JPH07303448A - ハードバター組成物及びチョコレート様食品 - Google Patents

ハードバター組成物及びチョコレート様食品

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JPH07303448A
JPH07303448A JP6121946A JP12194694A JPH07303448A JP H07303448 A JPH07303448 A JP H07303448A JP 6121946 A JP6121946 A JP 6121946A JP 12194694 A JP12194694 A JP 12194694A JP H07303448 A JPH07303448 A JP H07303448A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 常温においては、カカオ脂以上の硬度あるい
はスナップ性を有すると共に、体温付近においてはカカ
オ脂以上のシャープな融解性を示すような両方の性質を
兼ね備えたハードバター組成物を提供する。 【構成】 1,3−位に炭素数12〜22の飽和脂肪酸
残基を有し、2−位に炭素数12〜22の不飽和脂肪酸
残基を有する対称型トリグリセリドを少なくとも80重
量%以上含有し、その対称型トリグリセリドの0.5〜
20重量%が、1,3−位の一方の飽和脂肪酸残基が炭
素数12の飽和脂肪酸残基で、2−位の不飽和脂肪酸残
基が炭素数18の不飽和脂肪酸残基であるハードバター
組成物であって、1,2−位ジ飽和、3−位不飽和型ト
リグリセリドを3重量%以上含むことのないハードバタ
ー組成物。上記ハードバター組成物を5〜50重量%、
カカオ粉末5〜30重量%及び糖類10〜60重量%を
含むチョコレート様食品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、製菓、製パン等の食品
分野あるいは医薬品分野にて有利に利用されるハードバ
ター組成物に関する。特に、本発明は、充分な硬度、あ
るいはスナップ性とシャープな融解性とを兼ね備えたハ
ードバター組成物及びこれを用いたチョコレート様食品
に関する。
【0002】
【従来の技術】カカオ脂に代表されるハードバターは、
チョコレート製品を主とした製菓、製パン等の食品分野
で広く利用されている。ハードバターの要求性能は、室
温以下では充分な硬度を維持しながらも、体温付近に達
すると速やかに融解するという塑性領域が極めて狭い特
性を有することである。カカオ脂は約30〜32℃で軟
化しはじめ、約36℃では完全に融解する。この融解特
性に基づき冷涼感、風味の広がり等のハードバター製品
の特長が発揮される。
【0003】一般のハードバターを分類すると、構成成
分であるトリグリセリドの結晶性に応じてテンパー型と
ノンテンパー型に分けられる。テンパー型は、カカオ脂
に代表されるように、1,3−ジパルミトイル−2−オ
レオイルグリセリン(略称POP)、1−パルミトイル
−2−オレオイル−3−ステアロイルグリセリン(略称
POSt )、及び1,3−ジステアロイル−2−オレオ
イルグリセリン(略称St OSt )など、1,3−位ジ
飽和、2−位不飽和トリグリセリド(対称型トリグリセ
リド:略称SUS)を主成分としている。なお、カカオ
脂は、上記のような対称型トリグリセリドを約80重量
%含み、その中には炭素数12のラウリン酸は含まれて
おらず、一方、1,2−位ジ飽和、3−位不飽和トリグ
リセリド(略称SSU)の非対称型トリグリセリドがわ
ずかに含まれてる。
【0004】カカオ脂以外に、一般的なSUS成分の供
給には、SUS成分を多く含んでいる天然油脂、例え
ば、パーム油、シア脂、サル脂などの分画油、あるいは
酵素による選択的エステル交換反応によって得られるS
US成分に富んだ油脂の分画油をそのままもしくは適宜
配合して用いられている。カカオ脂以外で、SUS成分
が主成分であるハードバターの代表的なものとしては、
パーム中融点部(略称PMF)、St OSt を主成分と
する中融点部、あるいはこれらを適当な割合で配合して
なるハードバター組成物が知られている。
【0005】他方、ノンテンパー型にはヤシ油、パーム
核油を主原料とするラウリン系油脂と、パーム軟質油、
ナタネ油、大豆油などを異性化水添して得られるトラン
ス系油脂とがある。これらの油脂を分画処理して、その
融解性の向上が図られているが、低価格メリットで利用
されているのが現状であり、ハードバター本来の性能は
テンパー型には及ばない。
【0006】ところで、ハードバターの改良研究は、主
にファットブルームに関する研究(特開昭63−562
50号、同62−104547号、特開平1−2851
53号、同2−138937号各公報)やソフトさを与
える研究(特開昭63−248343号、特開平2−3
5039号、同2−65744号各公報)が多く進めら
れているが、ハードバターの本来の性能、すなわち、常
温においては、カカオ脂以上の硬度あるいはスナップ性
を有し、体温付近においてはカカオ脂以上のシャープな
融解性を示すような両方の性質を備えたハードバターに
関する研究、提案は殆ど為されていない。一般的にチョ
コレート製品の硬度あるいはスナップ性を向上させるに
は、カカオ脂に硬化油あるいはステアリン酸を主成分と
する高純度SUSなどの高融点油脂を配合することで対
処されているが、当然それらの配合に応じて体温付近で
の融解性は著しく低下する。また融解性を向上させるた
めには、低融点油脂の配合が一般的であるが、それによ
って常温付近での保存により硬度低下をもたらす。従っ
て、これらの妥協できる配合で利用されているのが現状
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、常温におい
ては、カカオ脂以上の硬度あるいはスナップ性を有する
と共に、体温付近においてはカカオ脂以上のシャープな
融解性を示すような両方の性質を兼ね備えたハードバタ
ー組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のよう
なスナップ性、シャープな融解性を兼ね備えたハードバ
ター組成物を求めて鋭意研究を行った。その結果、高含
有量の対称型トリグリセリド(SUS)において、1,
3−位の構成脂肪酸残基として炭素数12のラウリン酸
残基を有し、かつ2−位の構成脂肪酸残基として炭素数
18の不飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドを0.
5〜20重量%含有させ、そして1,2−位ジ飽和、3
−位不飽和型トリグリセリド(SSU)を3重量%以下
に抑えることにより、目的とするハードバター組成物が
得られることを見出し、本発明を完成させたものであ
る。このような優れたスナップ性とシャープな融解性と
が同時に達成されるのは、一定量のラウリン酸が導入さ
れたトリグリセリドはSUS中の他のトリグリセリドと
の相溶性が良く、また組成物中の非対称型トリグリセリ
ドの含有量を抑えたことにより、得られるハードバター
組成物の結晶性が極めて良好となったためと考えられ
る。
【0009】本発明は、1,3−位に炭素数12〜22
の飽和脂肪酸残基を有し、2−位に炭素数12〜22の
不飽和脂肪酸残基を有する対称型トリグリセリドを少な
くとも80重量%以上含有し、その対称型トリグリセリ
ドの0.5〜20重量%が、1,3−位の一方の飽和脂
肪酸残基が炭素数12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)残基
で、2−位の不飽和脂肪酸残基が炭素数18の不飽和脂
肪酸(オレイン酸及び/又はリノール酸)残基であるハ
ードバター組成物であって、1,2−位ジ飽和、3−位
不飽和型トリグリセリドを3重量%以上含むことのない
ハードバター組成物にある。
【0010】また本発明は、カカオ粉末5〜30重量
%、糖類10〜60重量%、そして1,3−位に炭素数
12〜22の飽和脂肪酸残基を有し、2−位に炭素数1
2〜22の不飽和脂肪酸残基を有する対称型トリグリセ
リドを少なくとも80重量%以上含有し、その対称型ト
リグリセリドの0.5〜20重量%が、1,3−位の一
方の飽和脂肪酸残基が炭素数12の飽和脂肪酸(ラウリ
ン酸)残基で、2−位の不飽和脂肪酸残基が炭素数18
の不飽和脂肪酸(オレイン酸及び/又はリノール酸)残
基であるハードバター組成物であって、1,2−位ジ飽
和、3−位不飽和型トリグリセリドを3重量%以上含む
ことのないハードバター組成物を5〜50重量%含有す
るチョコレート様食品にある。
【0011】本発明は、以下の態様であることが好まし
い。 (1)対称型トリグリセリドの1〜15重量%(更に好
ましくは、2〜10重量%)が、1,3−位の一方の飽
和脂肪酸残基が炭素数12の飽和脂肪酸残基で、2−位
の不飽和脂肪酸残基が炭素数18の不飽和脂肪酸残基で
ある。 (2)対称型トリグリセリド中の1,3−位の炭素数1
2〜22の飽和脂肪酸残基が、炭素数16のパルミチン
酸残基または炭素数18のステアリン酸残基である。 (3)対称型トリグリセリド中の2−位の不飽和脂肪酸
残基が、炭素数18のオレイン酸残基である。 (4)ハードバター組成物中の1,2−位ジ飽和、3−
位不飽和型トリグリセリド(略称SSU)の含有量が、
1重量%以下である。
【0012】以下に、本発明のハードバター組成物を詳
細に説明する。本発明のハードバター組成物は、1,3
−位に炭素数12〜22の飽和脂肪酸残基を有し、2−
位に炭素数12〜22の不飽和脂肪酸残基を有する対称
型トリグリセリド(SUS)を少なくとも80重量%以
上含有する。この対称型トリグリセリド中の0.5〜2
0重量%が、1,3−位の少なくとも一方の飽和脂肪酸
残基が炭素数12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)残基で、
2−位の不飽和脂肪酸残基が炭素数18の不飽和脂肪酸
残基を有するトリグリセリドである。このトリグリセリ
ドのSUS中での含有量が0.5重量%未満では目的と
するカカオ脂以上の硬度あるいはスナップ性は得ること
ができない。またその含有量が20重量%を越える場合
はカカオ脂以上のシャープな融解性を得ることができな
い。本発明において、該トリグリセリドのSUS中での
含有量は、1〜15重量%であることが好ましく、更に
好ましくは、2〜10重量%である。ここで、炭素数1
4〜22の飽和脂肪酸残基としては、例えば、ミリスチ
ン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及び
ベヘン酸などの残基を挙げることができる。また炭素数
18の不飽和脂肪酸残基としては、例えば、オレイン酸
残基、及びリノール酸残基を挙げることができる。本発
明において、上記飽和脂肪酸残基は、炭素数16又は1
8の飽和脂肪酸残基、すなわち、パルミチン酸残基又は
ステアリン酸残基であることが好ましい。また上記不飽
和脂肪酸残基は、オレイン酸残基であることが好まし
い。以上のような対称型トリグリセリド(SUS)の成
分のハードバター組成物中での含有量は85重量%以
上、特に90重量%以上であることが好ましい。
【0013】次に、上記1,2−位ジ飽和、3−位不飽
和型トリグリセリド(SSU)の非対称型のトリグリセ
リドについては、この含有量がハードバター組成物中3
重量%を越えると、上記のように80重量%以上を占め
るSUS成分中に、ラウリン酸残基含有トリグリセリド
を0.5〜20重量%含有させても、融解性は改良され
るが、低融点油脂を配合したものと同様な結果となり、
目的とする硬度あるいはスナップ性は得ることはできな
い。本発明において、SSU成分の含有量は、1重量%
以下であることが好ましい。
【0014】また本発明のバードバター組成物は、SU
S成分が上記のように80重量%以上を占めるような構
成とすると、1,2−位ジ飽和、3−位不飽和型トリグ
リセリド(SSU)以外に組成物中に含まれるトリグリ
セリドの成分は、本発明のバードバター組成物の製造過
程でほぼ決定されてしまうが、以下のように構成されて
いることが好ましい。すなわち、 i )1,2−位ジ不飽和、3−位飽和型トリグリセリド
(SUU)の含有量が10重量%以下(好ましくは、8
重量%以下、更に好ましくは7重量%以下) ii)トリ飽和型グリセリド(SSS)の含有量が、5重
量%以下(好ましくは、3重量%以下、更に好ましくは
2重量%以下) iii)トリ不飽和型グリセリド(UUU)の含有量が、5
重量%以下(好ましくは、4重量%以下、更に好ましく
は3.5重量%以下) iv) ジグリセリドの含有量が、5重量%以下(好ましく
は、3重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下)
【0015】上記 i )の1,2−位ジ不飽和、3−位
飽和型トリグリセリド(SUU)の含有量が10重量%
を越えると、低融点油脂を配合したものと同様な結果と
なり、目的とする硬度あるいはスナップ性は得にくくな
る。また上記 ii)の高融点成分であるトリ飽和型グリ
セリド(SSS)の含有量が5重量%を越えると融解性
が低下し易くなる。一方上記 iii)の低融点成分である
トリ不飽和グリセリド(UUU)の含有量が5重量%を
越えると、硬度あるいはスナップ性が低下し易くなる。
更にジグリセリドの含有量が、5重量%を越えると、硬
度あるいはスナップ性が低下し易くなる。
【0016】本発明のハードバター組成物は、天然油脂
あるいは酵素による選択的エステル交換反応油脂、選択
的エステル化反応生成物からの分画もしくは他の単離精
製技術又は化学合成技術により得られる。特に酵素によ
る選択的反応を利用すると、目的とするトリグリセリド
を容易に調製することができる。すなわち、トリグリセ
リド中の2位にオレイン酸、リノール酸が結合している
油脂と、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ス
テアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸又はそれらのエステ
ルとをグリセリドの1,3−位に位置特異性を有するリ
パーゼ等の存在下で1,3−位選択的エステル交換反応
をすることにより得ることができる。
【0017】なお、本発明のハードバター組成物には、
上記の成分以外に、他のグリセリド成分も不純物として
混入してくることがあるが、このような不純物はできる
かぎり少ないことが好ましい。また本発明のハードバタ
ー組成物は、従来のハードバター組成物と併用すること
により、硬度あるいはスナップ性の向上と融解性の向上
との両立に有効である。本発明のハードバター組成物
は、チョコレート製品に特に有利に利用できる。
【0018】
【実施例】以下に、本発明の実施例を記載し、本発明を
更に具体的に説明する。なお、以下の「%」は重量%を
意味する。
【0019】[実施例1]以下のようにして、1,3−
位ジ飽和、2−位不飽和型トリグリセリドを主成分とす
る油脂を調製した。 (調製品1)パーム油中融点部50重量部とパルミチン
酸(パルミチン酸純度96重量%)50重量部を混合
し、トリグリセリドの1、3−位に選択的なリパーゼを
用いてエステル交換し、反応生成物を脱酸してエステル
交換油を得た。このエステル交換油の低融点部をアセト
ン分別にて除去し、更に高融点部をヘキサン分別にて除
去し、POP(1,3−ジパルミトイル−2−オレオイ
ルグリセリン)を主成分とする中融点部を31重量部を
得た。
【0020】(調製品2)ハイオレックサフラワー油2
5重量部とステアリン酸(ステアリン酸純度92重量
%)75重量部を混合し、トリグリセリドの1、3−位
に選択的なリパーゼを用いてエステル交換し、反応生成
物を脱酸してエステル交換油を得た。このエステル交換
油の低融点部をアセトン分別にて除去し、更に高融点部
をヘキサン分別にて除去し、St OSt (1,3−ジス
テアロイル−2−オレオイルグリセリン)を主成分とす
る中融点部を12重量部を得た。
【0021】(調製品3)パーム中融点部(沃素価3
5.4)100重量部の低融点部をアセトン分別にて除
去し、POP(1,3−ジパルミトイル−2−オレオイ
ルグリセリン)を濃縮したハードパーム中融点部(沃素
価31.6)68重量部を得た。
【0022】(調製品4)パーム中融点部80重量部と
ラウリン酸(ラウリン酸純度98重量%)20重量部を
混合し、トリグリセリドの1,3−位に選択的なリパー
ゼを用いてエステル交換し、反応生成物を脱酸してエス
テル交換油を得た。このエステル交換油の低融点部をア
セトン分別にて除去し、更に高融点部をヘキサン分別に
て除去し、POL(1−パルミトイル−2−オレオイル
−3−ラウリルグリセリン)を主成分とする中融点部を
45重量部を得た。
【0023】(調製品5)ハイオレックサフラワー油2
5重量部とステアリン酸(ステアリン酸純度92重量
%)45重量部とラウリン酸(ラウリン酸純度98重量
%)35重量部を混合し、トリグリセリドの1、3−位
に選択的なリパーゼを用いてエステル交換し、反応生成
物を脱酸してエステル交換油を得た。このエステル交換
油の低融点部をアセトン分別にて除去し、更に高融点部
をヘキサン分別にて除去し、St OL(1−ステアロイ
ル−2−オレオイル−3−ラウリルグリセリン)を主成
分とする中融点部を11重量部を得た。
【0024】得られた調製品1〜5を下記の表1のよう
な配合(重量部)にて、ハードバター組成物1を調製し
た。
【0025】[実施例2]、[比較例1]及び[比較例
2]上記実施例1において、下記の表1のような配合に
変えた以外は、実施例1と同様にして対応するハードバ
ター組成物2(実施例2)、1−a(比較例1)及び2
−a(比較例2)をそれぞれ調製した。
【0026】
【表1】 表1 ──────────────────────────────────── ハードバター 調製品 調製品 調製品 調製品 調製品 組成物 1 2 3 4 5 ──────────────────────────────────── 1 (実施例1) 42 55 −− 3 −− 2 (実施例2) 58 30 −− −− 12 ──────────────────────────────────── 1−a(比較例1) 45 55 −− −− −− 2−a(比較例2) −− 55 42 3 −− ────────────────────────────────────
【0027】得られたハードバター組成物のグリセリド
組成を以下の表2に示す。なお、グリセリド組成の分析
は、ハードバター組成物を高速液体クロマトグラフィー
(Lichrospher 100 RP-18 ;Merck 社製)で分取分析
後、各フラクションを(Chromspher Lipids :Chrompak
社製)で構成脂肪酸残基の結合位置を確認した。更にガ
スクロマトグラフィー(デラボンドDB−1;J&W社
製)で構成脂肪酸残基の炭素数を確認した。表2には、
カカオ脂のデータも併記する。
【0028】
【表2】 表2 ──────────────────────────────────── グリセリド ハードバター組成物 組成(%) 実施例1 実施例2 比較例1 比較例2 カカオ脂 ──────────────────────────────────── SUS 86.4 85.4 86.1 85.0 83.4 ──────────────────────────────────── LOL 0.4 1.0 0.0 0.4 0.0 POL 1.6 0.0 0.0 1.6 0.0 St OL 0.0 6.7 0.0 0.0 0.0 ──────────────────────────────────── POP 35.3 47.4 37.2 29.6 16.3 POSt 2.5 2.8 2.6 6.3 38.8 St OSt 45.0 26.4 44.8 45.5 27.7 その他 1.6 1.1 1.5 1.6 0.6 ──────────────────────────────────── SUS中の 2.3% 9.0% −−− 2.4% −−− ラウリン酸含有量 ──────────────────────────────────── SUS以外の 13.6 14.6 13.9 15.0 16.6 グリセリド量 ──────────────────────────────────── Stt O 0.3 0.4 0.3 4.8 0.2 St OO 6.6 6.9 6.9 5.5 10.8 Sttt 1.5 1.7 1.5 1.8 1.2 OOO 3.2 3.5 3.1 2.0 2.1 ジグリセリド 2.0 2.1 2.1 0.9 2.3 ────────────────────────────────────
【0029】上記表2において、略称は以下の意味であ
る。 SUS:対称型トリグリセリド LOL:1,3ジラウリル−2−オレオイルグリセリン POL:1−パルミトイル−2−オレオイル−3−ラウ
リルグリセリン St OL:1−ステアロイル−2−オレオイル−3−ラ
ウリングリセリン POP:1,3−ジパルミトイル−2−オレオイルグリ
セリン POSt :1−パルミトイル−2−オレオイル−3−ス
テアロイルグリセリン St OSt :1,3−ジステアロイル−2−オレオイル
グリセリン St OO:1,2−ジオレオイル−3−ステアロイルグ
リセリン Sttt :1,2,3−トリステアロイルグリセリ
ン OOO:1,2,3−トリオレオイルグリセリン
【0030】[実施例3及び4]実施例1〜2で得られ
たハードバター組成物を用いて以下のような配合のチョ
コレート様食品(ハードストックな菓子)を製造し、ハ
ードバター組成物としての性能(硬度、融解性)を評価
した。 (ハードストックな菓子の配合) カカオ粉(油分11%) 15 重量部 ハードバター組成物 35 重量部 グラニュー糖 40 重量部 脱脂粉乳 10 重量部 レシチン 0.3重量部
【0031】ハードストックな菓子製造後、20℃に1
か月間保存し、硬度を測定した。硬度は、クリープメー
ター(RE−33005、山電(株)製)による破断応
力(dyn/cm2 )を測定し、評価した。また融解性
については、専門パネラー20名によりカカオ脂のみを
用いたハードストックな菓子(チョコレート)をコント
ロールとして官能評価を行った。評価は、以下の5段階
評価の平均値で表した。 2.0:極めて良い。 1.0:良い。 0.0:カカ
オ脂と同様 −0.1:悪い。 −2.0:極めて悪い。
【0032】[比較例3及び4]上記実施例3におい
て、比較例2及び3で得られたハードバター組成物を用
いた以外は、同様にしてチョコレート様食品を製造し、
評価した。結果を以下の表3に示す。表3には、カカオ
脂のみを用いた場合のデータも併記する。
【0033】
【表3】 表3 ──────────────────────────────────── ハードバター組成物 性能 実施例1 実施例2 比較例1 比較例2 カカオ脂 ──────────────────────────────────── 硬度 7800 8100 8000 5400 6400 ──────────────────────────────────── 融解性 1.2 1.8 −0.9 1.1 0.0 ────────────────────────────────────
【0034】上記表3に示された結果から、本発明に従
うハードバター組成物(実施例1及び2)を用いて製造
したチョコレート様食品は、カカオ脂のみで製造したチ
ョコレート以上の硬度を有し、また優れた融解性をも示
しており、この両者の特性が付与されていることがわか
る。一方、1,3−位の構成脂肪酸残基としてラウリン
酸残基を導入しないハードバター組成物(比較例1)を
用いても、充分な融解性は得られない。また従来のハー
ドバター組成物にラウリン酸残基を導入しても(比較例
2)、該ハードバター組成物中の1,2−位ジ飽和、3
−位不飽和型トリグリセリド(SSU)成分が3重量%
以上含まれると充分な硬度を得ることができないことが
わかる。
【0035】
【発明の効果】本発明のハードバター組成物は、カカオ
脂以上の硬度(スナップ性)と融解性とを兼ね備えてい
る。従って、製菓、製パン分野を始め、ハードバター組
成物を利用する製品に応用した場合、従来にない性能の
ものを作ることができる。特に、チョコレート製品の製
造に有用である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年7月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】以下に、本発明のハードバター組成物を詳
細に説明する。本発明のハードバター組成物は、1,3
−位に炭素数12〜22の飽和脂肪酸残基を有し、2−
位に炭素数12〜22の不飽和脂肪酸残基を有する対称
型トリグリセリド(SUS)を少なくとも80重量%以
上含有する。この対称型トリグリセリド中の0.5〜2
0重量%が、1,3−位の少なくとも一方の飽和脂肪酸
残基が炭素数12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)残基で、
2−位の不飽和脂肪酸残基が炭素数18の不飽和脂肪酸
残基を有するトリグリセリドである。このトリグリセリ
ドのSUS中での含有量が20重量%を越える場合は目
的とするカカオ脂以上の硬度あるいはスナップ性は得る
ことができない。またその含有量が0.5重量%未満で
はカカオ脂以上のシャープな融解性を得ることができな
い。本発明において、該トリグリセリドのSUS中での
含有量は、1〜15重量%であることが好ましく、更に
好ましくは、2〜10重量%である。ここで、炭素数1
4〜22の飽和脂肪酸残基としては、例えば、ミリスチ
ン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸及び
ベヘン酸などの残基を挙げることができる。また炭素数
18の不飽和脂肪酸残基としては、例えば、オレイン酸
残基、及びリノール酸残基を挙げることができる。本発
明において、上記飽和脂肪酸残基は、炭素数16又は1
8の飽和脂肪酸残基、すなわち、パルミチン酸残基又は
ステアリン酸残基であることが好ましい。また上記不飽
和脂肪酸残基は、オレイン酸残基であることが好まし
い。以上のような対称型トリグリセリド(SUS)の成
分のハードバター組成物中での含有量は85重量%以
上、特に90重量%以上であることが好ましい。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,3−位に炭素数12〜22の飽和脂
    肪酸残基を有し、2−位に炭素数12〜22の不飽和脂
    肪酸残基を有する対称型トリグリセリドを少なくとも8
    0重量%以上含有し、その対称型トリグリセリドの0.
    5〜20重量%が、1,3−位の一方の飽和脂肪酸残基
    が炭素数12の飽和脂肪酸残基で、2−位の不飽和脂肪
    酸残基が炭素数18の不飽和脂肪酸残基であるハードバ
    ター組成物であって、1,2−位ジ飽和、3−位不飽和
    型トリグリセリドを3重量%以上含むことのないハード
    バター組成物。
  2. 【請求項2】 カカオ粉末5〜30重量%、糖類10〜
    60重量%、そして1,3−位に炭素数12〜22の飽
    和脂肪酸残基を有し、2−位に炭素数12〜22の不飽
    和脂肪酸残基を有する対称型トリグリセリドを少なくと
    も80重量%以上含有し、その対称型トリグリセリドの
    0.5〜20重量%が、1,3−位の一方の飽和脂肪酸
    残基が炭素数12の飽和脂肪酸残基で、2−位の不飽和
    脂肪酸残基が炭素数18の不飽和脂肪酸残基であるハー
    ドバター組成物であって、1,2−位ジ飽和、3−位不
    飽和型トリグリセリドを3重量%以上含むことのないハ
    ードバター組成物を5〜50重量%含有するチョコレー
    ト様食品。
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