JPH0733875A - 高結晶性ポリイミドパウダー及びその製造方法 - Google Patents

高結晶性ポリイミドパウダー及びその製造方法

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JPH0733875A
JPH0733875A JP19905593A JP19905593A JPH0733875A JP H0733875 A JPH0733875 A JP H0733875A JP 19905593 A JP19905593 A JP 19905593A JP 19905593 A JP19905593 A JP 19905593A JP H0733875 A JPH0733875 A JP H0733875A
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polyimide
polyimide powder
powder
solvent
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Yasuhisa Nagata
康久 永田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 黒鉛化度の高い炭素質微粒子を製造するため
に適した前駆体物質として使用することができ、また、
プラスチック成形用の新規な充填材料として使用するこ
とができる高結晶性ポリイミドパウダー、その製造法を
提供する。 【構成】 ポリアミド酸を良溶媒中に溶解して、対数粘
度が0.1〜10dl/gで、固形分濃度が50重量%
以下であるポリアミド酸溶液とし、該ポリアミド酸溶液
を真空下あるい大気圧以上の加圧下で、100℃〜40
0℃の温度で加熱処理して、溶媒中にポリイミド粒子を
沈澱させ、この溶媒中からポリイミドパウダーを直接採
取する。得られたポリイミドパウダーは、下記の一般式
で示され、平均粒子径が200μm以下であり、X線回
折によるポリマーの結晶化度が50%以上の高結晶性で
ある。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い結晶性を特徴とす
る粒子状のポリイミド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリイミド樹脂は、その優れた耐熱性、
耐摩耗性、耐薬品、電気絶縁性、機械的特性から、電気
・電子材料、接着剤、塗料、複合材料、繊維あるいはフ
ィルム材料等に広く使用されている。
【0003】一般に、ポリイミドは、有機溶媒中でテト
ラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを重付加反応さ
せ、前駆体ポリマーである高分子量のポリアミド酸を製
造し、更にこのポリアミド酸を脱水・閉環反応させポリ
イミドに変換させることで得られる。ポリイミド成形体
を製造するには、前駆体ポリマーであるポリアミド酸の
状態では有機溶媒に可溶なため、このポリアミド酸溶液
よりフィルム等の成形品を賦形した後、溶媒を除去し、
さらにこの成形品を高温処理あるいは化学的処理により
脱水・閉環反応を進め、ポリイミド化を完結させること
により耐熱性と機械的性質に優れた成形品を得ていた。
【0004】また、ポリアミド酸の溶液中において脱水
剤を用いて化学的イミド化することにより、ポリアミド
酸の溶液を粒子状のポリイミドに変換し、これを成形用
のポリイミドパウダーとする提案が、例えば、米国特許
第3,249,588号明細書、特開昭61−9502
9号公報、特開昭61−250030号公報等に示され
ている。
【0005】このような成形用のポリイミドパウダーを
成形用樹脂として用いる場合、高温成形時にポリイミド
パウダーの粒子同士が流動・融着し、成形品として一体
化することが必要で、このような目的のためにはポリイ
ミドパウダーの結晶性は低いことが望まれた。例えば、
前記特開昭61−250030号公報に示されているよ
うに、成形用樹脂とするためにはX線回折より求められ
たポリイミドの結晶化度は15%より小さいことが必要
とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来、
ポリイミドパウダーに関する技術においては結晶化度の
大きいものを得ようとする要望はなく、結晶化度50%
以上の高結晶性のポリイミドパウダーを得た報告はなさ
れていない。
【0007】本発明においては、黒鉛化度の高い炭素質
微粒子が、新規炭素質材料として、電極材料、記録材
料、電磁波シールド材料、高導電性材料、高温用半導体
材料、紫外線劣化防止材料、ブレーキ材料、高温用潤滑
材料、核融合材料、発熱体材料、放射性廃棄物固定材
料、レーザー等の光学材料、エレクトロニクス素子材料
等の各種の応用分野に利用可能性があることに着目し
た。そして、そのような黒鉛化度の高い炭素質微粒子を
製造するために適した前駆体物質として、焼成前の新規
なポリイミドパウダーを得ることを課題とし、そのため
に本発明は、結晶化度の高いポリイミドパウダーを得る
ことを目的とする。
【0008】また本発明は、プラスチック成形用の新規
な充填材料として、例えば、高強度プラスチック成形用
の高剛性充填材料として、あるいは、高精密成形用等の
充填材として利用が期待できる結晶化度の高いポリイミ
ドパウダーを得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記式(1)
で示されるポリイミドであり、平均粒子径が200μm
以下であり、且つX線回折によるポリマーの結晶化度が
50%以上であることを特徴とする高結晶性ポリイミド
パウダーである。
【0010】
【化3】 また本発明は、下記の一般式で示されるポリイミドであ
り、平均粒子径が200μm以下であり、X線回折によ
るポリマーの結晶化度が50%以上であり、且つポリイ
ミド分子で構成された結晶質の平面単位が、粒子の中心
より放射状に成長・配列し、多孔質状粒子となったもの
であることを特徴とする高結晶性ポリイミドパウダーで
ある。
【0011】
【化4】 本発明のポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水
物と芳香族ジアミンの重付加反応で得られたポリアミド
酸を前駆体ポリマーとして、これを脱水・閉環反応させ
ることにより製造されたものである。
【0012】本発明の高結晶性ポリイミドパウダーの製
造方法は、ポリアミド酸を良溶媒中に溶解して、対数粘
度が0.1〜10dl/gで、固形分濃度が50重量%
以下であるポリアミド酸溶液とし、該ポリアミド酸溶液
を真空下あるい大気圧以上の加圧下で、100℃〜40
0℃の温度で加熱処理して、溶媒中にポリイミド粒子を
沈澱させ、この溶媒中からポリイミドパウダーを直接採
取することを特徴とする。
【0013】また本発明の高結晶性ポリイミドパウダー
の製造方法は、ポリアミド酸を良溶媒中に溶解して、対
数粘度が0.1〜10dl/gで、固形分濃度が50重
量%以下であるポリアミド酸溶液とし、該ポリアミド酸
溶液を真空下あるい大気圧以上の加圧下で、100℃〜
300℃の温度で加熱処理して、溶媒中にポリイミド粒
子を沈澱させ、この溶媒中からポリイミドパウダーを直
接採取し、該ポリイミドパウダーをさらに500℃を越
えない温度で熱処理することを特徴とする。
【0014】本発明において、高結晶性のポリイミドパ
ウダーを作製するために、ポリアミド酸を前駆体ポリマ
ーとして用い、ポリアミド酸溶液を加熱処理することで
ポリイミドパウダーを作製する方法は、製造方法の簡便
さあるいはエネルギーコスト等において有利である。良
溶媒に溶解したポリアミド酸は均一なポリマー溶液を与
える。このポリアミド酸の均一溶液中で主に加熱による
脱水・閉環反応を進めアミド酸をイミドに転化すること
で、イミド化に伴う溶媒への不溶化と共に、結晶化も容
易に進み、高結晶性のポリイミドパウダーとして溶液よ
り直接分離することができる。
【0015】本発明の高結晶性ポリイミドパウダーの製
造方法においては、ポリマーの種類やポリイミドパウダ
ーの製造条件により、本発明の高結晶性ポリイミドパウ
ダーの形態は種々変化する。主にその構造は、ポリイミ
ド分子で構成された結晶質の平面単位が、粒子の中心よ
り放射状に結晶化して成長・配列し、全体として多孔質
化した粒子構造となり、表面積が大きく剛性が高い粒状
物となる。この粒状物は、このような高結晶性で且つ剛
性が高いため、ポリマーの充填材として有用である。
【0016】また、本発明の高結晶性ポリイミドパウダ
ーは、これをさらに熱分解させることにより、ウィスカ
ー状あるいは鱗片状の炭素質平面構造が集まって、この
炭素質平面構造が微粒子の中心から放射状に配列した状
態の多孔質状の炭素質微粒子となる。この炭素質微粒子
は、使用したポリマーの種類、及び製造方法によって種
々の特殊形状の炭素質パウダーに転化させることができ
る。
【0017】本発明で使用される前駆体ポリマーとなる
ポリアミド酸の重合方法は、従来の公知の方法を適用す
ることができる。
【0018】本発明の高結晶性ポリイミドパウダーの製
造方法においては、ポリアミド酸は、芳香族テトラカル
ボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重付加反応によって
得られる。
【0019】ポリアミド酸のモノマー成分:ポリアミド
酸のモノマーとして用いられる芳香族テトラカルボン酸
二無水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸
二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカル
ボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテト
ラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニ
ルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6
−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、
ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水
物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二
無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸
二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボ
ン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカ
ルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラ
カルボン酸二無水物などであり、単独または二種以上の
混合物で用いることができる。
【0020】この中でも、テトラカルボン酸二無水物と
して、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラ
カルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物の単独または二種以上の混合物で用いることが、結
晶性の高いポリイミドパウダーを得る上では好ましい。
【0021】芳香族テトラカルボン酸二無水物と反応さ
せる芳香族ジアミンの代表例としては、メタフェニレン
ジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミ
ノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニル
メタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,
4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジア
ミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニ
ルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジ
アミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェ
ニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、
3,3’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ビス
(4−アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、3,
3’−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノピリジ
ン、2,5−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリ
ジン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]
スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニ
ル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フ
ェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキ
シ)フェニル]エーテル、2,2’−ビス[4−(4−
アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビ
ス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパ
ン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニ
ル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,
2’−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]
ヘキサフロロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、
2,6−ジアミノナフタレン及びこれらの誘導体等が挙
げられる。また、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒド
ラジド化合物も使用できる。これらは、単独または二種
以上の混合物で用いることができる。
【0022】この中でも、芳香族ジアミンとして、メタ
フェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、ジアミ
ノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ベ
ンジジン誘導体の単独または二種以上の混合物で用いる
ことが、結晶性の高いポリイミドパウダーを得る上では
好ましい。
【0023】本発明においては、モノマー成分として少
量の多価アミンを用いても構わない。多価アミンとは、
ひとつの分子構造中に三個以上のアミノ基及び/または
アンモニウム塩基を有する化合物を示す。
【0024】多価アミンの代表としては、3,3’,
4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,
3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、3,
3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,
3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、
3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1,
2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4−ト
リアミノジフェニルエーテル、3,3’,4−トリアミ
ノジフェニルメタン、3,3’,4−トリアミノベンゾ
フェノン、3,3’,4−トリアミノジフェニルスルホ
ン、3,3’,4−トリアミノビフェニル、1,2,4
−トリアミノベンゼン及びこれらの化合物の官能基を第
四アンモニウム塩の形に変えた化合物類、例えば3,
3’,4,4’−テトラアミノビフェニル・四塩酸塩等
が挙げられる。第四アンモニウム塩としては塩酸塩の他
に、p−トルエンスルホン酸塩、ピクリン酸塩の形で用
いることもできる。これらの化合物の中には、多価アミ
ンの官能基の全てが第四アンモニウム塩の形でないもの
も含まれる。また、上記物質の中には水和物として存在
しているものもあり、これらの多価アミン類は単独また
は二種以上の混合物で用いることができる。
【0025】多価アミンの使用量としては、芳香族テト
ラカルボン酸二無水物100モルに対して2〜25モル
の範囲内が好ましい。
【0026】反応溶媒:芳香族テトラカルボン酸二無水
物と芳香族ジアミンの反応において用いられる有機溶媒
は、反応に対して不活性であると同時に、使用するモノ
マー類及び重合された高分子量物を溶解させる性質を有
することが必要で、代表的なものとして、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、
N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセ
トアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピ
ロリドン、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ヘ
キサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホ
ン、テトラメチレンスルホン、クレゾール、フェノー
ル、キシレノール、o−クロロフェノール等のフェノー
ル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリ
ル、ジオキサン、シクロヘキサン、ニトロベンゼン等が
挙げられる。これらの溶媒は、単独または二種以上混合
して使用される。これらは、ポリアミド酸の良溶媒であ
る。
【0027】反応に用いられる溶媒の量は、モノマーの
仕込み量が溶液全体に対して5〜50重量%の濃度にな
るように調製することが望まれる。重合終了後は希釈に
より、ポリアミド酸溶液の固形分濃度を5重量%以下に
しても構わない。
【0028】ポリアミド酸の生成反応:芳香族テトラカ
ルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重付加反応におい
て、この反応はテトラカルボン酸二無水物とアミン類と
の反応であり、調製方法としては、窒素ガスのような不
活性雰囲気下、芳香族ジアミンを有機溶媒で溶解させた
溶液中にテトラカルボン酸二無水物を加えればよい。
【0029】テトラカルボン酸二無水物は、固形で加え
ても、溶媒で溶解させた液状で加えても良い。テトラカ
ルボン酸二無水物に、芳香族ジアミンを加える方法でも
構わない。
【0030】芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族
ジアミンを主成分としたポリアミド酸は、有機溶媒中、
−20〜50℃の温度条件下、特に好ましくは−5〜3
0℃の温度範囲で反応させて得ることが好ましい。反応
時間は通常5時間以内、好ましくは2時間以内である。
【0031】反応温度が−20℃より低い場合は、取扱
性や反応方法の難しさに加え、温度が低過ぎるため反応
自身が充分に進まない場合があり、好ましくない。
【0032】反応温度が50℃を越える場合は、有機溶
媒中の微量な水分によって芳香族テトラカルボン酸二無
水物の加水分解が早く進行し、所望の分子量のポリアミ
ド酸が得られない場合がある。
【0033】従って、ポリアミド酸成分の反応温度は、
−20〜50℃の温度条件下、特に好ましくは−5〜3
0℃の温度範囲で反応させることが好ましい。
【0034】一般に、テトラカルボン酸二無水物と芳香
族ジアミンからポリアミド酸を調製する場合、分子量を
上げるために両成分をできる限り等モルで反応させるこ
とが好ましいが、分子量をコントロールする上で両成分
のモル比が必ずしも等モルにならなくても良い。一般に
は、テトラカルボン酸二無水物とアミン類の反応基の当
量比(酸価/アミン価の比)を0.95〜1.05の範
囲内(±5%以内)に合わせることで、適度な分子量の
ポリアミド酸が調製できる。
【0035】このような方法で対数粘度が、0.1〜1
0dl/gの範囲内のポリアミド酸が作製できる。
【0036】モノマー成分の一種に少量の多価アミンを
用いた系では、ポリアミド酸成分の三次元網目構造が形
成されゲル化を起こし、最終的には有機溶媒を含んだポ
リアミド酸の高分子ゲルを与えるものもあるが、この場
合でもポリアミド酸溶液と同様に後処理することで高結
晶性のポリイミドパウダーが作製できる。
【0037】これらの芳香族テトラカルボン酸二無水
物、芳香族ジアミンあるいは少量の多価アミン成分は、
それぞれ単独または二種以上の混合物で用いられるた
め、得られるポリマーは共重合体のものを含む。また、
特定の成分から成るポリアミド酸と、このポリアミド酸
の構成成分の少なくとも一種類が異なるポリアミド酸を
混合した、ポリアミド酸のブレンド物も含まれ、ポリイ
ミドの前駆体ポリマーとして用いられる。
【0038】ポリイミドパウダーの調製:有機溶媒中で
の重付加反応により得られたポリアミド酸溶液は、真空
下あるいは大気圧以上の加圧下で、100℃〜400℃
の温度で、10秒以上加熱処理することにより、アミド
酸がイミドに転化し、平均粒子径200μm以下のポリ
イミドパウダーを容易に得ることができる。
【0039】しかしながら、上記のようにポリアミド酸
の良溶媒中で加熱処理によりパウダー化させる方法で
は、平均粒子径が200μmを越えるような粒子系の大
きい高結晶性のポリイミドパウダーを作製することは難
しい。これに対して、ポリアミド酸の貧溶媒をポリアミ
ド酸溶液に加え、ポリアミド酸成分を凝固・沈殿させた
後にイミド化させる方法や、ポリアミド酸溶液にアミン
類を触媒として酸無水物を脱水剤として加え、化学的イ
ミド化によりポリイミドパウダーを調製する方法によ
り、平均粒子径が200μmを越えるポリイミドパウダ
ーを調製することは可能であるが、このような場合には
ポリイミドの結晶化が抑えられ、X線回折によるポリマ
ーの結晶化度が50%以上の高結晶性ポリイミドパウダ
ーを得ることは難しい。
【0040】ポリアミド酸を構成するアミド酸基が、加
熱による脱水・閉環反応を起こし、イミド基へ転化する
ためには、ポリアミド酸溶液に少なくとも100℃以上
の熱履歴を与える必要がある。加熱のための昇温速度は
任意に設定できるが、得られたポリイミドパウダーの粒
子径分布を小さくするためには20℃/分以下の昇温速
度が望ましい。
【0041】ポリアミド酸溶液の固形分濃度が低い場合
は、熱処理中にポリアミド酸の分解が進み、ポリイミド
パウダー得られない場合がある。また、固形分濃度が低
い場合は粒子径が小さくなる傾向になる。粒子径の大き
なポリイミドパウダーを得ようとする場合は、固形分濃
度が高い方が好ましい。固形分濃度が50重量%を越え
ると取扱性が悪くなる他、得られたパウダーの結晶化度
が低下する傾向となるので好ましくない。
【0042】ポリアミド酸溶液の加熱処理は、操作性の
問題などから100℃〜400℃の温度範囲で行なわれ
るが、好ましくは150℃〜250℃の温度が望まれ
る。加熱処理温度が100℃以下では、イミドに転化す
るまでにかなりの時間を要し、効率的に好ましくない。
400℃を越える場合は加圧容器中で処理を行なう必要
があり、装置上の問題がある。この加熱処理は、窒素ガ
スのような不活性ガスの雰囲気下で行なってもよい。
【0043】ポリアミド酸溶液の加熱処理時に、溶液を
撹拌しても構わない。イミド化に伴いポリイミドがパウ
ダーとして溶液中に沈降してくるが、この際に撹拌処理
を行なうことにより、比較的粒子径の揃ったポリイミド
パウダーを得ることができる。また、ポリイミド酸の重
付加反応とイミド化を同時に行なわせることを目的とし
て、100℃以上の温度の溶媒中でモノマー同志を反応
即イミド化させることも可能であるが、ポリマーの分子
量が上がりにくく、収率も低下するので好ましくない。
【0044】良溶媒中で加熱処理されたポリアミド酸
は、イミド化にともない沈殿物となってパウダー状で溶
液中に析出してくる。析出したポリイミドパウダーは、
ろ過等の方法により溶媒と分離し採取することができ
る。場合によっては、水やエタノール等のアルコール
類、アセトン等のケトン類、及びエーテル類によって洗
浄した後に乾燥し、採取することができる。
【0045】乾燥したポリイミドパウダーは、更に50
0℃を越えない温度で熱処理してイミド化を完結させる
こともできる。熱処理時間は任意に設定できるが、好ま
しくは300℃〜400℃の温度範囲内で30分間以上
処理することが、高結晶性ポリイミドパウダーとする上
で好ましい。熱処理によりパウダー同士が接着し固まっ
た場合は、機械的処理により粉砕すれば良い。
【0046】このような処理により得られたポリイミド
パウダーは高結晶性であり、その形態はポリイミドの化
学構造やパウダーの調製条件により種々変化する。パウ
ダーの粒子径は0.1〜100μmの範囲内に入るもの
が多く、多少の分布を持っている。個々の粒子の構造
は、球状から棒状まで様々である。特定の化学構造のポ
リイミドでは、ポリイミド分子で構成された結晶質の平
面単位が、粒子の中心より放射状に成長・配列し多孔質
化した構造となるものもあり、ポリイミドを構成する分
子の化学構造やパウダーの調製条件によっても変化し、
その構造は多岐に渡る。
【0047】ポリイミドのモノマー成分として、ピロメ
リット酸二無水物とパラフェニレンジアミンの組合わせ
から得られたポリイミドパウダーは、主に平均0.5μ
m程度の棒状の粒状物が凝集したものであることが、パ
ウダーの電子顕微鏡観察より確認されている。
【0048】ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジア
ミノジフェニルエーテルの組合わせから得られたポリイ
ミドパウダーは、厚さ0.1μm程度の平板上の構造体
が粒子の中心より放射状に成長・配列し多孔質化した平
均粒子径10μm程度の粒状物を主とするものである。
【0049】3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンの組合わせ
から得られたポリイミドパウダーは、厚さ0.1μm程
度の平板上の構造体が粒子の中心より珊瑚礁のように放
射状に成長・配列し多孔質化した平均粒子径15μm程
度の粒状物を主とするものである。
【0050】これら粒状のパウダーの形状は一定のもの
ではなく、上記構造が変形したものも含まれる。これら
は、結晶性が高い他、比表面積も大きく、このような構
造のポリイミドパウダーは新規性が高く工業的利用価値
も高いものである。
【0051】第三成分:ポリイミドパウダーの中には、
セラミックス,グラファイト等の無機物の微粉体、金属
あるいは金属化合物の微粉体、低分子有機化合物、高分
子化合物等を含ませることができる。
【0052】これらの第三成分が含まれた高結晶性のポ
リイミドパウダーの調製方法は、ポリアミド酸溶液に第
三成分を混合後、混合溶液の状態で熱処理することによ
り容易に調製することができる。
【0053】微粉状の無機物、金属、金属酸化物、ある
いはポリマー等の有機物を添加した場合、パウダー化す
る際の核となって働き、粒子径の大きいパウダーを形成
させる場合もある。
【0054】第三成分としての高分子化合物には、他種
のポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミ
ド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリベンゾ
イミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチ
アゾール、ポリアミド、アラミド、ポリエステルの中か
ら選ばれた少なくとも一種類の高分子量成分を用いるこ
とが可能である。高分子化合物の配合量は、配合させる
高分子量成分の種類にもよるが、全体の1〜50重量%
が好ましい。ただし、混合により最終的に得られたポリ
イミドパウダーの結晶化度が50%以下にならないこと
が必要である。
【0055】これらの高分子量成分は、種々のポリマー
の変性物、共重合体、前駆体ポリマー、オリゴマーを含
み、前駆体ポリマーやオリゴマーの場合は、複合させた
後の硬化反応等により更に高分子量化させる方法でも構
わない。これらは単独または二種以上の混合物で用いる
ことができる。
【0056】本発明は、結晶化度50%以上の高結晶性
ポリイミドパウダーを与えるものである。これらは表面
積が大きく剛性が高いため、ポリマーの充填材として有
用な他、熱分解させることでウィスカー状あるいは鱗片
状の特殊な形状で且つ比表面積が大きく黒鉛化度の高い
炭素質パウダーに転化させることができ、前駆体ポリマ
ーとしても有効である。
【0057】
【実施例】
〔実施例1〕300mlの四つ口セパラブルフラスコ中
に、2.162g(0.02モル)の精製したパラフェ
ニレンジアミン(略称:PPD)を採取し、52.8g
の蒸留されたN−メチル−2−ピロリドン(略称:NM
P)を加え、撹拌し溶解させた。
【0058】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を15℃
にコントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.366
g(0.02モル)の精製した無水のピロメリット酸二
無水物(略称:PMDA)を固形のまま、溶液の温度が
上らないように注意しながら徐々に添加し、全て加え終
った後、撹拌を続け均一なポリアミド酸溶液を調製し
た。ポリアミド酸の対数粘度は3.0dl/gであった
(濃度:0.2g/dlにて測定)。
【0059】このポリアミド酸溶液を密閉式のガラス容
器に移し、200℃で1時間熱処理した。ポリアミド酸
溶液は褐色の沈殿物を含むスラリー状に変化した。次に
室温まで冷却した後、アセトンを100g加え、スラリ
ー状の溶液を5Cのろ紙を用いて固形分を溶媒から分離
した。アセトンを用いた洗浄・ろ過を3回繰り返し、固
形分を採取した。収率は90%であった。得られた固形
分をビーカーに入れ、300℃で1時間、更に400℃
で1時間熱処理し、冷却の後ボール・ミルでほぐしパウ
ダーとした。
【0060】得られたパウダーのFT−IRをKBr法
で測定したところ、1780cm-1、1720cm-1
イミド基の特性吸収帯が観測され、ポリイミドパウダー
であることが確認された。ポリイミドパウダーの平均粒
子径は1.3μm,BET法による窒素の吸着量から評
価した表面積は150m2 /gであった。
【0061】本実施例1で得られたポリイミドパウダー
の透過法による広角X線回折プロフィールを図1に示
す。回折角2θ=10°〜40°の範囲で測定し、回折
プロフィールより、結晶領域からの回折強度と非晶領域
からの回折強度を分離し、全回折強度に対する結晶領域
からの強度の比より結晶化度を求めたところ、結晶化度
は85%であった。
【0062】本実施例1のポリイミドパウダーの粒子の
構造を示す走査型電子顕微鏡写真を図6に掲げた。図6
によれば、本実施例1により得られたポリイミドパウダ
ーは棒状粒子が集合した形態であることがわかる。
【0063】次に、前記のようにして得られた本実施例
1のポリイミドパウダーを使用して、炭素質微粒子の製
造を試みた。このPMDA/PPDポリイミドの微粒子
を磁性るつぼに5.0g採取し、るつぼに入れたまま高
温用の電気炉で熱処理した。熱処理は、窒素ガス雰囲気
の下、0.5℃/分の昇温速度で室温から600℃まで
上げ、600℃から800℃までは1.5℃/分の昇温
速度で上げ、更に2.0℃/分で1000℃まで上げ
て、1000℃で90分間熱処理した。冷却は、平均
2.0℃/分の降温速度で室温まで冷却させる条件で行
なった。
【0064】PMDA/PPDポリイミドの微粒子は、
電気炉での熱処理により黒色粉体に変化し、粉体の重量
を測定したところ2.57gであった。この黒色粉体の
元素分析を行なったところ、炭素成分の含有率が87重
量%であり、炭素質の微粒子であることが確認された。
この炭素質微粒子の走査型電子顕微鏡観察によると、一
片の平均の長さ100nm前後のほぼ直線的なウイスカ
ー状の炭素質平面状構造体が、炭素質微粒子の中心から
放射状に配列して成長した構造であり、平均粒子径を測
定したところ、1.0μmであった。また、広角X線回
析による炭素の(002)面の面間隔を求めたところ、
3.570Åであった。比表面積は280m2 /gであ
った。
【0065】この炭素質微粒子を、さらに窒素ガス雰囲
気の下、室温から3.0℃/分で2600℃まで上げて
60分間熱処理した。次に室温まで冷却した後、広角X
線回折で(002)面の面間隔を求めたところ、3.3
62Åとなり、さらに黒鉛化が進んだものとなった。
【0066】〔比較例1〕前記実施例1と同じ条件で調
製したポリアミド酸溶液を、ポリアミド酸の貧溶媒とし
てアセトン/NMP=70/30の混合溶媒1000g
中に滴下し、溶液中のポリアミド酸成分を沈殿させた。
沈殿・析出した塊状のポリアミド酸を5Cのろ紙を用い
て濾別した。熱風乾燥機中100℃で30分間乾燥後、
更に200℃,300℃,400℃で各30分間づつ熱
処理し、ポリイミドに転化させた。ポリイミドの収率は
90%であった。この塊状のポリイミドをヘンシルミキ
サーで機械的に粉砕し、ポリイミドパウダーとした。
【0067】得られたパウダーのFT−IRをKBr法
で測定したところ、1780cm-1、1720cm-1
イミド基の特性吸収帯が観測され、イミド化が確認され
た。ポリイミドパウダーの平均粒子径は10μm,BE
T法による窒素の吸着量から評価した表面積は10m2
/gであった。本比較例1で得られたポリイミドパウダ
ーの透過法による広角X線回折プロフィールを図2に示
し、これより結晶化度を求めたところ、結晶化度は40
%であり、前記実施例1で得られたポリイミドパウダー
に比較して、結晶化度が低かった。このポリイミドパウ
ダーの走査型電子顕微鏡観察では図6の写真で示すよう
な構造ではなく、円形に近い粒子の塊状物であった。
【0068】〔実施例2〕300mlの四つ口セパラブ
ルフラスコ中に、2.162g(0.02モル)の精製
したPPDを採取し、59.0gの蒸留されたNMPを
加え、撹拌し溶解させた。
【0069】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を20℃
にコントロールし、上記溶液を撹拌しながら5.884
g(0.02モル)の精製した3,3’,4,4’−ビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物(略称:BPDA)
を固形のまま、溶液の温度が上らないように注意しなが
ら徐々に添加し、全て加え終った後、撹拌を続け均一な
ポリアミド酸溶液を調製した。ポリアミド酸の対数粘度
は2.0dl/gであった(濃度:0.2g/dlにて
測定)。
【0070】このポリアミド酸溶液を密閉式のガラス容
器に移し、200℃で1時間熱処理した。溶液中には黄
色の沈殿物が析出した。次に室温まで冷却した後、アセ
トンを100g加え、スラリー状の溶液を5Cのろ紙を
用いて固形分を溶媒から分離した。アセトンを用いた洗
浄・ろ過を3回繰り返し、固形分を採取した。得られた
固形分をビーカーに入れ、300℃で1時間、更に40
0℃で1時間熱処理し、冷却の後ボール・ミルでほぐし
パウダーとした。
【0071】得られたパウダーのFT−IRをKBr法
で測定したところ、1780cm-1、1720cm-1
イミド基の特性吸収帯が観測され、ポリイミドパウダー
であることが確認された。本実施例2のポリイミドパウ
ダーの平均粒子径は12.4μm、BET法による窒素
の吸着量から評価した表面積は50m2 /gであった。
本実施例2で得られたポリイミドパウダーの透過法によ
る広角X線回折プロフィールを図3に示し、これより結
晶化度を求めたところ、結晶化度は65%であった。
【0072】本実施例2のポリイミドパウダーの粒子の
構造を示す走査型電子顕微鏡写真を図7に掲げた。図7
によれば、本実施例2のポリイミドパウダーは、平板状
の構造体が放射状に配列した珊瑚礁のような粒子の形態
であることがわかる。
【0073】〔実施例3〕300mlの四つ口セパラブル
フラスコ中に、精製した4,4’−ジアミノジフェニル
エーテル(略称:4,4’−DPE)を4.004g
(0.02モル)採取し、65.0gのNMPを加え、
撹拌し溶解させた。
【0074】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を10℃
にコントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.357
g(0.01996モル)の精製したPMDAを固形の
まま、溶液の温度が上らないように注意しながら徐々に
添加した。全て加え終った後、さらに撹拌を続け均一な
ポリアミド酸溶液を調製した。ポリアミド酸の対数粘度
は2.8dl/gであった(濃度:0.2g/dlにて
測定)。
【0075】このポリアミド酸溶液を密閉式のガラス容
器に移し、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら150℃で
2.5時間熱処理した。溶液中には黄褐色の沈殿物が析
出した。室温まで冷却した後、アセトンを100g加
え、スラリー状の溶液を5Cのろ紙を用いて固形分を溶
媒から分離した。アセトンを用いた洗浄・ろ過を3回繰
り返し、固形分を採取した。
【0076】得られた固形分をビーカーに入れ、300
℃で1時間、更に400℃で1時間熱処理し、冷却した
後、ボールミルでほぐしパウダーとした。得られたパウ
ダーのFT−IRをKBr法で測定したところ、178
0cm-1、1720cm-1にイミド基の特性吸収帯が観
測され、ポリイミドパウダーであることが確認された。
【0077】ポリイミドパウダーの平均粒子径は7.4
μm、BET法による窒素の吸着量から評価した表面積
は70m2 /gであった。本実施例3で得られたポリイ
ミドパウダーの透過法による広角X線回折プロフィール
を図4に示し、これより結晶化度を求めたところ、結晶
化度は60%であった。
【0078】本実施例3のポリイミドパウダーの粒子の
構造を示す走査型電子顕微鏡写真を図8に掲げた。図8
によれば、本実施例3のポリイミドパウダーは、平板状
の構造体が放射状に配列した珊瑚礁のような粒子の形態
であることがわかる。
【0079】〔比較例2〕前記実施例3と同じ条件でポ
リアミド酸溶液を調製した。ポリアミド酸の対数粘度は
3.0dl/gであった(濃度:0.2g/dlにて測
定)。このポリアミド酸溶液にNMPを250g加え、
溶液を希釈した。窒素気流下、溶液を攪拌させながら温
度を80℃にコントロールした。
【0080】この溶液中に、脱水剤として、無水酢酸
6.48g(0.06モル)とピリジン4.746g
(0.06モル)とNMP50gの混合溶液を滴下ロー
トを使用して1時間かけて滴下し、滴下終了後も更に6
時間攪拌を続けると淡黄色の固形分がパウダー化して析
出した。得られたパウダーをFT−IRをKBr法で測
定したところ、1780cm-1、1720cm-1にイミ
ド基の特性吸収帯が観測され、イミド化が確認された。
【0081】このポリイミドパウダーをろ別し、乾燥
後、更に200℃,300℃,400℃で各30分間づ
つ熱処理した。ポリイミドパウダーの平均粒子径は15
μm、BET法による窒素の吸着量から評価した表面積
は10m2 /gであった。この比較例2で得られたポリ
イミドパウダーの透過法による広角X線回折プロフィー
ルより結晶化度を求めたところ、結晶化度は20%であ
り、前記実施例1〜3と比較して小さいものであった。
【0082】また、このポリイミドパウダーの走査型電
子顕微鏡観察では図8に示す写真のような構造ではな
く、ヒダの少ない円形に近い粒子であった。
【0083】〔実施例4〕300mlの四つ口セパラブル
フラスコ中に、1.297g(0.012モル)の精製
したPPDと1.602g(0.008モル)の4,
4’−DPEを採取し、59.0gの蒸留されたN,N
−ジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、撹拌し溶
解させた。
【0084】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を20℃
にコントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.344
g(0.0199モル)の精製したPMDAを固形のま
ま、溶液の温度が上らないように注意しながら徐々に添
加し、全て加え終った後、撹拌を続け均一なポリアミド
酸溶液を調製した。ポリアミド酸の対数粘度は1.8d
l/gであった(濃度:0.2g/dlにて測定)。
【0085】このポリアミド酸溶液を密閉式のガラス容
器に移し、250℃で1時間熱処理した。溶液中には淡
褐色の沈殿物が析出した。室温まで冷却した後、アセト
ンを100g加え、スラリー状の溶液を5Cのろ紙を用
いて固形分を溶媒から分離した。アセトンを用いた洗浄
・ろ過を3回繰り返し、固形分を採取した。得られた固
形分をビーカーに入れ、300℃で1時間、更に400
℃で1時間熱処理し、冷却の後ボール・ミルでほぐしパ
ウダーとした。
【0086】得られたパウダーのFT−IRをKBr法
で測定したところ、1780cm-1、1720cm-1
イミド基の特性吸収帯が観測され、ポリイミドパウダー
であることが確認された。ポリイミドパウダーの平均粒
子径は8.4μm,BET法による窒素の吸着量から評
価した表面積は50m2 /gであった。ポリイミドパウ
ダーの透過法による広角X線回折プロフィールを図5に
示し、これより結晶化度を求めたところ、結晶化度は5
0%であった。
【0087】このポリイミドパウダーの走査型電子顕微
鏡観察によると、粒子は図6の写真と同じような構造体
であった。
【0088】
【発明の効果】
(1)結晶化度の高いポリイミドパウダーを提供するこ
とができ、このポリイミドパウダーは、種々の有用性が
期待される黒鉛化度の高い炭素質微粒子を製造するため
の適した前駆体物質とすることができる。
【0089】(2)プラスチック成形の新規な充填材料
として、例えば、高強度プラスチック成形の高剛性充填
材料として、あるいは、高精密成形等の充填材として利
用が期待できる結晶化度の高いポリイミドパウダーを提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリイミドパウダーの透過
法による広角X線回折プロフィールを示す。
【図2】比較例1で得られたポリイミドパウダーの透過
法による広角X線回折プロフィールを示す。
【図3】実施例2で得られたポリイミドパウダーの透過
法による広角X線回折プロフィールを示す。
【図4】実施例3で得られたポリイミドパウダーの透過
法による広角X線回折プロフィールを示す。
【図5】実施例4で得られたポリイミドパウダーの透過
法による広角X線回折プロフィールを示す。
【図6】実施例1のポリイミドパウダーの粒子の構造を
示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例2のポリイミドパウダーの粒子の構造を
示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例3のポリイミドパウダーの粒子の構造を
示す走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)下記の一般式で示されるポリイミ
    ドであり、 (2)平均粒子径が200μm以下であり、且つ、 (3)X線回折によるポリマーの結晶化度が50%以上
    であることを特徴とする高結晶性ポリイミドパウダー。 【化1】
  2. 【請求項2】 (1)下記の一般式で示されるポリイミ
    ドであり、 (2)平均粒子径が200μm以下であり、 (3)X線回折によるポリマーの結晶化度が50%以上
    であり、且つ、 (4)ポリイミド分子で構成された結晶質の平面単位
    が、粒子の中心より放射状に成長・配列し、多孔質状粒
    子となったものであることを特徴とする高結晶性ポリイ
    ミドパウダー。 【化2】
  3. 【請求項3】 前記ポリイミドが、芳香族テトラカルボ
    ン酸二無水物と芳香族ジアミンの重付加反応で得られた
    ポリアミド酸を前駆体ポリマーとし、これを脱水・閉環
    反応させて製造されたものである請求項1または2記載
    の高結晶性ポリイミドパウダー。
  4. 【請求項4】 (1)ポリアミド酸を良溶媒中に溶解し
    て、対数粘度が0.1〜10dl/gで、固形分濃度が
    50重量%以下であるポリアミド酸溶液とし、 (2)該ポリアミド酸溶液を真空下あるい大気圧以上の
    加圧下で、100℃〜400℃の温度で加熱処理して、
    溶媒中にポリイミド粒子を沈澱させ、 (3)この溶媒中からポリイミドパウダーを直接採取す
    ることを特徴とするポリイミドパウダーの製造方法。
  5. 【請求項5】 (1)ポリアミド酸を良溶媒中に溶解し
    て、対数粘度が0.1〜10dl/gで、固形分濃度が
    50重量%以下であるポリアミド酸溶液とし、 (2)該ポリアミド酸溶液を真空下あるい大気圧以上の
    加圧下で、100℃〜300℃の温度で加熱処理して、
    溶媒中にポリイミド粒子を沈澱させ、 (3)この溶媒中からポリイミドパウダーを直接採取
    し、 (4)該ポリイミドパウダーをさらに500℃を越えな
    い温度で熱処理することを特徴とするポリイミドパウダ
    ーの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記ポリアミド酸が、芳香族テトラカル
    ボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重付加反応で得られ
    たものであり、前記ポリイミドパウダーが請求項1また
    は2記載の性質を持つことを特徴とする請求項4または
    5記載のポリイミドパウダーの製造方法。
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