JPH0735022B2 - 工業ブラシ用毛材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は金属や木材などの表面研削、研磨仕上げにおい
て、微細かつ美麗な仕上げ面を高能率で得ることができ
る、研磨性および耐久性にすぐれた砥剤粒子含有合成樹
脂モノフィラメントを基体とする工業ブラシ用毛材に関
するものである。

（従来技術） 従来から工業用ブラシなどの分野において、砥剤粒子を
含有する合成樹脂を溶融紡糸して得られるモノフィラメ
ントを用いることはよく知られており、たとえば上記モ
ノフィラメントを基材に植毛して通常のブラシとして使
用するか、または上記モノフィラメントをすだれ状に垂
らしてその下に被研磨物を通過させる方法などの態様で
使用されている。

しかるに上記の砥剤粒子含有モノフィラメントをそのま
ま基材に植毛したブラシは、モノフィラメント自体が細
く、ブラシとしての腰に欠けるため、研磨性が劣り、微
細な研磨面を能率的に得ることが困難である。これに対
しモノフィラメントの太さを増大してブラシの腰を高め
ようとすると、研磨性こそ改善されるものの、研磨面が
荒くなって微細な仕上げ面の取得が阻害される。

このような問題を解決した微細な研磨面を得るためのブ
ラシ用毛材としては、たとえば数本の細い砥剤粒子含有
モノフィラメントを撚合せるか、または束ねて、その表
面をマルチフィラメントなどで被覆したもの（実公昭49
−38637号公報および実公昭56−21294号公報など）が知
られているが、これらは撚り工程や被覆工程などの加工
工程が付加されることによって製造コストが増大し、経
済的に好ましくないばかりか、微細な研磨面を得るため
の作業能率もいまだに改善の余地がある。

また砥剤粒子含有ポリマ層の表面に砥剤粒子を含有しな
い合成樹脂からなる被覆層を設けた複合繊維をブラシ用
毛材として用いることも知られている（特開昭60−2196
6号公報）が、この繊維は実用に供する際に、溶剤また
は分解剤により上記被覆層の少なくとも一部を溶解また
は分解除去する必要があるばかりか、その研磨能力もい
わゆる研削ブラシの性能として充分満足できるものでは
ない。

（本発明が解決しようとする問題点） そこで本発明者らは、微細かつ美麗な研磨仕上げ面を高
能率で得ることができる、研磨性および耐久性にすぐれ
た砥剤粒子含有合成樹脂モノフィラメントを基体とする
工業ブラシ用毛材の取得を目的として鋭意検討した結
果、砥剤粒子含有モノフィラメントからなる撚線の表面
に、樹脂被覆層を設けるという簡便な手段により、上記
目的に合致した工業ブラシ用毛材が得られることを見出
し、本発明に到達した。

（問題点を解決するための手段） すなわち本発明は砥剤粒子含有合成樹脂モノフィラメン
トを少なくとも１本含む複数本の合成樹脂モノフィラメ
ントを撚合わせてなる撚線において、その表面に合成樹
脂被覆層を設けることにより、前記撚線の表面に合成樹
脂被膜を形成すると共に、前記各合成樹脂モノフィラメ
ント単糸間に前記合成樹脂を充満させることにより、前
記各合成樹脂モノフィラメント単糸間を前記合成樹脂で
接合、固定してなることを特徴とする工業ブラシ用毛材
を提供するものである。

本発明において合成樹脂モノフィラメントの素材として
用いる合成樹脂としては、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、
ナイロン６、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミ
ド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ンおよびポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどの
ポリハロゲン化ビニルなどの溶融紡糸可能な熱可塑性樹
脂が挙げられる。これらの合成樹脂は熱安定剤、酸化防
止剤、耐候材、着色剤、滑剤、難燃剤および帯電防止剤
などの通常の添加剤を含有することができる。

本発明で用いる砥剤粒子としては、コークス粉、ボーキ
サイト、アルミナ粉などのアルミナ系研磨剤、白けい
石、鋸粉などの炭化けい素系研磨剤、ダイヤモンド、エ
メリー、ざくろ石などの天然物系研磨剤、炭化物系研磨
剤、ジルコニア系研磨剤およびガラス系研磨剤などが挙
げられ、これらは２種以上併用することができる。これ
ら砥剤粒子の粒子径はJIS R6001（1956）で規程された
粒度が＃30〜3000、とくに＃60〜500の範囲が好適であ
り、粒子径が＃30よりも大きいと紡糸性やモノフィラメ
ントの強靭性が、また＃3000よりも小さいと研磨性がそ
れぞれ低下する場合がある。これら砥剤粒子の配合量
は、合成樹脂に対し３〜70重量％、とくに10〜50重量％
が好適であり、３重量％未満では望ましい研磨効果が得
られず、また70重量％を越えるとモノフィラメントの強
靭性や溶融紡糸性が低下するため好ましくない。

本発明でいう砥剤粒子含有合成樹脂モノフィラメント
は、上記の合成樹脂に砥剤粒子を必要量含有せしめ、こ
れを溶融混合して一旦ペレタイズするか、またはペレタ
イズを経ずに直接溶融押出紡糸機に供し、紡糸口金から
複数本のモノフィラメントとして紡出せしめた後、冷却
し、必要に応じて延伸することにより得られる。ここで
砥剤粒子含有モノフィラメント単糸の断面形状は円形以
外にも楕円形、三角形、矩形およびその他の異形にする
ことができ、それらの平均直径は通常0.2〜1.3mm、とく
に0.3〜1.0mmの範囲が好適である。

本発明のブラシ用毛材を製造するに際しては、まず上記
の砥剤粒子含有モノフィラメントを含む複数本の合成樹
脂モノフィラメントを撚り合せて撚線を形成する。なお
撚線は、単糸数２〜10本、とくに３〜７本に引揃えたモ
ノフィラメントを通常の撚線機に供することにより容易
に製造することができる。そして撚線を構成するモノフ
ィラメントの直径および砥剤粒子含有量は必ずしも同一
である必要はなく、異なった直径のモノフィラメント同
志や砥剤粒子含有量の相違するモノフィラメント同志、
たとえば砥剤粒子を全く含有しないモノフィラメントと
砥剤粒子含有モノフィラメントとを組合わせて用いるこ
とができる。ようするに撚線を構成するモノフィラメン
トの直径や砥剤粒子含有量を適宜変更することにより、
使用目的に応じた種々の性能のブラシ用毛材を得ること
ができるのである。たとえば砥剤粒子含有モノフィラメ
ントは比較的もろく、折れやすくなっているため、これ
に砥剤粒子を含有しない通常のモノフィラメントを組合
せて構成した撚線においては、腰がつよく、しかも研磨
効果がある程度緩和されたブラシ用毛材が得られる。ま
た直径の大きな砥剤粒子含有モノフィラメントのみで構
成した撚線では研磨、研削効果が強く、直径の小さな砥
剤粒子含有モノフィラメントのみで構成した撚線では精
密な研磨面の取得が可能となる。さらに直径が異なる砥
剤粒子モノフィラメント同志を組合わせた撚線では、強
い研磨と同時に精密な細部仕上げが期待できるのであ
る。

ただし上記のモノフィラメントのみからなる撚線をブラ
シ用毛材に供する場合は、使用中に撚りがほどけてブラ
シの腰や研磨効果が著しく低下することになる。そこで
本発明のブラシ用毛材においては、上記撚線の表面に合
成樹脂の被覆層を設けて、モノフィラメント単糸同志を
結束および固定し、上記欠点を解消せんとする点に特徴
を置くものである。

本発明の工業ブラシ用毛材において被覆層を構成する合
成樹脂としては、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ
エステルエラストマー、ポリエステル、共重合ポリエス
テル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル
およびエチレン−酢ビ共重合体などの被膜形成性熱可塑
性樹脂が挙げられ、これらは前述の種々の添加剤やさら
に砥剤粒子をも含有することができる。これら合成樹脂
の中でも、とくに撚線を構成するモノフィラメント素材
との接合性および親和性のすぐれたものを選択するのが
好適である。なお本発明のブラシ用毛材を実際に工業用
途に用いる場合には、水または温水などを注水しながら
湿潤状態で実用に供することが多いため、なかでも耐水
性のすぐれた合成樹脂を使用することが望ましい。

本発明の工業ブラシ用毛材は、上記の撚線を溶融した合
成樹脂中を通過させ、次いでダイスなどを通して付着量
を均一化する方法、上記撚線と溶融した合成樹脂を共押
出して撚線を被覆コーティングする方法および合成樹脂
を有機溶剤に溶解してこれに上記撚線を浸漬または通過
させ、次いで加熱、乾燥処理して有機溶剤を除去する方
法などにより、上記撚線の表面に合成樹脂被覆層を設
け、モノフィラメント単糸同志を結束および固定するこ
とにより得られる。

次に本発明のブラシ用毛材の態様について、図面にした
がって説明する。第１図および第２図は本発明のブラシ
用毛材の拡大断面図である。第１図は３本の砥剤粒子含
有モノフィラメント単糸Ａを撚合わせた撚線の表面に合
成樹脂からなる被覆層Ｃを設けたものの断面を、また同
様に第２図は２本の砥剤粒子含有モノフィラメント単糸
Ａと共に、それよりも小径でかつ砥剤粒子を含有しない
２本の合成樹脂モノフィラメントＢを撚合わせた撚線の
表面に合成樹脂による被覆層Ｃを設けたものの断面を示
す。

ここで第１図および第２図に見られるように、合成樹脂
による被覆層Ｃは、撚線の表面に被膜を形成すると共
に、モノフィラメント単糸の隙間にも充満して固化し、
単糸間の結束を高めるためにも作用する。そしてかかる
被膜の厚みが、通常0.1〜1.0mm、とくに0.15〜0.3mm程
度となるように、合成樹脂の付着量を制限すべきであ
る。

このように撚線の表面に合成樹脂の被覆層を設けてなる
本発明のブラシ用毛材は、これを必要な長さに切断し、
束にするかまたはブラシ基体に植毛して、回転あるいは
往復運動ブラシとする、またはこれをすだれ状に垂らし
て、その下に被研磨物を通過させるなどの工業用研磨ブ
ラシとしての実用手段に供される。

（作 用） 本発明のブラシ用毛材を実用に供する際には、被研磨物
の表面と接する毛材の先端における合成樹脂層を剥離
し、単糸に分割してから研磨作業を開始する。またはそ
のままの状態で研磨作業を開始しても、ブラシの先端部
は被研磨物との摩擦のウォームアップにより自動的に合
成樹脂層が剥離して、分割された単糸が被研磨物表面に
直接接触することになる。

このような状態で被研磨物の表面研磨作業を行なうと、
毛材の根元部は合成樹脂層によりモノフィラメント単糸
同志が接合、固定されているため、硬く腰があり、被研
削面への押圧力が小さくても充分な研削力を発揮し、し
かも毛材の植毛根元部にかかる屈折繰り返し疲労が少な
いので、耐久性が大幅に改善される。一方毛先（先端
部）は単糸に分割されているため、研磨面の細かな隙間
などを精密に研磨加工することができ、微細かつ美麗な
研磨仕上げ面を能率的に得ることができる。しかもブラ
シは毛先がばらけることがなく、かつ折れにくいため、
その研磨性および耐久性がきわめて改良されたものとな
る。

以下実施例により本発明をさらに詳述する。

（実施例） 東レ（株）製ナイロン６チップ（M1021T）に、昭和電工
（株）製炭化けい素砥剤（＃180）を25重量％配合した
ものを、40mmφ溶融押出機に供して溶融し、紡糸口金か
ら紡出せしめ、冷却、引取り、延伸することにより、直
径0.9mmの砥剤粒子含有モノフィラメントを得た。この
モノフィラメントを毛材No.1とする。

次に上記毛材No.1の３本を撚線機に供して75T/mに撚合
わせ、次いで150℃の熱風循環炉を通過させて、撚り固
定するることにより、撚線を製造した。この撚線を毛材
No.2とする。

一方30mmφ溶融押出機にナイロン６チップ（M1021T）を
供給して溶融し、コーティングダイスより溶融ポリマを
流出させ、その中に上記撚線毛材No.2を導入して押出被
覆し、ただちに冷却、固化することにより表面に厚み0.
15mmのナイロン６被膜を有する撚線を製造した。

ここで得た撚線は第１図の断面形状を有しており、これ
を毛材No.3とする。

また上記砥剤含有モノフィラメント（毛材No.1）の２本
および別途製造した砥剤粒子を含有しないナイロン６か
らなる直径0.5mmのモノフィラメント２本を上記と同様
の撚線機に供し、75T/mの撚線を製造した。これを毛材N
o.4とする。

一方上記撚線毛材No.4を上記毛材No.3と同様の押出被覆
に供し、表面に厚み0.15mmのナイロン６被膜を有する撚
線を製造した。ここで得た撚線は第２図の断面形状を有
しており、これを毛材No.5とする。

このようにして得た各ブラシ毛材について、次の評価方
法により、湿曲げ硬さ、ブラシとしての研削力、研磨性
および耐久性を評価した。これらの結果を第１表に併せ
て示す。

（湿曲げ硬さ） 長さ50mmの毛材を室温の水中に24時間浸漬後、これを間
隔10mmの二支点間に載せて、その中央部に引き抜き荷重
を与えた際に、試料が湾曲して支点間を抜ける時の最大
荷重（ｇ）を測定する。

（研削力） 上記で得た各ブラシ毛材を直径30cm、幅30cmの基体に、
毛丈5cmで密に植毛して回転ブラシとなし、これを用い
てブラシ回転数1000r.p.m、ラップ量5mmの条件で、鉄板
（SSA1）の表面を５分間研削した際の表面研削量（μ）
を測定する。

（研磨性） 上記の同様の回転ブラシを用いて、ブラシ回転数2000r.
p.m、ラップ量5mmの条件で、アルミ板表面の研磨作業を
行ない、表面鏡度が3Sの研磨仕上げ面が得られるまでの
作業時間（秒）を求める。

（耐久性） 上記と同様の回転ブラシを用いて、ブラシ回転数1000r.
p.m、ラップ量5mmの条件で、鉄板（SSA1）表面の連続研
磨作業を行なう際に、毛材が折損し始めるまでの時間
（hr）を測定する。

第１表の結果から明らかなように、本発明の表面に合成
樹脂層を形成してなるブラシ用毛材（No.3および５）
は、すぐれた作業能率で微細かつ美麗な研磨仕上げ面を
得ることができ、研磨性および耐久性もすぐれている。

一方砥剤粒子含有モノフィラメントの単糸をブラシ毛材
とするもの（No.1）は研磨性が極めて劣り、また撚線の
ままでブラシ毛材に供する場合（No.2および４）は、同
様の研磨面を得るまでの作業能率が劣り、研磨性および
耐久性も満足できるものではない。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明のブラシ用毛材は、研磨性
および耐久性がすぐれ、金属、木材および石材などの各
種被研磨物の表面研磨仕上げにおいて、微細かつ美麗な
仕上げ面を高能率で得ることが可能であるから、種々の
工業用途に適用が期待される。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本発明のブラシ用毛材の拡大断面
図である。 Ａ……砥剤粒子含有モノフィラメント Ｂ……砥剤粒子を含有しないモノフィラメント Ｃ……合成樹脂層

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】砥剤粒子含有合成樹脂モノフィラメントを
   少なくとも１本含む複数本の合成樹脂モノフィラメント
   を撚合わせてなる撚線において、その表面に合成樹脂被
   覆層を設けることにより、前記撚線の表面に合成樹脂被
   膜を形成すると共に、前記各合成樹脂モノフィラメント
   単糸間に前記合成樹脂を充満させることにより、前記各
   合成樹脂モノフィラメント単糸間を前記合成樹脂で接
   合、固定してなることを特徴とする工業ブラシ用毛材。