JPH0639429B2 - キシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを分離精製する方法並びに該方法に用いる包接分離用薬剤 - Google Patents

キシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを分離精製する方法並びに該方法に用いる包接分離用薬剤

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JPH0639429B2 JP2121212A JP12121290A JPH0639429B2 JP H0639429 B2 JPH0639429 B2 JP H0639429B2 JP 2121212 A JP2121212 A JP 2121212A JP 12121290 A JP12121290 A JP 12121290A JP H0639429 B2 JPH0639429 B2 JP H0639429B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、化学合成原料や溶剤として有用なキシレン異
性体及び/又はエチルベンゼンの効果的な分離法及びそ
の分離用薬剤に関する。本発明方法に供する原料は、o-
キシレン、m-キシレン、p-キシレンから選択されるキシ
レン異性体の二種以上の混合物あるいは上記キシレン異
性体の一種以上とエチルベンゼンとの混合物であるが、
かかる混合物は、上記成分以外の不純物を少量含む混合
物の場合をも含めた意味である。
[従来の技術] キシレン類は、合成樹脂や合成繊維等の化学合成原料と
して、また溶剤として幅広く用いられている。特に、p-
キシレンの需要が大きい。
また、エチルベンゼンはスチレン単量体の原料等として
用いられている。
キシレンの各異性体(o-、m-及びp-体)は、いわゆる混
合キシレン(o-体:約20%、m-体:約40%、p-体:約15
%、エチルベンゼン:約15%、他に少量のスチレン等)
から得られる。o-キシレン、エチルベンゼンは、沸点の
差を利用して精密蒸留によって分離することができる
が、m-キシレンとp-キシレンは沸点が極めて近接してい
るので蒸留では殆ど分離できない。m-キシレンとp-キシ
レンとを分離する方法として主なものは、深冷分離法、
吸着法、三菱瓦斯化学法がある。深冷分離法は、m-体と
p-体の融点の差が大きいことを利用するものであるが、
−70℃という低温を扱う困難さと深冷のためのエネルギ
ー消費量の多さから、最近は余り用いられていない。吸
着法は、吸着剤としてのゼオライト系モレキュラーシー
ブを応用したもので、混合キシレンを一回通すだけで、
純度99%以上のp-キシレンが高収率で得られると言われ
ている。三菱瓦斯化学法は、フッ化水素と三フッ化ホウ
素の混合物がm-キシレンと選択的に錯体を形成すること
を利用したもので、純m-キシレンがほぼ100%回収され
る。吸着法及び三菱瓦斯化学法はともに優れた方法では
あるが、前者では、移動相用の溶媒が多量に必要なこ
と、後者では、フッ化水素が取扱い難い物質であること
等の難点がある。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は、α−シクロデキストリンの水溶解度の改良を
意図して製造されている置換型α−シクロデキストリン
を利用し、キシレン異性体やエチルベンゼンを高選択的
に分離する新規で経済的な方法を提供することを目的と
する。更に、本発明の別の目的は、キシレン異性体やエ
チルベンゼンの分離に使用され得る薬剤を提供すること
である。
[問題点を解決するための手段] 本発明によれば、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン
から選択されるキシレン異性体の二種以上の混合物ある
いは上記キシレン異性体の一種以上とエチルベンゼンと
の混合物と、α−シクロデキストリンの少なくとも一つ
の水酸基の水素が、グルコシル基、マルトシル基、マル
トオリゴ糖残基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロ
ピル基、メチル基、スルホン酸基、アルキレンスルホン
酸基、カルボキシアルキル基のうちの少なくとも一つで
置換された置換型α−シクロデキストリンとを接触させ
ることにより、前記置換型α−シクロデキストリンの前
記キシレン異性体及び/又はエチルベンゼン包接錯体を
それぞれの生成定数に従って形成させ、次いで当該包接
錯体から前記キシレン異性体及び/又はエチルベンゼン
を脱離することを特徴とするキシレン異性体及び/又は
エチルベンゼンを分離精製する方法が提供される。
更に、本発明によれば、α−シクロデキストリンの少な
くとも一つの水酸基の水素が、グルコシル基、マルトシ
ル基、マルトオリゴ糖残基、ヒドロキシエチル基、ヒド
ロキシプロピル基、メチル基、スルホン酸基、アルキレ
ンスルホン酸基、カルボキシアルキル基のうちの少なく
とも一つで置換された置換型α−シクロデキストリンか
らなるキシレン異性体及び/又はエチルベンゼン包接分
離用薬剤も提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、キシレン異性体及び/又はエチルベンゼン
の分離用薬剤として、α−シクロデキストリンの少なく
とも一つの水酸基の水素が、グルコシル基、マルトシル
基、マルトリゴ糖残基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキ
シプロピル基、メチル基、スルホン酸基、アルキレンス
ルホン酸基、カルボキシアルキル基のうちの少なくとも
一つで置換された置換型α−シクロデキストリンを用い
る。本明細書で「スルホン酸基及びアルキレンスルホン
酸基」とは、遊離酸の形は勿論のこと、ナトリウム、カ
リウム、アンモニウム、低級アミン、エタノールアミン
等の塩の形をも含めた意味である。また、「カルボキシ
アルキル基」の「カルボキシル部分」についても、上記
「スルホン酸基」の場合と同様の意味である。また、ア
ルキレンスルホン酸基のアルキレンの炭素数は、1ない
し5が好ましく、該アルキレンは直鎖状でも分枝状でも
よい。カルボキシアルキル基の炭素数は、1ないし6が
好ましく、直鎖状でも分枝状でもよい。
これらの置換型α−シクロデキストリンは、そのキシレ
ン異性体やエチルベンゼンとの包接錯体の水溶解度が他
のシクロデキストリンやそれらの置換誘導体の水溶解度
と比べて大きく、抽出時に沈澱することが無く抽出操作
が簡単になるという著しい利点がある。なお、化学修飾
されていない単純なα−シクロデキストリンを使用した
キシレン異性体の分離法については、既に特許文献に開
示されているが(例えば、特開昭52-42825号公報「ベン
ゼン化合物異性体分離法」参照)、包接錯体は沈澱の形
で生成し、固液分離操作が必要なため、これが当該分離
法実施上の最大の難点となっている。本発明で使用する
置換型α−シクロデキストリン、特にグルコシル−α−
シクロデキストリンやマルトシル−α−シクロデキスト
リンによる包接錯体の形成は、既に食品分野等で応用さ
れているが、本発明のようにキシレン異性体やエチルベ
ンゼンの分離を目的としてこれらの置換型α−シクロデ
キストリンの包接錯体生成能を利用した例は無い。
本発明の方法においては、これらの置換型α−シクロデ
キストリンを水に溶解させ、その水溶液にキシレン異性
体の混合物、又はキシレン異性体及びエチルベンゼンの
混合物を加え、激しく攪はん又は振とうする。置換型α
−シクロデキストリンの濃度は、水に対し5〜45重量%
が好適であるが、更に好ましくは10〜25重量%である。
なお、置換基を持たないα−シクロデキストリンやキシ
レンあるいはエチルベンゼン包接錯体の水に対する溶解
度が非常に低くなるような他の置換型α−シクロデキス
トリンの場合は、そのキシレンやエチルベンゼン包接錯
体を形成させる過程で該包接錯体の沈澱物を生成した
り、または、これを避けようとすると著しく低濃度での
包接錯体生成操作を余儀なくされ不都合であるが、本発
明に用いる特定の前記置換型α−シクロデキストリンで
は、このような不都合を生じない。置換型α−シクロデ
キストリン水溶液とキシレン異性体混合物、またはキシ
レン異性体及びエチルベンゼンを含有する混合物の混合
割合は、置換型α−シクロデキストリンのモル数がキシ
レン及び/又はエチルベンゼンのモル数の0.1〜1倍に
なるようにするのが好ましい。攪はん又は振とうはでき
るだけ激しく、数分から数時間行う。また、包接化反応
は、常温から約45℃の範囲内で行うのが通常であるが、
25℃前後で行うのが好ましい。攪はん又は振とう終了
後、適当な方法で油水分離を行う。この油水分離は、例
えば、5〜10分間の遠心分離を行ったり、あるいは塩の
添加等の液−液抽出において油層と水層との分離性の向
上によく用いられる公知の手段を用いることができる。
油水分離により得られる水層に溶解している包接錯体か
らキシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを得るため
には、置換型α−シクロデキストリンに包接し難く且つ
水に溶解し難い比較的低沸点の揮発性有機溶媒、例えば
エチルエーテル等を加えて振り混ぜ、キシレン異性体あ
るいはエチルベンゼンを有機層に抽出する。あるいは、
包接錯体水溶液を加熱して、包接錯体を解離させ、解離
したキシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを置換型
α−シクロデキストリンに包接し難く且つ水に溶解し難
い50〜100℃程度の沸点の揮発性有機溶媒、例えばヘキ
サン等で抽出してもよい。上記二方法のいずれの場合
も、水層は透明な置換型α−シクロデキストリン水溶液
となる。キシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを抽
出した有機層から上記有機溶媒を揮発させると、目的と
するキシレン異性体及び/又はエチルベンゼンが得られ
る。
一回の包接化反応及び脱離操作ではキシレン異性体ある
いはエチルベンゼンの分離が不充分で、他の成分も混ざ
っていて分離物の用途上不都合な場合、上記の方法によ
りキシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを一旦有機
層に抽出し、該有機層から有機溶媒を揮発させて得られ
る残存液を原料として、再度置換型α−シクロデキスト
リンによる包接化反応及び脱離操作を繰り返すことによ
りキシレン異性体(例えば、p-キシレン)あるいはエチ
ルベンゼンの純度を高めることができる。本発明で特定
する置換型α−シクロデキストリンと包接化反応して包
接錯体を生成する容易さ(即ち、包接錯体の生成定数)
は、p-キシレン>エチルベンゼン>m-キシレン>o-キシ
レンの順であるので、これらの包接錯体の生成定数間の
差を利用して対象混合物の各成分の分離精製を行うので
ある。従って、例えばo-キシレンは、前述した包接化反
応後の油水分離で得られる油層の方に多量に残存するこ
ととなるので、該油層を原料として本発明の方法の包接
化反応及び脱離操作を繰り返せば、その純度を上げるこ
とができる。いずれの場合も、包接化反応及び脱離操作
を何回繰り返せば或る成分を実質的な純物質として単離
できるかは、最初の対象混合物の組成に依存することは
言うまでも無い。
以上の全過程において、本発明の方法に用いる置換型α
−シクロデキストリンの分子自体は分解することが無い
ので、回収再利用することができる。
本発明の方法において包接分離用薬剤として用いる置換
型α−シクロデキストリンは、各キシレン異性体及びエ
チルベンゼンの混合物としてのいわゆる混合キシレンの
成分分離のみならず、三種のキシレン異性体(o-体、m-
体及びp-体)とエチルベンゼンの可能な組合せ全てを含
む各種混合物の成分分離にも適用することができるもの
である。
置換型α−シクロデキストリンを媒介とし、本発明の方
法を利用して、液−液クロマトグラフィー方式で連続的
にキシレン異性体及び/又はエチルベンゼンの各成分の
分離を行うプロセスへの展開が可能であろう。
[実施例] 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものでは無い。
実施例1 モノマルトシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5mlに、市販の特級キシレン(組成は、第1表に示
す。)0.17gを加えた。25℃で1時間攪はんした後、反
応混合物を2,500rpmで10分間遠心分離にかけてから水層
を取り出し、これとエチルエーテルとを振り混ぜ、エー
テル層からエーテルを揮発させて有機物質を得た。
本実施例における成分組成変化を第1表に示す。キャピ
ラリーガスクロマトグラフィー法で分析したもので、表
中の数字は各成分のピーク面積の全ピーク面積合計に対
する百分率を表わす。
実施例2 モノマルトシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5mlに、キシレン異性体とエチルベンゼンの混合物
(組成は、第2表に示す。)0.24gを加えた。以下、実
施例1と同様の手順を繰り返した。本実施例における成
分組成変化を第2表に示す。表中の数字は、実施例1に
おけると同様の意味である。
実施例3 モノマルトシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5mlに、エチルベンゼン、o-キシレン及びm-キシレ
ンの混合物(組成は、第3表に示す。)0.17gを加え
た。以下、実施例1と同様の手順を繰り返した。本実施
例における成分組成変化を第3表に示す。表中の数字
は、実施例1におけると同様の意味である。
実施例4 モノマルトシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5mlに、o-キシレンとm-キシレンの混合物(組成
は、第4表に示す。)0.17gを加えた。以下、実施例1
と同様の手順を繰り返した。本実施例における成分組成
変化を第4表に示す。表中の数字は、実施例1における
と同様の意味である。
実施例5 モノグルコシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5mlに、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンの
混合物(組成は、第5表に示す。)0.16gを加えた。以
下、実施例1と同様の手順を繰り返した。本実施例にお
ける成分組成変化を第5表に示す。表中の数字は、実施
例1におけると同様の意味である。
実施例6 モノグルコシル−α−シクロデキストリンの10重量%水
溶液5.0gに、p-キシレンとm-キシレンの等量混合物0.5
44gを加えた。以下、実施例1と同様の手順を繰り返し
た。更に、p-キシレン含有量を10%、25%、75%、90
%、98%と変えたp-キシレンとm-キシレンの混合物をそ
れぞれ用いて、上記と同様の包接化・抽出分離の手順を
繰り返した。本実施例における成分組成変化を第6表に
示す。表中の数字は、実施例1におけると同様の意味で
ある。
実施例7 モノグルコシル−α−シクロデキストリンの20重量%水
溶液10mlに、市販の特級キシレン6gを加えた。25℃で
2時間、攪はんした後、油水分離を行った。水層の包接
化された油分をジエチルエーテルで抽出し、該ジエチル
エーテルを留去してp-キシレンが濃縮された油分0.10g
を得た。更に、この油分及びモノグルコシル−α−シク
ロデキストリンの20重量%水溶液3mlを用いて、上述と
同様の二回目の包接化・分離操作を行った。本実施例に
おける成分組成変化を第7表に示す。表中の数字は、実
施例1におけると同様の意味である。
[発明の効果] 本発明によれば、キシレン異性体混合物又はキシレン異
性体とエチルベンゼンの混合物から各成分を包接化反応
と液−液抽出操作で高選択的に分離することができる。
また、目的物抽出後の置換型α−シクロデキストリンを
繰り返し包接化・抽出操作に使用することができるとと
もに、本発明方法での抽出操作が簡単であるため、低コ
ストでキシレン異性体あるいはエチルベンゼンを分離す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 要輔 神奈川県横浜市鶴見区大黒町13番46号 塩 水港精糖株式会社内 (72)発明者 千輪 眞 東京都文京区本郷5丁目5番16号 オルガ ノ株式会社内 審査官 佐藤 修

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンから
    選択されるキシレン異性体の二種以上の混合物あるいは
    上記キシレン異性体の一種以上とエチルベンゼンとの混
    合物と、α−シクロデキストリンの少なくとも一つの水
    酸基の水素が、グルコシル基、マルトシル基、マルトオ
    リゴ糖残基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル
    基、メチル基、スルホン酸基、アルキレンスルホン酸
    基、カルボキシアルキル基のうちの少なくとも一つで置
    換された置換型α−シクロデキストリンとを接触させる
    ことにより、前記置換型α−シクロデキストリンの前記
    キシレン異性体及び/又はエチルベンゼン包接錯体をそ
    れぞれの生成定数に従って形成させ、次いで当該包接錯
    体から前記キシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを
    脱離することを特徴とするキシレン異性体及び/又はエ
    チルベンゼンを分離精製する方法。
  2. 【請求項2】α−シクロデキストリンの少なくとも一つ
    の水酸基の水素が、グルコシル基、マルトシル基、マル
    トオリゴ糖残基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロ
    ピル基、メチル基、スルホン酸基、アルキレンスルホン
    酸基、カルボキシアルキル基のうちの少なくとも一つで
    置換された置換型α−シクロデキストリンからなるキシ
    レン異性体及び/又はエチルベンゼン包接分離用薬剤。
JP2121212A 1989-09-19 1990-05-14 キシレン異性体及び/又はエチルベンゼンを分離精製する方法並びに該方法に用いる包接分離用薬剤 Expired - Fee Related JPH0639429B2 (ja)

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