JPH0687143A - 射出成形方法及び射出成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 汎用の射出成形装置を無改造のまま使用出
来、肉厚が不均等な成形品でも、金型構造を複雑化せず
に、ヒケ、ボイド、形状歪等の発生を防げる、射出成形
方法及び射出成形用金型を提供する。 【構成】 成形キャビティＳの成形面に向けて開口する
シリンダー状刳抜孔１１を金型に設けると共に、このシ
リンダー状刳抜孔内には、押圧手段１８により成形キャ
ビティに向けて前進付勢されるピストン状部材１６を収
めて置き、成形キャビティに高圧で射入した溶融樹脂
が、押圧手段の付勢力に抗してピストン状部材を所定距
離後退させて、シリンダー状刳抜孔内に所定量の溶融樹
脂が押し込まれ、成形キャビティ内の溶融樹脂の冷却収
縮に伴って、押し込まれた溶融樹脂が、押圧手段により
成形キャビティ内に押し戻されて、収縮容積分を埋め合
わせ、成形品にヒケ、ボイド、形状歪、内部応力歪等が
発生し難くなる様にした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、肉厚がかなり厚い成形
品や、肉厚が各部分毎にかなり相異する成形品でも、ヒ
ケ（表面に生ずる局部的な凹み）、ボイド（空洞）、形
状歪み、内部応力歪み等を生じ難くする為の対策とし
て、成形キャビティの成形面の一部に、過剰に射入した
樹脂を一時的に収容する容積可変のシリンダー状刳抜孔
を設け、射入樹脂の冷却収縮に伴ってこの収縮分を補う
べく、過剰樹脂を成形キャビティ内に押し戻す様にした
射出成形方法及びこの方法に用いる射出成形用金型に関
する。

【０００２】

【従来の技術】合成樹脂の射出成形品に上記の様なヒケ
が生ずる理由は、成形キャビティ内に完全に充填した溶
融樹脂が冷却に伴って収縮するからである。又、肉厚が
一様でない成形品等では、冷却収縮の速さが各部位毎に
相異する為に、形状歪みや内部応力歪みが生じ易くな
る。又、肉厚が厚いと、溶融樹脂は成形キャビティに接
する表面部が内心部より速く固化するので、最後に固化
する内心部には溶融樹脂の冷却収縮容積に相当する空洞
が生ずる。この様な不都合が起こるのを防ぐ為に、従来
から様々の対策が採られて来た。例えば、 ａ） 金型に、その温度分布を制御する加熱（冷却）手
段を組付ける。 ｂ） 樹脂の注入ゲートを広くして、成形キャビティ内
に射入圧が及ぶ時間を長引かせる。 ｃ） 樹脂の射入時には、成形キャビティの容積を、樹
脂の冷却収縮分を見込んで幾分広げ、冷却収縮に伴って
所定の容積に迄縮める二段型締機構を設ける。 ｄ） 成形キャビティの全体を、ピストンとシリンダー
とを組合わせた如き容積可変の構造にして置き、樹脂の
冷却収縮に合わせてピストン部分を押出して、成形キャ
ビティ全体の容積を縮小させる。 等がそれである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、型温を制御
する方法によると、形状歪みや内部応力歪みの発生はか
なり回避出来るものの、樹脂の冷却収縮によるヒケの発
生を防ぐことは出来ず、その上、金型が著しく高価にな
るばかりか、成形品の形状によっては加熱・冷却配管等
の埋設が困難になる。又、ゲートを広くする方法では、
内部応力歪みの発生を無くすことが出来ず、、又、ゲー
トを広げるにも自ずから限度があるので、全ての成形品
に有効とは言えない。そして、ゲートの切除の手間や、
材料ロスの点で不利になる。二段型締機構を設ける方
法、及び成形キャビティ全体の容積を可変にする方法
は、成形装置全体の構成が複雑になると共に熟練した成
形技術を要し、製品の大幅コストアップを招く。そし
て、上記の様な対策を講じても形状歪みや内部応力歪み
を避けられない場合には、結局、製品の肉厚を極力均等
にせざるを得ず、その形状設計の自由度が著しく狭めら
れてしまう。そこで、本発明の目的は、肉厚が厚かった
り、厚さの不均等な成形品でも、ヒケ、ボイド、形状歪
み、内部応力歪み等を殆ど生ぜずに成形出来、然も、汎
用射出成形機を、改造や付帯設備を設けずにそのまま使
うことが出来て、型締機構や金型構造を著しく複雑化さ
せなくて済むと共に、製品の形状設計の自由度を高めら
れる様にした、射出成形方法及び射出成形用金型を提供
するにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する為
の本発明による射出成形方法は、成形キャビティＳの成
形面に向けて開口するシリンダー状刳抜孔１１を金型に
設けると共に、該シリンダー状刳抜孔１１内には、押圧
手段１８により前記成形キャビティＳに向けて前進付勢
されるピストン状部材１６を収めて置き、前記成形キャ
ビティＳに高圧で射入した溶融樹脂が、前記押圧手段１
８の付勢力に抗して前記ピストン状部材１６を所定距離
後退させて、前記シリンダー状刳抜１１孔内に所定量の
溶融樹脂が押し込まれ、前記成形キャビティＳ内の溶融
樹脂の冷却収縮に伴って、前記押し込まれた溶融樹脂
が、前記押圧手段１８により前記成形キャビティＳ内に
押し戻されて、前記収縮容積分を埋め合わせ、成形品に
ヒケ、ボイド、形状歪、内部応力歪等が発生し難くなる
様にした。又、上記の目的を達成する為の本発明による
射出成形用金型は、成形キャビティＳの成形面に向けて
開口するシリンダー状刳抜孔１１（３１，４１，５１，
６１）と、該シリンダー状刳抜孔１１に挿嵌されたピス
トン状部材１６（３０，４０，５０，６０）と、該ピス
トン状部材１６を前記成形キャビティＳに向けて前進付
勢する押圧手段１８と、前記ピストン状部材１６の前後
移動の限界位置を決める移動位置決手段１４，１５とを
備え、前記ピストン状部材１６は、溶融樹脂の射入圧に
より前記押圧手段１８の付勢力に抗して所定距離後退
し、前記成形キャビティＳ内の射入樹脂の冷却収縮に伴
って所定距離前進する様に構成した。前記押圧手段１８
としては、ばね等を用いるとよい。

【０００５】

【作用】高圧で成形キャビティＳに射入充満した溶融樹
脂は、この成形キャビテイＳの成形面に開口するシリン
ダー状刳抜孔１１内に挿嵌したピストン状部材１６の先
端を、押圧手段１８の付勢力に抗して押圧し、所定距離
後退させる。その為、シリンダー状刳抜孔１１内にも所
定量の溶融樹脂が押し込まれる。そして、樹脂の射入圧
が途絶え、成形キャビティＳ内の溶融樹脂が冷却収縮し
始めると、押圧手段１８がピストン状部材１６を所定距
離だけ前進させ、シリンダー状刳抜孔１１内の溶融樹脂
を成形キャビティＳ内に押し戻し、成形キャビティＳ内
の樹脂の収縮容積分を埋め合わせる。これによって、成
形品には、ヒケ、ボイド、或は形状歪みや内部応力歪み
等の成形不良が殆ど生じなくなる。

【０００６】

【実施例】以下に、図１乃至図５を参照し乍ら本発明の
第１実施例を説明する。図１に於いて、１は固定側取付
板で、図示を省いた射出成形機本体の前端部に固定され
ており、その中央部には、射出成形機の樹脂射出口を当
接させるスプルーブッシュ２を設けている。固定側取付
板１の前（図の右側）面には、固定側金型３を組付けて
いる。２ａはスプルー孔である。４は可動側取付板で、
固定側取付板１に向けて前後動可能に対置されており、
その対向面には可動側金型５をスペーサーブロック６及
び取付基盤７を介して組付けている。可動側取付板４
は、図示を省いた付設の型締機構によって前後動し、固
定側金型３と可動側金型５とに二分割された金型の開閉
及び型締めを行う。８及び９はこの前後動をガイドする
ガイド部材である。

【０００７】この場合の成形品Ａは、図示の様に方形の
カバー体状をしており、裏面側の１箇所に円柱状突起部
ａを設けている。その成形キャビティＳを形成させる為
に、固定側金型３の型合わせ面には、成形キャビティＳ
の表側面を形成させる凹部を設けている。一方、可動側
金型５には、成形キャビティＳの裏側面を形成させる入
子１０を組み込む為の、組込用孔５ａを設けている。入
子１０には、溶融樹脂の射入時に成形キャビティＳ内の
空気を排出するガス抜孔１１と、成形品Ａを押し出すエ
ジェクタピン１２を挿通させるピン孔１３を設けてい
る。

【０００８】図２に示した様に、ガス抜孔１１は円柱状
突起部ａを形成させる付属キャビティの先端（図の右
端）から伸びて入子１０の裏面側に貫通している。この
ガス抜孔１１の後端部分は拡径させて拡径部１４として
いる。そして、ガス抜孔１１の全長のうちこの拡径部１
４を除いた部分が、本発明に言うシリンダー状刳抜孔１
１を構成している。拡径部１４の開放後端は取付基盤７
によって封鎖されている。拡径部１４内には、ピストン
１５が遊嵌されており、このピストン材１５の前端には
ガス抜きピン１６を突設し、このガス抜ピン１６をシリ
ンダー状刳抜孔１１に遊嵌させている。このガス抜ピン
１６の先端面は、円柱状突起部ａの先端面と一致させて
いる。この実施例では、ガス抜ピン１６を、本発明に言
うピストン状部材と呼ぶことにする。ピストン状部材１
６の衝程は、この場合約１ｍｍに設定している。そし
て、拡径部１４内の前後の端面が、ピストン状部材１６
の後端に一体に設けたピストン１５の前後動を規制する
働きをして、この拡径部１４が、本発明に言う移動位置
決手段となる。

【０００９】取付基盤７の前面側には、拡径部１４と対
向する位置に、拡径部１４より小径で所定深さの円筒状
凹部１７を設けている。この円筒状凹部１７内には、ば
ね、この場合はコイルばね１８を収めている。コイルば
ね１８は、シリンダー状刳抜孔１１に遊嵌されているピ
ストン状部材１６を、成形キャビティＳに向けて前進付
勢する押圧手段となるもので、常時、その前端（図では
左端）をピストン１５の後面に、そして後端を円柱状凹
部１７の奧端に夫々圧接されている。コイルばね１８の
ばね力は、成形キャビティＳへの溶融樹脂の射入圧によ
り圧縮されて、ピストン状部材１６（及びピストン１
５）を所定距離後退させ、この射入圧が途絶えると、ピ
ストン状部材１６（及びピストン１５）を押し戻して前
進位置に復帰させ得る強さに設定している。例えば、溶
融樹脂の射入圧が５００Ｋｇ／ｃｍ²で、この射入圧の
受圧面となるピストン状部材１６の先端面の直径が６ｍ
ｍの場合には、コイルばね１８を圧縮させてピストン状
部材１６を１ｍｍ後退させるのに、約１００Ｋｇの力を
要するコイルばね１８を用いるとよい。

【００１０】図１中の他の符号は、２１がスプルーを押
し引きする為に先端に鉤部を設けたスプルーロックピ
ン、２２は型閉時に於いて最初に固定側金型３に当たっ
てエジェクタープレートを後退させるリターンピンであ
る。２３，２４は、エジェクタピン１２，スプルーロッ
クピン２１，リターンピン２２を突設したエジェクター
プレートで、図示を省いた油圧シリンダーにより所定距
離前進動される。成形キャビティＳは、ゲート２５及び
ランナー２６を介してスプルー孔２ａに連なっている。

【００１１】次に、上記構成の作用を説明する。図１に
示した様に、固定側取付板１に固定側金型３を取着し、
可動側取付板４に可動側金型５を取着したうえ、図示を
省いた型締機構によって型締すれば、射出成形の態勢が
整う。この状態で、ピストン１５は、図２に示した様に
コイルばね１８に押されて拡径部１４内の前端面に押し
付けられており、ピストン１５に突設したピストン状部
材１６は、図中に一点鎖線ｆで示した様に、その先端面
が成形品Ａの円柱状突起部ａの先端面に一致する、前進
位置を占めている。

【００１２】ピストン状部材１６が前進位置を占めた状
態で、成形キャビティ内に溶融樹脂を高圧（例えば、５
００Ｋｇ／ｃｍ²）で射入すると、この高圧をその先端
面に受けたピストン状部材１６及びピストン１５は、コ
イルばね１８の付勢力に抗して後退し始める。そして、
図３に示した様に、ピストン１５が拡径部１４内の後端
面に当接して、この後退動は停止される。従って、射出
機から射出した溶融樹脂は、成形キャビティＳに充満し
た後、更に、図３中に符号ｄを付して示した様に、シリ
ンダー状刳抜孔１１内でのピストン状部材１６の後退容
積だけ余分に充填されることになる。

【００１３】成形キャビティＳ内への溶融樹脂の射入が
終わると間もなく、ゲート２５部分の溶融樹脂が硬化
し、樹脂射出機と成形キャビティＳとの圧力の連通が断
たれる。そして、成形キャビティＳ内の溶融樹脂が次第
に冷却して流動性を失う迄、コイルばね１８による押圧
力は、ピストン１５及びピストン状部材１６を介してこ
の成形キャビティ内Ｓの樹脂に及ぼされ続けることにな
る。その為、成形キャビティＳ内の溶融樹脂が次第に冷
却して収縮するのに追従して、ピストン状部材１６は成
形キャビティＳに向けて前進動する。この前進動は、図
４に示した如き途中経過を経て、ピストン１５が拡径部
１４内の前端面に当接されることによって停止し、図
１，２の状態に復帰する。従って、前述のピストン状部
材１６の後退容積ｄが、成形キャビティＳ内への射入樹
脂の冷却収縮容積に略等しくなる様に、ピストン状部材
１６の太さ及びその衝程（前後動距離）を、予め試行錯
誤によって設定して置けば、成形品に、ヒケ、ボイド、
或は形状歪や内部応力歪が発生する現象を略完全に解消
させることが出来る。

【００１４】成形キャビティＳ内の射入樹脂が完全に硬
化した後、エジェクターピン１２，スプルーロックピン
２１を押出して脱型すれば、従来技術とは異なって形状
に欠陥の無い成形品Ａを、図５に示した様に取り出すこ
とが出来る。

【００１５】この様に、ヒケ、ボイド、形状歪み、内部
応力歪みの発生を防ぐ役割を果す為の、シリンダー状刳
抜孔１１及びピストン状部材１６は、射出成形用金型に
は不可欠なガス抜孔１１及びガス抜きピン１６をそのま
ま借用しているので、その分、金型の構造の複雑化を避
けることが出来る。そして、成形品の表面に余分なピン
マーク等が付かなくて済む。

【００１６】図６は、本発明の第２実施例を示してい
る。この実施例の成形品Ａの裏面側には、円柱状突起部
ａの他に、これより容積の大きい中空円柱状突起部ｂを
設けてある。そこで、この円柱状突起部ｂに先端に宛て
がう様に配設したセンターピン３０、及びこのセンター
ピン３０を挿通させるエジェクタースリーブ３１を、夫
々本発明に言うピストン状部材及びシリンダー状刳抜孔
として活用している。この中空状のエジェクタースリー
ブ３１は、エジェクターピンとしての役割を果すもので
ある。更に、センターピン３０の先端側部分は、中空円
柱状突起部ｂを形成させる入子としても流用している。
シリンダー状刳抜孔（エジェクタースリーブ）３１の基
端はエジェクタープレート２３に固定し、先端側は取付
基盤７及び入子１０の後部を貫通して、その先端面を中
空円柱状突起部ｂの先端面に一致させている。

【００１７】ピストン状部材（センターピン）３０の基
端側はシリンダー状刳抜孔３１の後方に延長させて、そ
の基端にピストン１５を固着している。このピストン１
５は、固定側取付板４の裏面側に設けた所定深さのシリ
ンダー状孔３２内に遊嵌せている。シリンダー状孔３２
の解放後端は栓体３３を螺じ込んで封止している。この
シリンダ状孔３２は、第１実施例の拡径部１４（移動位
置決手段）に対応するものである。ピストン１５と栓体
３３との間にはコイルばね１８を嵌め込んでいる。この
コイルばね１８がピストン状部材３０を押圧する付勢力
は、栓体３３の螺込の度合を加減することによって任意
に調節出来る。

【００１８】この実施例の作用も第１実施例と同様で、
成形キャビティＳへの溶融樹脂の射入圧によって、ピス
トン状部材３０が、栓体３３の螺込度合に応じて所定距
離後退し、シリンダー状刳抜孔３１内に所定量の溶融樹
脂が押し込まれる。その後、成形キャビティＳ内の溶融
樹脂の冷却収縮に伴って、ピストン状部材３０はこの収
縮容積分を埋め合わせるべく、コイルばね１８に押され
て前進し、シリンダー状刳抜孔３１内に一旦押し込まれ
た溶融樹脂を成形キャビティＳ内に押し戻す。その際
に、ピストン状部材３０の先端部分は、中空円柱状突起
部ｂの内空部を成形させる入子としての役割を果す。そ
して、この実施例でも、シリンダー状刳抜孔及びピスト
ン状部材は、センターピン３０及びエジェクタースリー
ブ３１を、そのまま流用して、金型に余分の加工を施す
必要を無くしている。

【００１９】図７〜図９は、本発明の第３実施例を示し
ている。この実施例の成形品Ａにも、その裏面側に、円
柱状突起部ａと、これより容積の大きい中空円柱状突起
部ｂを設けている。そして、円柱状突起部ａに宛てがう
エジェクターピン４０、及び入子１０に設けたそのピン
孔４１を、夫々本発明にいうピストン状部材、及びシリ
ンダー状刳抜孔として活用している。又、中空円柱状突
起部ｂに宛てがうスリーブ状のエジェクタースリーブ５
０にも、ピストン状部材としての役割を兼ねさせてい
る。この場合のシリンダー状刳抜孔は、エジェクタース
リーブ５０を挿通させる為に入子１０に設けたピン孔５
１がそれに当たる。又、第１実施例の拡径部１４に当た
る部分は、両ピストン状部材４０，５０共、エジェクタ
ープレート２３に設けている。更に、中空円柱状突起部
ｂを形成させる為の入子となるセンターピン５２を、ス
リーブ状をしたエジェクタースリーブ５０の内空部に挿
通させている。センターピン５２の基端側は固定側取付
板４に取着している。その作用は、第１、第２実施例に
準ずる。図８及び図９は、夫々成形品Ａの裏面側及び表
面側を示している。従来技術によると、各円柱状突起部
ａ及び中空円柱状突起部ｂの形成位置に対応した表面側
には、図９に破線で示した位置ｅに、はっきりとしたヒ
ケ（凹み）が必ず生ずるが、この実施例の成形品Ａには
明確なヒケは認められなかった。

【００２０】図１０及び図１１は、アクリル樹脂製のプ
ラスチックレンズを成形する第４実施例を示している。
この場合の成形品Ａは、図１１に示した様にレンズＡ１
の周縁部に角板状のフレーム部Ａ２を一体に形成させた
形態を備えている。成形品Ａの脱型は、フレームＡ２の
４個所に宛てがった４本のエジェクタピン６０によって
行う様にしているので、各エジェクターピン６０及びそ
のピン孔６１を、夫々ピストン状部材及びシリンダー状
刳抜孔として活用している。そして、図１０に示した様
に、ピストン状部材６０の基部に固着したピストン１５
を遊嵌させる拡径部１４及びコイルばね１８を収容する
円筒状凹部１７は、エジェクタープレート２３，２４に
跨がらせて設けている。

【００２１】この実施例では、強力なコイルばね１８を
収容する円筒状凹部１７の内径は、ピストン１５を収容
する拡径部１４の内径より大きくしている。その為、コ
イルばね１８の前端に宛てがった円形の受圧板６２を介
して、ピストン１５の後端面をコイルばね１８に当接さ
せている。

【００２２】図１０に示した様に、夫々強力なコイルば
ね１８によって前進付勢されいている４本のピストン状
部材６０は、協働して前述の様に成形キャビティＳ内に
射入した溶融樹脂の冷却収縮容積を埋め合わせる様に働
くので、レンズＡ１部分にはボイドは勿論、内部応力歪
みも生ぜず、光学的に極めて均等な組織となった。そし
て、幾分の内部応力歪みが、レンズＡ１部分を避ける様
にしてフレーム部Ａ２に集中的に生じた。図１１中の符
号ｇはピンマーク、ｈはビス孔である。

【００２３】尚、上記各実施例に於いて、細部の構成は
適宜に設計変更しても本発明の目的は達成される。例え
ば、押圧手段はコイルばね１８に限られず、ゴム弾性材
料や圧縮性流体等を単体で、又はそれ等を組合わせて使
用してもよい。或は、移動位置決手段は、図示に限られ
ず、要は、ピストン状部材の前・後進動を所定の距離範
囲に制約する機能を備えれば足りる。

【００２４】

【発明の効果】以上の説明によって明らかな様に、成形
品にヒケ、ボイド、形状歪み、内部応力歪み等の欠陥が
生ずるのを防ぐ方策を講じた、本発明の射出成形方法及
び射出成形用金型によれば、以下に列挙した如き様々の
優れた効果が得られる。 ａ） 従来の型温を制御する技術とは異なって形状歪だ
けでなく、ヒケの発生も防げる。その上、金型に加工を
施す経費も僅かで足りる。 ｂ） ゲートを広くする方法とは異なって、内部応力歪
みの発生も無くせる上に、大きくなったゲートの切除の
手間や、材料ロスも無くせる。 ｃ） 二段型締機構を設けたり、成形キャビティ全体の
容積を可変に構成した、構造複雑で高価な従来のものと
は異なって、既存の汎用射出成形機をそのまま使えるの
で、製品の大幅コストアップを招かなくて済む。 ｄ） 成形品の肉厚がかなり厚く、又、肉厚が部分毎に
かなり異る成形品でも、ヒケ、ボイド、形状歪み、内部
応力歪みを、夫々有効に防止出来るので、従来技術とは
異なって、成形品の形状設計の自由度が著しく増す。 ｅ） シリンダー状刳抜孔及びピストン状部材は、金型
には付きものガス抜孔とガス抜ピン、或は、エジェクタ
ーピンとそのピン孔をそのまま借用出来るので、金型に
余分の加工を施す手間と経費が省けるし、成形品の表面
に余分なピンマーク等が付かなくて済む。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例を示すもので、型締機構に
組付けた状態で示す縦断面図である。

【図２】同上、成形キャビティに樹脂を射入した直後の
状態を示す、要部の拡大縦断面図である。

【図３】同上、成形キャビティに樹脂を射入した終えた
時の状態を示す、要部の拡大縦断面図である。

【図４】同上、射入樹脂が冷却・収縮し始めた段階での
状態を示す、要部の拡大縦断面図である。

【図５】同上、成形品を脱型しつある状態を示す、部分
縦断面図である。

【図６】第２実施例を示す、図２相当図である。

【図７】第３実施例を示す、図２相当図である。

【図８】同上、成形品の裏面側の斜視図である。

【図９】同上、成形品の表面側の斜視図である。

【図１０】第４実施例を示すもので、型締機構に組付け
た状態を示す、部分縦断面図である。

【図１１】同上、成形品の斜視図である。

【符号の説明】

１ 固定側取付板 ２ スプルーブッシュ ２ａ スプルー孔 ３ 固定側金型 ４ 可動側取付板 ５ 可動側金型 ５ａ 組込用孔 ６ スペーサーブロック ７ 取付基盤 ８，９ ガイド部材 １０ 入子 １１ ガス抜孔（シリンダー状刳抜孔） １２ エジェクタピン １３ ピン孔 １４ 拡径部（移動位置決手段） １５ ピストン（移動位置決手段） １６ ガス抜ピン（ピンストン状部材） １７ 円筒状凹部 １８ コイルばね（押圧手段） ２１ スプルーロックピン ２２，リターンピン ２３，２４ エジェクタープレート ２５ ゲート ２６ ランナー ３０ センターピン ３１ エジェクタースリーブ（シリンダー状刳抜孔） ３１ ピンスリーブ（シリンダー状刳抜孔） ３２ シリンダー状孔 ３３ 栓体 ４０，６０ エジェクターピン（ピストン状部材） ４１，５１，６１ ピン孔（シリンダー状刳抜孔） ５０ エジェクタースリーブ ５２ センターピン ６２ 受圧板 Ｓ 成形キャビティ Ａ 成形品 Ａ１ レンズ Ａ２ フレーム部 ａ 円柱状突起部 ｂ 中空円柱状突起部 ｄ 後退容積

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 成形キャビティＳの成形面に向けて開口
   するシリンダー状刳抜孔１１を金型に設けると共に、該
   シリンダー状刳抜孔１１内には、押圧手段１８により前
   記成形キャビティＳに向けて前進付勢されるピストン状
   部材１６を収めて置き、 前記成形キャビティＳに高圧で射入した溶融樹脂が、前
   記押圧手段１８の付勢力に抗して前記ピストン状部材１
   ６を所定距離後退させて、前記シリンダー状刳抜１１孔
   内に所定量の溶融樹脂が押し込まれ、前記成形キャビテ
   ィＳ内の溶融樹脂の冷却収縮に伴って、前記押し込まれ
   た溶融樹脂が、前記押圧手段１８により前記成形キャビ
   ティＳ内に押し戻されて、前記収縮容積分を埋め合わ
   せ、成形品にヒケ、ボイド、形状歪、内部応力歪等が発
   生し難くなる様にしたことを特徴とする射出成形方法。
2. 【請求項２】 成形キャビティＳの成形面に向けて開口
   するシリンダー状刳抜孔１１，３１，４１，５１，６１
   と、 該シリンダー状刳抜孔に挿嵌されたピストン状部材１
   ６，３０，４０，５０，６０と、 該ピストン状部材を前記成形キャビティＳに向けて前進
   付勢する押圧手段１８と、 前記ピストン状部材１６，… の前後移動の限界位置を
   決める移動位置決手段１４，１５とを備え、 前記ピストン状部材１６，… は、溶融樹脂の射入圧に
   より前記押圧手段１８の付勢力に抗して所定距離後退
   し、前記成形キャビティＳ内の射入樹脂の冷却収縮に伴
   って所定距離前進する様に構成したことを特徴とする射
   出成形用金型。
3. 【請求項３】前記押圧手段１８はばねであることを特徴
   とする請求項２項記載の射出成形用金型。