JPH07320972A - 粒界絶縁型半導体磁器組成物及びその製造方法 - Google Patents

粒界絶縁型半導体磁器組成物及びその製造方法

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JPH07320972A
JPH07320972A JP13111694A JP13111694A JPH07320972A JP H07320972 A JPH07320972 A JP H07320972A JP 13111694 A JP13111694 A JP 13111694A JP 13111694 A JP13111694 A JP 13111694A JP H07320972 A JPH07320972 A JP H07320972A
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cuo
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Shigeki Shibagaki
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 結晶粒内が(Sr1-x Cax)a (TiNb
yb3 (式中x及びyは、それぞれ0<x≦0.1
50、0.001≦y≦0.010の範囲内の値で、か
つaとbは1.000≦b/a≦1.010の関係を満
たす値)で示される組成を有し、焼結体表面にBiを含
有する相が偏析している粒界絶縁型半導体磁器組成物。 【効果】 結晶粒界に偏析している酸化物と焼結体表面
に偏析しているBiを含有する相の両方を絶縁体層とし
て利用することが可能になり、大きな静電容量(C)を
有し、かつ絶縁特性や静電容量温度特性(τ)などに優
れたBL型コンデンサを作製し得るSrTiO3 系の粒
界絶縁型半導体磁器組成物を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は粒界絶縁型半導体磁器組
成物及びその製造方法に関し、より詳細には、見掛けの
比誘電率が高く、静電容量温度特性に優れた粒界絶縁型
半導体磁器組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、粒界絶縁型半導体磁器コンデン
サ(以下、BL型コンデンサと記す)は、粒界部分のみ
が誘電体として利用されるので非常に大きな実効容量が
得られるコンデンサとして知られている。
【0003】これらBL型コンデンサの構成材料として
は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、チタン
酸バリウム(BaTiO3 )、チタン酸マグネシウム
(MgTiO3 )、チタン酸カルシウム(CaTiO
3 )、チタン酸鉛(PbTiO3)などの成分に他の種
々の化合物を添加し、あるいは前記した成分を互いに混
合した組成を主成分とするものが知られている。
【0004】前記BL型コンデンサの特性に関し、例え
ばチタン酸バリウムを主成分に用い、前記主成分に三酸
化ジスプロシウム(Dy23 )を添加したものを構成
材料としたBL型コンデンサでは、最大実効比誘電率
(εS )が40,000〜50,000と大きな値を示
すが、一方その静電容量温度特性(τ)として、20℃
における静電容量(C)を基準値として−30℃〜+8
5℃の温度範囲内の基準静電容量に対する最大変化率を
とった場合、その値が±40%と大きく、また誘電損失
(tan δ)も約5%と大きな値になるという問題があっ
た。
【0005】一方、半導体磁器組成物の主成分がチタン
酸ストロンチウムで、前記主成分に三酸化ジスプロシウ
ムまたは三酸化セリウム(CeO3 )を添加したものを
構成材料としたBL型コンデンサでは、最大実効比誘電
率(εS )は30,000程度と低くなるものの、チタ
ン酸バリウム系と比較して静電容量温度特性(τ)が改
善されて、その値が±10〜20%程度となり、誘電損
失(tan δ)も2〜3%程度と改善される。
【0006】このように、一般にチタン酸ストロンチウ
ム系の粒界絶縁型半導体磁器組成物は、チタン酸バリウ
ム系のものを使用した粒界絶縁型半導体磁器組成物に較
べて見掛けの比誘電率(εapp )では多少劣るものの、
誘電損失(tan δ)、見掛けの比誘電率(εapp )の温
度特性、高周波特性などに優れるために、様々の用途に
使用され、種々の焼結助剤又は拡散物質を加えた系で検
討がなされている。
【0007】従来から使用されているチタン酸ストロン
チウム系の粒界絶縁型半導体磁器組成物を用いたBL型
コンデンサの製法の一例を説明する。まずチタン酸スト
ロンチウムを主原料とし、これに原子価制御用助剤とし
て五酸化ニオブ(Nb25)、イットリア(Y2
3 )などを添加し、また焼結助剤として二酸化ケイ素
(SiO2 )、アルミナ(Al23 )、二酸化マンガ
ン(MnO2 )、酸化第二銅(CuO)などを1種又は
2種以上の組み合わせで添加、混合した後、仮焼合成を
行う。この後、一旦仮焼合成物を粉砕し、バインダを添
加して一定の形状に成形する。この成形体中の有機物を
脱脂工程で除去した後、還元雰囲気下に焼結することに
より半導体磁器組成物を得る。次にこの半導体磁器の粒
界に絶縁層を形成するために、酸化ビスマス(Bi2
3 )、酸化第二銅(CuO)、二酸化マンガン(MnO
2 )などの金属酸化物をペースト状にして塗布し、熱拡
散させて粒界絶縁型半導体磁器組成物を製造する。前記
方法により得られた平板型の粒界絶縁型半導体磁器組成
物の両面に電極を形成することにより、BL型コンデン
サが完成することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方法により製造されたチタン酸ストロンチウム系のBL
型コンデンサは、前記したように静電容量(C)自体が
余り大きくなく、また静電容量温度特性(τ)はチタン
酸バリウム系のものと比較して改善されているものの、
依然として要求される特性に比べて大きく信頼性に欠け
るという課題があった。
【0009】一般にBL型コンデンサの静電容量(C)
を大きくし、静電容量温度特性(τ)を改善する方法と
しては、例えば磁器組成物中の結晶粒を大きくし、粒界
絶縁層に熱拡散させる金属酸化物の量を多くする方法
や、前記金属酸化物を焼結体の結晶粒子間に熱拡散させ
る際の温度を低くする方法などが挙げられるが、実際に
大きな静電容量(C)を有し、かつ絶縁特性や静電容量
温度特性(τ)に優れるBL型コンデンサを得るのは容
易ではなかった。
【0010】本発明は上記した課題に鑑みなされたもの
であり、大きな静電容量(C)を有し、かつ絶縁特性や
静電容量温度特性(τ)に優れたBL型コンデンサを作
製し得るSrTiO3 系の粒界絶縁型半導体磁器組成物
及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組成物は、結晶粒
内が(Sr1-x Cax)a (TiNbyb3 (式中x
及びyは、それぞれ0<x≦0.150、0.001≦
y≦0.010の範囲内の値で、かつaとbは1.00
0≦b/a≦1.010の関係を満たす値)で示される
組成を有し、試料表面にBiを含有する相が偏析してい
ることを特徴としている。
【0012】また本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組
成物の製造方法は、上記粒界絶縁型半導体磁器組成物の
製造方法であって、チタン酸ストロンチウム系焼結体
に、Bi23 、CuO、CaCO3 からなる物質で、
その割合が 40mol≦Bi23 ≦90mol、 10mol≦CuO≦60mol、 1mol≦CaCO3 ≦10mol、 Bi23 +CuO=100mol の条件を満足する組成の酸化物を、焼結体1g当たり1
0〜60mgの割合で塗布し、1000〜1350℃で
熱拡散させることを特徴としている。
【0013】本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組成物
の製造方法においては、まず最初に上記した焼結体の組
成、すなわち(Sr1-x Cax)a (TiNbyb3
(式中x及びyは、それぞれ0<x≦0.150、0.
001≦y≦0.010の範囲内の値で、かつaとbは
1.000≦b/a≦1.010の関係を満たす値)と
なるように各原料粉末を一定の割合で通常の方法により
混合し、通常のチタン酸ストロンチウム系焼結体の製造
方法と同様の製造プロセスにより前記粒界絶縁型半導体
磁器組成物を製造する。この際の焼成は、1380〜1
550℃程度の温度で2〜8時間焼成するのが好まし
い。このようにして得られたチタン酸ストロンチウム系
の焼結体に、上記した組成の酸化物を上記の量塗布し、
上記の条件で熱処理を行うが、Bi23 とCuOとの
合計量100molに対するBi23 の量は、40〜
60molが好ましく、同じくCuOの量は40〜60
molが好ましく、同じくCaCO3 の量は1〜5mo
lが好ましい。
【0014】また酸化物の塗布量は、焼結体1g当たり
24〜28mgの割合がより好ましく、熱拡散の温度は
1050〜1200℃がより好ましい。
【0015】
【作用】本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組成物によ
れば、結晶粒内が(Sr1-x Cax)a (TiNbyb
3 (式中x及びyは、それぞれ0<x≦0.150、
0.001≦y≦0.010の範囲内の値で、かつaと
bは1.000≦b/a≦1.010の関係を満たす
値)で示される組成を有し、焼結体表面にBiを含有す
る相が偏析しているので、結晶粒界に偏析している酸化
物の層と前記焼結体表面に偏析しているBiを含有する
相の両方を絶縁体層として利用することが可能になり、
大きな静電容量(C)を有し、かつ絶縁特性や静電容量
温度特性(τ)に優れたBL型コンデンサを作製し得る
SrTiO3 系の粒界絶縁型半導体磁器組成物となる。
【0016】前記粒界絶縁型半導体磁器組成物の結晶粒
内の組成を示す上記組成式において、xはSrに対する
Caの割合を示しているが、xが0であると誘電損失
(tanδ)の値が大きくなり、他方xが0.15を超え
ると静電容量温度特性(τ)が負側に大きくなる。また
yはTiに対するNbの割合を示しているが、yの値が
0.001未満であると誘電損失(tan δ)が大きくな
り、他方0.010を超えると還元ガス中で焼結する際
に、焼結体が割れるという現象が発生して生産性が著し
く落ちる。aとbの割合、(b/a)は(TiNby
に対する(Sr1-x Cax )の割合を示しているが、
(b/a)の値が1.000未満では焼結体中の焼結粒
子が成長せず、結晶粒子径の小さい粒子が多くなって静
電容量(C)が小さくなり、他方(b/a)が1.01
0を超えると焼結時に焼結体間で融着し易くなり、電気
的特性自体は優れたものが得られるが、生産性が低下す
る。
【0017】また本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組
成物の製造方法によれば、上記粒界絶縁型半導体磁器組
成物の製造方法であって、チタン酸ストロンチウム系焼
結体に、Bi23 、CuO、CaCO3 からなる物質
で、その割合が 40mol≦Bi23 ≦90mol、 10mol≦CuO≦60mol、 1mol≦CaCO3 ≦10mol、 Bi23 +CuO=100mol の条件を満足する組成の酸化物を、焼結体1g当たり1
0〜60mgの割合で塗布し、1000〜1350℃で
熱拡散させるので、前記酸化物が加熱により焼結体の粒
界に熱拡散していくと同時に、前記焼結体の表面にも残
存し、これにより結晶粒界に偏析している酸化物と焼結
体表面に偏析しているBiを含有する相の両方を絶縁体
層として利用することが可能になり、大きな静電容量
(C)を有し、かつ絶縁特性や静電容量温度特性(τ)
に優れたBL型コンデンサを作製し得るSrTiO3
の粒界絶縁型半導体磁器組成物が製造される。
【0018】前記粒界絶縁型半導体磁器組成物の製造方
法において、前記酸化物中のBi23 とCuOとの合
計量100molに対するCaCO3 の量が1mol未
満であると静電容量温度特性(τ)が負側に大きくな
り、他方10molを超えると、焼結体表面に残存する
Bi含有相の量が多くなりすぎるため、この相に起因し
て誘電損失(tan δ)が大きくなる。またBi23
CuOとの合計量100molに対するBi23 の量
が40mol未満であると誘電損失(tan δ)が大きく
なり、他方90molを超えると絶縁抵抗(IR)が小
さくなる。
【0019】前記酸化物の塗布量が焼結体1g当たり1
0mg未満では、静電容量は大きくなるが、絶縁抵抗
(IR)や静電容量温度特性(τ)が悪化し、他方前記
塗布量が焼結体1g当たり60mgを超えると、焼結体
表面に残存するBi含有相の量が多くなり過ぎるため
に、試料表面の性状を悪化させ、誘電損失(tan δ)が
増大する。
【0020】前記酸化物を塗布した後の焼成温度が10
00℃未満では焼結体表面に残存するBi含有相の量が
多くなり過ぎるために、誘電損失(tan δ)が増大し、
他方焼成温度が1350℃を超えると前記酸化物が焼結
体内部に拡散して静電容量が小さくなる。
【0021】
【実施例及び比較例】以下、本発明に係る粒界絶縁型半
導体磁器組成物の実施例及び比較例を説明する。まず、
主成分の原料粉末としてそれぞれ純度が99.9%以上
の炭酸ストロンチウム(SrCO3 )、炭酸カルシウム
(CaCO3 )、酸化チタン(TiO2)、及び五酸化
ニオブ(Nb25 )を表1〜3に示した割合で秤量
し、この原料粉末を玉石、分散剤、純水と共にボールミ
ルに投入して約24時間湿式混合し、粉砕した。次に、
この粉末を乾燥させた後解砕し、例えばジルコニア製の
焼成坩堝に移し、空気中、約1170℃で2時間程度仮
焼合成を行った。次に、前記仮焼合成により所定の固溶
体が合成されていることを、X線回折分析、ICP発光
分析などにより確認した。
【0022】次いで、前記仮焼粉末をさらにボールミル
などを用いて粉砕した後、1.0μm前後の均一粒子に
なるように整粒し、この整粒された粉末に有機結合剤
(バインダ)を加えて1.0〜2.0ton/cm2
度の圧力で直径が10mm、厚さが0.7mmの円板形
状に加圧成形した。その後、成形体から有機結合剤を除
去するために約1000℃で2時間程度の熱処理を行
い、引き続いて窒素濃度が85〜99vol%、水素濃
度が1〜15vol%の還元雰囲気中、1380〜15
50℃程度の温度で2〜8時間焼成し、セラミックスの
焼結と半導体化を進めた。
【0023】こうして得られた焼結体を有機溶剤及び熱
水中で十分に洗浄した後、セラミックスの結晶粒界を絶
縁化するために、Bi23 、CuO及びCaCO3
混合物が表1〜3に示した割合になるように組成を調整
し、これらに有機ビヒクル材を添加してペースト状とな
し、このペーストを同じく表1〜3の割合で焼結体に塗
布した。そして、酸化物が塗布された焼結体を、空気
中、1000〜1350℃で30分〜2時間の熱処理を
行うことにより前記焼結体の粒界の絶縁化を行った。次
に、前記工程により粒界絶縁化された円板形状の焼結体
の両面に銀ペーストを塗布し、650℃で焼き付けを行
って電極を形成し、BL型コンデンサを完成した。
【0024】得られたBL型コンデンサの各種電気特性
の測定は、以下のような方法により行った。
【0025】静電容量(C)、誘電損失(tan δ)はイ
ンピーダンスアナライザー(横河−ヒューレットパッカ
ード社製 4192A)を用い、周波数1KHz、測定
電圧1V、測定温度20℃にて測定し、静電容量温度特
性(τ)は、前記装置を用いて20℃で測定した静電容
量を基準とし、−30〜+90℃で測定した静電容量の
変化率により評価した。絶縁抵抗(IR)は直流定電圧
電源装置(横河−ヒューレットパッカード社製 414
0B)を用い、直流25Vの電圧を60秒印加した後の
電流値を測定して算出した。なお得られた前記静電容量
及び絶縁抵抗は、焼結体の寸法を直径6.5mm×厚さ
0.5mmとしたときの値である。
【0026】粒界絶縁型半導体磁器組成物の結晶粒内の
組成、塗布用の酸化物の割合と塗布量、及び製造された
BL型コンデンサの電気的特性値を下記の表1〜3に示
している。なお、下記の表1〜3において、試料番号に
*印をつけたものは比較例に係る粒界絶縁型半導体磁器
組成物を示しており、その他の試料は実施例に係る粒界
絶縁型半導体磁器組成物を示している。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】また表1〜3の結果を基に、得られたBL
型コンデンサの特性と塗布した酸化物の組成の関係を調
べるために、一定の試料についてグラフを描いてみた。
【0031】図1は、酸化物の組成を一定にして、その
塗布量を変化させた場合(試料番号1〜8)のBL型コ
ンデンサの各電気的特性(静電容量(C)、静電容量温
度特性(τ)、誘電損失(tan δ)、絶縁抵抗(I
R))を示したグラフである。また、それぞれ図2は
(Bi23 /Bi23 +CuO)のモル比を変化さ
せた場合(試料番号4、14〜18)、図3はCaCO
3 のモル比(CaCO3 /Bi23 +CuO)を変化
させた場合(試料番号10、15、20、25)、図4
は上記組成式のxを変化させた場合(試料番号4、37
〜40)のBL型コンデンサの電気的特性(図1の場合
と同様)と各組成の関係を示したグラフである。
【0032】上記表1〜3に示した結果及び図1〜4に
示した結果より明らかなように、実施例に係る粒界絶縁
型半導体磁器組成物を用いたBL型コンデンサは、焼結
体の寸法を直径6.5mm×厚さ0.5mmとしたとき
の値として、静電容量が70〜83nFと大きく、絶縁
抵抗率も1.1〜3.6Ωと大きい。また、静電容量温
度特性(τ)も−5%〜+5%と小さく、誘電損失が1
%未満と小さく、コンデンサなどとして要求される電気
的特性をバランスよく満足している。
【0033】一方、比較例に係る粒界絶縁型半導体磁器
組成物、すなわち結晶粒内の(Sr1-x Cax)a (Ti
Nbyb3 で表される組成式中のxが0又は0.1
6であるもの、yが0又は0.11であるもの、(b/
a)が0.998又は1.012であるものは、得られ
たBL型コンデンサが、電気的特性の内の少なくとも1
つが上記した実施例の場合の範囲外にあり、そのために
コンデンサなどとして要求される特性を満足させること
ができない。
【0034】また、塗布する酸化物中のBi23 とC
uOとの合計量100molに対するCaCO3 の量が
0molのもの又は11molのもの、Bi23 の量
が38molのもの又は92molのもの、CuOの量
が8molのもの又は62molのもの、前記酸化物の
塗布量が焼結体1g当たり8mgのもの又は60mgを
超えたものも、得られたBL型コンデンサが、電気的特
性の内の少なくとも1つが上記した実施例の場合の範囲
外にあり、そのためにコンデンサなどとして要求される
特性を満足させることができない。
【0035】次に上記実施例及び比較例に係る焼結体に
つき、その表面の結晶の構造や組成を観察した。図5〜
7は、それぞれ試料番号1(比較例)、試料番号4(実
施例)、試料番号8(比較例)の電極形成前の焼結体表
面の粒子構造を示した走査型電子顕微鏡(SEM)によ
る写真である。図5〜7に示した試料の粒界絶縁化処理
の条件については、塗布した酸化物の組成が同じ(Bi
23 ;50mol、CuO;50mol、CaCO
3 ;5molの割合)で、熱拡散温度も同じであり、そ
の塗布量のみ異なるものであり、図5ではその塗布量が
焼結体1gに対して8mg、図6では焼結体1gに対し
て45mg、図7では焼結体1gに対して90mgであ
る。
【0036】いずれの写真においても、焼結体表面に白
く光っている粒子を観察することができ、その粒子の数
は塗布量が増加するに従って増加し、その大きさも大き
くなっている。そこで、この白く光っている粒子に電子
線を照射して、EPMA分析を行った。図5〜7におい
て、a〜cの印は焼結体表面のEPMA分析を行った場
所を示しており、下記の表4〜6の値はa〜cにおける
各元素のEPMA強度及びBi/(Sr+Ca)及びT
i/(Sr+Ca)の強度比を示している。なお、前記
EPMAにおける強度の単位はcpsであり、ZAF補
正したものである。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】上記表4〜6より明らかなように、a〜c
の粒子中にはBiがかなりの量含有されており、塗布す
る酸化物の量が増加するに従い、Bi/(Sr+Ca)
及びTi/(Sr+Ca)の強度比が増加している。こ
れより焼結体表面に観察される粒子は焼結体内部の結晶
粒子とは異なり、前記酸化物の塗布により形成されたB
iを含有する相から構成されるものであることがわか
る。また、塗布量の増加によりBiの含有量が増加して
いることより、塗布量を増加させるに従い、塗布された
酸化物中のBiが焼結体の内部に侵入せず、表面に残留
していることがわかる。一方、表1〜3に示した電気的
特性又は図1に示したグラフよりわかるように、塗布す
る酸化物の量の増加とともに製造されたBL型コンデン
サの電気的特性も変化しており、一定量のBi含有相が
表面に形成された場合に優れた電気的特性を有するBL
型コンデンサが製造されている。
【0041】このように焼結体の表面に偏析するBi含
有相の量をコントロールすることにより製造されるBL
型コンデンサの電気的特性をコントロールすることがで
きることがわかった。
【0042】以上説明してきたように、実施例に係る製
造方法により製造された粒界絶縁型半導体磁器組成物に
あっては、結晶粒内が(Sr1-x Cax)a (TiNb
yb3 (式中x及びyは、それぞれ0<x≦0.1
50、0.001≦y≦0.010の範囲内の値で、か
つaとbは1.000≦b/a≦1.010の関係を満
たす値)で示される組成を有し、焼結体表面にBiを含
有する相が偏析しているので、結晶粒界に偏析している
酸化物と焼結体表面に偏析しているBiを含有する相の
両方を絶縁体層として利用することが可能になり、大き
な静電容量(C)を有し、かつ絶縁特性や静電容量温度
特性(τ)に優れたBL型コンデンサを作製し得るSr
TiO3 系の粒界絶縁型半導体磁器組成物を製造するこ
とができる。
【0043】なお、上記実施例においては、前記粒界絶
縁型半導体磁器組成物を製造する際の原料粉末として酸
化物及び炭酸塩を使用しているが、原料粉末の種類は上
記実施例のものに限定されず、実施例以外の酸化物や炭
酸塩でもよく、さらに硝酸塩、水酸化物、シュウ酸塩な
どであってもよい。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る粒界絶
縁型半導体磁器組成物にあっては、結晶粒内が(Sr
1-x Cax)a (TiNbyb3 (式中x及びyは、
それぞれ0<x≦0.150、0.001≦y≦0.0
10の範囲内の値で、かつaとbは1.000≦b/a
≦1.010の関係を満たす値)で示される組成を有
し、焼結体表面にBiを含有する相が偏析しているの
で、結晶粒界に偏析している酸化物と焼結体表面に偏析
しているBiを含有する相の両方を絶縁体層として利用
することが可能になり、大きな静電容量(C)を有し、
かつ絶縁特性や静電容量温度特性(τ)などに優れたB
L型コンデンサを作製し得るSrTiO3 系の粒界絶縁
型半導体磁器組成物を提供することができる。
【0045】また本発明に係る粒界絶縁型半導体磁器組
成物の製造方法にあっては、上記粒界絶縁型半導体磁器
組成物の製造方法であって、チタン酸ストロンチウム系
焼結体に、Bi23 、CuO、CaCO3 からなる物
質で、その割合が 40mol≦Bi23 ≦90mol、 10mol≦CuO≦60mol、 1mol≦CaCO3 ≦10mol、 Bi23 +CuO=100mol の条件を満足する組成の酸化物を、焼結体1g当たり1
0〜60mgの割合で塗布し、1000〜1350℃で
熱拡散させるので、前記組成物が加熱により焼結体の粒
界に熱拡散していくと同時に、前記焼結体の表面にも残
存し、これにより結晶粒界に偏析している酸化物と焼結
体表面に偏析しているBiを含有する相の両方を絶縁体
層として利用することが可能になり、大きな静電容量
(C)を有し、かつ絶縁特性や静電容量温度特性(τ)
に優れたBL型コンデンサを作製し得るSrTiO3
の粒界絶縁型半導体磁器組成物を製造することができ
る。
【0046】また、これらの発明を完成させた結果、従
来の容量性素子よりも汎用性の高いコンデンサ素子を電
子・電気器機回路等に提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例に係る粒界絶縁型半
導体磁器組成物において、酸化物の塗布量と電気的特性
との関係を示したグラフである。
【図2】実施例及び比較例に係る粒界絶縁型半導体磁器
組成物において、酸化物中のBi23 の割合と電気的
特性との関係を示したグラフである。
【図3】実施例及び比較例に係る粒界絶縁型半導体磁器
組成物において、酸化物中のCa2 CO3 の割合と電気
的特性との関係を示したグラフである。
【図4】実施例及び比較例に係る粒界絶縁型半導体磁器
組成物において、組成式中のxの値と電気的特性との関
係を示したグラフである。
【図5】比較例に係る焼結体表面の粒子構造を示したS
EM写真である。
【図6】実施例に係る焼結体表面の粒子構造を示したS
EM写真である。
【図7】比較例に係る焼結体表面の粒子構造を示したS
EM写真である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶粒内が(Sr1-x Cax)a (TiN
    yb3 (式中x及びyは、それぞれ0<x≦0.
    150、0.001≦y≦0.010の範囲内の値で、
    かつaとbは1.000≦b/a≦1.010の関係を
    満たす値)で示される組成を有し、焼結体表面にBiを
    含有する相が偏析していることを特徴とする粒界絶縁型
    半導体磁器組成物。
  2. 【請求項2】 チタン酸ストロンチウム系焼結体に、B
    23 、CuO、CaCO3 からなる物質で、その割
    合が 40mol≦Bi23 ≦90mol、 10mol≦CuO≦60mol、 1mol≦CaCO3 ≦10mol、 Bi23 +CuO=100mol の条件を満足する組成の酸化物を、焼結体1g当たり1
    0〜60mgの割合で塗布し、1000〜1350℃で
    熱拡散させることを特徴とする請求項1記載の粒界絶縁
    型半導体磁器組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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