JP5153188B2 - Th1/Th2バランス改善剤 - Google Patents
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(1)多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体。好ましくは、5〜13残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体であり、さらに好ましくは、7〜12残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体であり、最も好ましくは、10〜11残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体である。
(3)上記(1)記載の多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤。(2)又は(3)の剤は、経口投与されることを特徴としてもよい。
1.本発明の多糖体
本発明は、多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体に関する。
本発明の多糖体に含まれるその他の成分としては、脂質、繊維質、灰分、タンパク質、核酸等のいかなる物質も含まれる。
本発明の多糖体は、6位で分岐している頻度の高い1,3−グルカンを、化学修飾する方法や1,6−グルカナーゼなどで酵素処理する方法など公知の方法によって分岐度を調整することで得ることができる。
冬虫夏草菌糸体粉末を70〜99.5%エタノールで脱脂する。脱脂は、まず、60〜100℃、好ましくは、70〜90℃、より好ましくは80℃で、適当な時間、例えば1時間〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜7時間で抽出した後、残渣を回収することを数回繰り返す。その後、得られた残渣を50〜85%エタノールで60〜100℃、好ましくは、70〜90℃、より好ましくは80℃で、適当な時間、例えば1時間〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜7時間で抽出し、残渣を回収する。
上記2.に記載の方法により得られた「凝集体」1mgを水1mlに分散させた分散化液を25℃で測定したとき、粒度分布は、粒子径50〜500μmに全粒子の約80%が入っている。
本発明は、上記多糖体を含有する免疫賦活剤に関する。本発明の多糖体は、非常に強いサイトカイン産生促進作用を有するため、免疫賦活を必要とする被験者に対して免疫賦活剤として使用することができる。従って、本発明の多糖体は、医薬組成物、特に免疫賦活剤の有効成分として使用することができる。これらの製造にあたっては、パイエル板からの取り込み効率が高い、「微粒子体」を用いるのがより好ましい。
本発明は、上記多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤に関する。
本発明の「Th1/Th2バランス」は、生体内において抗原提示細胞から分化したヘルパーT細胞のサブセットであるTh1とTh2の存在比をいう。健常人におけるTh1/Th2は通常4〜8であり、癌等の免疫抑制状態においてはそれを下回る。本発明の「Th1/Th2バランス改善剤」は、免疫抑制状態におけるTh2優位の状態からTh1/Th2を上昇させる、又は正常のTh1/Th2に改善させるものをいう。あるいは、健常人が癌等の免疫抑制状態になりにくい状態を維持または向上させるものをいう。
<計算式>
(Th1サイトカイン)/(Th2サイトカイン)=(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)
算出した値を用いてグラフ化し、Th1/Th2バランス調節能の解析を行うことができるが、この結果から、「凝集体」、「微粒子体」にTh1免疫応答を相対的に高める作用が認められ、その効果は、これまでにTh2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する作用が知られているLNT、PSK、AHCC、LEMよりも優れていることが明らかである。また、「凝集体」と「微粒子体」を比較すると、「凝集体」の加熱処理に伴い、Th2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する効果が高まることも明らかである。
本発明は、上記多糖体を含有する飲食品に関する。本発明の上記多糖体は、そのまま機能性食品として使用できるほか、医薬部外品、飲食物等の有効成分などとして使用することができる。そのような使用により、本発明の免疫賦活効果およびTh1/Th2バランス改善効果を有する当該経口摂取組成物の日常的および継続的な摂取が可能となり、効果的な免疫賦活による体質改善、癌の治療および癌の発症の予防が可能となる。本発明の経口摂取組成物が食品素材として使用される例としては、免疫賦活効果もしくはTh1/Th2バランス改善効果または予防効果を有する機能性食品、健康食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)があげられるがこれらに限定されない。
冬虫夏草菌糸体粉末500gを99.5%エタノール1Lで80℃、6時間抽出した。抽出後、グラスフィルターGA−200(ADVANTEC)でろ過し、残渣を回収した。2度の抽出後、残渣を70%エタノール1Lで80℃、6時間抽出した。抽出後、グラスフィルターGA−200(ADVANTEC)でろ過し、残渣を回収した。3度の抽出後、残渣を蒸留水1Lで100℃、6時間抽出した。抽出後、3000×g、室温、15分間遠心分離し、上清を回収した。3度の抽出後、上清を合わせて約1.5Lになるまで減圧濃縮し、体積比で等量の99.5%エタノールを加え、一晩冷暗所に静置した。翌日、3000×g、室温、15分間遠心分離し、沈殿物を回収後、少量の蒸留水に溶解し、凍結乾燥により茶色粉末21.0gを得た。次いで、この粉末を50mg/mlとなるように蒸留水に溶解し、Spectra/Por(登録商標)CE Membrane MWCO:100,000(スペクトラム社)を用いて蒸留水に対して4℃、3日間透析を行った。途中、1日あたり3回、透析外液の蒸留水を交換した。3日後、透析内液を回収し、10000×g、4℃、15分間遠心分離し、凝集した形態で本発明の多糖体を回収した。この「凝集体」の洗浄を目的に、適量の蒸留水を加え懸濁後、10000×g、4℃、15分間遠心分離し、再度「凝集体」を回収した。この洗浄操作を10回繰り返し、最終的に少量の蒸留水に「凝集体」を懸濁し、凍結乾燥により茶白色の「凝集体」粉末を1.13gを得た。
実施例1によって得られた「凝集体」粉末を1mg/mlとなるように蒸留水に懸濁し、80℃で30分間加熱処理を行うことで、「微粒子体」を調製した。
1.糖含量測定
常法に従って、フェノール硫酸法による多糖体(A)の糖含量の測定を行った。その結果、本発明の多糖体の糖含量は、D(+)−グルコース換算で96.6%であり、ほぼ糖から構成される多糖体であることが確認された。
以下の方法に従って、酸加水分解で得られた中性糖をHPLC法で分析した。HPLC分析のピークの同定は、標準品(グルコース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース)の溶出時間との比較によって行い、また標準品のピーク面積値を利用した検量線を基に含量を算出した。
実施例1によって得られた「凝集体」粉末1.19mgをガラス試験管に秤量後、2Nトリフルオロ酢酸200μLを添加し、100℃で6時間加水分解した。減圧乾固後、残渣を500μLの超純水に溶解し、0.22μmのフィルターでろ過した。ろ液を100倍に希釈し、50μLをHPLC分析に供した。
(A)装置
HPLCシステム:LC−9Aシステム(島津製作所)
検出器:分光蛍光光度計RF−10AXL(島津製作所)
(B)カラム
TSK−gel Sugar AXG 15cm×4.6mmI.D.(東ソー)
(C)分析条件
カラム温度:70℃
移動相:0.5Mホウ酸カリウム緩衝液 pH8.7
移動相流速:0.4ml/分
ポストカラム標識:反応試薬:1%アルギニン/3%ホウ酸
反応試薬流速:0.5ml/分
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
(3)結果
上記のHPLC解析の結果、グルコース、マンノース、ガラクトースのピークが検出され、本発明の多糖体はこれらを構成糖とする多糖体であることが確認された。また、ピークの面積値から、糖組成はグルコース:マンノース:ガラクトース=21:2:1であり、大部分がグルコースで構成される多糖体であることが確認された。
以下のメチル化分析に従って、糖結合様式を解析した。完全メチル化糖を加水分解して各単糖に分解した後、還元アセチル化し、部分メチル化糖アルコールのアセチル誘導体(部分メチル化アルジトールアセテート)としてGC、GC/MS測定に供した。得られたマススペクトル部分メチル化アルジトールアセテートの標準マススペクトル(出典:生化学データブック)と照らし合わせることにより、クロマトグラム上の主要なピークを同定した。また、ガスクロマトグラムで得られた各ピークの面積から、部分メチル化アルジトールアセテートの組成比を算出した。
実施例1によって得られた「凝集体」粉末3.3mgをバイアル管に秤量し、P2O5中で一晩乾燥させた。DMSOを0.6ml添加し、2時間攪拌後、粉末NaOH20mgとヨウ化メチル0.15mlを添加し、30分間攪拌した。クロロホルム1mlで2回の抽出後、超純水2mlで5回洗浄した。次に脱水を目的に、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウム1gを添加し、室温にて1時間放置後、ろ過を行った。その後、ろ液を乾固し、完全メチル化画分とした。
加水分解管に完全メチル化糖を加え、90%ギ酸0.5mlを添加し、100℃で2時間加水分解した。減圧乾固後、2Nトリフルオロ酢酸0.5mlを添加し、100で5時間さらに加水分解した。減圧乾固後、得られた残渣を少量の超純水で3回洗浄後、1%NaBH4を0.5ml添加し、室温で一晩放置した。その後、酢酸で過剰のNaBH4を分解し、減圧乾固した。残渣をメタノールで5回洗浄後、無水酢酸/ピリジンを0.5ml添加し、100℃で1時間加熱し乾固させた。残渣をクロロホルム1mlで抽出し、超純水を1ml加えて混和させた。クロロホルム層にさらに超純水1mlを加え、塩の除去を5回行った。次に脱水を目的に、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウム1gを添加し、室温にて1時間放置後、ろ過を行った。その後、ろ液を乾固し、残渣を250μLのクロロホルムに溶解させ、GCおよびGC/MS測定に供した。
(A)装置:Hewlett−packard HP5890
(B)カラム(液相):SPG−5(スペルコジャパン)
(タイプ)Fused silica capillary 30m×0.25mmI.D.
(C)分析条件:
キャリアガス:He
カラム温度:60℃、1分→280℃(8℃/min)
注入温度:280℃
注入量:1μL
(A)装置:日本電子JMS DX−303 質量分析計
Hewlett−packard HP5890A ガスクロマトグラフ
(B)データ処理:日本電子JMA DA5000 データ処理システム
<GC部条件>
(A)装置:Hewlett−packard HP5890A
(B)カラム(液相):SPG−5(スペルコジャパン)
(タイプ)Fused silica capillary 30m×0.25mmI.D.
(C)分析条件
キャリアガス:He
カラム温度:60℃、1分→280℃(8℃/min)
注入温度:280℃
注入量:1μL
<MS部条件>
イオン化方式:EI
電子加速電圧:70V
イオン化電流:300μA
イオン化温度:250℃
イオン化加速電圧:3.0KV
走査速度:1sec/scan
走査間隔:1sec
メチル化分析の結果、1,3結合グルコースと6位で分岐した1,3結合グルコースのピークが検出され、また、ピークの面積値から、本発明の多糖体の結合様式は10〜11残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐した結合様式であることが確認された。
以下の方法に従って、「凝集体」粒度分布の解析を行った。
(1)粒度分布測定用試料の調製
実施例1によって得られた「凝集体」粉末をサンプル管に秤量し、1mg/mlとなるように超純水を添加した。激しく撹拌することで、「凝集体」を分散させ、測定用試料とした。また、同時に「微粒子体」についても測定用試料とした。
(A)装置:島津製作所 SALD−2000J
(B)分析条件
屈折率:1.70−0.20i
温度:25℃
試料投入:測定用試料を超純水で5倍希釈
撹拌条件下
(C)データ処理:WingSALD−2000J
粒度分布を図1に示す。「凝集体」の粒度分布は、粒子径50〜500μmに全粒子の80%が含まれていた(図1A)。それに対して、「微粒子体」の粒度分布は、粒子径0.2〜5μmに全粒子の80%が含まれており(図1B)、微粒子化されていることが明らかとなった。また、「凝集体」と「微粒子体」を比較した結果、「微粒子体」の方が腸管免疫で中心的な役割を担っているパイエル板からの取り込み効率が高いことが確かめられた。
さらに、この「微粒子体」は室温で最低でも3日間は粒度分布の増加は認められなかった(図1C)。
24穴細胞培養用プレートに、RPMI1640培地700μLと、健常者からヘパリン採血した末梢血200μLを添加した。そこに、多糖体の終濃度が100μg/mlになるようにPBSに溶解させた被験物質を100μL添加し、37℃,5%CO2条件下で24時間培養した。その後、培養上清を回収し、上清中に産生されたIFN−γをELISA法による測定キット(バイオソース社製)で定量した。測定方法と定量結果の解析方法はキット添付の取扱説明書に従った。
実施例3で得られた培養上清を用いて、上清中に産生されたIL−10をELISA法による測定キット(バイオソース社製)で定量した。また、実施例4で定量したIFN−γ産生量、及びIL−10産生量をもとに、Th1サイトカインとTh2サイトカインの比率を次式より算出した。
<計算式>
(Th1サイトカイン)/(Th2サイトカイン)=(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)
算出した値を用いてグラフ化し、Th1/Th2バランス調節能の解析を行った。IL−10の産生量を図3Aに、(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)の比率を図3Bに示す。この結果から、「凝集体」と「微粒子体」にTh1免疫応答を相対的に高める作用が認められ、その効果は、これまでにTh2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する作用が知られているLNT、PSK、AHCC、LEMよりも優れていることが明らかとなった。また、同時に、「凝集体」と「微粒子体」の比較から、微粒子化に伴い、Th2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する効果が高まることも明らかとなった。
Claims (5)
- きのこ由来の経口投与用多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、7〜12残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体。
- 請求項1記載の多糖体を含有する免疫賦活剤。
- 請求項1記載の多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤。
- 請求項1記載の多糖体を含有する飲食品。
- 25℃で粒度分布を測定したときに、粒子径0.1〜10μmに全粒子の約80%が入っている微粒子化された請求項1記載の多糖体。
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