JPH0658395U - 精密機器用成形部品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】備品の紛失や管理工数の増大などを防止でき、
また、温度差による組み立て精度の劣化を防止できる精
密機器用成形部品を実現する。 【構成】ランナーＶＲ，ＨＲ、ＢＲに対して一体的に成
形される指針軸用圧入孔ＨＬが形成された被成形指針Ｗ
Ｈまたは各種ランナーＶＲ，ＨＲ、ＢＲに対して、二次
加工であるメッキ処理時などに圧入孔ＨＬを閉塞可能な
マスキング用ピースＭＳＰを薄膜ランナーＴＨＲを介し
て一体成形する。これにより、備品の紛失などを防止す
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、時計などの精密機器の組み立てに用いられる成形部品に関するもの である。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、自動車用アナログ時計の指針は、ＡＢＳなどのプラスチック樹脂の金 型成形による方法で製造される。 金型成形品ｍｌｄは、金型の構造によりその構造が決まり、たとえば図３に示 すように、樹脂の注入路を形成した略Ｌ字形状をなす鉛直方向に延びる鉛直ラン ナーＶＲと、この鉛直ランナーＶＲに対して直交する水平方向に延びる水平主ラ ンナーＨＲと、水平主ランナーＨＲから所定間隔をおいて分岐させた先細の複数 の分岐ランナーＢＲと、各分岐ランナーＢＲの先端に接合された指針ｗｈから構 成されている。

【０００３】 このように金型成形される各指針ｗｈは、図３および図４に示すように、指針 ｗｈの長手方向の先端および後端、並びに側方から後端近傍の所定の位置（たと えば重心）Ａに対して徐々に肉厚が増すような流線形状に形成されている。 また、所定位置Ａ領域には、図示しない指針軸が圧入される圧入孔ＨＬが、指 針方向に直交するように、所定の径をもって形成されている。

【０００４】 金型成形された成形部品は、ランナーに対して一体的に取り付けられた状態で 、二次加工としての表面に対する、たとえば金メッキ処理が行われる。 この金メッキ処理に際しては、圧入孔ＨＬに金メッキが施され孔径が小さくな り圧入不可能となることを回避する目的から、各被成形指針ｗｈの圧入孔ＨＬを 閉塞させるための治具である図示しないマスキング用ピースが装着される。 なお、マスキング用ピースは、金メッキ処理にて用いられる酸性洗浄液に強い ゴム材などにより構成される。

【０００５】 金メッキされた指針ｗｈからは図示しないマスキング用ピースが脱着される。 また、アナログ時計の組み立て時には、指針ｗｈが分岐ランナーＢＲから切り 離されて、その圧入孔ＨＬに指針軸の先端部が圧入され、アナログ時計の時針な どが構成される。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来の成形品においては、上述したように二次加工としての金 メッキ処理工程において、各被成形指針ｗｈの圧入孔ＨＬを閉塞させるための治 具であるマスキング用ピースを装着する必要があるが、数mm程度の微小なマスキ ング用ピースを別の金型成形にて作製しておかなければならず、また、成形現場 とマスキング現場とは一般的に異なることから、マスキング用ピースが紛失した り、管理工数の増大などにより煩雑な手間を要するなどの問題がある。

【０００７】 また、金メッキ処理においては、電気的に処理するため電極などを取り付ける 必要があるが、上述した従来の成形品の場合には、ランナーに時計用指針の成形 品が一体成形されているだけであるため、電極取り付け用治具のなどを別に設け る必要があり、この点からも管理工数の増大などを招くという問題がある。

【０００８】 さらに、自動車用時計の指針軸は、一般に金属、たとえばＢＳＰなどの真鍮か ら構成されるが、この真鍮の指針軸をＡＢＳなどのプラスチック樹脂からなる圧 入孔ＨＬに圧入させた場合、真鍮の熱収縮率とプラスチックの熱収縮率との相違 から、自動車が販売される地域などによっては、組み立て地との温度差により圧 入孔ＨＬの指針軸に対する保持力が低下し、指針がぐらつき、ひいては指針外れ が発生するなどの問題がある。

【０００９】 本考案は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、備品の紛失 や管理工数の増大などを防止でき、また、温度差による組み立て精度の劣化を防 止できる精密機器用成形部品を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本考案では、取り付け軸用孔が形成され、ランナー に対して一体的に成形される精密機器用成形部品において、上記取り付け軸用孔 を閉塞可能な治具が、部品またはランナーに一体成形されている。

【００１１】 本考案では、上記ランナーに二次加工用のチャッキング部が一体成形されてい る。

【００１２】 本考案では、上記取り付け軸用孔には、熱収縮率が取り付け軸と略同一の部材 からなる軸受部が一体成形され、この軸受部に対して取り付け軸が圧入される。

【００１３】

【作用】

本考案によれば、部品またはランナーに一体成形されている閉塞用治具が部品 に形成された孔に装着される。 これにより、成形品に対する二次加工であるメッキ処理などにおいて、取り付 け軸用孔に対するメッキ処理液の侵入が防止される。 二次加工処理が終了すると治具は孔から脱着され、また、部品に一体化されて いる場合には部品から切り離される。

【００１４】 本考案によれば、二次加工時において、チャッキング部に対して、たとえば電 極用クリップなどが取り付けられる。

【００１５】 本考案によれば、軸受部に対して取り付け軸の一端側が圧入される。この場合 、圧入される取り付け軸と熱収縮率および内径が軸外径と略同一であるため、圧 入時と異なる温度環境下におかれたとしても、取り付け軸用孔の軸に対する保持 力が低下することがない。

【００１６】

【実施例】 図１は本考案に係る時計用成形部品の一実施例を示す斜視図、図２は図１のＸ −Ｘ線矢視方向の拡大断面図であって、従来例を示す図３および図４と同一構成 部分は同一符号をもって表す。 すなわち、ＭＬＤは金型成形品、ＶＲは鉛直ランナー、ＨＲは水平主ランナー 、ＢＲは分岐ランナー、ＷＨは被成形指針（被成形部品）、ＭＳＰは孔の閉塞用 治具としてのマスキング用ピース、ＴＨＲは薄膜ランナー、ＨＬは圧入孔、ＭＨ Ｌは軸受部、ＣＨＫはチャッキング部をそれぞれ示している。

【００１７】 マスキング用ピースＭＳＰは、円盤状の基体ＭＳＰ_BSと、基体ＭＳＰ_BSの上面 の略中央部に形成された円柱状のポール部ＭＳＰ_PLとから構成されており、薄膜 ランナーＴＨＲを介して各被成形指針ＷＨに対し一体成形されている。 すなわち、マスキング用ピースＭＳＰおよび薄膜ランナーＴＨＲは、各ランナ ーＶＲ、ＨＲ、ＢＲおよび被成形指針ＷＨと同材料、たとえばＡＢＳにより構成 され、同一の金型成形工程により一体成形されている。 また、薄膜ランナーＴＨＲの厚さは、たとえば０．２mm程度に設定され、柔軟 性を持たせてある。

【００１８】 ポール部ＭＳＰ_PLは被成形指針ＷＨの底面側に突出するように形成されており 、その直径は、被成形指針ＷＨに形成された圧入孔ＨＬと略同径に設定されてい る。 ポール部ＭＳＰ_PLは、二次加工である金メッキ処理工程時に、薄膜ランナーＴ ＨＲを折り曲げて被成形指針ＷＨに形成された圧入孔ＨＬに挿入される。 そして、二次加工処理が終了するとポール部ＭＳＰ_PLは圧入孔ＨＬから脱着さ れ、また被成形指針ＷＨに一体化されている薄膜ランナーＴＨＲ部分から切り離 される。

【００１９】 また、被成形指針ＷＨの圧入孔ＨＬには、アナログ時計の組み立て時に図示し ない指針軸が圧入される部分に、指針軸と同じ材料、たとえばＢＳＰからなり、 圧入部分の内径が指針軸の外径と略同一（たとえば３％程度の差）の軸受部ＭＨ Ｌが一体成形されている。 この軸受部ＭＨＬの一体成形は、図２に示すように、指針ＷＨの底面部分にＢ ＳＰを配設した状態で、たとえばＡＢＳを注入する、いわゆるインサート成形に より行われる。

【００２０】 チャッキング部ＣＨＫは、鉛直ランナーＶＲに所定間隔をおいて鉛直ランナー ＶＲに直交する方向に分岐させて２本平行に一体成形されている。

【００２１】 以上のような金型成形品ＭＬＤが成形されると、二次加工としての金メッキ処 理が行われるが、この金メッキ処理を行うに際して、電極用クリップなどがチャ ッキング部ＣＨＫに取り付けられ、また、各被成形指針ＷＨに一体的に成形され たマスキング用ピースＭＳＰのポール部ＭＳＰ_PLが、薄膜ランナーＴＨＲを折り 曲げて被成形指針ＷＨに形成された圧入孔ＨＬに挿入される。 これにより、メッキ処理液の圧入孔ＨＬへの侵入が抑止される。すなわち、圧 入孔ＨＬ内に対するメッキ処理が防止されるとともに、酸性洗浄液などによる軸 受部ＭＨＬの腐食が防止される。 したがって、圧入孔ＨＬの内径は、金型成形時に設定される設定値に安定に保 持される。

【００２２】 金メッキ処理が終了すると、チャッキング部ＣＨＫから電極用クリップなどが 取り外され、また、マスキング用ピースＭＳＰのポール部ＭＳＰ_PLが圧入孔ＨＬ から脱着され、また被成形指針ＷＨに一体化されている薄膜ランナーＴＨＲ部分 から切り離される。

【００２３】 このように金メッキ処理が施された金型成形品ＭＬＤは、アナログ時計の組み 立て現場に供給される。組み立て現場では、分岐ランナーＢＲから被成形指針Ｗ Ｈが切り離され、その圧入孔ＨＬに対して図示しないＢＳＰからなる指針軸の一 端側が圧入される。 この場合、指針軸が圧入される軸受部ＭＨＬは、指針軸と熱収縮率および内径 が軸外径と略同一であるため、圧入時と異なる温度環境下におかれたとしても、 圧入孔ＨＬの軸受部ＭＨＬの指針軸に対する保持力が低下することがない。

【００２４】 以上説明したように、本実施例によれば、マスキング用ピースＭＳＰを、薄膜 ランナーＴＨＲを介して被成形指針ＷＨに対し一体成形したので、数mm程度と微 小備品であるマスキング用ピースＭＳＰの紛失を防止でき、管理工数の増大など を防止できる。 また、鉛直ランナーＶＲに対してチャッキング部ＣＨＫを設けたので、電極取 り付け用治具などを別に設ける必要がなくなり、この点からも管理工数の増大な どを防止できる。 さらに、被成形指針ＷＨの圧入孔ＨＬに、指針軸と熱収縮率および内径が軸外 径と略同一である軸受部ＭＨＬを一体的に成形したので、圧入時と異なる温度環 境下におかれたとしても、圧入孔ＨＬの軸受部ＭＨＬの指針軸に対する保持力の 低下を防止でき、ひいては組み立てられるアナログ時計の信頼性の向上を図るこ とができる。

【００２５】 なお、本実施例においては、マスキング用ピースＭＳＰおよび薄膜ランナーＴ ＨＲを各被成形指針ＷＨに対して一体成形した場合を例に説明したが、これに限 定されるものではなく、たとえば水平主ランナーＨＲや分岐ランナーＢＲなど、 各種ランナーに対して一体成形しても、上記した効果と同様の効果を得ることが できる。 また、チャッキング部ＣＨＫの成形位置、形状も本実施例に限定されるもので ないことは勿論である。 さらに、本実施例では、精密機器としてアナログ時計を例に説明したが、組み 立て部品がミリオーダと微小なものを用いて構成される各種精密機器に本考案が 適用できることはいうまでもない。

【００２６】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案によれば、備品の紛失や管理工数の増大などを防 止できる。 また、温度差による組み立て精度の劣化を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る時計用成形部品の一実施例を示す
斜視図である。

【図２】図１のＸ−Ｘ線矢視方向の拡大断面図である。

【図３】従来の時計用成形部品の一構成例を示す斜視図
である。

【図４】図３のＹ−Ｙ線矢視方向の拡大断面図である。

【符号の説明】

ＭＬＤ…金型成形品 ＶＲ…鉛直ランナー ＨＲ…水平主ランナー ＢＲ…分岐ランナー ＷＨ…指針（被成形部品） ＨＬ…圧入孔 ＭＨＬ…軸受部 ＭＳＰ…マスキング用ピース ＴＨＲ…薄膜ランナー ＣＨＫ…チャッキング部

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 取り付け軸用孔が形成され、ランナーに
   対して一体的に成形される精密機器用成形部品であっ
   て、 上記取り付け軸用孔を閉塞可能な治具が、部品またはラ
   ンナーに一体成形されていることを特徴とする精密機器
   用成形部品。
2. 【請求項２】 上記ランナーに二次加工用のチャッキン
   グ部が一体成形されている請求項１記載の精密機器用成
   形部品。
3. 【請求項３】 上記取り付け軸用孔には、熱収縮率が取
   り付け軸と略同一の部材からなる軸受部が一体成形さ
   れ、この軸受部に対して取り付け軸が圧入される請求項
   １または請求項２記載の精密機器用成形部品。