JPH0637760B2 - ジルコニア繊維シ−トの製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は極めて高い温度の雰囲気例えば高熱炉内におい
ても、十分な機械的強度を有し、然も化学的にも極度に
安定したジルコニア繊維を主体とするこの種耐高熱シー
トの製造方法に関する。

〔従来の技術〕

ジルコニアは約２７００℃に及ぶ高融点のセラミック原
料として知られているが、このような高融点のジルコニ
アの繊維化には一般的なアルミナ，シリカ質セラミック
繊維の製造に行われているような熱溶融紡糸法では得ら
れない。

即ちジルコニア繊維は焼成によりジルコニアを形成しう
る液状ジルコニア化合物と安定化剤であるカルシア，イ
ットリア，マグネシア等の液状化合物とを、予め混合し
て調合した紡糸液を冷間にて紡糸することにより、まず
無機繊維の前駆体を形成し然る後高温で焼成することに
よりはじめて製造される。

このようにして製造されるジルコニア繊維はアルミナ繊
維，シリカアルミナ繊維，シリカ繊維等の他の無機質繊
維には見られない優れた性質を持っている。即ち、 １）他の無機質繊維とは隔段の高融点である。例えばジ
ルコニア繊維は約２６００℃なるに対しアルミナ繊維は
約２０００℃、シリカアルミナ繊維は１７５０℃、シリ
カ繊維は１６５０℃、ガラス繊維は８００℃の如く大差
がある。

２）化学的に極度に安定し且つ耐食性も優れている。

３）高温における蒸気圧が少ない。

４）殆んどの溶融金属やガラスと反応しない。

５）酸素イオン伝導性を持っている。

６）還元に対する安定性に優れ、また分子状水素には還
元されない。

等の特徴がある。

本発明はこのような特徴を具有する純ジルコニア繊維を
主体としてこれを常法の抄紙法によるシート化により従
来セラミックファイバー等の無機繊維シートには到底求
められない用途、例えば特殊合金鋳造設備のパッキング
材，ガスケット，高熱炉の断熱材等の分野に応用可能な
らしめたものである。

従来難燃性耐熱性シートの製造法としては例えば特開昭
４９−９４９０５号公報にあるようにセラミックファイ
バー主体としてこれにクリソタイル石綿やアニオン性合
成樹脂エマルジョンを添加して抄造する方法や特開昭５
０−１３８１０３号公報にあるようにセラミックファイ
バーの水分散液に、シリカゾル，アルミナゾル，及びポ
リアクリルアミド系凝集剤等の無機又は有機繊維や結合
剤，難燃剤を添加して抄造する方法が提案されている。

然し乍らこれら公知の方法によるシートは比較的高温の
耐熱性はあるが柔軟性，耐摩擦性に欠け従って取り扱い
にくいのみでなく特にセラミック中の他の成分である珪
酸やアルミナ等の存在により融点を低下しこのため本発
明ご所期する高熱炉の如き高温域での機械的強度や化学
的安定性が得られない多大な不利を具有するものであ
る。

〔発明が解決しようとする課題〕

本発明は高温雰囲気においても機械的強度が大で且つ化
学的にも安定し然も柔軟性のため取り扱いも容易な他の
無機質繊維シートには求められない特徴を具有するジル
コニア繊維を主体とするシートを提供するものである。

〔課題を解決するための手段〕

本発明者らは上述した優れた特性を有するジルコニア繊
維をその特性を失うことなくしてシート化する方法につ
いて鋭意研究の結果、後述する如く極少量の結合剤等を
限られた組み合わせて使用した場合にのみ、所期の目的
とするシートが得られることを見出し、本発明に到達し
た。

即ち、本発明は繊維長0.1 〜50mm、繊維径0.1 〜20μの
ジルコニア繊維95〜99.5重量部とセルロース系繊維5 〜
0.5 重量部とからなるスラリー１００重量部に、ジルコ
ニアゾル２〜１５重量部と有機結合剤１〜３重量部、お
よび凝集剤0.001 〜5 重量部を添加してこれを常法の湿
式抄紙法により得ることを特徴とするものである。

上述の如くして得られた本発明のシートは２７００℃に
及び高温にも耐え然も化学的に安定で且つ耐食性に優
れ、また蒸気圧にも少なくそして亦殆どの溶融金属やガ
ラスと反応しない等の特徴を具有し、さらに強度，柔軟
性，および耐摩擦性も大であり、取り扱いにも容易な超
高温耐熱シートであることが判明した。

因に本発明に使用するジルコニア繊維とは１００％酸化
ジルコニウム繊維，酸化カルシウム安定化ジルコニウム
繊維，酸化イットリウム安定化ジルコニウム繊維，酸化
マグネシウム安定化ジルコニウム繊維等であって、その
繊維長は0.1 〜50mm、繊維径0.1 〜20μの範囲のもので
ある。

然し乍ら繊維長0.1 mm未満の場合は、シートの柔軟性が
低下し、また５０mmを超えると繊維の分散が困難となり
均一な厚さのシートが得られない。そしてまた繊維径が
0.1 μ未満の場合は、分散工程時に繊維が切断され易く
従ってシートの強度が低下する。更にまた２０μを超え
ると繊維の柔軟性が少なくなるので柔軟なシートが得ら
れない。

セルロース系繊維は抄紙時における抄紙ワイヤーからの
湿紙離れ、あるいは断紙防止の目的で使用されるもので
あり、ジルコニア繊維95〜99.5重量部に対し、セルロー
ス繊維5 〜0.5 重量部が配合される。ジルコニア繊維に
セルロース系繊維を配合することにより、湿式抄紙の
際、ワイヤーから剥がし易く、また湿紙の形状保持性が
良いため型崩れがおこらずシート造りが容易となる利点
がある。セルロース系繊維が全く存在せずジルコニア繊
維のみでは、湿紙の形状保持性が悪いためワイヤーから
剥がす時に型崩れが起こし易く、シート作りは困難をき
たし、かつシートは折れやすく、ばらけ易く乾燥時の強
度も弱くなる。また、セルロース系繊維を配合すること
により、ジルコニアゾル、ジルコニア塩、合成ゴムラテ
ックスの凝集剤による定着が一段と向上する。セルロー
ス系繊維が過分に配合されると高温雰囲気中で有害物を
発生し、シートの化学的安定性を損なうに至るので3 重
量部以下が好ましい。

茲にセルロース系繊維とは製紙工場で一般に使用される
木材パルプ，楮、三椏，麻，木綿などの植物繊維、カチ
オン化パルプなどの変性パルプ、あるいはミクロフイブ
リル化セルロース等であって、強靭性、柔軟性に富むも
のが好ましく、特に麻の繊維が好ましい。麻は非木材繊
維の維管束繊維（葉の繊維）で、木材パルプに比較して
重合度、結晶化度も高く単繊維強度も強い上、繊維径が
細く、繊維長が長く、柔軟性がある。このように強度に
優れる結果、木材パルプよりも麻の方が使用量が少なく
て済み、且つ安価に入手できるという利点がある。

ジルコニア繊維及びセルロース系繊維からなるスラリー
にジルコニアゾルおよび／またはジルコニウム塩水溶液
を前記割合で添加するが、本発明に於いてはこれら成分
の配合割合は必要不可欠であってこれによりシートの高
温雰囲気中および焼成後の強度が維持される。

即ち、ジルコニアゾルおよび／またはジルコニウム塩の
水溶液はジルコニア繊維間の結合を強固にし、しかもそ
れ自身が強靭な被膜を形成しジルコニア繊維と同等な耐
熱性を有するので、得られるシートは機械的強度に富
み、化学的安定性に優れたものとなる。

本発明に使用される上記ジルコニアゾルとは粒子径７０
μ前後のジルコニアが水に懸濁した乳白色コロイド状液
である。

また、ジルコニウム塩水溶液とは水を溶媒としたジルコ
ニアのこう質液で、酢酸ジルコニル，硝酸ジルコニル，
酸塩化ジルコニル，硫酸ジルコニル，炭酸ジルコニルア
ンモニウム等が使用される。これらのジルコニアゾルま
たはアジルコニウム塩水溶液は前述の如くスラリー中に
添加されるが、その他の方法として抄紙工程の過程若し
くは抄紙後にスプレー若しくは含浸等の方法で添加する
こともできるしまたこれらの併用であってもよい。しか
しその添加量はジルコニア繊維およびセルロース系繊維
からなるスラリー１００重量部（固形分）に対し２〜１
５重量部（固形分）の範囲でなければならない。即ち、
添加量が２重量部より少ないと高温雰囲気中若しくは焼
成後のシートの機械的強度が弱化し、また１５重量部よ
り多いとシートが硬くなりすぎ、折れ、割れ等が発生し
取り扱いが困難となる。好ましくは３〜１０重量部の範
囲である。

本発明における有機結合剤とはジルコニア繊維，セルロ
ース系繊維，ジルコニアゾル等の結合に関与し、シート
に強度，柔軟性，耐摩擦性を付与すると共に取り扱いを
容易ならしめる目的で使用する。かかる有機結合剤とは
合成ゴムラテックス，合成樹脂エマルジョン若しくは水
溶性の高分子重合体等で柔軟で強靭な被膜を形成するも
のが適している。これら有機結合剤の添加量は少ない
程、高温雰囲気中で有害物を発生せず、また焼成後も強
度の低下が少ない。

従って実用上支障のない程度に高温雰囲気における化学
的安定性を維持し、さらに常温における取り扱いを容易
ならしめる為に、有機結合剤はジルコニア繊維およびセ
ルロース系繊維からなるスラリー１００重量部（固形
分）に対し、１〜３重量部（固形分）の範囲で添加され
る。

本発明に用いる凝集剤とはジルコニア繊維，セルロース
系繊維，ジルコニアゾルおよび／またはジルコニウム塩
水溶液および有機結合剤の凝集に作用するものであって
高分子凝集剤又は三価金属塩からなる。高分子凝集剤と
してはポリアクリルアミド類，変性ポリアクリルアミド
類，ポリアクリル酸ソーダ類，アクリルアミド・アクリ
ル酸ソーダ共重合物，ポリエチレングリコール類などが
あげられ、また三価金属塩とは硫酸アルミニウム，塩化
アルミニウムなどのアルミニウム塩，塩化第二鉄，硝酸
第二鉄などの第二鉄塩があげられる。これらの凝集剤は
ジルコニア繊維およびセルロース系繊維からなるスラリ
ー１００重量部（固形分）に対し、0.001 〜 5重量部添
加される。

即ち0.001 重量部より少ないと凝集が不十分となり濁り
が残ることがあり、5 重量部より多いと凝集体が過大と
なり、得られるシートの地合に悪影響を及ぼす。

本発明の実施にあたっては、まずジルコニウム繊維とセ
ルロース系繊維を水中に分散する。ジルコニア繊維はル
ーズなマット状及びバルク状で入手するがこれを水中に
投入してセルロース系繊維と共に適当に撹拌すると容易
に繊維分散スラリーが得られる。次いでこの繊維分散液
中に微着色透明状のジルコニアゾルおよび／またはジル
コニウム塩水溶液および合成ゴムラテックス等の有機結
合剤を添加し、十分混合後アンモニア等でスラリーのＰ
Ｈをアルカリ側に調整し、更にカチオン性ポリアクリル
アミド，アニオン系ポリアクリルアミド等の凝集剤を添
加し、凝集スラリーとした後、長網抄紙機，円網抄紙機
等公知の抄紙機で抄造される。

〔発明の効果〕

上述したように本発明はジルコニウム繊維が有する優れ
た特性である高融点を利用しこれを主体としてシート化
することによりシートは柔軟で然も強度が大なため取り
扱いが容易でありまた高温雰囲気中あるいは焼成後にお
いても機械的強度が大で且つ化学的安定性にも優れる。
特に金属イオン，金属酸化物の含有量が極めて少なく、
従って高温時においても金属との反応が起こりにくいの
でこれらの特徴を活かして種々な用途に供することがで
きる。例えば、セラミック焼成時の反応防止材，特殊合
金鋳造設備のパッキング材，ガスケット，特殊フィルタ
ー，触媒用担体，高熱炉の断熱材，離型材等，広範な用
途に使用される。

〔実施例〕

本発明を実施例をあげて説明すると以下の通りである。

実施例１〜８、比較例１〜４ 実施例１〜８として表１に示した配合割合で、ジルコニ
ア繊維および麻繊維を分散させ、次いでこれにジルコニ
アゾル，合成ゴムラテックスを添加し十分混合した後、
凝集剤を加え、得られた凝集スラリーを角型手抄機で坪
量１００ｇ／m²になるように抄造した。

尚、比較例１〜４として従来の方法による無機質繊維シ
ートを表２に示した如く作成した。

得られた試料の特性を表３に示す。

表３から明らかなように、本発明に基づくシートは従来
品たる比較例に比べ、融点が格段と高く、常態では従来
品と略同様な引張強度や伸びを示す。

又、１０００℃加熱後、本発明シートは良好な引張強さ
及び柔軟性を示すのに対し、比較シートは殆んど強度が
無いか又は強度を保有していても柔軟性を殆ど示さない
ことが判る。

フロントページの続き (72)発明者 宇水 勉 静岡県駿東郡長泉町本宿501番地 特種製 紙株式会社内 (72)発明者 福地 孝行 静岡県駿東郡長泉町本宿501番地 特種製 紙株式会社内 (72)発明者 早瀬 雅博 岡山県備前市東片上394番地 (72)発明者 浅見 肇 岡山県備前市伊部1931番地 (56)参考文献 特開 昭52−140605（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−81399（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】繊維長0.1 〜50mm、繊維径0.1 〜20μのジ
   ルコニア繊維95〜99.5重量部とセルロース系繊維5 〜0.
   5 重量部とからなるスラリー100 重量部に、ジルコニア
   ゾルおよび／またはジルコニウム塩水溶液の2 〜15重量
   部を加えたものを主体としこれに有機結合剤1 〜3 重量
   部、および凝集剤0.001 〜5 重量部を添加して、湿式抄
   紙することを特徴とするジルコニア繊維シートの製造方
   法。