
【0002】
【従来技術】
周辺国の乱獲により、近年は急速に漁獲高が減少傾向にある。こういう状況下にあって、栽培漁業の重要性は益々高まっている。ところが、集約的な養殖にあっては、栽培魚の健康管理は非常に大切であり、魚病の発生は非常に大きな問題となっている。
魚病を引起す原因としてウイルスや細菌の感染、カビや寄生虫の感染、またこの他に水温、寄生虫性や細菌性の様々な疾病による斃死被害や成長阻害があり、損失は大きい。
【0003】
冷水病、イリドウイルス感染症および寄生虫の感染症に罹ると、魚が貧血症状になることが知られている。さらには体力が弱り、フラフラしているときには、貧血が疑われ、病気に対する抵抗性も弱い。
【0004】
従来、このような貧血の対処法として、ポークヘモグロビン粉末(ブタ由来のヘモグロビンパウダー、ブタの血液の赤血球を粉末化したもの)を餌に混合したり、餌にコーティングして、貧血の改善(ヘマトクリット値の改善)と冷水病やイリドウイルス感染症、ブリのエラムシの寄生に対して優れた抗病性が見られた。しかし、BSE(所謂、狂牛病)の発生により、動物由来のポークヘモグロビン粉末の使用が難しくなり、これに代わる手段が求められていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以前より、冷水病やイリドウイルス感染症、その他魚病に対する抗生物質やワクチン、薬浴といった解決策が開発され、使用されてきた。しかし、全ての病気に効くとは限らず、その分養殖業者の負担が大きい。最近では、安全性の面や環境への影響から、抗生物質の投与や薬浴を禁止する傾向にある。また、ワクチンが開発されても、魚1匹あたりにかかるコストが高いため、実用的でない。そのため、安全で天然由来の利便性のある魚病予防剤のニーズが高い。また、動物由来のポーク粉末の代替品が得られれば、技術の豊富化に役立つ。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、このような状況に鑑みて、ポークヘモグロビン粉末と同等の貧血防止効果を有するとともに、その他の魚病にも優れた効果を示す天然由来の材料を探求した。その結果、有機鉄含有菌体、もしくは有機鉄含有菌体を組合せたものを餌に混合し、あるいは餌にコーティングして魚に投与することにより、魚類ウイルス症、細菌症、寄生虫症などに優れた予防効果のあることを見出した。特に、貧血症状を有する冷水病やイリドウイルス感染症、その他貧血症状を呈する疾病に対して非常に効果をもつ。
なお、当該菌体の飼料への添加量は適宜変更可能であるが、例えば、鉄含有菌体については、鉄濃度として望ましくは50ppmから200ppmがよい。
【0007】
本発明で使用する、有機ミネラル含有生菌体とは、有機ミネラル含有酵母および同含有乳酸菌をいう。例えば、有機鉄含有酵母は、無機鉄を添加した培地でサッカロマイセス・セレビシエを培養し、鉄を酵母菌体に取込ませることにより得ることができる。これをタンパク分解酵素で処理して細胞壁を破壊し、噴霧乾燥したものが適する。有機ミネラル含有乳酸菌は、乳タンパク、フラクトースを含む栄養培地にミネラルを添加してラクトバチルス菌等の乳酸菌を培養し、洗浄後噴霧乾燥して得ることができる。ミネラルが菌体内のタンパクと結合しているため、魚に安全に投与することができ、確実にミネラルを体内に運ぶことができる。
本発明では、鉄含有酵母以外に、セレン、マンガン、亜鉛、銅、クロム、硫黄、沃素等由来の酵母あるいは乳酸菌を挙げることができる。
好ましくは、鉄含有酵母および/または鉄含有乳酸菌を必須成分として、さらにセレン、マンガン、亜鉛、銅、クロム、沃素等を含有する酵母および乳酸菌から選択した一種以上を加えることにより一層効果を上げることができる。
【0008】
本発明で意図する魚病は例えば、サケ、マス、アユ等の冷水病、マダイ、ブリ、カンパチ、シマアジ等のイリドウイルス感染症、ヒラメ等のネオヘテロボツリウム症、アユ、ブリ等のシュードモナス感染症、ブリ、ウナギ、アユ、マス、サケ、マダイ等のビブリオ病、ブリ、ヒラメ、カンパチ、マダイ、アユ、ウナギ等の連鎖球菌症、サケ等の伝染性造血器壊死症、マダイ等のエドワジラ、ブリ、ヒラメ、ワカサギ、ニシキゴイ、サケ等のミコバクテリウム感染症、サケ等のウイルス性赤血球壊死症、マダイ、ブリ、カンパチ、シマアジ等のウイルス性神経壊死症などがある。
【0009】
本発明をつぎの実施例によりさらに説明する。
【0010】
実施例1 アユの冷水病予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母からなる混合酵母(配合率は以下参照)によるアユの冷水病予防効果を試験した。また、鉄含有酵母(Feとして5%含有)のみを飼料に添加して同様の試験を行った。
(方法)
市販の配合飼料に有機ミネラル含有酵母混合品を所定の量で添加し、アユ40尾(平均体重12.5g)に給餌した。本混合品の投与開始から3週間目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・サイクロフィラムに感染させ、この感染アユ10匹を各試験区分(本混合品無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区)に投入し、6週目の生存率、増体重、ヘマトクリット値、活力を調べた。
有機ミネラル含有酵母混合品の配合率はつぎのとおりである。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
本酵母混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が確認され、かつ増体重も順調であった(表1参照)。この結果から、有機ミネラル含有酵母のアユの冷水病に対して予防効果があることが分かる。
また有機鉄酵母のみを添加した場合にも、同様の冷水病予防効果が得られたが、混合品の形態にするとさらに予防効果は増大することが分かる。
【0011】
実施例2 ビブリオ菌感染予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるマスのビブリオ菌感染症の予防効果を試験した。また鉄含有酵母単体を飼料に添加して、同様の試験を行った。
(方法)
以下に示す有機ミネラル含有酵母混合品を配合した飼料をマス40尾(平均体重10g)に給餌した(試験終了時まで)。当該混合品の給餌開始から3週目にビブリオ菌に感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を調べた。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
本混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が確認され、かつ増体重に悪影響はなかった(表2参照)。また有機鉄酵母のみを添加した場合にも、同様の予防効果が得られたが、混合品よりさらに効果が上がった。
マス以外の魚種のビブリオ菌感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0012】
実施例3 マダイのイリドウイルス感染症の予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるマダイのイリドウイルス菌感染症の予防効果を試験した。同時に、有機鉄含有酵母のみを飼料に添加し、同様の試験を行った。
(方法)
下記の配合の有機ミネラル含有酵母混合品を配合した配合飼料をマダイ30尾(平均体重16g)に試験終了日まで給餌した。当該混合品の給餌開始から3週目にイリドウイルスに感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。試験区は該混合品無添加区、2%添加区、5%添加区および鉄含有酵母単体区の4区からなる。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験結果)
有機ミネラル酵母混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表3参照)。本例はマダイの試験例であるが、ブリ、カンパチ、シマアジ、マグロ等のイリドウイルス感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0013】
実施例4 シマアジのウイルス性神経壊死症(VNN)の予防効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母を以下の配合率で調製した混合品によるシマアジのVNNの予防効果を試験した。
(方法)
当該混合品を配合した配合飼料をシマアジ30尾(平均体重13.5g)に試験終了日まで給餌した。混合品の給餌開始から3週目にVNNの原因ウイルスであるSJNNVを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
当該無添加区、2%添加区、5%添加区の3区。
(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善を測定し(表4参照)、優れた予防効果が確認され、増体重に悪影響はみられなかった。シマアジ以外にマダイ、ブリ、カンパチ等のVNNに対しても同様の効果が期待できる。
【0014】
実施例5 ヒラメのヘテロボツリウム感染症の予防試験
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるヒラメのヘテロボツリウム感染症の予防効果を試験した。
(方法)
当該混合品を配合した飼料をマス30尾(平均体重85g)に試験終了時まで給餌した。本混合品の給餌開始から3週目にヘテロボツリウムを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
有機ミネラル含有酵母混合品の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区
(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表5参照)。ヒラメ以外の魚種、たとえばトラフグ等のヘテロボツリウム感染症に対しても同様の効果が期待できる。
【0015】
実施例6 ブリのベネデニア症の予防試験
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母、有機クロム含有酵母、有機モリブデン含有酵母の混合品によるブリのベネデニア感染症の予防効果を試験した。
(方法)
以下の表からなる混合品を配合した配合飼料を試験終了時までマス30尾(平均体重60g)に給餌した。混合品の給餌開始から3週目にベネデニアを感染させ、5週目に生存率、活力、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 0.6%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 1.5%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 0.6%
不活性酵母(賦形剤として) 100%に調整
(試験区分)
有機ミネラル含有酵母混合品の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区。
(試験結果)
混合品を添加した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められた(表6参照)。
【0016】
実施例7 魚病に及ぼす各種有機ミネラル含有酵母の効果
有機鉄含有酵母、有機セレン含有酵母、有機マンガン含有酵母、有機亜鉛含有酵母、有機銅含有酵母を単独でアユ、マス、マダイ、シマアジ、ヒラメ、ブリ等に投与し、魚病に対する効果を試験した。
(方法)
各種有機ミネラル含有酵母を別々に配合した飼料を試験終了時まで魚に給餌した。酵母の給餌開始時から3週目に各魚病の原因菌、原因ウイルス、原因寄生虫を感染させ、5週目にそれぞれの生存率、活力を測定した。
使用したミネラル含有酵母の添加量はつぎのとおりである。
鉄含有酵母(Feとして5%含有) 飼料に対して0.5重量%
セレン含有酵母(Seとして2%含有) 飼料に対して0.01%
マンガン含有酵母(Mnとして5%含有) 飼料に対して0.01%
亜鉛含有酵母(Znとして5%含有) 飼料に対して0.01%
銅含有酵母(Cuとして5%含有) 飼料に対して0.01%
クロム含有酵母(Crとして0.2%含有) 飼料に対して0.01%
モリブデン含有酵母(Moとして0.2%含有) 飼料に対して0.01%
マグネシウム含有酵母(Mgとして5%含有) 飼料に対して0.01%
(対象魚種)
アユ(40尾、平均体重12.5g): 冷水病
マス(40尾、平均体重10g): ビブリオ感染症
マダイ(30尾、平均体重16g): イリドウイルス感染症
シマアジ(30尾、平均体重13.5g): VNN
ヒラメ(15尾、平均体重85g): ヘテロボツリウム感染症
ブリ(15尾、平均体重60g): ベネデニア感染症
(試験結果)
結果は表7および8に示す。
【0017】
実施例8 有機ミネラル含有乳酸菌のアユ冷水病への予防効果
有機鉄含有乳酸菌、有機セレン含有乳酸菌、有機マンガン含有乳酸菌、有機亜鉛含有乳酸菌、有機銅含有乳酸菌を下記の割合で混合した混合菌によるアユの冷水病予防効果を試験した。
鉄含有乳酸菌(Feとして5%含有) 7重量%
セレン含有乳酸菌(Seとして2%含有) 2%
マンガン含有乳酸菌(Mnとして5%含有) 0.7%
亜鉛含有乳酸菌(Znとして5%含有) 1.5%
銅含有乳酸菌(Cuとして5%含有) 0.6%
乳糖(賦形剤として) 100%に調整
(方法)
市販の配合飼料に上記混合品を添加し、アユ40尾(平均体重12.5g)に試験終了日まで給餌した。混合品の給餌開始日から3週目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・プシクロフィラムを感染させ、これらの感染アユを各試験区に投入し、6週目の生存率、増体重、ヘマトクリット値を測定した。
(試験区分)
ミネラル含有乳酸菌の無添加区、2%添加区、5%添加区、鉄含有酵母単体区(試験結果)
混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善が認められ、増体重も順調であった(表9参照)。
【0018】
実施例9鉄含有酵母とセレン含有酵母の2種混合品の魚病予防効果
有機鉄含有酵母(Fe)、有機セレン含有酵母(Se)の2種類の有機含有ミネラル酵母混合品(配合率は以下参照)によるアユの冷水病予防効果、マダイのイリドウィルス感染症予防効果及び、ヒラメのヘテロボツリウム感染症予防効果を確認した。また鉄含有酵母のみを投与した場合と効果を比較した。
<方法>
市販の配合飼料に有機鉄含有酵母と有機セレン含有酵母の混合品(配合率は以下参照)を添加し、アユ、マダイ、及びヒラメに給餌した(試験終了日まで)。有機ミネラル含有酵母混合品の投与開始から3週間目に冷水病原因菌であるフラボバクテリウム・サイクロフィラムをアユに、イリドウィルスをマダイに、またヘテロボツリウムをヒラメに感染させ、5週目(アユについては6週目)の生存率、増体重率、ヘマトクリット値、をそれぞれ測定した。
試験区分
− 無添加
− 有機鉄含有酵母・有機セレン含有酵母混合品 5%添加
− 鉄含有酵母 0.4%添加
<試験結果・考察>
有機鉄含有酵母・セレン含有酵母の混合品を投与した区では、生存率の改善、活力の増大、貧血の改善(ヘマトクリット値の改善)が確認された(表10−12)。鉄含有酵母のみを投与したときにも同様の魚病予防効果が得られたが、2種類を混合した場合にはより高い効果(生存率、活力)が得られた。
抗病性は非常に優れるものであったが、その他数種類の有機ミネラル含有酵母を混合したものを投与(実験1、実験3、実験5)した場合、魚の状態(皮膚、鱗)が非常によかった。これより有機鉄含有酵母に有機セレン酵母やその他の有機ミネラル含有酵母を混合したものを投与することで、より魚病予防・治療効果が増強されるといえる。
総合考察
今回の一連の試験結果から有機ミネラル含有酵母・乳酸菌が魚病に対して優れた予防・治療効果をもつことが明らかとなった。
それぞれ単独で使用した際にも、貧血予防効果、魚病による皮膚炎症の緩和、活力の増強等様々な効果が得られた。
有機鉄含有酵母・有機セレン含有酵母を組み合わせて投与した場合に、特に優れた抗病勢が確認された。しかし、その他の有機ミネラル含有酵母と組み合わせることで、皮膚炎症の緩和、活力の増強の効果が増された。
これより、各種有機ミネラル含有生菌体を組み合わせることにより、細菌性、ウィルス性、及び寄生虫による魚病に対して優れた効果が期待できるといえる。
Claims (7)
- 有機ミネラル含有菌体を主成分として含有することからなる、魚病予防剤。
- 有機ミネラル含有菌体は有機鉄含有菌体である、請求項1記載の魚病予防剤。
- 有機ミネラル含有菌体は鉄、セレン、マンガン、亜鉛、銅、マグネシウム、クロム、モリブデンおよび沃素−含有酵母、あるいは−含有乳酸菌からなる群から選ばれた少なくとも1つの菌体である、請求項1記載の魚病予防剤。
- 魚病は魚類ウイルス症、細菌症、寄生虫症である、請求項1または3のいずれか1項記載の魚病予防剤。
- 有機ミネラル含有菌体を市販の餌料と混合するか、あるいは該餌料に被覆してなる、魚病予防用餌料。
- 有機ミネラル含有菌体の魚病予防のための使用。
- 有機ミネラル含有菌体の魚病予防用飼料製造のための使用。
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