JPH07279256A - 建物のユニットボックスフレームの補強構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 柱の外寸を変えたり、柱と柱の間に間柱や耐
力壁を入れることなく柱の補強を図る。 【構成】 複数本の柱２の上端間および下端間に天井梁
４および床梁５を接合して鉄骨製のユニットボックスフ
レーム１を構成する。少なくとも１本の柱２は、角形鋼
管３内にコンクリート１０を充填した鋼管コンクリート
柱とする。この鋼管コンクリート柱は、鉄筋９の入った
鉄骨鉄筋コンクリート造とすることが望ましい。鉄筋９
は、柱２内に接合された上下のダイヤフラム８，８の孔
８ｂに上下端を挿入して位置決めする。各ダイヤフラム
８，８は、柱２に接合された天井梁４の下フランジ４ｂ
の高さ、および床梁５の上フランジ５ａの高さに各々位
置する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、鉄骨系の住宅その他
のユニット工法建物におけるユニットボックスフレーム
の補強構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ユニット工法建物において、変形
に対して柱の補強が必要な場合、柱の断面積を大きくす
るとか、柱・柱間に耐力壁や間柱を入れる等の方法が一
般に採られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、柱の断面積を
大きくして補強する場合、角形鋼管等の市販の形鋼の肉
厚が規格化されており、特殊なものが設計できない。そ
のため、断面積を大きくするには柱断面の外寸を大きく
することが必要となり、鉄骨材の寸法だけでなく、壁面
材や天井材，床材等の納まりにも影響する。これにより
ユニットボックスの量産性が低下する。また、柱と柱の
間に補強のために耐力壁を入れる場合は、住宅の間取り
に制限が出て来るため、プランニングが難しくなる。し
かも、ラーメン構造と耐力壁の力の分担を考える必要が
あり、構造設計も困難になる。また、柱と柱の間に間柱
を入れて剛接合する場合は、上下の剛接合部を部品化し
難く、かつ剛接合部の管理も難しい。

【０００４】この発明の目的は、柱断面の外寸を変えた
り、間柱や耐力壁を入れることなく柱の補強を図ること
のできる建物のユニットボックスフレームの補強構造を
提供することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明の建物のユニッ
トボックスフレームの補強構造は、複数本の柱と、これ
らの柱の上端間および下端間に接合した天井梁および床
梁を有する鉄骨製のユニットボックスフレームであっ
て、少なくとも１本の柱を、角形鋼管内にコンクリート
を充填した鋼管コンクリート柱としたものである。

【０００６】前記鋼管コンクリート柱は、コンクリート
内に鉄筋を埋め込んだ鉄骨鉄筋コンクリート造としても
よい。前記鋼管コンクリート柱は、この柱に接合された
天井梁の下フランジの高さ、および床梁の上フランジの
高さに各々位置するダイヤフラムが鋼管内に設けられた
ものとし、かつ上下のダイヤフラムに設けた鉄筋挿通孔
内に、鉄筋の上下端を挿通してもよい。

【０００７】

【作用】この構成によると、柱が角形鋼管内にコンクリ
ートの充填された鋼管コンクリート柱となるため、外寸
を変えることなく柱の強度を向上させることができる。
特に、屋根荷重等からの上載荷重に対する軸力の負担が
増やせ、また耐変形性が向上する。そのため、周辺の納
まりに影響を与えずに柱の補強が行え、しかも通常の規
格化された角形鋼管が使用できる。また、このように柱
の強度が増すため、柱と柱の間に間柱や耐力壁を入れる
ことなく、堅固なユニットボックスフレームとできる。

【０００８】鋼管コンクリート柱を、鉄骨鉄筋コンクリ
ート造とした場合には、さらにその強度を上げることが
でき、構造計算上有利となる。例えば、前記の軸力の負
担増大の余裕や、耐変形性がさらに向上する。鋼管内の
ダイヤフラムの鉄筋挿通孔に鉄筋を挿通させた場合は、
鋼管内での鉄筋の位置が定まり、均質な強度の柱とでき
る。ダイヤフラムは、柱の梁接合部の補強のために通常
に用いられるものであり、このダイヤフラムを鉄筋の位
置決めに利用するので、鉄筋の位置決め部材を別に設け
ることが不要で、位置決め作業が簡単となる。

【０００９】

【実施例】この発明の一実施例を図１ないし図３に基づ
いて説明する。図３はユニット工法建物に用いるユニッ
トボックスフレームを示す。このユニットボックスフレ
ーム１は、角形鋼管を外殻とした鋼管コンクリート柱か
らなる４隅の柱２の間に、溝形鋼からなる天井梁４と床
梁５とを溶接等で接合してラーメン構造のボックス状と
したものである。このユニットボックスフレーム１に壁
面材，天井材，床材等の各面材を張り付けてユニットボ
ックスとされる。

【００１０】各柱２は、図１に示す鉄骨鉄筋コンクリー
ト造の鋼管コンクリート柱としてある。柱２の外殻とな
る角形鋼管３の上下端には上部プレート６および下部プ
レート７が溶接により各々固定され、上部プレート６に
は柱２内にコンクリート１０を注入するための注入口６
ａが形成されている。また、角形鋼管３内には、角形鋼
管３に接合された天井梁４の下フランジ４ｂの高さ、お
よび床梁５の上フランジ５ａの高さに各々位置する上下
のダイヤフラム８，８が溶接により固定されている。こ
れらダイヤフラム８にはコンクリート１０の流入口８ａ
と複数の鉄筋挿通孔８ｂとが形成してあり、これら上下
のダイヤフラム８，８の各鉄筋挿通孔８ｂに鉄筋９の上
下端を挿通させることにより、角形鋼管３内に鉄筋９を
位置決め状態に設ける。このように鉄筋９を設けた角形
鋼管３内にコンクリート１０を充填し、これが硬化する
ことにより鉄骨鉄筋コンクリート造の柱２となる。

【００１１】コンクリート１０は、骨材を比較的小粒と
したものが好ましいが、コンクリート１０としてモルタ
ルを使用してもよい。なお、各柱２は、鉄筋９を使用せ
ずに図４の例のようにコンクリート１０の充填のみを行
った鋼管コンクリート柱としても良い。その場合、ダイ
ヤフラム８の鉄筋挿通孔８ｂ（図１）は不要である。ま
た、この鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄骨コンクリ
ート造の柱２は、この実施例では４本の柱２の全てに使
用しているが、補強の必要な一部の柱２のみを上記のコ
ンクリート入りの柱とし、他の柱２は単に角形鋼管また
は他の形鋼製のものとしても良い。

【００１２】鉄筋９の挿入およびコンクリート１０の充
填作業は、例えば次のように行う。すなわち、各柱２
は、角形鋼管３内に、予め孔加工された上下のダイヤフ
ラム８，８を溶接しておいて、鉄筋９をダイヤフラム８
の鉄筋挿通孔８ｂに挿通した後に上部プレート６と下部
プレート７とを角形鋼管３に溶接する。上下部プレート
６，７のいずれか一方は、鉄筋９の挿通前に溶接してお
いても良い。このように形成した柱２に各梁４，５を溶
接してボックス状フレームとなった状態で、上部プレー
ト６の注入口６ａから角形鋼管３内にノズル２０からポ
ンプでコンクリート１０を流し込む。流し込んだコンク
リート１０は、図２（Ａ）のように上下のダイヤフラム
８，８の流入口８ａを経て角形鋼管３内の全域に充填さ
れる。

【００１３】このようにボックス状フレームとした状態
でコンクリート１０の充填を行うことにより、充填作業
が容易に行え、また柱２と梁４，５との溶接がコンクリ
ート１０の未充填の状態で行えて、溶接作業も容易に行
える。さらに、柱２にコンクリート１０を充填するユニ
ットボックスフレーム１と、充填しないユニットボック
スフレームとの共用化が図れる。なお、上部プレート６
を外した状態で柱２と梁４，５をボックス状フレームに
組んでおき、その後に鉄筋９の挿入、コンクリート１０
の充填、および上部プレート６の溶接を行っても良い。

【００１４】この構成のユニットボックスフレーム１に
よると、柱２が角形鋼管３内に鉄筋９を通してコンクリ
ート１０を充填した鉄骨鉄筋コンクリート造（ＳＲＣ
造）となるため、外寸を変えることなく柱２の強度を向
上させることができる。特に、屋根荷重やその他の上載
荷重に対する軸力の負担が増やせ、また耐変形性が向上
する。このように外寸を変えずに柱２を補強できるた
め、周辺の納まりに影響が生じず、補強を行うユニット
ボックスと行わないユニットボックスとで壁や天井等の
納まりを全く同じものとでき、生産性が向上する。しか
も通常の規格化された角形鋼管３が使用できる。また、
このように柱２の強度が増すため、間柱や耐力壁を設け
ることが不要で、プランニングの制約が少ない。鉄筋９
は、ダイヤフラム８の鉄筋挿通孔８ｂに挿通して位置決
めするので、コンクリート１０内での鉄筋９の位置が精
度良く定まり、均質な強度の柱とできる。ダイヤフラム
８は、柱２の梁接合部の補強のために通常に用いられる
ものであり、このダイヤフラム８を鉄筋９の位置決めに
利用するので、鉄筋２の位置決め部材を別に設けること
が不要で、位置決め作業が簡単となる。

【００１５】なお、上記実施例では、鉄筋９をダイヤフ
ラム８の鉄筋挿通孔８ｂに単に挿通させたが、図２
（Ｂ）に示すように鉄筋９Ａとしてねじ溝付きのものを
用い、鉄筋９Ａの両端に螺着したナット１１，１１を上
下のダイヤフラム８，８の上下面に係合させて締め付け
ることにより、鉄筋９Ａに軸力を導入するようにしても
良い。このように鉄筋９Ａに軸力を導入しておくことに
より、コンクリート１０の充填時等に鉄筋９Ａが不用意
に撓むことが防止されて、コンクリート１０内での鉄筋
９Ａの位置精度が向上し、より均質な強度の柱２とでき
る。

【００１６】

【発明の効果】この発明の建物のユニットボックスフレ
ームの補強構造は、少なくとも１本の柱を、角形鋼管内
にコンクリートを充填した鋼管コンクリート柱としたた
め、柱の外寸を変えたり、柱・柱間に間柱や耐力壁を入
れることなく柱の補強を図ることができる。そのため、
柱周辺の壁面材等の納まりに影響せず、またプランニン
グの制約も少なく、構造設計も容易となる。前記鋼管コ
ンクリート柱を、コンクリート内に鉄筋を埋め込んだ鉄
骨鉄筋コンクリート造とした場合には、さらにその強度
を上げることができる。また、鋼管内に設けたダイヤフ
ラムに鉄筋を挿通して鉄筋の位置決めを行った場合は、
専用の位置決め部材を設けることが不要で、配筋を容易
に精度良く行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例にかかる建物のユニットボ
ックスフレームの柱部分を示す斜視図である。

【図２】（Ａ）は同柱部分の縦断面図、（Ｂ）は同柱部
分の変形例を示す縦断面図である。

【図３】同ユニットボックスフレームを使用するユニッ
トボックスの斜視図である。

【図４】この発明の他の実施例にかかる建物のユニット
ボックスフレームの柱部分を示す斜視図である。

【符号の説明】

１…ユニットボックスフレーム、２…柱、３…角形鋼
管、４…天井梁、４ｂ…下フランジ、５…床梁、５ａ…
上フランジ、８…ダイヤフラム、８ａ…注入口、８ｂ…
鉄筋挿通孔、９，９Ａ…鉄筋、１０…コンクリート

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数本の柱と、これらの柱の上端間およ
   び下端間に接合した天井梁および床梁を有する鉄骨製の
   ユニットボックスフレームにおいて、少なくとも１本の
   柱を、角形鋼管内にコンクリートを充填した鋼管コンク
   リート柱とした建物のユニットボックスフレームの補強
   構造。
2. 【請求項２】 前記鋼管コンクリート柱を、コンクリー
   ト内に鉄筋を埋め込んだ鉄骨鉄筋コンクリート造とした
   請求項１記載の建物のユニットボックスフレームの補強
   構造。
3. 【請求項３】 前記鋼管コンクリート柱を、この柱に接
   合された天井梁の下フランジの高さ、および床梁の上フ
   ランジの高さに各々位置するダイヤフラムが鋼管内に設
   けられたものとし、かつ上下のダイヤフラムに設けた鉄
   筋挿通孔内に、鉄筋の上下端を挿通した請求項２記載の
   建物のユニットボックスフレームの補強構造。