JP3543962B2 - 車椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、道路、交通機関、公共施設等におけるバリヤフリーのインフラが整備されるとともに、使いやすい車椅子等が提供されるようになったことから、高齢者や身体障害者が自由に活動できる範囲が急速に広がりつつある。しかし、活動範囲の拡大は乗員が車椅子に長時間連続して座り続けることとなる。ところが、車椅子に座り続けた状態が長時間続くと、臀部、大腿部の圧迫により血行障害を起こすという問題があった。そこで、長時間車椅子に乗る場合は、ときどき、肢を伸ばしたり上半身を横にすることができるように、車椅子のステップ部材を上げたり背凭れ部材を倒すことができるようにした車椅子が種々提案されている。しかし、座フレームにステップ部材や背凭れ部材の端部を直接枢着したものでは、着座したときステップ部材や背凭れ部材の枢着点より乗員の膝や腰の関節は上方に位置するため、ステップ部材を上げて水平にした場合、その長さは肢より短くなって乗員は膝を屈曲させなければならない。そこで、ステップ部材の枢着点を膝の関節位置に上げるため、座フレームに枢着点を上げるためのフレームを設けて、肢の長さと同じになるようにした車椅子も提案されているが、枢着点を上げるためのフレームが座フレームに取り付けられるため、乗員が車椅子に乗り降りする際、アームレストを上げたり取り外してもフレームが邪魔をして円滑な乗り降りが難しくなるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は膝を屈曲させることなく肢を伸ばすことができるうえに乗り降りが邪魔されることのない車椅子を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成するため本発明は、ステップ部材を乗員の膝が屈曲されないように起こす枢動機構を備え、該枢動機構が、座フレームに枢着されるステップ部材の枢動杆と、該枢動杆に伸縮自在に嵌挿されるステップ付きのガイド杆と、前記ガイド杆に先端を枢着させるとともに他端を動作制御機構に連繋させた押出杆と、ステップ部材を常時短縮方向に付勢する引きばねとからなるものとした車椅子を請求項1の発明とし、請求項1の発明において、枢動機構が電動の動作制御機構により作動される車椅子を請求項2の発明とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
1は角枠状のフレーム本体であり、該フレーム本体1は折り畳み自在なシートを張架させた座フレーム1aと、脚フレーム1bと、下部フレーム1cとからなる。そして、フレーム本体1には左右一対のステップ部材2と折り畳み自在な背凭れシートを張架した背凭れ部材3が取り付けられるとともに、左右のアームレスト4が側方を開放できるように上下枢動自在に枢着されている。背凭れ部材3は後記するリクライニング機構23を介してフレーム本体1に取り付けられる。また、脚フレーム1bにはキャスター5が取り付けられる。6は電動モータ7により駆動される主車輪であり、該主車輪6は下部フレーム1cに着脱自在に設けられたベースプレート6aに電動モータ7を介して取り付けられるものである。
【0006】
前記ステップ部材2は枢動機構8を介して上下枢動と伸縮とが同時に行われるもので、ステップ部材2を起こす際、乗員の肢長とずれが生じて膝が屈曲されないようにステップ部材2を伸長させるものである。枢動機構8は電動式の動作制御機構9により作動される。ステップ部材2の枢動機構8をさらに具体的に説明すれば、枢動機構8は座フレーム1aの先端に枢着される左右一対のステップ部材2の枢動杆10と、該各枢動杆10に伸縮自在に嵌挿されるステップ部材2のステップ付きのガイド杆11と、該各ガイド杆11に先端を枢着させるとともに他端を動作制御機構9に連繋させる左右一対の押出杆12とからなるものである。押出杆12と動作制御機構9との連繋は左右一対の逆L形リンク13と、連動杆15と、連動杆15のリンク16を介して行われるものである。前記各逆L形リンク13は一端を押出杆12の基端に枢着し、他端を座フレーム1aのガイド溝14にピンをもってスライド自在に係合させるとともに、その中間部を連動杆15により連結したものである。該連動杆15には電動式の動作制御機構9の駆動杆9aを枢着連繋させるリンク16が設けられている。また、14aはガイド溝14に係合されるピンに設けられるニードルベアリングである。
【0007】
また、17はステップ部材2と背凭れ部材3の連動を停止させてステップ部材2の停止角度を変更する角度設定機構であり、該角度設定機構17はステップ部材2と背凭れ部材3とが同じ動作制御機構9を用いているため生じる両者の連動動作を停止させ、背凭れ部材3の復帰動作のみを継続させてステップ部材2の復帰動作を途中で停止させることによりステップ部材2の復帰位置(停止角度)を調整するものである。角度設定機構17の具体的な構造は、二重管構造となる押出杆12の外筒12aと、脚フレーム1bに枢着されて外筒12aをスライドガイドするガイド筒18と、外筒12aに位置調整自在に取り付けられてガイド筒18に当接して外筒12aの後退を停止させるストッパ19と、基端が逆L形リンク13に枢着され、外筒12aにスライド自在に嵌挿される内筒12bと、外筒12aと逆L形リンク13間に設けられる引きばね20とからなるものである。ストッパ19は外筒12aの後退によりガイド筒18に当接し、外筒12aの後退を停止させるものである。また、引きばね20は外筒12aと内筒12bとを常時短縮方向に付勢するとともに、一端を外筒12aに位置調整自在に固定されるストッパ20aに係止させることによりばね力を調整自在としている。21はガイド杆11と並設されるステップ取付杆、22はステップ取付杆21に着脱自在に取り付けられるステップである。22aはステップ部材2に設けられる引きばねであり、該引きばね22aはガイド杆11の下端と枢動杆10の上端に係止されて、ステップ部材2を常時短縮方向に付勢するものである。
【0008】
また、前述した背凭れ部材3はリクライニング機構23によりリクライニングが行われるもので、該リクライニングは背凭れ部材3が乗員の頭部位置とずれないように後方に大きく移動するように行われるものである。リクライニング機構23は前記枢動機構8を駆動する電動式の動作制御機構9により作動されるものである。背凭れ部材3のリクライニング機構23の具体的な構造は、座フレーム1aの中間に一端が枢着され他端が背凭れ部材3に枢着される左右一対の略L型プレート24と、頂部を略L型プレート24と同軸をもって背凭れ部材3に固定し、下部を座フレーム1aのガイド溝14にピンをもってスライド自在に係合させるとともに下部の他方は動作制御機構9と連繋される左右一対の略三角形の傾動プレート25とからなるものである。また、傾動プレート25の他方の下部は連動杆15をもって逆L形リンク13と連結されるとともに連動杆15のリンク16を介して電動式の動作制御機構9の駆動杆9aと連繋されるものとしている。略L形プレート24と背凭れ部材3との枢着点を座面より上方に位置させるほど、背凭れ部材3は後方への移動量が増すこととなる。
【0009】
なお、26は車椅子の前後進およびステップ部材2の上下枢動と伸縮、背凭れ部材3のリクライニングと伸縮等を制御するコントローラ、27はベースプレート6に取り付けられる補助車輪であり、該補助車輪27は背凭れ部材3を水平に倒した際、車椅子が後方に転倒することを防止するためのものである。28は補助車輪27を取り付けた水平杆27aと下部フレーム1b間に設けられるショックアブソーバであり、該ショックアブソーバ28は車椅子のキャスタ5のリフト操作を阻害させないためのものである。29は引きばね20の他端と押出杆12の内筒12bを取り付けるため逆L形リンク13に設けられるボス、30は動作制御機構9の基部を枢動自在に取り付けるための取付部、31はアームレスト4の枢軸である。
【0010】
このように構成されたものは、乗員はフレーム本体1の座フレーム1aに張架されるシート上に座り、コントローラ26のノブを操作して前後進を行なって目的地に移動することは従来と同様であるが、車椅子に長時間座り続け、臀部、大腿部等が圧迫され血行障害を起こす恐れがあると感じた場合は、乗員はコントローラ26の操作スイッチをオンにして、動作制御機構9の駆動杆9aを図1の状態から後退させる。
【0011】
動作制御機構9の駆動杆9aの後退にともない駆動杆9aと枢着されているリンク16が取り付けられた連動杆15は図1において左方に前進移動することとなる。連動杆15の前進により、逆L形リンク13と連繋されるステップ部材2の枢動機構8の押出杆12も同時に前進移動(図1において左方)することとなる。そして、ガイド筒18の案内下に前進移動する押出杆12により、座フレーム1aの先端に枢着されたガイド杆11は略垂直状態から水平状態に枢動されてゆくこととなる。このとき、枢動杆10の上端は座フレーム1aに枢着されているので、押出杆12の前進により枢動杆10に嵌挿されるガイド杆11はスライドして伸長されてゆくこととなる。このため、ステップ22に掛けられている乗員の肢は屈曲されることなく水平に伸ばされてゆくこととなる。
【0012】
連動杆15の前進移動によりにリクライニング機構23の傾動プレート25と逆L形リンク13も前進移動することとなり、この前進移動により背凭れ部材3はリクライニングされることとなる。このリクライニングは後方に大きく移動するので、背凭れ部材3に取り付けられる図示しないヘッドレスト位置も後方に移動し乗員の頭部位置とヘッドレスト位置とがずれることがない。このように肢を伸ばすことにより、臀部、大腿部等への圧迫は低減されるので、血行障害を解消することができる。このように水平に伸ばされた背凭れ部材3とステップ#部材3を元に戻す際には、コントローラ26の前記とは逆の操作を行なうスイッチを押して動作制御機構9を逆動作させれば、枢動機構8やリクライニング機構23は前記とは逆の動作を行ない旧状に自動的に復帰することとなる。
【0013】
また、ステップ部材2は水平になった状態から元の略垂直状態に戻す際、角度調整機構17のストッパ19をガイド筒18より前方に張出している押出杆12の適宜位置に移動させたうえ、締付ボルト19aを締付してストッパ19を固定すれば、後退する押出杆12は固定されたストッパ19がガイド筒18に当接することにより停止されるので、ステップ部材2は停止された位置の傾斜をもつこととなる。このようにしてステップ部材2の角度を変えれば、乗員は最も楽な姿勢を簡単に得ることができる。
【0014】
なお、前記好ましい実施の形態では、背凭れ部材3とステップ部材2とを連動させたものとしているが、動作制御機構9を二つ設けて背凭れ部材3とステップ部材2とを別々に作動させるものとしてもよい。また、動作制御機構9を枢動機構8にのみ連繋させたものとして、ステップ部材2のみを作動させてもよいことはいうまでもない。また、動作制御機構9を電動により作動されるものとしているが、ステップ部材2をばねにより付勢させたものとして手動によりに操作されるものとしてもよいことは勿論である。
【0015】
【0016】
【発明の効果】
本発明は前記説明によって明らかなように、ステップ部材を乗員の膝が屈曲されないように起こす枢動機構を備え、該枢動機構が、座フレームに枢着されるステップ部材の枢動杆と、該枢動杆に伸縮自在に嵌挿されるステップ付きのガイド杆と、前記ガイド杆に先端を枢着させるとともに他端を動作制御機構に連繋させた押出杆と、ステップ部材を常時短縮方向に付勢する引きばねとからなるものとすることにより、乗員は膝を屈曲させることなく肢を真っ直ぐに伸ばすことができる。また、枢動機構によって伸ばされた乗員の肢の長さ分ステップ部材を伸ばすことができるので、従来では必要となった枢着点を上げるためのフレームが不要となり、車椅子の側方はフレームに邪魔されることがなく開放できるので、乗り降りは極めて容易に行なうことができる。さらに枢動機構は簡単な構造で信頼性が高く安価に提供できる。請求項2のように、枢動機構が電動の動作制御機構により作動されるものとすれば、より重度の障害がある乗員でも他人の手を借りることなく肢を自由に伸ばすことができる等種々の利点を有するものである。
従って、本発明は従来の問題点を解消した車椅子として業界の発展に寄与するところ大なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態に用いられるリクライニング機構の要部を示す一部切欠側面図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態に用いられる枢動機構の要部を示す一部切欠背面図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態に用いられる枢動機構の要部を示す一部切欠側面図である。
【図5】本発明の好ましい実施の形態のリクライニング状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1a 座フレーム
2 ステップ部材
8 枢動機構
9 動作制御機構
10 枢動杆
11 ガイド杆
12 押出杆
Claims (2)
- ステップ部材を乗員の膝が屈曲されないように起こす枢動機構を備え、該枢動機構が、座フレームに枢着されるステップ部材の枢動杆と、該枢動杆に伸縮自在に嵌挿されるステップ付きのガイド杆と、前記ガイド杆に先端を枢着させるとともに他端を動作制御機構に連繋させた押出杆と、ステップ部材を常時短縮方向に付勢する引きばねとからなるものとしたことを特徴とする車椅子。
- 枢動機構が電動の動作制御機構により作動される請求項1に記載の車椅子。
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JP2001108850A JP3543962B2 (ja) | 2001-04-06 | 2001-04-06 | 車椅子 |
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2001
- 2001-04-06 JP JP2001108850A patent/JP3543962B2/ja not_active Expired - Lifetime
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