JPH07118226A - アスタキサンチンの精製法 - Google Patents

アスタキサンチンの精製法

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JPH07118226A
JPH07118226A JP28561493A JP28561493A JPH07118226A JP H07118226 A JPH07118226 A JP H07118226A JP 28561493 A JP28561493 A JP 28561493A JP 28561493 A JP28561493 A JP 28561493A JP H07118226 A JPH07118226 A JP H07118226A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 カンタキサンチン、アドニルビンなどのカロ
テノイドを含有するアスタキサンチンを煩雑な操作や、
複雑な溶媒回収の操作を要しないで精製して、高純度の
アスタキサンチンを取得する。 【構成】 アスタキサンチンを含有するクロロホルムの
溶液からアスタキサンチンを晶析する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアスタキサンチンの精製
法に関する。
【0002】アスタキサンチンは、蟹や海老などの甲殻
動物や、鮭や鱒などの魚に多く含まれている天然色素で
あり、肉色改良を目的として魚類の飼料添加剤として使
用されている化合物である。
【0003】
【従来の技術】アスタキサンチンを化学的に合成する方
法として従来いくつかの方法が知られている。例えば、
特開昭59−53463号公報には、カンタキサンチン
をモノ過フタル酸、過酢酸などで酸化する方法が記載さ
れており、また米国特許第5,097,063号明細書
には、カンタキサンチンを2−フェニルスルホニル−3
−フェニルオキサジリジンなどで酸化する方法が記載さ
れている。これらの方法によると良好な収率でアスタキ
サンチンを製造することができるが、得られたアスタキ
サンチンには未反応のカンタキサンチンおよびアドニル
ビンなどが含まれるので、アスタキサンチンとこれらカ
ロテノイドを分離する必要がある。
【0004】従来、アスタキサンチンの精製法として以
下に示す方法が知られている。 (1)塩化メチレン/ジエチルエーテルを展開溶剤とす
るカラムクロマトグラフィー、および塩化メチレン/メ
タノール溶媒による晶析(特開昭59−53463号公
報)。 (2)塩化メチレン/ジエチルエーテルを展開溶剤とす
るカラムクロマトグラフィー、および塩化メチレン/ペ
ンタン溶媒による晶析(米国特許第5,097,063
号明細書)。 (3)塩化メチレン/エーテル/メタノールを展開溶剤
とするカラムクロマトグラフィー、およびクロロホルム
/メタノール溶媒、ピリジン/水溶媒又は塩化メチレン
/メタノール溶媒による晶析(特開昭55−388号公
報)。 (4)塩化メチレン/メタノール溶媒による晶析(特開
昭55−389号公報、特開昭62−294635号公
報、特開平1−265054号公報、Helv.Chi
m. Acta. 64 2405(1981)、 H
elv. Chim. Acta. 64 2436
(1981)、 Helv. Chim.Acta.
64 2469(1981))。 (5)塩化メチレン/ヘキサン溶媒による晶析(特開昭
52−68157号公報)。
【0005】このように、アスタキサンチンは、カラム
クロマトグラフィーや、二種類以上の溶媒を使用した晶
析などにより精製されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】カラムクロマトグラフ
ィーによるアスタキサンチンの精製には、多量の溶剤お
よびシリカゲルなどの充填剤を必要とする。さらに、展
開溶剤の調製や、順次溶出してくる展開液の分析値によ
り展開液を区分して個々に溶剤除去しなければならない
など、操作が極めて煩雑である。
【0007】晶析によるアスタキサンチンの精製は、二
種類以上の溶媒を使用するために、使用溶剤の回収が複
雑になるという問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、クロロホ
ルムを溶媒として用いてアスタキサンチンの晶析を行う
ことにより、極めて高純度のアスタキサンチンを取得し
得ることを見出し、本発明に至った。
【0009】すなわち、本発明は、アスタキサンチンを
含有するクロロホルムの溶液からアスタキサンチンを晶
析することを特徴とするアスタキサンチンの精製法を提
供する。
【0010】本発明方法にしたがうアスタキサンチンの
精製操作は、カンタキサンチン、アドニルビンなどのカ
ロテノイドを含有するアスタキサンチンにクロロホルム
を加えて撹拌したのち、溶液の温度を下げるか、あるい
は溶媒を蒸発させることによって行われる。
【0011】後述する比較例1および2に示されるよう
に、クロロホルムと同類のハロゲン系溶剤である塩化メ
チレンあるいは芳香族系溶剤であるトルエンなどを単独
で用いてもアスタキサンチンと他のカロテノイド類を効
率よく分離することは難しく、クロロホルムを単独で使
用する本発明はアスタキサンチンの精製に極めて有効な
手段である。
【0012】クロロホルムの使用量は、精製するアスタ
キサンチンに対し、半分の重量から結晶を完全に溶解さ
せるだけの十分な量、すなわち3000倍重量程度の範
囲である。しかしながら場合によっては必ずしも結晶を
完全に溶解させる量のクロロホルムを必要としない。
【0013】精製するアスタキサンチンにクロロホルム
を入れて撹拌する時間は、通常1分から10時間までの
範囲である。この撹拌は、通常−60℃から溶液の沸点
までの範囲で行われるが、アスタキサンチンの溶解度や
アスタキサンチンの異性化反応を抑えるためには、0℃
から55℃での実施が望まれる。撹拌中からアスタキサ
ンチン結晶の析出が不十分な場合などには、撹拌の途
中、すなわち撹拌開始から5分から8時間後に温度を数
℃から数10℃下げると効果的である。温度を下げる以
外に結晶を効果的に析出させる方法としてクロロホルム
を溶液から留去させる方法がある。この場合、常圧でク
ロロホルムを留去することもできるが、減圧下でクロロ
ホルムを留去させてもかまわない。
【0014】生成したアスタキサンチンの結晶はろ過、
あるいは沈降により母液から分離される。なお、ろ過で
得られたろ液から回収されるクロロホルムはそのまま次
の晶析に用いても何ら支障はない。
【0015】ろ過操作は撹拌する温度と同じ温度、すな
わち−60℃から溶液の沸点までの温度範囲で実施する
ことができるが、通常、30℃から−30℃の範囲での
ろ過操作が望ましい。結晶が細かく、ろ過性が悪い場合
などには、遠心分離などの方法により結晶を沈降させて
得ることもできる。この場合もろ過操作と同じ温度範囲
で実施することが望ましい。得られたアスタキサンチン
粗結晶から微量含まれるろ液を取り去るためには、少量
のクロロホルムでリンスすることが効果的である。得ら
れたアスタキサンチンの粗結晶は、晶析操作を繰り返す
ことによりさらに純度を高めることができる。
【0016】得られた粗結晶は0℃から180℃の温度
範囲で、減圧下あるいは窒素、アルゴン、ヘリウムなど
の不活性気体を吹き込む方法などにより乾燥を行い、高
純度なアスタキサンチン結晶とすることができる。
【0017】本発明で精製の対象となる粗なアスタキサ
ンチンは、例えば参考例に示した方法で調製される。す
なわち、−5℃から−30℃の温度で、カンタキサンチ
ンのテトラヒドロフラン溶懸濁液にカンタキサンチンに
対して2当量から3当量のナトリウム ビストリメチル
シリルアミドなどを滴下して10分から4時間程度同温
度で撹拌する。その後−50℃から−80℃に冷却して
カンタキサンチンに対して2当量から5当量の2−フェ
ニルスルホニル−3−フェニルオキサジリジンなどの酸
化剤を加え、さらに同温度で20分から8時間程度撹拌
したのち、酢酸あるいは塩酸、硫酸などの酸を滴下し、
その後室温まで昇温し、溶媒を除去する。残留物に塩化
メチレンあるいはクロロホルムなどの抽出溶剤と水を入
れて分液し、有機層を濃縮して粗なアスタキサンチンを
得るか、あるいは残留物にメタノールを入れ、析出して
いる粗なアスタキサンチンをろ過するなどして得ること
ができる。このようにして得られた粗なアスタキサンチ
ンには通常、アスタキサンチンに対してカンタキサンチ
ンが1%から70%の範囲で、アドニルビンが痕跡量か
ら30%の範囲で含まれているが、それらは本発明でも
って精製することが可能である。
【0018】
【実施例】以下に実施例により本発明を説明するが、本
発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】実施例1 窒素気流下、粗なアスタキサンチン3.0g(カンタキ
サンチン0.04g、アドニルビン0.014g、アス
タキサンチン1.72gを含有)にクロロホルム15g
(和光純薬工業株式会社製、和光一級品)を入れて40
℃で一時間撹拌したのち、25℃で一時間撹拌した。そ
の後同温度で11G4のグラスフィルターを用いて減圧
下吸引ろ過を行い、さらに少量のクロロホルムで得られ
た粗結晶を洗浄した。この粗結晶を40℃、減圧下の条
件で重量が一定になるまで乾燥し、結晶1.54gを得
た。このものを高速液体クロマトグラフィーで、内部標
準物質を用いる方法で分析した結果、カンタキサンチン
0.007g、アドニルビン0.007g、アスタキサ
ンチン1.53g(純度99.35%)であった。また
官報(号外第75号:平成3年6月3日 P17)によ
るアスタキサンチン純度試験(UV−VIS分光器によ
る方法)で分析を行った結果、このものの純度は99.
5%であった。
【0020】なお、ろ液15.67gには、カンタキサ
ンチン0.026g、アドニルビン0.006g、アス
タキサンチン0.183gが含まれていた。 [高速液体クロマトグラフィー分析条件] カラム:ZORBAX SIL 25cm×4mm 溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=75/25、1.5ml
/min 検出:フォトダイオードアレイ検出器 波長:280〜
300nm 内部標準物質:アセトアニリド
【0021】実施例2 窒素気流下、粗なアスタキサンチン26.2g(カンタ
キサンチン8.25g、アドニルビン0.25g、アス
タキサンチン15.73gを含有)をクロロホルム25
0gを入れて40℃で一時間撹拌したのち、21℃で一
時間撹拌した。その後17G3のグラスフィルターを用
いて減圧下吸引ろ過を行い、さらに少量のクロロホルム
で洗浄後、粗結晶として28.73gを得た。このもの
を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、カンタ
キサンチン0.554g、アドニルビン0.105g、
アスタキサンチン13.09gを含んでいた。またろ液
263gにはカンタキサンチン7.6g、アドニルビン
0.14g、アスタキサンチン2.62gが含まれてい
た。
【0022】実施例3 実施例2で得られた粗結晶28.7gにクロロホルム1
50gを入れて40℃で一時間撹拌したのち、22℃で
一時間撹拌した。その後17G3のグラスフィルターを
用いて減圧下吸引ろ過を行い、さらに少量のクロロホル
ムで洗浄後、粗結晶として22.97gを得た。このも
のを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、カン
タキサンチン0.21g、アドニルビン0.007g、
アスタキサンチン10.29gを含んでいた。またろ液
153gにはカンタキサンチン0.344g、アドニル
ビン0.098g、アスタキサンチン2.76gが含ま
れていた。
【0023】実施例4 窒素気流下、粗なアスタキサンチン311.58g(カ
ンタキサンチン1.69g、アドニルビン3.44g、
アスタキサンチン125.13gを含有)にクロロホル
ム5000gを入れて50℃で30分間撹拌した。その
後25℃まで冷却して2時間撹拌したのち、−20℃ま
で冷却して一晩放置した。このものを26G4のグラス
フィルターでろ過し、少量のクロロホルムで洗浄後、粗
結晶として195.81を得た。このものを高速液体ク
ロマトグラフィーで分析した結果、アドニルビン1.9
6g、アスタキサンチン95.81gを含んでいた。ま
たろ液1060gにはカンタキサンチン1.66g、ア
ドニルビン1.4g、アスタキサンチン29.1gが含
まれていた。
【0024】実施例5 実施例4で得られた粗結晶195.81gにクロロホル
ム2500gを用いて実施例4と同様な操作を行うこと
により、粗結晶として179.64gを得た。このもの
を減圧下で乾燥を行うことにより、アスタキサンチンの
結晶として72.5gを得た。高速液体クロマトグラフ
ィーで分析した結果、アドニルビン0.5g、アスタキ
サンチン71.85g(純度99.1%)であった。ま
た官報(号外第75号:平成3年6月3日 P17)に
よるアスタキサンチン純度試験(UV−VIS分光器に
よる方法)で分析を行った結果、このものの純度は9
9.0%であった。
【0025】なお、ろ液2520gにはアドニルビン
1.5g、アスタキサンチン22.1gが含まれてい
た。
【0026】比較例1 塩化メチレンによる晶析 窒素気流下、粗なアスタキサンチン3.08g(カンタ
キサンチン0.2g、アドニルビン0.05g、アスタ
キサンチン2.07gを含有)に塩化メチレン84gを
入れて40℃で30分間撹拌した。その後徐々に−20
℃まで冷却して一晩放置した。このものを11G4のグ
ラスフィルターを用いて減圧下吸引ろ過を行い、さらに
少量の塩化メチレンで得られた粗結晶を洗浄した。粗結
晶を減圧下重量が一定になるまで乾燥を行い、結晶1.
86gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー
で分析した結果、カンタキサンチン0.147g、アド
ニルビン0.03g、アスタキサンチン1.68g(純
度90.32%)であった。またろ液79gには、カン
タキサンチン0.05g、アドニルビン0.02g、ア
スタキサンチン0.39gが含まれていた。
【0027】比較例2 トルエンによる晶析 窒素気流下、粗なアスタキサンチン3.0g(カンタキ
サンチン0.04g、アドニルビン0.014g、アス
タキサンチン1.72gを含有)にトルエン15gを入
れて25℃で3時間撹拌した。その後11G3のグラス
フィルターを用いて吸引ろ過を行い、さらに少量のトル
エンで洗浄し、粗結晶として1.49gを得た。このも
のを高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、カン
タキサンチン0.038g、アドニルビン0.013
g、アスタキサンチン1.62gを含んでいた。またろ
液18.5gにはカンタキサンチン0.001g、アド
ニルビン0.001g、アスタキサンチン0.005g
が含まれていた。
【0028】参考例 カンタキサンチンから2−フェニルスルホニル−3−フ
ェニルオキサジリジンを酸化剤として用いるアスタキサ
ンチンの合成 窒素雰囲気下、ステンレス製円筒型101の反応容器
に、カンタキサンチン26.2g(97%純度:45m
mol)のテトラヒドロフラン1350ml溶液を入れ
た。ここに−18℃でナトリウム ビストリメチルシリ
ルアミドのテトラヒドロフラン溶液93.5g(1.0
7mol/kg濃度:100mmol)を滴下し、同温
度で2時間撹拌した。その後、−70℃まで冷却し、2
−(フェニルスルホニル)−3−フェニルオキサジリジ
ン28.0g(98%純度:105mmol)のテトラ
ヒドロフラン270ml溶液をゆっくり滴下した。同温
度で2時間撹拌した後、酢酸6.0g(100mmo
l)のテトラヒドロフラン30ml溶液を滴下して10
分間撹拌した。反応液を室温まで昇温したのち、減圧下
溶媒を除去した。得られた固形物にメタノール1200
mlを加えてしばらく撹拌後ろ過することにより、粗ア
スタキサンチン53.84gを得た。このものを高速液
体クロマトグラフィーで分析した結果、カンタキサンチ
ン2.54g、アドニルビン0.29g、アスタキサン
チン21.49g(カンタキサンチンからの収率80
%)を含んでいた。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、クロロホルムを溶媒と
して用いてアスタキサンチンを晶析するという簡単な精
製操作により、極めて高純度のアスタキサンチンを取得
することができ、さらに溶媒であるクロロホルムの回収
も容易である。
フロントページの続き (72)発明者 福本 隆司 新潟県北蒲原郡中条町倉敷町2番28号 株 式会社クラレ内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アスタキサンチンを含有するクロロホル
    ムの溶液からアスタキサンチンを晶析することを特徴と
    するアスタキサンチンの精製法。
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