JPH07326042A - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JPH07326042A
JPH07326042A JP11942894A JP11942894A JPH07326042A JP H07326042 A JPH07326042 A JP H07326042A JP 11942894 A JP11942894 A JP 11942894A JP 11942894 A JP11942894 A JP 11942894A JP H07326042 A JPH07326042 A JP H07326042A
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lubricant
recording medium
magnetic recording
layer
ratio
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JP11942894A
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English (en)
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Yoshiharu Kashiwakura
良晴 柏倉
Yoshiaki Ito
芳昭 伊藤
Katsumi Onodera
克己 小野寺
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Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 カーボン保護膜と潤滑剤との結合性を時間的
に緩やかに上昇させる磁気記録媒体の製造方法を実現す
る。 【構成】 カーボン保護膜の上に、少なくとも片方の末
端部に官能基を持つパーフルオロポリエーテルの潤滑層
を有する磁気記録媒体において、潤滑剤の塗布後、不活
性雰囲気中で媒体表面に対し250nm〜260nmの
長波長領域の紫外線を照射すると同時に、媒体表面を加
温し、カーボン保護層と潤滑剤との結合性を緩やかに上
昇させる。紫外線照射時間と温度を制御し、結合比を最
適化することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録装置に搭載さ
れる磁気記録媒体及びその製造方法に関し、特に、カー
ボン保護膜と潤滑膜との最適な結合比とその結合性性を
付与する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】固定磁気ディスク装置においては、一般
に磁気記録媒体の回転時に磁気ヘッドが浮上し、回転停
止時には磁気ヘッドが磁気記録媒体と接触するコンタク
ト・スタート・ストップ(CSS:Contact Start Sto
p)方式が採用されている。この方式では回転の開始時
と停止時に磁気ヘッドと磁気記録媒体とが摺動状態とな
るため、磁気記録媒体の表面の耐摩耗性や潤滑性が不十
分な場合、このような摺動が繰り返されることによって
表面が摩滅し、程度のひどいときには磁性層が破損して
記録再生が不可能となる。磁気記録媒体の表面の耐摩耗
性を向上させる目的で、磁性層の上に保護層を形成し、
更にその上に潤滑性を高める目的で潤滑層を設けるのが
一般的となっている。即ち、図6に示すように、一般的
な金属薄膜磁気記ディスクの断面構造は、非磁性基板1
上に非磁性のCr下地層2を積層し、このCr下地層2
上に強磁性合金のCo合金磁性層3を薄膜状に積層した
後、この磁性層3上にアモルファスカーボン又はダイヤ
モンドライクカーボンのカーボン保護層4を積層形成
し、更にそのカーボン保護層4の上に液体潤滑材からな
る潤滑層5を設けたものである。非磁性基板1としては
例えばNi−Pメッキを施したアルミニウム合金基板を
用いる。この非磁性基板1の上に、例えばCrからなる
膜厚300nmのCr下地層2,Co80at%,Cr
14at%,Pt6at%からなる膜厚50nmの磁性
層3,及びアモルファスカーボンからなる膜厚20nm
の保護膜4を順次スパッタ法で積層形成する。そして、
保護層4上にフロロカーボン系の液体潤滑剤を膜厚2n
m塗布して潤滑層5を形成する。
【0003】ところで、フロロカーボン系の液体潤滑剤
としてはパーフルオロポリエーテル系の潤滑剤で、フッ
素を含むことにより高い潤滑特性を示し、また低蒸気
圧,化学的安定性に優れるなどの長所を有しているた
め、磁気記録媒体の潤滑剤として広く用いられている。
【0004】ここで、潤滑層5が高い潤滑特性と耐久性
を持つためには、潤滑剤の塗布膜厚を厚くすること、
分子量の大きな潤滑剤を用いること、が必要とされて
いる。しかし、過度の膜厚増加や高分子量化を行うと、
磁気ヘッドの摺動の際、その磁気ヘッドに転写される潤
滑剤の量も増加する。この転写量が増加すると、磁気ヘ
ッドと磁気記録媒体との間に吸着現象が発生し易くな
り、この吸着現象は耐摩耗性を劣化させ、更に程度のひ
どいときには磁気記録媒体が回転不能となり、記録再生
が行えなくなる。
【0005】このような吸着現象を抑制する方策の一つ
として、磁気記録媒体の表面に180nm〜260nm
の波長領域の紫外線を照射する方法がある。このような
波長域の紫外線照射を施すと、光子エネルギによりカー
ボン保護層と潤滑層との化学的な結合性が向上し、磁気
ヘッドに転写される潤滑剤の量が減少するため、吸着現
象を抑制することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のようなカーボン
保護層と潤滑層との化学的な結合性を付与するには最適
な範囲が存在する。その値は、使用する磁気ヘッドのス
ライダ材質によって大きく異なる。例えば、CaTiO
3 をスライダ材として用いた磁気ヘッド(MIGコンポ
ジットヘッド)では、ある値以上の結合性を付与するこ
とにより良好な耐摩耗性を得ることができるが、これに
対してAl2 3 −TiCをスライダ材として用いる磁
気ヘッド(薄膜ヘッド)では、過剰に結合性を高めてカ
ーボン保護層と磁気ヘッドとの間で流動する潤滑剤成分
が減少すると、吸着現象は逆に劣化してしまう。そのた
め、Al2 3 −TiCをスライダ材として用いた磁気
ヘッドに対しては、カーボン保護層と潤滑剤との結合性
をある範囲内に制御する必要がある。紫外線の照射によ
ってカーボン保護層と潤滑剤との結合性を高める場合に
は、紫外線の照射時間により結合性を制御するが、従来
の180nm〜260nmの波長領域の紫外線を使用す
る場合には、結合性が敏感で、照射時間に対する結合性
の上昇は極めて急激である。そのため、紫外線未照射の
磁気記録媒体に対して僅かに結合性を付与する必要があ
る場合には、極めて短時間の紫外線照射が行わなること
になる。しかし、かかる場合、結合性付与の制御性の悪
さや媒体面内の結合性の分布不均一が問題となる。
【0007】そこで上記問題点に鑑み、本発明の第1の
課題は、カーボン保護膜と潤滑剤との間の結合性を時間
的に緩やかに上昇させることにより、結合性の制御性が
向上した磁気記録媒体の製造方法を提供することにあ
る。また本発明の第2の課題は、カーボン保護層と潤滑
剤との結合性を最適化することにより、耐摩耗性に優れ
た磁気記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】まず第1の課題を解決す
るため、本発明は、薄膜磁性層上にスパッタ法で形成さ
れたカーボン保護膜の上に、少なくとも片方の末端部に
官能基を持つパーフルオロポリエーテルの潤滑剤を塗布
して潤滑層を形成する磁気記録媒体の製造方法におい
て、蒸気潤滑剤の塗布後、不活性雰囲気中で前記磁気記
録媒体の表面に対して250nm〜260nmの波長領
域の紫外線を照射すると同時に、上記磁気記録媒体を加
温することを特徴とする。
【0009】上記の製造方法において、媒体を加温する
第1の方法としては、上記不活性雰囲気を加熱する雰囲
気加熱法がある。かかる場合、雰囲気温度を40°C〜
100°Cの範囲にすることが望ましい。
【0010】また、媒体を加温する第2の方法として
は、磁気記録媒体の表面に対して赤外線を照射する赤外
線照射法がある。かかる場合、1μm〜5μmの波長領
域の赤外線を使用することが望ましい。
【0011】上述のような製造方法によってカーボン保
護層と潤滑剤との結合比の制御が容易になるが、これに
よって次のような磁気記録媒体とすることが望ましい。
即ち、薄膜磁性層上にスパッタ法で形成されたカーボン
保護膜と、この上に塗布形成され、少なくとも片方の末
端部に官能基を持つパーフルオロポリエーテルの潤滑層
とを有する磁気記録媒体において、以下で定義される潤
滑層の潤滑剤とカーボン保護層との結合比γが57%〜
90%の範囲にあることを特徴とする。
【0012】(結合比γの定義)前記潤滑剤を溶解する
溶剤中に前記磁気記録媒体を一定時間浸漬したとき、 結合比γ=100β/(α)〔%〕 …(1) 但し、α:浸漬前の潤滑剤膜厚、即ち結合層と流動層の
和 β:潤滑後の潤滑剤膜厚、即ち結合層として残る膜厚
【0013】
【作用】潤滑剤塗布後の磁気記録媒体表面に紫外線を照
射すると、カーボン保護層表面のカーボン原子間の結合
が一部切断され、ここにパーフルオロポリエーテル潤滑
剤の末端官能基が結合するので、カーボン保護層と潤滑
剤との結合性が高まる。
【0014】その照射紫外線の波長域を低エネルギ領域
の250〜260nmに限定すると、カーボン原子間の
切断は殆ど生じなくなるが、このとき媒体を加温するこ
とにより、切断に足りないエネルギを熱エネルギの形で
補足することができ、カーボン原子間の切断が緩やかに
進行し、これに伴い潤滑剤の末端官能基との結合性も緩
やかに増加する。熱エネルギの形で補足する方法として
は雰囲気を加温する方法や赤外線を照射する方法があ
る。
【0015】このように、上記の製造方法によれば、カ
ーボン保護層と上記潤滑剤との結合比を緩やかに増加さ
せることがきるので、結合比の制御性が良好になる。従
って、加熱温度,照射時間を制御することにより最適な
結合比の磁気記録媒体を製造可能となり、CSS特性を
向上させることができる。
【0016】結合比γが57%〜90%の範囲内にある
磁気記録媒体では、磁気ヘッドへの潤滑剤の過剰転写が
妨げられ、磁気ヘッドと磁気記録媒体との吸着現象も抑
制される。また過剰に結合性が付与されていないので、
磁気ヘッドと磁気記録媒体との間で流動する潤滑剤が存
在しており、これにより潤滑性も確保される。従って、
磁気記録媒体の耐摩耗性が向上する。
【0017】
【実施例】次の本発明の実施例を説明する。
【0018】〔第1実施例〕本例では、薄膜磁性層の上
にスパッタ法でカーボン保護層を形成したから、パーフ
ルオロポリエーテル潤滑剤を塗布し、その後、以下のよ
うな種々の態様の紫外線照射を施した。図1は紫外線照
射に伴うカーボン保護層と潤滑剤との結合比の時間変化
を示すグラフである。本例では紫外線ランプは2種類使
用した。即ち、185nmと254nmの波長を有する
ランプ(以下、ランプAと言う)と、254nmのみの
波長を有するランプ(以下、ランプBと言う)の2種類
である。紫外線照射でカーボン保護層と潤滑層との結合
比γは、以下のように定義した。
【0019】(結合比の定義)カーボン保護層と潤滑層
の結合の度合いは結合層の膜厚として測定可能であるの
で、潤滑層は結合層(β)の膜厚と流動層の膜厚(α−
β)との和(α)と見做せる。このため、流動層を溶剤
(フロンと炭素系溶剤)で溶解除去すると結合層の膜厚
αを測定できるので、本例では次のように結合比γを定
義した。
【0020】 結合比γ=100β/(α)〔%〕 …(1) 但し、α:浸漬前の潤滑剤膜厚、即ち結合層と流動層の
和 β:潤滑後の潤滑剤膜厚、即ち結合層として残る膜厚 但し、浸漬時間は3分、浸漬後の磁気記録媒体の引き上
げ速度は1.5mm/分とした。ただ、浸漬時間や引き
上げ速度はほとんど結合比に影響しない。潤滑剤は末端
基としてベンゼン環を有するパーフルオロポリエーテル
(商品名フォンブリンAM2001)を使用した。紫外
線照射は窒素気流中で行った。大気中で紫外線照射を行
うと、大気に含まれる酸素と潤滑剤が反応を起こし、潤
滑剤膜質の減少や変質を引き起こしてしまう。そのた
め、紫外線照射は、窒素やアルゴン或いは真空中などの
不活性(無酸素)雰囲気下で行う必要がある。図1を見
ると、185nmと254nmの波長を有するランプA
では、カーポン保護層と潤滑層との結合比の上昇速度は
極めて速いものとなっており、僅か5秒間の紫外線照射
により照射前の55%から75%にまで上昇する。この
ように急激な結合比の増加を示す範囲では結合比の制御
性が乏しく、実際の製造工程に適用することを考える
と、75%以下の任意の値に結合比を制御することは困
難である。一方、254nmのみの波長を有するランプ
Bでは、室温での照射では結合比の上昇はほとんど認め
られないが、40°Cの加熱(雰囲気温度)において紫
外線照射を行うと、結合比が緩やかに上昇している。加
熱温度(雰囲気温度)が60°Cの場合、75%の結合
比を得るための紫外線照射時間は約90秒であり、75
%以下での結合比の制御性が向上していることが判る。
また、雰囲気温度が100°Cの場合、75%の結合比
を得るための紫外線照射時間は約20秒となっており、
結合比の可制御性のある上限値と考えられる。波長が2
54nmのみの紫外線照射の場合、潤滑剤の変質や減少
の原因となる活性なオゾンの発生を伴わないため、この
点でも185nm付近の短波長を使用するランプと比較
して有利である。
【0021】雰囲気温度により結合比の上昇速度が異な
っていることから、結合比の制御が雰囲気温度と紫外線
照射時間で容易にできる。
【0022】図2には、ランプBを用いた紫外線照射
を、主鎖や末端基の異なる数種類のパーフルオロポリエ
ーテル系潤滑剤に対して行った結果を示した。加熱温度
(雰囲気温度)は60°Cとした。末端基Rに官能基を
有していない潤滑剤cは紫外線照射照射によって結合比
の上昇は認められないが、それ以外の潤滑剤a,b,
d,eでは、紫外線照射に伴う結合比の上昇が確認され
た。潤滑剤aは末端基Rにベンゼン環を持つ官能基を有
するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤で、商品名フォ
ンブリンAM2001である。末端基Rは潤滑剤a,b
のように主鎖の両方に官能基を有する場合だけでなく、
潤滑剤d,eのように片方に官能基を有していてば良
い。図2から判るように、紫外線照射によるカーボン保
護層と潤滑剤との結合比の増加は、カーボン保護層と潤
滑剤の末端基Rとの結合が増加することに起因している
と推察できる。即ち、結合比の増加を狙った紫外線照射
は末端基に官能基を有するパーフルオロポリエーテル系
潤滑剤について有効である。
【0023】図3に、紫外線照射によりカーボン保護膜
と潤滑剤との結合比を変えた数種類の磁気記録媒体につ
いてCSS(コンタクト・スタート・ストップ)テスト
を行った結果を示した。紫外線ランプは、254nmの
波長を有するランプBを使用した。加熱温度(雰囲気温
度)は60°C、潤滑剤は商品名フォンブリンAM20
01である。CSS耐久性の評価は、Al2 3 −Ti
Cスライダを持つ薄膜磁気ヘッドとCaTiO3 スライ
ダを持つMIGヘッドにより行った。耐久性評価は20
000回(20K回)のCSSを繰り返した後、磁気記
録媒体と磁気ヘッドとの間の摩擦係数を測定することに
より行った。図3から判るように、薄膜ヘッドの場合、
結合比を60〜65%の程度の範囲に制御することによ
り最小の摩擦係数値(約0.2)が得られ、優れた耐久
性を得ることができた。しかし、結合比が60〜65%
の前後では摩擦係数は大きくなっており、結合比が75
%以上では、20000回のCSSテストの最中でカー
ボン保護層の破損が生じた。MIGヘッドの場合、結合
比を70%以上に増やすことにより摩擦係数は低減する
が、過剰に結合比を増やすと逆に摩擦係数が増加した。
紫外線未照射の磁気記録媒体は図2からも判るように、
結合比55%で、図3では左端のプロットに相当してい
る。摩擦係数1以上は磁気記録媒体として実用性が乏し
いので、摩擦係数1以下の結合比が実用的である。薄膜
ヘッド又はMIGヘッドのいずれに対してもCSS耐久
性を満足する結合比γの範囲は57〜90程度である。
この範囲は紫外線未照射の磁気記録媒体の結合比(55
%)に対しては1.05〜1.7倍の範囲に相当してい
る。
【0024】パーフルオロポリエーテルのような液体潤
滑剤を用いた潤滑系では、カーボン保護層に結合してい
る潤滑剤成分,磁気ヘッドに付着する潤滑剤成分及びカ
ーボン保護層と磁気ヘッドとの間で流動している潤滑剤
成分のバランス(比率)が最良の場合に、良好な潤滑性
と耐久性が得られる。例えばカーボン保護層と結合して
いる潤滑剤成分が多い場合(結合比が大きい場合)、耐
久性は上昇するが、潤滑性が低くなり、優れた摩擦特性
は得られない。また流動成分が多い場合(結合比が小さ
い場合)、潤滑性は向上するが、磁気ヘッドとカーボン
保護層との吸着現象を引き起こし、摩擦特性は悪化して
しまう。波長が250〜260nmの紫外線を使用して
結合比を制御することにより、最適なCSS耐久性を得
ることが可能となる。また潤滑剤成分のバランスは潤滑
剤の種類や磁気ヘッドの材質,形状及び磁気記録媒体の
表面粗さ等により異なるため、これらの組み合わせに応
じて最適な結合比も異なってくる。
【0025】〔第2実施例〕第1実施例では、紫外線照
射と同時に、雰囲気加温を行って紫外線照射の光子エネ
ルギを補足するようにしているが、本例では媒体表面の
加温方法として赤外線照射法を採用している。
【0026】図4に、紫外線照射と同時に赤外線照射に
伴うカーボン保護層と潤滑剤との結合比変化を示した。
紫外線ランプは2種類使用した。185nmと254n
mの波長を有するランプAと、254nmのみの波長を
有するランプBの2種類である。他方、赤外線ランプに
は、2〜3μmの波長に放射ピークを持つ中波長赤外線
ランプを使用した。出力は500Wである。カーボン保
護層と潤滑剤との結合比は前述の(1)式のように、磁
気記録媒体をパーフルオロポリエーテル潤滑剤を溶解す
る溶剤に浸漬したとき膜厚βと浸漬前の膜厚αとの比
〔%〕で定義した。溶剤への浸漬時間は3分で、浸漬後
の磁気記録媒体の引き上げ速度は1.5mm/分とし
た。なお、図4に示した結合比変化の数値は溶剤や浸漬
条件を変更することによって異なった値を示すが、誤差
範囲にほぼ収まるものであった。サンプルにはAl合金
基板を有する磁気記録媒体を使用した。潤滑剤には主鎖
の両端に末端官能基としてベンゼン環を有するパーフル
オロポリエーテル(商品名フォンブリンAM2001)
を使用した。紫外線及び赤外線の照射は窒素気流中で行
った。大気中で紫外線照射を行うと、大気に含まれる酸
素と潤滑剤が反応を起こし、潤滑剤膜質の減少や潤滑剤
の変質を引き起こしてしまう。そのため、紫外線の照射
は、窒素やアルゴン或いは真空中等の不活性な雰囲気中
で行う必要がある。図4を見ると、185nmと254
nmの波長を有するランプAのみの紫外線照射では、カ
ーボン保護層と潤滑剤との結合比変化(照射後の結合比
/照射前の結合比)の上昇速度は極めて速いものとなっ
ており、僅か10秒間の照射により未照射磁気記録媒体
の結合比に比して1.4倍にまで上昇している。一方、
波長が254nmのみのランプBでは、結合比変化は僅
かに上昇するものの、その上昇速度は極めて遅いものと
なっている。これに対して、波長が254nmのみのラ
ンプBに赤外線ランプを組み合わせて照射する場合に
は、適度な速さで結合比変化が上昇する。磁気記録媒体
の基板に用いられるAl合金等の金属やガラスは1〜5
μmの波長領域に対して吸収特性を示すため、この領域
の赤外線を照射することにより基板温度(媒体温度)が
上昇する。このような加温は254nmのみの紫外線照
射では不足している結合エネルギを補うことになり、結
合比変化が適度に上昇するものと推察できる。抵抗熱を
利用したヒータを加熱装置として使用した場合には、基
板(媒体)の温度上昇が遅いため、赤外線ランプを使用
したときほどの抵抗比変化の上昇速度は得られない。図
4には、赤外線ランプのみで照射したときの結合比変化
を示してある。赤外線のみでも長時間の照射を行うこと
により結合比変化は非常に緩やかに上昇するが、赤外線
は潤滑剤を熱分解する作用があるため、長時間の赤外線
照射は好ましくない。潤滑剤を変質させることなく結合
比変化を速やかに増加させるためには、185nmと2
54nmの波長を有する紫外線の照射を行うか、或いは
254nmの波長の紫外線と1〜5μmの波長の赤外線
を同時に照射することが効果的である。また図4から結
合比変化は紫外線や赤外線の照射時間にとり制御可能で
あることが判る。
【0027】図5に波長185nmと254nmの紫外
線ランプAによる紫外線照射、波長254nmの紫外線
ランプBと赤外線ランプの同時照射を行ったときのCS
S特性の変化を示した。潤滑剤は前述した商品名フォン
ブリンAM2001を使用した。CSS耐久性の評価
は、Al2 3 −TiCスライダを持つ薄膜磁気ヘッド
を用い、20000回のCSSを繰り返した後、磁気記
録媒体と磁気ヘッドとの間の静止摩擦係数を測定するこ
とにより行った。紫外線ランプAで照射した場合、結合
比変化の上昇と共に静止摩擦係数も上昇し、紫外線未照
射の磁気記録媒体(図5の左端ブロット即ち結合比変化
=1)の1.6倍以上に結合比変化を高めた磁気記録媒
体では、20000回のCSSテストの最中にカーボン
保護層の破損が生じた。パーフルオロポリエーテルは、
主鎖の末端に存在する官能基がカーボン表面と結合し、
主鎖部が自由な分子運動性を持つことにより大きな潤滑
作用を示すが、185nmの波長の短波長紫外線を照射
することにより、主鎖部もカーボン保護層と結合してし
まい、分子運動性が減少して潤滑作用が減少し、これに
伴いCSS特性が劣化するものと考えられる。一方、ラ
ンプBと赤外線ランプを組み合わせた場合には、結合比
変化の上昇と共に、静止摩擦係数は減少して極小値をと
り、CSS特性が向上している。これは、結合比変化の
増加と共に潤滑剤の末端官能基がカーボン表面と結合
し、吸着現象の原因になる未結合潤滑成分が減少するこ
とに伴うものある。この未結合潤滑成分は吸着現象を引
き起こすと共に潤滑作用も併せ持つため、必要以上に結
合比変化を増やすと、潤滑作用が損なわれてしまう。図
5から判るように、最適な結合比変化は1.05〜1.
7の範囲であると判断される。照射後の結合比で言え
ば、57%〜90%の範囲内である。
【0028】図5で使用された潤滑剤は表1の潤滑剤a
で、末端官能基Rにはベンゼン環を有している。その
他、表1に示す潤滑剤b,c,d,eに示すパーフルオ
ロポリエーテル系潤滑剤について図5と同様な検証を行
った。検証の結果、潤滑剤a,bの如く、両端に末端官
能基を有する場合に限らず、潤滑剤d,eの如く、片方
に末端官能基を有する場合も、潤滑剤aと同様な摩擦特
性の改善効果が得られた。しかし、潤滑剤cの如く、末
端官能基を持たないパーフルオロポリエーテルは、その
ような効果は認められなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、カーボ
ン原子間結合を切断するに満たない比較的低エネルギ
(長波長域)の紫外線を照射すると同時に、これを補完
するため雰囲気加熱や赤外線照射による熱エネルギを付
与する点に特徴を有するものであるから、次の効果を奏
する。
【0031】 照射紫外線の波長域を低エネルギ領域
の250〜260nmに限定すると、カーボン原子間の
切断は殆ど生じなくなるが、このとき媒体を加温する
と、切断に足りないエネルギを熱エネルギの形で補足す
ることができ、カーボン原子間の切断が緩やかに進行
し、これに伴い潤滑剤の末端官能基との結合性も緩やか
に増加する。このように、カーボン保護層と上記潤滑剤
との結合比を緩やかに増加させることができるので、結
合比の制御性が良好になる。従って、加熱温度,照射時
間を制御することにより最適な結合比の磁気記録媒体を
製造可能となり、CSS特性を向上させることができ
る。
【0032】 結合比が57%〜90%の範囲内にあ
る磁気記録媒体では、磁気ヘッドへの潤滑剤の過剰転写
が妨げられ、磁気ヘッドと磁気記録媒体との吸着現象も
抑制される。また過剰に結合性が付与されていないの
で、磁気ヘッドと磁気記録媒体との間で流動する潤滑剤
が存在しており、これにより潤滑性も確保される。従っ
て、磁気記録媒体の耐摩耗性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において紫外線照射と雰囲
気加熱に伴うカーボン保護層と潤滑剤との結合比の時間
変化を示すグラフである。
【図2】本発明の第1実施例において紫外線照射を主鎖
や末端基の異なる数種類のパーフルオロポリエーテル系
潤滑剤に対して行った結果を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施例において紫外線照射により
カーボン保護膜と潤滑剤との結合比を変えた数種類の磁
気記録媒体についてCSS(コンタクト・スタート・ス
トップ)テストを行った結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施例において紫外線照射と同時
に赤外線照射に伴うカーボン保護層と潤滑剤との結合比
変化を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施例において波長185nmと
254nmの紫外線照射、波長254nmの紫外線と赤
外線を同時照射を行ったときのCSS特性の変化を示す
グラフである。
【図6】一般的な金属薄膜磁気記ディスクの断面構造を
示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1…非磁性基板 2…Cr下地層 3…Co合金磁性層 4…カーボン保護層 5…潤滑層。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄膜磁性層上にスパッタ法で形成された
    カーボン保護膜と、この上に塗布形成され、少なくとも
    片方の末端部に官能基を持つパーフルオロポリエーテル
    の潤滑層とを有する磁気記録媒体において、以下で定義
    される前記潤滑層の潤滑剤と前記カーボン保護層との結
    合比γが57%〜90%の範囲にあることを特徴とする
    磁気記録媒体。 (結合比γの定義)前記潤滑剤を溶解する溶剤中に前記
    磁気記録媒体を一定時間浸漬したとき、 結合比γ=100β/(α)〔%〕 …(1) 但し、α:浸漬前の潤滑剤膜厚、即ち結合層と流動層の
    和 β:潤滑後の潤滑剤膜厚、即ち結合層として残る膜厚
  2. 【請求項2】 薄膜磁性層上にスパッタ法で形成された
    カーボン保護膜の上に、少なくとも片方の末端部に官能
    基を持つパーフルオロポリエーテルの潤滑剤を塗布して
    潤滑層を形成する磁気記録媒体の製造方法において、前
    記潤滑剤の塗布後、不活性雰囲気中で前記磁気記録媒体
    の表面に対して250nm〜260nmの波長領域の紫
    外線を照射すると同時に、前記磁気記録媒体を加温する
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方
    法において、前記加温方法は、前記不活性雰囲気を加熱
    する雰囲気加熱法であることを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の磁気記録媒体の製造方
    法において、前記雰囲気加熱法は前記雰囲気温度を40
    °C〜100°Cの範囲にすることを特徴とする磁気記
    録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方
    法において、前記加温方法は、前記磁気記録媒体の表面
    に対して赤外線を照射する赤外線照射法であることを特
    徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の磁気記録媒体の製造方
    法において、前記赤外線照射法は1μm〜5μmの波長
    領域の赤外線を使用することを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。
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