JPH07135940A - シャワー式レトルト殺菌装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】シャワー状に降水する液量のバラツキをなくし
従来よりも均一な殺菌を可能にするシャワー式レトルト
殺菌装置を提供することを目的とする。 【構成】レトルト本体１と、レトルト本体１の内壁の上
部に取り付けられ、加熱媒体としての熱水を導入する熱
水導入部２と、熱水導入部２から導入された熱水を被殺
菌包装物にシャワー状に降水するシャワー形成手段４を
有し、シャワー形成手段４は、熱水導入部２の下方に配
置され、熱水導入部２から落下する熱水が直接当たらな
い位置に多数の孔を備えた第１水圧調整棚６と、第１水
圧調整棚６より下方に配置され、かつ第１水圧調整棚６
の孔から落下する熱水が直接当たらない位置に多数の孔
を備えた第２水圧調整棚７とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、レトルト殺菌装置に関
し、より詳細には、缶詰、レトルトパウチ詰、プラスチ
ック成形容器詰食品などの包装食品をレトルト殺菌する
ためのシャワー式レトルト殺菌装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、缶詰、レトルトパウチ詰、プラ
スチック成形容器詰食品などの包装食品をレトルト殺菌
する方法には、蒸気式殺菌法と熱水式殺菌法が知られて
いる。しかし、これらの殺菌法は、 （１）レトルト内の被殺菌物周囲に比較的低温の領域が
発生する傾向があるため、殺菌中の温度のばらつきが生
じ、品質を維持できない。 （２）レトルト内の等圧力制御が難しく、包装容器が変
形や損傷を受けやすい。 （３）設備費用が高い。 等の問題があった。そこで、最近では、熱水式に比べラ
ンニングコストが低く、蒸気式に比べ加熱殺菌むらが少
なく、構造が簡単ないわゆるシャワー式殺菌法を用いて
いる。従来のシャワー式殺菌法は、例えば、特開昭61-2
60863 号公報に開示されているように、加熱媒体として
所望の温度に加熱された熱水を熱水導入部によって導入
した後にシャワー状に降水し、包装食品すなわち被殺菌
包装物に所望期間継続して供給することにより殺菌す
る、というものである。熱水導入部の下方には、熱水を
シャワー状に降水するための多数の孔を備えたシャワー
プレートが配置されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のシャワ
ー式殺菌法では、熱水導入部から落下する熱水の勢いが
強く、シャワープレートに当たると四方に散って、渦が
発生するため、均一な熱水の落下ができないという問題
点があった。また、熱水の落下位置とシャワープレート
の孔の位置との関係について考慮されていないため、熱
水導入部からの熱水がシャワープレートの孔に直接真下
方向に当たるときには、平均液量（例えば、１０ｍｍ溜
めた時に落下するときの液量）に比べて、その孔の部分
に集中するため、その周囲にある孔には供給量が少なく
なり、シャワープレートの孔に斜め方向から当たるとき
には、前者の場合よりも孔を抜ける量は少なくなるが、
その周囲にある孔には供給量がさらに少なくなる。従っ
て、シャワープレートの各孔によって降水する液量が異
なるため、殺菌むらが生じ、均一な殺菌ができないとい
う問題点があった。本発明は、上記問題点に鑑み、シャ
ワー状に降水する液量のバラツキをなくし従来よりも均
一な殺菌を可能にするレトルト殺菌装置を提供すること
を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、レトルト本体と、レトルト本体の内壁の上
部に取り付けられ、加熱媒体としての熱水を導入する熱
水導入部と、熱水導入部から導入された熱水を被殺菌包
装物にシャワー状に降水するシャワー形成手段を有する
シャワー式レトルト殺菌装置において、シャワー形成手
段は、熱水導入部の下方に配置され、熱水導入部から落
下する熱水が直接当たらない位置に多数の孔を備えた第
１水圧調整棚と、第１水圧調整棚より下方に配置され、
かつ第１水圧調整棚の孔から落下する熱水が直接当たら
ない位置に被殺菌包装物に降水するための多数の孔を備
えた第２水圧調整棚と、を有する。また、第２水圧調整
棚の孔の直径は、第１水圧調整棚の孔の直径よりも小さ
いことが好ましい。

【０００５】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。本発明のシャワー式レトルト殺菌装置Ａは、水平
方向に延びたほぼ円筒形のレトルト本体１と、レトルト
本体１の内壁の上部に取り付けられ、加熱媒体としての
熱水を導入する熱水導入部２と、レトルト本体１内のほ
ぼ中間部分で多段に着脱自在に積層され缶詰、レトルト
パウチ詰、プラスチック成形容器詰食品などの被殺菌包
装物（図示せず）を収容するためのトレー３と、熱水導
入部２から導入された熱水を被殺菌包装物にシャワー状
に降水するシャワー形成手段４を有する。熱水導入部２
は、図５に示すように実質的には水平方向に延びた菅で
あり、下面に多数の孔が均一に設けられている。熱水導
入部２は、その上側中央部分において、レトルト本体１
の外側にある熱水供給管５と連結されている。シャワー
形成手段４は、共にステンレス製の第１水圧調整棚６
と、第２水圧調整棚７とからなり、熱水導入部２とトレ
ー３との間に配置される。第１水圧調整棚６は、熱水導
入部２の下方に配置され、図３に示すように、多孔プレ
ート６ａと，多孔プレート６ａの周辺に段差状に設けら
れた枠６ｂと、第１水圧調整棚６をレトルト本体１の内
壁に取り付けるための取付部６ｃを有する。多孔プレー
ト６ａの孔は、直径約7.5mm の大きさであり、各孔間の
ピッチは２５mmであり、熱水導入部２から落下する熱水
が直接当たらない位置に配置されている。

【０００６】第２水圧調整棚７は、第１水圧調整棚６よ
り下方にかつ、被殺菌包装物より上方に配置され、図４
に示すように、多孔プレート７ａと，多孔プレート７ａ
の周辺に段差状に設けられた枠７ｂと、第２水圧調整棚
７をレトルト本体１の内壁に取り付けるための取付部７
ｃを有する。多孔プレート７ａの孔は、直径約５mmの大
きさであり、各孔間のピッチは２５mmであり、第１水圧
調整棚６の孔から落下する熱水が直接当たらない位置に
配置されている（第１水圧調整棚６の孔のピッチに対し
半ピッチ分ずれている）。レトルト本体１の下側部分に
は給水部８ａが設けられ、その給水部８ａに、タンク９
ａとポンプ９ｂからなる給水装置９を配置した給水管８
を介して水が供給される。また、熱水導入部２に連結さ
れた熱水供給管５には、給水された水を圧送するための
ポンプ１０と、加熱媒体として所定温度の熱水に加熱す
るための熱交換器１１が配置されている。レトルト本体
１の下側端部と、給水管８及び熱水供給管５との間に
は、それぞれオン・オフバルブ１２が設けられ、そのオ
ン・オフバルブ１２の切換によって、給水か熱水循環供
給かのいずれかの状態になるように制御される。

【０００７】レトルト本体１の上部には、加圧管１３が
連結され、エアータンク１４ａとエアーコンプレッサ１
４ｂからなる加圧装置１４によりレトルト本体１内を加
圧する。次に、本発明の実施例の作用について説明す
る。まず、給水装置９から給水管８を介してレトルト本
体１内の下部に水位で２０cm程度まで水を供給する。次
いで、オン・オフバルブ１２を切り換えて、給水された
水をポンプ１０によって圧送し、その水を熱交換器１１
によって所定の殺菌設定温度（約１２０℃）まで加熱す
る。加熱された熱水は熱水供給管５を介して、熱水導入
部２に導入され、熱水導入部２の孔から第１水圧調整棚
６、第２水圧調整棚７を通る。前述したように、第２水
圧調整棚７の孔の直径が、第１水圧調整棚６の孔の直径
よりも小さいので、第２水圧調整棚７の多孔プレート７
ａに熱水が溜まり、シャワー状に降水する液量のバラツ
キがなくなる。第２水圧調整棚７の孔から落ちた熱水
は、トレー３に収容された被殺菌包装物にシャワー状に
降水する。熱水による降水量は300 〜500l/min程度であ
る。被殺菌包装物に降水した熱水は、レトルト本体１内
の下部に戻り、次いで再度、熱水供給管５を介して循環
される。上記工程を所定時間（３０分程度）継続した
後、殺菌工程が終了する。なお、従来技術と同じよう
に、殺菌工程終了後は、殺菌済の包装物を冷やすために
熱交換器の一次側を蒸気から水に切り換え、冷却水によ
るシャワー降水が行われる。冷却水による降水量は300
〜500l/min程度である。

【０００８】本発明によれば、シャワー形成手段４とし
て、熱水導入部２の下方に配置され、熱水導入部２から
落下する熱水が直接当たらない位置に多数の孔を備えた
第１水圧調整棚６と、第１水圧調整棚６より下方にか
つ、被殺菌包装物より上方に配置され、かつ第１水圧調
整棚６の孔から落下する熱水が直接当たらない位置に多
数の孔を備えた第２水圧調整棚７とを有するので、この
２つの水圧調整棚６，７により熱水の落下する勢い（水
圧）が調整され、渦が発生することはなく、均一に降水
する。また、熱水が各調整棚６，７の孔に当たることは
ないので、各孔からの降水する液量が異なることはな
く、殺菌むらが生じることはない。図６（Ａ）は、本願
発明の装置に用いて、カレーソースのレトルト食品を２
２段のトレーに収納して殺菌する際の、２段目のトレー
における前端部，２１段目のトレーにおける後端部につ
いての温度変化を経時的に示すグラフである。図６
（Ｂ）は、１１段目のトレー中央部の温度を基準とした
ときの、２段目のトレーの中央部，２１段目のトレーの
中央部の温度差を経時的に示すグラフ（昇温時）であ
る。

【０００９】一方、図７（Ａ）は、従来の装置を用い
て、カレーソースのレトルト食品を２２段のトレーに収
納して殺菌したときの、２段目のトレーにおける前端
部，２１段目のトレーにおける後端部についての温度変
化を経時的に示すグラフである。図６（Ｂ）は、１１段
目のトレー中央部の温度を基準としたときの、２段目の
トレーの中央部，２１段目のトレーの中央部の温度差を
経時的に示すグラフ（昇温時）である。図６及び図７の
グラフを比較すると明らかなように、本願発明の装置を
用いた方が、各段のトレー間の温度差が少なく、従っ
て、本願発明の装置は、従来の装置に比べ、より均一な
殺菌が行われていることがわかる。以上、本発明の好ま
しい実施例を説明したが、発明の範囲又は精神に逸脱す
ることなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の
範囲内において開示した実施例に種々の変更をすること
ができることは明らかである。従って、水圧調整棚６，
７の孔の大きさ，数及び配置，殺菌設定温度，殺菌時間
等は、殺菌される包装物の種類や量等の諸条件により適
宜変更されるべきである。

【００１０】

【発明の効果】本発明によれば、次のような優れた効果
を奏する。 （１）シャワー形成手段として、熱水導入部の下方に配
置され、熱水導入部から落下する熱水が直接当たらない
位置に多数の孔を備えた第１水圧調整棚と、第１水圧調
整棚より下方にかつ、被殺菌包装物より上方に配置さ
れ、かつ第１水圧調整棚の孔から落下する熱水が直接当
たらない位置に多数の孔を備えた第２水圧調整棚とを有
するので、この２つの水圧調整棚により熱水の落下する
勢い（水圧）が調整され、渦が発生することもなく、均
一に降水できる。 （２）熱水が各調整棚の孔に当たることはないので、各
孔から降水する液量が互いに異なることはなく、殺菌む
らが生じない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置を概略的に示す正面断面図である。

【図２】本発明装置を概略的に示す側断面図である。

【図３】第１水圧調整棚の構成を示す平面図である。

【図４】第２水圧調整棚の構成を示す平面図である。

【図５】熱水導入部の構成を示す斜視図である。

【図６】（Ａ）は、本願発明の装置に用いて、カレーソ
ースのレトルト食品を２２段のトレーに収納して殺菌す
る際の、２段目のトレーにおける前端部，２１段目のト
レーおける後端部についての温度変化を経時的に示すグ
ラフであり、（Ｂ）は、１１段目のトレー中央部の温度
を基準としたときの、２段目のトレーの中央部，２１段
目のトレーの中央部の温度差を経時的に示すグラフ（昇
温時）である。

【図７】（Ａ）は、従来の装置を用いて、カレーソース
のレトルト食品を２２段のトレーに収納して殺菌したと
きの、２段目のトレーにおける前端部，２１段目のトレ
ーにおける後端部についての温度変化を経時的に示すグ
ラフであり、（Ｂ）は、１１段目のトレーの中央部の温
度を基準としたときの、２段目のトレーの中央部，２１
段目のトレーの中央部の温度差を経時的に示すグラフ
（昇温時）である。

【符号の説明】

Ａ…シャワー式レトルト殺菌装置 １…レトルト本体 ２…熱水導入部 ３…トレー ４…シャワー形成手段 ５…熱水供給管 ６…第１水圧調整棚 ７…第２水圧調整棚 ８…給水管 ９…給水装置 １０…ポンプ １１…熱交換器

フロントページの続き (72)発明者 藤原 康彦 大阪府東大阪市御厨栄町１丁目５番７号 ハウス食品株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】レトルト本体と、レトルト本体の内壁の上
   部に取り付けられ、加熱媒体としての熱水を導入する熱
   水導入部と、熱水導入部から導入された熱水を被殺菌包
   装物にシャワー状に降水するシャワー形成手段とを有す
   るシャワー式レトルト殺菌装置において、 前記シャワー形成手段は、 前記熱水導入部の下方に配置され、前記熱水導入部から
   落下する熱水が直接当たらない位置に多数の孔を備えた
   第１水圧調整棚と、 前記第１水圧調整棚より下方に配置され、かつ前記第１
   水圧調整棚の孔から落下する熱水が直接当たらない位置
   に被殺菌包装物に降水するための多数の孔を備えた第２
   水圧調整棚と、を有することを特徴とするシャワー式レ
   トルト殺菌装置。
2. 【請求項２】前記第２水圧調整棚の孔の直径は、第１水
   圧調整棚の孔の直径よりも小さいことを特徴とする請求
   項１に記載のシャワー式レトルト殺菌装置。