JPH0639110Y2 - トロコイド型オイルポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、ロータ室内においてアウターロータとインナ
ーロータによる空隙部より漏れたオイルを吸入ポート或
いはオイルパンに戻し、ポンプボディーの外部にオイル
が漏れることを防止することができるトロコイド型オイ
ルポンプに関する。

〔従来の技術及びその課題〕

従来よりトロコイド歯に形成したアウターロータとイン
ナーロータよりなるトロコイド型オイルポンプは、自動
車等のエンジン潤滑系統にオイルを圧送するものとし
て、特にギヤ型オイルポンプよりも小型で、低騒音であ
る等の利点があるために、一般の量産エンジンでは多く
使用されている。

その多くのトロコイド型オイルポンプは、アウターロー
タと該アウターロータより歯数が一つ少ないインナーロ
ータとで形成され、そのアウターロータとインナーロー
タとによる空隙部は、アウターロータが１回転する間に
吸入ポート側の始点から終点まで次第に大きくなり、ま
た吐出ポートの始点から終点まで次第に小さくなり、こ
れらの作用により、トロコイド型オイルポンプはオイル
等の流体の吸入，吐出を行っている。

ところで、そのアウターロータとインナーロータは、ロ
ータ室に収容されており、このアウターロータとインナ
ーロータとが形成する空隙部が吸入ポートから吐出ポー
トに移動する際にオイルがその空隙部からはみ出てロー
タ室より漏出すことがある。その漏れたオイルは、イン
ナーロータの回転軸に向かい回転軸収容室に溜まり、該
回転軸収容室に一定量以上溜まるとオイルシールよりポ
ンプボディーの外部に漏れてオイルを損失する不都合な
状態となっていた。

〔課題を解決するための手段〕

そこで考案者は、前記課題を解決すべく、鋭意，研究を
重ねた結果、その考案を、一側面の中央に突出するボス
部を形成したインナーロータのボス部含めてその中央に
取付孔を貫通形成し、該取付孔内に回転軸を嵌合固定
し、前記取付孔の全長に亘って漏れオイル帰還溝を設
け、該漏れオイル帰還溝のボス部側の入口開口部箇所に
近接し、且つ該入口開口部箇所を中心として回転軸の回
転方向の後方位置のボス部又は回転軸に、オイル掻き突
出部を設け、前記ボス部側にのみポンプボディーにオイ
ルシールによる軸封してなるトロコイド型オイルポンプ
としたことにより、ロータ室より漏れたオイルがポンプ
ボディーの外部に漏れずに、そのオイルを再度吸入ポー
ト或いはオイルパンに戻しオイルの損失を防止すること
ができ、前記課題を解決したものである。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を第１図乃至第11図に基づいて説
明する。

Ａはケーシングであって、ポンプボディー１とポンプカ
バー２とから分割可能に構成されている（第２図参
照）。そのケーシングＡの内部にはロータ室３が形成さ
れている。具体的には、ポンプボディー１に凹部が形成
され、該ポンプボディー１にポンプカバー２を固着した
ときにその凹部がロータ室３として構成されている。該
ロータ室３内に内歯を設けたアウターロータ４と、外歯
を設けたインナーロータ５とが互いに歯合しつつ偏心し
て内装されている（第１図参照）。そのインナーロータ
５の一側面の中央に突出するボス部5aが形成され、該ボ
ス部含めてその中央に取付孔が貫通形成されている。該
取付孔には、後述の中実の回転軸10が貫通して嵌合固定
される。

そのアウターロータ４とインナーロータ５とは、歯がト
ロコイド曲線となっており、インナーロータ５の歯がア
ウターロータ４の歯数より一枚少なく、インナーロータ
５が一回転するとアウターロータ４は、一歯分遅れて回
転する関係に構成されている。また、インナーロータ５
は、何れの回転角度であっても常にインナーロータ５の
歯先がアウターロータ４の歯先又は歯底に接触し、イン
ナーロータ５の隣接する歯先とアウターロータ４との間
に複数の空隙部s,s,…が形成され、そのアウターロータ
４及びインナーロータ５が回転する間にそれぞれ空隙部
ｓの容積が増減し吸入，吐出が行われる。

前記ポンプボディー１のロータ室３の円形面3aの左右両
側には吸入ポート６及び吐出ポート７がそれぞれ形成さ
れ、その間にはポート間仕切部8,8が形成されている。
そして、該ポート間仕切部８は、第３図に示すように、
ロータ室３〔具体的には、円形面3a（第２図参照）〕の
上下に存在するが、アウターロータ４とインナーロータ
５とが、第１図において反時計方向に回転し、且つロー
タ室３の右側に吸入ポート６が左側に吐出ポート７がそ
れぞれ形成されている場合では、その空隙部ｓは、ロー
タ室３の上側のポート間仕切部８を通過するとき最大容
積となる。その吸入ポート６には吸入口6aが，また吐出
ポート７には吐出口7aがそれぞれケーシングＡの外方に
通じるように構成されている。

９は回転軸孔であって、ロータ室３内に内装されたイン
ナーロータ５の回転軸10が回転可能に貫通されている。
その回転軸孔９は、軸受部9a,オイルシール取付段部9b
及び漏れオイル溜め室9cとで構成され、前記ボス部5aが
軸受部9aに軸支され、オイルシールOcはオイルシール取
付段部9bに取り付けられ、漏れオイル溜め室9cはボス部
5aの外側箇所に位置するように設けられている。特に、
ボス部5a側にのみポンプボディー１にオイルシールOcに
よって軸封されている。また、その漏れオイル溜め室9c
は軸受部9aとオイルシール取付段部9bの間に形成され、
その漏れオイル溜め室9cとここに貫通する回転軸10との
間に空隙が形成されるものである。

該回転軸10は、その長手方向中間箇所にインナーロータ
５を固定しやすくする，断面略楕円形の固定部10aが形
成されている。該固定部10aは、その回転軸10の他の部
分よりも直径が大きく、その直径方向に平行に対向する
平坦状面が形成されて、また前述のインナーロータ５の
ボス部5aの貫通孔は、その回転軸10の固定部10aの断面
形状に等しく形成されており、その固定部10aをボス部5
aに挿入することによって回転軸10とともにインナーロ
ータ５が同期回転する仕組みとなっている。或いはイン
ナーロータ５と回転軸10とはそれぞれにキー溝を形成
し、キーを使用して回転軸10にインナーロータ５を固着
してもよい。

そのインナーロータ５の取付孔の全長に亘って漏れオイ
ル帰還溝11が形成され、インナーロータ５の取付孔箇所
と回転軸10との間がリーク路としての役割をなしてい
る。すなわち、前記ボス部5a側と該ボス部5a側とは反対
側の吸入ポート６の吸入口6aとが連通している。これに
よって、漏れオイルが、前記漏れオイル溜め室9c側よ
り、前記吸入ポート６の吸入口6a或いはエンジンブロッ
ク側のオイルパン13に戻るように構成されている。

前記漏れオイル帰還溝11の端に、耳形で突起状のオイル
掻き突出部12が設けられている。該オイル掻き突出部12
の存在によって、漏れオイル帰還溝11の内部に侵入する
ように、漏れオイル帰還溝11の入口開口部11aに近接し
て形成されている。

その漏れオイル帰還溝11及びオイル掻き突出部12の実施
例は複数存在する。

その第１実施例は、第１図乃至第６図に示すように、そ
の漏れオイル帰還溝11がインナーロータ５の回転軸10の
取付孔面に形成され、且つオイル掻き突出部12が、イン
ナーロータ５のボス部5a端面に突出形成されている。ま
た、第７図に示したものは、漏れオイル帰還溝11及びオ
イル掻き突出部12の第１実施例において、該オイル掻き
突出部12は、漏れオイル帰還溝11箇所において高さが高
く、回転方向後方に向かって次第に低くなり、全体が傾
斜形成されている。

また、第２実施例の漏れオイル帰還溝11及びオイル掻き
突出部12において、第８図に示すように、その漏れオイ
ル帰還溝11が、インナーロータ５の回転軸10の取付孔面
に形成され、且つオイル掻き突出部12が、回転軸10にビ
ス等にて固着されている。

また、第３実施例の漏れオイル帰還溝11及びオイル掻き
突出部12において、第10図に示すように、その漏れオイ
ル帰還溝11が、回転軸10がえぐられて形成され、且つオ
イル掻き突出部12が、インナーロータ５のボス部5a端面
に突出形成されている。

また、図示しないが、第４実施例の漏れオイル帰還溝11
及びオイル掻き突出部12において、その漏れオイル帰還
溝11が、回転軸10がえぐられて形成され、且つオイル掻
き突出部12が、インナーロータ５のボス部5a端面に突出
形成されている。

第９図に示したものは、オイル掻き突出部12の入口開口
部11a側の面を弧状面としてオイルを流入しやすくした
ものである。

〔作用〕

先ず、ロータ室３内にてアウターロータ４とインナーロ
ータ５とにて形成される空隙部s,s,…内に収容されたオ
イルがロータ室３より漏れ出して漏れオイル溜め室9cに
溜まる。該漏れオイル溜め室9cでは回転軸10とともにイ
ンナーロータ５のボス部5aが回転しており、同時にオイ
ル掻き突出部12も回転している。さらに漏れオイル溜め
室9c内のオイルを前記入口開口部11a側に掻き込み可能
なオイル掻き突出部12であり、オイル掻き突出部12の回
転にて漏れオイルがその漏れオイル帰還溝11に当たり、
このときに漏れオイル帰還溝11の入口開口部11aに導入
され、漏れオイル帰還溝11を介して吸入ポート６又はオ
イルパン13に戻ってゆく。

〔考案の効果〕

本考案においては、一側面の中央に突出するボス部5aを
形成したインナーロータ５のボス部含めてその中央に取
付孔を貫通形成し、該取付孔内に回転軸10を嵌合固定
し、前記取付孔の全長に亘って漏れオイル帰還溝11を設
け、該漏れオイル帰還溝11のボス部5a側の入口開口部11
a箇所に近接し、且つ該入口開口部11a箇所を中心として
回転軸10の回転方向の後方位置のボス部5a又は回転軸10
に、オイル掻き突出部12を設け、前記ボス部5a側にのみ
ポンプボディー１にオイルシールOcによる軸封してなる
トロコイド型オイルポンプとしたことにより、まず第１
にロータ室３より漏れ出したオイルをポンプボディー１
の外部に漏れ出すことを防止できるし、第２に構造が極
めて簡単にできる等の効果を奏する。

これらの効果について詳述すると、まずアウターロータ
４とインナーロータ５にて形成される空隙部ｓに収容さ
れたオイルがロータ室３より漏れ出したときに回転軸孔
９の漏れオイル溜め室9cに溜まる。そして、漏れオイル
は軸封してなるオイルシールOc箇所より外部に漏れよう
とする。

しかるに、本考案では、回転軸10を嵌合固定する取付孔
の全長に亘って漏れオイル帰還溝11を設け、漏れオイル
帰還溝11のボス部5a側の入口開口部11a箇所に近接し、
且つ該入口開口部11a箇所を中心として回転軸10の回転
方向の後方位置のボス部5a又は回転軸10にオイル掻き突
出部12を設けているため、インナーロータ５の回転によ
り、オイル掻き突出部12がインナーロータ５及び回転軸
10とともに回転するので、その漏れたオイルが回転軸孔
９の漏れオイル溜め室9c内でオイル掻き突出部12にて漏
れオイル帰還溝11の入口開口部11aに導入され吸入ポー
ト６或いはオイルパン13に戻り、漏れオイルの損失を防
止できる。しかも、インナーロータ５と回転軸10とが回
転中にのみオイル掻き突出部12が作動し、別の動力源に
てオイル掻き突出部12が作動するものではないので省力
化できる利点がある。

また、本考案の構造は、漏れオイル帰還溝11を形成し、
オイル掻き突出部12をボス部5a又は回転軸10に設けたの
みであり、極めて簡単な構造であり、上記構成としても
従来品と殆ど同じ価格にて提供することができる等の優
れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示すものであり、その第１図は
ポンプカバーを外し、一部断面とした本考案の正面図、
第２図は本考案の断面図、第３図は本考案の要部斜視
図、第４図，第５図は本考案の作用状態を示す状態図、
第６図，第７図はオイル掻き突出部付きインナーロータ
の斜視図、第８図は本考案の別の実施例の要部斜視図、
第９図は本考案の別の実施例の断面図、第10図は本考案
の別の実施例の一部切除した斜視図、第11図は本考案を
使用した全体の断面図である。 １……ポンプボディー、Oc……オイルシール、 ４……アウターロータ、５……インナーロータ、 5a……ボス部、9c……漏れオイル溜め室、 10……回転軸、11……漏れオイル帰還溝、 11a……入口開口部、12……オイル掻き突出部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】一側面の中央に突出するボス部5aを形成し
   たインナーロータ５のボス部含めてその中央に取付孔を
   貫通形成し、該取付孔内に回転軸10を嵌合固定し、前記
   取付孔の全長に亘って漏れオイル帰還溝11を設け、該漏
   れオイル帰還溝11のボス部5a側の入口開口部11a箇所に
   近接し、且つ該入口開口部11a箇所を中心として回転軸1
   0の回転方向の後方位置のボス部5a又は回転軸10に、オ
   イル掻き突出部12を設け、前記ボス部5a側にのみポンプ
   ボディー１にオイルシールOcによる軸封してなることを
   特徴としたトロコイド型オイルポンプ。