JPH0686408B2 - アクリル酸またはメタクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents

アクリル酸またはメタクリル酸エステルの製造方法

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JPH0686408B2
JPH0686408B2 JP2262853A JP26285390A JPH0686408B2 JP H0686408 B2 JPH0686408 B2 JP H0686408B2 JP 2262853 A JP2262853 A JP 2262853A JP 26285390 A JP26285390 A JP 26285390A JP H0686408 B2 JPH0686408 B2 JP H0686408B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、アクリル酸またはメタクリル酸エステルの製
造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、アクリル
酸またはメタクリル酸ハライドと酸性の水酸基を有する
有機化合物とをアルカリ金属酸化物の水溶液中にて、相
間移動触媒の存在下反応させるアクリル酸またはメタク
リル酸エステルの製造方法である。
本発明によって提供されるアクリル酸またはメタクリル
酸エステルはそれ自体で重合させるか、または他の重合
性ビニルモノマー、例えばメタクリル酸メチルなどと共
重合させることによって、耐熱性、耐水性、光学的性
質、難燃性、撥水性、潤滑性などの向上したポリマーと
なり、広い応用分野が期待できる。
(従来の技術) アクリル酸またはメタクリル酸ハライドと酸性の水酸基
を有する有機化合物とを反応させてアクリル酸またはメ
タクリル酸エステルを合成する方法は従来から知られて
いる。
例えば、フェニルまたは置換フェニルエステルの合成法
としては、フェノールまたは置換フェノールとアクリル
酸またはメタクリル酸ハライドとの反応において、反応
助剤として、水酸化ナトリウムだけを用いる方法(G.Su
mrell et al.,J.Am.Chem.Soc.,81、4310(1959));ト
リエチルアミンやピリジンのような有機塩基を用いる方
法(B.I.Budzan、et al、Zhur.Obshchei.Khim.,26,1127
(1956)、仏国特許第1,547,223号(1968)、特公昭50
−23019号);モレキュラーシーブを用いる方法(A.R.B
anks,et al、J.Org.Chem.,42,3965(1977));加熱に
よる方法(P.L.Moganini,et al,Gazz.Chim.Ital.96,103
5(1966)、米国特許第2,129,685号)などが知られてい
る。
また、ナフチルまたは置換ナフチルエステルの合成法と
しては、ナフトールまたは置換ナフトールとアクリル酸
またはメタクリル酸ハライドとの反応において、反応助
剤として、水酸化ナトリウムだけを用いる方法(S.Pata
i,et al,J.Am.Chem.Soc.,74,845(1952));トリエチ
ルアミンやピリジンのような有機塩基を用いる方法(H.
Kammerer,et al,Makromol.Chem.164,25(1973)、Y.Kod
ama,et al,J.Polym.Sci.13,707(1975));加熱による
方法(N.Kh.Maksudov,et al,Uab.Khim,.Zh.19,34(197
5))などが知られている。
また、キノリルまたは置換キノリルエステルの合成法と
しては、キノリノールまたは置換キノリノールとアクリ
ル酸またはメタクリル酸ハライドとの反応において、反
応助剤として、トリエチルアミンのような有機塩基を用
いる方法(C.U.Pittmann,Jr.,et al,J.Coat.Technol.,5
0,49(1978)などが知られている。
また、ビスフェノール化合物やジヒドロキシビフェニル
化合物のジアクリレートまたはジメタクリレートの合成
法としては、ビスフェノール化合物やジヒドロキシビフ
ェニル化合物とアクリル酸またはメタクリル酸ハライド
との反応において、反応助剤として、アルカリ水溶液だ
けを用いる方法(ソ連国第759、504号、特開昭55−3342
4号);ピリジンやトリブチルアミンなどの有機塩基を
用いる方法(特開昭48−18264号、米国特許第4,068,082
号);実質的に水を含まない系で、第四級アンモニウム
ハライドなどの存在下、アルカリ金属水酸化物を用いる
方法(特開昭55−33429号)およびビスフェノール化合
物とメタクリル酸との反応において、反応助剤として塩
化水素を用いる方法(特開昭48−48453号)などが知ら
れている。
さらに、含フッ素アルキルエステルの合成法としては、
濃硫酸または発煙硫酸の存在下、含フッ素アルコールと
アクリル酸またはメタクリル酸との脱水反応による方法
(米国特許第2,628,958号(1953)、特開昭57−118535
号、特開昭59−181239号など);ヘキサフルロロ無水酢
酸とアクリル酸またはメタクリル酸とからアクリル酸ま
たはメタクリル酸とトリフルオロ酢酸の酸無水物(非対
称酸無水物)を経て、これと含フッ素アルコールとを反
応させる方法(米国特許第3,719,698号(1973));ア
クリル酸またはメタクリル酸クロライドと含フッ素アル
コールとを塩化バリウムの存在下、またはキノリン−ニ
トロベンゼン共存下で反応させる方法(D.W.Codding,et
al,J.Polym.Sci.,15,515(1955)、米国特許第2,642,4
16号(1952));トリエチルアミンのような有機塩基の
存在下で反応させる方法(特開昭59−117503号、特開昭
59−117504号)などが知られている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、上記のようなアクリル酸またはメタクリ
ル酸エステルの合成法において水酸化ナトリウムだけを
用いる上記文献記載の方法は一般に収率が低く、未反応
の出発原料が残存し、反応終了後、煩雑な分離精製工程
が必要となり、経済的に不利である。また、トリアルキ
ルアミン、ピリジンやキノリンのような有機塩基を用い
る上記文献記載の方法も高価な有機塩基を回収するとい
った煩雑な工程が必要となり、経済的に不利である。モ
レキュラーシーブを用いる上記文献記載の方法や、加熱
による上記文献記載の方法では発生したハロゲン化水素
は完全には吸着または除去されず装置の腐食やハロゲン
化水素の処理などの問題が生じるという欠点がある。さ
らに特開昭55−33429号に記載されている方法ではビス
フェノール型化合物とアリカリ金属水酸化物の反応によ
るアルカリ金属のビスフェノール生成時に副生する水を
共沸蒸留によって除去し、さらに無水ボウ硝や無水硫酸
マグネシウムなどの脱水剤を加えて実質的に遊離の水が
存在しない系で反応を行っているが、このような方法は
反応操作が煩雑であるだけでなく、経済的にも不利であ
る。また含フッ素アルキルエステルの合成法において、
濃硫酸または発煙硫酸の存在下アクリル酸またはメタク
リル酸との脱水反応による上記文献記載の方法では、触
媒量の硫酸を用いた場合は収率が低く、収率を上げるた
めには過剰量の濃硫酸または発煙硫酸および過剰量のア
クリル酸またはメタクリル酸を使用しなければならず、
反応後過剰の酸の中和や過剰のアクリル酸またはメタク
リル酸の回収などの煩雑な操作が必要となる。また、ア
クリル酸またはメタクリル酸とトリフルオロ酢酸の酸無
水物を経由する上記文献記載の方法では合成法が2段階
になるだけではなく、ヘキサフルオロ無水酢酸という高
価で特殊な試薬を使うため経済的に不利である。
そこで、本発明の目的は工業的に安価なアルカリ金属水
酸化物を用いても、高収率でアクリル酸またはメタクリ
ル酸エステルを得る製造方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは上記問題点を解決すべく、アクリル酸また
はメタクリル酸エステルの製造方法を鋭意検討した結
果、一般式 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは塩素
原子または臭素原子を表す)で表されるアクリル酸また
はメタクリル酸ハライドと酸性の水酸基を有する有機化
合物とをアルカリ金属水酸化物の水溶液中にて相間移動
触媒の存在下で反応させることによって高収率で、アク
リル酸またはメタクリル酸エステルが得られることを見
出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一般式 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは塩素
原子または臭素原子を表す)で表されるアクリル酸また
はメタクリル酸ハライドと後記の置換フェノール化合
物、置換ナフトール化合物、キノリノール化合物、置換
ビスフェノール型化合物および含フッ素アルコール化合
物から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルカリ金
属水酸化物の水溶液中にて相間移動触媒の存在下で反応
させることを特徴とするアクリル酸またはメタクリル酸
エステルの製造方法に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する置換フェノール化合物とは、 一般式(a) (式中、lは1〜6の整数を、mは0〜5の整数を、n
は0〜5の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は6
であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子か
らなる群から選択される少なくとも1種を表す)で表さ
れる化合物から無置換フェノール、ハロゲン置換フェノ
ール類およびアルキル置換フェノール類を除いた置換フ
ェノール類を意味する。
この置換フェノール類の具体例としては、例えば4−フ
ェニルフェノール、4−(4−メトキシフェニル)フェ
ノールなどのアリール置換フェノール類;2−ヒドロキシ
安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸などのカルボキシル
置換フェノール類;2−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−
ヒドロキシ安息香酸メチルなどのエステル置換フェノー
ル類;4−ヒドロキシフェニルメチルケトン、4−ヒドロ
キシフェニルエチルケトンなどのアルキルカルボニル置
換フェノール類;4−ヒドロキシフェニルビニルケトンな
どのアルケニルカルボニル置換フェノール類;4−ヒドロ
キシフェニルフェニルケトンなどのアリールカルボニル
置換フェノール類;4−トリフルオロメチルフェノールな
どのフルオロアルキルフェノール類;4−メトキシフェノ
ール、3−メトキシフェノールなどのアルコキシフェノ
ール類;4−フェノキシフェノール、3−フェノキシフェ
ノールなどのアリーロキシフェノール類;4−トリメチル
シリルフェノールなどのトリアルキルシリルフェノール
類;4−シアノフェノール、3−シアノフェノールなどの
シアノフェノール類;4−ニトロフェノール、3−ニトロ
フェノールなどのニトロフェノール類;4−ジメチルアミ
ノフェノール、2−ジメチルアミノフェノールなどのジ
アルキルアミノフェノール類;4−ヒドロキシベンゼンス
ルホン酸、3−ヒドロキシベンゼンスルホン酸などのス
ルホン酸置換フェノール類;およびハイドロキノン、カ
テコール、レゾルシノール、1,2,4−ベンゼントリオー
ルなどの多ヒドロキシ置換ベンゼン類を挙げることがで
きる。
本発明で使用する置換ナフトール化合物とは、一般式
(b) (式中、lは1〜8の整数を、mは0〜7の整数を、n
は0〜7の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は8
であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から
なる群から選択される少なくとも1種を表す)で表され
る化合物から 一般式(I) (式中、m=1のときはn=1〜7の整数を表し、m=
2のときはn=1〜6の整数を表し、Xは水素原子、炭
素数1〜9のアルキル基もしくはアルコキシ基、ハロゲ
ン原子、またはニトロ基を表す)で表されるナフトール
化合物を除いた置換ナフトール化合物を意味する。
この置換ナフトールの具体例としては、例えば4−フェ
ニル−1−ナフトールなどのアリール置換ナフトール
類;4−ヒドロキシナフタレン−1−カルボン酸などのカ
ルボキシル置換ナフトール類;4−ヒドロキシナフタレン
−1−カルボン酸メチルエステルなどのエステル置換ナ
フトール類;4−ヒドロキシ−1−ナフチルメチルケトン
などのアルキルカルボニル置換ナフトール類;4−ヒドロ
キシ−1−ナフチルビニルケトンなどのアルケニルカル
ボニル置換ナフトール類;4−ヒドロキシ−1−ナフチル
フェニルケトンなどのアリールカルボニル置換ナフトー
ル類;4−トリフルオロメチル−1−ナフトールなどのフ
ルオロアルキル置換ナフトール類;4−フェノキシ−1−
ナフトールなどのアリーロキシ置換ナフトール類;4−ト
リメチルシリル−1ナフトールなどのトリアルキルシリ
ル置換ナフトール類;4−シアノ−1−ナフトールなどの
シアノ置換ナフトール類;4−ジメチルアミノ−1−ナフ
トールなどのジアルキルアミノ置換ナフトール類;およ
び4−ヒドロキシナフレン−1−スルホン酸などのスル
ホン酸置換ナフトール類を挙げることができる。
本発明で使用するキノリノール化合物とは、一般式
(c) (式中、lは1〜7の整数を、mは0〜6の整数を、n
は0〜6の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は7
であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から
なる群から選択される少なくとも1種を表す) で表される化合物である。
これらの具体例としては、例えば2−キノリノール、4
−キノリノール、8−キノリノールなどのキノリノール
類;2−メチル−8−ヒドリキシキノリンなどのアルキル
キノリノール類;5−フルオロ−8−ヒドリキシキノリ
ン、5−クロロ−8−ヒドリキシキノリン、5−ブロモ
−8−ヒドリキシキノリンなどのハロゲン化キノリノー
ル類;5−フェニル−8−ヒドロキシキノリンなどのアリ
ールキノリノール類;8−ヒドロキシキノリン−5−カル
ボン酸などのカルボキシル置換キノリノール類;8−ヒド
ロキシキノリン−5−カルボン酸メチルエステルなどの
エステル置換キノリノール類;8−ヒドロキシ−5−キノ
リルメチルケトン、8−ヒドロキシ−5−キノリルビニ
ルケトン、8−ヒドロキシ−5−キノリルフェニルケト
ンなどのアルキルまたはアルケニルまたはアリールカル
ボニル置換キノリノール類;5−トリフロオロメチル−8
−ヒドロキシキノリンなどのフルオロアルキルキノリノ
ール類;5−メトキシ−8−ヒドロキシキノリン、5−フ
ェノキシ−8−ヒドロキシキノリンなどのアルコキシま
たはアリーロキシキノリノール類;5−トリメチルシリル
−8−ヒドロキシキノリンなどのトリアルキルシリルキ
ノリノール類;5−シアノ−8−ヒドロキシキノリンなど
のシアノキノリノール類;5−ニトロ−8−ヒドロキシキ
ノリンなどのニトロキノリノール類;5−ジメチルアミノ
−8−ヒドロキシキノリンなどのジアルキルアミノキノ
リノール類;8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸な
どのスルホン酸置換キノリノール類などを挙げることが
できる。
本発明で使用する置換ビスフェノール型化合物とは、一
般式(d) (式中、AはO、CO、CH2、CH3CH、C(CH3)2、C(C
F3)2、S、SO2またはCONHを表し、Bは水素原子、炭素
数1〜9の直鎖または分岐アルキル基、フッ素原子、塩
素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選択
される少なくとも1種を表し、nは0〜4の整数を表
す)、または一般式(e) (式中、Bは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨ
ウ素原子からなる群から選択される少なくとも1種を表
し、nは0〜4の整数を表す)で表される化合物から、
一般式(II) (式中、AはO、CO、CH2、CH3CH、C(CH3)2、C(CF3)2
またはSO2を表し、Bは水素原子、炭素数1〜6の直鎖
または分岐アルキル基、塩素原子、または臭素原子を表
し、nは0〜4の整数を表す)、または一般式(III) (式中、Bは水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐
アルキル基、塩素原子または臭素原子を表し、nは0〜
4の整数を表す)で表されるビスフェノール型化合物を
除いた置換ビスフェノール型化合物を意味する。
この置換ビスフェノール型化合物の具体例としては、2,
2′−ジドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキ
シジフェニルスルフィド、2,2′−ビス(4−ヒドロキ
シ−3,5−ジヨードフェニル)プロパン、N−(4−ヒ
ドロキシフェニル)−4−ヒドロキシベンゾイルアミ
ド、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、4,4′−ジヒドロ
キシ−3,3′,5,5′−テトラヨードジフェニルなどを挙
げることができる。
本発明で使用する含フッ素アルコール化合物とは、一般
式(f) CnHpFqOH (式中、nは2〜10の整数を表し、pおよびqはp+q
=2n+1なる関係を満たす整数を表す)で表される化合
物から、一般式(IV) (CnH2n+1-mFm)CH2OH (式中、nは1〜6の整数を表し、mは1〜2n+1の整
数を表す)で表される化合物を除いたものを意味する。
一方、本発明で使用される一般式 (式中、Rは水素原子、またはメチル基を表し、Xは塩
素原子または臭素原子を表す)で表されるアクリル酸ま
たはメタクリル酸ハライドとしては、例えばアクリル酸
クロライド、アクリル酸ブロマイド、メタクリル酸クロ
ライド、メタクリル酸ブロマイドなどが挙げられる。
次に、アクリル酸またはメタクリル酸ハライドと上記化
合物とを反応させてエステル化し、それぞれ対応するア
クリル酸またはメタクリル酸エステルを製造する際の反
応条件としては、例えば、上記アクリル酸またはメタク
リル酸ハライドの使用量については、本発明で使用され
る上記化合物の水酸基のグラム原子当量に対し、グラム
原子当量比で0.6〜4.0、好ましくは1.0〜2.0である。グ
ラム原子当量比で0.6より少ない量では転化率の低下が
著しく、グラム原子当量比4.0より多い量では経済的に
不利になるだけであく、反応後の処理が煩雑になる。
本発明で使用されるアルカリ金属水酸化物としては、例
えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ムなどが挙げられる。上記アルカリ金属水酸化物の使用
量としては、上記化合物の水酸基のグラム原子当量に対
し、グラム原子当量比で0.6〜4.0の範囲から選ぶことが
でき、好ましくは1.0〜2.5である。グラム原子当量比で
0.6より少ない量では生成物の収率が著しく低下し、グ
ラム原子当量比で4.0より多い量では経済的に不利にな
るだけである。さらに、使用されるアルカリ金属水酸化
物の水溶液の濃度は特に制限は受けないが、アルカリ金
属水酸化物が実質的に水に溶解していることが操作上好
ましい。
本発明において使用される相間移動触媒としては、例え
ば第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウ
ム塩、クラウンエーテル、ポリエチレングリコールなど
が挙げられ、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、
スホニウム塩、クラウンエーテルなどについては低級分
子としても、または高分子に組込まれた形としても当該
反応の相間移動触媒として有効である。上記相間移動触
媒の具体例としては、例えばテトラメチルアンモニウム
クロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライ
ド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベン
ジルトリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラ
−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブ
チルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアン
モニウムハイドジエンスルフェートなどの第四級アンモ
ニウム塩類;ベンジル−トリ−n−ブチルホスホニウム
クロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイ
ドなどのホスホニウム塩類;トリ−n−ブチルスルホニ
ウムブロマイド、ベンジルジエチルスルホニウムクロラ
イドなどのスルホニウム塩類;18−クラウン6−エーテ
ル、ジベンゾ−18−クラウン6−エーテルなどのクラウ
ンエーテル類;ポリエチレングリコール400、4000、600
0のようなポリエチレングリコール類などを挙げること
ができる。これらのうちでも、効果、価格、入手の容易
さなどを考慮するならば、工業的には上記のような第四
級アンモニウム塩類の使用が好ましい。相間移動触媒の
使用量については、上記化合物の水酸基のグラム原子当
量に対して、0.01〜10%の範囲から選ぶことができ、好
ましくは0.1〜5.0%である。0.01%より少ない量ではそ
の効果が小さく、10%より多い量を用いても経済的に不
利になるだけである。
本発明においては、アクリル酸またはメタクリル酸ハラ
イドと上記化合物との反応において、有機溶媒の使用は
不可欠でないが、有機溶媒の使用は好ましい結果をもた
らす。特に使用される有機溶媒としては、反応条件下で
安定で水と実質的に溶け合わないものが好ましい。具体
例としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オ
クタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、
キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;四
塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲ
ン化合物類などを挙げることができる。上記有機溶媒は
単独あるいは2種以上の混合の状態でも使用し得る。
反応温度は0〜60℃、好ましくは0〜40℃が望ましい。
0℃より低い温度では反応が遅く、60℃より高い温度で
は加水分解や重合などの副反応が起こりやすくなり好ま
しくない。また、反応系中に重合禁止剤を存在させるこ
とは必ずしも不可欠ではないが、一般に重合禁止剤とし
て知られている塩化第一銅、フェノチアジン、ハイドロ
キノン、メトキノンなどを反応系に添加して使用するこ
とも可能である。
本発明で得られたアクリル酸またはメタクリル酸エステ
ルは蒸留あるいは結晶化などの方法で分離し、精製でき
る。
(発明の効果) 本発明の方法によると、相間移動触媒を存在させるため
にアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いても反応は速や
かに進行し、しかもアルカリ金属水酸化物の水溶液を使
用するため、発生するハロゲン化水素は直ちにアルカリ
金属水酸化物と反応してアルカリ金属のハロゲン化物と
して水に溶けるので特別な処理も必要とせず、高収率、
高純度でアクリル酸またはメタクリル酸エステルが得ら
れる。このように本発明の方法は、アルカリ金属水酸化
物の水溶液という安価な原料を用い、発生するハロゲン
化水素の処理も簡便であり、工業的に有利な方法であ
る。
以下、実施例にて本発明をさらに具体的に説明するが、
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
参考例1 攪拌機、温度計および滴下ロートを取り付けた500mlの
フラスコにフェノール19.2g(0.204mol)、水酸化ナト
リウム12.4g(0.310mol)を水270mlに溶かした溶液、ジ
クロロメタン135mlテトラ−n−ブチルアンモニウムク
ロライド1.70g(6.12mmol)、フェノチアジン60mgを仕
込み、0〜6℃で攪拌(500rpm)しながらメタクリル酸
クロライド26.7g(0.255mol)を2時間で滴下した。滴
下終了後、さらに1時間0〜6℃で攪拌した。反応終了
後、分液し、ジクロロメタン相を無水硫酸ナトリウムで
乾燥し、ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、
減圧下、ジクロロメタンを留去し、減圧蒸留によって68
〜75℃/1〜3mmHgで留出したメタクリル酸フェニル32.6g
(0.201mol)を得た。
このようにして得られた生成物メタクリル酸フェニルを
ガスクロマトグラフィーで分析した。ガスコロマトグラ
フ分析はサーモン3000を充填した2m×3mmのガラスカラ
ムを用いて、日立163型ガスクロマトグラフ装置上でカ
ラム温度180℃で行った。その結果、生成物にはフェノ
ール50ppmが含まれていたが、メタクリル酸フェニルと
このフェノール以外にはピークは見られなかった。仕込
んだフェノールに対する収率は98.5%であった。
実施例1〜9および比較例1〜3 参考例1と同様にしてエステル化反応を行った。結果を
表1に示す。
参考例2 攪拌機、温度計および滴下ロートを備えた2リットルの
フラスコに2−ナフトール101g(0.701mol)、水酸化ナ
トリウム42.10g(1.05mol)を水625mlに溶かした溶液を
仕込み、激しく攪拌し、均一溶液を作り、次にテトラ−
n−ブチルアンモニウムクロライド2.73g(9.81mmol)
とジクロロメタン311mlを加え氷浴にて冷却し、激しく
攪拌しながら、これにメタクリル酸クロライド87.9g
(0.841mol)を5時間かけて滴下した。滴下中反応系の
温度は10℃以下に保った。滴下終了後、さらに1時間反
応させて反応を完結させた。反応終了後放置すると反応
液は2層に分離した。分液後、有機層を無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥し、ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去し
た後、ジクロロメタンを減圧留去した。析出した結晶を
エタノール400mlに溶かした。不溶物を除去した後冷却
した。析出した白色結晶をろ過し、メタノールで洗浄の
後、減圧乾燥させメタクリル酸−2−ナフチル134g(0.
631mol)を得た。
融点69℃。仕込んだ2−ナフトールに対する収率は90.0
%であった。この時のろ過と洗液の混合液を蒸発乾固す
ることにより粗製メタクリル酸−2−ナフチル12.2g
(0.0575mol)を得た。粗製物まで含めた場合の収率は9
8.2%であった。
実施例10および比較例4 参考例2と同様にしてエステル化反応を行った。結果を
表1に示す。
実施例11 参考例1と同様の反応装置に8−キノリノール6.53g(4
5.0mmol)、水酸化ナトリウム2.55g(63.8mmol)を水50
mlに溶かした溶液を仕込み激しく攪拌し、均一溶液を作
り、次にテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド0.
361g(1.30mmol)とジクロロメタン50mlを加え、氷浴に
て冷却し、激しく攪拌しながらこれにメタクリル酸クロ
ライド5.65g(54.0mmol)を30分かけて滴下した。滴下
中反応系の温度は10℃以下に保った。滴下終了後さらに
1時間反応させ反応を完結させた。反応終了後放置する
と反応液は2層に分離した。分液後有機層を無水硫酸ナ
トリウムで乾燥し、ろ過により硫酸ナトリウムを除去し
た後、ジクロロメタンを減圧留去した。除去した結晶を
メタノール40mlに溶かし、不溶物を除去した後、冷却し
た。析出した結晶をろ過しメタノールで洗浄した後、減
圧乾燥させてメタクリル酸−8−キノリル5.65g(38.9m
mol)を得た。仕込んだ8−キノリノールに対する収率
は86.5%であった。この時のろ液と洗液の混合液を蒸発
乾固することにより粗製メタクリル酸−8−キノリル0.
65g(4.48mmol)を得た。粗製物まで含めた場合の収率
は96.4%であった。
実施例12〜14および比較例5 実施例11と同様にしてエステル化反応を行った。結果を
表1に示す。
参考例3 参考例1と同様の装置に2,2−ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)プロパン80.0g(0.350mol)、水酸化ナトリウ
ム39.3g(0.983mol)、水750mlを仕込み、内温を20℃に
保ち、30分間攪拌した。さらにジクロロメタン750ml、
テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド3.4g(10.6
mmol)、メトキノン0.08gを加えた。内温を10℃まで冷
却し、反応容器内を激しく攪拌しながらメタクリル酸ク
ロライド87.9g(0.841mol)を75分間で滴下し、滴下終
了後、さらに60分間攪拌を続けた。反応中は内温を15℃
以下に保った。攪拌を停止すると2層になったので水層
を除去し、有機層を5.0重量%水酸化ナトリウム水溶液1
00ml、続いて水200mlで洗浄した。得られた有機層中の
ジクロロメタンを留去し、2,2−ビス(4−メタクリル
ロイルオキシフェニル)プロパン126.7g(収率99.2%)
を得た。このものの融点は71.7℃であった。
実施例15 参考例3と同様にしてエステル化反応を行った。結果を
表1に示す。
実施例16 攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた容量2リットルの
ガラス製フラスコに水酸化ナトリウム44.8g(1.120mo
l)を水650mlに溶解した水溶液を仕込み、次に2,4−ジ
ヒドロキシベンゾフェノン200g(0.934mol)を加え、攪
拌して均一に溶解させた。この均一溶液にテトラ−n−
ブチルアンモニウムブロマイド9.02g(28mmol)とジク
ロロメタン500mlを加え、氷浴にて冷却し、激しく攪拌
しながら、これにメタクリル酸クロライド112.3g(1.07
4g)を2時間30分かけて滴下した。滴下中反応系の温度
は10℃以下に保った。滴下終了後、さらに1時間反応さ
せ反応を完結させた。反応終了後、放置すると反応液は
2層に分離した。分離後、有機層を無水硫酸ナトリウム
で乾燥し、ろ過により硫酸ナトリウムを除去した後、ジ
クロロメタンを減圧留去した。析出した結晶をメタノー
ル1リットルに溶かし、不溶物を除去した後、冷却し
た。析出した結晶をろ過した後、減圧乾燥させてメタク
リル酸−4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェニル232.
1g(0.822mol)を得た。仕込んだ2,4−ジヒドロキシベ
ンゾフェノンに対する収率は88.0%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 205/43 213/06 219/08 255/55 315/04 317/22 C07F 7/08 A 8018−4H // B01J 31/02 X 8017−4G 102 X 8017−4G C07B 61/00 300 C07D 215/22 215/32

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは塩素
    原子または臭素原子を表す)で表されるアクリル酸また
    はメタクリル酸ハライドと下記の置換フェノール化合
    物、置換ナフトール化合物、キノリノール化合物、置換
    ビスフェノール型化合物および含フッ素アルコール化合
    物から選ばれる少なくとも1種の化合物とをアルカリ金
    属水酸化物の水溶液中にて相間移動触媒の存在下で反応
    させることを特徴とするアクリル酸またはメタクリル酸
    エステルの製造方法。 <置換フェノール化合物> 一般式(a) (式中、lは1〜6の整数を、mは0〜5の整数を、n
    は0〜5の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は6
    であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
    アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
    基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
    アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
    シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
    基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
    からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
    フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から
    なる群から選択される少なくとも1種を表す)で表され
    る化合物から無置換フェノール、ハロゲン置換フェノー
    ル類およびアルキル置換フェノール類を除いた置換フェ
    ノール化合物。 <置換ナフトール化合物> 一般式(b) (式中、lは1〜8の整数を、mは0〜7の整数を、n
    は0〜7の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は8
    であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
    アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
    基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
    アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
    シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
    基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
    からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
    フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から
    なる群から選択される少なくとも1種を表す)で表され
    る化合物から 一般式(I) (式中、m=1のときはn=1〜7の整数を表し、m=
    2のときはn=1〜6の整数を表し、Xは水素原子、炭
    素数1〜9のアルキル基もしくはアルコキシ基、ハロゲ
    ン原子、またはニトロ基を表す)で表されるナフトール
    化合物を除いた置換ナフトール化合物。 <キノリノール化合物> 一般式(c) (式中、lは1〜7の整数を、mは0〜6の整数を、n
    は0〜6の整数をそれぞれ表すが、lとmとnの和は7
    であり、Rは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
    アルキル基、アリール基、カルボキシル基、エステル
    基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、
    アリールカルボニル基、フルオロアルキル基、アルコキ
    シ基、アリーロキシ基、トリアルキルシリル基、シアノ
    基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基およびスルホン酸基
    からなる群から選択される少なくとも1種を表し、Xは
    フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から
    なる群から選択される少なくとも1種を表す)で表され
    るキノリノール化合物。 <置換ビスフェノール型化合物> 一般式(d) (式中、AはO、CO、CH2、CH3CH、C(CH3)2、C(C
    F3)2、S、SO2またはCONHを表し、Bは水素原子、炭素
    数1〜9の直鎖または分岐アルキル基、フッ素原子、塩
    素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群から選択
    される少なくとも1種を表し、nは0〜4の整数を表
    す)、または 一般式(e) (式中、Bは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐
    アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨ
    ウ素原子からなる群から選択される少なくとも1種を表
    し、nは0〜4の整数を表す)で表される化合物から、 一般式(II) (式中、AはO、CO、CH2、CH3CH、C(CH3)2、C(C
    F3)2、またはSO2を表し、Bは水素原子、炭素数1〜6
    の直鎖または分岐アルキル基、塩素原子、または臭素原
    子を表し、nは0〜4の整数を表す)、または 一般式(III) (式中、Bは水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐
    アルキル基、塩素原子または臭素原子を表し、nは0〜
    4の整数を表す)で表されるビスフェノール型化合物を
    除いた置換ビスフェノール型化合物。 <含フッ素アルコール化合物> 一般式(f) CnHpFqOH (式中、nは2〜10の整数を表し、pおよびqはp+q
    =2n+1なる関係を満たす整数を表す)で表される化合
    物から、 一般式(IV) (CnH2n+1-mFm)CH2OH (式中、nは1〜6の整数を表し、mは1〜2n+1の整
    数を表す)で表される化合物を除いた含フッ素アルコー
    ル化合物。
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