JPH07242931A - 局部硬化を有する部品の製造方法 - Google Patents

局部硬化を有する部品の製造方法

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JPH07242931A
JPH07242931A JP16381794A JP16381794A JPH07242931A JP H07242931 A JPH07242931 A JP H07242931A JP 16381794 A JP16381794 A JP 16381794A JP 16381794 A JP16381794 A JP 16381794A JP H07242931 A JPH07242931 A JP H07242931A
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hardening
camshaft
cam
laser
engine
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JP16381794A
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Shinobu Tsutsumigoshi
忍 堤腰
Susumu Ito
進 伊藤
Naohiko Tani
直彦 谷
Hikoharu Aoki
彦治 青木
Kentaro Obara
建太郎 小原
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Brother Industries Ltd
Suzuki Motor Corp
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Brother Industries Ltd
Suzuki Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 局部硬化を有する部品の製造方法において、
高効率で高品質なレーザ焼入れを行うと共に、部品の全
体または一部に、従来の化成処理に比較して、より耐摩
耗性、潤滑性、初期なじみなどに優れた機能を与えるこ
とになる。 【構成】 被加工物36の全部または一部に固体皮膜潤
滑剤40の皮膜を形成することで、耐摩耗性、潤滑性、
初期なじみ、耐食性などの特性を与え、しかる後に該固
体皮膜潤滑剤40の皮膜を形成した部位の一部であっ
て、かつ局部硬化を必要とする部位39にレーザ光32
を照射することにより、局部硬化を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、局部硬化を有する部品
の製造方法に係り、特に、4サイクルエンジンのカムシ
ャフトの溝部内等のように部分的に高硬度を必要とし、
かつ、高い耐摩耗性、潤滑性、初期なじみ、耐食性を必
要とする部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関例えば4サイクルエンジンに
は、シリンダーヘッドに給気・排気バルブ開閉用のカム
シャフトが設けられたオーバーヘッドカム方式のエンジ
ンがある。この種のエンジンにおいて、実公昭63−2
565号公報や、特開平3−107514に開示される
ような始動負荷軽減装置が付加されたものがある。この
始動負荷軽減装置は、重錘体の付いたガバナアームとス
プリングからなるガバナ機構を有しており、そのガバナ
機構で、エンジン低回転時(エンジン始動時)にデコン
プカムをカムベース円よりも突出させて圧縮工程で排気
弁を開き、シリンダー内の吸気の圧縮圧力を抜いて始動
時の付加を軽減するものである。
【0003】図7に、前記始動負荷軽減装置の付加され
たエンジンを構成部品のカムシャフトaを示す。図7の
ように、このエンジンには、カムシャフトaの軸部bに
デコンプカムを保持する部位が必要になる。この部位は
切り欠きcになっており、この部位を熱処理により硬化
させてその耐久性を増すため、例えばチルカムの場合は
高周波焼入れ等を行うのが一般的であった。なお、図7
において、切り欠きc底部の符号c1で示す斜線の範囲
が高周波焼入れされる部分であり、この切り欠きcは、
高周波焼入れのために高周波コイルを臨ませる必要か
ら、半径Rで大きく形成されている。また、符号dは排
気弁用カム、eは吸気弁用カムである。
【0004】また、この種の部品の製造方法としては、
レーザ焼入れなどの方法も知られている。次にレーザ焼
入れのプロセスを図11を参照して説明する。
【0005】レーザ発振器51から出射されたレーザ光
52は、反射鏡53によって方向を転換され、集光レン
ズ54に入射する。該レーザ光52は、該集光レンズ5
4によって集光される。該集光レンズ54の直下で、そ
の焦点55より外れた位置に、高炭素鋼である被加工物
56が駆動可能な加工テーブル57上に配置されてい
る。該被加工物56は、該レーザ光52の照射によって
急速に加熱される。同時に、該加工テーブル57の駆動
によって、該被加工物56が該レーザ光52に対して相
対移動を行う。この相対移動により、加熱された部位か
ら該レーザ光52の照射が外れることで、加熱が停止す
る。加熱された部位は、該被加工物56の内部への熱伝
導によって急速に冷却される。以上のようなプロセスに
より、該被加工物56の表面に局部硬化層58を形成す
るものである。
【0006】上記のレーザ焼入れの実施にあたっては、
該被加工物56の表面に、該レーザ光52の吸収を高め
るためのレーザ光吸収処理を施すことにより、高効率で
高品質なレーザ焼入れを行うことができる。
【0007】従来、これらのレーザ光吸収処理には、リ
ン酸マンガン処理などの化成処理が知られており、被加
工物56の表面に化成皮膜59を形成させるものであ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】二輪車等用の高回転エ
ンジンに用いられるカムシャフトの場合、軸受け部の振
れは0.003mm以内に押さえるのが一般的な要請で
ある。しかしながら、従来、この種のエンジンに始動負
荷軽減装置を付加したものにおいては、カムシャフトの
軸部に高周波焼入れのために比較的大きな切り欠きcを
設けており、さらにその切り欠きcに高周波焼入れを実
施することで軸部は大きく歪み、要求される軸部の振れ
精度を満たすのが困難となる。
【0009】特に切り欠きの形状と高周波焼入れ性とは
軸の歪みに対して相反する(トレードオフの)関係にあ
る。つまり、高周波焼入れ性を上げるためには、例えば
前記図7の切り欠きcのように焼入れされる部分c1の
周囲も含めて切り欠きを形成して、切り欠き形状を大き
くする必要があるが、切り欠きを大きくしたことにより
歪みが大きくなる。一方、切り欠きを小さくすると高周
波焼入れ性が悪化し、所要の硬化層を得るためには切り
欠きの大きい場合に比較して強く焼入れることから、焼
入れによる歪みが大きくなる。
【0010】したがって、カムシャフトの切り欠きとい
う局部を所要の硬化層が得られるように焼入れ処理すべ
きであるが、従来は、このような処理をなし得る製造方
法が提案されていないという問題点があった。
【0011】本発明は、前記従来の問題点を解決するた
めになされたものであって、その目的は、局部硬化を有
する部品の局部硬化を必要とする部位へ所要の硬化層が
得られるようにレーザ焼入れ技術を用いると共に、耐摩
耗性、潤滑性、初期なじみ、耐食性などに優れた、局部
が硬化される部品の製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するため次の構成を有する。請求項1の発明は、部品に
固体皮膜潤滑剤の皮膜を形成した後、前記固体皮膜潤滑
剤の皮膜を形成した部位であって、かつ局部硬化を必要
とする部位にレーザ光を照射することを特徴とする、局
部硬化を有する部品の製造方法である。
【0013】
【作用】請求項1の発明によれば、まず、部品に固体皮
膜潤滑剤の皮膜を形成する。その後、前記固体皮膜潤滑
剤の皮膜を形成した部位であって、かつ局部硬化を必要
とする部位にレーザ光を照射する。固体潤滑剤の皮膜を
レーザの吸収剤として利用し、局部硬化を必要とする部
位にレーザ光を照射することにより、当該部位を焼入れ
て所要の硬化層が得られる。また、固体皮膜潤滑剤がレ
ーザ光の吸収剤になるため、それ以外のレーザ光吸収剤
の塗布を省略できる。
【0014】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細
に説明する。この実施例は、局部硬化を有する部品であ
る、始動負荷軽減装置が付加された4サイクルオーバー
ヘッドカム方式エンジンのカムシャフトを本発明により
製造したものである。図1は、当該カムシャフトの構成
説明図である。図2は、当該カムシャフトのデコンプカ
ムの保持部(溝部等)を含む周辺の詳細説明図である。
図3は、前記カムシャフトが採用されるエンジンの全体
構成図である。図4は、前記エンジンのシリンダヘッド
周辺を詳細に示す構成説明図である。図5は、始動負荷
軽減装置の取り付け詳細説明図である。図6は、始動負
荷軽減装置の作動説明図である。
【0015】図1に示すように、本実施例のカムシャフ
ト10は、デコンプカム17の保持部である溝部11が
形成されていて当該溝部11が焼入れられたものであっ
て、前記溝部11の底部11aがレーザ光の移動照射ま
たはスポット照射により焼入れられているものである。
【0016】このカムシャフト10は、吸気カム12及
び排気カム13と軸部分が一体に形成された例えば鋳造
されたものであって、このカムシャフト10には、チェ
ーンスプロケット14が前記吸気カム12及び排気カム
13の軸方向形成側端部とは反対側端部の外周面に嵌合
されて、回転方向に固定されている。なお、吸気カム1
2及び排気カム13はチルカムに構成することができ
る。
【0017】前記溝部11は、図1及び図2に示すよう
に、排気カム13の途中からチェーンスプロケット14
の取り付け側に向けて延びて形成されており、この溝1
1の詳細は後述する。この溝11を含めて排気カム13
のチェーンスプロケット14側に始動負荷軽減装置は配
設されている。
【0018】始動負荷軽減装置はチェーンスプロケット
14側から軸方向に見て図5に詳細に示すようになって
おり、主に、ホルダー15、ガバナーアーム16、デコ
ンプカム17、及び受け片22からなる。
【0019】ホルダー15は、中央に孔を有した概略円
板形状を呈し、カムシャフト10に同心円状に取り囲む
ように配設され、かつ、排気カム13のチェーンスプロ
ケット14側に隣接する箇所に位置している。このホル
ダー15はキー15aによりカムシャフト10に対して
回転方向で固定され、かつ、サークリップ15bで軸方
向に固定されている。
【0020】ガバナーアーム16は、概略半円弧形状で
あって、その一端部がホルダー15に軸ピン16aで回
動自在に軸支され、また、ガバナーアーム16の他端部
には、略三角形形状で角部分が円弧形状になり、かつ、
カムシャフト10の軸方向に突出した二つの突起19が
一定距離離隔して設けられている。また、ガバナーアー
ム16とホルダー15には、軸ピン16aを挟むように
スプリング20が張り渡されており、このスプリング2
0によりガバナーアーム16がカムシャフト10の軸中
心方向に付勢され、かつカムシャフト10の回転により
スプリング20の張力に抗してガバナーアーム16が遠
心力により外方向に開くようになっている。
【0021】ホルダー15には、ガバナーアーム16の
先端の臨む位置にデコンプカム17を回動可能に軸支す
る円形の孔(円孔)21が形成され、かつ、該円孔21
を挟むように、周方向に一定距離離隔して二つの受け片
22が設けられている。この各受け片22は、前記ガバ
ナーアーム16が遠心力により揺動していない場合と揺
動した場合に前記突起19を受け止めて、ガバナーアー
ム16の作動範囲を規定するものである。
【0022】前記デコンプカム17には、カムシャフト
10軸の直角平面に沿ってピン23が突設されている。
このピン23は、前記二つの突起19間に位置するよう
に挿入され、ガバナーアーム16の揺動に伴った突起1
9の動作によりカムシャフト10周方向にほぼ沿って押
し圧されて、円孔21を中心に回動して該デコンプカム
17を回動させるようになっている。
【0023】なお、ホルダー15には、前記円孔21を
周方向から囲むように、前記ピン23の回動範囲を規制
するストッパー24が形成されている。
【0024】前記ガバナーアーム16の前端部が臨むカ
ムシャフト10上には前記溝部11が形成され、この溝
部11に始動負荷軽減装置のデコンプカム17が嵌入さ
れて回動する。図6に溝部11内にデコンプカム17が
位置している状態を示す。デコンプカム17は、図1、
図5、図6に示すように、カムシャフト10の軸方向に
沿って延びるほぼ円柱形状であって、その周面の一側に
切り欠き17aが形成されており、カムシャフト10の
回転変化すなわちエンジンの回転変化によってデコンプ
カム17の周面が、排気カム13の周面から突出したり
没入したりしてロッカーアーム25を介して排気弁を開
いたり閉じたりし、負荷の軽減を行う。
【0025】つまり、エンジンの低回転時(エンジンの
始動時)には、遠心力がガバナーアーム16にあまり作
用しないためガバナーアーム16は、図5の二点鎖線の
位置になり、デコンプカム17の切り欠き17aは二点
鎖線のように位置するためデコンプカム17の周面が排
気カム13の周面から突出して、負荷軽減運転をする。
一方、エンジンの高回転時には、ガバナーアーム16に
遠心力が作用して、ガバナーアーム16は図5の実線の
位置に移動し、デコンプカム17の切り欠き17aが破
線のように排気カム13の周面に臨むためエンジンは通
常運転をする。
【0026】ここで、前記溝部11は、図2に示すよう
に、カムシャフト10の周方向の幅が狭くなって、その
軸方向に沿って延び、かつ、所定の深さになるように深
い切り欠き(溝)に形成されており、前記溝部11のサ
イズは、前記デコンプカム17がほぼ収まる最小の寸法
になっている。なお、この溝部11の底部11aの給気
カム12側端部には、カムシャフト10の軸芯10aか
ら連通するオイル孔10bが開口しており、これによ
り、溝部11内にオイルを導いてデコンプカム17の作
動を円滑ならしめている。
【0027】前記の溝部11の形成されたカムシャフト
10に対して防錆皮膜処理のリン酸塩皮膜処理を施し、
また、潤滑皮膜処理のMoS2(二硫化モリブデン)皮
膜処理を施す。その後、最終工程として溝部11の底部
の焼入れを行う。該溝部11に挿入されるデコンプカム
17(相手部品に相当)の端部が当接する部分を重点的
に行うものする。すなわち、溝部11の底部11aは平
面に形成されており、この底部11aは焼入れられてい
る。この底部11aの焼入れは、レーザビームの照射に
より行う。
【0028】また、この焼入れは図2(c)にAで示す
範囲で行い、そのうち、デコンプカム17の両端の接す
る位置のa部及びb部にレーザビームを略直角にスポッ
ト照射し、所定(厚さや硬度等)の焼入れ硬化層を得
る。また、底部11aにおいてa部及びb部以外の部分
については、レーザビームを移動照射し、焼入れ硬化層
を浅く設定する。焼入れ硬化層は図2(c)、(d)の
斜線部のようになる。焼入れ深さはBのようになる。こ
れにより、カムシャフト10の曲がり歪みはほとんど無
くなり、その結果、焼入れ工程を最終工程に設定するこ
とができた。なお、レーザビームの照射は、焼入れ硬化
層が得られれば、スポット照射あるいは移動照射の一方
または双方を組み合わせて行うことができる。
【0029】また、焼入れ工程が最終工程になったた
め、通常実施している、防錆皮膜処理のリン酸塩皮膜処
理、潤滑皮膜処理のMoS2皮膜処理が、レーザ光の吸
収剤(一般的には黒鉛)として利用できる。したがっ
て、通常必要なレーザ光の吸収剤の塗布を省略できる利
点も生じる。本来この吸収剤は、部品完成後組立前に塗
布すればよかったが、熱処理前に実施するようにし、特
別のレーザ光の吸収剤の塗布はしない。
【0030】以上のように、実施例のカムシャフトで
は、カム面のみを鋳造時にチル化させ、他は必要部分の
みを熱処理して硬化される処理する方法で製造される。
また、対象となる熱処理部は、カムシャフト10の排気
カム13がロッカアーム25(図6に示す)に接触する
面を最大に取るべく溝形状をできるだけ縮小したもので
あって、その溝形状を最小にするのに最適な熱処理を採
用したものである。つまり、負荷軽減装置付きのカムシ
ャフト10は、デコンプカムの装着される溝部11の底
部11aに荷重がかかるが、この荷重に適切に対応する
ように荷重のかかる部分を重点的に熱処理することがで
きるものである。すなわち、デコンプカムの端部が接触
する最も力が加わり強度が必要で熱処理による硬化の最
も必要な部分であり、それ以外の部分は余り強度の必要
のない部分である。この最も強度の必要な底部11aの
み重点的に焼入れることになり、また、それ以外のあま
り強度の必要のないところは焼入れは適宜にしたりしな
かったりできるため、必要最小限の範囲だけの焼入れで
済み、カシャフトの曲がりなどの熱歪みを最小にするこ
とができる。
【0031】発明者の調査によれば、実施例において
は、レーザビームによるカムシャフトの溝部の底部への
焼入れをデコンプカム両端部の接触部分を中心にスポッ
ト的に行うため、カムシャフトの焼入れ歪みをほぼ無視
できるレベルに小さくすることができた。
【0032】また、レーザ焼入れのため、レーザ光を集
光する等して、微小な部分を焼入れることができるの
で、高周波焼入れに比較して焼入れのために切り欠きを
大きくする必要がない。したがって、カムシャフトの設
計自由度が高くなり、切り欠き形状を深溝の最小の物に
することができる。したがって、ロッカアームの耐久性
(特にフォロアー面)、カムシャフトの耐久性、ジャー
ナル部の耐焼き付き性が向上した。
【0033】また、レーザ焼入れを最終工程としたた
め、通常のレーザ吸収剤の塗布が不要となった。
【0034】次に図8および図9を参照して、レーザ焼
入れのプロセスの原理を説明する。
【0035】炭酸ガスレーザ発振器31から出射された
波長10.6μm(マイクロメートル)のレーザ光32
は、反射鏡33によって方向を転換され、集光レンズ3
4に入射する。該レーザ光32は、該集光レンズ34に
よって集光される。該集光レンズ34の直下で、その焦
点35より外れた位置に、高炭素鋼であって局部硬化を
必要とする被加工物36(図1乃至図5の実施例のカム
シャフト10ではFCD600のチルカムであり、焼入
れの必要な部分はHRB100前後の焼鈍状態である)
が駆動可能な加工テーブル37上に配置されている。該
被加工物36は、該レーザ光32の照射によって、急速
に加熱される。同時に、該加工テーブル37の駆動によ
って、該被加工物36が該レーザ光32に対して相対移
動を行う。この相対移動により、加熱された部位から該
レーザ光32の照射が外れることで、加熱が停止する。
加熱された部位は、該被加工物36の内部への熱伝導に
よって急速に冷却される。以上のような加熱、冷却プロ
セスにより、該被加工物36の表面にマルテンサイト変
態の領域38を得ることで、局部硬化を施すものであ
る。
【0036】該レーザ光32の照射位置を制御すること
により、局部硬化を必要とする部位39を選択的に硬化
させることが容易に可能である。
【0037】上記のレーザ焼入れを実施する前に、該被
加工物36の表面の全て、或いは耐摩耗性、摺動性、初
期なじみ、耐食性の少なくとも1つの機能を有する部位
及び局部硬化を必要とする部位39の表面に対して、二
硫化モリブデンを主成分とするデフリックコートと称さ
れる固体皮膜潤滑剤40を付着させる。その下地処理に
は、該固体皮膜潤滑剤40の密着性を高めるため、リン
酸マンガン処理による化成処理皮膜41を形成してい
る。
【0038】本来、鉄鋼材料表面における波長10.6
μm(マイクロ・メートル)のレーザ光32の吸収率は
10%以下である。本発明においては、該被加工物36
の表面に該固体皮膜潤滑剤40が存在することにより、
該レーザ光32の吸収率が70%以上となるため、高効
率で高品質のレーザ焼入れを施すことができる。
【0039】本発明である固体皮膜潤滑剤の皮膜と、従
来法であるリン酸マンガン等の化成処理皮膜によるレー
ザ焼入れ特性の比較を、図10を参照して説明する。
【0040】同条件下のレーザ焼入れで得られる硬化層
は、本発明である固体皮膜潤滑剤の皮膜と、従来法であ
る化成処理皮膜とで、同等またはそれ以上である。な
お、耐摩耗性、潤滑性、初期なじみ、耐食性などの機能
について、固体皮膜潤滑剤が化成処理よりも優れている
ことは公知の事実である。
【0041】なお、前記実施例では、本発明をカムシャ
フトに適用して好適な例を示したが本発明の実施範囲
(局部硬化を有する部品)はこれに限定されず、他の溝
の形成された軸状部品にも適用して好適なことはもちろ
んである。
【0042】また、溝部の底面は平面であれば、レーザ
ビームが均一に当たるため、焼入れが適切に行い得る
が、本発明の局部硬化を必要とする部位は底部に限定さ
れず、また底部の形状は平面に限定されないことはもち
ろんであり、例えば、曲面であったり、段の付いている
形状でも、本発明の範囲内である。
【0043】さらに、固体皮膜潤滑剤の種類としては、
二硫化モリブデンの他に二硫化タングステンなどを用い
ることもできる。
【0044】固体皮膜潤滑剤の下地処理には、皮膜の密
着性を高めるため、従来法である化成処理を施すことが
より望ましいが、仮に固体皮膜潤滑剤を単独に形成した
場合においても、レーザ焼入れ特性や潤滑特性などは同
等以上であり、本発明の効果を損なうことは無い。
【0045】また、レーザ焼入れの方法としては、集光
レンズの焦点から外した位置で照射する方法以外に、カ
ライドスコープを用いる方法などがあるが、何れの方法
においても、本発明の効果には影響しない。
【0046】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本
発明の局部硬化を有する部品の製造方法によれば、従来
の化成処理に比較して、より耐摩耗性、潤滑性、初期な
じみ、耐食性などに優れた機能が得られると共に、高効
率で高品質なレーザ焼入れを行うことができるといっ
た、産業上著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる始動負荷軽減装置が採
用された4サイクルオーバーヘッドカム方式エンジンの
カムシャフトの半断面構成説明図である。
【図2】(a)、(b)、(c)、(d)は、実施例の
負荷軽減装置が設けられたカムシャフトのレーザ焼入れ
された溝部を詳細に示す側面図、軸方向視図、要部平面
図、部分断面図である。
【図3】カムシャフトが採用されるエンジンの全体構成
を示す縦断面図である。
【図4】エンジンのシリンダヘッド周辺を詳細に示す構
成説明図である。
【図5】カムシャフトへの始動負荷軽減装置の取り付け
状態の詳細な説明図である。
【図6】デコンプカムの作動を説明するためのロッカー
アーム及びカムシャフトの構成説明図である。
【図7】(a)、(b)、(c)、(d)は、従来の、
負荷軽減装置が設けられたカムシャフトの高周波焼入れ
を詳細に示す側面図、軸方向視図、平面図、部分断面図
である。
【図8】本発明のレーザ焼入れプロセスを原理的に示す
概略図である。
【図9】本発明のレーザ焼入れプロセスの全体を示す概
略図である。
【図10】固体皮膜潤滑剤と、化成処理のレーザ焼入れ
特性の比較を示す図である。
【図11】従来法におけるレーザ焼入れ方法の概略を示
す図である。
【符号の説明】
31 炭酸ガスレーザ発振器 32 レーザ光 36 被加工物 39 局部硬化を必要とする部位 40 固体皮膜潤滑剤
フロントページの続き (72)発明者 谷 直彦 愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブ ラザー工業株式会社内 (72)発明者 青木 彦治 愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブ ラザー工業株式会社内 (72)発明者 小原 建太郎 愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 ブ ラザー工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部品に固体皮膜潤滑剤の皮膜を形成した
    後、前記固体皮膜潤滑剤の皮膜を形成した部位であっ
    て、かつ局部硬化を必要とする部位にレーザ光を照射す
    ることを特徴とする、局部硬化を有する部品の製造方
    法。
JP16381794A 1993-07-15 1994-07-15 局部硬化を有する部品の製造方法 Pending JPH07242931A (ja)

Priority Applications (1)

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JP16381794A JPH07242931A (ja) 1993-07-15 1994-07-15 局部硬化を有する部品の製造方法

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JP05175206 1993-07-15
JP5-175206 1993-07-15
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009540222A (ja) * 2006-06-03 2009-11-19 カーエス コルベンシュミット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ピストンヘッドのリング溝をレーザビームによって硬化させるための方法ならびに該方法により製作されたピストン
JP2011043132A (ja) * 2009-08-24 2011-03-03 Honda Motor Co Ltd 車両用内燃機関のシリンダヘッド構造

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