JPH0734761Y2 - 自動車のシート - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、着座者の尻部を支えるシートクッションと、
背部を支えるシートバックと、該シートバックの上部に
上下動可能に支持されたヘッドレストとを具備し、シー
トクッションとシートバックが車体のフロアパネルに対
して前後方向にスライド可能に支持された自動車のシー
トに関する。

〔従来の技術〕

いかなる身長の者も楽に着座できるように、シートバッ
クとシートクッションを前後にスライドできるように
し、しかも頭部を支えるヘッドレストを上下に調整でき
るように構成した上記形成のシートは従来より周知であ
る。

例えば身長の高い者がシートに着座するときは、足を前
方に大きく伸ばせるように、シートバックとシートクッ
ションを後方にスライドさせる。その際、背丈の高い者
は、座高も高いのが普通であるため、ヘッドレストを上
方に持ち上げ、頭部を適正な位置で支えることができる
ようにする。

逆に身長の低い者が着座するときは、シートバックとシ
ートクッションを前方にスライドさせるが、このときは
着座者の座高が低いのが普通であるため、ヘッドレスト
を下方に下げ、適正な位置で頭部を支え得るようにす
る。

冒頭に記載したシートは、このような要求を満足させる
ことができるものである。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところが従来のこの種のシートにおいては、シートバッ
クとシートクッションを前後にスライドさせる操作とヘ
ッドレストを上下に調整する操作をそれぞれ別々に行わ
なければならず、操作が大変煩しい。例えば、長身者が
座っていたシートに身長の低い者が着座しようとすると
きは、それまで後部位置を占めていたシートバックとシ
ートクッションを前方にスライドさせると共に、ヘッド
レストを下方へ下げなければならない。次に長身者が着
座するときは、再び逆の操作を行わなければならない。

本考案の目的は、上記従来の欠点を除去し、シートバッ
クとシートクッションの前後方向へのスライドに連動し
て、ヘッドレストを自動的に適正な上下位置に調整でき
る冒頭に記載した形式のシートを提供することである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案は上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式
のシートにおいて、ヘッドレストを上方へ向けて付勢す
る加圧部材と、シートクッションとシートバックを最前
部位置へ向けて前方にスライドさせるに従って、ヘッド
レストが前記加圧部材の作用に抗して下方へ移動し、か
つシートクッションとシートバックを最後部位置へ向け
て後方にスライドさせるに従って、ヘッドレストが前記
加圧部材の作用によって上方へ移動するようにヘッドレ
ストとフロアパネル側とを連結する連結手段とを有し、
該連結手段は、上端部が前記ヘッドレストに係止され、
かつ前記シートバックの内部を下方に向けて延びる可撓
性細条部材より成る第１連結部材と、シートバックの内
部を下方に向けて延び、かつ当該シートバックから外部
に出た下端部がアロアパネル側に係止されている可撓性
細条部材より成る第２連結部材と、前記シートクッショ
ンとシートバックを前方又は後方にスライドさせたと
き、そのスライド量よりも小なる移動量を前記ヘッドレ
ストが移動するように、第１連結部材と第２連結部材と
を連結する減速装置とを有し、該減速装置は、前記シー
トバックに対して回転自在に支持され、かつ前記第１連
結部材の下端部が係止されていて、当該第１連結部材を
巻き込むことのできる第１プーリと、該第１プーリと同
心状に配置され、かつ当該第１プーリと一体に回転する
第１ギアと、前記シートバックに対して回転自在に支持
され、かつ前記第２連結部材の上端部が係止されてい
て、当該第２連結部材を巻き込むことのできる第２プー
リと、該第２プーリと同心状に配置され、かつ前記第１
ギアに噛み合って、当該第２プーリと一体に回転する第
２ギアとを有しているシートを提案する。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面に従って詳細に説明する。

第１図に示した自動車のシート１は、着座者の尻部を支
えるシートクッション２と、背部を支えるシートバック
３と、シートバック３の上部に上下動可能に支持された
ヘッドレスト４とを有している。

シートクッション２の底面には一対のアッパレール5,5a
が固定され、該レールは車体のフロアパネル６に不動に
固着された一対のロアレール7,7aにシート１の前後方向
A,Bにスライド可能に嵌合している。このようにしてシ
ートクッション２とシートバック３は、アッパレール5,
5aとロアレール7,7aを有するシートトラックを介して、
車体のフロアパネル６に対して前後方向A,Bにスライド
可能に支持されており、これらを所望する位置にスライ
ドさせて図示していないロック装置によって不動にロッ
クすることができる。

各アッパレール5,5aの上面に一体に突設された耳部8,8a
には、シートバック３の内部を上下方向に貫通して延び
る中空パイプ9,9aの下端部が固定されている。またヘッ
ドレスト４のステー10はほぼ逆Ｕ字形に形成され、その
各端部の小径部11,11aが、中空パイプ9,9aの上部にスラ
イド自在に嵌合している。

ステー10の小径部11,11aの先端には、さらに小径なロッ
ド12,12aが一体に付設され、これらが各中空パイプ9,9a
の内部に位置し、その先端部にワイヤやロープ等の可撓
性細条部材より成る第１連結部材13,13aの上端部が係止
されている（第２図参照）。各第１連結部材13,13aは中
空パイプ9,9a内を下方に延び、径が大きく形成されたパ
イプ部分14,14aに内設された後に詳しく説明する減速装
置20,20aを介して、第２連結部材15,15aに連結されてい
る。各第２連結部材15,15aもワイヤやロープ等の可撓性
細条部材より成り、これらの部材15,15aは中空パイプ9,
9aの下端部から突出し、その下端部がロアレール7,7aに
係留されている。図の例では各第２連結部材15,15aの下
端にリング16,16aが固定され、ここにボルト17,17aが挿
通され、該ボルトがロアレール7,7aにナットによって締
付け固定されている。第２連結部材15,15aの下端部をフ
ロアパネル６に直に固定してもよい。このようにヘッド
レスト４は、第１連結樹委13,13a、減速装置20,20a、及
び第２連結部材15,15aを介してフロアパネル側に連結さ
れている。

上述のように可撓性細条部材より成る第１連結部材13,1
3aは、その上端部がヘッドレスト４に係止され、かつシ
ートバック３の内部を下方に向けて延びており、同様に
可撓性細条部材より成る第２連結部材15,15aもシートバ
ック３の内部を下方に向けて延び、かつこのシートバッ
ク３から外部に出た第２連結部材15,15aの下端部がフロ
アパネル側に係止されている。

ステー10の小径部11,11aの下端面と、各中空パイプ9,9a
の径を絞った絞り部18,18aとの間にはステー10のロッド
12,12aのまわりに巻回された圧縮コイルばね19,19aが圧
装され、これらのばねによってヘッドレスト４が上方に
付勢される。

なお、第１図は説明の便宜上、ヘッドレスト４が最下位
の位置を占め、かつシートクッション２とシートバック
３が最後部位置を占めた状態を示しているが、実際のこ
れらの位置関係は、第５図（ａ），（ｂ）に示すよう
に、シートバック３とシートクッション２が最後部位置
にあるとき、ヘッドレスト４は最上位の位置を占め（第
５図（ａ））、逆にシートバック３とシートクッション
２が最前部の位置を占めると、ヘッドレスト４は最下位
の位置を占める（第５図（ｂ））。これらについては後
に詳しく説明する。

前述の減速装置20は、第３図及び第４図に例示するよう
にパイプ部分14,14a（第１図）の壁部に固定された一対
の軸21,22と、これらの軸21,22に回転自在に支持された
第１及び第２プーリ23,24と、これらのプーリにそれぞ
れ一体化され、かつ各プーリと同心状に配置された第１
及び第２ギア25,26を有し、両ギア25,26は図示するよう
に互いに噛み合っている。このように第１プーリ23はシ
ートバック３に対して回転自在に支持され、かかる第１
プーリ23には、パイプ部分14の壁部に固定されたガイド
ピン27によってガイドされる第１連結部材13の下端部が
係止され、第１プーリ23はこの第１連結部材13を巻き込
むことができる。また第２プーリ24も、上述の如くシー
トバック３に対して回転自在に支持され、かかる第２プ
ーリ24には、パイプ14の壁部に固定されたガイドピン28
によって案内される第２連結部材15の上端部が係止され
ていて、第２プーリ24はこの第２連結部材15を巻き込む
ことができる。第１プーリ23と同心状に配置された第１
ギア25はこの第１プーリ23と一体に回転することがで
き、また第２プーリ24と同心状に配置された第２ギア26
は、第１ギア25に噛み合って、第２プーリ24と一体に回
転することができる。

第１図に示した他側の減速装置20aも、第３図及び第４
図と全く同じ構成を有している。従って第３図及び第４
図には、減速装置20の各要素に対応する減速装置20aの
各要素に、ａを添えた符号をかっこ内に記入し、その説
明は省略することにする（後に説明する第６図も同
様）。

今、身長の高い者がシート１に着座する場合を考える
と、このときは、シートクッション２とシートバック３
を例えば第５図（ａ）に示したように最後部位置にもた
らし、ロック装置によってこれらをその位置にロックす
る。このとき、第１連結部材13,13aは、第３図に示した
ように、第１プーリ23,23aにほとんど巻き付いていない
か、その巻き付き量は少ない。この状態で各第１連結部
材13,13aの上端が係止されたステー10、従ってヘッドレ
スト４が圧縮コイルばね19,19aの加圧力によって第５図
（ａ）のように最上位置に持ち上げられ、しかも第１連
結部材13,13aはばね力で引かれて緊張しているので、ヘ
ッドレスト４は最上位の位置でぐらつくことなく不動に
保持される。

上述のようにシートクッション２とシートバック３を最
後部位置にもたらしたときは、ヘッドレスト４も、身長
の高い着座者の体躯に最も合った最上位の位置を占め、
着座者の頭部を最適状態で保持することができる。

一方、第２プーリ24,24aには、第２連結部材15,15aが第
３図に示したように、巻き付けられ、該連結部材15,15a
はたるみがないように張られ、その下端部がロアレール
7,7aに係留されている。

次に身長の低い者がシート１に着座するときは、ロック
装置のロックを解除してシートクッション２とシートバ
ック３を例えば第５図（ｂ）に示した最前部位置にスラ
イドさせ、これらをロック装置によってこの位置にロッ
クする。このスライド動作時に、フロアパネル側に係止
された第２連結部位15,15aの下端部と、減速装置20,20a
の第２プーリ24,24aとの距離が広がり、これに伴ってこ
のプーリ24,24aに巻き付いた第２連結部材15,15aが解か
れ、プーリ24,24aと第２ギア26,26aが第３図における時
計方向に回転する。これにより、第１ギア25,25aと第１
プーリ23,23aが反時計方向に回転し、第１連結部位13,1
3aが第１プーリ23,23aに巻き込まれる。従って、ステー
10は第１連結部材13,13aによって下方に引かれ、ヘッド
レスト４はばね19,19aの作用に抗して、第５図（ｂ）に
示した最下位の位置に自動的に下降する。すなわち、シ
ートクッション２とシートバック３を前方にスライドさ
せると、ヘッドレスト４は身長の低い者に適した位置に
自動的に下がるのである。勿論、シートクッション２と
シートバック３を、前後の中間位置に停止させたとき
も、ヘッドレスト４を中間の高さ位置に停止させ、保持
することができる。

再びシートクッション２とシートバック３を後方にスラ
イドさせれば、ヘッドレスト４はばね19,19aの加圧力に
よって上方に持ち上がる。このようにシートバック２を
前後にスライドさせると、これに連動してヘッドレスト
４が自動的に上下動し、ヘッドレスト４をその都度操作
する必要はなく、その操作性が著しく向上する。

上述した実施例では、圧縮コイルばね19,19aが、ヘッド
レストを上方に向けて付勢する加圧部材を構成し、第１
連結部材13,13a、第２連結部材15,15a及び減速装置20,2
0aが、シートクッションとシートバックを最前部位置へ
向けて前方にスライドさせるに従って、ヘッドレストが
前記加圧部材の作用に抗して下方へ移動し、かつシート
クッションとシートバックを最後部位置へ向けて後方に
スライドさせるに従って、ヘッドレストが前記加圧部材
の作用によって上方へ移動するようにヘッドレストとフ
ロアパネル側とを連結する連結手段を構成している。図
示した自動車のシート１は、かかる加圧部材と連結手段
を有しているのである。

第１連結部材13,13aと第２連結部材15,15aとの間に減速
装置20,20aを介在させたのは次の理由による。すなわ
ち、シートクッション２の最後部位置から最前部位置ま
での作動ストロークは、例えば195乃至240mm程度に設定
されるの対し、ヘッドレスト４の上下動ストロークは例
えば60mm程度であり、後者の方が小さいのが普通であ
る。そこで両連結部材間に減速装置20,20aを設け、その
ギア25,26;25a,26aのにギア比や、プーリ23,24;23a,24a
の径を適宜設定することによって、シートクッションの
スライド時に、第１及び第２連結部材13,13a;15,15a
を、上述した各作動ストロークに対応した長さだけ、第
１及び第２プーリ23,24;23a,24aに巻き付け、又は解く
ようにしているのである。

このように減速装置20,20aは、シートクッション２とシ
ートバック３を前方又はスライドさせたとき、そのスラ
イド量よりも小なる移動量を前記ヘッドレスト４が移動
するように、第１連結部材13,13aと第２連結部材15,15a
とを連結するものであり、かかる減速装置20,20aによれ
ば、簡単な構成によって減速比を自由に設定できる利点
が得られる。

第１図に示したシートにおいては、中空パイプ9,9aをア
ッパレール5,5aに対して一体に固定し、シートバック３
とシートクッション２とを一体に構成したが、シートバ
ック３をシートクッション２に対して傾動可能に支持し
たときも、本考案を適用できることは当然である。

〔考案の効果〕

本考案によれば、シートクッションとシートバックの前
後方向のスライド動作に連動して、ヘッドレストを自動
的に適正な上下位置に作動させることができ、その操作
性を著しく高めることができる。

しかも、減速装置が設けられているので、シートクッシ
ョンとシートバックを前方又は後方にスライドさせてヘ
ッドレストを上下に作動させたとき、そのヘッドレスト
は、シートクッションとシートバックのスライド量より
も小さな移動量を移動する。これによって、ヘッドレス
トを適正量、上下に作動させることができ、いかなる身
長の着座者に対しても、その頭部をヘッドレストによっ
て常に適正な位置で支えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案一実施例のシートの斜視図であって、そ
の内部構造を明らかにするため、シートクッション、シ
ートバック及びヘッドレストの外形輪郭を鎖線で表わ
し、かつ中空パイプの一部を破断し、一方の第２連結部
材の下端部と耳部との連結部を分離して示した図、第２
図は第１連結部材とステーを分離して示した分解斜視
図、第３図及び第４図は減速装置の説明図、第５図
（ａ），（ｂ）はシートクッションとシートバックのス
ライド動作に伴うヘッドレストの動作を示す説明図であ
る。 １……シート、２……シートクッション ３……シートバック、４……ヘッドレスト ６……フロアパネル、13,13a……第１連結部材 15,15a……第２連結部材、20,20a……減速装置 23,23a……第１プーリ、24,24a……第２プーリ 25,25a……第１ギア、26,26a……第２ギア A,B……前後方向

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】着座者の尻部を支えるシートクッション
   と、背部を支えるシートバックと、該シートバックの上
   部に上下動可能に支持されたヘッドレストとを具備し、
   シートクッションとシートバックが車体のフロアパネル
   に対して前後方向にスライド可能に支持された自動車の
   シートにおいて、 ヘッドレストを上方へ向けて付勢する加圧部材と、シー
   トクッションとシートバックを最前部位置へ向けて前方
   にスライドさせるに従って、ヘッドレストが前記加圧部
   材の作用に抗して下方へ移動し、かつシートクッション
   とシートバックを最後部位置へ向けて後方にスライドさ
   せるに従って、ヘッドレストが前記加圧部材の作用によ
   って上方へ移動するようにヘッドレストとフロアパネル
   側とを連結する連結手段とを有し、 該連結手段は、上端部が前記ヘッドレストに係止され、
   かつ前記シートバックの内部を下方に向けて延びる可撓
   性細条部材より成る第１連結部材と、シートバックの内
   部を下方に向けて延び、かつ当該シートバックから外部
   に出た下端部がアロアパネル側に係止されている可撓性
   細条部材より成る第２連結部材と、前記シートクッショ
   ンとシートバックを前方又は後方にスライドさせたと
   き、そのスライド量よりも小なる移動量を前記ヘッドレ
   ストが移動するように、第１連結部材と第２連結部材と
   を連結する減速装置とを有し、 該減速装置は、前記シートバックに対して回転自在に支
   持され、かつ前記第１連結部材の下端部が係止されてい
   て、当該第１連結部材を巻き込むことのできる第１プー
   リと、該第１プーリと同心状に配置され、かつ当該第１
   プーリと一体に回転する第１ギアと、前記シートバック
   に対して回転自在に支持され、かつ前記第２連結部材の
   上端部が係止されていて、当該第２連結部材を巻き込む
   ことのできる第２プーリと、該第２プーリと同心状に配
   置され、かつ前記第１ギアに噛み合って、当該第２プー
   リと一体に回転する第２ギアとを有していることを特徴
   とするシート。