JPH069062Y2 - プレストレストコンクリート杭 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、中掘り工法によって沈設する杭の外周と掘削
穴との空隙部に、杭体のコンクリート部に埋設した流体
注入導管を介して、杭の先端部から噴射せしめた注入材
で充填するのに最適なプレストレストコンクリート杭に
関する。

〔従来の技術〕 従来、無振動、無騒音により基礎杭の施工方法として中
掘工法が採用されており、殊に中掘りしながら杭を地盤
中に沈める時に、杭の垂直方向の支持力を大きくするた
め、第１図に示すように、杭１の先端に拡大部Ｒを形成
した下杭１Ａを用いる方法がある。

しかして、下杭１Ａの拡大部Ｒの通過により、その上方
の杭周と掘削穴との間に空隙部が生じる為、杭の外側に
その長手方向に沿って配設した流体注入導管（図しせ
ず）や、杭のコンクリート部２に埋設した流体注入導管
３を介して、上杭１Ｂの注入口３Ａから注入したグラウ
ト材を下杭１Ａの先端部に設けた噴射リング４から噴射
せしめ、このグラウト材により空隙部を充填し、杭周に
おける摩擦支持力の増強を図っている。

ここで、この種杭１としては、通常プレストレスを導入
したいわゆるプレストレストコンクリート杭を使用する
が、その製造時には軸筋であるＰＣ鋼棒５と同様に、コ
ンクリート部２に埋設した流体注入導管３にも所定の緊
張力および収縮力が加えられる。したがって、この流体
注入導管３に何らかの処置を施さないと、プレストレス
トコンクリート杭１の伸縮、すなわち、杭の製造時にお
けるＰＣ鋼棒５の伸張と、コンクリート部２の硬化後の
ＰＣ鋼棒５のテンション解放によって端板６，６を介し
て与えられるコンクリート部２の収縮に流体注入導管３
が追随できずに変形し、或いはコンクリート部２と剥離
したりする。

このような従来の欠点を解消するため、外周面に螺旋状
凸部を有する流体注入導管を配設して、特にＰＣ鋼部伸
張時に追随できるよりにしたプレストレストコンクリー
ト杭（実公昭６２−１３１２号公報）が開発されてい
る。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、前記実公昭６２−１３１２号公報のものは、流
体注入導管が変形することによって杭の伸縮に追随する
構成であるため、該流体注入導管とコンクリート部との
剥離現象が発生することは避けられないとゝもに、流体
注入導管にはＰＣ鋼棒と同等の伸縮力を有する材質およ
び肉厚のものが要求されるといった問題点がある。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、上記のような従来の諸問題点を解決するため
に成されたもので、杭の長手方向の伸縮に応じて、その
コンクリート部内に配設した流体注入導管をスライド自
在となるように構成したものを提供することを目的とし
たものであり、その要旨は、杭体のコンクリート部に流
体注入導管を埋設するとゝもに、端板に形成したＰＣ鋼
棒の膨大部係止用の小径孔と連通する膨大部挿入用の大
径孔部にパイプを固定し、該パイプに前記流体注入導管
の少なくとも一端部を摺動可能となるよう嵌合により連
結したことを特徴とするプレストレストコンクリート杭
にある。

〔実施例〕

以下、本考案を第１図乃至第３図に示す実施例により説
明するが、従来と同一構成部材は、同一符号を付して説
明を省略し、本考案の特徴のみを詳述する。

図面において、７はプレストレストコンクリート杭１の
端板６に同心円上において所定間隔毎に形成した複数個
の貫通孔で、該貫通孔７は、ＰＣ鋼棒５の両端部に形成
した膨大部５ａが挿入自在で、且つ前記ＰＣ鋼棒５を伸
張する時に使用するボルトを螺合するための雌ネジ８ａ
を刻設した大径孔８と、前記ＰＣ鋼棒５の前記膨大部５
ａが係止される小径孔９とを連通した鍵穴形状をしてお
り、各貫通孔７は小径孔９を同一方向に向けて配列され
ている。

１０は端板６の前記大径孔８の上面に形成した皿溝で、
１１はこの皿溝１０内に嵌合したリング状パッキングで
ある。１２はコンクリート部２内に埋設された短長なパ
イプで、下杭１Ａの上端及び上杭１Ｂの上下両端部に夫
々ナット１３を介して端板６の前記大径孔８の部分に溶
接により固定されており、大径孔８とナット１３の雌ネ
ジ穴とパイプ１２とは連通状態となっている。

３はプレストレストコンクリート杭１Ａ，１Ｂのコンク
リート部２内に埋設された流体注入導管で、下杭１Ａの
上端部及び上杭１Ｂの上下両端部においては、前記パイ
プ１２内に摺動自在に挿入されており、下杭１Ａの下端
部においては、前記拡大部Ｒの上位位置において、外周
面に固定された噴射リング４に連結されている。なお、
図中４ａは噴射リング４に所定間隔毎に穿設した上向き
の噴射口である。

１４は上記大径孔８に挿入したガイドピンで、前記流体
注入導管３を配設した部分を除く所望位置に挿入固定し
てあり、円錐状に形成したその上端部１４ａは端板６の
上面より突出している。なお、図中１５は上杭１Ｂの端
板６に固定した杭頭架台、１６は該杭頭架台１５を端板
６の大径穴８の雌ネジ８ａに螺合したボルトである。

そこで、プレストレストコンクリート杭１を製造する際
には、先ず、ＰＣ鋼棒５および図示しない鉄筋篭を組み
立て、端板６の大径孔８内にＰＣ鋼材５の両端膨大部５
ａを挿入した後、該端板６を小径孔９方向に回動する
と、ＰＣ鋼材５の膨大部５ａは小径孔９に移行して係止
される。

次に、端板６の大径部８の雌ネジ８ａにボルトを螺合し
て座板を固定し、該座板をジャッキ等で所定の力で引っ
張ってＰＣ鋼棒５に所定の緊張荷重を付与する。

而して、ＰＣ鋼棒５は伸張し、流体注入導管３ももまた
引っ張り方向の力を受けるが、該流体注入導管３の少な
くともその一端は、前記パイプ１２内に摺動自在に挿入
されて嵌合しているため、該嵌合部において流体注入導
管３はＰＣ鋼棒５の伸張量と同じ量だけスライドして伸
張する。

そして、コンクリートの充填、遠心成型及び養生の各工
程を経た後、脱型してＰＣ鋼材５の前記テンションを解
放して杭にプレストレストを付与するが、この際にＰＣ
鋼材５が縮小することにより端板６を介してコンクリー
ト部２に圧縮力が作用し、コンクリート部２にプレスト
レストが付与されて縮小する。

而して、流体注入導管３もまた縮小方向の力を受ける
が、流体注入導管３の少なくとも一端は前記パイプ１２
と摺動自在に嵌合しているので、流体注入導管３はこの
嵌合部においてＰＣ鋼棒５の縮小量と同じ量だけスライ
ドして縮小する。

〔考案の効果〕

本考案に係るプレストレスコンクリート杭は、上記のよ
うに、杭体のコンクリート部に流体注入導管を埋設する
とゝもに、端板に形成したＰＣ鋼棒の膨大部係止用の小
径孔と連通する膨大部挿入用の大径孔部にパイプを固定
し、該パイプに前記流体注入導管の少なくとも一端部を
摺動可能となるよう嵌合により連結した構成であるか
ら、流体注入導管に加えられる杭の製造時に於ける引っ
張力及び杭の脱型時に於ける収縮力は、パイプとの嵌合
部における摺動により吸収され、杭の伸縮に追随する。
従って、流体注入導管が変形することがないため、どの
ような材質でも使用できるとゝもに、従来の端板をその
まま使用することができるため、廉価に提供することが
できる。また、流体注入導管とコンクリート部との剥離
現象も発生しないため、構造強度の劣化もない、といっ
た諸効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るプレストレストコンクリート杭の
使用状態を示す一部省略縦断面図、第２図は同要部の拡
大断面図、第３図は杭の平面図である。 １……プレストレストコンクリート杭、１Ａ……下杭、
１Ｂ……上杭、２……コンクリート部、３……流体注入
導管、５……ＰＣ鋼棒、６……端板、７……貫通孔、８
……大径孔、９……小径孔、１２……パイプ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】杭体のコンクリート部に流体注入導管を埋
   設するとゝもに、端板に形成したＰＣ鋼棒の膨大部係止
   用の小径孔と連通する膨大部挿入用の大径孔部にパイプ
   を固定し、該パイプに前記流体注入導管の少なくとも一
   端部を摺動可能となるよう嵌合により連結したことを特
   徴とするプレストレストコンクリート杭。