JPH0672044B2 - 高純度アルミナ焼結体の製造方法 - Google Patents

高純度アルミナ焼結体の製造方法

Info

Publication number
JPH0672044B2
JPH0672044B2 JP3216485A JP21648591A JPH0672044B2 JP H0672044 B2 JPH0672044 B2 JP H0672044B2 JP 3216485 A JP3216485 A JP 3216485A JP 21648591 A JP21648591 A JP 21648591A JP H0672044 B2 JPH0672044 B2 JP H0672044B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sintered body
alumina
magnesium oxide
purity
particle size
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP3216485A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH059064A (ja
Inventor
文夫 松下
文茂 西川
景泰 明石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP3216485A priority Critical patent/JPH0672044B2/ja
Publication of JPH059064A publication Critical patent/JPH059064A/ja
Publication of JPH0672044B2 publication Critical patent/JPH0672044B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度アルミナ焼結体
の製造方法に関するもので、特に表面が平滑な高純度ア
ルミナ焼結体の製造方法を提供するものである。近年、
セラミック材料の発達はめざましく、特にアルミナ焼結
体は、その電気絶縁性、熱電導性、化学的安定性、機械
的強度等において優れた物性を有するため、電子材料分
野において、蒸着基板、ICおよびLSIの基板、ハイ
ブリッドIC基板、抵抗基板等の各種基板に使用されて
いる。
【0002】かかる基板材料としてアルミナ焼結体を使
用する際に、基板上に形成する配線、抵抗、コイル、半
導体等各種素子の微細化に伴い、アルミナ基板の表面平
滑性の向上が強く要求されるようになってきた。
【0003】
【従来の技術】従来、アルミナ基板は、アルミナ原料に
焼結助剤として少量の酸化マグネシウムを加えた後、適
当な結合剤、分散剤、可塑剤、溶媒等と混ぜ、ドクター
ブレード法、押し出し法等で成膜し、これを所望の大き
さに切断し、焼結する方法により製造されている。この
ようなアルミナ基板の表面粗さは、中心線平均粗さで
0.1μ以上が一般である。
【0004】最近、アルミナ基板の表面平滑性を向上さ
せる目的で、焼結助剤である酸化マグネシウムの他に、
酸化クロム、酸化タンタル等を添加することが行われて
いる。特に、酸化クロムを添加した場合には、表面平滑
性が中心線平均粗さで0.05μという極めて表面平滑
なアルミナ基板が得られている。また、特開昭59−1
56960〜特開昭59−156962では0.01重
量%を越える不純物を含むアルミナ原料を用い、さら
に、その原料アルミナ粉末の粒径や形状を制御すること
により、表面平滑性を向上させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】アルミナ基板上に配
線、抵抗、コイル、半導体等各種素子を形成する場合、
まず、アルミナ基板上に、真空蒸着、スパッタリング、
MBE法等により、金属、半導体、絶縁体等の薄膜を形
成し、これにフォトエッチング等を施し、微細パターン
を作る方法が一般である。近年、電子材料の高密度集積
化に伴い、かかる微細パターンの更なる微細化が要求さ
れており、これを実現するために、アルミナ基板の表面
平滑性を向上させることが強く望まれている。さらに表
面平滑性が向上すれば、基板上に形成される薄膜の付着
強度、長期安定性、各種物性値のバラツキや信頼性等も
向上することが知られており、かかる観点からも、アル
ミナ基板の表面平滑性の向上は不可欠であるとされてい
る。
【0006】しかし、通常作られているアルミナ基板の
表面平滑性は、中心線平均粗さで0.1μ以上であり、
このような表面平滑性では、基板上に配線、抵抗、コイ
ル、半導体等各種素子の微細化に、もはや対応できなく
なっている。これに対して、アルミナ基板表面平滑性向
上のために不純物を添加する方法は、かなり成功をおさ
めている。しかし、その一方で、添加した不純物が、基
板上に形成した薄膜の物性を低下させるという問題をひ
き起こしている。
【0007】一般に、アルミナの焼結の際、アルミナを
高密度に焼結するために、少量の酸化マグネシウムを添
加する。この酸化マグネシウムは、アルミナの焼結時
に、アルミナ焼結体を構成する粒子の界面すなわち粒界
に存在し、アルミナ焼結体粒子の異常粒成長を抑制する
ことにより、アルミナの高密度焼結を可能ならしめる。
したがって、焼結後のアルミナ焼結体表面においては、
酸化マグネシウムはアルミナ焼結体表面全体に存在する
のではなく、ごく限られた部分、具体的には表面にむき
出しになっている粒界部分に存在するのみである。しか
も、表面付近の酸化マグネシウムは、アルミナの焼結温
度では蒸発し易く、事実上アルミナ焼結体表面の酸化マ
グネシウムは無視でき、表面付近は純粋なアルミナより
なると見なしても事実上さしつかえない。
【0008】これに対して、表面平滑性を向上させるた
めの添加物は、アルミナへ固溶するものが多く、したが
って、表面全体にむき出しになる。例えば、酸化クロム
はアルミナへ固溶してアルミナ粒子全体に分布し、した
がって、基板表面全体に存在する結果になる。さらに、
酸化クロムは、酸化マグネシウムのアルミナ表面からの
蒸発を阻害すると考えられており、酸化クロムを添加し
た場合には、アルミナ焼結体表面にむき出しになってい
る粒界に、酸化マグネシウムが微量存在したままになっ
ており、酸化クロムを添加しない場合に比べて、アルミ
ナ焼結体の表面に散在する酸化マグネシウムの量は多い
と考えられる。すなわち、表面平滑性向上のために酸化
クロムを添加することは、アルミナ基板表面に酸化クロ
ム、酸化マグネシウムの2種類の不純物を存在させる結
果となり、これら不純物が、基板上に形成する薄膜の物
性を低下させるという重大な問題を引き起こす結果とな
っている。
【0009】また、特開昭59−156960〜特開昭
59−156962では、0.01重量%を越える不純
物を含むアルミナ原料を用い、さらに、その原料粉末の
粒径や形状を制御することにより、表面平滑性を向上さ
せているが、実際には、原料中に含まれる不純物が、ア
ルミナ焼結体の表面平滑性向上に相当寄与していると考
えられる。例えば、特開昭59−156960では、平
均粒径が0.2〜0.8μ、純度99.9%のアルミナ
粉末を原料に用い、これをシート成形し、適当な大きさ
に切断した後、空気中、1550℃で2時間焼結するこ
とにより、中心線平均粗さが0.01〜0.05μの表
面平滑なアルミナ焼結体を作製している。特に、平均粒
径が0.3μおよび0.4μの場合には、中心線平均粗
さが0.01μにまで達している。しかし、中心線平均
粗さ0.01μという極めて表面平滑なアルミナ焼結体
は、純度99.99%以上の公知の高純度アルミナ粉末
を原料に使用し、特開昭59−156960の方法で焼
結する場合には、製造不可能である。公知の純度99.
99%以上の高純度アルミナ粉末を原料に使い、通常の
方法で達成することのできる表面粗さは、中心線平均粗
さで0.05μが限度である。このように不純物を利用
して表面平滑性を向上させたアルミナ焼結体では、不純
物が焼結時にアルミナ焼結体粒子中に固溶するため、ア
ルミナ焼結体表面全体にむき出しになり、基板上に形成
する薄膜の物性を低下させるという問題を引き起こす。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、酸化マグ
ネシウム以外の不純物を含まない高純度アルミナ焼結体
の製造において、表面平滑性を向上すべく鋭意研究を重
ねた結果、アモルファス水酸化アルミニウム経由の高純
度アルミナ粉末が、微粉で、かつ分散性に優れ、焼結性
にも優れており、高純度であるにもかかわらず比較的低
温で高密度に焼結し、理論密度近くまで焼結可能である
ことに着目し、この粉体に適した条件および方法で粉末
調整、製膜および焼成を行うことにより、アルミナ焼結
体の粒径を小さく、しかも高密度に焼結することがで
き、表面平滑性の優れた高純度アルミナ焼結体が得られ
ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】すなわち、本発明は、比表面積が3〜15
2 /g、平均粒径が0.6〜1.4μ、かつ0.2μ
毎に区切った粒度分布において最大の割合を占める区分
が平均粒径の0.1〜0.6倍の範囲にあり、その割合
が他のいずれの区分に対しても1.5倍以上であるαア
ルミナ粉末に焼結助剤を加え、水素中、真空中または酸
素中で焼成することを特徴とする、焼結体を構成する粒
子の大きさが3μ以下であり、かつ平均粒径が1〜3
μ、焼結体の密度が3.85g/cm3 以上、焼結体の表
面の平滑性が中心線平均粗さで0.05〜0.020
μ、焼結体に含まれる酸化マグネシウムの量が0.07
〜0.15重量%、酸化マグネシウム以外の不純物総量
が0.01重量%以下である高純度アルミナ焼結体の製
造方法である。
【0012】従来の方法が不純物を用いて表面平滑性を
向上させようとするのに対し、本発明の方法は、それと
全く異なった発想に基づいている。それは、アルミナ焼
結体を高純度のまま、その表面平滑性を向上させるもの
であり、不純物を添加せずにこれを実現した点で、全く
独創的かつ画期的なものである。
【0013】本発明において使用するアルミナ粉末は、
比表面積が3〜15m2 /g、平均粒径が0.6〜1.
4μ、かつ0.2μ毎に区切った粒度分布において最大
の割合を占める区分が平均粒径の0.1〜0.6倍の範
囲にあり、その割合が他のいずれの区分に対しても1.
5倍以上であるαアルミナ粉末である。
【0014】アルミナ粉末は、工業的にはアルミン酸ソ
ーダを酸で中和して水酸化アルミニウムを生成させ、こ
れを焼成することによって得られるが、このようにして
得られるアルミナ粉末は、通常、不純物が多く低純度品
しか得られない。しかし、本発明者らは、特願昭59−
248083および特願昭59−249787を同時に
用いることにより、上記アルミン酸ソーダ法に改良を加
え、高純度アルミナ粉末を得ることに成功している。ア
ルミン酸ソーダ法から得られる水酸化アルミニウムは、
通常、ジブサイト構造を有するが、本発明者らは、特願
昭59−248083を用いることにより、アモルファ
ス構造の高純度水酸化アルミニウムを生成させ、さら
に、特願昭59−249787を用い、この高純度水酸
化アルミニウムを焼成して、平均粒子径が小さく、分散
性がよく、焼結性の優れた前記αアルミナ粉末を製造す
ることができたのである。
【0015】本発明の高純度アルミナ焼結体は、前記α
アルミナ粉末を用い、以下の手順で製造できる。まず、
高純度アルミナ粉末を、焼結助剤、結合剤、可塑剤、溶
媒、分散剤等と混合する。焼結助剤としては、酸化マグ
ネシウム粉末、または熱処理によって酸化マグネシウム
になるようなマグネシウム塩、たとえば、炭酸マグネシ
ウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグ
ネシウム等を使用する。
【0016】結合剤としては、たとえば、セルロース系
ポリマー、アクリル系ポリマー、ビニルアルコール系ポ
リマー、ポリエチレン、ポリスチレン、イソシアネート
等が用いられる。可塑剤としては、フタル酸エステル
類、燐酸エステル類、脂肪酸エステル類、グリコールの
誘導体、トリアセチレン、塩化パラフィン、ひまし油等
が用いられる。
【0017】溶媒としては、アルコール類、セロソルブ
類、ケトン類、アミド類、エステル類、エーテル類、炭
化水素類、塩素化炭化水素類、芳香族類、水等から選ん
で使用すればよい。さらに、分散剤としては、市販の合
成界面活性剤でノニオン系、アニオン系およびカチオン
系等の中から選んで使用すればよい。
【0018】これら添加剤のうち、結合剤、可塑剤、溶
媒、分散剤の添加量は、アルミナ粉末の良好な分散を維
持し、高密度の膜成形体を得るために、いずれも重要で
あるが、特に結合剤の添加量は重要である。すなわち、
結合剤の添加量は、アルミナ粉体が最も高密度に充填し
た時、その粉体のすき間を埋める程度の量が適当であ
り、その量よりも結合剤が多ければ、粉体同志のすき間
が大きくなり、高密度の膜成形体は得ることができず、
また、その量よりも少なすぎると、粉体同志の部分凝集
が生じ、良好な分散が得られず、膜成形体の密度は低く
なる。本発明の高純度アルミナ粉末を原料に使用する場
合、適当な結合剤量は、結合剤の比重が1.0のとき、
アルミナ粉末100重量部に対して、6〜15重量部が
適当であることが、検討の結果明らかになった。
【0019】混合の方法は、ボールミル、振動ミル、攪
拌等の通常の方法を用いれば足りるが、その方法により
適切な分散時間を選択しなければならない。得られた混
合物は、必要ならば濾過、脱泡した後、ドクターブレー
ド法、押し出し法等通常の方法で製膜する。得られた膜
成形体は、乾燥後、適当な大きさに切断し、空気中40
0〜1000℃で仮焼して、膜に含まれている有機物を
除去する。さらに、これを水素中または真空中で、14
00〜1650℃で焼結して高純度アルミナ焼結体を得
る。この焼結の段階で、不純物を0.01重量%を超え
て含むアルミナ粉末を原料にした場合、空気中で焼結し
ても表面平滑な焼結体が得られることが特開昭59−1
56960〜特開昭59−156962で示されてい
る。しかし、本発明のαアルミナ原料粉末は、高純度で
あるため、空気中で焼結すると、焼結体中に多くの気孔
が含まれてしまい、この気孔が焼結体表面に出ている場
合は穴になる。このため、本発明の高純度アルミナ焼結
体は、空気中で焼結するとことは好ましくなく、水素中
または真空中または酸素中で焼結しなければならない。
すなわち、水素中または真空中または酸素中で焼結して
はじめて、気孔の少ない高純度アルミナ焼結体を得るこ
とが可能になる。
【0020】本発明で使用するαアルミナ原料は、微粉
で粉末粒径がそろっており、極めて分散性がよく充填性
に優れているため、凝集体や気泡が存在しない均一で密
度が高い膜成形体を得ることが可能であり、したがっ
て、比較的低温で高密度に焼結することが可能である。
【0021】かかる優れたαアルミナ原料粉末を用い、
しかも、この原料粉末に適した条件および方法で粉末調
整、製膜、さらに焼成を行ってはじめて、本発明の表面
平滑な高純度アルミナ焼結体を達成できる。
【0022】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体は、焼結体を構成する粒子の大きさが3μ以下であ
り、かつ平均粒径が1〜3μ、焼結体の密度が3.85
g/cm3 以上、焼結体の表面の平滑性が中心線平均粗さ
で0.05〜0.020μ、焼結体に含まれる酸化マグ
ネシウムの量が0.07〜0.15重量%、酸化マグネ
シウム以外の不純物総量が0.01重量%以下である。
【0023】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体は、これを構成する粒子の平均粒径が1〜3μの範囲
にある。本発明で焼結体の平均粒径は、走査型電子顕微
鏡観察により得られる。すなわち、焼結体の表面の電子
顕微鏡写真を撮り、この写真上に任意の直線を引き、こ
の直線の長さをL、直線を横ぎる粒界の個数をnとした
時、直線の分割長さlを数1により求め、
【0024】
【数1】
【0025】さらに、直線の分割長さの平均を数2によ
り求め、
【0026】
【数2】
【0027】さらに、この分割長さの平均を1.5倍し
て平均粒径dを数3により求める。
【0028】
【数3】
【0029】ただし、mはlの総測定点数である。上記
計算において、nは5以上が望ましく、1枚の写真の中
でnが5以上になるような適当な倍率で写真を撮るのが
好ましい。lの測定点数は、1枚の写真につき1〜5、
mは50以上が好ましい。
【0030】本発明により製造するアルミナ焼結体の表
面は、アルミナ粒子を敷きつめた構造をしており、アル
ミナ粒子が若干盛り上がって凸部を形成し、粒界部分が
落ち込んで凹部を形成している。粒界の落ち込みの程度
は、アルミナ粒子の大きさに依存しており、アルミナ粒
子が小さければ小さいほど粒界の落ち込みは小さくな
り、したがって、アルミナ焼結体の表面は平滑になる。
すなわち、アルミナ焼結体の表面平滑性を向上させるた
めには、焼結体を構成するアルミナ粒子の大きさを小さ
くしなければならない。しかし、アルミナ粒子を無限に
小さくすることは不可能である。これは、出発原料であ
るアルミナ原料粉末の粒子の大きさによって決まるので
あるが、通常、アルミナ原料粉末の平均粒子径は0.1
μ以上であって、これを使う限り、アルミナを高純度に
焼結するためには、焼結体を構成するアルミナ粒子の粒
径は1μ以上にならざるを得ない。また、アルミナ粒子
の粒径を大きくしていけば、焼結体の表面平滑性は悪く
なるわけであるから、おのずから粒径には上限が生じ
る。本発明の場合、焼結体を構成するアルミナ粒子の大
きさは3μ以下であり、これより大きいと焼結体表面が
粗くなり、もはや許容できない程度になる。
【0031】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体の密度は、好ましくは3.85g/cm3 以上であり、
より好ましくは3.90g/cm3 以上である。高純度ア
ルミナ焼結体の密度は、その重量を体積で割って求めれ
ばよく、その測定は、通常知られているディメンジョン
法やアルキメデス法によって行えば足りる。
【0032】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体の密度は、好ましくは3.85g/cm3 以上である
が、これは、アルミナの理論密度3.99g/cm3 の約
96.5%に相当しており、これより密度が低いと、高
純度アルミナ焼結体の表面の粒界部分に穴が実用上無視
できないほど多く存在するようになる。焼結体表面の穴
は、表面に薄膜を形成した時、薄膜と焼結体との密着不
良や、薄膜そのものの欠損を生じたりする原因となるた
め、焼結体表面の穴が多ければ実用上問題が生じる。し
かし、高純度アルミナ焼結体の密度が3.85g/cm3
以上であれば、焼結体表面の穴は少なくなり、実用上問
題はなくなる。さらに、より好ましくは3.90g/cm
3 以上であるが、この場合は、焼結体表面の穴はほとん
どなくなり、実用上最も好ましくなる。
【0033】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体の表面平滑性は、焼き上がりの状態で、中心線平均粗
さが0.05〜0.020μであり、好ましくは0.0
45〜0.025μである。本発明でいう焼き上がりの
状態とは、焼結した後、焼成炉から取り出したままの状
態を言うのであり、研削、研磨、切断等の後処理を施し
ていないものを言う。
【0034】また、本発明でいう中心線平均粗さとは、
JISB0601で規定されるもので、本発明の場合、
測定長さlは2.5mm、カットオフ値λc は0.08mm
とし、また、測定に使用する触針は、針先の曲率半径が
2μである。かかる中心線平均粗さは、たとえば、小坂
研究所(株)製表面情報処理機能付万能表面形状測定器
SE−3Hで測定できる。
【0035】高純度アルミナ焼結体を基板として使用す
る場合、アルミナ基板上に微細パターンを形成するため
には、基板表面ができるだけ平滑であることが望まし
い。これは、アルミナ基板表面が平滑でなければ、フォ
トレジストを均一に、かつ平坦に塗ることが困難とな
り、したがって、露光時にピンボケが生じ、微細パター
ンをはっきりと書くことができなくなるからである。す
なわち、アルミナ基板表面が粗ければ、フォトレジスト
を塗った時に、その粗さがレジスト面に反映され、平坦
なレジスト面が得られない。したがって、できるだけア
ルミナ基板の表面は平滑でなければならない。
【0036】本発明のアルミナ基板の表面粗さは、中心
線平均粗さ表示で0.05μ以下であり、より好ましく
は0.045μ以下である。中心線平均粗さが0.05
μ以下であれば、微細パターンのピンボケは少なく、実
用上問題とならず、0.045μ以下であれば、ピンボ
ケは事実上無視できるようになる。このように、アルミ
ナ基板の表面は、できるだけ平滑であることが望まし
い。しかし、先に記述したように、平均粒子径が0.1
μ以上のアルミナ原料粉末を使用して高密度焼結を行う
限り、焼結体を構成するアルミナ粒子の大きさは1μ以
上にならざるを得ない。このため、その表面平滑性には
限界が生じる。焼結体の密度を実用上問題とならない程
度に高密度にする場合、表面平滑性の限界は0.020
μであり、0.025μ以上であれば、焼結体はさらに
高密度になり、実用上最も好ましくなる。
【0037】本発明により製造する焼結体に含まれる酸
化マグネシウムの量は0.07〜0.15重量%であ
る。アルミナの焼結時に酸化マグネシウムを添加する
と、酸化マグネシウムはアルミナ焼結体の粒界に存在
し、アルミナ焼結体粒子の異常粒成長を抑制することに
より、アルミナの高密度焼結を可能にする。焼結体に含
まれる酸化マグネシウムの量が0.07重量%以上にな
るように酸化マグネシウムを添加すれば、アルミナ焼結
体をほとんど理論密度にまで焼結することが可能にな
る。このように酸化マグネシウムを添加しても、アルミ
ナ焼結体表面付近の酸化マグネシウムは、アルミナの焼
結時にある程度蒸発するため、その添加量が少なければ
実用上問題は起こらない。しかし、酸化マグネシウムの
添加量が増えると蒸発量が追いつかず、表面付近の粒界
に残る酸化マグネシウムの量が多くなり、実用上問題に
なる。そのため、焼結体に含まれる酸化マグネシウムの
量が0.15重量%以下になるように酸化マグネシウム
を添加することが必要であり、このように添加すれば、
表面付近はほとんど純粋なアルミナのみになる。
【0038】本発明により製造する高純度アルミナ焼結
体は、酸化マグネシウム以外の不純物総量が0.01重
量%以下である。酸化マグネシウム以外の不純物は、極
く少量ならば無視できるが、その量が多ければ、これら
不純物はアルミナ焼結体粒子中に固溶し、したがって、
焼結体表面全体に存在するようになるため、アルミナ焼
結体を基板に使用する場合には、基板上に形成した薄膜
の物性を低下させる。かかる不純物の総量の上限は0.
01重量%であり、これ以下であれば実用上問題はなく
なる。
【0039】
【実施例】
実施例1 高純度アモルファス水酸化アルミニウムを焼成して得ら
れた高純度アルミナ原料粉末(純度99.99%)10
0gに、マグネシア0.1g、メチルエチルケトン36
g、n−ブチルアルコール9g、ジブチルフタレート1
4g、スパン851gをボールミルで24時間混合した
後、ポリビニルブチラール10gを加え、さらに24時
間混合し、ドクターブレード法で成膜した。得られた膜
を100℃で96時間乾燥した後、焼結後2インチ角の
大きさになるように切断した。これを電気炉で空気中、
1000℃で1時間焼成した後、さらに水素中、147
0℃で30分間焼成した。
【0040】得られた高純度アルミナ焼結体を走査型電
子顕微鏡で観察した結果、平均粒径1.4μであった。
また、薄板の重さを秤量し、ノギスおよびマイクロメー
ターで縦横および厚さを各々測定して体積を計算し、こ
れらの値を使って密度を計算した結果、3.87g/cm
3 であった。これは理論密度に対して97%であり、比
較的低い温度で焼結しているにもかかわらず、極めて高
い密度を有することがわかった。さらに、中心線平均粗
さを測定したところ、0.024μであり、極めて表面
が平滑であった。
【0041】また、得られた焼結体の化学分析を行った
ところ、焼結体に含まれている酸化マグネシウムは0.
1重量%、酸化マグネシウム以外の不純物は、Na2
50ppm 、SiO2 8ppm 、Fe2 2 8ppm であ
り、その他の不純物は検出できなかった。酸化マグネシ
ウム以外の不純物の総量は66ppm 、すなわち、0.0
07重量%であることがわかった。
【0042】実施例2 実施例1で使用したアルミナ原料粉末と同じ高純度アモ
ルファス水酸化経由の高純度アルミナ原料粉末(純度9
9.99%)100gに、マグネシア0.08g、ブチ
ルベンジルフタレート3g、メチルエチルケトン30
g、1,1,1−トリクロロエタン65g、スパン20
1gをボールミルで48時間混合し、これにポリメチ
ルメタアクリレート15gを加え、さらにボールミルで
72時間混合し、ドクターブレード法で成膜した。これ
を実施例1と同様の手順で仮焼まで行ない、さらに水素
中、1550℃で1時間焼成した。
【0043】得られた高純度アルミナ焼結体を走査型電
子顕微鏡で観察した結果、平均粒径2.1μであった。
また、密度を測定したところ、3.91g/cm3 であ
り、これは理論密度に対して98%であり、極めて高密
度であることがわかった。さらに、焼結体表面の中心線
平均粗さを測定したところ、0.038μであり、極め
て表面が平滑であることがわかった。
【0044】また、得られた焼結体の化学分析を行った
ところ、焼結体に含まれている酸化マグネシウムは0.
08重量%、酸化マグネシウム以外の不純物は、Na2
O48ppm 、SiO2 11ppm 、Fe2 3 10ppm で
あり、これら酸化マグネシウム以外の不純物の総量は6
9ppm 、すなわち、0.007重量%であった。
【0045】
【発明の効果】本発明の方法によれば、酸化マグネシウ
ム以外の不純物総量が0.01重量%以下の高純度で、
かつ焼結体の表面の平滑性が中心線平均粗さで0.05
〜0.020μという非常に平滑性に優れた焼結体を製
造することができる。
【0046】加えて、本発明により製造される高純度ア
ルミナ焼結体は、表面が極めて平滑であるため、焼結体
表面に微細パターンを作ることが可能であり、さらに、
各種素子をこの基板上に形成する場合、各種素子のロッ
ト間のバラツキや長期安定性が向上する。また、不純物
量が極めて微量であるため、基板による各種素子への汚
染が少なく、各種素子の安定性は、この点からも大きく
向上する。
【0047】さらに、本発明により製造される高純度ア
ルミナ焼結体は、高密度で、かつ高純度であるため、電
気絶縁性、熱伝導性、化学的安定性、機械的強度等にお
いて、アルミナ本来の優れた性質を引き出すことに成功
している。このため、従来のアルミナ基板では困難であ
った使い方が可能となった。たとえば、薄型の基板、高
周波用基板、高放熱性基板、透光性アルミナ板等であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 比表面積が3〜15m2 /g、平均粒径が0.6〜1.
    4μ、かつ0.2μ毎に区切った粒度分布において最大
    の割合を占める区分が平均粒径の0.1〜0.6倍の範
    囲にあり、その割合が他のいずれの区分に対しても1.
    5倍以上であるαアルミナ粉末に焼結助剤を加え、水素
    中、真空中または酸素中で焼成することを特徴とする、
    焼結体を構成する粒子の大きさが3μ以下であり、かつ
    平均粒径が1〜3μ、焼結体密度が3.85g/cm3
    上、焼結体の表面の平滑性が中心線平均粗さで0.05
    〜0.020μ、焼結体に含まれる酸化マグネシウムの
    量が0.07〜0.15重量%、酸化マグネシウム以外
    の不純物総量が0.01重量%以下である高純度アルミ
    ナ焼結体の製造方法。
JP3216485A 1991-08-02 1991-08-02 高純度アルミナ焼結体の製造方法 Expired - Lifetime JPH0672044B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3216485A JPH0672044B2 (ja) 1991-08-02 1991-08-02 高純度アルミナ焼結体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3216485A JPH0672044B2 (ja) 1991-08-02 1991-08-02 高純度アルミナ焼結体の製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP60227883A Division JPH0611664B2 (ja) 1985-10-15 1985-10-15 ▲高▼純度アルミナ焼結体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH059064A JPH059064A (ja) 1993-01-19
JPH0672044B2 true JPH0672044B2 (ja) 1994-09-14

Family

ID=16689172

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3216485A Expired - Lifetime JPH0672044B2 (ja) 1991-08-02 1991-08-02 高純度アルミナ焼結体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0672044B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TW200300676A (en) 2001-12-04 2003-06-16 Tanabe Seiyaku Co Biotin intermediate and its production
JP4889223B2 (ja) * 2004-02-23 2012-03-07 京セラ株式会社 酸化アルミニウム質焼結体とこれを用いた半導体製造装置用部材並びに液晶製造装置用部材
TWI629753B (zh) * 2013-04-26 2018-07-11 日本碍子股份有限公司 半導體用複合基板之操作基板
CN104798177B (zh) * 2013-07-18 2017-03-15 日本碍子株式会社 半导体用复合基板的操作基板
JP5849176B1 (ja) * 2014-02-12 2016-01-27 日本碍子株式会社 半導体用複合基板のハンドル基板および半導体用複合基板
DE102016224443A1 (de) * 2016-12-08 2018-06-14 Siemens Aktiengesellschaft Erosionsbeständiger keramischer Werkstoff, Pulver, Schlicker und Bauteil
WO2018230446A1 (ja) 2017-06-13 2018-12-20 日本碍子株式会社 半導体製造装置用部材

Also Published As

Publication number Publication date
JPH059064A (ja) 1993-01-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3749620B2 (ja) セラミックス成形体の焼成収縮を制御する方法
JP4987238B2 (ja) 窒化アルミニウム焼結体、半導体製造用部材及び窒化アルミニウム焼結体の製造方法
HU215748B (hu) Alumínium-oxid kompozíció, öntött alumínium-oxid termék, alumínium-oxid kerámia, eljárás a kerámia előállítására és alumínium-oxid részecskék alkalmazása oxidkerámiákhoz
JP2005314215A (ja) 緻密質コーディエライト焼結体及びその製造方法
JP2004262750A (ja) 窒化アルミニウム質材料および半導体製造装置用部材
JP2002087894A (ja) セラミックス部材およびその製造方法
JPH0672044B2 (ja) 高純度アルミナ焼結体の製造方法
JP5303345B2 (ja) 導電性ジルコニア焼結体
JP6600106B2 (ja) アルミナ基板およびこれを用いた抵抗器
JP2007277031A (ja) 誘電、圧電体の性質を持つナノサイズのチタン酸バリウム粉末を焼結した圧電セラミックス及びその製造方法
JPH0611664B2 (ja) ▲高▼純度アルミナ焼結体
JP2020097509A (ja) ムライト質焼結体及びその製造方法
JP2009012990A (ja) 誘電体磁器およびこれを用いた積層セラミックコンデンサ
US4981823A (en) Beryllium oxide based ceramics
JP5240228B2 (ja) スパッタリングターゲット、及び、垂直磁気記録媒体の製造方法
JPH0789759A (ja) テープキャスト用アルミナ、アルミナ組成物、アルミナグリーンシート、アルミナ焼結板およびその製造方法
JP2005082429A (ja) ジルコニア製熱処理用部材
KR101925215B1 (ko) 다결정체 지르코니아 화합물 및 이의 제조 방법
JP4993812B2 (ja) ジルコニア質焼結体からなる熱処理用部材
US3103440A (en) Electrostrictive barium titanate ceramic with
JP3117535B2 (ja) アルミナ基板の製造方法
JP3274330B2 (ja) セラミックス成形体の焼成収縮を制御する方法
WO2022163150A1 (ja) 焼結体
JP2007031269A (ja) マシナブルガラスセラミックス及びその製造方法
JPS61127660A (ja) アルミナ薄板焼結体

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 19950228