JPH0721083B2 - 親水性充填剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物 - Google Patents

親水性充填剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物

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JPH0721083B2
JPH0721083B2 JP10817387A JP10817387A JPH0721083B2 JP H0721083 B2 JPH0721083 B2 JP H0721083B2 JP 10817387 A JP10817387 A JP 10817387A JP 10817387 A JP10817387 A JP 10817387A JP H0721083 B2 JPH0721083 B2 JP H0721083B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は親水性充填剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物
に関する。詳しくは、熱可塑性樹脂に微粉末鉄粉、微粉
末塩化ナトリウム、及び親水性充填剤を配合してなる樹
脂組成物に関する。
本願の樹脂組成物は酸素吸収性が賦与されているため、
これをフィルムに成形し水分付与工程を通じて処理した
場合に、包装材として利用すると、食品の長期保存、野
菜類の鮮度保持、衣料の防虫、或いは電子部品・精密機
器の防錆等に顕著な効果を示す。或いは、密閉容器中に
当該フィルム片を投入して、酸素吸収の目的を果すこと
ができる。
従来の技術 酸素吸収機能を有する樹脂組成物としては特公昭54−43
8に樹脂に鉄粉もしくは銅粉、水分、塩化ナトリウム、
および水難溶性充填剤等を配合した例がある。実際の用
法は密閉状態で当該樹脂組成物を粉体、もしくは粉粒状
態で利用することが記載されている。
一方,包装材として使用する樹脂組成物自体に酸素吸収
能を賦与する方式が提案された。特開昭60−158,257に
よれば熱可塑性樹脂に鉄粉および塩化ナトリウムを配合
し、該配合物を溶融成形して得られたフィルム自体を包
装材として利用する方式である。これによって作成され
た包装袋によれば被包装物を脱酸素状態に保つことが期
待できる。
しかしながら、この包装では内と外の両面から酸素の吸
収が行われ、目的とする内側の脱酸素能に著しい限界が
ある。
これを解決するため、特公昭62−1,824では樹脂に還元
性物質を主剤とする脱酸素剤を配合してフィルムに成形
し、酸素ガスを遮断するフィルムを外側に積層させて、
積層フィルムを包装に利用している。これによって外側
からの酸素を断って包装内部の脱酸素の効果を向上させ
ている。包装内部に封じられた空気からわずかな酸素を
吸収除去するに当り、積層フィルムの効果は顕著であ
る。
この場合、樹脂に配合される還元性物質、あるいは鉄粉
の理論的酸素吸収量から見るに、現実の積層フィルムを
もってしても充分にその吸収能を発揮していないことが
明らかになった。即ち、鉄粉−塩化ナトリウムの共存状
態で、鉄成分が空気中の酸素を捕捉して酸化されて行く
際、脱酸素効果は一定のレベルでほとんど飽和状態に達
し、それ以上は酸素吸収能を持たない。換言すれば、低
湿度あるいは乾燥の状態では、鉄粉の理論的酸素吸収量
に達しないまま、吸収が鈍化することが判明した。従来
技術では、樹脂に配合する鉄分が有効に利用されていな
いことが明らかである。
発明が解決しようとする問題点 本願の発明者は従来技術の欠陥を克服すべく、鉄粉の酸
素捕捉を検討した結果、樹脂中に配合された鉄粉が酸化
されるのは、塩化ナトリウムが、空気中の水分に僅かに
溶けてイオン化し、このイオンの存在下で、鉄粉が酸化
される反応機構が想定される。即ち鉄粉−塩化ナトリウ
ム−水という三成分共存の状態ではじめて鉄粉の酸化、
換言すれば、鉄粉の酸素吸収能が充分発揮されるのであ
る。
しかるに、従来の方法では熱可塑性樹脂、鉄粉、塩化ナ
トリウム粉末を配合し、高温下で該配合物を溶融し、フ
ィルムに成形するという製造工程をとっていたため、樹
脂中の水分が完全に除去された包装材しか得られなかっ
た。かような状態では鉄粉−塩化ナトリウムの二成分系
であり、塩化ナトリウムがイオン化することがなく、そ
れ故鉄粉の酸素吸収能に自ら限界を生じていたと考えら
れる。
課題を解決するための手段 以上の考察から樹脂内に水分をいかに供給すべきか、そ
の適切な供給量はどれ程か、しかも供給が長期にわたっ
て安定しているためにはどういう形態で補うべきか、が
課題となってクローズアップした。
本願発明者は熱可塑性樹脂に、鉄粉、粉末塩化ナトリウ
ムの他に親水性充填剤を配合し、これを溶融してフィル
ムに成形した後で、水分付与工程を通して該充填剤に水
分を十分吸収させて製造することにより、これら課題を
一挙に解決した。
即ち、熱可塑性樹脂100重量部に対し100メッシュ以上の
微粉末鉄粉を50−400重量部、100メッシュ以上の微粉末
塩化ナトリウムを2重量部以上、および吸収性無機充填
剤、活性炭、木粉もしくはパルプの中から少なくとも1
種以上を選んで100メッシュ以上の親水性充填剤の微粉
末を0.5重量部以上を均一混合して配合する。この場
合、配合物を100メッシュ以上の粒径にするのは、この
後の工程で該熱可塑性樹脂組成物から厚さ50μ以下のフ
ィルムを成形可能にするためである。
本発明が適用される熱可塑性樹脂は低密度ポリエチレ
ン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニール、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体等である。その他、これらにエチレン−プロ
ピレン共重合体の如き熱可塑性エラストマーを添加して
もよい。
本発明が適用される鉄粉は還元粉、電解粉などが適して
いる。成分純度は高度である必要はないが、100メッシ
ュ以上に粉砕されたものが好ましい。
本発明が適用される塩化ナトリウムは、100メッシュ以
上に粉砕されたものが好ましい。
本発明が適用される親水性充填物は吸水性無機充填剤、
活性炭、木粉もしくはパルプの中から1種類もしくは複
数種類を選んで粉砕、均一混合して配合する。ここに吸
水性無機充填剤とはゼオライト、セリサイト、モンモリ
ナイト、カオリンクレー、タルク、珪酸カルシウム,天
然珪酸,合成珪酸,炭酸カルシウム,硫酸カルシウムな
ど指す。
以上諸配合物は予め、粉砕し100メッシュ以上の微粒子
として配合することが好ましい。
配合物の均一混合の方法は本発明者らが先に開示した特
公昭57−32,941号による手段がフィルム製造のためには
最も優れていると考えられるので、それを採用した。即
ち微粉砕した鉄、塩化ナトリウムの所定量を上記の基準
に合せて混合してなる配合物をミキサーで撹拌しつつ、
該熱可塑性樹脂の融点以上、分解点以下の温度に昇温さ
せることにより凝集性粒状物を生成させた後、そのまま
撹拌下で該熱可塑性樹脂の融点より低い温度まで冷却し
て粒状組成物を得る。この粒状組成物を直接用いて、イ
ンフレーション法、又はT−ダイ法を用いてフィルムを
成形する。あるいは、場合によっては、この粒状組成物
から通常の造粒工程を経てペレットを成形し、このペレ
ットを用いて、インフレーション法または、T−ダイ法
を用いてフィルムを成形してもよい。
ここに得られたフィルムは常温、または加温下の水槽も
しくは、加湿槽を通過させてフィルム内に存在する親水
性充填剤を含水状態にする。この水分付与は、当該充填
剤に飽和状態まで含水させるのが目的であって,当該鉄
粉には影響を与えないことが望ましいから浸水時間は短
時間で充分である。浸水後はフィルム表面の付着水を取
除き、外観上表面に水滴が残存しない程度に乾燥する。
乾燥は後述する積層物を加工するに支障ない程度に表面
水分が除去されていれば目的を達する。
また、順序を逆にして積層後、前記の水分付与、乾燥を
行っても何ら差支えない。
実際の用途としては当該フィルムを用いて積層体を加工
する場合、外層として空気中の酸素不透過の合成樹脂層
又は金属箔層を貼布する。酸素不透過の樹脂としてナイ
ロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−
酢酸ビニル共重合体ケン化物等が好んで用いられる。
内層としては気体透過性の良好な通気性フィルムを貼布
する。通常、紙・合成紙・不織布・微多孔フィルム等が
好んで用いられる。この内層は、被包装体に、当該酸素
吸収性樹脂組成物が直接触れるのを防ぐ目的で貼布され
る。
このようにして成形して得られた積層体は瓶状の容器、
包装袋として外気と触れる側に外層、被包装体の側に内
層を配置すれば、被包装物雰囲気の脱酸素の目的を達す
ることができる。もちろん目的に応じてより複雑な加工
が可能であるが外気に接する層に不透過性の層、内側に
透過性の層を配置する基本構造には変わりはない。
本発明によれば親水性充填物は内包する水分を環境に応
じて徐々に放出する。他方塩化ナトリウムは、その水分
の影響を受けてイオンに解離し解離したイオンの共存下
で鉄分の酸化、つまり酸素吸収が促進されるわけであ
る。こうして鉄−塩化ナトリウム−水という三成分の共
存系が当該熱可塑性樹脂のフィルム内に安定に、かつ長
期にわたって発生し、酸素吸収能が充分に発揮される。
また本発明の酸素吸収能の保持の目的を損わない限り、
当該熱可塑性樹脂に各種添加剤を加えることは、一向差
支えない。
実施例 次に本発明の効果を実施するため、実施例を示す。
実施例1 A.調整した樹脂の配合比 熱可塑性樹脂(宇部興産製ポリエチレンHF019)100重量
部 鉄粉 200メッシュ 100重量部 塩化ナトリウム 200メッシュ 10重量部 親水性充填剤(モンモリナイト、 325メッシュ パス) 0〜80重量部 添加剤(ステアリン酸カルシウム) 0.3重量部 まずこれらの配合物を所定の重量比にて配合しヘンシェ
ルミキサーで、昇温しつつ30分間配合する。次に150℃
で凝集性粒状物を生成させた後、撹拌下で室温まで冷却
して粒状組成物を得た。
B.インフレーション法によるフィルムの成形シリンダー
とダイス間の温度は180〜200℃、引取速度11m/分、折り
径42cmでフィルム厚さはおよそ130μであった。
C.フィルム積層 上記130μのフィルムの一方の側に酸素不透過性のフィ
ルムとしてナイロン/ポリエチレンから成る厚さ30μの
フィルムを貼付した。他方、その反対側に気体透過性多
孔性フィルム(ジュラガード♯2400 ポリプラスチック
社製)厚さ25μを貼付した。
D.水分付与工程 実験番号1〜6においては積層後、温度40℃、湿度90%
の恒温恒湿槽に1分間滞留させた後、直ちに乾燥し、常
温下においても水滴付着がない状態とする。
E.角底袋の作成 酸素不透過のフィルムを外側に、酸素透過性フィルムを
内側にして縦、横、厚さがそれぞれ20cm×10cm×1cmの
角底の袋を作った。
F.袋内酸素の追跡 袋内をシリカゲルを通して乾燥した空気で置換した後,
密封し以後、常温で袋内の酸素濃度をガスクロマトグラ
フを用いて経時的に追跡する。
なお、対照実験としてA工程で親水性充填剤を全く添加
しない場合(実験番号6)、A工程で親水性充填剤を所
定量したにもかかわらずD工程を省略した場合(実験番
号7)を併記する。
実施例2 A.調整した樹脂の配合比 熱可塑性樹脂(徳山曹達製 ポリプロピレンRB110)100
重量部 鉄粉 200メッシュ以上 50重量部 塩化ナトリウム 200メッシュ以上 2.5重量部 親水性充填剤(木粉) 150メッシュ以上 0〜20重量部 添加剤(ステアリング酸カルシウム) 0.25重量部 まず、これらの配合物を所定の重量比に配合し、ヘンシ
ェルミキサーで昇温しつつ40分間混合する。次に170℃
で凝集性粒状物を生成させた後、撹拌下で、室温または
冷却して粒状組成物を得た。
B.インフレーション法によるフィルムの成形シリンダー
とダイス間の温度は230〜250℃、引取速度4.2m/分、折
り径30cmで、フィルム厚さはおよそ82μであった。
C.フィルム積層 上記フィルムは、表裏とも何らフィルムを積層させずそ
のまま使用した。今回の実施の目的は容器、又は包装袋
として使用するのではなく、該フィルム自体の酸素吸収
能を調べるためだからである。
D.水分付与工程 フィルム成形後、常温の水槽に5秒間浸し、直ちに乾燥
し附着水を外観上すべて除去する。
E.試験片の作成 水分付与工程後の該フィルム3cm×4cmの長方形片に切り
とる。これをガラス製容器に投入して用いる。
F.容器内酸素の追跡 ガラス容器の内容積350ml、試験片を1枚入れてから密
封する。当初の容器内湿度50%、以後温度23℃に保持
し、随時容器内の酸素濃度を測定し、経時的に追跡す
る。
なお対照実験として親水性充填剤としての活性炭を配合
しない場合(実験番号12)、および活性炭を配合したに
もかかわらず、Dの水分付与工程を省いた場合(実験番
号13)を提示する。
発明の効果 本発明は熱可塑性樹脂に、微粉末状鉄分、塩化ナトリウ
ム、及び親水性充填剤を配合してなる樹脂組成物を利用
して、密閉容器に含まれる微量の酸素を吸収することを
目的としている。
この場合、親水性充填剤は、予め水分付与工程によって
充分含水の状態で使用を開始する。かくて、当該樹脂内
には、親水性充填剤から徐々に放出される水分が長時間
にわたって作用し、鉄−塩化ナトリウム−水の三成分共
存下に鉄の酸化作用が促進されることになる。
実験1〜5と実験7とを比較してみれば、水分付与工程
の存在により上記の効果が十分発揮されることがわか
る。同様のことは実験8〜11と実験13を比較しても同じ
ことがいえる。この場合、使われている熱可塑性樹脂の
種類は問わない。また水分付与工程の方法も不問であ
る。
親水性充填剤を添加せず、水分付与工程のみ採用した場
合は、鉄−塩化ナトリウム−水の共存状態が長時間維持
されないので酸素吸収濃度は緩慢であることは実験6と
12のデータが示す通りである。
また、当該樹脂組成物は積層構造にして、包装材として
使用できると共にフィルムの切片を密閉容器に投入する
ことによっても酸素吸収性は発揮されることは実験例1
と2の事例に徴して明らかである。
かくて、本願の樹脂組成物は優れた酸素吸収性を備えて
いるので、用途に応じて広く応用が可能である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂100重量部に対し、100メッシ
    ュ以上の微粉末の鉄粉50−400重量部、100メッシュ以上
    の微粉末の塩化ナトリウム2重量部以上、および吸水性
    無機充填剤、活性炭、木粉もしくはパルプの中から少な
    くとも一種以上を選んで100メッシュ以上に粉砕した親
    水性充填剤を0.5重量部以上を均一配合してなる樹脂組
    成物を溶融してフィルムに成形した後、該フィルムを常
    温または加温下の水槽もしくは加湿槽に浸し、その後に
    付着水を除去乾燥する水分付与工程処理を行うことを特
    徴とする、親水性充填剤を含有する酸素吸収性樹脂組成
    物。
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