JP4237339B2 - オイルポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用エンジン等の潤滑油圧源として用いられるオイルポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用エンジン等の潤滑油圧源として用いられるオイルポンプには、インナロータとインナロータに内接して噛合するアウタロータをポンプハウジングに収納し、両ロータの回転に伴うポンピングチャンバ容積の増減によってオイルの吸入・吐出を行うトロコイド型オイルポンプが多く用いられる。
【0003】
トロコイド型オイルポンプは、艤装上、エンジンのクランクシャフトをポンプ駆動軸としてシリンダブロックに直接取り付けられ、インナロータに係合してポンプハウジングから突出したクランクシャフトの端部に、ウォーターポンプ等を駆動するためのプーリが取り付けられることが多い。
【0004】
この場合、ポンプハウジングのクランクシャフトが突出する部位には、ポンプ内のオイルが外部に漏洩することを防止するため、オイルシール等の軸封部材が装着されているが、インナロータとポンプハウジングとの間からオイルシール背面側に漏れたオイルによってオイルシール背面側の圧力が上昇し、オイルシールのシール性能限界を超える虞がある。
【0005】
これに対処するため、実開昭62−171677号公報には、軸封部材の内側で回転軸に対向しているポンプケースの内壁下部に、ポンプの吸込側に連通路を介してつながる凹状の油溜を形成し、この油溜に、油溜の開口を油量に応じて開閉するチェックボールを設けることで、ポンプの外径方向寸法の増大化を抑えつつ、オイルシールからの油漏れを防止する技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先行技術によるオイルポンプでは、外径方向寸法の増大化を抑えることはできるものの、オイルシール背面側にオイルを回収する油溜や連通路を設けることにより、オイルポンプの駆動軸方向(厚さ方向)の寸法が増大し、艤装上の制約を生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ポンプハウジングからポンプ駆動軸が突出する部位での外部へのオイル漏洩を防止しつつ、オイルポンプの駆動軸方向の寸法を抑えて艤装上の自由度を向上することのできるオイルポンプを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ポンプ駆動軸に係合されて回転駆動されるインナロータと該インナロータに噛合して偏心回転するアウタロータとをポンプハウジングとポンプカバーとで形成する空間内に収納すると共に、上記ポンプハウジングに吐出ポート及び吸入ポートが形成されているオイルポンプにおいて、上記インナロータの回転軸中心に上記ポンプハウジングで軸支されるボス部を立設し、該ボス部の基部と上記ポンプハウジングとの間に設けた環状隙間によって形成される環状通路と、上記インナロータの回転軸周囲の側面が当接して回転摺動する上記ポンプハウジングのインナランド部の摺動面上に形成されて上記環状通路と上記吸入ポートとを連通する溝とを設けたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1記載の発明では、インナロータの回転軸中心にポンプハウジングで軸支されるボス部を立設し、このボス部の基部とポンプハウジングとの間に設けた環状隙間によって形成される環状通路と、インナロータの回転軸周囲の側面が当接して回転摺動する上記ポンプハウジングのインナランド部の摺動面上に形成されて環状通路と吸入ポートとを連通する溝とを設けることで、吐出ポートからインナランド部の摺動面を経てポンプ内部で漏洩するオイルを吸入ポートに戻す。
【0013】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1〜図3は本発明の実施の参考例に係わり、図1はポンプハウジングの正面図、図2はオイルポンプの縦断面図、図3は溝部の拡大断面図である。
【0014】
図2において、符号1はトロコイド型オイルポンプを示し、ポンプハウジング2とポンプカバー3とで形成された空間内に、ポンプカバー3側からクランクシャフト20に係合して回転駆動されるインナロータ4と、このインナロータ4の外歯に内歯で噛合し、インナロータ4の回転中心であるO点に対して所定量だけ偏心したO' 点を中心として回転するアウタロータ5とが収納されている。
【0015】
ポンプハウジング2は、ポンプカバー3側をエンジン側として図示しないシリンダブロックに取り付けられるようになっており、ポンプハウジング2のクランクシャフト20が突出する部位には、クランクシャフト20軸外周及びポンプハウジング2壁面をシールして外部へのオイル漏洩を防止するため、軸封部材としてのオイルシール6が装着されている。
【0016】
インナロータ4は、外周に外歯が形成される平面部4aと、平面部4aから突出するボス部4bとを有する形状となっており、平面部4aが回転摺動面を形成するポンプハウジング2のインナランド部2aに当接してポンプカバー3との間に収納され、ボス部4bが該ボス部4bを支持する軸受部をなすポンプハウジング2の軸受孔2bに回転自在に嵌挿される。
【0017】
また、アウタロータ5は、リング状円板の内径部にインナロータ4の外歯に噛合する内歯を形成した形状となっており、ポンプハウジング2のインナランド部2aと連続的に同一平面をもって形成されるアウタランド部2cと、ロータ外周の摺動面をなす内壁2dとで形成される円形の窪みに回転自在に収納され、ポンプカバー3によって密閉される。
【0018】
インナロータ4のボス部4bには、クランクシャフト20が挿通されて係合される孔4cが設けられており、この孔4c内面に形成された2つの平面部4dとクランクシャフト20の軸外周に形成された2つの平面部とが係合することにより、クランクシャフト20とインナロータ4とが一体的に回転し、このインナロータ4の回転によってアウタロータ5が同方向に回転する。
【0019】
一方、図1に示すように、インナロータ4及びアウタロータ5が収納されるポンプハウジング2には、インナランド部2aとアウタランド部2cとで形成される平面(回転摺動面)に対して凹部をなす吸入ポート7と吐出ポート8とが設けられ、インナランド部2aとアウタランド部2cとを結ぶシールランド9,10によって分離される。吸入ポート7は、シリンダブロック側からのオイル吸入口11に連通され、吐出ポート8は、シリンダブロック側へのオイル吐出口12に連通されている。
【0020】
本参考例においては、図1の反時計回りにインナロータ4とアウタロータ5とが回転し、インナロータ4の外歯とアウタロータ5の内歯との間の歯間室によって形成されるポンピングチャンバ容積が最小となる位置でシールランド9が設けられ、このシールランド9から反時計方向にポンピングチャンバ容積が増大する領域に、吸入ポート7が設けられる。また、シールランド9の反対側の位置にシールランド10が設けられ、このシールランド10から反時計方向にポンピングチャンバ容積が減少する領域に、吐出ポート8が設けられる。
【0021】
また、ポンプハウジング2の軸受孔2b周囲のインナランド部2aには、インナロータ4の平面部4aとインナランド部2aとの間から漏洩するオイルを吸入ポート7に戻すための通路として、摺動面上の吐出ポート8の略終端部に対応する位置を起点として図中の時計周りに環状の溝2eが形成され、シールランド10手前で径方向に延出されて吸入ポート7内に連通されている。本参考例においては、溝2eは、図3に示すように略V字形の断面形状で形成されるが、U字形或いは矩形の断面形状の溝であっても良い。
【0022】
すなわち、インナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aとは、互いに密着してポンピングチャンバを封止する必要がある反面、回転摺動の潤滑油膜を形成可能な隙間を確保する必要がある。この隙間は、一般的に、各部品の製作寸法精度や組み付け精度、潤滑の重要性を考慮した場合、或る程度大きくならざるを得ず、相当量のオイルがオイルシール6背面側へ流入してオイルシール6背面側の圧力が上昇し、オイルシール6のシール限界を超えて外部に漏洩する虞がある。
【0023】
このため、インナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間から、平面部4aとインナランド部2aの摺動面との間、及びインナロータ4のボス部4bとポンプハウジング2の軸受孔2b内壁との間で潤滑油膜を形成するに必要な量を越えて漏洩する余剰オイルを、溝2eによって吸入ポート7に戻すようにしている。
【0024】
さらに、図1及び図2に示すように、シールランド10を形成する肉厚部分で、オイルシール6背面側でのインナロータ4のボス部4b外周面とポンプハウジング2の軸受孔2b内壁との間の圧力を逃がすと共に、溝2eで未回収の少量のオイルを回収するため、軸受孔2b内壁に小径のオイル戻し兼圧力逃がし孔13が穿設されてシリンダブロック側に開口され、シリンダブロックを経て図示しないオイルパンへ連通される。
【0025】
以上の構成によるオイルポンプ1では、エンジンが回転するとクランクシャフト20に係合されるインナロータ4が回転され、アウタロータ5が回転される。すると、インナロータ4の外歯とアウタロータ5の内歯とで形成されるポンピングチャンバ容積が増減され、このポンピングチャンバ容積の増加により、オイルがオイル吸入口11を介して吸入ポート7から吸入される一方、ポンピングチャンバ容積の減少により、高圧のオイルが吐出ポート8を介してオイル吐出口12に吐出される。
【0026】
その際、インナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間から漏洩するオイルは、大部分の量がインナランド部2aの摺動面上に設けた環状の溝2eを介して吸入ポート7に戻され、さらに、オイルシール6背面側のインナロータ4のボス部4b外周面とポンプハウジング2の軸受孔2b内壁との間に流入する少量のオイルがオイル戻し兼圧力逃し孔13から図示しないオイルパン内に戻される。
【0027】
これにより、吐出ポート8側の圧力によってインナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間を通ってオイルシール6背面側に漏洩するオイルを吸入ポート7側に回収し、ポンプ吐出性能の向上を図ることができる。
【0028】
しかも、インナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間から漏洩する大部分の量のオイルを溝2eを介して吸入ポート7に戻すため、オイル戻し兼圧力逃し孔13を最小限の孔径とすることができ、オイルポンプ1の駆動軸方向の厚さ寸法を小さくしてポンプの小型化を図ることができる。
【0029】
また、オイル戻し兼圧力逃し孔13を最小限の孔径とすることで、大量の漏洩オイルがオイルパン内へ戻ることがなく、オイルパン内でのオイル攪拌による泡立ちを防止してエア混入を防止し、トータルのポンプ効率を向上することができる。尚、ポンプ容量や吐出圧如何によってはオイル戻し兼圧力逃し孔13を廃止することも可能である。
【0030】
図4及び図5は本発明の実施の形態に係わり、図4はインナロータ及びポンプハウジングの要部断面図、図5はポンプハウジングの正面図である。
【0031】
本形態は、参考例におけるポンプハウジング2の溝2eを簡略化するものであり、溝2eの一部をインナロータ4のボス部4b基部とポンプハウジング2との間に形成する通路で置き換える。
【0032】
すなわち、図4(a)に示すように、インナロータ4のボス部4bが嵌挿されるポンプハウジング2の軸受孔2b入り口周縁に面取り加工を施し、この面取りによるボス部4b基部との間の環状隙間によって環状通路14を形成すると共に、図5に示すように、ポンプハウジング2の軸受孔2b周縁のインナランド部2aの摺動面上に、環状通路14から吸入ポート7にかけて径方向に連通する溝2fを形成する。
【0033】
これにより、吐出ポート8側からインナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間を経てオイルシール6背面へ漏洩するオイルを、ボス部4b基部の環状通路14から溝2fを介して吸入ポート7に回収することができる。
【0034】
環状通路14は、図4(b)に示すように、インナロータ4のボス部4bの基部に逃げ溝加工を施すことにより形成した環状通路14aとしても良く、また、図4(c)に示すように、ポンプハウジング2の軸受孔2b入り口周縁の面取りとインナロータ4のボス部4b基部の逃げ溝とを併用して形成した環状通路14bとしても良い。
【0035】
本形態においても、参考例と同様、吐出ポート8側の圧力によってインナロータ4の平面部4aとポンプハウジング2のインナランド部2aの摺動面との間を通ってオイルシール6背面側に漏洩するオイルを吸入ポート7側に回収し、吐出性能の向上を図ると共にポンプの小型化を実現することができ、また、オイルへのエア混入を防止してトータルのポンプ効率を向上することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ポンプハウジングからポンプ駆動軸が突出する部位での外部へのオイル漏洩を防止しつつ、オイルポンプの駆動軸方向の寸法を抑えて艤装上の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の参考例に係わり、ポンプハウジングの正面図
【図2】オイルポンプの縦断面図
【図3】同上、溝部の拡大断面図
【図4】 本発明の実施の形態に係わり、インナロータ及びポンプハウジングの要部断面図
【図5】同上、ポンプハウジングの正面図
【符号の説明】
1 …オイルポンプ
2 …ポンプハウジング
3 …ポンプカバー
4 …インナロータ
2a…インナランド部
2e…溝
5 …アウタロータ
6 …オイルシール
7 …吸入ポート
8 …吐出ポート
20…クランクシャフト
Claims (1)
- ポンプ駆動軸に係合されて回転駆動されるインナロータと該インナロータに噛合して偏心回転するアウタロータとをポンプハウジングとポンプカバーとで形成する空間内に収納すると共に、上記ポンプハウジングに吐出ポート及び吸入ポートが形成されているオイルポンプにおいて、
上記インナロータの回転軸中心に上記ポンプハウジングで軸支されるボス部を立設し、該ボス部の基部と上記ポンプハウジングとの間に設けた環状隙間によって形成される環状通路と、
上記インナロータの回転軸周囲の側面が当接して回転摺動する上記ポンプハウジングのインナランド部の摺動面上に形成されて上記環状通路と上記吸入ポートとを連通する溝とを設けたことを特徴とするオイルポンプ。
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