JPH07178134A - 電動式車椅子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 車椅子使用者の日常生活に欠くことのできな
い移乗とトイレ使用を、自力による電動操作で容易にし
た電動式車椅子および車椅子の座席昇降装置。 【構成】 ほぼコの字形またはその変形に並立する支柱
を有する車椅子において、車体の前部に電動駆動装置を
設置した電動車椅子、および車椅子の座席昇降装置。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、歩行困難な身体障害
者、病人、高齢者などが使用する電動式車椅子に係るも
ので、詳しくは車椅子それ自体に移乗とトイレ使用の機
能を具える電動式車椅子および車椅子の座席昇降装置に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】車椅子は、歩行困難者が自立して社会生
活をおくるための有力な道具である。しかしながら、従
来の車椅子は、車椅子使用者の日常生活において、ベッ
ド、ソファー、浴室シャワー台、自動車座席、などとの
移乗とトイレ使用が困難な問題点があり、これが自立生
活の大きな障害になっている。車椅子生活者は、上記の
移乗作業とトイレ使用を行う場合、上肢による自力動作
あるいは介護者の抱きかかえ介助などを必要とする。こ
の自力作業には、しばしば転倒転落の危険が伴い、また
抱きかかえ作業では介護者が中腰で重い身体を抱えるた
めに腰を痛めることが多い。車椅子使用者はもとより介
助者にも肉体的、精神的な大きな負担になっており、こ
の問題は解決し難いものとされている。このような車椅
子使用における移乗とトイレ使用の困難性を解消する為
には次の様な技術がある。

【０００３】ａ．例えば、床上走行式リフト装置があ
る。自在キャスター付き強固な支柱のアームからシート
状の人体吊り具を垂下してあるもので、これにより身体
を包み昇降移動して移乗を行う装置である。欧米の福祉
先進国において使用されている最も一般的な装置であ
る。 ｂ．また、天井走行式リフト装置がある。天井壁にレー
ルを設置し、これに懸けた機動具からシート状の人体吊
り具を垂下し、これにより身体を包み昇降移動して移乗
を行う装置である。 ｃ．別にまた、トイレ・シャワー用として使用目的を限
定した介助車およびハンドリム付き車輪をもつ車椅子が
知られている。これらの車椅子は排便用の穴をもつ座席
を具え、座席の下に便器を配置して使用するか、車椅子
を後進してその座席をトイレット便器の上に載せて使用
するものである。 ｄ．電動式車椅子に関しては、座席の下部において電動
駆動装置を設置した車椅子が国際的に広く使用されてい
る。 ｅ．本発明者は、車椅子生活者の移乗とトイレ使用の困
難性を解消するため、特公平３−６６８９８において、
「ほぼコの字状支柱に並立する支柱と、これに着脱自在
の背あて部、および着脱自在の腰掛け部をもつ介助車」
を提示している。 ｆ．また、本発明者は、同様の目的をもって、実公平３
−４４１８３において「後部を開放して、ほぼコの字形
に並立する支柱と同支柱の前部の外側方に上起する肘当
て支柱および背もたれ支柱を具え、かつ着脱自在の座席
部および背当て部をもつ介助車」を提示している。 ｇ．また、本発明者は、同様の目的をもって、特公平３
−６７６９７において「障害者用車椅子」を提示してい
る。 ｈ．また、本発明者は、同様の目的をもって、特公平４
−５５７０４において「昇降自在な座席支柱と、着脱自
在な座席と背もたれ部を有し、かつ座席の下面に弾性膨
縮体を設けた車椅子を提示している。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記した装置におい
て、 ａ．床上走行式リフト装置は、３〜４個のキャスターで
移動するほぼ等身大の装置で、畳木造りで段差のある狭
い日本家屋での使用にそぐわない欠点がある。 ｂ．天井走行式リフト装置は、天井下に装置を移動する
レールの取付設備を必要とし、日本の木造家屋では装置
の重量とスペースの点で難点があり、また装備は大型で
設備費用が高価である。なお、ａ．ｂ．のリフト装置は
共に使用者に不安感を与え、また吊りシートによる身体
の包み操作に介護者の習練を必要とする問題点などがあ
る。 ｃ．介助車および車椅子は、トイレとシャワーの使用を
目的とした専用品であるが、これに乗降する移乗手段が
なく、また、日常生活における安楽性および走行を目的
とした車椅子でない等から、常用には適しない。折角に
購入しても、日を追ってその利用度は減少するのが実状
である。 ｄ．電動車椅子においても同様で、移乗とトイレ使用を
容易にすることを目的に製作したものでは無い。 今日の標準形車椅子は、１９３３年米国人エレベスト、
ジニング両氏の開発した座席折りたたみ形金属性車椅子
で、車椅子としての評価は国際的に確立し、本年で丁度
６０年間に亘り使用されている。しかしながら、この車
椅子は使用者にとって重要な、移乗とトイレ使用を困難
にしてきたのが実状である。自己操作で走行することの
できる電動式車椅子においても、また同様の問題点をも
っている。車椅子は移乗とトイレ使用を容易にする機能
を具えるべきであるという、本発明者の提唱する車椅子
思想はここには全く生まれていない。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者は、先に特公平
３−６６８９８、特公平３−６７６９７、特公平４−５
５７０４において、移乗作業とトイレ使用を容易にする
ことを目的とした介助車およびハンドリム付き車椅子を
提案している。これらの車椅子によれば、車体を後進し
て、その下部支柱を移乗しようとする台の下に挿入し、
身体を座席と供に台上に移行することによって移乗作業
を容易にすることができる。また、車体を後進して便用
座席をトイレットの便器上に載せ、座席に乗った状態で
使用できる。但、これらの操作に介護者の介助を必要と
するところがあった。これに対して本発明は、使用者が
自己操作によって容易に登乗し走行する電動式車椅子で
ある。

【０００６】

【作用】図３の使用図について作用を説明する。 １．車椅子から座席（背当て付き座席または便用座席の
場合もある）を外してベッドの端に置く。 ２．使用者は座席に腰かける。 ３．車椅子の背当て部を開放する。 ４．車体を後進誘導して、車体底部をベッドの下に挿入
する。 ５．座席を吊りベルトに取り付け、背当て部を閉鎖す
る。 ６．肘支柱のハンドルを外側から上方に回転して座席を
上昇し、ベッドから４〜５ｃｍ浮上させる。この座席の
昇降技術は本発明によるものである。 ７．次に、車椅子を前進誘導する。 以上でベッドから車椅子への移乗は完了する。車椅子か
らベッドへの移乗は逆の順序で行うことができる。同様
の方法で、台、ソファー、自動車座席との移乗が容易に
できる。また、トイレ使用は、予め座席を便用座席に交
換し、車椅子を後進誘導し、座席をトイレの便器上に載
せて行う。座席は車体に簡単に着脱し、容易に交換でき
る。

【０００７】

【実施例】図１および図２は本発明の電動式車椅子であ
る。この車椅子はほぼコの字形の並立支柱１で構成され
ており、その座席２の下部および背部４が、後方に向け
て開放された空間部になっている。座席２は肘支柱１ｂ
にベルト１０で吊り下げてあり、接続具１１、および１
２で着脱する。並立支柱１ａはこれを横手連結する底部
支柱１ｃまたは床板５によって強固に固定されている。
底部支柱２ｃの前部または床板にバッテリー、モータ
ー、コントロールボックスなどの電動駆動装置６が配置
してある。車輪８は２個のモーターに左右それぞれ直結
し、後輪８ａに自在キャスターを使用してある。電動駆
動装置の外箱７とその後部の床板５は足台になる。電動
駆動装置から出る電導線は足台下面から車椅子支柱１ｂ
の内部に通し、伸縮自在の電導線１５として操作器１６
に接続してある。座席２はワンタッチの差し込み操作で
車体に着脱し、安楽性のある居住用座席または背付き座
席あるいはトイレ用座席などを交換使用できる。座席は
その下面に水平回転板またはシート状回転体を設けるこ
ともできる。車椅子の車体支柱は例えばステンレス・パ
イプ径２５〜３０ｍｍ・厚み２ｍｍ前後。車体は凡そ全
長が８０〜１００ｃｍ、巾５０〜６０ｃｍ、高さ７０〜
９０ｃｍである。車体支柱は管体、角体、板体、それら
の組み合わせ等のいずれでも形成でき、またその金属部
分を合成ゴム・皮革等で防冷、彩色被覆することもでき
る。この電動式車椅子の車体構成は従来形電動車椅子に
比較してシンプルである。このような車体のシンプル構
成は、本発明の簡易な座席昇降技術によって最終的に達
成されている。すなはち従来の強固堅牢な支持体を必要
とするウオーム・ギアー回転法あるいは油圧法などによ
る座席昇降方法では、装置が複雑化し重量が増大して、
本電動式車椅子にみるような単純構成を維持することが
出来ない。

【０００８】次にこの座席昇降方法を図３および図４の
実施例について説明する。肘支柱１は座席２をベルト１
０により吊り、硬性板からなる深い溝形の肘当てカバー
１３が深くはめ込んである。カバーの内部で肘支柱のほ
ぼ中間部にハンドル１４を下向きに設けてある。このハ
ンドルは管体で、その上端面１４ａが滑行体２１を介し
て肘支柱に接し、カバーに軸留１７され、内部にロック
棒１８がスプリングばね１９で支えてある。ベルト１０
は回転体であるカバー１３の下部あるいはカバーの同側
内面に廻して取り付けてもよい。ハンドルを車体の外側
から上方へ回転すると、カバーの下辺１３ａでベルト１
０が折り返して押し上げられ、カバーの深さ（３〜６ｃ
ｍ）のほぼ２倍分だベルトが上昇して、座席が台面から
浮上する。座席と台との間は大巾に空くので、スプリン
グばねの強いソファーの座席やベット上などからも、身
体荷重のかかった座席の出し入れが容易になる。ベルト
の上昇時、ハンドルは内部のロック棒１８がスプリング
１９に押されて肘支柱の穴２０にロックし、ハンドルを
水平方向に屈折するとロツクが解除する。ハンドルの取
り付け部は、身体の重心に当たる位置が適する。ハンド
ルは長さ１０〜２０ｃｍ程度で、標準的な女子の力によ
り体重８０ｋｇの身体を容易に上昇することができる。
これは、本発明における「回転の原理」に基づく効果で
ある。ハンドルの柄を延長自在にして更に省力をはかる
こともできる。ハンドルは水平方向に倒してカバー内に
収まる。

【０００９】図５は本発明の座席昇降装置を車椅子の座
席支柱１ｄに設けた実施例の一部分を示したものであ
る。この座席支柱は前部支柱１ｂに摺動する。ハンドル
１４は上方に向けて取り付けてあり、またベルト１０の
長さを短かくしてあるが、座席の昇降機序は上述したと
ころと同様である。既に実施例に述べたベルト１０は、
これを布、皮革、台成樹脂または金属素材などで種々に
成形することができ、また座席との接続も他の方法を自
由に採用でききる。なお、座席の下面に滑行性回転体を
付して左右への体位方向変換を容易にすることもでき
る。

【００１０】

【発明の効果】本発明の車椅子は、車椅子それ自体に移
乗とトイレ作業の機能を具えるという新たな車椅子思想
に基づき開発した電動式車椅子である。すなわち、図６
の使用図で説明したように、移乗作業は、主として自力
電動操作により車体を後進して車体支柱を台下に挿入
し、身体を座席と供に移動して、移乗することが出来る
効果がある。この際、車体の底部支柱はキャスター以外
の付帯物がない単一体であるので、その支柱を間隙巾の
狭い台下部にも容易に深く挿入することができる効果が
ある。また、トイレ使用は自力電動操作により車体を後
進誘導して座席を便器上に載せ、これを行うことができ
る効果がある。本発明の座席昇降装置は物体の「回転の
原理」を応用した技術であり、極めて簡単な機構によっ
て、身体を乗せた車椅子座席を容易に昇降することがで
き、移乗の目的を簡単に達成する効果がある。なお、座
席の交換を容易にする効果があり、安楽性の高い背付き
折りたたみ座椅子（特公平３−６７６９７）および洗浄
器付きトイレ用座席（特公平３−６７６９７）などが使
用できる。なお、本電動車椅子はリモートコントロール
方式によりこれを誘導走行することが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による実施例の斜視図

【図２】本発明による他の実施例の斜視図

【図３】本発明による座席昇降装置の側面図

【図４】図３のＰｑにおける矢印方向での拡大断面図

【図５】本発明による他の実施例における座席支柱部の
斜視図

【図６】本発明の使用説明図

【符号の説明】

１ 車体支柱 １ａ 肘支柱 １ｂ 前部支柱 １ｃ 底部支柱（車体） １ｄ 座席支柱 １ｅ 摺動支柱 ２ 座席（吊り下げ座席） ３ 車体の背部 ４ 背部支柱 ５ 横手連結床板 ６ 電動駆動装置 ７ 電動駆動装置外函 ８ 電動駆動装置車輪 ９ 自在キャスター １０ 吊りベルト １１ 接続部（ベルト側） １２ 接続部（座席側） １３ 肘カバー １３ａ 肘カバーの下縁 １４ ハンドル １５ 電導線 １６ 操作器 １７ 留軸 １８ ロック棒 １９ スプリング ２０ ロック穴 ２１ 滑行体（滑行管）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ほぼコの字形またはその変形に、並立す
   る車体支柱（１）と、着脱自在な座席（２）を有する車
   椅子において、その底部支柱（１ｃ）の前部に電動駆動
   装置（６）を設置したことを特長とする電動式車椅子。
2. 【請求項２】 車椅子において、座席を吊り下げた肘支
   柱（１ａ）または座席支柱（１ｄ）またはそれらの平行
   体に、これを軸として回転する回転体（１３）を取り付
   け、それを回転駆動するハンドル（１４）を設けたこと
   を特長とする座席昇降装置。