JPH0662678B2 - ヒアルロン酸固定化蛋白質及びその製造方法 - Google Patents

ヒアルロン酸固定化蛋白質及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はヒアルロン酸固定化蛋白質及びその製造方法に
関し、特に保湿性、粘弾性、生体適合性及び生理活性を
具備するヒアルロン酸固定化蛋白質及びその製造方法に
関する。
本発明のヒアルロン酸固定化蛋白質は皮膚保護剤、機能
性化粧品等に利用される。
〔従来技術〕
ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸とN−アセチル−D
−グルコサミンが交互に結合した高分子量の多糖類であ
り、動物の組織中に広く分布している。そして動物の組
織中ではこのヒアルロン酸は高い保水性により組織水の
重要な支持物質として作用し、また水和したヒアルロン
酸は、高い粘弾性により潤滑物質としても作用し、常に
重要な役割をはたしている。
従来、ヒアルロン酸は上述の性質により例えば化粧品の
保湿剤として使用されているが、近年ではヒアルロン酸
に対する研究がさらに進み、その薬理作用が解明される
につれて、眼科用治療薬や関節炎治療薬等としての利用
が図られつつある。さらにこのようなヒアルロン酸の性
質を保ちつつ、これを化学的に変性してその安定性を向
上させ、さらに付加価値を与える研究も進められてい
る。例えば、特開昭62-64802号公報には、ヒアルロン酸
中のCOOH基に各種アルコールを反応させてエステル
としたものは薬理作用を有し、またフィルム状、糸状、
スポンジ状等に成形して利用し得ることが報告されてお
り、特開昭61-138601号公報にはヒアルロン酸と他の水
溶性ポリマー(コラーゲン、エラスチン、アルブミン、
グロブリン等の各種の蛋白質を含む。)をジビニルスル
ホンを用いて架橋してヒアルロン酸含有ゲルを生成さ
せ、これを医薬用剤、化粧品用剤などとして利用し得る
ことが報告されている。
一方、「バイオテクノロジー事典」(昭和62年、シーエ
ムシー社刊行)中には、生体の保護材料(例えば人工皮
膚など)として乾燥豚皮、シリコーン−ナイロン−コラ
ーゲン複合体、コラーゲン不織布、セファデックス(デ
キストランをエピクロルヒドリンで架橋させたポリマ
ー)などが使用されることが記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、これらを用いた皮膚欠損部の保護材料は
水分透過性の調節が難しく、これを実際に使用した場
合、過剰な水分の蒸散により皮膚に脱水症状が生じた
り、また水分の蒸散の不足により保護材料の下部に患部
の浸出液がたまるなど種々の問題を生起することがあっ
た。このように上記の保護材料は生体との親和性に劣
り、新生した皮膚と一体にならないばかりか、新生した
皮膚を傷めてしまうという問題があった。
さらに保護材料の形状としては、蛋白質系物質の膜状体
ばかりではなく、繊維を織った布状体としても使用する
と通気性が向上するが、いずれの場合も同様な問題があ
り、またこの蛋白質材料を化粧品に応用する場合も、皮
膚への親和性や保水性に関する問題があり、共にこのよ
うな問題のない新規な材料の出現が期待されていた。
〔課題解決の手段〕
本発明は上記問題を解決することを目的とし、その構成
は、第1の発明は、蛋白質に、ヒアルロン酸がシアヌー
ル酸類の残基を介して固定化されていることを特徴と
し、第2の発明は、蛋白質にヒアルロン酸を反応させる
ヒアルロン酸固定化蛋白質の製造方法において、pH3以
上、温度40℃以下の条件のもとに蛋白質及びヒアルロ
ン酸と共にカルボジイミド類または塩化シアヌール或い
は塩化シアヌール誘導体類を共存、反応させることを特
徴とし、第3の発明は、蛋白質にヒアルロン酸がシアヌ
ール酸類の残基を介して固定化されている蛋白質皮膜か
らなる皮膚保護材料を特徴とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に係る蛋白質としてはコラーゲン、水溶性
絹蛋白質、ゼラチン等の水溶性蛋白質や卵殻膜、羊膜、
豚等の皮膚など皮膜状の蛋白質を用いることができる。
またヒアルロン酸は前述した通り動物の組織中に広く分
布し、化学的にはD−グルクロン酸とN−アセチル−D
−グルコサミンが交互に結合した高分子量の多糖類であ
る。その分子量は通常50万以上であるが、本発明の製
造方法による製品の保水性を高めるためには分子量約1
00万以上のものが好ましい。
本発明はこれら蛋白質とヒアルロン酸とを反応させるに
際して、この両者と共に架橋剤としてのカルボジイミド
類または塩化シアヌール類を共存、反応(固定化化反
応)させることを特徴とするものである。このカルボジ
イミド類の好ましい代表例としては、水溶性の1−エチ
ル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミ
ド塩酸塩や1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニ
ル−4−エチル)−カルボジイミド−p−トルエンスル
ホナート等がある。また塩化シアヌール類としては塩化
シアヌール、及び塩化シアヌールのCl基をNHCH
COOH基、OCHCOOH基、NH基などで置換
した化合物がある。
蛋白質、ヒアルロン酸及び架橋剤との固定化反応はpH3
以上、温度40℃以下の条件下で行われる。実際にはヒ
アルロン酸水溶液と蛋白質の水溶液或いは懸濁液の混合
液中にカルボジイミド類または塩化シアヌール類を添加
して反応させたり(1段法)、まずヒアルロン酸水溶液
あるいは蛋白質の水溶液或いは懸濁液の一方に架橋剤を
添加して反応させた後に他方を添加し、反応させる(2
段法)ことができる。
この固定化反応に使用されるヒアルロン酸水溶液の濃度
は好ましくは2重量%以下である。2重量%以上の濃度
であると水溶液の粘度が高すぎ、反応液系の撹拌効率、
反応の進行及び反応の均一性などが低下する。また蛋白
質の水溶液或いは懸濁液の濃度は好ましくはおよそ2重
量%以下である。濃度が2重量%以上になると、反応液
系の粘度が高すぎ、反応液系の撹拌効率、反応の進行及
び反応の均一性などが低下する。さらに蛋白質が水不溶
性の場合、これを水に浸漬して水溶液や懸濁液の場合と
同様に反応を進めることができる。この場合には反応率
を高めるため、あらかじめ蛋白質をドデシル硫酸ナトリ
ウムなどのような膨潤剤で膨潤させた後、これを固定化
反応に付することが好ましい。
蛋白質へのヒアルロン酸の固定化反応は固定化剤として
カルボジイミド類を用いる場合、蛋白質のNH基に対
してヒアルロン酸中のCOOH基をカルボジイミド類固
定化剤を介してカップリングしアミド結合することに基
づいている。固定化剤として塩化シアヌールや塩化シア
ヌール誘導体を用いる場合、蛋白質のNH基、OH
基、SH基等の置換基に対してヒアルロン酸中のOH基
を塩化シアヌールや塩化シアヌール誘導体の残基を介し
て結合することに基づいている。そしてこれらの固定化
反応に適した条件は、pH3以上、温度40℃以下であ
る。架橋剤として塩化シアヌール類を用いた場合には、
反応の進行と共に脱塩酸反応が生じ反応系のpHが低下す
るのでNaOH、KOH、NaCO等のアルカリ剤
でpH3以上になるよう調整しながら反応を進めることが
望ましい。また大量のバッファー液中で反応させること
もできる。他方、反応温度が40℃以上になると、ヒア
ルロン酸の分解に伴う分子量の低下が起こるので好まし
くない。以上の条件以外では反応効率が低く、実質的に
固定化反応が進行しない。
本発明の製造方法を実施する場合、塩化シアヌール類は
水に対する溶解度が小さく、かつ加水分解され易いの
で、反応を均一にかつ効率的に進行させるために反応液
中にジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメ
チルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の反応に対
し不活性な親水性有機溶剤を共存させることが望まし
い。
本発明により製造されたヒアルロン酸固定化蛋白質は次
の方法により精製することができる。すなわち、蛋白質
として水不溶性蛋白質を用いた場合には、反応液を塩
酸、硝酸、硫酸等の鉱酸で中和した後純水で洗浄し、そ
のまま湿潤状態で保存するか、または凍結状態、真空乾
燥等により乾燥した精製物として保存することができ
る。この過程において膜状物、糸状体、粒状体など適宜
成形した状態のものとすることができる。また蛋白質と
して水溶性蛋白質を用いた場合には、前記と同様に中和
した後、反応液を適当な方法で製膜、紡糸、微粒子化
し、水洗してヒアルロン酸固定化蛋白質の精製物とする
ことができる。例えば、上記反応液をドクターブレード
法等の方法で製膜後、メタノール等で不溶化させて膜状
のヒアルロン酸固定化蛋白質を製造することができ、ま
た例えば上記反応液をメタノール、アセトン等の不溶化
溶媒中で紡糸して繊維状のヒアルロン酸固定化蛋白質を
製造することができ、さらに例えば反応液を撹拌したメ
タノール、アセトン等の不溶化溶媒中に添加して粒子状
のヒアルロン酸固定化蛋白質を製造することができる。
このようにして得られたヒアルロン酸固定化蛋白質は水
で湿潤させ、トルイジンブルーで染色するとメタクロマ
ジー現象で赤紫、ないし青色に変色することによりヒア
ルロン酸の蛋白質への固定化が確認される。また、臭化
カリウムを用いた赤外線吸収スペクトルの測定では、蛋
白質のN−H基及びヒアルロン酸のC−OH基に基づく
吸収(1520cm-1及び1060cm-1)が変化していること
によっても確認される。さらに固定化されたヒアルロン
酸量は臭化カリウムを用いたFT−IRのチャートで検
量線から定量することができる。〔「機器分析の手引
き」(小川雅彌監修、1979年、化学同人社発行)第10頁
に記載の方法による〕 本発明によって製造されたヒアルロン酸固定化蛋白質は
保水性及び粘弾性に優れている上、ヒアルロン酸及び蛋
白質の性質上、生体適合性にも優れている。
〔作用〕
本発明は、水溶性カルボジイミド類のようなアミド化試
薬や塩化シアヌール類等の固定化剤を用いることにより
ヒアルロン酸が蛋白質にきわめて強固に固定化されるこ
とを見出して完成したものである。固定化剤としてカル
ボジイミド類を用いた場合にはヒアルロン酸はアミド結
合によって蛋白質に強固に結合し、固定化剤として塩化
シアヌール誘導体を用いた場合は、ヒアルロン酸はシア
ヌール酸類の残基を介して強固に固定化される。
〔実施例〕
以下、本発明をその実施例に基づいて詳細かつ具体的に
説明する。なお、実施例において使用されたヒアルロン
酸は醗酵法により製造されたもので、分子量は約150
万である。また濃度比における「%」は「重量%」を示
す。
実施例1(ヒアルロン酸固定化卵殻膜の製造) 0.2%ヒアルロン酸水溶液10mlに、0.2モルの1−エ
チル−3-(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミ
ド塩酸塩水溶液10ml(pH4)を加え、液温40℃で
10分間処理した後、鶏卵から取り出した卵殻膜100
mgを加え、液温40℃で10分間反応させた。
反応後、試料をよく水洗し、トルイジンブルーで染色
し、顕微鏡でよく観察したところ、斑点状にヒアルロン
酸が固定していることが確認された。
試料の表面をFT−IR反射法により測定し、絹蛋白質
で作成した検量線を用いてヒアルロン酸の含有量を見積
もったところ、約19%であった。
実施例2(ヒアルロン酸固定化絹蛋白質膜の製造) 精選した家蚕繭を9モルの臭化リチウムに溶解させ、蒸
留水で透析して得られた液状絹蛋白質をポリエステルフ
ィルム上に流延し、絹蛋白質膜を成形させた。この膜を
80%メタノールで処理して不溶化した後、臭化リチウ
ムの希薄溶液に浸けた。
0.25%ヒアルロン酸溶液30mlに0.02モルの塩化シア
ヌール/ジオキサン溶液15mlを加え、水酸化ナトリ
ウムでpH10に調整した後、絹蛋白質膜を入れ液温37
℃で10時間反応させた。
反応後膜を水洗し、トルイジンブルーで染色したとこ
ろ、斑点状に赤紫色に染色し、絹蛋白質膜には斑点状に
ヒアルロン酸が固定化されていることが認められた。
実施例3(ヒアルロン酸固定化絹蛋白質微粒子の製造) 家蚕繭0.5gを臭化リチウムに溶解させ、透析中に沈澱
してきた絹蛋白質を含む懸濁液50mlを、0.02モルの
塩化シアヌール/ジオキサン溶液25mlを用いて0.25
%のヒアルロン酸溶液100mlと液温0℃で反応させ
たところ、反応中に絹蛋白質が溶解し均質な溶液となっ
た。12時間反応させた後反応液を激しく撹拌したアセ
トン中に入れると、微粒子状のヒアルロン酸固定化絹蛋
白質が得られた。このような微粒子状のヒアルロン酸固
定化蛋白質は化粧品基材として優れた皮膚親和性を有す
ると共に、無水の状態で取扱うことができ、流通上にも
利点を有する。
なお、この条件ではヒアルロン酸並びに絹蛋白質は各々
単独ではアセトンに溶解して沈澱しない。この試料につ
いてFT−IRにより測定すると、微粒子中のヒアルロ
ン酸含有量はおよそ29%であった。
実施例4(ヒアルロン酸固定化絹蛋白質膜の製造) 0.5%のヒアルロン酸水溶液30mlに0.02モルの塩化
シアヌール/アセトン溶液15mlを加え、水酸化ナト
リウムでpH10に調整した後、実施例2における場合と
同様にして得られた液状の絹蛋白質30mlを加え、穏
やかに撹拌しながら温度0℃で16時間反応させた。
反応後、得られた粘稠な溶液をポリプロピレンフィルム
上に流延し、ヒアルロン酸固定化絹蛋白質の膜状物を形
成した。この水溶性膜を80%メタノールに入れて処理
し水不溶化させた。水不溶化処理した膜をトルイジンブ
ルーで染色したところ、赤紫色に染色し、絹膜にヒアル
ロン酸が固定化されていることが認められた。
実施例5(ヒアルロン酸固定化絹蛋白繊維の製造) 実施例4と同様にして得られたヒアルロン酸固定化絹蛋
白質の粘稠な溶液を注射器によってアセトン中に押し出
したところ、糸状の成形物が得られた。これをトルイジ
ンブルーで染色したところ、赤紫色に染色し、絹繊維に
ヒアルロン酸が固定化されていることが認められた。
この糸状物は更に延伸し、撚糸し、織布や不織布とする
ことができ、皮膚被覆材としての用途が拡大した。
実施例6(ヒアルロン酸固定化コラーゲン繊維の製造) 0.5%のヒアルロン酸水溶液30mlに0.02モルの塩化
シアヌール/アセトン溶液15mlを加え、水酸化カリ
ウムでpH10に調整した後、0.5%コラーゲン水溶液2
0mlを加え、温度10℃で緩やかに撹拌しながら15
時間反応させた。
反応液に食塩0.5gを添加して均一にし、これを注射器
によってアセトン中に押し出したところ、糸状の成形物
が得られた。これをトルイジンブルーで染色したとこ
ろ、赤紫色に染色し、コラーゲン繊維にヒアルロン酸が
固定化されていることが認められた。
実施例7(ヒアルロン酸固定化羊膜の製造) 0.2%のヒアルロン酸水溶液30mlに0.02モルの塩化
シアヌール/ジオキサン溶液15mlを加え、水酸化ナ
トリウムでpH10に調整した後、30mgの羊膜を入
れ、温度37℃で10時間反応させた。
反応後羊膜を水洗し、これをトルイジンブルーで染色し
たところ、斑点状に赤紫色に染色し羊膜にヒアルロン酸
が固定化されていることが認められた。
実施例8(ヒアルロン酸固定化ゼラチンの製造) ゼラチン30mgを熱水30mlに溶解した後室温に冷
却し、塩化シアヌールの0.25%ヒアルロン酸溶液15m
lを加え、反応液を温度0℃に冷却し、かつ水酸化ナト
リウムでpH10に調整し、30分間反応させた。
反応が進行するに伴い、反応液中にゲル状物が生成し沈
澱した。このゲル状物をアセトン中に入れて洗浄すると
微粒子状の反応物が得られた。これをトルイジンブルー
で染色したところ赤紫色に略均一に染色し、ゼラチンに
ヒアルロン酸が固定化されていることが認められた。
〔発明の効果〕
本発明によれば、保湿性、生体適合性に優れたヒアルロ
ン酸をきわめて強固に固定化した蛋白質を膜状体、繊維
状体あるいは粒状体として容易に製造することができ、
そのために優れた医療用材料或いは優れた化粧品用剤な
どの素材を容易にしかも安価に提供することができるの
で、本発明は当業界においてきわめて優れた発明であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07K 17/10 8318−4H

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蛋白質にヒアルロン酸がシアヌール酸類の
    残基を介して固定化されていることを特徴とするヒアル
    ロン酸固定化蛋白質。
  2. 【請求項2】蛋白質にヒアルロン酸を反応させるヒアル
    ロン酸固定化蛋白質の製造方法において、pH3以上、温
    度40℃以下の条件のもとに蛋白質及びヒアルロン酸と
    共にカルボジイミド類または塩化シアヌール或いは塩化
    シアヌール誘導体類を共存、反応させることを特徴とす
    るヒアルロン酸固定化蛋白質の製造方法。
  3. 【請求項3】蛋白質にヒアルロン酸がシアヌール酸類の
    残基を介して固定化されている蛋白質皮膜からなる皮膚
    保護材料。
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JPH02145600A (ja) 1990-06-05

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