JPH06593A - 薄板の連続鋳造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 双ロール式連続鋳造方法や双ベルト式連続鋳
造方法において、溶湯の洩れやシールガスの溶湯への浸
入に起因する鋳造性の悪化を防止し、表面疵のない良好
な表面性状の鋳片を得る。 【構成】 互いに反対方向に回転する一対の移動鋳型
１，１と、その上に配設された枠型堰４とによって溶湯
の湯溜まり部５を画成し、移動鋳型１，１の間隙を経て
金属薄板２０を連続的に鋳造する。枠型堰４の移動鋳型
周面と対向する部位に、下方が移動鋳型１，１周面に対
して開放され、且つシールガス供給管８が接続されたチ
ャンバー７，７を設ける。チャンバー７，７内の気圧と
湯溜まり部５内の溶湯の静圧とが平衡するように、溶湯
の湯面レベルに応じてチャンバー７，７内に供給するシ
ールガスの流量を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶湯より直接的に金属
薄板を連続して鋳造する方法に関し、特に双ロール式連
続鋳造方法および双ベルト式連続鋳造方法に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】近年、溶鋼等の溶融金属から薄板を連続
的に製造する鋳造方法が注目されており、その中に双ロ
ール式連続鋳造方法および双ベルト式連続鋳造方法があ
る。

【０００３】双ロール式連続鋳造方法は、互いに反対方
向に回転する一対のロールを適当な間隙をあけて平行に
対向配置して、これらロールの両端面に２つの端面堰
（サイド堰）を圧接し、上記間隙の上方にロールの外周
面とサイド堰とにより溶湯の湯溜まり部を画成し、この
湯溜まり部上方に設けた注湯装置から溶湯を連続して供
給することで、湯溜まり部の溶湯を回転するロールの外
周面で冷却しながら凝固シェルを生成し、金属薄板を連
続的に鋳造する方法である。また、双ベルト式連続鋳造
方法は、互いに反対方向に回転する一対のロールを上下
複数段設け、上下ロール間にエンドレスの移動帯を掛け
渡して設けると共に上段の一対のロールおよび移動帯の
両端面にサイド堰を圧接し、このロールおよび移動帯の
外周面とサイド堰とにより溶湯の湯溜まり部を画成し、
移動帯間の間隙を経て金属薄板を連続的に鋳造する方法
である。

【０００４】これらの鋳造方法の最大の課題は、薄板の
表面性状の確保である。薄板の表面疵は、ロールあるい
はベルト間に供給される溶湯の空気酸化や偏流ないし偏
熱に起因する表面の凹凸や表面割れ、および酸化物など
のスカムの巻き込みなどの欠陥によって発生する。空気
酸化は、大気雰囲気中で直接にロールあるいはベルト間
に溶湯を注入する時、または樋型のノズルなどを利用し
て注入する時に溶湯が空気と接触することによって生
じ、空気酸化により生じたスカムが薄板の表面に巻き込
まれて欠陥として残存する。

【０００５】空気酸化を防止するための装置として、例
えば特公平３−５５２１９号公報などに、一対のロール
の上に中間容器を配置し、該中間容器の下部にロールの
両面に沿って内面を先絞り状とした下部ノズルを設け、
該下部ノズルの下端と前記ロールとの最接近部位の間に
湯溜まり部を画成した装置が開示されている。この装置
は、凝固開始点が直接外気に触れないためスカムなどの
巻き込みが生じず、湯面変動や溶湯偏流の影響を受けに
くいなどの長所を持った優れた装置である。

【０００６】しかし、中間容器および下部ノズルとロー
ルとは構成材質および使用中の温度が異なるため、熱膨
張の差などによって溶湯のシールを安定して保つことが
極めて困難である。そのため、溶湯の洩れによる鋳造性
の悪化または空気の浸入による溶湯の酸化などの問題が
生じる。

【０００７】溶湯の洩れを防止する装置として、例え
ば、特開昭６０−１２２６１号公報および特開昭６０−
１２２６２号公報などに、一対のロールの上に枠型のサ
イド堰（枠型堰）を配設し、該サイド堰のロールに面す
る底面にスリット状のガス吹出口を設け、このガスの吹
出口に通じるガス通路をサイド堰の内部に設け、このガ
ス通路をシールガス供給源に接続し、ロール表面に向け
てガスを吹き出してロールとサイド堰の間への溶湯の浸
入を阻止する装置が開示されている。

【０００８】しかし、この装置では、ロール幅方向に均
一にガスを噴出させ、それを保持することは極めて困難
であり、ロール表面ないしロール表面に接するサイド堰
の接触面の僅かな凹凸によって、ロールの幅方向にガス
噴出の不均一が生じる。そのため、部分的にガス噴出の
圧力が不足して溶湯がガス吹出口に差し込む問題が発生
する。

【０００９】さらには、鋳造中に一対のロールの間隔や
回転速度を制御することによって溶湯の湯面高さが変化
するため、溶湯の静圧が変化することが容易に起こり得
る。溶湯の静圧が増大した場合には溶湯の洩れが発生
し、また、溶湯の静圧が減少した場合には、シールガス
に同伴して外気が枠型堰とロールの間隙から溶湯中に浸
入し、空気酸化により生じたスカムなどが薄板の表面に
巻き込まれて欠陥として残存するほか、前記間隙から凝
固開始点に向けてガスが噴出するため、凝固開始点が乱
されて薄板の表面性状などを悪化させるという問題が発
生する。

【００１０】なお、前記シール性を保つため中間容器や
サイド堰を可塑性の物質で構成することは容易に想定で
きるが、その場合、凝固開始点が変動して凝固厚み、す
なわち鋳片厚みが不安定になる問題が生じる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題に鑑み、上述した中間容器やサイド堰とロールとの
間のシール不良を解決し、また凝固開始点を安定させた
連続鋳造方法を提供することを目的とするものである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、互いに
反対方向に回転する一対の移動鋳型と、該一対の移動鋳
型の上に配設された枠型堰とによって溶湯の湯溜まり部
を画成し、前記一対の移動鋳型の間隙を経て金属薄板を
連続的に鋳造する薄板の連続鋳造方法において、前記枠
型堰の移動鋳型周面と対向する部位に下方が前記移動鋳
型周面に対して開放され、且つシールガス供給管が接続
されたチャンバーを設け、該チャンバー内の気圧と湯溜
まり部内溶湯の静圧とが平衡するように該溶湯の湯面レ
ベルに応じてチャンバー内に供給するシールガスの流量
を制御することを特徴とする薄板の連続鋳造方法であ
る。

【００１３】

【作用】本発明の方法は、移動鋳型の上に枠型堰を設け
て溶湯の湯溜まり部を画成するので、湯溜まり部内の溶
湯は湯面下から凝固を開始するため、凝固シェルにスカ
ムなどが巻き込まれることはない。さらに、枠型堰に設
けたチャンバー内の気圧と湯溜まり部内の溶湯の静圧と
が平衡するように、溶湯の湯面レベルに応じてチャンバ
ー内に供給するシールガスの流量を制御するので、枠型
堰と移動鋳型との間隙を確実にシールし、かつ凝固開始
点を安定化させることができる。

【００１４】

【実施例】図面を参照しながら本発明の実施例を以下に
説明する。

【００１５】図１は、移動鋳型としての一対のロール
１，１と、ロール１，１の上に配設され、ロール軸方向
に沿った側堰３，３およびロール１，１の両端面に圧接
された端面堰２，２によって形成された枠型堰４とによ
って溶湯の湯溜まり部５を画成した双ロール式連続鋳造
装置の概略的外観を示している。

【００１６】図２は、図１に示した双ロール式連続鋳造
装置の断面を示している。

【００１７】鋳造時、各ロール１，１は目的とする薄板
２０の板厚に相当する間隙をとって配置され、図示しな
い駆動機構によって図中矢印ａ，ｂに示すように互いに
反対方向に回転駆動される。ロール１，１は鋳造中に図
示しない保持機構によってロール回転軸と垂直な方向に
揺動される。側堰３，３のロール周面と対向する部位
（下部）には、下方がロール１，１の周面に対し開放さ
れ且つシールガス供給管８が接続されたチャンバー７，
７が設けられている。チャンバー７，７内には、シール
ガスとしてアルゴンガスなどの不活性ガスや窒素ガスな
どの化学的に安定なガスがガスタンク（図示せず）から
シールガス供給管８を通じて供給される。湯溜まり部５
には浸漬ノズル６より溶湯が注湯され、溶湯溜まりが形
成される。側堰３，３のロール１，１の周面と対向する
下面はロール１，１の曲率に等しい曲率を持っており、
側堰３，３と端面堰２，２は密着されて溶湯が洩れない
構造になっている。鋳造開始前の枠型堰４は、ロール
１，１との間隙９が可能な限り小さくなるようにロール
１，１に近接して配置される。このため間隙９から溶湯
が洩れたり、あるいは湯溜まり部５に外気が浸入するこ
とはない。

【００１８】鋳造開始後にロール１，１および側堰３，
３が熱変形などを受けて、間隙９は初期の値より拡大す
る。しかし、側堰３，３に設けられたチャンバー７，７
には十分な圧力をもったシールガスが充填されているた
め、外気が溶湯５中に浸入したり、あるいは溶湯５が外
部に洩れ出すことはない。間隙９の拡大につれてチャン
バー７，７内のシールガスは大気中に洩れ出し、チャン
バー７，７内のシールガスの圧力は低下する。この場
合、シールガスは移動抵抗の大きい溶湯中へは移動せ
ず、移動抵抗の小さい大気中へ拡散する。従って、シー
ルガスの溶湯中への浸入による凝固開始点Ｐの乱れ、ひ
いては金属薄板の表面性状の劣化は起こらない。

【００１９】チャンバー７，７内のシールガスの圧力
は、側堰３，３の下端に加わる溶湯の静圧とつりあうよ
うに、以下のように制御される。

【００２０】チャンバー７，７内には、シールガス供給
管８から常に大気圧より十分高い圧力のシールガスが導
入される。溶湯表面１０の位置（湯面レベル）は監視カ
メラ１１によって検知され、監視カメラ１１の画像デー
タはケーブル１２を通して演算制御部１５に送られる。
演算制御部１５は監視カメラ１１の画像データを基にし
て側堰３，３の下端と溶湯表面１０との距離Ｃを算出
し、溶湯の比重と距離Ｃから側堰３，３の下端にかかる
溶湯の静圧を算出する。チャンバー７，７内の気圧は圧
力センサー１３，１３によって検知され、圧力センサー
１３，１３からの信号はケーブル１４，１４を通して演
算制御部１５に送られる。演算制御部１５で溶湯の静圧
とチャンバー内の気圧が比較され、その差分に応じてチ
ャンバー７，７内の気圧と溶湯の静圧が平衡するよう
に、バルブ１６，１６を開閉する制御信号が出力され
る。

【００２１】ロール１，１の間隔あるいは回転速度の制
御などによって例えば湯面レベルが上昇し、側堰３，３
の下端にかかる溶湯の静圧がチャンバー７，７内の気圧
を上回った場合は、演算制御部１５からの信号がケーブ
ル１７，１７を通してバルブ１６，１６に送られ、バル
ブ１６，１６の開動によってチャンバー７，７内の気圧
が溶湯の静圧と平衡するようにチャンバー７，７に導入
されるシールガスの量が増加する。これによって、溶湯
表面１０の高さが上昇しても、溶湯の静圧とチャンバー
７，７内の気圧との差は零に保たれ、溶湯の外部への洩
れは防止される。また、ロール１，１の間隔や回転速度
の制御などによって湯面レベルが低下し、側堰３，３の
下端にかかる溶湯の静圧がチャンバー７，７内の気圧を
下回った場合は、バルブ１６，１６の閉動によってチャ
ンバー７，７内の気圧が溶湯の静圧と平衡するようにチ
ャンバー７，７に導入されるシールガスの量が減少す
る。これによって、溶湯表面１０の高さが低下しても、
溶湯の静圧とチャンバー７，７内のシールガスの気圧の
差は零に保たれ、シールガスの溶湯への浸入は防止され
る。

【００２２】また、チャンバー７，７は外気と遮断され
た状態に保持されており、常にシールガスで満たされて
いるため、アルミニウムなどの極めて酸化物が生成し易
い溶湯を用いた鋳造においても、凝固シェル１９，１９
とロール１，１の接触面において酸化物などが生成する
ことはなく、良好な表面性状の薄板２０が得られる。ま
た、凝固開始点Ｐが溶湯表面１０から十分離間している
ため、溶湯表面１０に浮上集積したスカムなどが凝固シ
ェル１９，１９に巻き込まれることはない。さらに、枠
型堰４の内部に発熱体１８，１８を設ければ、溶湯が堰
内壁面に凝着することを防止できる。

【００２３】図３および図４は本発明が適用される他の
連続鋳造装置の例を示す。

【００２４】図３は移動鋳型の他の例であって、一対の
ロール１，１を上下２段に設け、上下ロール間にベルト
２１，２１を掛け渡すことによって移動鋳型が構成され
た双ベルト式連続鋳造装置の断面概略図を示す。

【００２５】図４は枠型堰の他の例であって、移動鋳型
として一対のロール１，１を使用し、ロール軸方向に沿
った側堰３，３およびロール周面に沿った周堰２２によ
って一体化されて枠型堰４が構成された双ロール式連続
鋳造装置の概略的外観を示す。本装置例では、周堰２２
にもシールガス供給管８が接続されたチャンバー７が設
けられている。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
双ロール式連続鋳造方法や双ベルト式連続鋳造方法にお
いて、溶湯の洩れやシールガスの溶湯への浸入に起因す
る鋳造性の悪化を防止し、また、凝固開始点を安定化さ
せることによって表面疵のない良好な表面性状の鋳片を
得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される双ロール式連続鋳造装置例
の概略外観図である。

【図２】本発明が適用される双ロール式連続鋳造装置例
の断面図である。

【図３】本発明が適用される他の装置例の双ベルト式連
続鋳造装置の断面図である。

【図４】本発明が適用される他の装置例の双ロール式連
続鋳造装置の概略外観図である。

【符号の説明】

１ ロール ２ 端面堰 ３ 側堰 ４ 枠型堰 ５ 湯溜まり部 ６ 浸漬ノズル ７ チャンバー ８ シールガス供給管 ９ 間隙 １０ 溶湯表面 １１ 監視カメラ １２ ケーブル １３ 圧力センサー １４ ケーブル １５ 演算制御部 １６ バルブ １７ ケーブル １８ 発熱体 １９ 凝固シェル ２０ 薄板 ２１ ベルト ２２ 周堰

フロントページの続き (72)発明者 福田 義盛 千葉県富津市新富20−１ 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 互いに反対方向に回転する一対の移動鋳
   型と、該一対の移動鋳型の上に配設された枠型堰とによ
   って溶湯の湯溜まり部を画成し、前記一対の移動鋳型の
   間隙を経て金属薄板を連続的に鋳造する薄板の連続鋳造
   方法において、前記枠型堰の移動鋳型周面と対向する部
   位に下方が前記移動鋳型周面に対して開放され、且つシ
   ールガス供給管が接続されたチャンバーを設け、該チャ
   ンバー内の気圧と湯溜まり部内溶湯の静圧とが平衡する
   ように該溶湯の湯面レベルに応じてチャンバー内に供給
   するシールガスの流量を制御することを特徴とする薄板
   の連続鋳造方法。