JPH0745525B2 - 診断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスおよびその製造方法 - Google Patents

診断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスおよびその製造方法

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JPH0745525B2
JPH0745525B2 JP61053076A JP5307686A JPH0745525B2 JP H0745525 B2 JPH0745525 B2 JP H0745525B2 JP 61053076 A JP61053076 A JP 61053076A JP 5307686 A JP5307686 A JP 5307686A JP H0745525 B2 JPH0745525 B2 JP H0745525B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,均一な粒径を有し乳化剤を含まない診断試薬
用塩化ビニル重合体ラテックスおよびその製造方法に関
する。
(従来の技術) 免疫試薬用担体として,あるいは電子顕微鏡の比較標準
物質の長さを測定するための標準品として,ラテックス
が利用されている。このようなラテックスとしては,調
製が容易であることなどからポリスチレンラテックスが
好適に用いられる。しかし,ポリスチレンの比重は比較
的小さいため,例えばラテックス試薬と検体との反応指
標である擬集反応に長時間を要する。したがって,ラテ
ックスの用途によっては,高比重であることが望まし
い。このような用途の高比重ラテックスとしては塩化ビ
ニル重合体が考えられる。塩化ビニル重合体ラテックス
は,通常,アルキル硫酸ナトリウム,アルキルベンゼン
スルホン酸ナトリウム,脂肪酸ナトリウムなどのアニオ
ン系界面活性剤や非イオン系界面活性剤を乳化剤として
乳化重合することにより得られる。しかし,このような
方法では粒径の揃ったラテックスが得られにくい。
粒径の均一な塩化ビニル重合体ラテックスを得る方法
は,例えば特公昭40−10586,特開昭60−94404および特
開昭60−94405号公報に開示されている。そこには,使
用される乳化剤の種類や乳化剤の反応系への添加工程に
改良を加えることにより,比較的均一なラテックスを得
られることが示されている。しかし,いずれも界面活性
剤などの乳化剤の使用が必須要件であるため,得られる
ラテックスには乳化剤が残留する。そのため,そのラテ
ックスを長期間保存するとラテックス粒子同士が凝集し
沈澱することがあり,安定性に欠ける。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は上記従来の欠点を解決するものであり,その目
的とするところは,粒径が均一であり長期間安定に保存
しうる高比重で高品質の診断試薬用塩化ビニル重合体ラ
テックスを提供することにある。本発明の他の目的は,
上記優れた性質を有する診断試薬用塩化ビニル重合体ラ
テックスを乳化剤を使用せずに製造する方法を提供する
ことにある。
(問題点を解決するための手段および作用) 本発明の診断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスは,水
100重量部に対して塩化ビニルを30重量部以下の割合で
含有する混合液を,乳化剤の不存在下で水溶性重合開始
剤を用い,重合反応に供して得られ,そのことにより上
記目的が達成される。
また,本発明の診断試薬用塩化ビニル重合体ラテックス
の製造方法は,水100重量部に対して塩化ビニルを30重
量部以下の割合で含有する混合液を,乳化剤の不存在下
で水溶性重合開始剤を用い,重合反応に供し,そのこと
により上記目的が達成される。
発明者らは,乳化剤を全く使用しない場合でも塩化ビニ
ルの仕込量や反応条件を調整することにより高品質の診
断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスが得られるのでは
ないかと考え,実験を重ねた結果,この発明を完成する
に至った。
まず,重合反応時の分散媒である水の塩化ビニルとの配
合割合の検討を行った。水溶性の重合開始剤である後述
の過硫酸塩を用い,水100重量部に対する塩化ビニルの
配合割合を種々に変化させてラテックスの調製を試み
た。塩化ビニルの量が10重量部以下であるときには撹拌
により塩化ビニルが水中に微細に分散し粒径が0.1〜0.5
μmの均一なラテックスが生成した。このときラテック
スの粒径は塩化ビニルの量が増加するのにつれて大きく
なるのが観察された。塩化ビニルの量が約15重量部に達
するとラテックスの粒径は約1.0μmとなった。塩化ビ
ニルの仕込量をさらに増加させてもラテックスの粒径は
平均的には大きくならなかった。塩化ビニルの量が20重
量部を越えると反応容器壁面にスケールが認められるよ
うになり,ラテックス粒子のなかに,誤差範囲内ではあ
るが,均一粒径のラテックス粒子よりも大きな粒径の粒
子が認められるようになった。30重量部になるとスケー
ルの付着がやや多くなった。30重量部を越えると,反応
時の内温に対応する塩化ビニルの飽和蒸気圧に達した時
に,塩化ビニル単量体が反応容器上部の温度の低い壁面
で凝縮する傾向が強まる。凝縮・液化した塩化ビニルは
この部分でも重合反応を起こしスケールとなって壁面へ
付着したり,反応液内へ入り込む。あるいは,液化した
塩化ビニルが反応液内で重合・固化し大きな粒子を形成
する。このように塩化ビニルの量が30重量部を越えると
ラテックス粒子の粒径や形状が著しく不均一になる。さ
らに,塩化ビニル量が増加すると形成された重合体粒子
同士がお互いに付着して大粒子となりラテックスを形成
しなくなる。全体がブロック状態となることもある。上
記特徴は30〜50重量%の塩化ビニルを乳化剤の存在下に
て水中で重合させる一般の乳化重合法の反応状況とは極
めて異なる。
このように,水100重量部に対して塩化ビニルの仕込量
を30重量部以下,好ましくは20重量部以下の割合とし,
水溶性重合開始剤を用いて撹拌下で重合反応を行うと均
一な粒径のラテックスが得られることが確認された。
本発明に使用される重合開始剤としては,塩化ビニルの
エマルジョン重合に通常使用される水溶性重合開始剤が
使用され得,それには,例えば,過硫酸カリウム,過硫
酸アンモニウムなどの過硫酸塩がある。油溶性の有機過
酸化物は,生成した塩化ビニル重合体の粒子同士が合着
したり反応器の内壁にスケールが大量に付着するため,
好ましくない。重合開始剤は塩化ビニル100重量部に対
して0.5〜0.05重量部,好ましくは0.3〜0.1重量部の割
合で反応系に加えられる。
本発明方法により診断試薬用塩化ビニル重合体ラテック
スを得るには,例えば,まず,撹拌装置と冷却・加熱装
置とを備えた耐圧の反応容器を準備する。このような反
応容器に水および重合開始剤を入れ,反応器内を水の蒸
気圧に達するまで排気する。次に塩化ビニルを容器内に
加え,撹拌下加温して重合反応を開始させる。重合反応
が始まると昇温するので加温をやめ反応系を適度に冷却
して,所定温度で重合反応を行うとラテックスが形成さ
れる。本発明では,塩化ビニルの量を所定量以下とした
ため,反応器内での塩化ビニルの凝縮・液化に起因する
不揃いはラテックス粒子の生成が少ない。またブロッキ
ングも生じない。
さらに大きな粒径のラテックスを得たい場合には,得ら
れたラテックスを上記塩化ビニル重合時に同時に反応系
に加え,これを核(シード)としてさらに重合を行う。
このようにシード重合を行うことにより粒径が均一で,
かつ大粒径のラテックスが生成する。加えられるシード
重合体ラテックスは固形分重量換算で塩化ビニル単量体
の0.05〜0.2倍量が適当である。過少であると大粒径ラ
テックスが得られず,過剰であると新たな重合体粒子が
生成するため,シードから大きくなった粒子と微小粒子
が混在するラテックスとなる。
このように,塩化ビニルを所定の割合で使用することに
より均一な粒径を有する診断試薬用塩化ビニル重合体ラ
テックスが得られる。ラテックスの粒径のコントロール
も容易であり,塩化ビニルの仕込量に応じて0.1〜1.0μ
mの所望の粒径のラテックスが容易に調製されうる。塩
化ビニルの量が15重量部以上の場合はラテックスの粒径
が約1.0μとなる。従来の技術の項に記載された各公報
の方法はいずれも比較的大粒径のラテックスを調製しう
る方法ではあるが、例えば特公昭40−10586号公報に記
載された方法では,粒径のコントロールが難しく,かつ
得られるラテックスの粒径はせいぜい0.5μmである。
これに比べても本発明の優れていることがわかる。
本発明方法ではラテックスの調製時に乳化剤を使用しな
いため,得られたラテックスは長期間安定に保存され
得,沈澱を生じにくい。さらに,生成したラテックス粒
子中の残存単量体は非常に少ないため,懸濁重合の場合
に見られるような,反応器を開放したときに未反応の塩
化ビニル単量体が激しく蒸発して重合体粒子が多孔質と
なるというようなことが抑制され,高品質のラテックス
が得られる。塩化ビニル重合体は比重が1.4と比較的大
きいため免疫試薬用担体など多くの分野に利用されう
る。
(実施例) 以下に本発明を実施例につき説明する。
実施例1 反応容器として直径25cm,深さ45cm,内容積20で,回転
数200rpm,直径2.5cm,直径8cmの撹拌羽根と幅2.5cmの板
バッフル1本を取り付けたジャケット付重合器を用い
た。重合器の内面および撹拌軸の表面をメチレンクロラ
イドを用いて洗浄し,さらによく水洗してスケールなど
の付着物を落とした後、重合器を組立てた。
この重合器にイオン交換水12と重合開始剤として過硫
酸カリウム1.0gとを仕込んだ後,真空ポンプによって器
内に残存する空気を仕込水の蒸気圧に達するまで排気し
た。これに撹拌しながら塩化ビニル単量体400gを加え
た。常温でしばらく撹拌した後,ジャケットに熱水を通
して70℃に昇温した。重合反応が開始されたらジャケッ
トを冷却水に切り替え,温度を約70℃に保ちながら重合
反応を行なった。重合反応の進行状況は重合器の内圧の
変化によって推定し,適当な重合率に達したと思われる
2.5時間後に反応系を冷却し重合器内温を30℃以下に低
下させた。未反応の塩化ビニル単量体を蒸発させ,さら
に窒素ガスを吹き込んで完全に除去した。生成した重合
体ラテックスを透過型電子顕微鏡で観察したところ,ほ
ぼ均一の粒子径を有することが確認された。このラテッ
クスの生成量(重合率),粒子の粒径,重合度を測定
し,重合器内部のスケール付着状態の観察も行なった。
その結果を下表に示す。実施例2〜6の結果もあわせて
表1に示す。表において重合率は,ラテックスの一部を
蒸発乾固し固形分を計量して算出した。粒子径はラテッ
クスを透過型電子顕微鏡写真に撮り100個の粒子の直径
を測定し,その平均値で示した。
更に得られたラテックスをpH7.4のリン酸緩衝液に分散
させた固形分1重量%のラテックス溶液、およびモルモ
ットの産出したHBSモノスペシフィックス抗体(セファ
ローズ4Bに固定したHBS抗原のカラムに2回通液したア
フィニティークロマトグラフィーによる精製品)をpH7.
4のリン酸緩衝液に分散させた濃度40μg/mlのHBSモノス
ペシフィックス抗体溶液をそれぞれ得た。
次いで、上記ラテックス溶液とHBSモノスペシフィック
ス抗体溶液を同量ずつ混合し、37℃で60分間インキュベ
ートしてラテックスに抗体を結合させた後、15,000rpm
で20分間遠心分離(以下、「遠心分離1回目」とする)
することにより、未吸着の抗体を除去し、99.5重量%以
上の抗体が吸着した感作ラテックスを得〔但し、抗体の
吸着量はPHA(受身赤血球凝集反応)法により測定し
た〕、更に18,000rpmで13分間遠心分離(以下、「遠心
分離2回目」とする)した後、上澄み液を除去した残留
物を、pH7.0のリン酸緩衝液に再分離させることにより
感作ラテックス1を得た。
次に、HBS抗原検出EIAキット(山の内製薬社製、商品名
「リバーセル」)中の感作赤血球を、上記感作ラテック
ス1に置き換えて、R−PHA(逆受身赤血球凝集反応)
試験を行った。
R−PHA(逆受身赤血球凝集反応)試験法 まずマイクロドロッパーとマイクロタイターを用いて10
本の管中にpH7.0のリン酸緩衝液を50μ1づつ分注した
後、1μgのHBS抗原を含む検体50μ1を、ダイリュー
ターを用いて上記管中で速やかに倍々希釈することによ
り、1/2〜1/1024の各希釈倍率のHBS抗原溶液を得た。
次いで、上記各希釈倍率のHBS抗原溶液50μ1に上記感
作ラテックス50μ1を添加しミキサーで30分間振とうし
た後、270分間静置した後の凝集状態を表2に従って判
定した結果を表3に示し、また420分間静置した後の判
定結果を表4に示す。但し、各測定は3回ずつ行った。
実施例2 過硫酸カリウムの量を1.2g,そして塩化ビニル単量体の
量を1.0kgとし,反応時間を3.0時間としたこと以外は実
施例1と同様である。
遠心分離1回目を15,000rpmで18分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで10分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス2を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
実施例3 過硫酸カリウムの量を1.5g,そして塩化ビニル単量体の
量を1.5kgとし,反応時間を2.8時間としたこと以外は実
施例1の同様である。
得られたラテックスを20℃で放置したところ29日後にわ
ずかな沈澱が生じた。さらに50日後(79日後)にはさら
に進行して沈澱が生じたが,ポイントミキサーで5分間
分散させたところ均一に分散した。分散したラテックス
50μmlをガラス板上に採取し,ゆるやかな前後左右に3
分間ゆりうごかしたが凝集は認められなかった。
遠心分離1回目を15,000rpmで15分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで8分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス3を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
実施例4 過硫酸カリウムの量を2.0g,そして塩化ビニル単量体の
量を2.0kgとし,反応時間を3.0時間としたこと以外は実
施例1と同様である。
遠心分離1回目を15,000rpmで15分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで8分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス4を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
実施例5 過硫酸カリウムの量を3.0g,そして塩化ビニル単量体の
量を3.0kgとし,反応時間を3.5時間としたこと以外は実
施例1と同様である。
得られたラテックスを実施例3と同様に20℃に放置して
観察を行なったところ,実施例3と同様の結果が得られ
た。
遠心分離1回目を15,000rpmで15分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで8分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス5を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
実施例6 重合開始剤として過硫酸カリウム1.2gおよびNa2S2O32.4
gを使用し,塩化ビニル単量体の量を1.0kgとし,反応温
度を40℃,そして反応時間を7.7時間としたとこと以外
は実施例1と同様である。
表に示すように,仕込んだ水の量に対して単量体の量が
増加すると,重合器内壁や撹拌機に付着するスケールの
量が増加する。しかし,上記範囲では,重合反応中にス
ケールが落下したり粒子が互いに合着することはなく,
均一なラテックスが得られることが明らかである。
遠心分離1回目を15,000rpmで18分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで10分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス6を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
実施例7 実施例3で得られたラテックス1(固形分約88g)を
仕込時に加えたこと以外は実施例2と同様である。ただ
し水と上記ラテックスの合計量が12となるようにし,
反応時間は2.8時間とした。均一粒径のラテックスが得
られ,その平均粒径は1.3μmであった。重合率は76%
で重合度は520であった。スケールの付着は認められな
かった。このように,シード重合を行なうことにより大
粒径のラテックスが得られる。
遠心分離1回目を15,000rpmで10分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで5分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス5を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
比較例1 塩化ビニル単量体を4.2kg(水100重量部に対し塩化ビニ
ル単量体35重量部),そして過硫酸カリウムを4.2g用い
たこと以外は実施例1と同様に重合反応を行なった。重
合反応は4時間を要したが,重合反応開始後約3時間は
重合器の内圧が重合温度(70℃)における飽和蒸気圧を
示し,その後圧力が低くなるのが認められた。反応終了
後,重合器内壁および撹拌軸に付着したスケール量を測
定したところ980gであった。これは全重合体量の約30パ
ーセントであり,全体がブロッキング寸前であった。得
られた,重合体ラテックスは不均一であり,多数の大粒
子が認められた。
比較例2 実施例1と同様に重合器に水10,過硫酸カリウム3.0g
および非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンノ
ニルフェニルエーテル4.0gを仕込んだあと,真空ポンプ
によって器内に残存する空気を仕込水の蒸気圧に達する
まで排気した。撹拌しながら塩化ビニル単量体3.0kgを
仕込み,常温で撹拌を続けた後,ジャケットに熱水を通
して65℃に昇温した。重合反応が開始されたらジャケッ
トを冷却水に切り替え,重合温度を65℃に保ちながら3.
8時間反応させた。次に,重合器内温を30℃以下に低下
させ,未反応の塩化ビニル単量体を蒸発させ,さらに窒
素ガスを吹き込んで,完全に除去した。生成したラテッ
クス粒子の平均粒径は0.65μmであり,重合率は75%で
あった。
このラテックスを20℃で放置したところ25日後に粒子が
凝集し沈澱が生じた。さらに34日後(59日後)には,さ
らに進行して全体が沈澱するに至った。ポイントミキサ
ーで5分間分散させたが均一には分散せず,大きい凝集
のかたまりが多数認められた。
遠心分離1回目を15,000rpmで15分間行い、遠心分離2
回目を18,000rpmで8分間行ったこと以外は実施例1と
同様におこない感作ラテックス8を得た後、R−PHA
(逆受身赤血球凝集反応)試験を行い、270分間静置し
た後の凝集状態を表2に従って判定した結果を表3に示
し、また420分間静置した後の判定結果を表4に示す。
更に、参考例として上記塩化ビニル重合体ラテックスの
代わりに、ヒツジ赤血球に抗HBS抗体を吸収させ場合の
R−PHA試験の結果を同様に表3及び表4に示す。
また、比較例2については、凝集状態のバラツキが大き
いため得られたラテックス試薬と種々の濃度のHBS抗原
を含むヒト血清に対する凝集状態を表5の判定基準に従
い測定した結果を表6に示す。
次に、予めHBS抗原検出EIAキット(山の内製薬社製、商
品名「リバーセイア」を用い、血清中のHBS抗原が0.4ng
/ml以下であることが判明している100人の正常なヒト血
清と比較例2で得られたラテックス試薬との凝集状態を
測定した結果、100検体中、陽性が13件、偽陽性が17件
あった。
以上の試験結果により、比較例2で得られた乳化剤を含
む塩化ビニル重合体ラテックスを原料として用いた感作
ラテックスは、非特異的な凝集反応を起こすことが明ら
かとなった。
以上より、乳化剤を含まない塩化ビニル重合体ラテック
スは、乳化剤に起因する自己凝集や非特異的な凝集が少
なく、保存性(又は分散安定性)に優れ、ロット間のば
らつきもない。また、粒子がよく揃い、かつ比重が比較
的大きいため凝集反応を簡単にかつ短時間に評価でき、
しかも検査値への影響が少なくマイクロタイター法等に
最も適したラテックスの1つであることは明らかであ
る。
(発明の効果) 本発明によれば,このように,粒径が均一で高品質の診
断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスが得られる。ラテ
ックスの調製時に乳化剤を全く使用しないため乳化剤に
起因するラテックスの凝集や沈澱が生じにくく,長期間
安定に保存されうる。塩化ビニルの配合割合を変えるこ
とにより所望の粒径のラテックスが得られる。従来,調
製の難しかった大粒径のラテックスも容易に調製されう
る。このような大粒径・高品質のラテックスは,例え
ば,各種抗原,抗体などを吸着させ免疫試薬とした場
合,これを抗原抗体反応に用いると凝集が短時間で起こ
るため,測定が短時間でなされうる。そのためリウマチ
の検査,妊娠の診断,蛋白質の検出など各種検査に好適
に用いられうる。大粒径のラテックスは,このほか電子
顕微鏡,粒子計数器,光散乱モデルなどに用いられる比
較標準物質の測定のための標準品;濾過・透析膜等のフ
ィルター孔径測定用標準品などに好適に用いられる。本
発明のラテックスはまた,高比重であることを利用して
細胞などの分離コロイドの研究や拡散の研究などにも用
いられる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水100重量部、塩化ビニル30重量部以下の
    割合で含有する混合液を、乳化剤の不存在下で水溶性重
    合開始剤を用い、重合反応に供して得られる診断試薬用
    塩化ビニル重合体ラテックス。
  2. 【請求項2】前記水溶性重合開始剤が過硫酸塩である特
    許請求の範囲第1項に記載の診断試薬用塩化ビニル重合
    体ラテックス。
  3. 【請求項3】粒径が0.1〜1.0μmである特許請求の範囲
    第1項に記載の診断試薬用塩化ビニル重合体ラテック
    ス。
  4. 【請求項4】水100重量部、塩化ビニル30重量部以下の
    割合で含有する混合液を、乳化剤の不存在下で水溶性重
    合開始剤を用い、重合反応に供する診断試薬用塩化ビニ
    ル重合体ラテックスの製造方法。
  5. 【請求項5】前記水溶性重合開始剤が過硫酸塩である特
    許請求の範囲第4項に記載の製造方法。
JP61053076A 1986-03-11 1986-03-11 診断試薬用塩化ビニル重合体ラテックスおよびその製造方法 Expired - Lifetime JPH0745525B2 (ja)

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