JPH07223798A - 移動式タワークレーン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 移動式タワークレーンをコンパクトにして移
動性をよくし、構造簡単にしてコストを安くする。 【構成】 下部走行体１に搭載した上部旋回体３の旋回
台４と第１ブーム１０とを４節リンク２０で連結し、第
１リンク２１と第２リンク２２とを油圧シリンダ２８で
連結する。ブーム格納時には油圧シリンダ２８を伸長し
て第１ブーム１０を水平にし、第２ブーム３０を第１ブ
ーム１０の下方に折り畳んで格納し、車両高さＨを所定
の高さ以下にして移動性をよくする。ブーム格納時には
第１ブーム１０の長手方向の中心と上部旋回体３の旋回
中心Ｘ−Ｘとをほぼ一致させ、車両全長Ｌを第１ブーム
１０の長さに等しくし、コンパクトにする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は車両にタワークレーンを
搭載した移動式タワークレーン、特に建築作業等に使用
される移動式タワークレーンのブーム構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、建築作業の機械化にともない、建
築物内に進入してクレーン作業を行う移動式タワークレ
ーンが導入されつつある。

【０００３】図１２はその第１例を示すホイール式タワ
ークレーンのブーム格納時や走行時の側面図であり、下
部走行体５０には上部旋回体５１が旋回自在に搭載され
ている。上部旋回体５１には第１ブーム５２がピン５３
により起伏自在に軸着され、第１ブーム５２の先端には
第２ブーム５４が起伏自在に装着されている。ピン５３
の位置は上部旋回体５１の旋回中心Ｘ−ＸよりもＳだけ
後方にずれている。

【０００４】図１３は第１ブーム５２を直立させ、第２
ブーム５４を張り出した作業姿勢を示している。第１ブ
ーム５２は油圧シリンダ５５を伸長することによりピン
５３を中心として回転し直立する。第２ブーム５４は油
圧シリンダ５６を伸長することによりピン５７を中心と
して回転し張り出し姿勢となる。

【０００５】第２例としては実開昭６１−１６５９９１
号公報の技術がある。この技術によれば、第１ブームと
上部旋回体とは、一対のリンクと２対の油圧シリンダと
よりなるリンク装置により連結され、ブームの格納は水
平にした第１ブームの上に第２ブームを重ねて行うよう
にしてあり、このとき、ブームの長手方向の中心はほぼ
上部旋回体の旋回中心にあるようになっている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第
１例では、図１２に示すように、第１ブーム５２の長手
方向の中心Ｍが上部旋回体５１の旋回中心Ｘ−Ｘから距
離Ｎだけ前方にあるため、車両の全長Ｐが第１ブーム５
２の全長よりも長い。すなわち、狭い建築物内への進入
や稼働にその分不利である。

【０００７】第２例においては、車両の全長は第１ブー
ムの長さに等しく、第１例よりも短くなるが、第２ブー
ムを第１ブームの上に重ねて格納するため全高が高くな
り、輸送上も、建物内に進入する場合も不利である。ま
た、油圧シリンダが２対あり、操作が複雑でコストも高
い。

【０００８】本発明は上記の問題点に着目してなされた
もので、全長を短く、全高を低くし、輸送上も建物内へ
の進入も容易とし、さらに構造簡単でコストも安い移動
式タワークレーンを提供することを目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の目的達成のため、
本発明に係る移動式タワークレーンの第１発明は、下部
走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体に、起伏自在
に装着された伸縮自在な第１ブームと、第１ブームの先
端に起伏自在に装着された第２ブームからなるタワーク
レーンを備えた移動式タワークレーンにおいて、前記第
１ブームをほぼ水平にし、前記第２ブームを前記第１ブ
ームの下方にほぼ平行に折り畳んだ状態で格納可能なブ
ーム装置を具備したことを特徴としている。

【００１０】第２発明は、上記第１発明において、ブー
ム装置が、上部旋回体の旋回台と、第１ブームとを連結
する４節リンク装置を備えたことを特徴としている。

【００１１】第３発明は、上記第２発明において、４節
リンク装置が、第１ブームおよび第２ブームを直立姿勢
または格納姿勢に姿勢変換するときに、第１ブームおよ
び第２ブームが旋回台に干渉することなく、しかも格納
姿勢において車両の全高が所定の高さ以下になるように
構成されていることを特徴としている。

【００１２】第４発明は、上記第１発明〜第３発明のい
ずれかにおいて、第１ブーム格納姿勢において、第１ブ
ームの長手方向の中心が、ほぼ上部旋回体の旋回中心上
に配置されることを特徴としている。

【００１３】第５発明は、上記第１発明〜第４発明のい
ずれかにおいて、第１ブーム直立姿勢において、第１ブ
ームの長手方向の軸芯が、ほぼ上部旋回体の旋回中心上
に配置されることを特徴としている。

【００１４】第６発明は、上記第１発明〜第５発明のい
ずれかにおいて、第１ブーム直立姿勢において、第１ブ
ームの後端部を旋回台に固定するための固定手段を備え
たことを特徴としている。

【００１５】第７発明は、上記第６発明において、固定
手段は、(1) 旋回台に固設され、第１ブームが格納姿勢
から直立姿勢となったとき第１ブームの後端部に当接し
て第１ブーム直立姿勢を達成させるブラケットと、(2)
先端部に凹部を備えてその凹内部に第１ブームの後端部
を余裕を以て係合可能とされるとともに、後端部が旋回
台又はブラケットなどの固定部材に対してピン結合され
ることにより、第１ブームの格納姿勢から直立姿勢への
姿勢変換時、第１ブームの後端部が凹部内に係合し継い
で自重に抗して上方のブラケット側へ回動可能とされた
回転ブロックと、(3) くさび面を備え、このくさび面を
回転ブロックの下面と旋回台の上面との間に出入り可能
とされたエッジブロックと、(4) 旋回台などの固定部材
に設置され、エッジブロックをそのくさび面側方向へ付
勢する弾性部材からなることを特徴としている。

【００１６】第８発明は、上記第７発明において、旋回
台またはブラケットなどの固定部材上における、第１ブ
ームに若干の傾倒姿勢を与えるための相当位置に、エッ
ジブロックのくさび面側方向への移動を停止させるスト
ッパを備えたことを特徴としている。

【００１７】第９発明は、上記第２発明〜第８発明のい
ずれかにおいて、４節リンクの一つのリンクが、第１ブ
ームと一体に構成されるとともに、第１ブーム格納姿勢
において上部旋回体の旋回中心に対して第１ブームの後
端側に配置されたことを特徴としている。

【００１８】第１０発明は、上記第９発明において、４
節リンクの対向するリンクのうち、第１ブームと一体構
成されたリンクにおける第１ブームの下端側のピンまた
はその近傍と、旋回台と一体構成されたリンクにおける
第１ブームの下端とは反対側のピンまたはその近傍とを
油圧シリンダにより連結したことを特徴としている。

【００１９】第１１発明は、上記第１発明〜第１０発明
のいずれかにおいて、ブーム装置が、前記第１ブームと
第２ブームとを連結する４節リンクを備えたことを特徴
としている。

【００２０】第１２発明は、上記第１発明〜第１１発明
のいずれかにおいて、第１ブームおよび第２ブームの格
納姿勢において、上面から見て第１ブームおよび第２ブ
ームを上部旋回体のほぼ中心に配置し、その両側面の一
方側に運転台を、他方側に機械室を配設したことを特徴
としている。

【００２１】第１３発明は、上記第１２発明において、
第１ブームおよび第２ブームを格納姿勢にし、かつ、そ
の長手方向を下部走行体の進行方向に配置したとき、運
転台および機械室が前記下部走行体の最大幅以内にある
ことを特徴としている。

【００２２】第１４発明は、上記第１３発明において、
運転台および機械室が下部走行体の最大幅以内で旋回可
能なことを特徴としている。

【００２３】

【作用】上記構成によれば、移動式タワークレーンの第
２ブームを第１ブームの下方に折り畳んで、ほぼ水平に
格納可能にし、第１ブームと上部旋回体の旋回台とを４
節リンクで連結し、その４節リンクを、直立姿勢または
格納姿勢に姿勢変換するときに、第１ブームと第２ブー
ムとを旋回台に干渉させず、しかも格納時には車両全高
が所定の高さ以下になるようにした。従って、格納時に
全高は所定の高さ以内にすることができ、輸送上有利で
あり、建物内への進入が容易である。

【００２４】また、ブーム格納時、第１ブームの長手方
向の中心がほぼ旋回中心上となり、ブーム直立時、第１
ブームの長手方向の軸芯が旋回中心上になるようにする
とともに、直立時に第１ブームの下端と旋回台とを固定
する固定手段を設けた。従って、車両の全長は短くな
り、直立時にブームが安定し、作業上有利となる。

【００２５】また、４節リンクの一つのリンクを第１ブ
ームの下端側に寄せて一体構成し、下端側に近いピンか
その近傍と、旋回台と一体構成した対向するリンクの第
１ブームの下端側と反対側のピンかその近傍とを油圧シ
リンダで連結した。従って、ブーム格納姿勢から直立姿
勢にする場合、油圧シリンダを短縮することによって第
１ブームは９０°の回転が可能となり、ブームを垂直に
することができる。

【００２６】第１ブームと第２ブームとを４節リンクを
介して連結したため、大きな相対角を容易に得ることが
できる。

【００２７】ブーム格納姿勢時にブームを上部旋回体の
ほぼ旋回中心上に配置し、両側面の一方側に運転室を、
他方側に機械室を配置し、その幅を下部走行体の最大幅
以内にするとともに、上部旋回体を下部走行体の最大幅
内で旋回可能にしたため、作業中に旋回により干渉する
恐れが少ない。

【００２８】

【実施例】以下、本発明に係る実施例を図を参照して説
明する。図１はブームを格納姿勢としたときの側面図
（なお、図１は実施例の走行姿勢を示す側面図でもあ
る）、図２は第１ブームを直立姿勢としたときの側面
図、図３は姿勢変換中の側面図、図４は直立した第１ブ
ームを伸長し、第２ブームを張り出して作業姿勢とした
ときの側面図である。

【００２９】図１に示す通り、履帯２を有する下部走行
体１は旋回台４を有する上部旋回体３を旋回自在に搭載
している。第１ブーム１０の先端には第２ブーム３０が
ピン３１により起伏自在に連結されており、同図のブー
ム格納姿勢においては、第１ブーム１０はほぼ水平に配
置され、第２ブーム３０は第１ブーム１０の下方にほぼ
平行に折り畳まれている。なお、図１のブーム格納姿勢
においては、最長部材である第１ブーム１０の長手方向
の中心を上部旋回体３の旋回中心Ｘ−Ｘとほぼ一致させ
てある。このため、車両の全長Ｌは第１ブーム１０の長
さと一致している。

【００３０】第１ブーム１０と旋回台４とは４節リンク
装置２０により連結されている。ブラケット１１により
第１ブーム１０と一体構成されている第１リンク２１
と、旋回台４と一体構成されている第２リンク２２とは
第３リンク２３および第４リンク２４により連結されて
４節リンクを構成している。第２リンク２２は固定リン
クである。第１ブーム１０の後端にはブーム後端ピン１
２が固設してあり、第１リンク２１は上部旋回体３の旋
回中心Ｘ−Ｘに対してブーム後端ピン１２寄りに位置し
ている。第３リンク２３はブーム後端ピン１２から遠い
方であり、第４リンク２４はブーム後端ピン１２寄りで
ある。第１リンク２１と第４リンク２４とを連結するピ
ン２５と、第２リンク２２と第３リンク２３とを連結す
るピン２６の近傍のピン２７とは油圧シリンダ２８によ
り連結されている。油圧シリンダ２８と第１リンク２１
との連結点をピン２５の近傍とし、油圧シリンダ２８と
第２リンク２２との連結点はピン２６と一致させてもよ
い。

【００３１】図１に示すように、ブーム格納姿勢におい
ては、油圧シリンダ２８は伸長した状態であり、油圧シ
リンダ２８を短縮すると、図３に示すように、第１ブー
ム１０は姿勢変換を開始し、図２に示す第１ブーム１０
の直立姿勢に至る。直立姿勢では第１ブーム１０の長手
方向の軸芯Ｙ−Ｙは、上部旋回体３の旋回中心Ｘ−Ｘと
ほぼ一致するようにしてある。

【００３２】このように、油圧シリンダ２８を短縮する
と、第１ブーム１０は格納姿勢から直立姿勢へ変換され
るが、姿勢変換途中において、図３に示すように、第２
ブーム３０は旋回台４との間に隙間Ａが確保されてお
り、干渉することはない。

【００３３】また、図４に示すように、一般に建築物の
天井高さＨ１は２．３ｍ〜２．５ｍであるので、作業車
両の高さＨをこれ以下とすることが望まれる。このた
め、本実施例では、図１に示す格納姿勢において、車両
の全高Ｈを所定の高さなる前記天井高さＨ１以下になる
ように設定してある。

【００３４】なお、図４に示す作業姿勢において、４節
リンク２０は第１ブーム１０の直立姿勢を維持する機能
を備えているが、４節リンク２０だけではピン磨耗や油
圧シリンダ２８の内部洩れなどにより第１ブーム１０の
直立姿勢を長時間に渡って安全かつ確実に維持すること
は困難である。このため、図２のＲ部に示すように、ブ
ーム直立時には第１ブーム１０の後端を旋回台４に固定
可能としてある。この固定手段の例を図５および図６を
参照し次に説明する。

【００３５】図５はマニュアル固定手段の例である。同
図（ａ）に示すように、Ｕ形の支持具１３がブラケット
１４を介して図示しない旋回台４に固設してある。この
支持具１３のＵ形部上下部には１対の同軸孔１５、１５
が設けてある。そしてこの支持具１３と前記ブーム後端
ピン１２とは次の関係とされている。すなわち、第１ブ
ーム１０を格納姿勢から直立姿勢へ姿勢変換したとき、
ブーム後端ピン１２が、同図（ａ）の矢印のように移動
して同図（ｂ）に示すように、支持具１３のＵ形内に係
合するようにしてある。この係合状態がブーム直立姿勢
である。そこで、別途備えたピン１６を同軸孔１５、１
５に挿入することにより、ブーム後端ピン１２を支持具
１３のＵ形内に固定し、これにより、第１ブーム１０の
直立姿勢を維持可能としている。このような固定手段
は、マニュアル操作によるが、このようなマニュアル固
設手段の例によれば、ブーム直立姿勢の維持を低コスト
で達成できる。

【００３６】ところで上記マニュアル固設手段で、ブー
ムを格納姿勢から直立姿勢に姿勢変換する都度、ブーム
操作桿などによるブーム起伏操作と、同軸孔１５、１５
へのピン１６の出し入れ操作とを行う必要があり、非常
に煩わしい。また両マニュアル操作を、安全、素早くか
つ確実に行うには、ブーム操作桿などと支持具１３とを
近接して設けねばならない。ところが、このような空間
の確保が困難であったり、また場合によっては逆にコス
ト高を招きかねない。さらにピン１６の紛失などの問題
もある。かかるマニュアル固設手段の不都合を解消する
ため、例えば図６のような自動固定手段としてもよい。

【００３７】すなわち、図６（ａ）は、ブーム後端ピン
１２を図示左側の旋回台４に固定すべく（すなわち、ブ
ーム格納姿勢からブーム直立姿勢へ姿勢変換すべく）、
第１ブーム１０を図示時計回りに回転させている図であ
る。旋回台４にはブラケット１４が固設してある。ブラ
ケット１４の図示右斜め上面には凹部が形成され（な
お、この上面は凹部に成形する必要はなく、例えば平面
でもよい）、また図示左下部には棒状のストッパ１３３
と、ピン１３２とが備えられている。ピン１３２には後
述する回転ブロック１３１が自重により図示時計回り回
転可能に、また外力により反時計回りに回転可能に連結
されている。回転ブロック１３１の図示右斜め上面にも
凹部が形成されている。そして回転ブロック１３１の図
示右側の旋回台４上には、図示左側から右側へ順に、後
述するエッジブロック１３４と、スプリングなどの弾性
体１３５と、これらを内嵌するとともに前記エッジブロ
ック１３４が弾性体１３５の付勢力により図示左方向へ
スライドしたときにエッジブロック１３４が図示左側へ
突出可能なるように図示左面が開口してなる筐体１３６
とが固設されている。このように、筐体１３６は弾性体
１３５の反力受け機能と、エッジブロック１３４の左右
スライド案内とを兼ねている。そして筐体１３６の図示
右側端面からはエッジブロック１３４の図示右側端面に
連結されたケーブル１３７（なお、ケーブル１３７はリ
ンク機構でもよい）が外部へと引き出されている。この
ケーブル１３７の図示右側端は、各種他の操作レバーと
ともに旋回台４の運転台上に備えられたブームロックレ
バー１３９に連結されている。本例のブームロックレバ
ー１３９は、これを引き起こすと、弾性体１３５の付勢
力がエッジブロック１３４に作用し、エッジブロック１
３４を図示左方向へ移動させ、逆に押し倒すと、エッジ
ブロック１３４を弾性体１３５の付勢力に抗して図示右
方向へ移動させるものである。次に、回転ブロック１３
１およびエッジブロック１３４の各特徴的形状を述べ
る。なお、エッジブロック１３４は、その名に示すとお
り、上面が図示左下方向へ傾斜したくさび面を備えた部
材である。

【００３８】回転ブロック１３１とエッジブロック１３
４とは互いに代表的に当接可能な２対の面（Ｄ１とＤ
２、Ｅ１とＥ２）を備えている。面Ｅ２は上記エッジブ
ロック１３４の前記くさび面である。すなわち、回転ブ
ロック１３１の図示右端面Ｄ１はエッジブロック１３４
の図示左斜め上端面Ｄ２に当接可能とされる。また、回
転ブロック１３１の図示右下面Ｅ１はエッジブロック１
３４のくさびＥ２に当接可能とされる。またさらにエッ
ジブロック１３４の図示左端面Ｆ１はストッパ１３３の
図示右端面に当接可能とされている。つまり、ピン１３
２回りの回転ブロック１３１の図示時計回り及び反時計
回りの回動と、エッジブロック１３４の図示左右方向へ
のスライド運動との説明から明らかなように、これら３
箇所の当接は同時に生ずることはなく、回転ブロック１
３１の回動位置と、エッジブロック１３４の図示左右方
向のスライド位置との関係により、いずれか一対面の当
接が段階的に生ずる。

【００３９】自動固定手段は以上の如く構成されてい
る。そこで以下、この自動固定手段の作用を図６（ａ）
〜（ｄ）を参照し説明する。

【００４０】図６（ａ）は、前述の通り、ブーム後端ピ
ン１２を図示左側の自動固定手段に固定すべく、第１ブ
ーム１０を図示時計回りに回転させている図である。な
お、この状態では、図示するように、回転ブロック１３
１は自重によりピン１３２回りに時計方向へ回転してい
る。またブームロックレバー１３９は予め押し倒してあ
る。従って、エッジブロック１３４がケーブル１３７を
介して弾性体１３５の付勢力に抗して図示右方向へ移動
している。これらの結果、回転ブロック１３１の図示右
端面Ｄ１と、エッジブロック１３４の図示左斜め上端面
Ｄ２とは当接し、回転ブロック１３１の自重による図示
時計回りの回転を停止させている。かかる状態におい
て、図示しないブーム操作桿を操作して第１ブーム１０
を図示時計回りに回転させているのがこの図６（ａ）で
ある。

【００４１】図６（ａ）において、第１ブーム１０の図
示時計回りの回転が進むと、図６（ｂ）に示すように、
ブーム後端ピン１２の図示左側面が回転ブロック１３１
の凹部内面Ｂに当接し、この回転ブロック１３１をピン
１３２回りに図示反時計回りに回転させるようになる。
勿論この回転ブロック１３１の回転に伴い、図示するよ
うに、回転ブロック１３１は弾性体１３５の付勢力によ
って図示左方向へ移動可能となり、この結果、エッジブ
ロック１３４は回転ブロック１３１との接触位置を変え
つつ図示左方向へと移動する。このとき、ブームロック
レバー１３９は図示するように、徐々に立ち上がる。

【００４２】第１ブーム１０の図示図示時計回りの回転
が進み、図６（ｃ）の点線に示すように、ブーム後端ピ
ン１２の図示左側面がブラケット１４の凹部内面Ａに当
接すると、第１ブーム１０の図示時計回りの回転は停止
させられる。このときエッジブロック１３４の図示左端
面Ｆ１はストッパ１３３の図示右端面Ｆ２に当接する。
そして図６（ｄ）を借りて説明すれば、このとき、回転
ブロック１３１の右下面Ｅ１と、エッジブロック１３４
のクサビＥ２とは間隙δを有した状態となっている。

【００４３】そこで次に、ブーム操作桿を中立位置に戻
すなり、または逆方向へ操作して油圧シリンダ２８を伸
長させることにより、図６（ｃ）の実線に示すように、
ブーム後端ピン１２の図示右側面が回転ブロック１３１
の凹部内面Ｃに当接し、さらに回転ブロック１３１の右
下面Ｅ１とエッジブロック１３４のくさび面Ｅ２との前
記間隙δが無くなるまで、第１ブーム１０を図示反時計
回りに逆回転させる。このようにすることにより、ブー
ム直立姿勢が達成される。なお、上記間隙δは、後述す
るように、ブームを直立姿勢から格納姿勢に姿勢変換さ
せるとき、エッジブロック１３４を後退し易くするため
の隙間となる。

【００４４】なお、上記ブーム直立姿勢を長期安定的に
確保するには、エッジブロック１３４のくさび面Ｅ２の
くさび角θが重要であり、式〔μ×Ｐ２＞Ｐ１〕を満足
するようなくさび角θは設定するのがよい。ここでμは
エッジブロック１３４のくさび面Ｅ２の摩擦係数であ
る。Ｐ２はクレーン吊り荷重Ｐのブーム後端ピン１２へ
の分力が、ブーム後端ピン１２の図示右側面から回転ブ
ロック１３１の凹部内面Ｃを経て回転ブロック１３１の
図示右下面Ｅ１によりエッジブロック１３４のくさび面
Ｅ２を押す力である（なお、クレーン吊り荷重Ｐの大方
は４節リンクが受け、ブーム後端ピン１２には前記隙間
δに相当する傾倒角に基づく分力が加わる程度とするの
が好ましい）。そしてＰ１はエッジブロック１３４を図
示右方向へ戻す力である。

【００４５】玉掛けが終了し、ブームを直立姿勢から格
納姿勢に戻すときは、ブーム操作桿を、一旦、中立位置
から起伏位置に操作して油圧シリンダ８を短縮して第１
ブーム１０を図示時計回りに回転させる。これにによ
り、図６（ｄ）に示すように、回転ブロック１３１の右
下面Ｅ１と、エッジブロック１３４のくさびＥ２との前
記間隙δが再度確保され、これによりブーム後端ピン１
２によるエッジブロック１３４のくさびＥ２への押しつ
け力Ｐ２が除去される。このように、押しつけ力Ｐ２を
除去したのち、ブームロックレバー１３９を押し倒す
と、エッジブロック１３４は弾性体１３５の付勢力に抗
して図示右方向へと容易に移動するようになる。エッジ
ブロック１３４が図示右方向へ完全に移動したのち、ブ
ーム操作桿を操作して油圧シリンダ２８を伸長させる
と、第１ブーム１０は図示反時計回りへ回転し、ブーム
後端ピン１２が回転ブロック１３１の凹部内から離脱す
る。このようになると、回転ブロック１３１は自重によ
りピン１３２回りに図示時計方向に回転し、また回転ブ
ロック１３１とエッジブロック１３４とが前記図６
（ａ）の状態に戻る。さらに油圧シリンダ２８を伸長さ
せることによりブーム格納姿勢は完了する。なお、前記
隙間δは、ストッパ１３２の位置により調整されている
ことは説明するまでもない。

【００４６】上記自動固定手段例によれば、ブームを格
納姿勢から直立姿勢へ姿勢変換するときは、ブームを起
こすというマニュアル作業だけでブームの直立姿勢を素
早く、確実かつ安全に達成できるため、作業の効率化を
図ることができる。また自動固定手段の各部が磨耗して
も、くさび効果と弾性体の付勢力とにより自動調整され
るため、磨耗に基づく調整が不要となる。なお、回転ブ
ロック１３１や、エッジブロック１３４の作動を検出す
る例えばリミットスイッチなどの検出器を付設すること
により、玉掛けのインタロック要素とするなど、その応
用範囲は広い。

【００４７】図７および図８は第１ブーム１０の先端に
ピン３１により起伏自在に装着された第２ブーム３０の
構造と作動状態を示す図面である。図７において、第１
ブーム１０の先端にピン３１を含んで一体構成された第
１リンク３２と、第２ブーム３０にピン３１を含んで一
体構成された第２リンク３３とは、第３リンク３４およ
び第４リンク３５を介して連結されて４節リンクを構成
している。第３リンク３４と第４リンク３５とを連結す
るピン３６と、第２ブーム３０のブラケット３７とは、
油圧シリンダ３８により連結されている。

【００４８】油圧シリンダ３８を短縮した状態では、図
７に示すように、第２ブーム３０は第１ブーム１０に対
してほぼ平行であり、油圧シリンダ３８を伸長すると、
図８に示すように、第２ブーム３０は第１ブーム１０に
対して起立し、作業状態となる。すなわち、４節リンク
を用いたため、第１ブーム１０と第２ブーム３０との相
対角度αを大きくすることができる。

【００４９】図９はブーム格納時の平面図であり、第１
ブーム１０は上部旋回体３の旋回中心上にある。そして
その片側に運転台５を配置し、他側に機械室６を配置し
てある。また、同図に示すように、第１ブーム１０の長
手方向を下部走行体１の進行方向へ向けたとき、上部旋
回体３の全幅は履帯２の最大幅Ｂ以内にあり、上部旋回
体３を旋回させたとき、運転台５や機械室６等が履帯２
の最大幅Ｂ以内になるようにしてある。従って、作業中
に旋回しても他のものと干渉する危険性は極めて少な
い。

【００５０】ところで、移動式タワークレーンが建築物
内で作業する場合、図４に示すように、第１ブーム１０
を伸長させ、上の階の玉掛けをする場合が多い。そのよ
うな場合には天井４０に孔４１を明け、第１ブーム１０
を通して玉掛けを行う。この孔４１は玉掛け完了後ふさ
がなければならない。従って、孔４１は小さいほうがよ
い。上記の場合において、図１０（ａ）はブーム１０の
軸芯と旋回中心とが一致している場合を示し、他方図１
０（ｂ）はブーム１０の軸芯と旋回中心とがずれている
場合を示す。すなわち、図１０（ａ）は本発明のもの
で、ブームの軸芯が上部旋回体３の旋回中心Ｘ−Ｘに一
致しており、天井４０の穴４２の必要な直径はＣであ
る。これに対して図１０（ｂ）はブーム１０の軸芯Ｙ−
Ｙと上部旋回体３の旋回中心Ｘ−ＸとはＫだけずれてい
る。このため、上部旋回体３が矢印のように旋回した場
合、ブーム１０が穴４３に干渉しないためには天井４０
の穴４３の必要な直径はＣ＋２Ｋ＝Ｄでなければならな
い。従って、図１０（ａ）の方が有利である。

【００５１】図１１は壁等に接近する場合、ブームの軸
芯が旋回中心と一致している場合と、ずれている場合と
の違いを示す。すなわち、図１１（ａ）は本発明のもの
で、ブーム１０の軸芯が上部旋回体３の旋回中心Ｘ−Ｘ
に一致しており、壁４４と旋回中心Ｘ−Ｘとの距離はＥ
まで接近できる。しかしながら、図１１（ｂ）ではブー
ム１０の軸芯Ｙ−Ｙと上部旋回体３の旋回中心Ｘ−Ｘと
はＫだけずれている。従って上部旋回体３が矢印のよう
に旋回した場合、干渉しないためには壁４４と旋回中心
Ｘ−Ｘとの距離はＥ＋Ｋ＝Ｆとなり、図１１（ａ）の方
がより接近できて有利となる。

【００５２】

【発明の効果】以上詳述したごとく、本発明は下部走行
体に旋回可能に搭載された上部旋回体に、起伏自在に装
着された伸縮自在な第１ブームと、第１ブームの先端に
起伏自在に装着された第２ブームとよりなるタワークレ
ーンを備えた移動式タワークレーンにおいて、第１ブー
ムと上部旋回体の旋回台とを４節リンクで連結し、第１
ブームの下端側のピンまたはその近傍と、第１ブームの
下端とは反対側のピンまたはその近傍とを油圧シリンダ
により連結することにより、ブームの格納姿勢と直立姿
勢との姿勢変換を行うことを基本とし、以下のような構
成としたため、それぞれ下記のような効果を奏する。

【００５３】（１）ブームの起伏を４節リンクで行うた
め、ブームと旋回台との間には、空間が生ずる。この空
間内にブーム格納姿勢時、第１ブームをほぼ水平にし、
第１ブームの下方に第２ブームを折り畳むようにして格
納することとしたため、車両の全高を低く保つことがで
きる。このため、建築物への進入が容易である。

【００５４】（２）ブーム格納姿勢において、第１ブー
ムの長手方向の中心と上部旋回体の旋回中心とをほぼ一
致させたため、車両の全長を第１ブームの長さと一致さ
せることができ、車長の短縮、すなわちコンパクト化を
図ることができ、また狭い領域への進入や稼働に有利で
ある。

【００５５】（３）ブーム直立姿勢において、第１ブー
ムの長手方向の軸芯と旋回中心とを一致させたため、作
業時、建築物の天井に開ける穴の直径を小さくでき、建
築コストを安くできる。また、壁面等により接近するこ
とができ、作業時に有利である。

【００５６】（４）ブーム直立姿勢において、第１ブー
ムの下端と旋回台とを固定するための固定手段を設けた
ためにブームの安定性がよく、作業性がよい。特に自動
化することにより、ブームの起立操作だけで、ブームの
直立姿勢が固定されるため、作業の効率化が図れる。ま
た自動固定手段の各部が磨耗しても、くさび効果と弾性
体の付勢力とにより自動調整されるため、保守点検が容
易となる。なお、この固定手段には固定の有無を検出す
る検出器を付設することにより、玉掛けのインタロック
要素とするなど、その応用範囲は広い。

【００５７】（５）第１ブームと第２ブームとを４節リ
ンクで連結したため、第１ブームと第２ブームとの相対
角度を大きくすることができ、作業性がよい。

【００５８】（６）ブーム格納姿勢において、上面から
見てブームをほぼ上部旋回体の旋回中心に位置させ、左
右側方に運転室と機械室とを配置し、下部走行体の最大
幅以内で旋回可能にしたため、作業中、旋回による干渉
の恐れはなく安全である。

【００５９】（７）第１ブームの起状装置の油圧シリン
ダは一対であり、全体の構造が簡単でコストが安い。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例のブーム格納姿勢を示す側面図である。

【図２】実施例のブーム直立姿勢を示す側面図である。

【図３】実施例のブームの姿勢変換途中の状況を示す側
面図である。

【図４】実施例の玉掛け状態を示す図面である。

【図５】実施例におけるブーム直立姿勢のマニュアル固
定手段の説明図である。

【図６】実施例におけるブーム直立姿勢の自動固定手段
の説明図である。

【図７】第１ブームと第２ブームとの連結構造の説明図
である。

【図８】第２ブーム張り出し姿勢を示す図面である。

【図９】実施例の平面図である。

【図１０】実施例による建築作業等において、天井に明
いた孔に対する実施例の効果を説明する図である。

【図１１】実施例による建築作業等において、壁面に接
近する距離に対する実施例の効果を説明する図である。

【図１２】従来の移動式タワークレーンのブーム格納姿
勢を示す側面図である。

【図１３】従来の移動式タワークレーンの作業状態を示
す側面図である。

【符号の説明】

１…下部走行体、３…上部旋回体、４…旋回台、５…運
転室、６…機械室、１０…第１ブーム、１２…固定ピ
ン、１３…支持具、１６…ピン、２０…４節リンク、２
１，３２…第１リンク、２２，３３…第２リンク、２
３，３４…第３リンク、２４，３５…第４リンク、２
８，３８…油圧シリンダ、３０…第２ブーム。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ６６Ｃ 23/687

Claims (14)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下部走行体に旋回可能に搭載された上部
   旋回体に、起伏自在に装着された伸縮自在な第１ブーム
   と、第１ブームの先端に起伏自在に装着された第２ブー
   ムよりなるタワークレーンを備えた移動式タワークレー
   ンにおいて、前記第１ブームをほぼ水平にし、前記第２
   ブームを前記第１ブームの下方にほぼ平行に折り畳んだ
   状態で格納可能なブーム装置を具備したことを特徴とす
   る移動式タワークレーン。
2. 【請求項２】 前記ブーム装置が、前記上部旋回体の旋
   回台と、前記第１ブームとを連結する４節リンク装置を
   備えたことを特徴とする請求項１記載の移動式タワーク
   レーン。
3. 【請求項３】 前記４節リンク装置が、前記第１ブーム
   および第２ブームを直立姿勢または格納姿勢に姿勢変換
   するときに、前記第１ブームおよび第２ブームが前記旋
   回台に干渉することなく、しかも格納姿勢において車両
   の全高が所定の高さ以下になるように構成されているこ
   とを特徴とする請求項２記載の移動式タワークレーン。
4. 【請求項４】 前記第１ブーム格納姿勢において、前記
   第１ブームの長手方向の中心が、ほぼ前記上部旋回体の
   旋回中心上に配置されることを特徴とする請求項１、２
   又は３記載の移動式タワークレーン。
5. 【請求項５】 前記第１ブーム直立姿勢において、前記
   第１ブームの長手方向の軸芯が、ほぼ前記上部旋回体の
   旋回中心上に配置されることを特徴とする請求項１、
   ２、３又は４記載の移動式タワークレーン。
6. 【請求項６】 前記第１ブーム直立姿勢において、前記
   第１ブームの後端部を前記旋回台に固定するための固定
   手段を備えたことを特徴とする請求項１、２、３、４、
   又は５記載の移動式タワークレーン。
7. 【請求項７】 前記固定手段は、(1) 旋回台に固設さ
   れ、第１ブームが格納姿勢から直立姿勢となったとき第
   １ブームの後端部に当接して第１ブーム直立姿勢を達成
   させるブラケットと、(2) 先端部に凹部を備えてその凹
   内部に第１ブームの後端部を余裕を以て係合可能とされ
   るとともに、後端部が旋回台又はブラケットなどの固定
   部材に対してピン結合されることにより、第１ブームの
   格納姿勢から直立姿勢への姿勢変換時、第１ブームの後
   端部が凹部内に係合し継いで自重に抗して上方のブラケ
   ット側へ回動可能とされた回転ブロックと、(3) くさび
   面を備え、このくさび面を回転ブロックの下面と旋回台
   の上面との間に出入り可能とされたエッジブロックと、
   (4) 旋回台などの固定部材に設置され、エッジブロック
   をそのくさび面側方向へ付勢する弾性部材からなること
   を特徴とする請求項６記載の移動式タワークレーン。
8. 【請求項８】 旋回台またはブラケットなどの固定部材
   上における、第１ブームに若干の傾倒姿勢を与えるため
   の相当位置に、エッジブロックのくさび面側方向への移
   動を停止させるストッパを備えたことを特徴とする請求
   項７記載の移動式タワークレーン。
9. 【請求項９】 前記４節リンクの一つのリンクが、前記
   第１ブームと一体に構成されるとともに、前記第１ブー
   ム格納姿勢において前記上部旋回体の旋回中心に対して
   前記第１ブームの後端側に配置されたことを特徴とする
   請求項２、３、４、５、６、７又は８記載の移動式タワ
   ークレーン。
10. 【請求項１０】 前記４節リンクの対向するリンクのう
    ち、前記第１ブームと一体構成されたリンクにおける前
    記第１ブームの下端側のピンまたはその近傍と、前記旋
    回台と一体構成されたリンクにおける前記第１ブームの
    下端とは反対側のピンまたはその近傍とを油圧シリンダ
    により連結したことを特徴とする請求項９記載の移動式
    タワークレーン。
11. 【請求項１１】 前記ブーム装置が、前記第１ブームと
    第２ブームとを連結する４節リンクを備えたことを特徴
    とする請求項１、２、３、４、５、６、７、８、９又は
    １０記載の移動式タワークレーン。
12. 【請求項１２】 第１ブームおよび第２ブームの格納姿
    勢において、上面から見て前記第１ブームおよび第２ブ
    ームを前記上部旋回体のほぼ中心に配置し、その両側面
    の一方側に運転台を、他方側に機械室を配設したことを
    特徴とする請求項１、２、３、４、５、６、７、８、
    ９、１０又は１１記載の移動式タワークレーン。
13. 【請求項１３】 前記第１ブームおよび第２ブームを格
    納姿勢にし、かつ、その長手方向を前記下部走行体の進
    行方向に配置したとき、前記運転台および機械室が前記
    下部走行体の最大幅以内にあることを特徴とする請求項
    １２記載の移動式タワークレーン。
14. 【請求項１４】 前記運転台および機械室が前記下部走
    行体の最大幅以内で旋回可能なことを特徴とする請求項
    １３記載の移動式タワークレーン。