JPH07242075A - 高感度感熱孔版印刷原紙用ポリエステルフィルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 穿孔感度および耐カール性に優れ、印刷時の
画像の解像度、濃度に優れた高感度感熱孔版印刷原紙用
フィルムを提供する。 【構成】 エチレンテレフタレート単位を５０モル％以
上含むポリエステルとブチレンテレフタレート単位を５
０モル％以上含むポリエステルとからなる厚み０．５〜
３μｍの二軸延伸フィルムであって、当該フィルム中に
平均粒径（ｄ₁ ）が０．０５〜２μｍの不活性粒子
（Ａ）を０．１〜３重量％、および平均粒径（ｄ₂ ）が
０．１〜３μｍの不活性粒子（Ｂ）を０．００５〜１重
量％含有し、かつ下記式（１）〜（３）を同時に満足す
ることを特徴とする高感度感熱孔版印刷原紙用フィル
ム。 【数１】１．５≦ｄ₂ ／ｄ₁ ≦１０ ……（１） ［ＣＯＯＨ］≦５０ ……（２） １５０≦Ｆ≦５００ ……（３） （上記式中、［ＣＯＯＨ］はフィルム中の末端カルボキ
シル基量（当量／トン）、Ｆは１００℃で５時間処理後
の加熱収縮応力（ｇ／ｍｍ² ）を表す）

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、感熱孔版印刷原紙用ポ
リエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明
は穿孔感度および耐カール性に優れ、印刷時の画像の解
像度、濃度に優れた高感度感熱孔版印刷原紙用フィルム
に関する。

【０００２】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、感熱孔版印刷用原紙としては、ポリエステル等の熱
可塑性樹脂フィルムに多孔性薄葉紙をラミネートしたも
のが知られており、かかる用途に用いられるフィルムに
は、以下のような特性が要求される。 （１）フィルム製造時および原紙作成時の取扱い性およ
び生産性にも優れていること。具体的には、フィルム製
造時には、延伸性が良好で、破断等のトラブルを起こさ
ず、また巻取性、スリット性も良好で、巻取時にシワが
入ったり、巻きずれを起こしたりしないことが必要であ
る。原紙作成時においても、フィルムの巻出しや、工程
内でのフィルム走行等でのトラブルが発生しないことが
必要である。 （２）多孔性薄葉紙とのラミネートおよび印刷時の作業
に十分耐え得る強度、弾性率を有すること、また、かか
るラミネート条件あるいは保存中の温湿度変化によりカ
ールが生じないこと。カールが大きくなると、取り扱い
および孔版印刷機内で原紙の搬送性が不良となり、原紙
詰り等のトラブルが生じ大きな問題となる。

【０００３】（３）熱穿孔感度が良いこと。すなわち、
少量の熱量で溶融し、かつ、印刷時の画像が鮮明になる
ような適度な大きさの穿孔が得られるよう十分な熱収縮
特性を有することが求められる。 （４）多数回製版時においても熱穿孔感度が低下しない
こと。すなわち、離形層の界面活性剤やシリコンオイ
ル、フィルムの溶融カス等が感熱ヘッドの汚れとして付
着しないことが必要である。 （５）熱穿孔の階調性が良いこと。原紙として使用する
際、穿孔されるべき部分以外が周囲の穿孔の影響で溶融
してしまうと、印刷画像の階調性が劣るようになり、好
ましくない。すなわち、穿孔される部分と穿孔されない
部分とがはっきり区別できるような熱穿孔特性を有する
ことが求められる。 従来、かかる用途に用いるフィルムとして熱可塑性樹脂
を対象とした二軸延伸フィルムであって、その熱的特性
を規定することにより印刷特性を改善したフィルム（特
開昭６２−１４９４９６号公報）、表面の粗度および突
起個数を規定したフィルム（特開昭６３−２２７６３４
号公報）、あるいは熱収縮特性を規定したフィルム（特
開昭６２−２８２９８３号公報、特開昭６３−１６０８
９５号公報、特開昭６３−３１２１９２号公報、特開平
３−３０９９６号公報）等が提案されているが、上記し
た課題をすべて解決できるものではなかった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に鑑み鋭意検討した結果、特定の特性を有する２種以上
のポリエステル樹脂からなり、特定の粒子を含有し、特
定の収縮特性を有する二軸配向フィルムが、穿孔感度お
よび耐カール性に優れ、印刷時の画像の解像度、濃度に
優れた高感度感熱孔版印刷原紙用として好適であること
を見いだし、本発明を完成するに至った。

【０００５】すなわち、本発明の要旨は、エチレンテレ
フタレート単位を５０モル％以上含むポリエステルとブ
チレンテレフタレート単位を５０モル％以上含むポリエ
ステルとからなる厚み０．５〜３μｍの二軸延伸フィル
ムであって、当該フィルム中に平均粒径（ｄ₁ ）が０．
０５〜２μｍの不活性粒子（Ａ）を０．１〜３重量％、
および平均粒径（ｄ₂ ）が０．１〜３μｍの不活性粒子
（Ｂ）を０．００５〜１重量％含有し、かつ下記式
（１）〜（３）を同時に満足することを特徴とする高感
度感熱孔版印刷原紙用フィルムに存する。

【数２】 １．５≦ｄ₂ ／ｄ₁ ≦１０ ……（１） ［ＣＯＯＨ］≦５０ ……（２） １５０≦Ｆ≦５００ ……（３） （上記式中、［ＣＯＯＨ］はフィルム中の末端カルボキ
シル基量（当量／トン）、Ｆは１００℃で５時間処理後
の加熱収縮応力（ｇ／ｍｍ² ）を表す）

【０００６】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
用いるポリエステルとは、エチレンテレフタレート単位
を５０モル％以上、好ましくは７０モル％以上含むポリ
エステル、およびブチレングリコール単位を５０モル％
以上、好ましくは７０モル％以上含むポリエステルを指
す。エチレンテレフタレート単位およびブチレンテレフ
タレート単位が５０モル％未満では、フィルムの耐熱寸
法安定性が悪化して、原紙を製造する工程や原紙の保存
中にカールが発生したり、印刷画像の諧調性が劣るよう
になるので好ましくない。

【０００７】また、上記範囲内であれば、以下の第３成
分を含有していてもよい。芳香族ジカルボン酸またはそ
のエステル形成性誘導体の具体例とししては、イソフタ
ル酸、２，６−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、
セバシン酸、フタル酸またはこれらのエステル形成誘導
体などが挙げられる。また、グリコール成分としては、
エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレン
グリコール、ポリエチレングリコール、１，４−シクロ
ヘキサンジメタノールなどが挙げられる。

【０００８】本発明のフィルムは、フィルム製造時の巻
き上げ工程、原紙作成時のコーティング、貼り合わせ工
程および印刷時の作業性を向上させるため、あるいは熱
穿孔時のサーマルヘッドとフィルムとの融着を防止する
ため、表面を粗面化してフィルムに適度な滑り性が付与
させる必要があり、そのために微細な不活性粒子をポリ
エステル中に添加する。本発明で用いる不活性粒子
（Ａ）の平均粒径（ｄ₁ ）は０．０５〜２μｍ、好まし
くは０．１〜１．５μｍである。ｄ₁ が０．０５μｍ未
満では、フィルムの滑り性が不足し、作業性が低下する
ので好ましくない。また、ｄ₁ が２μｍを超えると、フ
ィルム表面の平面性が損なわれて熱伝達にムラが生じ、
穿孔が不均一となり、解像度が劣ったり、印字品位性を
損なったりするため好ましくない。

【０００９】また、粒子（Ａ）の添加量は０．１〜３重
量％、好ましくは０．２〜２重量％である。添加量が
０．１重量％未満では、フィルムの滑り性が不足し、作
業性が低下するので好ましくない。また、添加量が３重
量％を超えるとフィルム表面の平面性が損なわれて熱伝
達にムラが生じ、穿孔が不均一となり、解像度が劣った
り、印字品位性を損なったりするため好ましくない。近
年ますます超高感度化の傾向にあり、１．５μｍ未満の
超極薄ベースフィルムが強く望まれている。このような
超極薄フィルムになると表面突起個数が減少し、滑り性
が極度に低下するため、粒子の添加量は無機粒子の場合
は０．６〜２重量％、有機粒子の場合は０．３〜１重量
％とすることが特に好ましい。

【００１０】本発明で用いる不活性粒子（Ｂ）の平均粒
径（ｄ₂ ）は０．１〜３μｍ、好ましくは０．３〜２μ
ｍである。ｄ₂ が０．１μｍ未満では、巻き特性が劣る
ので好ましくない。ｄ₂ が３μｍを超えると、フィルム
表面の平面性が損なわれて熱伝達にムラが生じ、穿孔が
不均一となり、解像度が劣ったり、印字品位性が損なわ
れたりするため好ましくない。粒子（Ｂ）の添加量は
０．００５〜１重量％、好ましくは０．０１〜０．８重
量％である。添加量が０．００５重量％未満では、フィ
ルムの巻き特性が劣るので好ましくない。添加量が１重
量％を超えると、フィルム表面の平面性が損なわれて熱
伝達にムラが生じ、穿孔が不均一となり、解像度が劣っ
たり、印字品位性が損なわれたりするため好ましくな
い。

【００１１】本発明において不活性粒子（Ｂ）の平均粒
径（ｄ₂ ）と不活性粒子（Ａ）の平均粒径（ｄ₁ ）との
比（ｄ₂ ／ｄ₁ ）を１．５〜１０、好ましくは２〜７に
するならば、フィルムを巻き取る際、随伴する空気層を
素早く減少させることができ、良好なフィルム巻き特性
を享受することができる。ｄ₂ ／ｄ₁ が１．５未満では
巻き特性の改良が不十分となるので好ましくない。また
ｄ₂ ／ｄ₁ が１０を超えると、フィルム表面の粗面化の
度合いが大き過ぎて熱伝達にムラが生じ、穿孔が不均一
となり、解像度が劣ったり、印字品位性が損なわれたり
するため好ましくない。

【００１２】本発明で用いる不活性粒子（Ａ）および不
活性粒子（Ｂ）の例としては、シリカ、球状シリカ、酸
化チタン、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、セラ
イト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、
炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸
カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ
化リチウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタ
ン、カオリン、タルク、カーボンブラック、窒化ケイ
素、窒化ホウ素、特公昭５９−５２１６号公報に記載さ
れているような架橋高分子微粉体および特開昭５９−２
１７７５５号公報に記載されているような乳化重合法で
製造された球状の架橋高分子粒子等を挙げることができ
る。

【００１３】これらのうち不活性粒子（Ａ）として好ま
しいものは炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、
タルク、有機粒子等のモース硬度が５未満の不活性粒
子、その中でも特に好ましいものは有機粒子である。ま
た、不活性粒子（Ｂ）として好ましいものは球状シリ
カ、球状炭酸カルシウム、球状有機粒子等の粗大粒子が
極めて少ない球状粒子を挙げることができ、その中でも
特に好ましくは球状有機粒子である。

【００１４】本発明においてポリエステルに不活性粒子
を配合する方法としては特に限定はないが、例えば不活
性粒子をポリエステルの重合工程に添加する方法、また
はフィルム化前に溶融混練りする方法が好ましく採用さ
れる。本発明においては上記したような方法により表面
を適度に粗面化したフィルムを得るが、作業性や印刷時
の解像度、印字品位性をさらに高度に満足させるために
は、フィルム表面の中心線平均粗さ（Ｒａ）が０．０２
〜０．３μｍであることが好ましく、さらに好ましくは
０．０５〜０．２μｍの範囲であり、かかる範囲となる
よう適宜、条件を選択することが望ましい。

【００１５】本発明におけるポリエステルフィルムの末
端カルボキシル基量（［ＣＯＯＨ］）は５０当量／トン
以下、好ましくは４０当量／トン以下である。また、フ
ィルムの原料であるブレンド前の各々のポリエステルレ
ジン中の末端カルボキシル基量は、フィルム製造時、エ
クストルーダーに代表される周知の溶融押出装置で２種
以上のポリエステルをブレンドする際に熱履歴等で増加
するため、好ましくは３０当量／トン以下とする。フィ
ルム中の末端カルボキシル基が５０当量／トンを超える
と、フィルム製造時、エクストルーダーに代表される周
知の溶融押出装置で２種以上のポリエステルをブレンド
する際のランダム化が不十分となり、得られたフィルム
は短時間で均一な穿孔が起こらず、印刷画像の階調性が
劣るようになるので好ましくない。また、本発明におい
ては、フィルムの最も高い融点（Ｔｍ₂ ）と最も低い融
点（Ｔｍ₁ ）との差が２０℃未満、さらには１５℃未満
が好ましいが、かかる温度差が２０℃を超えると短時間
で均一な穿孔が起こらず、印刷画像の階調性が劣るよう
になる恐れがある。

【００１６】本発明のフィルムは１００℃で５秒間処理
後のフィルムの加熱収縮応力（Ｆ）が１５０〜５００ｇ
／ｍｍ² 、好ましくは１５０〜３５０ｇ／ｍｍ² であ
る。Ｆが１５０ｇ／ｍｍ² 未満では、穿孔時に穴が広が
る力が不足して、印刷時に鮮明な画像が得られるほどの
十分な大きさを有する穿孔が得られなくなるため好まし
くない。Ｆが５００ｇ／ｍｍ² を超えると、太さムラ、
濃淡ムラあるいは寸法変化が生じるので好ましくない。
また、１００℃で１０分間処理後の加熱収縮率（Ｓ）は
５〜５０％、さらには１０〜４０％が好ましい。Ｓが５
％未満では、穿孔感度が不足して印刷時の画像濃度が低
下する傾向がある。また、Ｓが５０％を超えると、穿孔
ムラが生じやすくなる恐れがある。本発明のフィルムの
厚みは０．５〜３μｍ、好ましくは０．５〜２μｍ、さ
らに好ましくは０．５μｍ以上で１．５μｍ未満であ
る。フィルム厚みが薄くなれば熱伝導距離が短縮され、
穿孔時に必要な熱エネルギーも減少するため穿孔性が向
上し、印刷時の解像度や印字品位性が向上するが、厚み
０．５μｍ未満では印字が不鮮明で濃淡むらが生じやす
く、かつ耐刷性も著しく低下するようになり好ましくな
い。また、厚みが３μｍを超えると、穿孔性が悪化する
ため印刷時にムラが生じるようになるため好ましくな
い。

【００１７】本発明のフィルムは、極めて薄いフィルム
であるので、フィルムの長手方向と幅方向の引張弾性率
をともに通常３００ｋｇ／ｍｍ² 以上、好ましくは３５
０ｋｇ／ｍｍ² 以上とすることにより、取り扱い作業性
や耐刷性がより良好となる。次に本発明のポリエステル
フィルムの製造方法について説明する。本発明において
は、ポリマーをエクストルーダーに代表される周知の溶
融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に
加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをスリット
状のダイから押し出し、回転冷却ドラム上でガラス転移
温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶
状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性
を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性
を高める必要があり、本発明においては静電印加密着法
および／または液体塗布密着法が好ましく採用される。

【００１８】本発明においては、このようにして得られ
たシートを２軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条
件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ま
しくは２０〜１００℃、さらに好ましくは２５〜８０℃
の温度範囲で、まず一方向にロールもしくはテンター方
式の延伸機により２．５〜７倍、好ましくは３．０〜５
倍に延伸する。次に一段目と直交する方向に好ましくは
２０〜１００℃、さらに好ましくは２５〜９０℃の温度
範囲で２．５〜７倍、好ましくは３．０〜５倍に延伸を
行い、２軸に配向したフィルムを得る。なお、一方向の
延伸を２段階以上で行う方法も用いることができるが、
その場合も最終的な延伸倍率が上記した範囲に入ること
が望ましい。また、前記未延伸シートを面積倍率が６〜
４０倍になるように同時二軸延伸することも可能であ
る。かくして得られたフィルムを熱処理してもよく、ま
た必要に応じ熱処理を行う前または後に再度縦および／
または横方向に延伸してもよい。

【００１９】本発明においては、前記した熱収縮特性を
有するフィルムを得るために、延伸倍率を面積倍率とし
て６倍以上、延伸後の熱処理を実質的に行わないか、行
ったとしても１１０℃以下、さらには９０℃以下とし、
熱処理時間は１秒〜５分間でフィルムを３０％以内の伸
長または定長下で行うことが好ましい。また常法に従っ
て、所定の多孔性薄葉紙を公知の接着剤を用いてラミネ
ートして感熱孔版印刷用原紙を製造する際の４０〜５０
℃程度の乾燥工程、および夏場を経る長期保存中にフィ
ルムの収縮に起因すると考えられるカールが発生するこ
とがある。したがって、本発明においてはカール防止の
ため、得られたフィルムを４０〜７０℃で５時間から５
日間、好ましくは４５〜６０℃で１２時間〜３日間エー
ジング処理することにより耐カール性が良好となる。な
お、本発明においては、製膜に供するポリエステル全量
に対し、１０重量％程度以下の他のポリマー（例えばポ
リエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリス
ルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリ
イミド等）を含有させることができる。また、必要に応
じ、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、染
料、顔料等の添加剤を配合してもよい。

【００２０】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用い
た物性測定法は以下に示すとおりである。 （１）微粒子の平均粒径 （株）島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置ＳＡ−
ＣＰ３型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法に
よって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒
子の等価球形分布における積算（体積基準）５０％の値
を用いて平均粒径とした。 （２）末端カルボキシル基量の測定 Ａ．Ｃｏｎｉｘの方法（Ｍａｋｒｏｍｏｌ．ｃｈｅ
ｍ．，２６，２２６（１９５８））に従って測定した。

【００２１】（３）融点 セイコー電子工業（株）製差動熱量計ＳＳＣ５８０ＤＳ
Ｃ２０型を用いて測定した。すなわち、試料フィルム１
０ｍｇをＤＳＣ装置にセットし、１０℃／ｍｉｎの速度
で昇温し、０℃〜３００℃の範囲で測定し、融点を融解
吸熱ピークの頂点として測定し、最も低い融点をＴｍ
₁ 、最も高い融点をＴｍ₂ とした。 （４）中心線平均粗さ（Ｒａ） 日本工業規格ＪＩＳ Ｂ０６０１に記載されている方法
に従い、（株）小坂研究所製表面粗さ測定機（ＳＥ−３
Ｆ）を用いて、中心線平均粗さ（Ｒａ）を求めた。な
お、触針の先端半径は２μｍ、荷重は３０ｍｇとし、カ
ットオフ値は０．０８ｍｍとした。

【００２２】（５）滑り性（μｄ） 平滑なガラス板上に、幅１５ｍｍ、長さ１５０ｍｍに切
り出したフィルム同士を２枚重ね、その上にゴム板を載
せ、さらにその上に加重を載せて２枚のフィルム接圧を
２ｇ／ｃｍ² として、２０ｍｍ／ｍｉｎでフィルム同士
を滑らせて摩擦力を測定した。５ｍｍ滑らせた点での摩
擦係数を動摩擦係数（μｄ）とした。 （６）加熱収縮応力（Ｆ） フィルムを幅１０ｍｍの短冊状に切り出し、一端を荷重
検出器のチャックに、もう一方を固定チャックにセット
し、チャック間は５０ｍｍとした。初期荷重をかけない
状態で、フィルムを１００℃のウォーターバス中に浸漬
し、浸漬開始から５秒後の応力値を測定した。フィルム
縦方向と横方向に５点ずつ測定し、浸漬前のフィルム断
面積から加熱収縮応力（ｇ／ｍｍ² ）を算出し、その平
均値をＦとした。

【００２３】（７）加熱熱収縮率（Ｓ） 試料を無張力状態で１００℃に保ったオーブン中、１０
分間熱処理し、その前後の試料の長さを測定して次式に
て熱収縮率を算出した。

【数３】 なお、フィルム縦方向と横方向に５点ずつ測定し、その
平均値をＳとした。

【００２４】（８）巻き特性 直径１５ｃｍの紙管にラインスピード約１７０ｍ／分で
製造されるフィルムを６０００ｍ巻き取り端面の状態を
観察し、次の３ランクに分けた。 ◎…端面がすべて揃っている 〇…端面がほぼ揃い、実用可能 △…端面の一部が不揃い ×…端面のかなりの部分が不揃い （９）耐カール性 １．５μｍのポリエステルフィルムに支持体としてマニ
ラ麻の繊維からなる和紙を用い、接着剤としてビニル系
樹脂をトルエンに溶解したものを用い、フィルムと和紙
をラミネートし、５０℃のエアーオーブンで１０秒間乾
燥し、感熱孔版原紙を得た。得られた原紙を５０℃−湿
度９０％の恒温恒湿中で１週間処理した後、原紙の搬送
試験を行い、下記の基準で評価した。 ○…ややカールがあるものの、良好に搬送できる ×…カールが大きく、搬送トラブルの発生頻発する

【００２５】（１０）感熱孔版印刷原紙実用特性 （９）の項に記載の方法で得られた原紙をサーマルヘッ
ドにより、印加エネルギー０．０９ｍＪおよび０．１２
ｍＪにて文字画像および１６段階の階調画像を製版し
た。製版された原紙のフィルム側から顕微鏡で階調画像
部の穿孔状態を観察し、以下の項目について評価した。

【００２６】穿孔感度 ◎…所定の穿孔が確実に行われ、穿孔の大きさも十分で
あり、非常に良好 ○…所定の穿孔がほぼ確実に行われ、穿孔の大きさも十
分であり良好 △…まれに所定の穿孔が得られない部分や穿孔の大きさ
が不十分な部分がある ×…所定の穿孔が得られない部分が数多くあり、穿孔の
大きさも不十分であり、実用上支障がある。

【００２７】印字品位性 製版原紙を用い、理想科学工業（株）製リソグラフＡＰ
７２００印刷機を用いて実際に印刷し、得られた文字、
画像について、下記の特性を目視で判定した。 ◎…濃度のムラ、にじみが全くなく、鮮明に印字でき、
非常に良好 ○…濃度のムラ、にじみがなく、鮮明に印字でき、良好 △…わずかに濃淡のムラ、にじみが認められ、やや鮮明
さに欠ける ×…濃淡のムラ、あるいはにじみ、かすれがはっきり出
ている

【００２８】耐刷性 ○…２０００枚以上の連続印刷が可能 ×…数百枚程度しか連続印刷ができない

【００２９】実施例１ （ポリエステル−Ａの製造）テレフタル酸ジメチル７８
重量部、イソフタル酸ジメチル２２重量部およびエチレ
ングリコール６０部を出発原料とし、触媒として酢酸マ
グネシウム・４水塩０．０９重量部を反応器にとり、反
応開始温度を１５０℃とし、メタノールの留去とともに
徐々に反応温度を上昇させ、３時間後に２３０℃とし
た。４時間後、実質的にエステル交換反応の終了したこ
の反応混合物に平均粒径が１．１５μｍの球状有機粒子
０．４重量部と平均粒径が０．５５μｍの球状有機粒子
０．８重量部とを含有するエチレングリコールスラリー
２０重量部を添加し、エチルアシッドフォスフェート
０．０４部、三酸化アンチモン０．０４部を加えて、３
時間３０分重縮合反応を行った。すなわち、温度を２３
０℃から徐々に昇温し、２８０℃とした。一方、圧力は
常圧より徐々に減じ、最終的には０．３ｍｍＨｇとし
た。反応開始後、３時間３０分を経た時点で反応を停止
し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエ
ステルの極限粘度は０．５１であった。次いで得られた
ポリマーを２２５℃で０．３ｍｍＨｇの条件下、１０時
間固相重合を行った。得られたポリエステルの極限粘度
は０．７１、末端カルボキシル基は２０当量／トン で
あった。

【００３０】（ポリエステル−Ｂの製造）テレフタル酸
ジメチル１００重量部、１，４−ブタンジオール５６重
量部およびテトラブチルチタネート０．００４量部を反
応器にとり、反応開始温度を１５０℃とし、メタノール
の留去とともに反応温度を徐々に上昇させ、３時間後に
２１０℃とした。４時間後、実質的にエステル交換反応
が終了したこの反応混合物にテトラブチルチタネート
０．００４量部を加えて、３時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を２１０℃から徐々に昇温し２６０℃と
した。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には
０．３ｍｍＨｇとした。反応開始後、３時間を経た時点
で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得
られたポリエステルの極限粘度は０．８０であった。次
いで得られたポリマーを２００℃で０．３ｍｍＨｇの条
件下、１０時間固相重合を行った。得られたポリエステ
ルの極限粘度は１．０５、末端カルボキシル基は１９当
量／トン であった。

【００３１】（ポリエステルフィルムおよび感熱孔版印
刷用原紙の製造）ポリエステル−Ａ ５０重量部とポリ
エステル−Ｂ ５０重量部とを均一にブレンドし、２６
５℃にて押出機よりシート状に押出し、表面温度を３０
℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却法を利用し
て急冷固化させ、厚み１４μｍの実質的に非晶質のシー
トを得た。得られたシートを縦方向に６５℃で３．５
倍、横方向に７０℃で３．７倍に延伸し、さらに９０℃
で６秒間熱処理を施し、厚み１．１μｍの二軸配向フィ
ルムを製造した。得られたポリエステルフィルムの末端
カルボキシル基量は３４当量／トンであった。次いで、
得られたフィルムを常法に従い、多孔性薄葉紙に貼り合
わせ、５０℃で２４時間エージング処理を行い感熱孔版
印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行った。

【００３２】実施例２ 実施例１のポリエステル−Ａの製造において、テレフタ
ル酸ジメチル７８重量部とイソフタル酸ジメチル２２重
量部の代わりにテレフタル酸ジメチル８５重量部、イソ
フタル酸ジメチル１５重量部とする以外は実施例１と同
様の方法で感熱孔版印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行
った。その際、得られたポリエステルフィルムの末端カ
ルボキシル基量は３３当量／トンであった。 実施例３ 実施例１のポリエステル−Ａの製造において、添加する
粒子を平均粒径が０．８２μｍの球状有機粒子０．４重
量部と平均粒径が０．３１μｍの球状有機粒子０．８重
量部とする以外は実施例１と同様の方法で感熱孔版印刷
用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その際、得られた
ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量は３５当
量／トン であった。

【００３３】実施例４ 実施例３のポリエステル−Ａの製造およびポリエステル
フィルムの製造において、添加する粒子を平均粒径０．
８２μｍの球状有機粒子０．４重量部と平均粒径が０．
３１μｍの球状有機粒子１．０重量部とし、非晶質のシ
ート厚みを１１μｍとする以外は実施例１と同様の方法
で感熱孔版印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行った。そ
の際、得られたポリエステルフィルムの厚みは０．８μ
ｍ、末端カルボキシル基量は３５当量／トンであった。

【００３４】比較例１ 実施例１のポリエステルフィルムの製造において、ポリ
エステル−Ａ５０重量部とポリエステル−Ｂ５０重量部
の代わりにポリエステル−Ａ１００重量部とする以外は
比較例１と同様の方法で感熱孔版印刷用原紙を作成し、
謄写印刷を行った。その際、得られたポリエステルフィ
ルムの末端カルボキシル基量は３２当量／トンであっ
た。 比較例２ 実施例１のポリエステル−Ａの製造において、添加する
球状有機粒子を平均粒径が０．５５μｍの球状有機粒子
を０．６重量部とする以外は実施例１と同様の方法で感
熱孔版印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その
際、得られたポリエステルフィルムの末端カルボキシル
基量は３５当量／トンであった。

【００３５】比較例３ 実施例１のポリエステル−Ａの製造において、添加する
粒子を平均粒径が１．１５μｍの球状有機粒子０．４重
量部とする以外は実施例１と同様の方法で感熱孔版印刷
用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その際、得られた
ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量は３５当
量／トン であった。 比較例４ 実施例１のポリエステル−Ａの製造において、添加する
粒子を平均粒径が０．７２μｍの球状有機粒子０．４重
量部と平均粒径が０．３１μｍの球状有機粒子０．８重
量部とする以外は実施例１と同様の方法で感熱孔版印刷
用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その際、得られた
ポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量は３３当
量／トン であった。

【００３６】比較例５ 実施例１のポリエステル−Ａおよびポリエステル−Ｂの
製造において、重縮合時間を４時間３０分とし、固相重
合反応を行わない以外は実施例１と同様の方法で感熱孔
版印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その際、得
られたポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量は
６５当量／トン であった。 比較例６ 実施例１において、非晶質のシートの厚みを１７μｍと
し、縦方向に６５℃で３．７倍、横方向に７０℃で４．
２倍に延伸する以外は実施例１と同様の方法で感熱孔版
印刷用原紙を作成し、謄写印刷を行った。その際、得ら
れたポリエステルフィルムの末端カルボキシル基量は３
５当量／トン であった。得られたフィルムの特性およ
び原紙実用特性をまとめて下記表１〜３に示す。

【００３７】

【表１】

【００３８】

【表２】

【００３９】

【表３】

【００４０】

【発明の効果】本発明によれば、穿孔感度、耐カール
性、画像解像度および画像濃度の優れた感熱孔版印刷原
紙が提供でき、本発明の工業的価値は高い。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エチレンテレフタレート単位を５０モル
   ％以上含むポリエステルとブチレンテレフタレート単位
   を５０モル％以上含むポリエステルとからなる厚み０．
   ５〜３μｍの二軸延伸フィルムであって、当該フィルム
   中に平均粒径（ｄ₁ ）が０．０５〜２μｍの不活性粒子
   （Ａ）を０．１〜３重量％、および平均粒径（ｄ₂ ）が
   ０．１〜３μｍの不活性粒子（Ｂ）を０．００５〜１重
   量％含有し、かつ下記式（１）〜（３）を同時に満足す
   ることを特徴とする高感度感熱孔版印刷原紙用フィル
   ム。 【数１】 １．５≦ｄ₂ ／ｄ₁ ≦１０ ……（１） ［ＣＯＯＨ］≦５０ ……（２） １５０≦Ｆ≦５００ ……（３） （上記式中、［ＣＯＯＨ］はフィルム中の末端カルボキ
   シル基量（当量／トン）、Ｆは１００℃で５時間処理後
   の加熱収縮応力（ｇ／ｍｍ² ）を表す）