JP5153188B2 - Th1/Th2バランス改善剤 - Google Patents

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Description

本発明は、多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体に関する。
免疫細胞であるヘルパーT細胞(Th細胞)は、その産生するサイトカインの種類の違いから、Th1型(Th1)と、Th2型(Th2)に分けられる(非特許文献1)。Th1は、インターロイキン2(IL−2)、インターフェロンγ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子β(TNF−β)等のTh1サイトカインを産生し、マクロファージやナチュラルキラー細胞を活性化し、ウイルスや細菌等に対する感染防御、及び癌に対する免疫防御といった細胞性免疫を制御している。一方、Th2は、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10等のTh2サイトカインを産生し、即時性アレルギーや抗体産生調節といった液性免疫を制御している。
Th1及びTh2は互いに制約し合い、生体内の免疫調節の恒常性を維持するために、サイトカインやその他の各種因子によってバランスが制御されている(非特許文献2)。近年、このTh1とTh2のバランス(Th1/Th2バランス)が免疫機能調節において重要であることが明らかにされており、そのバランスの破綻は、様々な疾患の原因となることが分かっている。例えば、Th1/Th2バランスがTh1側に傾くと、リウマチ、自己免疫疾患などの原因となり、逆に、Th2側に傾くと、アレルギー性疾患、潰瘍性大腸炎、発がんなどの原因となることが明らかである。そこで、Th1/Th2バランスに作用し、破綻により引き起こされる様々な疾患を予防又は治療する薬剤の開発が期待されている。特に、Th2側への偏りは、今や深刻な国民病でもある花粉症とも深い関係があり、また、癌領域においても、癌に対する免疫防御の主役はT細胞を中心とする細胞性免疫であることから、癌治療においてはTh1免疫応答の活性化が重要であると考えられている。さらに、Th1/Th2バランスの破綻によるTh1サイトカインの低下が腫瘍に対する免疫力の低下を反映すると報告されている(非特許文献3)。
ところで、癌疾患等におけるTh2の機能亢進に起因した疾患を治療する又は予防する薬剤として、Th2サイトカインの産生を抑制するものがあげられる。しかし、これらの疾患に対して予防薬及び治療薬を開発する方法として、Th1免疫応答を補強して、Th2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する方法もあげられる。つまり、もっとも効果的に予防薬及び治療薬を開発する方法は、Th2サイトカインの産生を抑制し、Th1サイトカインの産生を増強させることであり、この方法によってTh2に傾いたTh1/Th2のバランスを改善する改善剤が望まれている。
グルコースを主成分とする多糖体(グルカン)の中には、マクロファージやTh細胞などの免疫細胞を活性化させるものがある。そのなかでもシイタケ子実体から抽出した1,6分岐β−1,3−グルカン(分岐度2/5)は免疫賦活作用を有する抗悪性腫瘍注射剤、レンチナン(LNT)(製品名:レンチナン、販売会社:大鵬薬品工業株式会社、)として広く取り扱われてきた。また、LNTはTh1/Th2バランスをTh1側に改善する作用も報告されており、感染症や、悪性腫瘍治療、特に手術不能又は再発胃癌患者の延命を目的とした免疫療法剤として臨床応用されている。これらの他にも、免疫賦活作用を有する多糖体が、非特許文献4〜7及び特許文献1及び2に報告されている。これらの中には、LNTのように、Th1免疫応答を誘導するものもある。しかし、このような多糖体には同時にTh2免疫応答も強く誘導してしまうものもあり、Th1/Th2バランスを調節する意味では使用に適さない。
また、グルカンを中心とした多糖体を用いて、経口摂取で利用可能な免疫賦活剤やTh1/Th2バランス改善剤が見出されている。しかし、グルカンによっては、もともとの粒子径が100μm以上と大きいため、そのままでは、腸管からは吸収されず、経口での作用はあまり期待できない。そのためレシチンを分散化剤として用いて、きのこ抽出物と混合して平均粒径が10μmとなるような微粒子を作製する技術(特許文献3)や、リポソームでβ―グルカンを封入し、ゲルカラム等で封入されなかったβ―グルカンを分離する技術(特許文献4)が報告されている。これらの微粒子化された粒子は、腸管免疫で中心的な役割を担っている、パイエル板から取り込まれやすく、免疫賦活やTh1/Th2バランスを改善する効果をより発揮することが明らかにされている。しかし、グルカンを用いてこのような目的を達成するには、上記のような微粒子化等のために必要な煩雑な操作や、特殊な装置が必要である。
特開平8−259602号 特開2004−43326号 国際公開WO2002/087603号パンフレット 国際公開WO01/85141号パンフレット T. R. Mosmann et al., J. Immunol., 136: 2348, 1986 柳原、医学のあゆみ、176: 167, 1996 T. Tabata et al., Am. J. Surg.,177: 203, 1999 AHCC担子菌培養抽出物の基礎と応用、第39〜45頁、ライフ・サイエンス社、2007年7月 Ajico News No. 212,論文1 2004年3月 医薬品インタビューフォーム レンチナン 1mg 日本標準商品分類番号874299 2003年4月 医薬品インタビューフォーム クレスチン 日本標準商品分類番号874299 2003年6月
本発明は、免疫賦活作用とTh1/Th2バランス改善作用の優れた化合物を見出し、該物質を含有する医薬品組成物、飲食品組成物を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を進めたところ、多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐しているような多糖体を見出し、この多糖体に優れた免疫賦活作用とTh1/Th2バランス改善作用があることを見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体。好ましくは、5〜13残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体であり、さらに好ましくは、7〜12残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体であり、最も好ましくは、10〜11残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体である。
(2)上記(1)記載の多糖体を含有する免疫賦活剤。
(3)上記(1)記載の多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤。(2)又は(3)の剤は、経口投与されることを特徴としてもよい。
(4)上記(1)記載の多糖体を含有する飲食品。
本発明の多糖体は、優れた免疫賦活作用を有し、さらにTh1免疫応答を補強することによってTh2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する作用が高く、免疫賦活剤又はTh1/Th2バランス改善剤として好ましく、また健康食品の製造において有用な組成物を提供する。
さらに、本発明の多糖体のうち、凝集した形態のものは、従来の分散工程を経なくても、簡便にパイエル板から取り込まれやすい微粒子の形態とすることができるため、産業上利用可能性が高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明の多糖体
本発明は、多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体に関する。
本発明の「多糖体」は、加水分解によって20分子以上の単糖類を生じる糖類をいい、その多糖体の組成としては、糖含有量が90〜99%であり、好ましくは、92〜98%であり、最も好ましくは、97%であり、また、多糖体の全体の75〜95%、好ましくは、80〜90%、さらに好ましくは、85%がグルコース残基である。糖含有量は、当該技術分野に周知の方法により測定することができ、例えば、フェノール硫酸法(例えば、「新実験化学講座20 生物化学[II]」、1085頁、日本化学会編、1978年10月20日発行、丸善株式会社を参照。)があげられるがこれらに限定されない。
本発明の多糖体は、主としてグルコース、ガラクトース、マンノース等の天然に存在する単糖類から構成されるが、これらに限定されず、また、その分子中の1または2以上の箇所においてアシル化、リン酸化などの修飾、またはタンパク質、核酸が結合することによる修飾を受けていてもよい。本発明の多糖体に含まれる単糖類としては、上記グルコース等の他に、例えば、フルクトース、リブロース、タロース、アロース、アピオース、リボース、キシロース、フコース、デオキシリボース、ラムノース、グルコロン酸、ガラクツロン酸、アラビノースなどがあげられる。
上記の糖組成は、当該技術分野に周知の方法により測定することができ、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法、アクリルアミドゲル電気泳動を用いた方法やキャピラリー電気泳動(CE)を用いた方法があげられるがこれらに限定されない。好ましくは、HPLCを用いた方法であり、糖組成物の検出は各糖の標準品の溶出時間との比較によって行い、また標準品のピーク面積値を利用した検量線を基に含量を算出することができる。本発明に適するHPLCの分析条件のうち、試料の調製方法としては、例えば、多糖体に、2Nトリフルオロ酢酸を添加して、適当な温度及び時間で加水分解し、減圧乾固後、残渣を超純水に溶解し、フィルターでろ過し、ろ液を適当に希釈する方法があげられるがこれらに限定されない。また、HPLC分析条件は、好ましくは、以下の実施例3に記載の条件があげられるがこれらに限定されない。
また、本発明の多糖体の分子量は、透析膜を用いた分画から、10,000〜5,000,000程度である。
本発明の多糖体に含まれるその他の成分としては、脂質、繊維質、灰分、タンパク質、核酸等のいかなる物質も含まれる。
本発明の「1,3結合グルコース」とは、隣り合うグルコース残基の1位と3位で結合がおこり、グルコースが重合している状態をいい、同様に、「1,3結合グルコースの6位で分岐」とは、1,3結合グルコースの6位で枝分かれしている状態をいう。
このような糖結合様式は、当該技術分野に周知の方法により解析することができ、例えば、メチル化分析を用いることができるが、これに限定されない。本発明のメチル化分析に適する条件としては、完全メチル化糖を加水分解して各単糖に分解した後、還元アセチル化し、部分メチル化糖アルコールのアセチル誘導体(部分メチル化アルジトールアセテート)としてGC、GC/MS測定に供することができる。また好ましくは、以下の実施例3に記載の条件があげられるがこれらに限定されない。得られたマススペクトル部分メチル化アルジトールアセテートの標準マススペクトル(出典:生化学データブック)と照らし合わせることにより、クロマトグラム上の主要なピークを同定することができる。また、ガスクロマトグラムで得られた各ピークの面積から、部分メチル化アルジトールアセテートの組成比を算出することができる。好ましくは、以下の実施例3に記載の方法があげられるが、これに限定されない。
ここで、完全メチル化の方法としては、例えば、多糖体をP中で数時間〜一晩程度乾燥させたものに、DMSOを添加して、適当な時間攪拌後に、粉末NaOHとヨウ化メチルを添加して、適当な時間攪拌する。それをクロロホルムで数回抽出後、数回洗浄する。次に脱水として、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを添加し、適当な温度条件下に適当な時間放置後、ろ過を行い、ろ液を乾固して、完全メチル化画分とする方法があげられるが、これらに限定されない。
また、上記の部分メチル化アルジトールアセテートの調製方法としては、上記完全メチル化糖にギ酸を添加し、適当な温度及び時間で加水分解し、減圧乾固後、トリフルオロ酢酸を添加して、さらに加水分解する。減圧乾固後、得られた残渣を洗浄後、NaBHを添加して、適当な時間及び温度下に放置して減圧乾固する。残渣をメタノールで洗浄後、無水酢酸/ピリジンを添加して、適当な時間及び温度で加熱し乾固させる。残渣をクロロホルムで抽出し、超純水を加えて混和させ、クロロホルム層にさらに超純水を加え、塩の除去を数回行う。次に脱水を目的に、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウムを添加し、適当な時間及び温度下で放置後、ろ過を行い、その後、ろ液を乾固し、残渣をクロロホルムに溶解させ、GCおよびGC/MS測定に供するという方法があげられるが、これらに限定されない。
本発明の多糖体は、3〜15残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐しており、好ましくは5〜13残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐しており、より好ましくは7〜12残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐しており、最も好ましくは10〜11残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している多糖体である。
2.本発明の多糖体の製法
本発明の多糖体は、6位で分岐している頻度の高い1,3−グルカンを、化学修飾する方法や1,6−グルカナーゼなどで酵素処理する方法など公知の方法によって分岐度を調整することで得ることができる。
また、本発明の多糖体は、菌糸体を脱脂した後、熱水抽出して得られる抽出液に、抽出液に対する体積比で0.5〜2.0倍の量のエタノールを加えることにより得られる沈殿画分を1〜100mg/mlの濃度に調製したものを透析することによって、凝集した形態で得ることができる。ここで「凝集した形態」とは、本発明の多糖体が2つ以上寄り集まったものをいう。具体的には、以下のようにして得ることができる。
ここで、本発明に適する菌糸体としては、きのこ由来のもの、好ましくは、ボタンダケ目バッカクキン科に属する菌種由来のもの、さらに好ましくは、冬虫夏草属に属する菌種由来のもの、最も好ましくは、コルジセプス・シネンシス(Cordyceps sinensis(Berkely)Saccardo)由来のものがあげられるが、これらに限定されない。なお、冬虫夏草は昆虫などから生じるきのこの総称であり、子のう菌類・麦角菌目・麦角菌科の一属として位置づけられる。そのうちのコルジセプス・シネンシスは鱗翅類のコウモリ蛾の幼虫に寄生し、中国、チベット、ネパール、ヒマラヤの高山帯、海抜3000〜4000mの荒草原に分布するきのこである。本発明で用いる菌糸体は、天然物でも人工的に培養して得られたものでも市販の粉末等を用いてもよい。市販の粉末としては、例えば中国で市販されている"発酵虫草菌粉"(製品名:CORBRIN CAPSULE、製造会社:杭州中美華東製薬有限公司)、"冬虫夏草菌糸体"(製品名:虫草頭胞菌CAPSULE、製造会社:山東魯(▲ろ▼)抗医薬株式公司)を用いることができる。
本発明の多糖体の製造方法を、例えば、冬虫夏草菌糸体粉末を用いた場合について以下に説明する。
冬虫夏草菌糸体粉末を70〜99.5%エタノールで脱脂する。脱脂は、まず、60〜100℃、好ましくは、70〜90℃、より好ましくは80℃で、適当な時間、例えば1時間〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜7時間で抽出した後、残渣を回収することを数回繰り返す。その後、得られた残渣を50〜85%エタノールで60〜100℃、好ましくは、70〜90℃、より好ましくは80℃で、適当な時間、例えば1時間〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜7時間で抽出し、残渣を回収する。
次に、上記のように回収した残渣の熱水処理を行う。熱水処理は、適当量の蒸留水で60〜120℃、好ましくは、80〜110℃、より好ましくは、100℃で数時間、例えば1時間〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは3〜7時間で抽出することにより行う。熱水抽出は複数回行ってもよく、例えば1〜4回、好ましくは2〜3回行う。抽出に用いる水のpH値は特に限定されないが、例えば蒸留水を用いて行うことができる。
上記の熱水抽出物の上清を回収する。回収は遠心分離を用いることができ、例えば、1000〜5000×g、より好ましくは、3000×gで、室温、5〜30分間という条件で遠心分離することができる。上記工程を数回程度繰り返し、得られた上清を合わせてから、適当量まで減圧濃縮する。濃縮率は特に限定されないが、例えば体積比で20〜80%、好ましくは25〜60%であり、さらに好ましくは30〜50%である。また当該濃縮は常圧下または減圧下のいずれにおいても行いうるが、好ましくは減圧下で行う。
その後、90〜99.5%エタノールを加えて、数時間〜一晩冷暗所に静置することによりエタノール沈殿を行う。抽出液に加えるエタノールの量は、特に限定されないが、例えば濃縮後の抽出液に対する体積比で0.5〜2.0倍の量、好ましくは0.8〜1.2倍であり、濃縮しない場合も同様である。得られた沈殿物は、当該技術分野に周知の方法により精製することができ、適当な条件下で遠心分離により沈殿物を回収した後、少量の蒸留水に溶解してもよく、さらに、再度蒸留水に溶解した後にエタノールを加えて沈殿画分を得る操作を1回または複数回行うことにより精製することもできる。その後、凍結乾燥等の当業界で周知の方法により沈殿物の粉末を得ることができる。
その後、上記粉末を1〜100mg/ml、好ましくは20〜70mg/ml、より好ましくは40〜60mg/ml、最も好ましくは、50mg/mlとなるように蒸留水に溶解したものを透析する。透析の条件としては、分子量1,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000、より好ましくは5,0000〜150,000、最も好ましくは100,000の排除分子量の透析膜を用いて、蒸留水に対して、室温以下、例えば、2〜20℃、好ましくは、2〜10℃、より好ましくは、4℃にて、数時間〜数日間、好ましくは、1〜5日間、より好ましくは3日間であるが、これらに限定されない。透析の期間中、1〜数日あたり数回、透析外液の蒸留水を交換してもよい。透析期間終了後、透析内液を回収する。回収にあたっては、適当な条件の遠心分離を用いることができる。本発明に適する遠心分離の条件としては、2000〜20000×g、好ましくは、5000〜15000×g、より好ましくは、10000×gで、室温以下、例えば、2〜20℃、好ましくは、2〜10℃、より好ましくは、4℃にて、5〜30分、好ましくは、10〜20分、より好ましくは、15分間であるがこれらに限定されない。上記の室温以下条件での透析により、凝集した形態で本発明の多糖体を得ることができる。また、この凝集した形態である本発明の多糖体(以下、「凝集体」)を蒸留水で洗浄することで、純度を高めることができる。さらに「凝集体」を凍結乾燥することにより、茶白色の「凝集体」粉末を得ることができる。
上記「凝集体」の洗浄には、「凝集体」を1〜100mg/ml、好ましくは20〜70mg/ml、より好ましくは40〜60mg/ml、最も好ましくは、50mg/mlとなるように蒸留水を加え懸濁後、遠心分離にて、再度「凝集体」を回収することができる。遠心分離の条件は、2000〜20000×g、好ましくは、5000〜15000×g、より好ましくは、10000×gで、室温以下、例えば、2〜20℃、好ましくは、2℃〜10℃、より好ましくは、4℃にて、5〜30分、好ましくは、10〜20分、より好ましくは、15分間であるがこれらに限定されない。この洗浄操作を数回繰り返すことができる。
3.「凝集体」の粒度分布
上記2.に記載の方法により得られた「凝集体」1mgを水1mlに分散させた分散化液を25℃で測定したとき、粒度分布は、粒子径50〜500μmに全粒子の約80%が入っている。
粒度分布は、当該技術分野に周知の方法により測定機器を用いて測定することができる。例えば、以下の実施例3に記載の方法を用いることができるが、これに限定されない。さらに、上記「凝集体」を、特に限定されないが、0.01〜10mg/ml、好ましくは0.1〜5mg/ml、より好ましくは0.5〜2mg/ml、最も好ましくは、1mg/mlとなるように蒸留水に溶解し、適当な条件下で加熱処理を行うことで、25℃で粒度分布を測定したところ粒子径100μm以下、好ましくは粒子径0.01〜100μm、より好ましくは粒子径0.1〜50μm、さらに好ましくは粒子径0.1〜10μm、最も好ましくは粒子径0.2〜7μmに全粒子の約80%が入っている微粒子化された凝集体(以下、「微粒子体」)を調製することができる。適当な条件下とは、例えば、40〜120℃、好ましくは、60〜110℃、より好ましくは、80〜100℃で数時間、例えば1〜24時間であり、好ましくは2〜12時間であり、より好ましくは3〜7時間の加熱をいうが、これらに限定されない。
このように「凝集体」に、上記のような加熱処理を施すだけで、「微粒子体」を得ることができる。これは、従来の分散工程を必要とする微粒子製造方法よりも、簡便であり、好ましい。さらに、この「微粒子体」は、室温で少なくとも3日間は粒度分布の増加は確認されず、再凝集がおこらず、安定である。
つまり、粒度分布を上記のように小さくすることにより、腸管免疫で中心的な役割を担っているパイエル板からの取り込み効率が高まるため、以下に記載する免疫賦活剤やTh1/Th2バランス改善剤等の製造にあたっては、「凝集体」に微粒子化を施すことが好ましい。
4.本発明の多糖体を含有する免疫賦活剤
本発明は、上記多糖体を含有する免疫賦活剤に関する。本発明の多糖体は、非常に強いサイトカイン産生促進作用を有するため、免疫賦活を必要とする被験者に対して免疫賦活剤として使用することができる。従って、本発明の多糖体は、医薬組成物、特に免疫賦活剤の有効成分として使用することができる。これらの製造にあたっては、パイエル板からの取り込み効率が高い、「微粒子体」を用いるのがより好ましい。
本発明の多糖体が免疫賦活効果を有することは、当該技術分野に周知の方法により測定することができ、例えば、以下のように、ヒト末梢血を用いた免疫賦活作用の測定方法により確認することができるが、これに限定されない。すなわち、適当な培地と、健常者からヘパリン採血した末梢血を添加して、多糖体の終濃度が一定になるようにPBSに溶解させた被験物質を添加して、適当な条件下培養する。その後、培養上清を回収し、上清中に産生されたIFN−γを定量する。測定には、例えば、ELISA法を用いることができる。
この結果から、「凝集体」、及び「微粒子体」には、公知の免疫賦活作用を有する物質、例えば、LNT、PSK(製品名:クレスチン、販売会社:株式会社クレハ)、AHCC(製品名:AHCC、販売会社:株式会社アミノアップ化学)、LEM(製品名:シイタゲン、販売会社:小林製薬株式会社)等より非常に強いサイトカイン産生促進作用が認められ、本発明の多糖体に非常に強い免疫賦活作用があることがわかった。
5.本発明の多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤
本発明は、上記多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤に関する。
本発明の「Th1/Th2バランス」は、生体内において抗原提示細胞から分化したヘルパーT細胞のサブセットであるTh1とTh2の存在比をいう。健常人におけるTh1/Th2は通常4〜8であり、癌等の免疫抑制状態においてはそれを下回る。本発明の「Th1/Th2バランス改善剤」は、免疫抑制状態におけるTh2優位の状態からTh1/Th2を上昇させる、又は正常のTh1/Th2に改善させるものをいう。あるいは、健常人が癌等の免疫抑制状態になりにくい状態を維持または向上させるものをいう。
本発明の多糖体は、Th1/Th2バランスを改善する効果を有する。そのため、本発明の多糖体は、癌になりにくい身体状態をつくること、あるいは癌の免疫療法として期待できる。従って、本発明の多糖体は、医薬組成物、特にTh1/Th2バランス改善剤の有効成分として使用することができる。また、Th1/Th2バランスを改善する効果は、「凝集体」に比べ「凝集体」を加熱処理して得られる「微粒子体」の方がより高い。そのため、本発明のTh1/Th2バランス改善剤の製造にあたっては、上記「微粒子体」を用いるのがより好ましい。
本発明の多糖体がTh1/Th2バランス改善効果を有することは、当該技術分野に周知の方法により測定及び確認することができ、例えば、上記4.に記載したヒト末梢血を用いた免疫賦活作用の測定方法中に得られた培養上清を用いて、以下のように確認することができるが、これらに限定されない。すなわち、上記培養上清中に産生されたIL−10を定量して、上記4.で定量したIFN−γ産生量をもとに、Th1サイトカインとTh2サイトカインの比率を次式より算出することによる。ここで、IL−10の定量にはELISA法を用いることができる。
<計算式>
(Th1サイトカイン)/(Th2サイトカイン)=(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)
算出した値を用いてグラフ化し、Th1/Th2バランス調節能の解析を行うことができるが、この結果から、「凝集体」、「微粒子体」にTh1免疫応答を相対的に高める作用が認められ、その効果は、これまでにTh2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する作用が知られているLNT、PSK、AHCC、LEMよりも優れていることが明らかである。また、「凝集体」と「微粒子体」を比較すると、「凝集体」の加熱処理に伴い、Th2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する効果が高まることも明らかである。
本発明のTh1/Th2バランス改善剤は、Th1/Th2バランスに関連する癌疾患以外の疾患、例えば、アレルギー、動脈硬化、肝障害、自己免疫病、GVHDの治療にも併用することができる。さらに、本発明のTh1/Th2バランス改善剤は、化学療法や放射線療法と併用することもできる。
本発明の上記4.の免疫賦活剤又は5.のTh1/Th2バランス改善剤は種々の剤形とすることができる。例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができるが、これらに限定されない。また、製剤には薬剤的に許容できる種々の担体を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、コーティング剤を含むことができるが、これらに限定されない。本発明のTh1/Th2バランス改善剤を持続性、徐放性のものとしてもよい。
本発明の上記4.の免疫賦活剤又は5.のTh1/Th2バランス改善剤の投与量は、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができるが、例えば、一般に1〜5000mg/日/成人の用量で使用される。
上記4.の免疫賦活剤又は5.のTh1/Th2バランス改善剤の投与経路は、安全かつ効果的に投与することができれば、特に限定されるものではなく、経口投与のほか、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、直腸内投与等の非経口投与でもよい。簡便であり、自己投与が容易であるという観点からは、経口投与が好ましい。
6.本発明の多糖体を含有する飲食品
本発明は、上記多糖体を含有する飲食品に関する。本発明の上記多糖体は、そのまま機能性食品として使用できるほか、医薬部外品、飲食物等の有効成分などとして使用することができる。そのような使用により、本発明の免疫賦活効果およびTh1/Th2バランス改善効果を有する当該経口摂取組成物の日常的および継続的な摂取が可能となり、効果的な免疫賦活による体質改善、癌の治療および癌の発症の予防が可能となる。本発明の経口摂取組成物が食品素材として使用される例としては、免疫賦活効果もしくはTh1/Th2バランス改善効果または予防効果を有する機能性食品、健康食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)があげられるがこれらに限定されない。
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本発明を種々変更、修飾して使用することが当業者には可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
1.本発明の多糖体の分画
冬虫夏草菌糸体粉末500gを99.5%エタノール1Lで80℃、6時間抽出した。抽出後、グラスフィルターGA−200(ADVANTEC)でろ過し、残渣を回収した。2度の抽出後、残渣を70%エタノール1Lで80℃、6時間抽出した。抽出後、グラスフィルターGA−200(ADVANTEC)でろ過し、残渣を回収した。3度の抽出後、残渣を蒸留水1Lで100℃、6時間抽出した。抽出後、3000×g、室温、15分間遠心分離し、上清を回収した。3度の抽出後、上清を合わせて約1.5Lになるまで減圧濃縮し、体積比で等量の99.5%エタノールを加え、一晩冷暗所に静置した。翌日、3000×g、室温、15分間遠心分離し、沈殿物を回収後、少量の蒸留水に溶解し、凍結乾燥により茶色粉末21.0gを得た。次いで、この粉末を50mg/mlとなるように蒸留水に溶解し、Spectra/Por(登録商標)CE Membrane MWCO:100,000(スペクトラム社)を用いて蒸留水に対して4℃、3日間透析を行った。途中、1日あたり3回、透析外液の蒸留水を交換した。3日後、透析内液を回収し、10000×g、4℃、15分間遠心分離し、凝集した形態で本発明の多糖体を回収した。この「凝集体」の洗浄を目的に、適量の蒸留水を加え懸濁後、10000×g、4℃、15分間遠心分離し、再度「凝集体」を回収した。この洗浄操作を10回繰り返し、最終的に少量の蒸留水に「凝集体」を懸濁し、凍結乾燥により茶白色の「凝集体」粉末を1.13gを得た。
2.凝集した形態である本発明の多糖体の微粒子化
実施例1によって得られた「凝集体」粉末を1mg/mlとなるように蒸留水に懸濁し、80℃で30分間加熱処理を行うことで、「微粒子体」を調製した。
本発明の多糖体の成分解析
1.糖含量測定
常法に従って、フェノール硫酸法による多糖体(A)の糖含量の測定を行った。その結果、本発明の多糖体の糖含量は、D(+)−グルコース換算で96.6%であり、ほぼ糖から構成される多糖体であることが確認された。
2.糖組成分析
以下の方法に従って、酸加水分解で得られた中性糖をHPLC法で分析した。HPLC分析のピークの同定は、標準品(グルコース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース)の溶出時間との比較によって行い、また標準品のピーク面積値を利用した検量線を基に含量を算出した。
(1)HPLC測定用試料の調製
実施例1によって得られた「凝集体」粉末1.19mgをガラス試験管に秤量後、2Nトリフルオロ酢酸200μLを添加し、100℃で6時間加水分解した。減圧乾固後、残渣を500μLの超純水に溶解し、0.22μmのフィルターでろ過した。ろ液を100倍に希釈し、50μLをHPLC分析に供した。
(2)HPLC分析条件
(A)装置
HPLCシステム:LC−9Aシステム(島津製作所)
検出器:分光蛍光光度計RF−10AXL(島津製作所)
(B)カラム
TSK−gel Sugar AXG 15cm×4.6mmI.D.(東ソー)
(C)分析条件
カラム温度:70℃
移動相:0.5Mホウ酸カリウム緩衝液 pH8.7
移動相流速:0.4ml/分
ポストカラム標識:反応試薬:1%アルギニン/3%ホウ酸
反応試薬流速:0.5ml/分
反応温度:150℃
検出波長:Ex.320nm Em.430nm
(3)結果
上記のHPLC解析の結果、グルコース、マンノース、ガラクトースのピークが検出され、本発明の多糖体はこれらを構成糖とする多糖体であることが確認された。また、ピークの面積値から、糖組成はグルコース:マンノース:ガラクトース=21:2:1であり、大部分がグルコースで構成される多糖体であることが確認された。
3.糖結合様式解析
以下のメチル化分析に従って、糖結合様式を解析した。完全メチル化糖を加水分解して各単糖に分解した後、還元アセチル化し、部分メチル化糖アルコールのアセチル誘導体(部分メチル化アルジトールアセテート)としてGC、GC/MS測定に供した。得られたマススペクトル部分メチル化アルジトールアセテートの標準マススペクトル(出典:生化学データブック)と照らし合わせることにより、クロマトグラム上の主要なピークを同定した。また、ガスクロマトグラムで得られた各ピークの面積から、部分メチル化アルジトールアセテートの組成比を算出した。
(1)完全メチル化
実施例1によって得られた「凝集体」粉末3.3mgをバイアル管に秤量し、P中で一晩乾燥させた。DMSOを0.6ml添加し、2時間攪拌後、粉末NaOH20mgとヨウ化メチル0.15mlを添加し、30分間攪拌した。クロロホルム1mlで2回の抽出後、超純水2mlで5回洗浄した。次に脱水を目的に、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウム1gを添加し、室温にて1時間放置後、ろ過を行った。その後、ろ液を乾固し、完全メチル化画分とした。
(2)部分メチル化アルジトールアセテートの調製
加水分解管に完全メチル化糖を加え、90%ギ酸0.5mlを添加し、100℃で2時間加水分解した。減圧乾固後、2Nトリフルオロ酢酸0.5mlを添加し、100で5時間さらに加水分解した。減圧乾固後、得られた残渣を少量の超純水で3回洗浄後、1%NaBHを0.5ml添加し、室温で一晩放置した。その後、酢酸で過剰のNaBHを分解し、減圧乾固した。残渣をメタノールで5回洗浄後、無水酢酸/ピリジンを0.5ml添加し、100℃で1時間加熱し乾固させた。残渣をクロロホルム1mlで抽出し、超純水を1ml加えて混和させた。クロロホルム層にさらに超純水1mlを加え、塩の除去を5回行った。次に脱水を目的に、クロロホルム層に無水硫酸ナトリウム1gを添加し、室温にて1時間放置後、ろ過を行った。その後、ろ液を乾固し、残渣を250μLのクロロホルムに溶解させ、GCおよびGC/MS測定に供した。
(3)GC測定条件
(A)装置:Hewlett−packard HP5890
(B)カラム(液相):SPG−5(スペルコジャパン)
(タイプ)Fused silica capillary 30m×0.25mmI.D.
(C)分析条件:
キャリアガス:He
カラム温度:60℃、1分→280℃(8℃/min)
注入温度:280℃
注入量:1μL
(4)EI−GC/MS測定条件
(A)装置:日本電子JMS DX−303 質量分析計
Hewlett−packard HP5890A ガスクロマトグラフ
(B)データ処理:日本電子JMA DA5000 データ処理システム
<GC部条件>
(A)装置:Hewlett−packard HP5890A
(B)カラム(液相):SPG−5(スペルコジャパン)
(タイプ)Fused silica capillary 30m×0.25mmI.D.
(C)分析条件
キャリアガス:He
カラム温度:60℃、1分→280℃(8℃/min)
注入温度:280℃
注入量:1μL
<MS部条件>
イオン化方式:EI
電子加速電圧:70V
イオン化電流:300μA
イオン化温度:250℃
イオン化加速電圧:3.0KV
走査速度:1sec/scan
走査間隔:1sec
(5)結果
メチル化分析の結果、1,3結合グルコースと6位で分岐した1,3結合グルコースのピークが検出され、また、ピークの面積値から、本発明の多糖体の結合様式は10〜11残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐した結合様式であることが確認された。
4.粒度分布解析
以下の方法に従って、「凝集体」粒度分布の解析を行った。
(1)粒度分布測定用試料の調製
実施例1によって得られた「凝集体」粉末をサンプル管に秤量し、1mg/mlとなるように超純水を添加した。激しく撹拌することで、「凝集体」を分散させ、測定用試料とした。また、同時に「微粒子体」についても測定用試料とした。
(2)粒度分布測定条件
(A)装置:島津製作所 SALD−2000J
(B)分析条件
屈折率:1.70−0.20i
温度:25℃
試料投入:測定用試料を超純水で5倍希釈
撹拌条件下
(C)データ処理:WingSALD−2000J
(3)結果
粒度分布を図1に示す。「凝集体」の粒度分布は、粒子径50〜500μmに全粒子の80%が含まれていた(図1A)。それに対して、「微粒子体」の粒度分布は、粒子径0.2〜5μmに全粒子の80%が含まれており(図1B)、微粒子化されていることが明らかとなった。また、「凝集体」と「微粒子体」を比較した結果、「微粒子体」の方が腸管免疫で中心的な役割を担っているパイエル板からの取り込み効率が高いことが確かめられた。
さらに、この「微粒子体」は室温で最低でも3日間は粒度分布の増加は認められなかった(図1C)。
ヒト末梢血を用いた免疫賦活作用の測定
24穴細胞培養用プレートに、RPMI1640培地700μLと、健常者からヘパリン採血した末梢血200μLを添加した。そこに、多糖体の終濃度が100μg/mlになるようにPBSに溶解させた被験物質を100μL添加し、37℃,5%CO条件下で24時間培養した。その後、培養上清を回収し、上清中に産生されたIFN−γをELISA法による測定キット(バイオソース社製)で定量した。測定方法と定量結果の解析方法はキット添付の取扱説明書に従った。
免疫賦活作用が知られている、LNT、PSK、AHCC、LEM、50EP、80EP及びM1並びに、実施例1、実施例2で得られた「凝集体」と「微粒子体」について、IFN−γ産生量を測定した結果を図2に示す。
この結果から、「凝集体」と「微粒子体」には、LNT、PSK、AHCC、LEM、50%EP、80%EP及びM1より非常に強いサイトカイン産生促進作用が認められ、ヒト末梢血を用いた評価系における本発明の多糖体の免疫賦活作用が確認された。
50%EPは、本発明の多糖体の製造過程において、熱水抽出後のエタノール沈殿における、50%エタノール沈殿画分の多糖体をいい、80%EPは、50%エタノール上清画分にエタノールを終濃度80%となるように加えて得られる80%エタノール沈殿画分の多糖体をいい、M1は、上記50%EP画分を、20mg/mlとなるように蒸留水に溶解し、Spectra/Por(登録商標)CE Membrane MWCO:100,000(スペクトラム社)で蒸留水に対し透析した透析内液を凍結乾燥することにより得られる多糖体をいう。
Th1/Th2バランス調節能の解析
実施例3で得られた培養上清を用いて、上清中に産生されたIL−10をELISA法による測定キット(バイオソース社製)で定量した。また、実施例4で定量したIFN−γ産生量、及びIL−10産生量をもとに、Th1サイトカインとTh2サイトカインの比率を次式より算出した。
<計算式>
(Th1サイトカイン)/(Th2サイトカイン)=(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)
算出した値を用いてグラフ化し、Th1/Th2バランス調節能の解析を行った。IL−10の産生量を図3Aに、(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)の比率を図3Bに示す。この結果から、「凝集体」と「微粒子体」にTh1免疫応答を相対的に高める作用が認められ、その効果は、これまでにTh2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する作用が知られているLNT、PSK、AHCC、LEMよりも優れていることが明らかとなった。また、同時に、「凝集体」と「微粒子体」の比較から、微粒子化に伴い、Th2側に傾いたTh1/Th2バランスを改善する効果が高まることも明らかとなった。
図1は、本発明の多糖体について、「凝集体」(A)、「微粒子体」(B)及び「微粒子体」を3日間室温放置した後(C)の粒度分布を示す。 図2は、本発明の多糖体について、IFN−γ産生量を測定した結果を示す。 図3は、本発明の多糖体について、IL−10産生量(A)及び(IFN−γ産生量)/(IL−10産生量)の比率を測定(B)した結果を示す。

Claims (5)

  1. きのこ由来の経口投与用多糖体であって、前記多糖体の75〜95%がグルコース残基であり、7〜12残基の1,3結合グルコースに1個の割合で1,3結合グルコースの6位で分岐している、前記多糖体。
  2. 請求項1記載の多糖体を含有する免疫賦活剤。
  3. 請求項1記載の多糖体を含有するTh1/Th2バランス改善剤。
  4. 請求項1記載の多糖体を含有する飲食品。
  5. 25℃で粒度分布を測定したときに、粒子径0.1〜10μmに全粒子の約80%が入っている微粒子化された請求項1記載の多糖体
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