JPH07119243B2 - β−グルカン及びその製造方法 - Google Patents

β−グルカン及びその製造方法

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JPH07119243B2
JPH07119243B2 JP2413440A JP41344090A JPH07119243B2 JP H07119243 B2 JPH07119243 B2 JP H07119243B2 JP 2413440 A JP2413440 A JP 2413440A JP 41344090 A JP41344090 A JP 41344090A JP H07119243 B2 JPH07119243 B2 JP H07119243B2
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polysaccharide
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和良 森田
啓 研谷
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智久 小谷
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高粘性を有する新規β−
グルカン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】多糖類
は食品工業,化粧品工業,医薬品工業,製紙工業,化学
工業等多方面に渡って使用されている。
【0003】従来、多糖類は主に植物,海草等から供給
されてきたが、最近では必要な時にいつでも安定して供
給できる微生物からの多糖類が開発され供給されるよう
になってきた。
【0004】微生物の生産する多糖類に関しては、これ
までアルカリゲネス属,キサントモナス属,シュードモ
ナス属等に属する細菌、プルラニア属,スクレロティウ
ム属,アスペルギルス属等に属する真菌類の生産するも
のが知られている。しかし熱に安定で、かつ常温で高粘
性流である中性多糖でしかも皮膚感触上べたつき感がな
く官能的に優れたものは意外に少なかった。
【0005】また、多糖類の構造を見るに、これまでβ
−1,3グルコシド結合を主鎖にもつホモグルカン、所
謂β−1,3グルカンは担子菌を初め酵母,糸状菌等の
真菌類に多く認められ、かつ細菌類,藻類の中でも生産
するものが見い出されている。
【0006】例えば、シイタケの子実体からレンチナン
(1),ガノデルマ属の培養物からのガノデラン(2)を初め
とした担子菌由来のβ−1,3グルカン、不完全菌スク
レロティウム属産生のスクレログルカン(1),子のう菌
ペスタロティア属産生のペスタロタン(1)等のβ−1,
3グルカンなどである。
【0007】(1)「カビの分離・培養・固定と有用物
質の生産・応用」かび応用開発研究会(向文堂)P.3
54〜369 (2)特開昭60−188402
【0008】しかし、これらの中で、熱に対して安定な
粘性を示し、主鎖のD−グルコピラノシル残基のC−6
の位置で分岐しており、かつその分子量が約1千万以上
という高分子量のβ−グルカンは存在しなかった。しか
も皮膚感触上べたつき感がなく官能的に優れたものは意
外に少なかった。
【0009】本発明は、安定で官能的に優れた新規な高
粘性多糖を得ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記性質を有
することを特徴とする高粘性β−グルカンである。
【0011】(a)結合様式が、主鎖のD−グルコピラ
ノシル残基はすべてβ−1,3結合であり、又主鎖のD
−グルコピラノシル残基のC−6の位置で分岐してお
り、かつ主鎖であるβ−1,3結合のD−グルコピラノ
シル残基4ケ毎にβ−1,6結合のD−グルコピラノシ
ル残基1ケを側鎖として有する。
【0012】(b)分子量が、分子ふるいカラムを用い
た高速液体クロマトグラフィーにより約1千万かそれ以
上である。
【0013】(c)粘度の温度依存関係が、0.3重量
%以下の濃度に於いて、5℃〜85℃間で一定の粘度を
有し、0.3重量%を越える濃度でも20℃〜85℃間
で一定の粘度を有する。
【0014】(d)121℃下,1kg/cm2のオー
トクレーブ加熱(20分間)処理によっても粘度が安定
である。
【0015】また本発明は、マクロフォモプシス(Ma
crophomopsis)属に属する微生物を培養
し、培養物から、上記のβ−グルカンを採取することを
特徴とするβ−グルカンの製造方法,及び、マクロフォ
モプシス属に属する微生物の培養において、炭素源とし
て、ガラクトースを骨格として含む糖を用いることを特
徴とする、β−グルカンの製造方法,更に、ガラクトー
スを骨格として含む糖がラクトースである、β−グルカ
ンの製造方法である。
【0016】本発明に用いる微生物は、マクロフォモプ
シス(Macrophomopsis)属に属し、例え
ば、微工研受託9366号として寄託されたマクロフォ
モプシスKAB55株と命名されたものがあげられる。
【0017】以下にKAB55について説明する。 I.採集地 神奈川県小田原市の土壌より分離した。
【0018】II.各種培養基上の性状 KAB55の肉眼的および顕微鏡的観察に基く各種培地
上における培養の特徴は次に記載する通りである。 1)肉眼的観察 糸状菌KAB55株の25℃での成育形態を調べた。
【0019】1.ツァベックドックス寒天培地 生育は比較的速く、培養2日目には菌糸の伸長がみられ
た。培養5日目には、白色綿毛様の菌糸増殖が盛んであ
った。菌糸が全体的に密に増殖する。12日目頃には、
コロニーは5.5cm位になり、コロニー中心部の裏面
は黄褐色化する。3週間目頃から、コロニー中心よりや
や周辺部で菌糸が盛り上がりはじめた。
【0020】2.ポテトデキストロース寒天培地 生育は比較的速く、菌糸は白色綿毛様である。コロニー
中心部は、菌糸は余り増殖性が活発でなく、周辺部で非
常に活発で、菌糸が密になり、ドーナッツ様となる。更
に、そこから菌糸が伸長し、ドーナッツ周辺にやや疎菌
糸帯を形成し、その先端周辺部で密菌糸帯を形成してい
く。そしてまたその疎菌糸帯も密になり、更に大きなド
ーナッツ様コロニーとなる。12日目頃にはコロニーは
6.5〜7.5cm位になる。コロニー中心部の裏面が
黄色褐色化する。3週間目位には、コロニー中心部への
菌糸増殖が進み、全体的に菌糸が覆われた状態になる。
その後、コロニー中心部よりやや周辺部で、暗緑色様に
着色しつつ、菌糸の盛り上がりが起こってきた。
【0021】3.麦芽エキス寒天培地 1,2に比較し、初期の白色綿毛様の菌糸体増殖が遅
い。しかし、コロニーの拡大は速い。5日目頃からコロ
ニー中心部より周辺部に向い疎・密菌糸帯の繰返し模様
が観察される。12日目頃には、コロニーは8.5cm
となる。3週間目位には、そのまんだら模様が全体的に
菌糸で覆われるような形で薄れて行く。
【0022】4.コーンミル培地 生育は極めて速く、ポテトデキストロース寒天培地と同
様に菌糸は白色綿毛様の菌糸体増殖をする。分生子果形
成に適しており、分生子果の着生成熟ともに速く盛ん。
分生子果は寒天中にわずかに埋没して形成される。1%
meat extractを添加して培養すると紫色
に着色する。
【0023】5.オートミル寒天培地 コーンミル培地とほぼ同じ挙動である。
【0024】2)顕微鏡下での形態 コーンミルなどの寒天培地上での菌糸は白色綿毛様であ
り、寒天にもぐるようにして増殖し、分岐をもち、隔膜
がある。寒天培地上で形成される分生子果は、コゲ茶で
球形であり、開口部を持っている。開口部の孔口は単一
で、まるく、中心にある。分生子果柄は無色で、分岐
し、基部でのみ隔膜がみられ、円筒状の形態をしてい
る。分生子形成細胞は、全割,不定形である。分生子は
無色で隔膜のない紡錘形をしている。分生子の先端は鋭
角、後端は裁断状である。
【0025】3)生育のpH pH3.5〜9.0のpH域で生育できるが、pH2.
5以下では生育できない。生育の至適はpH5.0〜
8.0である。
【0026】4)生育温度 10℃〜40℃の温度域で生育するが5℃以下または4
5℃以上では生育できない。35℃〜40℃の生育は、
28℃と同程度に速い。白色菌糸体の形成が主体で、分
生子果の形成,成熟には、28℃以下のほうが適してい
る。生育および分生子果の形成の至適温度は20℃〜3
0℃である。本発明の新規な多糖類は次の理化学性質を
有する。
【0027】(1)分子量:移動相として50mM塩化
ナトリウム溶液を用いたAsahipak GS−71
0カラム(排除限界分子量が1000万)を用いた高速
液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略記)によ
り、一定分子量のプルランを検量線用にして分子ふるい
を行った時、排除限界付近の位置に一本のピークを観察
される。よってその分子の大きさは約1千万かそれ以上
の分子量である。
【0028】(2)紫外線吸収スペクトル:吸収は示さ
ない。
【0029】(3)赤外線吸収スペクトル:図1に示す
通り、β−グリコシド結合に特有の約890cm-1の吸
収が見られるが、α−グリコシド結合に特有の約917
cm-1,約844cm-1,約766cm-1の吸収は見ら
れない。従って本発明の多糖はβ−グリコシド結合のみ
を持つことが分かった。
【0030】(4)溶剤に対する溶解性:水に可溶、
0.5N水酸化ナトリウム,90%ギ酸に可溶、メタノ
ール,アセトン,クロロホルム,酢酸エチル等の有機溶
媒には不溶。
【0031】(5)呈色反応 A)フェノール硫酸反応:+ B)ヨード反応:− C)カルバゾール−硫酸反応:− D)ニンヒドリン反応:−
【0032】(6)塩基性,酸性,中性の区別:本物質
の水溶液のpHは中性である。
【0033】(7)物質の色:白色。
【0034】(8)構成糖の種類: 2.5Nトリフルオロ酢酸で8時間加水分解しこれをT
SK−gel Suger AXGカラム(東洋曹達社
製)を用いたHPLCにて分析した時、本発明の多糖は
グルコースのみを主要成分としていることが認められ
た。
【0035】(9)酵素による分解性: 本多糖類は下述酵素にて処理し(各酵素2.5Unit
s,pH5.0,37℃,0〜25hr反応)、その被
加水分解能を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:n−
ブタノール:酢酸:エチルエーテル:水=9:6:3:
1)及びAsahipak GS−710HPLCによ
り観察した結果、α−アミラーゼ,β−アミラーゼ,グ
ルコアミラーゼでは全く加水分解を受けず、ラミナリナ
ーゼのみ両分析法で被分解能を認めた。
【0036】(10)粘性 イ)粘度:本多糖の溶解液は粘性の高い中性溶液とな
る。ビスメトロン回転粘度計でその粘度を測定する時1
%水溶液で1200〜1700センチポアズ(アダプタ
ー3号,60回転,30秒)である。粘度と濃度の関係
は図2に示すとおりであり既存のキサンタンガムの粘度
と比べて約2倍の粘性を示す。
【0037】ロ)粘度の温度依存性:常温で安定な高粘
性流を示し、0.3重量%以下の濃度に於いて、5℃〜
85℃間で一定の粘度を有し、0.3重量%を越える濃
度でも20℃〜85℃間で一定の粘度を有する。 以下に測定結果を示す。
【0038】
【0039】尚、各サンプル溶液は所定の温度の恒温槽
にて約1時間放置後、恒温槽外に取り出し、ただちにそ
の粘度を測定した。
【0040】ハ)加熱に対する安定性:121℃下,1
kg/cm2のオートクレーブ加熱(20分間)処理に
よっても粘度が安定である。即ち0.3重量%の溶液を
用いて、上記のオートクレーブ処理を行なった場合、処
理前の粘度が207cpsで処理後が210cpsであ
った。
【0041】ニ)酸及びアルカリに対する安定性:pH
2〜13の範囲で比較的安定した粘度を示す。
【0042】ホ)塩に対する安定性:ホウ酸塩,酢酸
塩,硫酸塩,ナトリウム塩,カリウム塩,カルシウム
塩,マグネシウム塩等のいずれかの塩の存在下でも一定
の粘性を示し安定である。
【0043】(11)結合様式 本発明多糖類をジメチルスルホキシドに溶解後メチルス
ルホニルカルボアニオン及び沃化メチルを用いる箱守法
でメチル誘導体に導き、これを酸で加水分解後、メチル
化糖をアルディトール,アセテートに誘導し、ガスクロ
マトグラフィー,質量分析器の組合せにより固定、定量
分析すると、生成物は2,3,4,6−テトラ−O−メ
チル−D−グルコース、2,4,6−トリ−O−メチル
−D−グルコース、2,4−ジ−O−メチル−D−グル
コースが観察された。
【0044】更に、本発明多糖を過ヨウ素酸で酸化し、
水素化ホウ素ナトリウムで還元後、酸により加水分解し
た(Smith分解)。それを再度アンモニア存在下水
素化ホウ素ナトリウムで還元後、アセテート誘導体とし
て、ガスクロマトグラフィーにより同定,定量すると、
生成物は次のものが観察された。グリセロールが1.0
モルに対して、グルコースが3.5乃至4.3モル。
【0045】上述の結果より、本発明のβ−グルカンは
主鎖のD−グルコピラノシル残基が全てβ−1,3結合
であり、主鎖D−グルコピラノシル残基のC−6の位置
で分岐し、主鎖のβ−1,3結合のD−グルコピラノシ
ル残基4ケ毎に1ケの割合で、側鎖であるD−グルコピ
ラノシル残基が、β−1,6結合している中性多糖であ
る。
【0046】(12)水分蒸散試験 4群のサンプルびんに一定量の水を入れ、第二原紙(謄
写板で使うろうをひいた薄い紙)をびんの口に貼り、各
群の原紙の上にそれぞれヒアルロン酸1%溶液,ヒアル
ロン酸0.5%溶液,本多糖類1%溶液,本多糖類0.
5%溶液を一定量塗布し、そのサンプルびんの重量を経
日的に測定することにより、水分蒸散量を求めた。
【0047】尚、紙に水を塗布したものをコントロール
とし各群3個の試料を用い測定した。以下、結果を示
す。
【0048】
【0049】本多糖類は保湿作用を有するヒアルロン酸
よりも水分蒸散抑制効果が認められた。
【0050】(13)安全性試験 本発明多糖類の感作性試験(Maximization
法,試料濃度;誘導1%(2回),惹起0.5%及び1
%)を実施する時、モルモット10匹中陽性と認められ
る動物は一匹もいなかった。また、本発明多糖類の光感
作性試験(Adjuvant−Strip法,試料濃
度;誘導1%,惹起0.5%及び1%)を実施する時、
モルモット10匹中陽性と認められる動物は一匹もいな
かった。
【0051】以上より、本発明多糖類は感作性の低い、
安全性の高い多糖類であった。
【0052】(14)その他の特徴的な性質 本発明の多糖類は無味無臭である。また、本発明の多糖
類は塗布した時の官能特性として、後記応用例の官能テ
ストの結果が示す如く、既存のキサンタンガムが持つ上
すべり感がなく、サラッとした感触を示す。
【0053】次に、培養法及び精製法について述べる。
本多糖類生産菌の培養に用いられる炭素源としては例え
ば、ブドウ糖,グリセリン,麦芽糖,デンプン,ショ
糖,フラクトース,糖蜜,及びこれらの混合物等が挙げ
られる。
【0054】上記の糖類を用いた場合、培養物中にはβ
−グルカンとα−グルカンが同時に蓄積されるが、炭素
源としてガラクトースを骨格として含む糖を用いれば、
マクロフォモプシス属に属する微生物に、β−グルカン
のみを選択的に培養物中に産生,蓄積させることがで
き、これによってβ−グルカンを更に容易,かつ安価に
回収,利用する事ができる為,より好ましい。
【0055】ガラクトースを骨格として含む糖として
は、例えばガラクトース,ラクトース,メリビオース,
ラフィノース,スタキオース等が挙げられるが、収率の
点ではラクトースが特に好ましい。
【0056】窒素源としては、概ね微生物の培養に用い
られる有機体,無機体の窒素源の全てが使用可能であ
り、例えば脱脂綿実粉(Pharmamedia,PR
OCTER&GAMBLE OILSEED PROD
UCTS COMPANY製),コーンスティープリカ
ー,酵母エキス,乾燥酵母,各種ペプトン,オートミー
ル肉エキス,カゼイン加水分解物,アンモニウム塩,硝
酸塩等が挙げられる。
【0057】その他添加物として塩化ナトリウム,マグ
ネシウム,カルシウム,リン酸等の無機塩があげられ
る。
【0058】更に該培地には必要に応じて鉄,銅,マン
ガン等の金属塩を微量配合してもよい。
【0059】培養は上記培養基を含有する通常の水性培
地で振盪培養,深部通気培養,深部通気撹拌培養,回転
ドラム式培養でも実施できる。
【0060】培養条件はpH3.5〜9.0,好ましく
はpH5.0〜8.0、培養温度が10〜40℃,好ま
しくは20〜35℃で通常3〜7日間で培養する。この
ようにして得られた培養物から本発明の目的の多糖類が
得られる。
【0061】この培養液を、濾過又は遠心分離などの適
当な方法で処理して該微生物菌体を除去する。次に、得
られる濾液又は上清に、適当な沈澱剤例えばエタノー
ル,メタノール,イソプロパノール,プロパノール,ア
セトン等の有機沈澱剤を約10〜35重量%加え、β−
グルカンを沈澱させる。この沈澱物を濾過又は遠心分離
等の適当な方法で分離し、さらに水に再溶解させた後、
沈澱剤による沈澱をくり返した後、透析,凍結乾燥をす
ることにより、精製多糖類が得られる。
【0062】この操作によって、β−グルカンを、α−
グルカンやその他の培養物中の成分から分離・精製する
ことができる。ガラクトースを骨格として含む糖を用い
た場合、β−グルカンのみが蓄積されているので、α−
グルカン・β−グルカンの混在系に比べて粘性が低く、
菌体の濾過あるいは遠心分離操作が容易かつ短時間で完
了する。
【0063】β−グルカンのみが培養物中に蓄積されて
いるため、α−グルカンとの分離工程は不要であるが、
エタノールやイソプロパノールのような適当な沈澱剤を
添加することによって、純度の高いβ−グルカンを効率
良く回収することができる。
【0064】また、濾過液又は遠心分離後の上澄液を、
イオン交換樹脂によって脱塩処理し、必要に応じて活性
炭で脱色する方法によっても、精製することができる。
【0065】
【実施例】以下、実施例及び応用例にて本発明を更に詳
細に説明する。
【0066】実施例1 マクロフォモプシス属に属する菌株KAB55(微工研
受託9366号)を下記組成の培地にて3日間培養し、
これの6mlを同組成培地100mlを入れた500m
l三角フラスコに植菌して25℃で4日間120回転/
分で回転培養した。
【0067】 (組成) グルコース 100g Pharmamedia 5g KH2PO4 1g MgSO4・7H2O 3g 水道水 1リットル (NaOHにてpH6に調整)
【0068】得られた培養液を8000回転/分、20
分で遠心分離し、菌体を除去し、上澄に等量の40%イ
ソプロパノールを加えた多糖を析出させた。これを1
0,000回転/分、5分で遠心分離し多糖を得た。得
られた多糖を再び水に溶解させ上記操作をくり返し、無
味無臭,白色の高粘性多糖類0.22gを得た。
【0069】この多糖類に諸測定を行い、理化学性質を
決定した。その結果は既に述べた通りである。
【0070】実施例2 50リットルジャーファメンター(ミツワバイオ社製)
に下記培地30リットルを入れ、ここに実施例1と同様
に前培養したKAB55を1リットル植菌し、25℃,
通気量1.0vvmで4日間培養した。
【0071】 (組成) グルコース 3000g Pharmamedia 150g KH2PO4 30g MgSO4・7H2O 90g 水道水 30リットル (NaOHにてpH6に調整)
【0072】得られた培養液を10000回転/分で連
続遠心により菌体を除去し、得られた上澄に等量の60
%エタノールを加え、多糖を析出させた。これを実施例
1と同様の手順により精製処理し、無味無臭,白色の高
粘性多糖類25gを得た。
【0073】実施例3 KAB55を下記の組成の培地にて3日間前培養し、こ
れの全量を、同組成の培地30リットルを入れた50リ
ットルジャーファーメンターに接種して、25℃,通気
量1.5vvmで4日間培養した。
【0074】 (組成) グルコース 50g Pharmamedia 10g KH2PO4 1g MgSO4・7H2O 3g 水道水 1リットル (NaOHにてpH6に調整)
【0075】この培養液から遠心分離(10,000r
pm・12分間)により菌体を分離,除去した上澄を、
移動相として50mM塩化ナトリウム溶液を用いたAs
ahipak GS−710カラムを用いたHPLCに
供したところ、図3(A)に示した様に、分子量1千万
の物質(β−グルカン)に起因するピークの他に、分子
量100万の物質(α−グルカン)に起因するピークが
認められた。
【0076】この時のβ−グルカンの収量は、既知の濃
度のβ−グルカンを用いた検量線より、45gであっ
た。
【0077】実施例4 培地の組成を下記の様に変える他は、実施例3と同様に
して、実験を行った。
【0078】 (組成) ラクトース 50g Pharmamedia 10g KH2PO4 1g MgSO4・7H2O 3g 水道水 1リットル (NaOHにてpH6に調整)
【0079】この場合、菌体分離の為の遠心分離は1
0,000rpm・5分間で良く、実施例3よりも分離
が容易であった。
【0080】また、実施例3と同様にHPLCに供した
ところ、図3(B)に示した様に、分子量1千万付近に
β−グルカン由来のピークは認められたが、分子量10
0万付近のα−グルカン由来のピークは認められなかっ
た。
【0081】この時のβ−グルカンの収量は、検量線よ
り51gであった。
【0082】応用例,比較例−乳液 (1)処方
【0083】(2)調製法 80℃に加熱した油相成分に同じく80℃に加熱した水
相成分を加えて均一に撹拌しながら速やかに冷却して本
発明の多糖類を含有した乳液を得た。
【0084】また比較例として本発明の多糖類の代わり
に既存のキサンタンガムを用いて同様に乳液を調製し、
これらを次の官能テストに用いた。
【0085】(官能テスト) 20名の女子被験者に、上記の応用例および比較の乳液
を顔面の左右片側にそれぞれ各別に約0.5gずつ塗布
し、塗布時の「べたつき感」と塗布後の「肌のなめらか
さ」の評価項目を被試験者本人が一対比較法で評価し
た。
【0086】(3)試験結果 上述の応用例と比較例を比較してもらった結果を下記の
表に示した。
【0087】
【0088】表から明らかな如く、応用例(本発明の多
糖類を含有)は、比較例(既存のキサンタンガム含有)
と比べてべたつき感がなく軽くて瑞々しい感触を示し
た。
【0089】
【発明の効果】上述のように、本発明は、食品,化粧品
等の分野において増粘剤,乳化剤,安定剤,保湿剤とし
ての用途が可能な多糖類(β−グルカン)と、その製造
方法を提供するものである。
【0090】また、炭素源として、ガラクトースを骨格
として含む糖を用いれば、β−グルカンのみを選択的に
製造することができるので、菌体の分離作業等の労力を
かなり低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多糖類の赤外線吸収スペクトルを示す
図である。尚、図1において、00〜15で示したピー
クの波長と吸光度は、以下の通りである。
【図2】既存のキサンタンガムと本発明の多糖類の、濃
度と粘度の関係を示す図である。
【図3】(A)は実施例3の高速液体クロマトグラフィ
ーパターンを示しており、(B)は実施例4の高速液体
クロマトグラフィーパターンを示している。
【符号の説明】 β−グルカン由来のピーク α−グルカン由来のピーク
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 7/00 J K C09K 3/00 103 G (C12P 19/04 C12R 1:645)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記性質を有することを特徴とする高粘性
    β−グルカン。(a) 結合様式が、主鎖のD−グルコピラノシル残基はすべて
    β−1,3結合であり、又主鎖のD−グルコピラノシル
    残基のC−6の位置で分岐しており、かつ主鎖であるβ
    −1,3結合のD−グルコピラノシル残基4ケ毎にβ−
    1,6結合のD−グルコピラノシル残基1ケを側鎖とし
    て有するβ−グルカン。 (b)分子量が、分子ふるいカラムを用いた高速液体ク
    ロマトグラフィーにより約1千万かそれ以上である。 (c)粘度の温度依存性関係が、0.3重量%以下の濃
    度に於いて、5℃〜85℃間で一定の粘度を有し、0.
    3重量%を越える濃度でも20℃〜85℃間で一定の粘
    度を有する。 (d)121℃下,1kg/cm2のオートクレーブ加
    熱(20分間)処理によっても粘度が安定である。
  2. 【請求項2】マクロフォモプシス(Macrophom
    opsis)属に属する微生物を培養し、培養物から、
    請求項1記載のβ−グルカンを採取することを特徴とす
    る、β−グルカンの製造方法。
  3. 【請求項3】マクロフォモプシス属に属する微生物の培
    養において、炭素源として、ガラクトースを骨格として
    含む糖を用いることを特徴とする、請求項2記載のβ−
    グルカンの製造方法。
  4. 【請求項4】ガラクトースを骨格として含む糖がラクト
    ースである、請求項3記載のβ−グルカンの製造方法。
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