JPH07116626B2 - 腐食防止膜及びその形成方法 - Google Patents

腐食防止膜及びその形成方法

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JPH07116626B2
JPH07116626B2 JP5006952A JP695293A JPH07116626B2 JP H07116626 B2 JPH07116626 B2 JP H07116626B2 JP 5006952 A JP5006952 A JP 5006952A JP 695293 A JP695293 A JP 695293A JP H07116626 B2 JPH07116626 B2 JP H07116626B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は腐食防止に関し、特に不
動態化せず腐食される金属の腐食を防止するCu(I)
−BTAの薄膜の形成に関する。より具体的には、磁気
ディスクや磁気記録ヘッド等に用いられるコバルトやコ
バルト合金の腐食防止に関する。
【0002】
【従来の技術】腐食は数種を除けばすべての貴金属に見
られる自発的プロセスであり、普遍的な問題である。中
でもコバルトは特に腐食しやすい。コバルトはアルカリ
溶液中では非本質的な保護不動層を形成するが、それで
もDI水(脱イオン水)中では0.2μm/日の速度で
腐食が起こり不動態化の形跡はない。またコバルトは腐
食される金属であり他のより腐食しにくい金属と接触す
ると異種金属接触腐食をかなり起こしやすくなる。コバ
ルトとその合金は優れた磁性を有するために磁気用途で
は広く用いられている。たとえば薄膜磁気ディスクと薄
膜磁気記録ヘッドはコバルト合金から製造できる。この
ような製品は製造時にも使用時にも腐食損失に特に弱
い。
【0003】不動態化(パシベーション)については様
々な手法が知られているが、コバルトの腐食速度を大幅
に低下させるうえで効果のある手法はきわめて少ない。
これについて考慮すべき点は、腐食防止の方法は物質の
磁性に何の悪影響も与えてはならないということであ
る。たとえば、腐食される金属をクロム等の元素で合金
化する方法、熱酸化法、変換層の適用等はすべて腐食さ
れる金属を不動態化するうえで可能な方法である。しか
し、これらには望ましくない制限がある。また、腐食防
止剤を使用することで、コバルトやその合金が処理液と
接する製造段階で不要な金属溶解を制御することも可能
である。ただし、多くの腐食防止剤がその場のコバルト
の加工品を一定限度で保護できるだけであり、腐食防止
剤のある環境からコバルトの加工品を取除いてしまうと
保護機能は低下する。
【0004】たとえば銅はコバルトよりも腐食しにくい
が、同じく非本質的な表面不動態化物である酸化物を持
つ。銅は工学的物質として有用であるが、これは概して
ベンゾトリアゾル(1H−BTA)とその誘導体による
極めて効果的な腐食防止性のためである。1H−BTA
化合物は金属Cu面と反応してCu−BTA膜を形成す
る。調整の条件にもよるが、この膜の厚みを2nm程度
に薄くすることができる。このような薄い膜でさえ効果
的な腐食防止性を示す。薄膜は一度形成されれば、(腐
食防止剤の添加とは無関係に)水中の銅の腐食速度を2
けた以上低下させる。
【0005】これと同じように効果的な腐食防止剤はコ
バルト加工品と併用するものでは知られていない。ベン
ゾトリアゾルは水溶液中でコバルトの表面に化学吸着
し、腐食速度を1桁程度低減させる。しかしその後コバ
ルト加工品を1H−BTAを含まない溶液に浸すと、あ
らかじめ1H−BTAに晒していないコバルト加工品に
比べて腐食速度が3分の1乃至5分の1程度減少するに
すぎない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡単
な化学処理により不動態化せず腐食される金属上に腐食
防止膜を形成する方法を提供することである。
【0007】本発明の目的は、不動態化せず腐食される
金属上にCu(I)−BTAを含む腐食防止膜を形成す
る方法を提供することである。
【0008】本発明の目的は、不動態化せず腐食される
金属上に腐食防止膜を形成するための溶液であり、Cu
2+イオン、1H−BTA、及び溶液のpHを制御するた
めのホウ酸塩緩衝剤を含むものを提供することである。
【0009】本発明の目的は、Cu(I)−BTAを含
む腐食防止薄膜で被覆された不動態化せず腐食される金
属加工品を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の制限を克服し腐食
防止効果を大きく改善するために、コバルトを含む加工
品上にCu−BTAを含む薄膜が形成される。
【0011】銅を含む加工品上のCu−BTAの薄膜に
よって得られる保護機能は、当業者にはよく知られてい
るが、本発明に関わるのは、第2銅イオン・ベンゾトリ
アゾルとその誘電体を含む処理浴を使用して、銅を含ま
ず、不動態化せず、腐食される加工品上にそのようなC
u(I)−BTA膜を形成することである。符号Cu
(I)はベンゾトリアゾルと化合する銅が+1の酸化状
態にあることを示す。ベンゾトリアゾルとその誘電体
は、1H−BTA、5CH3 −BTA及び5Cl−BT
Aよりなる群から選択される。
【0012】この保護膜は本発明に従って、Cu2+イオ
ンとベンゾトリアゾル(1H−BTA)を含む溶液にコ
バルト加工品を晒すことによって形成される。Cu2+
Coの自発的相互作用により、Co表面にCu(I)B
TAが形成されコバルトの永久腐食防止膜が得られる。
Cu2+は銅塩(好ましくは、硫酸銅)の希薄溶液から得
られる。本発明はコバルト、コバルト合金の他、アルミ
ニウム、マグネシウム、鉄、マンガン、タングステン、
亜鉛、及びそれらの合金に対しても適用できる。
【0013】上記に代わる方法では、ホウ酸ナトリウム
などのホウ酸塩と、ホウ酸との溶液であるホウ酸塩緩衝
剤をCu2+イオンと1H−BTAの水溶液に添加し、p
Hを8−9の範囲に調整する。ホウ酸塩緩衝剤をBTA
+Cu2++H2O の溶液に添加することで、加工品表面
にCu(I)−BTAの保護膜を形成しつつ、第2銅イ
オンと1H−BTAの溶液における処理中の加工品の腐
食速度を低下させることができる。
【0014】
【実施例】本発明は簡単な化学処理により、不動態化せ
ず腐食される金属上に腐食防止膜を形成することに関す
る。保護膜はCu(I)−BTA錯体を含む。
【0015】本発明は2成分(好適には3成分)のシス
テムに関わる。具体的には、通常は1H−BTAのみに
より非本質的に保護されるコバルト、鉄等の金属上に本
質的保護膜を形成するためにCu2+イオンとベンゾトリ
アゾル(1H−BTA)の希薄溶液(ホウ酸塩緩衝剤を
含むものが望ましい)が用いられる。コバルト等の金属
を、Cu2+イオンと1H−BTAを含む溶液に晒すこと
によって、Cu2+と金属の自発的相互作用により金属表
面にCu(I)BTAの膜が作られ、金属の永久腐食防
止機能が得られる。
【0016】以下の例はCu(I)−BTAを含む腐食
防止膜をコバルトまたはコバルト合金の加工品上に形成
するための浴溶液を示す。
【0017】コバルトまたはコバルト合金の加工品は、
0.01Mの1H−BTAと低濃度の第2銅イオンを含
む水溶液(または蒸留水もしくは脱イオン水)に晒され
る。該望ましい水溶液は1×10-5M乃至6×10-5
の範囲のCuSO45H2Oである。
【0018】水中のCoの開路電位は通常、Cu酸化の
可逆電位より低い約400mVである。そのため第2銅
イオンはCo表面で還元する傾向を示す。還元速度は希
薄溶液で限定される拡散の程度である。
【0019】非錯化溶液中におけるCu++の最初の還元
ステップはCu+ の形成である。次のステップではCu
+ から金属Cuが形成される。これはCuの電着メカニ
ズムの1つである。
【0020】本発明の第2ステップは、溶液にしたがっ
てCo表面にBTA- があるために妨げられる。BTA
はCu+ イオンと素早く反応しCu(I)−BTAの薄
膜が加工品表面に形成される。第2銅イオンの還元速度
がCoの溶解を制御する酸素の還元速度をかなり下回る
ように、Cuイオン濃度は低く保つことが大切である。
Cu(I)−BTAの膜厚はその場の偏光解析法で評価
される際には、CuSO4 濃度、溶液のpH、攪拌速
度、及び浸漬時間に依存する。たとえばベンゾトリアゾ
ルと6×10-5MのCuSO4を含む水溶液がO2気泡で
攪拌されると膜厚は放物線状に増加し、10分間では約
12nmの厚みになる。
【0021】電気化学データによると上記の方法で形成
された膜は、ベンゾトリアゾルを含む溶液中でも、その
後ベンゾトリアゾルのない溶液に晒されている時でもコ
バルト加工品の保護膜となる。水中の腐食速度は以下に
示すように元の値の4%にまで下がる。
【0022】
【表1】 3重蒸留水の点滴で測定した腐食電位(V、MSE)と腐食速度(A/cm2 ) の関係 サンプル 腐食電圧(V、MSE) 腐食速度(A/cm2) Co −0.66 1×10-6 Cu(I)−BTA被覆のCo −0.82 4×10-8
【0023】Cu(I)−BTA膜を有するコバルト加
工品の腐食電位が、膜を持たないCoサンプルで測定さ
れた腐食電位よりも低いという事実は、膜に金属Cuが
ないことと、膜が酸素の還元に対して天然酸化物の場合
よりも強い障壁になっていることを示す。
【0024】上述のシステムの変形では、ホウ酸ナトリ
ウムなどのホウ酸塩とホウ酸とのホウ酸塩緩衝剤を処理
液に添加してpHが8乃至9の範囲とした場合には、処
理中のコバルトの腐食速度はさらに著しく低下する。
【0025】1H−BTAとホウ酸塩緩衝剤の水溶液で
コバルト加工品を処理しても、加工品を溶液から取出せ
ば腐食防止機能は得られない。コバルト加工品をCuS
4+1H−BTAの水溶液で処理すれば保護機能が持
続するが、処理中の加工品の腐食速度は小型磁性素子の
処理等、特定の分野では極めて速くなり得る。コバルト
加工品をCuSO4 +1H−BTA+ホウ酸塩緩衝剤の
水溶液で処理した場合は、永続的な保護膜が形成され、
処理中の加工品の腐食速度は非常に低くなる。
【0026】実験では0.09Mのホウ酸と0.005
Mのホウ酸ナトリウムがCu2++1H−BTAの水溶液
に添加され、pH8.2の溶液が得られた。ホウ酸/ホ
ウ酸塩緩衝剤等のアルカリ溶液でpH8.2あるいは希
アンモニアでpH8.8乃至9にあれば、1H−BTA
だけでコバルトに対する効果的な腐食防止剤となる。ホ
ウ酸/ホウ酸塩溶液だけではコバルトに対して有用な腐
食防止剤とはならない。しかし1H−BTAがあればホ
ウ酸/ホウ酸塩緩衝剤が腐食防止プロセスに有用と認め
られた。
【0027】ベンゾトリアゾルを含む10-5MのCuS
4 水溶液中でコバルト加工品を使用して行なった測定
では、いずれもCo腐食速度が1分間で2倍低下し、5
分間では10倍低下したことがわかった。ただし、10
-5MのCuSO4 及びホウ酸/ホウ酸塩とのアルカリ溶
液からの10-2MのBTAを含む浴ではCoの溶解が実
際上、即座に約100分の1に減少した。新たに形成さ
れた保護膜CuBTAは非常に薄く、10分間で3.2
nmの厚みになった。
【0028】膜は一度形成されると、ベンゾトリアゾル
の処理だけで観測される場合よりも良好な永久保護機能
を示す。
【0029】CuSO4 、1H−BTA及びホウ酸塩緩
衝剤の溶液はCo消費量が極めて少なく、そのため、よ
り高い濃度のCuSO4 (10-3M等)は最大10nm
までの厚みのあるCuBTA膜を得て、永久腐食防止機
能を最高2倍にまで高めるのに使用できる。
【0030】上記の内容は主にコバルトとコバルト合金
の加工品を対象にしているが、本発明は、開路電位が銅
よりも低い他の金属や合金にも適用できる。このような
金属としてアルミニウム、マグネシウム、鉄、マンガ
ン、タングステン、亜鉛、それらの合金等がある。また
本発明は5CH3 −BTA、5Cl−BTA等、ベンゾ
トリアゾルの他の誘導体にも有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G11B 5/84 B 7303−5D (72)発明者 ジェラルド・サイモン・フランケル アメリカ合衆国10562、ニューヨーク州オ シニング、アンダーヒル・ロード 72 (72)発明者 ティナ・アレクサンドリア・ピーターソン アメリカ合衆国10546、ニューヨーク州ミ ルウッド、ピー・オー・ボックス 353 (72)発明者 ベンジャミン・マーク・ラッシュ アメリカ合衆国94705、カリフォルニア州 バークレイ、ローブル・ロード 75 (72)発明者 アレジャンドロ・ジィ・シャーロット アメリカ合衆国10011、ニューヨーク州ニ ューヨーク、アパートメント 9−ビィ、 ウエスト12ストリート 175 (56)参考文献 特開 昭51−150538(JP,A) 特開 昭57−116778(JP,A) 特開 昭64−42587(JP,A) 特開 昭55−165966(JP,A) 特開 昭59−13080(JP,A)

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属上に腐食防止膜を形成する水溶液であ
    って、Cu2+イオン、及びベンゾトリアゾルまたはその
    誘導体を含む水溶液。
  2. 【請求項2】上記水溶液のpHを調整するためのホウ酸
    塩緩衝剤を含む請求項1記載の水溶液。
  3. 【請求項3】0.01Mの1H−BTAと濃度が1×1
    -5乃至6×10-5Mの範囲のCuSO4・5H2Oを含
    む請求項2記載の水溶液。
  4. 【請求項4】上記ベンゾトリアゾル誘導体が5CH3
    BTA、及び5Cl−BTAより成るグループから選択
    される請求項1記載の水溶液。
  5. 【請求項5】金属上に腐食防止膜を形成する方法であっ
    て、Cu2+イオン、及びベンゾトリアゾルまたはその誘
    導体を含む溶液を用意し、上記溶液に上記金属を晒して
    上記金属上にCu(I)−BTAの薄膜を形成するステ
    ップを含む方法。
  6. 【請求項6】上記金属がコバルト、アルミニウム、マグ
    ネシウム、鉄、マンガン、タングステン、亜鉛、及びそ
    れらの合金より成るグループから選択される請求項5記
    載の方法。
  7. 【請求項7】上記溶液がさらにホウ酸塩緩衝剤を含む請
    求項5記載の方法。
  8. 【請求項8】上記Cu2+イオンが硫酸銅から得られる請
    求項5記載の方法。
  9. 【請求項9】磁気記録ヘッド又は磁気ディスクの腐食防
    止方法であって、 Cu2+イオン、及びベンゾトリアゾ
    ルまたはその誘導体を含む水溶液に上記ヘッド又は磁気
    ディスクを晒して上記ヘッド又は磁気ディスク上にCu
    (I)−BTAの薄膜を形成するステップを含む方法。
JP5006952A 1992-03-12 1993-01-19 腐食防止膜及びその形成方法 Expired - Lifetime JPH07116626B2 (ja)

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