JPH0723261B2 - グラファイトの製造方法 - Google Patents

グラファイトの製造方法

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JPH0723261B2
JPH0723261B2 JP63235218A JP23521888A JPH0723261B2 JP H0723261 B2 JPH0723261 B2 JP H0723261B2 JP 63235218 A JP63235218 A JP 63235218A JP 23521888 A JP23521888 A JP 23521888A JP H0723261 B2 JPH0723261 B2 JP H0723261B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明は、X線光学素子、X線モノクロメータ、中性
子線回折ミラー、中性子線フィルタ等として利用される
ブロック状グラファイトの製造方法に関するものであ
る。
従来の技術 グラファイトは、抜群の耐熱性や耐薬品性、高電導電性
等を備えているため、工業材料として重要な位置を占
め、電極や発熱体、構造材として広く使用されている。
なかでも、単結晶グラファイトは、X線や中性子線に対
する優れた分光、反射特性を有するため、X線や中性子
線のモノクロメータ、フィルタあるいは分光結晶として
広く用いられている。
このような単結晶グラファイトを得るには、天然に産す
るものを利用するのが簡単であるが、良質の天然グラフ
ァイトは、生産量が非常に限られており、しかも、取り
扱いが困難が粉末状、あるいは非常に小さなブロック状
であるため、使用できる用途が限定されてしまう。
そこで、上記のような天然の単結晶グラファイトと同等
の特性を有する人工グラファイトを製造することが考え
られた。一般的な人工グラファイトの製造方法は、主と
して次の2つの方法に分類することができる。
第1の方法は、Fe、Ni/C系溶融体からの析出、Si、Al等
の炭化物の分解、あるいは高温、高圧下での炭素融液の
冷却によってグラファイトを製造する方法である。この
ような方法によって得られたグファイトは、キッシュグ
ラファイトと呼ばれ、天然グラファイトと同等の物性を
示す。しかし、上記のような方法では、微小な薄片状の
グラファイトしか得られず、製造工程の煩雑さやコスト
的に高くつくこともあって、工業的にはほとんど利用さ
れていない。
第2の方法は、気相中での炭化水素ガスの高温分解沈積
と、その熱間加工による方法であり、圧力を印加しつつ
3400℃で長時間再焼鈍するという工程によってグラファ
イトが製造される。このようにして得られたグラファイ
トは、高配向パイログラファイト(HOPG)と呼ばれ、そ
の特性は天然グラファイトとほぼ同等の優れたものであ
る。この方法では、前記キッシュグラファイトとは異な
り、かなり大きなサイズのものも製造できるが、製造工
程が複雑であって歩留りが低く、非常に高価であるとい
う欠点がある。
これらの2つの製造方法の欠点を解消し、製造が容易で
コスト安価なグラファイトの製造方法として、様々な有
機物あるいは炭素質物を、3000℃以上で加熱してグラフ
ァイト化する方法考えられた。しかし、この方法では、
天然グラファイトやキッシュグラファイトと同等の優れ
た特性を有するグラファイトを得ることはできなかっ
た。例えば、グラファイトの最も典型的な物性であるab
面方向の電気伝導度は、天然グラファイトやキッシュグ
ラファイトでは1〜2.5×104S/cmであるのに対し、上記
方法のものでは、一般に1〜2×103S/cmしか得られな
い。このことは、上記方法ではグラファイト化が完全に
は進行しないことを示している。
上記方法の場合、通常は、出発原料としてコークスなど
の炭素物質とコールタール等のバインダーが使用される
が、コークスやチャーコールを3000℃程度に加熱するこ
とによって生成される炭素の構造は、比較的グラファイ
ト(黒鉛)構造に近いものから、それとは程遠いものま
で、様々な種類のものが存在する。このような炭素の構
造のうち、単なる熱処理によって比較的容易に黒鉛的な
構造に変わる炭素を易黒鉛化性炭素と呼び、そうでない
ものを難黒鉛化炭素と呼んでいる。このような構造上の
相違が生じる原因は、黒鉛化の機構と密接に関連してい
て、炭素前駆体中に存在する構造欠陥が、より高温での
加熱処理によって除去され易いか否かによる。したがっ
て、炭素前駆体の微細構造が黒鉛化性に対して重要な役
割を果たすことになる。
上記のようなコークス等を出発原料とする方法に対し、
高分子材料を用いて、これを熱処理することによってグ
ラファイトフィルムを製造する方法に関して、いくつか
の研究が行われており、この方法は、高分子材料の分子
構造を生かすことによって、炭素前駆体の微細構造を制
御しようとするものである。
上記方法は、高分子を真空中あるいは不活性気体中で熱
処理し、分解および重縮合反応を経て炭素質物に変え、
この炭素質物をさらにグラファイト化する方法である。
しかし、この方法の場合、任意の高分子を出発原料とし
て用いても、優れた特性のグラファイトフィルムが得ら
れる訳ではなく、むしろほとんどの高分子材料は、この
目的には使用できないことが判っている。例えば、上記
のようなグラファイト化を目的として熱処理が試みられ
た高分子としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、
ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンオキシド、ポ
リ塩化ビニルなどがあるが、これらの高分子はいずれも
難黒鉛化材料に属しており、高いグラファイト化率を有
するものではなかった。
本発明者らは、上記のような高分子を用いるグラファイ
トの製造方法の問題点を解決するために種々の研究を行
い、数多くの高分子についてグラファイト化を試みた結
果、芳香族ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール
(POD)、芳香族ポリイミド(PI)、3種類のポリベン
ゾビスチアゾール(PBBT)、ポリベンゾオキサゾール
(PBO)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBBO)、ポリ
チアゾール(PT)等の高分子を特定の温度で熱処理する
ときに、従来既知の高分子材料よりも容易にグラファイ
ト化することを見出した。それらの知見に基づき、本発
明者らは特許出願を行っており、これらは、特開昭61−
275114号公報、特開昭61−275115号公報、特開昭61−27
5117号公報等に開示されている。
この方法によれば、上記のような高分子を、1800度以
上、好ましくは2500℃以上で加熱することによって、グ
ラファイト化率の高いグラファイトを容易に短時間で製
造することが出来るようになった。
グラファイト化の程度を表すには、格子定数、C軸方向
の結晶子の大きさなどX線回折のパラメータ、あるいは
それから算出される黒鉛化率等がよく用いられ、また、
電気伝導度値もしばしば用いっれる。格子定数は、X線
の(002)回折線の位置から計算され、天然単結晶グラ
ファイトの格子定数である6.708Åに近い程、グラファ
イト構造が発達していることを示している。C軸方向の
結晶子の大きさは、(002)回折線の半値幅から計算さ
れ、結晶子の値が大きい程、グラファイトの平面構造が
良く発達していることを示しており、天然単結晶グラフ
ァイトの結晶子の大きさは1000Å以上である。黒鉛化率
は、結晶面間隔(d022)から計算される(文献:ル・カ
ルボン第1巻129頁、1965年−Les Carbons Vo1.1p129、
1965参照)。そして、天然単結晶グラファイトの黒鉛化
率は勿論100%である。電気伝導度値は、グラファイト
のab面方向の値で示し、電導度値が大きい程、グラファ
イト構造に近いことを示しており、天然単結晶グラファ
イトでは1〜2.5×104S/cmである。
さらに、グラファイト構造を評価するためのX線回折パ
ラメータの一つに、ab面の重なり方を示すロッキング特
性がある。これは、回折強度曲線と言われ、単色で平行
なX線束が入射したときに結晶を回転して得られる回折
強度曲線であって、(00l)回折線の出現する角度で2
θを固定し、θを回転することによって測定される。こ
の値は、吸収の半値幅をもって評価され、回転角度
(°)で表される。この値が小さい程、ab面がきれいに
重なっていることを示している。
発明が解決しようとする課題 先に述べた、特定の高分子フィルムからグラファイトを
製造する方法は、容易でコスト安価である等、非常に優
れた方法であるが、この方法についても、その後いろい
ろな検討を加えた結果、次のような、いくつかの改良す
べき問題点があることが明らかとなった。
その第1の問題点は、この方法では、厚手のグラファイ
トすなわちブロック状のグラファイトを製造することが
できないということである。グラファイト化の反応は一
見、出発原料フィルムの厚さとは無関係のように考えら
れるが、実際には、グラファイト化反応は原料の厚さに
強く依存している。このことは、従来全く知られていな
かったことがあるが、発明者らは、種々の実験を行った
結果、上記のような問題を見出した。例えば、第1表
は、厚さの異なる4種類のPIフィルムをグラファイト化
し、そのグラファイトの格子定数、黒鉛化率、ab面方向
の電気伝導度の値を測定した結果を示している。
上記のような結果から、PIフィルムの厚さによって、明
らかにグラファイト化反応の進行程度が異なっているこ
とが判る。例えば、グラファイト化率についてみると、
厚さの相違によって98〜83%まで変化している。このこ
とは、同じPIを材料としても、薄いフィルム状のグラフ
ァイトは得られるが、厚いブロック状のグラファイトを
得るのは困難であることを示している。
つぎに、前記先行技術の製造方法の第2の問題点は、高
分子材料を単に加熱するだけでは、グラファイトのab面
軸方向の面がc軸方向にいかに奇麗に重なっているかと
いう、前記ロッキング特性が向上いないということであ
る。
ロッキング特性は、グラファイト結晶をX線光学素子な
どに使用する場合に重要な特性であり、ab面の重なり方
を測定するには、先に述べたX線回折によるロッキング
法が用いられる。グラファイト結晶をX線等の光学結晶
として用いる場合のロッキング特性としては、その用途
によっても異なるが、一般的には、50μm以下の薄いグ
ラファイトイルムでは0.4°以下、1mm以上の厚いグラフ
ァイトブロックでは3°以下であることが必要とされて
いる。これに対し、前掲の第1表に示したPIグラファイ
トの場合、ロッキング特性は、8°(出発フィルム厚5
μm、以下同様)、11°(25μm)、14°(100μ
m)、17°(400μm)となっており、何れも要求され
るロッキング特性を満足できない。このことは、ロッキ
ング特性に関しては、高分子フィルムを単に加熱してグ
ラファイト化しただけでは、優れた放射線光学素子は製
造できないことを示している。
そこで、この発明の課題は、以上に述べたような、高分
子フィルムを熱処理するグラファイトの製造方法の問題
点を解消し、ロッキング特性等のグラファイトとしての
特性に優れているとともに、厚手のブロック状グラファ
イトを製造する方法を提供することにある。
課題を解決するための手段 上記課題を解決するこの発明のうち、請求項1記載の発
明は、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリオキ
サジアゾールのなかから選ばれた厚さ1〜400μmの高
分子フィルムを複数枚重ねて熱処理することによって炭
素質材を作製し、この炭素質材を熱処理してグラファイ
ト化させるようにしている。
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の実施
に際し、高分子フィルムの熱処理が、400〜1000℃で1
〜4kg/cm2の圧力を印加して行われるようにいている。
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明の実施
に際し、高分子フィルムの熱処理が、400〜1000℃でフ
ィルム面に垂直な方向への膨張を阻止しながら行われる
ようにしている。
請求項4記載の発明は、上記請求項1〜3の何れかに記
載の発明の実施に際し、炭素質材の熱処理が、800〜280
0℃の温度領域では20kg/cm2以下、2800℃以上の温度領
域では20kg/cm2以上の圧力を加えながら炭素質材を加熱
圧着させるようにしている。
作用 請求項1記載の発明によれば、前記特定の高分子フィル
ムを重ねた状態で熱処理することによって、薄い高分子
フィルムと同様に良質であるとともに分厚い炭素質材が
作製でき、この炭素質材をグラファイト化することによ
って、ロッキング特性等の諸特性に優れているととも
に、単層のフィルムでは得られない分厚いブロック状の
グラファイトを製造できる。
請求項2記載の発明によれば、高分子フィルムの熱処理
を、一定の温度範囲で圧力を加えながら行うことによっ
て、フィルム面に平行な方向に収縮しないようにして熱
処理が行え、分子の配向が良好な炭素質材を得ることが
できる。
請求項3記載の発明によれば、高分子フィルムの熱処理
時に、フィルム面に垂直な方向の膨張を阻止しておくこ
とによって、フィルム面に平行な方向に収縮しないよう
にして熱処理が行え、分子の配向が良好な炭素質材を得
ることができる。
請求項4記載の発明によれば、炭素質材の熱処理を、温
度領域によって異なる圧力を加えながら行うことによっ
て、炭素質材全体が確実に圧着一体化するとともに、シ
ワやひび割れのないブロック状のグラファイトが得られ
る。
実施例 まず、この発明では、出発原料となる高分子フィルムと
して、芳香族ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミド(P
A)、ポリオキサジアゾール(POD)の中から選ばれた高
分子からなるフィルムを用いる。具体的な高分子フィル
ムの材料組成や配合は、用途や製造条件によって適宜選
択して実施される。なお、グラファイトを製造するため
の高分子フィルムとしては、PBBT、PBO、PBBO、PT等も
あるが、この発明の製造方法においては、最終的に優れ
た特性のグラファイトを製造するために、前記の高分子
を使用する。高分子フィルムの厚みは、400μm以下、
好ましくは、1〜400μmの範囲のものが用いられる。
フィルム厚が400μmよりも厚くなると、良質のグラフ
ァイトを得ることができない。フィルム厚が薄い場合に
は特に大きな制限はないが、1μmよりも薄くなると、
同じ厚さのグラファイトブロックを製造するのに、より
多数枚の炭素質フィルムを製造しておく必要があるので
適当でない。
最終的に優れた特性のグラファイトブロックを製造する
ためには、前記したように、高分子を熱分解して得られ
る炭素前駆体の構造が重要となる。従来、出発原料であ
るフィルムの厚さが厚い場合に良質の炭素前駆体が出来
難かったのは、フィルム厚が厚くなる程、熱処理に伴う
フィルム内部からの発生ガス等によって、その内部構造
が乱れ内部での分子配向が進まないからである。
そこで、この発明では、比較的薄い高分子フィルムを複
数枚重ねて熱処理することによって、前記した内部構造
の乱れ等を生じさせずに、分厚い炭素前駆体である炭素
質材を作製する。これは、高分子フィルムを重ねて熱処
理すれば、各フィルム面に沿ってガスの一部が逃げるこ
とができ、内部の分子は比較的薄いフィルム面に沿って
うまく配向することができることによる。第1図には、
熱処理後の炭素質材10の内部構造を示しており、そのう
ち、第1図(a)は分厚い高分子フィルムを熱処理した
場合であり、分子(図中、棒状に表す)の配向が乱れて
いるとともにガス12が充分に除去されずに残っている。
これに対し、第1図(b)は比較的薄い高分子フィルム
11を重ねて熱処理した場合であり、分子の配向が良好で
あるとともにガスの残存もない。
高分子フィルム11の材料がPA、PI、PODの場合、熱分解
温度は400〜600℃であるので、炭素質材10を製造するた
めの高分子フィルム11の熱処理温度は、400〜1000℃の
範囲で実施するのが好ましい。
炭素質材10の分子配向を、例えば第1図(b)に示すよ
うに良好なものにするには、上記のような熱処理温度で
の熱分解をどのように起こさせるかが重要である。すな
わち、これらの高分子フィルム11は、熱分解温度領域に
おいて、主にフィルム面方向に著しく収縮するので、複
数枚のフィルムを単に重ねて熱処理しただけでは、第1
図(c)に示すように、各フィルム11の収縮変形によっ
て、内部構造の乱れが生じ易い。このような内部構造の
乱れを有する炭素質材10を、さらに高温で熱処理してグ
ラファイト化すると、グラファイト化に伴って内部歪み
を生じ、良好な特性のグラファイトブロックを得られな
くなる場合がある。
このような問題を解消するには、高分子フィルム11の熱
処理を、フィルム面と平行な方向に収縮しないように、
両面から圧力を印加しながら行うことが有効である。但
し、PA、PI、POD等の熱分解によって得られる炭素質材
は、何れの場合も硬い炭素(ハードカーボン)であると
ともに、熱分解温度領域で著しく収縮するので、圧力を
印加することによって、第1図(d)に示すように、炭
素質材10が割れてしまう可能性がある。そこで、印加圧
力について種々検討した結果、前記熱処理領域において
は、1〜4kg/cm2の範囲の圧力を加えながら熱処理を行
うのが、炭素質材10の分子の配向が良好で、ひび割れも
生じ難いことが判った。印加圧力の大きさは、重ねた高
分子フィルム全体の厚さにも依存し、厚さが2mm以上を
超えるものでは4kg/cm2以上の圧力を印加することもで
きる。
優れた配向性を有する炭素質材10を得る方法としては、
前記した圧力印加による方法のほかに、重ねた高分子フ
ィルムを熱処理する際に、フィルム面に垂直な方向の膨
張を阻止しておことによって、炭素質材10の内部構造の
乱れを防ぐ方法も有効である。これは、PA、PI、PODか
らなる高分子フィルムは、熱処理によってフィルム面と
平行な方向には著しく収縮するが、垂直方向の厚さはほ
とんど変化しないことに着目し、フィルム面と平行な方
向の収縮が起こっても、それに伴う垂直方向の変形もし
くは膨張を阻止しておけば、炭素質材10の内部構造が乱
れるのを防ぐことができるというものである。
第2図は、上記のように、重ねた高分子フィルムのフィ
ルム面に垂直な方向の膨張を阻止する具体的な手段の一
例を示しており、重ねた高分子フィルム11の上下を、ス
テンレス、グラファイト等からなる一対の基板20、20に
挾み、基板20、20をボルト30およびナット31で締め付け
固定して、高分子フィルム11がフィルム面と垂直な方向
に膨張しないようにしておき、このような固定治具に装
着した状態で熱処理を行うのである。固定治具は、熱処
理に耐え得る材料および構造を備えていれば、図示した
実施例に限らず、適宜構造で実施できる。
上記のような予備的な熱処理工程を経て炭素質材を製造
した後、さらに本格的な熱処理工程である炭素質材のグ
ラファイト化を行う。炭素質材をグラファイト化するに
は、炭素質のグラファイト化が進行する適当な熱処理温
度に加熱するだけでもよいが、以下のような処理を行う
ことによって、より良好なグラファイトを得ることがで
きる。
グラファイト過程では、得られるブロック状のグラファ
イトにシワやひび割れが生じないようにして、熱処理を
行う必要がある。そのめには、熱処理温度を、まず800
〜2800℃で実施するとともに、20kg/cm2以下の圧力を印
加することが有効である。20kg/cm2を越える圧力を印加
すると、むしろ生じたシワが逃げることができないた
め、最終的に良質のグラファイトが得られず、また、し
ばしばブロック状のグラファイトにひびが入る欠点があ
っ。つぎに、炭素質材を構成する高分子フィルム同士を
充分に圧着させるために、2800℃以上の温度領域に加熱
するとともに、20kg/cm2以上の圧力を加える。この温度
領域では、4kg/cm2以上の圧力が加えられれば、フィル
ム同士の接着は行われる。しかし、より良好な接着状態
を実現するためには20kg/cm2以上の圧力が必要である。
ついで、この発明の製造方法によってグラファイトを製
造した。具体的実施例について説明する。各実施例にお
いて、グラファイト化の程度を評価するために、前記し
た格子定数、黒鉛化率、電気伝導度、ロッキング特性を
測定しており、これらの物性の測定条件は下記のとおり
である。
(1)格子定数(Co) フィリップ社製PW−1051型X線ディフラクトメータを用
い、CuKα線を使用して試料のX線回折線を測定した。C
oの値は、2θ=26〜27°付近に現れる(002)回折線か
ら、グラフの式nλ=2dsinθ(ただし2d=Co)を用い
て計算した。ここで、n=2、λはX線の波長である。
(2)黒鉛化率(%) 黒鉛化率は面間隔(d)の値より次式を用いて計算し
た。
d002=3.354g+3.44(1−g) ここで、gは黒鉛化の程度を示し、g=1は完全な黒
鉛、g=0は無定形炭素を表す。
(3)電気伝導度(S/cm) 試料に銀ペーストと金線を用いて4端子電極を取り付
け、外側電極から一定電流を流し、内側電極においてそ
の電圧降下を検出することによって測定した。試料の
幅、長さ、厚さを顕微鏡によって測定した結果から、電
気伝導度を計算した。
(4)ロッキング特性(°) 理学電機社製ロータフレックスRU−200B型X線回折装置
を用い、グラファイト(002)線のピーク位置における
ロッキング特性を測定した。得られた吸収曲線の半値幅
をもってロッキング特性とした。
−実施例A− 25μmの厚さのデュポン社製ポリイミドフィルム(商品
名:カプトンHフィルム)を20枚重ねて2kg/cm2の圧力
を印加しながら、窒素雰囲気中で毎分20℃の昇温速度で
昇温し、1000℃で1時間熱処理を行って、炭素質材を得
た。こうして得られた炭素質材をアルゴン気流中で10kg
/cm2の圧力を加えながら、室温から毎分10℃の昇温速度
で昇温し、所定の温度Tpで1時間熱処理した後、毎分20
℃で降温させた。このとき使用した加熱炉は、中外炉株
式会社製、超降温ホットプレス炉であった。こうして得
られたグラファイトブロックの物性値を第2表に示して
いる。
上記結果から明らかなように、この発明の製造方法によ
って、ロッキング特性の優れたグラファイトブロックが
製造できることが実証できた。
−実施例B− 厚さ25μmのPI、POD、PAからなる高分子フィルムを用
い、各フィルムを20枚重ねて、実施例Aと同様の工程で
熱処理して炭素質材を作製した。つぎに、グラファイト
化のための熱処理工程では、1000〜2000℃の間は10kg/c
m2、2000〜2800℃の間は20kg/cm2の圧力を加え、さらに
3000℃で40kg/cm2の圧力を加えた。こうして得られたグ
ラファイトブロックの特性を第3表に示している。
以上の結果から、この発明の製造方法によれ、PA、PO
D、PIの何れの高分子フィルムを用いても、優れたグラ
ファイトブロックが製造できることが実証できた。
−実施例C− 50μmの厚さのPOD、PA、PIの各高分子フィルムを20
枚、第2図に示すようなステンレス製の固定治具で挾ん
で固定した状態で、実施例Aと同様の熱処理を行い、炭
素質材を得た。こうして得られた炭素質材を、実施例B
と同様の熱処理工程によってグラファイト化いた。こう
して得られたグラファイトブロックの諸特性を第4表に
示している。
以上の結果から、重ねた高分子フィルムを固定治具で固
定して、フィルム面に垂直な方向への膨張を阻止してお
くことによって、優れた特性のグラファイトブロックが
製造できることが実証できた。
発明の効果 以上に説明した、この発明にかかるグラファイトの製造
方法のうち、請求項1記載の発明によれば、特定の高分
子フィルムを複数枚重ねた状態で熱処理して炭素質材を
製造した後、この炭素質材をグラファイト化させること
によって、ロッキング特性等の諸特性に優れているとと
もに、分厚いブロック状をなすグラファイトを製造する
ことができる。従来方法のように、1枚の高分子イルム
を熱処理するだけでは、フィルムが分厚くなるとともに
グラファイトの特性が悪くなる問題があるが、この発明
の製造方法であれば、薄い高分子フィルムを所定の厚み
になるように重ねておけば、所定の厚みを有するブロッ
ク状のグラファイトが得られるので、製造するグラファ
イトの厚みが分厚くなっても特性が悪くならず、分厚い
ブロック状のグラファイトでありながら、薄い高分子フ
ィルム単体からなるグラファイト等と同様の優れた特性
を有するものを得ることができる。
したがって、従来、製造することが困難であった、優れ
た特性を有するグラファイトを容易に製造することがで
き、特に、従来の製造方法に比べ著しくロッキング特性
等が向上したブロック状グラファイトを得ることが可能
になる。この発明の製造方法によって製造され、ロッキ
ング特性等に優れた分厚いブロック状のグラファイト
は、X線や中性子線モノクロメータ、フィルタ等に広く
使用することができる。
請求項2記載の発明によれば、高分子フィルムから炭素
質材を製造する際の熱処理時に、圧力を印加しておくこ
とによって、フィルムの内部構造が乱れるのを防止し
て、配向性に優れた良質の炭素質材を得ることができ、
ひいては、優れた特性を有するグラファイトブロックを
製造することができる。
請求項3記載の発明によれば、重ねた高分子フィルム
を、フィルム面に垂直な方向への膨張を阻止した状態で
熱処理して炭素質材を製造することによって、請求項2
記載の発明と同様に、炭素質材の配向性を向上して、グ
ラファイトブロックの特性を良好にすることができる。
請求項4記載の発明によれば、炭素質材をグラファイト
化するための熱処理を、各温度領域における圧力を適当
に印加しながら行うことによって、炭素質材全体の圧着
一体性を高め、シワやひび割れがなく、諸特性に優れる
とともに一体性の高いブロック状のグラファイトを製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の製造方法によって熱処理された炭素
質材の実施例および比較例の断面構造を示し、第1図
(a)、(c)、(d)は比較例の断面図、第1図
(b)はこの発明の実施例の断面図、第2図は熱処理用
の固定治具の正面図である。 10……炭素質材、11……高分子フィルム。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポ
    リオキサジアゾールのなかから選ばれた厚さ1〜400μ
    mの高分子フィルムを複数枚重ねて熱処理することによ
    って炭素質材を作製し、この炭素質材を熱処理してグラ
    ファイト化させるグラファイトの製造方法。
  2. 【請求項2】高分子フィルムの熱処理が、400〜1000℃
    で1〜4kg/cm2の圧力を印加して行われる請求項1記載
    のグラファイトの製造方法。
  3. 【請求項3】高分子フィルムの熱処理が、400〜1000℃
    でフィルム面に垂直な方向への膨張を阻止しながら行わ
    れる請求項1記載のグラファイトの製造方法。
  4. 【請求項4】炭素質材の熱処理が、800〜2800℃の温度
    領域では20kg/cm2以下、2800℃以上の温度領域では20kg
    /cm2以上の圧力を加えながら炭素質材を加熱圧着させる
    請求項1〜3の何れかに記載のグラファイトの製造方
    法。
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