JPH07145516A - 活性炭素繊維、その製造方法及び該活性炭素繊維を吸着体とする浄水器 - Google Patents

活性炭素繊維、その製造方法及び該活性炭素繊維を吸着体とする浄水器

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JPH07145516A
JPH07145516A JP5311054A JP31105493A JPH07145516A JP H07145516 A JPH07145516 A JP H07145516A JP 5311054 A JP5311054 A JP 5311054A JP 31105493 A JP31105493 A JP 31105493A JP H07145516 A JPH07145516 A JP H07145516A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 25℃、相対湿度37%における平衡水
分率=0.05〜1.0%、BET比表面積=300〜
3,000m2 /g、細孔容積=0.25〜2.00c
c/g、水蒸気法で測定した細孔半径が7〜14Åの範
囲である細孔の容積が、細孔半径100Å以下の細孔の
容積の80%以上である活性炭素繊維。 細孔半径が
9〜20Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径100
Å以下の細孔の容積の80%以上である活性炭素繊維。
上記活性炭素繊維を主要な吸着材とする浄水器。 【効果】 水分を吸着する能力が少なく、水に対する溶
解度の小さい疎水性有機化合物を吸着する能力に優れ、
特に水道水からトリハロメタンを吸着する能力に優れて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浄水用として優れた吸
着特性を有する活性炭素繊維に関する。本発明の活性炭
素繊維は、特に水中に溶解している微量の有機物を効率
良く吸着する能力を有する。さらに、本発明は、上記特
定の活性炭素繊維をピッチを原料とし、特定の制限され
た条件下で製造する方法に関する。さらに、本発明は、
上記特定の活性炭素繊維を主要な吸着材とする浄水器に
関する。
【0002】より詳細には、本発明の活性炭素繊維は、
水分を吸着する能力が小さい特徴を有しており、従って
水中に微量溶解するハロゲン化炭化水素のような水に対
する溶解度の小さい(以下、疎水性と記すことがある)
有機化合物を吸着する能力に優れている。
【0003】本発明の活性炭素繊維は、この特性を利用
して、浄水器の充填材(吸着材)として使用することが
でき、また、排水の浄化処理に用いて、トリクロロメタ
ン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクレン、パー
クレン等の除去に顕著な効果を有する。また、本発明の
活性炭素繊維は、低沸点の有機溶剤、特に水に対する溶
解度の小さい、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、
スチレンのような有機成分が微量含有されている排水の
浄化処理材として用いることができる。
【0004】
【従来の技術】近年、世界的に水質汚濁が進行し、水道
水の水質確保のために、多量の消毒剤の投入を必要とす
るようになっている。消毒剤としては、主として塩素が
使用されるが、この処理に伴い、水道水に含有される有
機塩素化合物の量は次第に増加する傾向があり、該有機
塩素化合物の有害性が指摘されるようになった。その中
でも、トリハロメタン、特にトリクロロメタンについて
は発癌性が指摘されており、水道水をそのまま飲用しな
い人が増加している。
【0005】また、地下水の汚染も進行しており、近年
地下水中に1,1,1−トリクロロエタン、トリクレ
ン、パークレン、フェノール、BTX等の有害物質が混
入している場合がある。このような事態に対処するため
に、水道水中のトリハロメタン及びその他の有害物質を
除去する必要があると指摘されている。実際に、水道水
を家庭において浄化するための浄水器の需要が、近年増
加する傾向を示している。
【0006】従来より、水中のトリハロメタン等のハロ
ゲン化炭化水素の除去を目的として、粒状活性炭、粉末
状活性炭、繊維状活性炭などの種々の活性炭の使用が提
案されている。しかしながら、活性炭素繊維を含めて従
来の活性炭はトリハロメタン除去効果は十分とは言い難
い。
【0007】この理由としては、 水道水中に含まれ
るハロゲン化炭化水素の濃度が通常数十ppbと極めて
低いこと、 水道水中に含まれるフミン質と殺菌剤と
して使用される塩素とが活性炭表面で反応し、トリハロ
メタンの生成をむしろ促進する恐れがあること、及び
活性炭が親水性の場合、疎水性のハロゲン化炭化水素
より水分子を選択的に吸着してしまい、再生時には、水
分子が邪魔をして脱着し難いことが挙げられる。
【0008】このような理由より、特公平2−5166
9号公報には、BET比表面積(x)300〜1,50
0m2 /g、相対湿度37%の平衡水分率(y)が1%
を越え、かつ特定の関係式:1.0 <y<−9.0 ×10-4
+6.3 を満たすピッチ系活性炭素繊維に限って、トリハ
ロメタン吸着材として比較的に優れた性能を示すことが
開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
2−51669号公報に開示された活性炭素繊維は、従
来の粒状活性炭に比較して高性能のものであるが、ハロ
ゲン化炭化水素、特にトリクロロメタンの吸着能力につ
いてはいまだ不十分である。また、従来の活性炭素繊維
はかなりの吸湿性を有しており、トリクロロメタンを初
めとするハロゲン化炭化水素は水に比較的難溶性で、疎
水性が強く、上記のような親水性の活性炭素繊維では吸
着除去しにくいのが現状である。
【0010】すなわち、活性炭素繊維が親水性である
と、トリクロロメタン等のハロゲン化炭化水素の吸着除
去性能が悪化し、これを改善するためには、吸湿性の低
下が有力な手段であると考えられる。しかし、従来、粒
状活性炭および活性炭素繊維について、平衡水分率が
1.0%以下のものを得ることが実質上困難であった。
本発明は、活性炭素繊維を含めた従来の活性炭が、水相
でのハロゲン化炭化水素の吸着能力が低く、しかもそれ
を脱着しにくいと言う問題を解決することを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を種
々検討した結果、ピッチを原料として用い制限された条
件下で製造することにより平衡水分率が極端に低い活性
炭素繊維を製造することができ、さらにその活性炭素繊
維が後工程に耐える強度を有することを見出すと共に、
この活性炭素繊維のうちの一部のものが特に水相でのハ
ロゲン化炭化水素の吸着能力が予想以上に高いことを見
出し、本発明を完成するに至った。
【0012】本発明は: 25℃、相対湿度37%における平衡水分率が0.
05〜1.0%、BET比表面積が300〜3,000
2 /g、細孔容積が0.25〜2.00cc/gで、
かつ水蒸気法で測定した細孔半径が7〜14Åの範囲で
ある細孔の容積が、細孔半径が100Å以下の細孔が占
める容積の80%以上である活性炭素繊維を提供する。
また、 25℃、相対湿度37%における平衡水分率が0.
05〜1.0%、BET比表面積が300〜3,000
2 /g、細孔容積が0.25〜2.00cc/gで、
かつ水蒸気法で測定した細孔半径が9〜20Åの範囲で
ある細孔の容積が、細孔半径が100Å以下の細孔が占
める容積の80%以上である活性炭素繊維を提供する。
また、
【0013】 25℃の水中10ppbの平衡濃度に
おけるトリクロロメタン吸着能力が活性炭素繊維1g当
たりトリクロロメタン0.3mg以上である上記又は
の活性炭素繊維を提供する。また、 ピッチ系の不融化繊維又は炭素繊維を、水及び二酸
化炭素のいずれか、若しくは両方を含有する気体中、8
00℃以上1300℃以下の温度で賦活した後、不活性
ガス中700℃以上1300℃以下で熱処理することを
特徴とする上記又はの活性炭素繊維の製造方法を提
供する。また、 上記又はの活性炭素繊維を主要な吸着材とする
浄水器を提供する。
【0014】以下、本発明を具体的に説明する。 〔I〕活性炭素繊維:本発明の活性炭素繊維は、本質的
に以下の特性を有するものである。すなわち、吸着用途
に好適な活性炭素繊維としては、1)25℃、相対湿度
37%における平衡水分率が0.05から1.0%、好
ましくは0.1〜0.95%であり、2)BET比表面
積が300〜3,000m2 /g、好ましくは800〜
2,500m2 /gであり、3)細孔容積が0.25〜
2.00cc/g、好ましくは0.25〜1.50cc
/gであり、4)水蒸気法で測定した細孔半径が7〜1
4Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径が100Å以
下の細孔が占める容積の80%以上、好ましくは85%
以上のものである。
【0015】また、吸着・再生用途に好適な活性炭素繊
維としては、1)25℃、相対湿度37%における平衡
水分率が0.05〜1.0%、好ましくは0.1〜0.
95%であり、2)BET比表面積が300〜3,00
0m2 /g、好ましくは800〜2,500m2 /gで
あり、3)細孔容積が0.25〜2.00cc/g、好
ましくは0.25〜1.50cc/gであり、4)水蒸
気法で測定した細孔半径が9〜20Åの範囲である細孔
の容積が、細孔半径が100Å以下の細孔が占める容積
の80%以上である。
【0016】1)25℃、相対湿度37%における平衡
水分率が0.05%未満の活性炭素繊維は、製造するの
が困難であり、強いて製造しようとすると、水蒸気測定
法による細孔半径が大きくなり、また、活性炭素繊維の
耐衝撃性が低下するので好ましくない。また、このよう
に疎水性が強すぎても逆にハロゲン化炭化水素を吸着す
る能力が小さくなり好ましくない。また、活性炭素繊維
の25℃、相対湿度37%における平衡水分率が1.0
%を越えて親水性が高いと、特に水中のハロゲン化炭化
水素の吸着性能が低下する。
【0017】2)活性炭素繊維の比表面積が300m2
/g未満の場合には、吸着容量が小さくなるので好まし
くない。また、3,000m2 /g以上を越える場合に
は、空隙の量が多いために強度、耐衝撃性が小さくなる
ので好ましくない。 3)活性炭素繊維の細孔容積が0.25cc/g未満の
場合には、吸着容量が小さくなるので好ましくない。ま
た、2.00cc/gを越える場合には、空隙の量が多
いために強度、耐衝撃性が小さくなるので好ましくな
い。
【0018】4)活性炭素繊維の100Å以下の細孔の
細孔径分布を水蒸気法で測定した際に得られる細孔半径
が7〜14Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径が1
00Å以下の細孔が占める容積の80%未満の場合に
は、ハロゲン化炭化水素を吸着する能力が小さくなるの
で好ましくない。
【0019】なお、上記測定法による細孔径分布で細孔
径がさらに大きい領域、すなわち細孔半径が9〜20Å
の範囲の細孔の容積が細孔半径100Å以下の占める容
積の80%以上である活性炭素繊維は単に吸着能力が優
れるだけでなく、比較的おだやかな再生条件(温湯また
は熱湯再生或いは短時間低圧スチーム再生)で吸着性能
を高レベルで再生することができる。
【0020】本発明の活性炭素繊維を規定する各種パラ
メータとは以下の通りである。 <水蒸気法による細孔径分布測定>本発明の水蒸気法に
よる細孔径分布は、以下のようにして求めた。一定濃度
の硫酸水溶液上の水蒸気圧は一定値をとる。このことか
ら、硫酸濃度と水蒸気圧間には一律の関係があり、数点
の硫酸濃度を変えた吸着室に活性炭素繊維を入れ、飽和
吸着量を測定し、硫酸濃度より求めた水蒸気圧(P)と
30℃の水の水蒸気圧(P0 )より求まるP/P0 より
細孔半径を、水蒸気量よりその細孔径までの累積細孔容
積を求め、これをプロットし、水蒸気吸着法の細孔径分
布を求める。
【0021】なお、水蒸気圧と細孔半径との関係は下記
Kelvinの式を用いた。
【数1】r=−〔2Vm τcos θ〕/〔RT ln(P/P
0)〕
【0022】〔ただし、 r :細孔半径(cm) Vm :水の分子容(cm3 /mol)=18.079
(30℃) τ :表面張力(dyne/cm)=71.15(30
℃) θ :毛細管壁と水との接触角(°)=55°を用い
た。 R :ガス定数(erg/deg・mol)=8.31
43×107 T :絶対温度(K) P :細孔内の水の示す飽和水蒸気圧(mmHg) P0 :水の30℃における飽和水蒸気圧(mmHg)=
31.824〕
【0023】 <25℃、相対湿度37%における平衡水分率>上記水
蒸気圧法による細孔径分布測定と同様にして、25℃の
硫酸水溶液(比重=1.395)下の活性炭素繊維の平
衡水分吸着量から求めた。 <BET比表面積>BET比表面積は、相対圧0.3に
おける窒素ガスの吸脱着BET 1点法により測定す
る。
【0024】<細孔容積>細孔容積は、相対圧0.96
における窒素ガスの気体吸着法により測定する。 <平均細孔直径>平均細孔直径は、細孔の形が円筒形で
あると仮定し、BET比表面積と細孔容積の値から次式
により算出する。
【0025】
【数2】dp =40000Vp/S 〔ただし、dp :平均細孔直径(Å) Vp:細孔容積(cc/g) S :BET比表面積(m2 /g)〕
【0026】〔II〕活性炭素繊維の製造:本発明の活
性炭素繊維の製造方法の第1段階としては、出発原料と
してピッチ、好ましくは220〜280℃程度に高軟化
点を有する光学的等方性ピッチを用いて常法に従って製
造されたピッチ系の不融化繊維又は炭素繊維を水蒸気及
び二酸化炭素のいずれかもしくは両方を含有する気体中
で賦活するのが好ましい。この反応性気体中には窒素の
ような反応に関与しない物質を含有させることもでき
る。また、酸素のような炭素と反応する物質を少量含有
させることもできる。賦活反応は700〜1,400℃
の間で行うことができるが、好ましくは800〜1,3
00℃の間で、反応時間は5〜30分の比較的速い速度
で行うことが好ましい。
【0027】活性炭素繊維の比表面積を決定する製造時
の条件因子は、主として賦活温度、賦活時間、賦活ガス
濃度である。賦活温度は高く、賦活時間は長く、賦活濃
度は濃くする方が賦活が進行し、比表面積は大きくなる
傾向がある。
【0028】このようにして製造された活性炭素繊維
は、そのままでは25℃、相対湿度37%における平衡
水分率が、1%を越える大きいものである。特に、比表
面積が1000〜1500m2 /g程度の比較的軽度の
賦活品においては、2%以上の水分を吸着し、浄水用の
活性炭素繊維としては好ましくない。この活性炭素繊維
の水分吸着量を下げる方法として、不活性ガス中で熱処
理する方法が有効である。すなわち、賦活処理された活
性炭素繊維を700℃以上1300以下で、好ましくは
10〜60分熱処理することにより、水分吸着量が著し
く低下し、ハロゲン化炭化水素の吸着除去に適しかつ充
填材等として取扱いの際に繊維の形態が崩れることのな
い強度を有した活性炭素繊維となる。
【0029】これは、水分の吸着に関与する細孔半径3
〜6Åの超微細孔が不活性ガス中での熱処理により、炭
素の縮重合が進行することにより激減したためと考えら
れる。この熱処理温度の上限としては、1300℃、好
ましくは1200℃である。1300℃を越えるとハロ
ゲン化炭化水素の吸着に有効な細孔も減少し、好ましく
ない。
【0030】一方、熱処理温度の下限としては、700
℃、好ましくは800℃である。700℃未満では、長
時間熱処理を施しても、平衡水分率は低下せず、非効率
である。このようにして、本発明では3〜6Åの径の細
孔を減少させることにより、水溶液中における有機化合
物の吸着能力に優れかつ吸着・再生の反復による性能の
低下を抑えることができることを見出したのである。
【0031】また、本発明の活性炭素繊維は、25℃の
水中のトリクロロメタンの吸着において、平衡濃度10
ppbにおける吸着能力が活性炭素繊維1gに対してト
リクロロメタン0.3mg以上である。
【0032】〔III〕浄水器 本発明の他の形態は、本発明の活性炭素繊維を主要な吸
着材とする浄水器である。本発明の活性炭素繊維は水相
からの有機化合物の吸着に優れており、家庭用浄水器に
用いて優れた性能を示す。浄水器として用いるために
は、本発明の活性炭素繊維を抄紙した後、或いは直接に
浄水器の充填材として望ましい形状、例えば円筒形等に
成形することが有効である。
【0033】本発明の活性炭素繊維は、その効力を損な
わない範囲で従来の繊維状活性炭又は活性炭素繊維と混
合して使用しても良く、かつそれ単独の層で若しくはポ
リエチレン、ポリプロピレン等の微多孔膜層と組み合わ
せて浄水器の充填材、特にカートリッジタイプとして用
いることができる。
【0034】本発明の活性炭素繊維は、細孔分布が従来
の活性炭とは異なるため、水分を吸着する能力が低く、
この構造上の特徴から、水中に溶解するハロゲン化炭化
水素のような疎水性の化合物を吸着する能力に優れてお
り、水道水等からトリハロメタンを吸着する能力に優れ
ていると考えられる。
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されるものでない。
実施例に用いたヘッドスペース法は、JIS K012
5によって行った。
【0035】(実施例1)石油の分解残油を熱処理して
製造した、比重1.24、軟化点261℃、芳香族炭化
水素分率faが0.54の光学的に等方性のピッチを溶
融紡糸して繊維化した。この繊維を入口部の温度が17
0℃の空気加熱炉に導入し、炉内の温度勾配により3℃
/分で300℃まで昇温して不融化を行った。不融化後
の繊維の酸素含有率は6.5%であった。この繊維を窒
素気流中で更に昇温速度20℃/分で500℃まで昇温
して炭化を行った。得られた炭素繊維を、プロパンガス
を空気で燃焼した排ガス中で950℃、12分間賦活処
理を行い、引き続き、窒素中で900℃、15分間後処
理を行い、活性炭素繊維を得た。
【0036】得られた活性炭素繊維は25℃、相対湿度
37%における平衡水分率が0.5%、BET法による
比表面積が1,300m2 /g、細孔容積0.35cc
/g、水蒸気法で測定した100Å以下の細孔の細孔径
分布から計算される細孔半径7〜14Åの細孔容積の全
細孔容積(細孔半径100Å以下の細孔の全容積)に対
する割合は96.2%であった。
【0037】この活性炭素繊維100mgをトリクロロ
メタンをそれぞれ500ppb、1,000ppb、
2,000ppb、5,000ppb含有する水を入
れ、1時間しんとうして上澄液のトリクロロメタンをヘ
ッドスペース法により分析し、この分析値により平衡吸
着曲線を描き、平衡濃度10ppbにおける吸着量を求
めたところ、活性炭素繊維1g当たり1.31mgであ
った。
【0038】このトリクロロメタンを吸着した活性炭素
繊維を70℃で30分間加熱再生した。この再生した活
性炭素繊維を用い、上記方法で2回目のトリクロロメタ
ンの吸着量を測定した。これを5回繰り返した後の吸着
量は、0.53mg/gであった。従って、この活性炭
素繊維はトリクロロメタンの吸着には非常に優れている
が、再生使用を繰り返すと、若干能力が低下するもので
あった。
【0039】(実施例2)実施例1の不融化後の繊維を
用い、これを炭化することなく表1に示した条件で賦活
後、窒素下で後処理し、活性炭素繊維を得た。なお、各
処理速度及び時間は実施例1と同様とした。得られた活
性炭素繊維を実施例1と同様に評価したところ、表1に
示すように良好なトリクロロメタン吸着性能を示した。
【0040】また、この活性炭素繊維を実施例1と同様
にして再生使用テスト行ったところ、5回再生後でもト
リクロロメタンの吸着能力は殆ど低下しなかった。すな
わち、この活性炭素繊維は再生に優れたものであった。
【0041】(実施例3〜7)実施例1と同じ等方性ピ
ッチを用い、表1に示した各条件で前処理(不融化及び
/又は炭化処理)、賦活処理及び後処理を行い、活性炭
素繊維を得た。得られた活性炭素繊維を実施例1と同様
に評価したところ、表1に示すように良好なトリクロロ
メタン吸着性能を示した。
【0042】(実施例8)コールタールを原料とし熱処
理して得られた、いわゆる石炭系ピッチ(比重=1.2
6、軟化点=278℃、fa=0.72)を用い、実施
例1と同様にして紡糸し、表1に示した条件で不融化、
賦活及び後処理を行ったところ、表1に示したように石
油系ピッチを用いた場合と同様な良好な結果が得られ
た。
【0043】(比較例1)実施例1の不融化繊維(前処
理温度300℃)を実施例1と同じ装置、賦活ガスを用
い、880℃、35分間賦活処理を行った後、750℃
で1時間後処理を行い、活性炭素繊維を得た。得られた
活性炭素繊維は25℃、相対湿度37%における平衡水
分率が4.03%、BET法による比表面積が1,20
0m2 /g、細孔容積0.23cc/g、水蒸気法で測
定した100Å以下の細孔の細孔径分布から計算される
細孔半径7〜14Åの細孔容積の全細孔容積に対する割
合は85.0%であった。得られた活性炭素繊維を実施
例1と同様に評価したところ、トリクロロメタン吸着量
は、活性炭素繊維1g当たり0.08mgと悪かった。
【0044】(比較例2)実施例1の不融化繊維を用
い、表1に示した各条件で処理を行ったところ、得られ
た活性炭素繊維はトリクロロメタンの吸着能が低いもの
であった。
【0045】(実施例9)実施例5で得られた25℃、
相対湿度37%における平衡水分率が0.25%、BE
T法による比表面積が1,830m2 /g、細孔容積
0.61cc/g、水蒸気法で測定した100Å以下の
細孔の細孔径分布から計算される細孔半径9〜20Åの
細孔の容積が、全細孔容積の98.1%の活性炭素繊維
13.5gを、容量100ccの浄水器用カートリッジ
に充填し、水道水に次亜塩素酸ナトリウム、トリハロメ
タンを強化し、遊離塩素濃度2ppm、クロロホルム、
ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモ
ホルムをそれぞれ30、10、10、10ppbになる
ように調製した水を20℃で2.5L/分の速度で流
し、25L通水毎に上記水を70℃に加熱して3分間逆
方向に通水し、再生を繰り返した。このようにして20
℃の上記水500L通水毎に処理水のトリハロメタン濃
度をヘッドスペース法で分析したところ、表2に示すよ
うに2,000L通水時でも良好なトリハロメタン除去
能力を示した。
【0046】(比較例3)比較例1で得られた25℃、
相対湿度37%における平衡水分率が4.03%、BE
T法による比表面積が1,200m2 /g、細孔容積
0.23cc/g、水蒸気法で測定した100Å以下の
細孔の細孔径分布から計算される細孔半径9〜20Åの
細孔の容積の全細孔容積に対する割合が52.7%の活
性炭素繊維13.5gを容量100ccの浄水器用カー
トリッジに充填し、実施例9と同様に通水、再生テスト
を実施した。その結果、表2に示すように、実施例9よ
りはるかに劣る結果となった。
【0047】
【表1】 注)吸着能力は水中平衡濃度が10ppbの時の活性炭
素繊維1g当たりのクロロホルムの吸着能を示す。
【0048】
【表2】 注)トリハロメタン濃度はJIS K 0125のヘッ
ドスペース法によりクロロホルム、ブロモジクロロメタ
ン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムを分析し、こ
れを合計した。
【0049】
【発明の効果】本発明の活性炭素繊維は、水分を吸着す
る能力が少ない特徴を有しており、水中に溶解するハロ
ゲン化炭化水素のような、水に対する溶解度の小さい疎
水性有機化合物を吸着する能力に優れている。特に、水
道水からトリハロメタンを吸着する能力に優れている。
この特性を利用して浄水器の吸着材として使用すること
ができる。また、排水処理材として、トリクロロエタ
ン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクレン、パー
クレン等の除去に顕著な効果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C02F 1/28 G

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 25℃、相対湿度37%における平衡水
    分率が0.05〜1.0%、BET比表面積が300〜
    3,000m2 /g、細孔容積が0.25〜2.00c
    c/gで、かつ水蒸気法で測定した細孔半径が7〜14
    Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径が100Å以下
    の細孔が占める容積の80%以上であることを特徴とす
    る、活性炭素繊維。
  2. 【請求項2】 25℃、相対湿度37%における平衡水
    分率が0.05〜1.0%、BET比表面積が300〜
    3,000m2 /g、細孔容積が0.25〜2.00c
    c/gで、かつ水蒸気法で測定した細孔半径が9〜20
    Åの範囲である細孔の容積が、細孔半径が100Å以下
    の細孔が占める容積の80%以上であることを特徴とす
    る、活性炭素繊維。
  3. 【請求項3】 25℃の水中10ppbの平衡濃度にお
    けるトリクロロメタン吸着能力が活性炭素繊維1g当た
    りトリクロロメタン0.3mg以上であることを特徴と
    する、請求項1又は2記載の活性炭素繊維。
  4. 【請求項4】 ピッチ系の不融化繊維又は炭素繊維を、
    水及び二酸化炭素のいずれか、若しくは両方を含有する
    気体中、800℃以上1300℃以下の温度で賦活した
    後、不活性ガス中700℃以上1300℃以下で熱処理
    することを特徴とする、請求項1又は2記載の活性炭素
    繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載の活性炭素繊維を主
    要な吸着材とする浄水器。
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