JPH0643373U - 車両用ディスクブレーキ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】シム板の耐久性を高めながら、通常走行時や制
動時に発する摩擦パッドの打音を極力防止する。 【構成】摩擦パッド６の裏板８のディスク介入側及び回
出側の側面８ｂ，８ｂに、それぞれシム板装着用の凹部
８ｃを設ける。シム板１３に折曲げ片１３ｂ，１３ｂを
設け、その外側にゴムシート１４を取付ける。シム板１
３の各折曲げ片１３ｂを、それぞれ裏板８の凹部８ｃに
嵌合して、裏板８の背面にシム板１３を装着する。ゴム
シート１４の外面を、裏板８の側面８ｂの外側に位置さ
せる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車や自動二輪車等の走行車両に用いられるディスクブレーキに 係り、特に車両走行時や制動時に発生する摩擦パッドの打音を、摩擦パッドの裏 板背面に装着されるシム板を利用して防止するようにした構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

ディスクブレーキに用いられる摩擦パッドでは、金属薄板を用いたシム板を裏 板の背面に装着して、制動時のブレーキ鳴きやライニングの偏摩耗を防止するも のが知られており、その一例として、例えば実公昭５１−４４０７１号公報に示 されるものがある。

【０００３】 この技術は、シム板のディスク周方向の側面を、摩擦パッドの裏板側部でライ ニング方向に折曲げ、該折曲げ片の少なくとも一部を弾性的に被覆して、裏板の 側部をキャリパブラケットのトルク受け面から離間させることにより、トルク受 け面に錆が成長しても、摩擦パッドが錆で摺動性を損なわないようにして、摩擦 パッドがディスク軸方向へ円滑に移動できるようにし、また実質的には、シム板 の折曲げ片をトルク受け面から弾性的に浮き上がるように折曲げして、裏板とト ルク受け面との衝撃をやわらげ、打音の発生を防止するとしている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

このような構成で制動作用が行なわれると、摩擦パッドは、ディスクロータと の摺接で発生する制動トルクによって、シム板と一体にディスク回出方向へ引摺 られ、シム板側面の折曲げ片が、ディスク回出側のトルク受け面と摩擦パッドの 裏板との間に挟まれ、摩擦パッドの全制動トルクが、シム板の折曲げ片を通して トルク受け面に伝達されることとなる。このため、シム板が傷んで耐久性がなく なるばかりか、シム板の折曲げ片が永久変形して、弾性力が早期に消滅してしま うので、不快な打音の発生は避けられないものとなっていた。

【０００５】 本考案は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは 、シム板の耐久性を高めつつ、通常走行や制動時に発する摩擦パッドの打音を極 力防止することのできる車両用ディスクブレーキを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上述の目的に従い、本考案は、ディスクロータの側部に、キャリパブラケット のトルク受け面を向き合わせて、両トルク受け面の間に摩擦パッドを配設すると 共に、該摩擦パッドの裏板背面にシム板を装着した車両用ディスクブレーキにお いて、前記裏板のディスク回入側及び回出側の側面に、シム板装着用の凹部を形 成し、前記シム板のディスク回入側及び回出側の側面には折曲げ片を設けて、該 折曲げ片を前記裏板の凹部に嵌合すると共に、各折曲げ片の外面に弾性材を付設 し、該弾性材の外面を前記裏板のディスク周方向の側面よりも外側へ突出させた ことを特徴としている。

【０００７】

【作用】

かかる構成で制動作用が行なわれると、摩擦パッドとシム板は、ディスクロー タと摩擦パッドとの摺接で発生する制動トルクによって、ディスク回出方向へ一 体に引摺られ、まず折曲げ片外面の弾性材が、トルク受け面に弾接する。弾性材 は、摩擦パッドの制動トルクによって圧縮されて行き、次に裏板のディスク回出 側の側面がトルク受け面へ当接する。

【０００８】

【実施例】

以下、本考案の第１実施例を図１乃至図５に基づいて説明する。

【０００９】 ディスクブレーキ１は、図示しない車輪と共に矢印Ａ方向へ回転するディスク ロータ２と、該ディスクロータ２の一側部で車体に固設されるキャリパブラケッ ト３と、該ブラケット３に、２本のスライドピン４（一方は図示せず）を介して 、ディスク軸方向へ移動可能に支持されるキャリパボディ５と、前記ディスクロ ータ２の両側部に対向配置される一対の摩擦パッド６，６とで構成されている。

【００１０】 キャリパブラケット３には、ディスクロータ２の外側をディスク軸方向に延び る一対のキャリパ支持腕３ａ，３ａが延設されており、両支持腕３ａ，３ａの先 端は、ディスクロータ２の他側部で、タイバー３ｂにてつながれている。キャリ パ支持腕３ａ，３ａには、ディスクロータ２の両側部に、それぞれ一対のトルク 受け凹部３ｃ，３ｃが向き合わせに設けられており、各摩擦パッド６は、裏板８ の両側部に突出する耳片８ａ，８ａを、このトルク受け凹部３ｃ，３ｃに、パッ ドリテーナ９を介して支承される。

【００１１】 前記キャリパボディ５は、前記摩擦パッド６，６を挟んで向き合う作用部５ａ 及び反作用部５ｂと、ディスクロータ２の外側を跨いでこれらをつなぐブリッジ 部５ｃとからなっている。作用部５ａに、ディスクロータ２側を開口して設けら れたシリンダ孔１０には、コップ状のピストン１１が収容され、該シリンダ孔１ ０とピストン１１の底部間に、液圧室１２が画成される。

【００１２】 液圧室１２は、図示しない公知の液圧マスタシリンダと接続され、液圧マスタ シリンダで発生した圧液が液圧室１２に供給されて行くと、ピストン１１がシリ ンダ孔１０を前進して、一方の摩擦パッド６をディスクロータ２の一側面へ押圧 する。次にこの反作用で、キャリパボディ５が作用部５ａ方向へ移動し、反作用 部５ｂが、他方の摩擦パッド６をディスクロータ２の他側面へ押圧して、制動作 用が行なわれる。

【００１３】 摩擦パッド６は、焼結金属等の摩擦材からなるライニング７と、金属製の裏板 ８とを貼着して構成されている。裏板８の耳片８ａ，８ａには、ディスク回入側 及び回出側の側面８ｂ，８ｂに、それぞれシム板装着用の凹部８ｃが形成され、 これら凹部８ｃ，８ｃに、裏板８の背面に装着されるシム板１３の折曲げ片１３ ｂ，１３ｂが嵌合されており、該シム板１３によって、制動時のブレーキ鳴きや 、ライニング７の偏摩耗を極力防止するようにしている。

【００１４】 シム板１３は、裏板８よりも一回り小さな略相似形の面板１３ａと、該面板１ ３ａのディスク回入側及び回出側の両側部から一側方へ突出する上述の折曲げ片 １３ｂ，１３ｂとを、ステンレス鋼板等の弾性力のある金属薄板を折曲して形成 したもので、この金属薄板の背面には、本考案の弾性材に相当するゴムシート１ ４が、シム板１３と略同一形状にコーティングされている。上記シム板１３は、 面板１３ａを裏板８の背面に当て、各折曲げ片１３ｂを、上述のように凹部８ｃ にそれぞれ嵌合して、裏板８を抱えるように装着される。また、折曲げ片１３ｂ とその外側のゴムシート１４との厚さは、裏板８の凹部８ｃの深さよりも厚くな っており、折曲げ片１３ｂと凹部８ｃとの嵌合状態では、ゴムシート１４の外面 が、裏板８の側面８ｂよりも外側に位置している。

【００１５】 シム板１３を装着した摩擦パッド６，６は、前述の如く、裏板８の耳片８ａ， ８ａを、キャリパブラケット３のトルク受け凹部３ｃ，３ｃに係止して、ディス クロータ２の両側に吊下げられる。裏板８の両側面８ｂ，８ｂは、それぞれトル ク受け凹部の奥壁に敷設されたパッドリテーナ９の立上がり片９ａと離間し、ま た折曲げ片１３ｂの外側のゴムシート１４も、立上がり片９ａから若干離間して いる。

【００１６】 本実施例は、以上のように構成されており、液圧室への圧液の供給によって、 前述の如く制動作用が行なわれると、摩擦パッド６とシム板１３とが、ディスク ロータ２との摺接で発生する制動トルクによって、矢印Ａ方向へ一体に引摺られ 、先に立上がり片９ａとの間隙が狭いゴムシート１４が、立上がり片９ａに弾性 力を以て当接する。ゴムシート１４は、摩擦パッド６の制動トルクによって圧縮 されて行き、ゴムシート１４の外面が裏板８のディスク回出側の側面８ｂと面一 となって、該側面８ｂが立上がり片９ａへ当接し、摩擦パッド６の制動トルクが 、裏板８の側面８ｂから立上がり片９ａを介して、トルク受け面であるトルク受 け凹部３ｃの奥壁に伝達される。

【００１７】 本実施例はこのように、ゴムシート１４と摩擦パッド６とが、リテーナ９の立 上がり片９ａへ２段階で当接して行く構成であり、第１段階のゴムシート１４で は、立上がり片９ａへ当接するまでのストロークが短く、しかも弾性力を以て当 接するため、打音が殆どない。更に、第２段階の摩擦パッド６では、立上がり片 ９ａと弾接したゴムシート１４を圧縮変形して行くので、摩擦パッド６の移動速 度がやわらげられ、裏板８の当接が緩衝されるので、摩擦パッド６の打音も極め て小さなものに抑えられる。

【００１８】 また、摩擦パッド６からの制動トルクは、その殆どが、裏板８からパッドリテ ーナ９の立上がり片９ａを介して、トルク受け凹部３ｃの奥壁へ伝達され、シム 板１３の折曲げ片１３ｂと、その外面のゴムシート１４の負担は軽いものとなる から、シム板１３とゴムシート１４の耐久性の向上が図れる。更に、シム板１３ は、裏板８の凹部８ｃ，８ｃに２つの折曲げ片１３ｂ，１３ｂを嵌合するだけで 、ディスク周方向とディスク半径方向へガタ付きなく取付けできるので、裏板８ やシム板１３の形状がシンプルとなり、安価に製作することができる。

【００１９】 図６及び図７は、ゴムシートの変形例を示す本考案の第２，第３実施例で、図 ６の第２実施例では、ゴムシート２０をシム板１３の折曲げ片１３ｂの外面のみ に取付け、また図７の第３実施例では、シム板１３の折曲げ片１３ｂの内外面を ゴムシート３０で覆ったもので、これらゴムシート２０，３０の外面は、第１実 施例と同様に、裏板８のディスク回入または回出側の側面８ｂよりも外側に位置 する。また、ゴムシート２０，３０は、第１実施例で述べたコーティングのほか 、接着，溶着または嵌合によっても、シム板１３への取付けが可能である。

【００２０】 図８に示す第４実施例では、耳片８ａの上下面にも凹部８ｄ，８ｄを形成し、 該凹部８ｄに、シム板１３の折曲げ片１３ｃ，１３ｃを嵌合して、３つの折曲げ 片１３ｂ，１３ｃ，１３ｃ外側の各ゴムシート１４の外面を、耳片８ａの側面８ ｂまたは上下面よりも外側へ位置させている。本実施例では、第１〜第３実施例 の効果に加え、摩擦パッド６が車両走行時にディスク半径方向へガタ付いた場合 に、トルク受け凹部３ｃとの打音を極めて小さく抑えることができる。

【００２１】 本考案は、第２〜第４実施例に示したように、弾性材を少なくとも折曲げ片の 外側に設けることにより、初期の目的を達成することができる。また弾性材は、 実施例のゴムシートに代えて、弾力性のある合成樹脂を用いてもよい。更に、各 実施例に用いたパッドリテーナを省略して、弾性材や裏板の側面を、トルク受け 凹部の奥壁に直接当接させても差支えない。また本考案は、弾性材とパッドリテ ーナの立上がり片或いはトルク受け凹部の奥壁との間隙を敢えて必要とするもの ではないが、制動時の摩擦パッドをディスク軸方向へ円滑に移動させるためには 、擦り合わせ抵抗が少ないほど好ましい。

【００２２】

【考案の効果】

本考案の車両用ディスクブレーキは、以上の構成により、制動時には、摩擦パ ッドとシム板とが、２段階に分かれてトルク受け面へ当接し、またそれぞれの当 接に弾性材の緩衝力が働くので、摩擦パッドの打音の発生を極めて小さく抑える ことができる。

【００２３】 更に弾性材が、裏板のディスク回出側の側面と面一まで変形したのちは、摩擦 パッドからの制動トルクが、裏板から直接トルク受け凹部へ伝達され、シム板の 折曲げ片と弾性材にかかる負担が少なくなるので、シム板と弾性材の耐久性の向 上が図れる。更にシム板を、折曲げ片と裏板の凹部との嵌合によって、摩擦パッ ドへ簡便に取付けできるので、裏板やシム板の形状がシンプルとなり、安価に製 作することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図２の要部拡大図

【図２】本考案の第１実施例を示すディスクブレーキの
半断面背面図

【図３】図２のIII −III 断面図

【図４】摩擦パッドとシム板の要部を分解した斜視図

【図５】図１のＶ−Ｖ断面図

【図６】本考案の第２実施例を示すディスクブレーキの
要部断面平面図

【図７】本考案の第３実施例を示すディスクブレーキの
要部断面平面図

【図８】本考案の第４実施例を示すディスクブレーキの
要部断面正面図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ ２…ディスクロータ ３…キャリパブラケット ３ｃ…トルク受け凹部 ５…キャリパボディ ６…摩擦パッド ７…ライニング ８…裏板 ８ａ…裏板８の耳片 ８ｂ…裏板８のディスク周方向の側面 ８ｃ…ディスク周方向の側面８ｂに形成されたシム板装
着用の凹部 １３…摩擦パッド６の裏板８に装着されるシム板 １３ａ…シム板１３の面板 １３ｂ…シム板１３の折曲げ片 １４…折曲げ片１３ｂの外側に設けられるゴムシート Ａ…ディスクロータ２の回転方向

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスクロータの側部に、キャリパブラ
   ケットのトルク受け面を向き合わせて、両トルク受け面
   の間に摩擦パッドを配設すると共に、該摩擦パッドの裏
   板背面にシム板を装着した車両用ディスクブレーキにお
   いて、前記裏板のディスク回入側及び回出側の側面に、
   シム板装着用の凹部を形成し、前記シム板のディスク回
   入側及び回出側の側面には折曲げ片を設けて、該折曲げ
   片を前記裏板の凹部に嵌合すると共に、各折曲げ片の外
   面に弾性材を付設し、該弾性材の外面を、前記裏板のデ
   ィスク回入側または回出側の側面よりも外側へ突出配置
   したことを特徴とする車両用ディスクブレーキ。